JP5448497B2 - 2電極水平すみ肉ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ - Google Patents

2電極水平すみ肉ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ Download PDF

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本発明は、軟鋼および490N/mm2級高張力鋼をはじめとする各種鋼板の水平すみ肉溶接に使用するガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤに係わるものであり、特に造船のロンジ先付け溶接や長尺ロンジ製作現場において施工されている2電極水平すみ肉ガスシールドアーク溶接に使用して、良好なビード形状および耐気孔性が得られる2電極水平すみ肉ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ(以下、フラックス入りワイヤという。)に関する。
船舶、橋梁などの製造分野では、ロンジといわれる補強材の水平すみ肉溶接の比率が高く、生産性向上のために高速化の要望が強い。これに対し、例えば、特許文献1で提案されている2電極水平すみ肉ガスシールドアーク溶接方法が比較的簡便な装置で実施できることから広く実用化されている。
しかし、2電極水平すみ肉ガスシールドアーク溶接方法による溶接速度は、安定操業的に1.0m/min(脚長6mm)〜1.3m/min(脚長5mm)が一般的である。溶接速度1.5m/min(脚長6mm)〜2.0m/min(脚長5mm)のような高速にすると、脚長に見合った溶着量が必要で、例えばワイヤ径1.6mmのフラックス入りワイヤを用いて2電極溶接を行った場合は両電極とも400Aを超える高電流溶接条件の施工となり、ビード形状が著しく不良となる問題がある。
図1は2電極高速水平すみ肉ガスシールドアーク溶接の状況を説明するために示した模式図である。2電極溶接で良好なビードを形成するためには電極角度θ1を持たせた先行電極ワイヤ1と電極角度θ2を持たせた後行電極ワイヤ2との間に安定した湯溜り3を形成することが基本である。高電流高速溶接になればなるほど、両電極のアーク力が強大になり湯溜り3が安定した状態で継続されなくなる。この湯溜りの不安定がそのまま後行電極ワイヤ2の後方に形成される溶融プール4の不安定となり、アンダーカットの発生や表面に凸凹がある丸く凸状のビード形状になる。
図2(a)、(b)、(c)は、高電流で行う2電極高速水平すみ肉ガスシールドアーク溶接において発生しやすいビード形状の欠陥例を説明するために示した模式図である。図2(a)の11はビード上脚側のアンダーカット、図2(b)の12は凸状のビード形状である。さらに、2電極水平すみ肉ガスシールドアーク溶接の高電流高速化にともなって起こる問題は、ビード形状劣化とともに、鋼板表面の赤錆や付着水分、プライマ8に起因した図2(c)に示すビード表面気孔13の発生が顕著になることである。
耐気孔性については、例えば、特許文献2に提案されているようなスラグ生成量を少なくしたフラックス入りワイヤを使用することが基本であるが、特にプライマ塗装鋼板の場合の耐気孔性向上対策が要望されている。
特開昭63−235077号公報 特開平7−314181号公報
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み、2電極水平すみ肉ガスシールドアーク溶接方法に使用して、溶接速度1.5〜2.0m/min(脚長5〜6mm)で良好な溶接作業性、ビード形状および耐気孔性が得られる2電極水平すみ肉ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤを提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく、溶接速度1.5〜2.0m/minの2電極高速水平すみ肉ガスシールドアーク溶接方法で問題となるビード形状および耐気孔性について、種々のフラックス入りワイヤを試作して、ワイヤ成分による影響を詳細に調査した。その結果、特に含有させるスラグ形成剤の主成分をTi酸化物−Fe酸化物系にし、かつ、Ti酸化物とFe酸化物の比を限定することにより、両電極間の湯溜りおよび後行電極後方に形成する溶融プールが安定し、アンダーカットがなく、止端部および表面がなめらかなビード形状が得られ、耐気孔性も格段に向上することを見出した。その他のスパッタ発生量、スラグ剥離性などの溶接作業性および溶接金属の機械的性質も確認し、ワイヤ成分としては、スラグ形成剤(Si酸化物、Zr酸化物)、強脱酸剤およびスラグ生成剤として作用するAl、Mg、ガス発生剤(F)、アーク安定剤(Na2O、K2O)の含有量を限定し、所期の目的を達し、本発明をなしたものである。
