JPH081378A - 高速性に優れた溶接変形の少ないフラックス入りワイヤ - Google Patents
高速性に優れた溶接変形の少ないフラックス入りワイヤInfo
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- JPH081378A JPH081378A JP27426394A JP27426394A JPH081378A JP H081378 A JPH081378 A JP H081378A JP 27426394 A JP27426394 A JP 27426394A JP 27426394 A JP27426394 A JP 27426394A JP H081378 A JPH081378 A JP H081378A
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Abstract
(57)【要約】
【目的】 高速性に優れ溶接時に発生する角変形量を低
減すると共に、高速溶接時の耐ピット性に優れ、溶接後
の仕上がりビード形状、外観が良好なフラックス入りワ
イヤを提供する。 【構成】 鋼製外皮とフラックスとのワイヤ全重量に対
して、C、Si、Mnを規制し、さらにCu、Mo、
V、Nbのうちいずれか1種または2種以上を含有し、
必要に応じNiを含有し、適量のTiO2 、SiO2 、
MgO等の酸化物、金属弗化物を含有し、かつワイヤ中
に占める各元素の重量%が下式で定まるパラメーターT
の値で630未満とする。 T=630.0−476.5C+56.0Si−19.7Mn −16.3Cu−26.6Ni−4.9Cr+38.1Mo +124.8V−19.1Nb
減すると共に、高速溶接時の耐ピット性に優れ、溶接後
の仕上がりビード形状、外観が良好なフラックス入りワ
イヤを提供する。 【構成】 鋼製外皮とフラックスとのワイヤ全重量に対
して、C、Si、Mnを規制し、さらにCu、Mo、
V、Nbのうちいずれか1種または2種以上を含有し、
必要に応じNiを含有し、適量のTiO2 、SiO2 、
MgO等の酸化物、金属弗化物を含有し、かつワイヤ中
に占める各元素の重量%が下式で定まるパラメーターT
の値で630未満とする。 T=630.0−476.5C+56.0Si−19.7Mn −16.3Cu−26.6Ni−4.9Cr+38.1Mo +124.8V−19.1Nb
Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、建築、土木、海洋構造
物、造船等で用いられる鋼材用の溶接材料に係わり、さ
らに詳しくは高速溶接での耐ピット性およびスラグの追
従性が良好で、優れたビード形状が得られるとともに溶
接角変形も少なく、歪取り作業を軽減もしくは省略する
ことが可能で良好な作業性を有するマグ溶接フラックス
入りワイヤに関するものである。
物、造船等で用いられる鋼材用の溶接材料に係わり、さ
らに詳しくは高速溶接での耐ピット性およびスラグの追
従性が良好で、優れたビード形状が得られるとともに溶
接角変形も少なく、歪取り作業を軽減もしくは省略する
ことが可能で良好な作業性を有するマグ溶接フラックス
入りワイヤに関するものである。
【0002】
【従来の技術】各種鋼構造物を溶接する場合、溶融金属
の凝固収縮、およびその後の冷却と相変態による収縮・
膨張によって、例えばすみ肉溶接の継手形状の場合は角
変形と呼ばれる面外変形が発生する。このような残留変
形は、例えば圧縮荷重が負荷される場合には座屈強度の
低下を生じるといった構造強度の低下の原因となる。ま
たこの変形を拘束治具によって強制的に防止しようとす
ると、過大な残留応力が発生することとなる。さらに寸
法精度が不十分となり製作上の不都合を生じ、美観をも
損ねることとなる。
の凝固収縮、およびその後の冷却と相変態による収縮・
膨張によって、例えばすみ肉溶接の継手形状の場合は角
変形と呼ばれる面外変形が発生する。このような残留変
形は、例えば圧縮荷重が負荷される場合には座屈強度の
低下を生じるといった構造強度の低下の原因となる。ま
たこの変形を拘束治具によって強制的に防止しようとす
ると、過大な残留応力が発生することとなる。さらに寸
法精度が不十分となり製作上の不都合を生じ、美観をも
損ねることとなる。
【0003】そこで例えば溶接学会誌第52巻(198
3年)第4〜9号に連載されている「溶接変形の発生と
その防止」に見られるように、溶接時に発生した残留変
形を局所的な加熱により矯正する手法が経験的に多数提