本発明の要旨は、以下の通りである。
(1)鋼製外皮内にフラックスを充填してなる2電極水平すみ肉ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤにおいて、ワイヤ全質量に対する質量%で、
Ti酸化物のTiO2換算値:2.5〜4.0%、
Fe酸化物のFeO換算値:1.5〜3.5%、
但し、TiO2換算値/FeO換算値:1.0〜2.5、
Si酸化物のSiO2換算値:0.7〜1.2%、
Zr酸化物のZrO2換算値:0.4〜1.0%、
弗素化合物のF換算値:0.06〜0.20%、
Naのアルカリ金属化合物のNa O換算値およびKのアルカリ金属化合物のK O換算値の合計:0.06〜0.30%、
C:0.03〜0.12%、
Si:0.3〜1.2%、
Mn:1.5〜4.5%、
Al:0.1〜0.7%、
Mg:0.1〜0.7%
を含有し、残部はFeよび不可避不純物からなることを特徴とする2電極水平すみ肉ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。
(2) さらに、質量%で、
Ni:0.3〜2.0%
を含有することを特徴とする上記(1)に記載の2電極水平すみ肉ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。
(3) さらに、質量%で、
Ti:0.3%以下、Zr:0.3%以下の1種又は2種を含有することを特徴とする上記(1)または(2)に記載の2電極水平すみ肉ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。
本発明の2電極水平すみ肉ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤによれば、軟鋼および490N/mm2級高張力鋼をはじめとする各種鋼板の2電極水平すみ肉ガスシールドアーク溶接方法に使用して、溶接速度1.5〜2.0m/min(脚長5〜6mm)で良好な溶接作業性、ビード形状および耐気孔性が得られるので、溶接の高能率化および溶接部の品質向上が図れる。
2電極高速水平すみ肉ガスシールドアーク溶接の状況を示した模式図である。 2電極水平すみ肉ガスシールドアーク溶接において発生するビード形状の欠陥例を示した模式図で、(a)はビード上脚側のアンダーカット、(b)は凸状のビード形状、(c)はビード表面気孔の発生を示す図である。
以下本発明を詳細に説明する。
本発明は、2電極水平すみ肉ガスシールドアーク溶接方法に使用して、溶接速度1.5〜2.0m/min(脚長5〜6mm)で良好な溶接作業性、ビード形状および耐気孔性が得られる2電極水平すみ肉ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤとして、特に含有させるスラグ形成剤の主成分をTi酸化物−Fe酸化物系にし、かつ、Ti酸化物とFe酸化物の比を限定することにより、両電極間の湯溜りおよび後行電極後方に形成する溶融プールが安定し、アンダーカットがなく、止端部および表面がなめらかなビード形状が得られ、耐気孔性も格段に向上させたものである。そして、その他のワイヤ成分としては、スラグ形成剤(Si酸化物、Zr酸化物)、強脱酸剤およびスラグ生成剤として作用するAl、Mg、ガス発生剤(F)、アーク安定剤(Na2O、K2O)の含有量を限定し、所期の目的を達したものである。
以下に、本発明の2電極水平すみ肉ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤの成分限定理由を述べる。なお、成分についての%は質量%を意味する。
Ti酸化物のTiO2換算値:2.5〜4.0%
ルチール、チタンスラグなどのTi酸化物は、溶融スラグの粘性を高めて十分なスラグ被包性を与え、ビード形状を良好にする作用を有する。しかし、Ti酸化物のTiO2換算値が2.5質量%(以下、%という。)未満では、スラグ量の不足とともに溶融スラグの粘性が不足してスラグ被包性が不十分となり、ビード形状が不良となる。また、スラグ剥離性も不良となる。一方、TiO2換算値が4.0%を超えると、溶融スラグの粘性および生成量とも過剰で、耐気孔性が不良となる。したがって、Ti酸化物のTiO2換算値は2.5〜4.0%とする。
Fe酸化物のFeO換算値:1.5〜3.5%
酸化鉄、ミルスケールなどのFe酸化物は、溶融スラグの粘性および凝固温度を調整し、ビード表面のなめらかさと下脚側止端部のなじみ性を良好にする作用を有する。しかし、Fe酸化物のFeO換算値が1.5%未満では、ビード形状が不良となる。一方、FeO換算値が3.5%を超えると、溶融スラグの過剰な粘性低下および凝固温度の低下によりビード形状が不良となる。したがって、Fe酸化物のFeO換算値は1.5〜3.5%とする。
TiO2換算値/FeO換算値:1.0〜2.5
Ti酸化物は溶融スラグの粘性を高める成分であり、Fe酸化物は粘性を低くする成分である。TiO2換算値/FeO換算値が1.0未満であると、溶融スラグの粘性が低くなりすぎ流動性が過剰になって両電極間の湯溜りが不安定でビード形成ができなくなる。一方、TiO2換算値/FeO換算値が2.5を超えると、粘性が高くなり高電流高速水平すみ肉ガスシールドアーク溶接では後行電極後方に形成される溶融プールに広がりがなくなりビードが凸状になり、耐気孔性も劣化する。したがって、TiO2換算値/FeO換算値は1.0〜2.5とする。
Si酸化物のSiO2換算値:0.7〜1.2%
珪砂やジルコンサンドなどのSi酸化物は、スラグ被包性をよくしてビード形状をなめらかにする作用を有する。しかし、Si酸化物のSiO2換算値が0.7%未満では、スラグ被包性が不十分となりビード形状が不良となる。一方、SiO2換算値が1.2%を超えると、ビード止端部のなじみ性が不足し、溶融スラグの生成量が過剰になり耐気孔性も不良となる。したがって、Si酸化物のSiO2換算値は0.7〜1.2%とする。
Zr酸化物のZrO2換算値:0.4〜1.0%
ジルコンサンド、酸化ジルコンなどのZr酸化物は、スラグ被包性をよくしてビード形状を良好にする作用を有する。しかし、Zr酸化物のZrO2換算値が0.4%未満では、スラグ被包性が不十分となりビード表面がなめらかにならず、ビード下脚側が大きい不等脚のビード形状となる。一方、ZrO2換算値が1.0%を超えると、ビード形状は丸く凸状になり、耐気孔性も劣化する。したがって、Zr酸化物のZrO2換算値は0.4〜1.0%とする。
Al:0.1〜0.7%
Al、Fe−Al、Al−MgなどのAlは、強脱酸剤として作用するとともに脱酸生成物のAl23を溶融スラグの成分として利用する。Alを0.1%以上含有させることによりスラグが均一に被包してビード形状が良好となる。一方、Alが0.7%を超えると、スラグ剥離性が不良となる。したがって、Alは0.1〜0.7%とする。
なお、スラグ形成剤としてアルミナ粉(Al23)を含有させることは0.5%以下であれば可能であるが、スラグ被包むらが生じてスラグ剥離性不良、ビード形状は止端部のなじみが悪くなる。
Mg:0.1〜0.7%
Mg、Al−Mg、Ni−MgなどのMgも同様に強脱酸剤であるが、0.1%以上含有させることにより脱酸生成物のMgOが溶融スラグの成分となり、ビード止端部のなじみ性を良好にする。一方、Mgが0.7%を超えると、スラグ被包性が悪くなりスラグ剥離性が不良で、ビード形状も凸気味になる。したがって、Mgは0.1〜0.7%とする。
なお、スラグ形成剤としてマグネシア(MgO)をスラグ形成剤として0.5%を超えて含有させた場合、これら原料が内蔵する水分によりスパッタ発生量が増加し、耐気孔性は劣化する。
弗素化合物のF換算値で:0.06〜0.20%
弗化ソーダや珪弗化カリなどの弗素化合物からのFは、大気からのシールド性を高めて溶接金属の窒素量、水素量を低減し、耐気孔性を向上させる作用を有する。しかし、弗素化合物のF換算値が0.06%未満では耐気孔性が劣化する。一方、F換算値が0.20%を超えると、溶融スラグの粘性が過剰に低下し、スラグ被包性が悪くスラグ剥離性およびビード形状が不良となる。したがって、弗素化合物のF換算値は0.06〜0.20%とする。
Naのアルカリ金属化合物のNa O換算値およびKのアルカリ金属化合物のK O換算値の合計:0.06〜0.30%
珪酸ソーダや珪酸カリなどの水ガラス、氷晶石、カリ長石などからのアルカリ金属化合物は、アークを安定にしてスパッタ発生量を低減するとともに、後行電極後方の溶融プールを広げてビード形状を良好にする作用を有する。しかし、Naのアルカリ金属化合物のNa O換算値およびKのアルカリ金属化合物のK O換算値の合計(ここでは、Na O換算値またはK O換算値が0%の場合を含む)が0.06%未満では、アークが不安定でスパッタ発生量が増加し、ビード形状が不良となる。一方、NO換算値およびKO換算値の合計(ここでは、Na O換算値またはK O換算値が0%の場合を含む)が0.30%を超えると、スラグ被包状態が悪くなりスラグ剥離性が不良となる。したがって、アルカリ金属化合物のNaO換算値およびKO換算値の合計は0.06〜0.30%とする。
以上、本発明の2電極水平すみ肉ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤの構成要件の限定理由を述べたが、残部はFeおよび不可避不純物からなる。残部となるFeは、鋼製外皮のFe分およびワイヤ成分を調整するために添加する合金鉄(フェロアロイ等)のFe分やフラックスの鉄粉のFe分である。
合金成分としては、軟鋼、490N/mm2級高張力鋼用、570N/mm2級高張力鋼用、低温鋼用、耐候性鋼用などフラックス入りワイヤに要求される溶接金属の強度、衝撃値を確保するためのC、Si、Mn、Ni、Ti、Zr、Cr、Mo、Cuなどである。以下に、主要な合金成分について好ましい範囲を示す。
C:0.03〜0.12%
Cは鋼製外皮およびフラックスの合計で0.03〜0.12%が好ましい。Cが0.03%未満では強度や衝撃値が低くなる。一方、Cが0.12%を超えると強度が高くなり衝撃値が低下する。
Si:0.3〜1.2%
Siは鋼製外皮およびフラックスの合計で0.3〜1.2%が好ましい。Siが0.3%未満では、溶接金属の強度が低くなる。一方、Siが1.2%を超えると強度が高くなり衝撃値が低下する。
Mn:1.5〜4.5%
Mnは1.5〜4.5%が好ましい。Mnが鋼製外皮およびフラックスの合計で1.5%未満では、溶接金属の強度、衝撃値が低くなる。一方、Mnが4.5%を超えると強度が高くなり衝撃値が低下する。なお、Mnの脱酸生成物MnOはスラグ成分となりビード表面をなめらかにするが、MnOを原料粉から0.5%以上含有させるとスラグ剥離性が不良となる。
Ni:0.3〜2.0%
Niは0.3%以上で低温衝撃値向上(−20℃以下)に効果が認められるが、2.0%を超えると高速水平すみ肉溶接ではビードに高温割れが発生しやすくなる。
Ti:0.3%以下、Zr:0.3%以下の1種または2種
Ti、Zrはそれぞれ0.3%以下含有させて脱酸剤として有効であるが、0.3%を超えるとスラグ剥離性、耐気孔性およびビード形状に悪影響が見られる。したがって、Ti:0.3%以下、Zr:0.3%以下の1種または2種とした。
なお、その他の成分として、Cr、Mo、Cuは溶接金属の強度、衝撃値を確保するために含有させることができ、また、BiおよびBi酸化物、硫化鉄などを0.01%以上含有させることは、溶接後のスラグ除去作業の大幅な省略のために良好なスラグ剥離性が得られるので、これらの成分を含有させても本発明の目的を損なうものではない。また、フラックス入りワイヤの全水素量は、耐気孔性の観点からワイヤ全質量に対して40ppm以下にすることが好ましい。
鋼製外皮は、フラックス充填後の伸線加工性が良好な軟鋼でよいが、Cが0.03%以下のものは長尺のロンジ溶接において問題となるスパッタ発生量を低減できるので好ましい。
フラックス充填率は、高溶着性、伸線性などを考慮して12〜20%程度のものが好ましい。鉄粉はアーク安定剤として作用し、溶着速度向上にも寄与するので、設定したフラックス充填率で限定したワイヤ成分を満足するように1〜12%含有させることができる。
ワイヤ径は1.2〜2.0mmで、両電極とも同一径または異なる径のものを使用できる。ワイヤ断面構造は市販のフラックス入りワイヤと同様にシーム有無のいずれでもよい。表面に隙間のないシーム無しワイヤは水分の吸湿がなく耐気孔性に有利である。また、Cuなどのめっきを施して衝撃値や防錆効果を高めることも可能である。溶接時のワイヤ狙い位置は、図1および図2(a),(b),(c)に示す電極間距離d:20〜40mm、先行電極角度θ1:5〜15°、後行電極角度θ2:5〜15°、下板10に対する電極角度θ3:35〜55°、ワイヤ突き出し長さ:15〜35mm、先行電極のワイヤ狙い位置はコーナ部から0〜2mm、後行電極のワイヤ狙い位置はコーナ部から0〜3mmの範囲にあることが好ましい。また、シールドガスはCO2ガスが耐気孔性の面から好ましいが、Ar−CO2混合ガスも使用できる。
以下、実施例により本発明の効果をさらに詳細に説明する。
軟鋼外皮(C:0.02%、Si:0.01%、Mn:0.40%、Al:0.01%)に、フラックスを充填後、縮径して、フラックス充填率15%でワイヤ径1.6mmのフラックス入りワイヤを各種試作した。表1にそれぞれの試作ワイヤを示す。
Figure 0005448497
これら試作ワイヤを各々両電極に使用して、T字すみ肉試験体を用いて、表2に示す溶接条件で目標脚長5mmの2電極高速水平すみ肉ガスシールドアーク溶接試験(両側同時溶接)を行った。なお、シールドガスは先行電極および後行電極共にCO2ガスで流量は毎分30リットルである。
Figure 0005448497
2電極水平すみ肉ガスシールドアーク溶接試験の試験体は、板厚12mm、板幅100mm、長さ1500mm(490N/mm2級高張力鋼)で、無機ジンクプライマーを膜厚20〜25μm下板および立板の全面に塗布しているものを用い、これらのプライマ塗布鋼板を加圧して下板と立板の隙間がない状態で仮付け溶接して試験体とした。
各試作ワイヤについて、溶接状況(アーク安定性、2電極間の湯溜りの安定性)、スラグ被包性、スラグ剥離性、ビード形状および耐気孔性(ビード表面のピット、ガス溝有無)を評価した。
各試験の評価基準は、溶接状況は○:先行電極または後行電極のアークが安定で湯溜りも安定した状態、×:先行電極または後行電極アークおよび湯溜りの一方または両方が不安定な状態を示す。スラグ被包性は○:良好、×:部分的または全線で被包むらが生じたものを示す。スラグ剥離性は○:良好、×:部分的に除去しにくいまたは極めて除去しにくいを示す。ビード形状は○:良好、×:不良を示す。耐気孔性は○:気孔なし、×:気孔発生を示す。それらの結果を表3にまとめて示す。
Figure 0005448497
表1および表2中ワイヤ記号W1〜W10が本発明例、ワイヤ記号W11〜W25は比較例である。
本発明例であるワイヤ記号W1〜W10は、Ti酸化物のTiO2換算値、Fe酸化物のFeO換算値、TiO2換算値/FeO換算値、Si化合物のSiO2換算値、Zr化合物のZrO2換算値、弗素化合物のF換算値、NaおよびKのアルカリ金属化合物のNa2O換算値とK2O換算値の内の1種の換算値または2種の合計換算値、AlおよびMgを適量含んでいるので、高速水平すみ肉ガスシールドアーク溶接における両電極間の湯溜りも安定し、スラグ被包性が十分で、スラグ剥離性、ビード形状および耐気孔性のいずれも良好で極めて満足な結果であった。
比較例中ワイヤ記号W11は、TiO2換算値が少ないのでスラグ被包性が不十分で、スラグ剥離性およびビード形状が不良であった。また、F換算値が少ないので気孔が発生した。
ワイヤ記号W12は、TiO2換算値が多いので気孔が発生した。また、NaおよびKのアルカリ金属化合物のNa2O換算値とK2O換算値の合計が多いのでスラグ被包性が悪くなりスラグ剥離性が不良であった。
ワイヤ記号W13は、FeO換算値が少ないのでビード形状が不良であった。また、Alが多いのでスラグ剥離性も不良であった。
ワイヤ記号W14は、FeO換算値が多いので湯溜りが安定せずビード形状が不良であった。
ワイヤ記号W15は、TiO2換算値/FeO換算値が低いので湯溜りが安定せずビード形状が不良であった。
ワイヤ記号W16は、TiO2換算値/FeO換算値が高いのでビード形状が不良で気孔も発生した。
ワイヤ記号W17は、SiO2換算値が少ないのでスラグ被包性が劣化しビード形状が不良であった。
ワイヤ記号W18は、SiO2換算値が多いのでビード形状が不良で気孔も発生した。
ワイヤ記号W19は、ZrO2換算値が少ないのでビード形状が不良であった。
ワイヤ記号W20は、ZrO2換算値が多いので凸ビードとなりビード形状が不良で気孔も発生した。
ワイヤ記号W21は、Alが少ないのでスラグ被包性が悪くなりビード形状が不良であった。
ワイヤ記号W22は、Mgが少ないのでビード止端部のなじみが悪くビード形状が不良であった。
ワイヤ記号W23は、Mgが多いのでスラグ被包性、スラグ剥離性およびビード形状が不良であった。
ワイヤ記号W24は、F換算値が多いのでスラグ被包性、スラグ剥離性およびビード形状が不良であった。
ワイヤ記号W25は、K2O換算値が少ないのでアークが不安定で湯溜りが不安定となりビード形状が不良であった。
実施例1と同一の軟鋼外皮に、フラックスを充填後、縮径して、フラックス充填率15%でワイヤ径1.6mmのフラックス入りワイヤを各種試作した。表4にそれぞれの試作ワイヤを示す。
Figure 0005448497
これらの試作ワイヤを用いて実施例1と同様に2電極水平すみ肉ガスシールドアーク溶接試験を行った。試験体、評価項目および評価基準は実施例1と同一とした。
また、表4に示す試作ワイヤを用いて、JIS Z3313に準じて、板厚20mmの鋼板(JIS G3126 SLA235A)を用いて溶着金属試験を表5に示す溶接条件で行い、衝撃試験片を採取した。なお、衝撃試験の吸収エネルギーは試験温度―20℃の3本の平均値が47J以上を良好とした。それらの結果を表6にまとめて示す。
Figure 0005448497
Figure 0005448497
表4および表6中ワイヤ記号W26〜W30が本発明例、ワイヤ記号W31〜W35は比較例である。
本発明例であるワイヤ記号W26〜W30は、Ti酸化物のTiO2換算値、Fe酸化物のFeO換算値、TiO2換算値/FeO換算値、Si化合物のSiO2換算値、Zr化合物のZrO2換算値、弗素化合物のF換算値、アルカリ金属化合物のNa2O換算値とK2O換算値の1種以上の合計量、AlおよびMgを適量含んでいるので、高速水平すみ肉ガスシールドアーク溶接における両電極間の湯溜りも安定し、スラグ被包性が十分で、スラグ剥離性、ビード形状および耐気孔性のいずれも良好であった。また、NiおよびまたはTiとZrの1種以上を適量含んでいるので−20℃における吸収エネルギーも高値が得られるなど極めて満足な結果であった。
比較例中ワイヤ記号W31はNi、TiおよびZrを含んでいないので、またワイヤ記号W33はNiが少ないので、いずれもー20℃の吸収エネルギーが低値であった。
ワイヤ記号W32は、Niが多く高温割れが生じたので溶着金属試験を中止した。
ワイヤ記号W34はTiおよびZrが多いので、またワイヤ記号W35はTiが多いので、いずれもスラグ剥離性、ビード形状および耐気孔性が不良であった。
1 先行電極ワイヤ
2 後行電極ワイヤ
3 湯溜り
4 溶融プール
5 溶融スラグ
6 凝固スラグ
7 溶接ビード
8 プライマ
9 立板
10 下板
11 アンダーカット
12 凸ビード
13 気孔

Claims (3)

  1. 鋼製外皮内にフラックスを充填してなる2電極水平すみ肉ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤにおいて、ワイヤ全質量に対する質量%で、
    Ti酸化物のTiO2換算値:2.5〜4.0%、
    Fe酸化物のFeO換算値:1.5〜3.5%、
    但し、TiO2換算値/FeO換算値:1.0〜2.5、
    Si酸化物のSiO2換算値:0.7〜1.2%、
    Zr酸化物のZrO2換算値:0.4〜1.0%、
    弗素化合物のF換算値:0.06〜0.20%、
    Naのアルカリ金属化合物のNa O換算値およびKのアルカリ金属化合物のK O換算値の合計:0.06〜0.30%、
    C:0.03〜0.12%、
    Si:0.3〜1.2%、
    Mn:1.5〜4.5%、
    Al:0.1〜0.7%、
    Mg:0.1〜0.7%
    を含有し、残部はFeおよび不可避不純物からなることを特徴とする2電極水平すみ肉ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。
  2. さらに、質量%で、
    Ni:0.3〜2.0%
    を含有することを特徴とする請求項1に記載の2電極水平すみ肉ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。
  3. さらに、質量%で、
    Ti:0.3%以下、Zr:0.3%以下の1種又は2種を含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の2電極水平すみ肉ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。
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