案されている。しかし溶接部の再加熱によって材質が劣
化することが避けられず、矯正作業に要する時間と費用
は実用上重大な障害となっており、これを軽減もしくは
省略することが可能な溶接材料の開発が望まれていた。
3年)第4〜9号に連載されている「溶接変形の発生と
その防止」に見られるように、溶接時に発生した残留変
形を局所的な加熱により矯正する手法が経験的に多数提
案されている。しかし溶接部の再加熱によって材質が劣
化することが避けられず、矯正作業に要する時間と費用
は実用上重大な障害となっており、これを軽減もしくは
省略することが可能な溶接材料の開発が望まれていた。
【0004】さらに、溶接部における残留応力や変形の
発生機構に関しては佐藤による「溶接構造要覧」198
8、(黒木出版)やK.Masubuchiの「Ana
lysis of Welded Structure
s」1980,PERGAMON PRESSに記載さ
れているが、溶接変形は主として溶接時の入熱に対する
部材の幾何学的形状によって決定されるもので、鋼構造
物溶接部の相変態温度が、残留応力や変形に影響を与え
る因子であることも明記されてはいるが、鋼構造物を対
象とした溶接材料で具体的な影響度の定量化やワイヤ成
分に関する検討はなされていない。
発生機構に関しては佐藤による「溶接構造要覧」198
8、(黒木出版)やK.Masubuchiの「Ana
lysis of Welded Structure
s」1980,PERGAMON PRESSに記載さ
れているが、溶接変形は主として溶接時の入熱に対する
部材の幾何学的形状によって決定されるもので、鋼構造
物溶接部の相変態温度が、残留応力や変形に影響を与え
る因子であることも明記されてはいるが、鋼構造物を対
象とした溶接材料で具体的な影響度の定量化やワイヤ成
分に関する検討はなされていない。
【0005】また相変態の超塑性現象に着目して、残留
応力の緩和や変形低減を検討した結果が溶接学会全国大
会講演概要 第37集p.314〜315、第38集
p.78〜79、第39集p.338〜341で報告さ
れている。しかし、これらはいずれも低合金鋼およびス
テンレス鋼のマルテンサイト変態温度に着目したもので
あり、3.5〜12%のNiを含有し、軟鋼および50
キロ級高張力鋼にみられる普通鋼材の成分および組織に
対してそのまま適用できる知見ではなく、このように高
いNiを含有している場合には、溶接材料費が高くな
り、歪取り作業が省略可能であっても経済的知見から実
用的なものでない。さらにこれを造船および海洋構造物
の普通鋼および低合金鋼に適用する場合には、溶接金属
部が電気的に過度な貴になり、溶接熱影響部における選
択的な腐食現象が発生して不都合が生じる。
応力の緩和や変形低減を検討した結果が溶接学会全国大
会講演概要 第37集p.314〜315、第38集
p.78〜79、第39集p.338〜341で報告さ
れている。しかし、これらはいずれも低合金鋼およびス
テンレス鋼のマルテンサイト変態温度に着目したもので
あり、3.5〜12%のNiを含有し、軟鋼および50
キロ級高張力鋼にみられる普通鋼材の成分および組織に
対してそのまま適用できる知見ではなく、このように高
いNiを含有している場合には、溶接材料費が高くな
り、歪取り作業が省略可能であっても経済的知見から実
用的なものでない。さらにこれを造船および海洋構造物
の普通鋼および低合金鋼に適用する場合には、溶接金属
部が電気的に過度な貴になり、溶接熱影響部における選
択的な腐食現象が発生して不都合が生じる。
【0006】溶接変形に及ぼす最大の影響因子は鋼材板
厚に対する溶接入熱量であり、続いて溶接金属の相変態
温度がある。これらに加えて変形が発生する温度におい
て、その変形に抗する材料の強度を挙げることができ
る。相変態温度は大略400〜700℃の範囲であり、
この温度域における強度をCr,Mo,V,Nb等の元
素添加によって増大させることによって変形量を低減さ
せ得ることが、例えばCr−Mo鋼の高温強度の知見か
ら推測できる。しかし溶接金属部の変態点温度における
高温強度を確保する検討は従来なされておらず、さらに
これらの添加元素は上述した変態点温度を上昇して溶接
変形を増大させる傾向のものであるために、適正添加量
は容易に決定できるものではなかった。
厚に対する溶接入熱量であり、続いて溶接金属の相変態
温度がある。これらに加えて変形が発生する温度におい
て、その変形に抗する材料の強度を挙げることができ
る。相変態温度は大略400〜700℃の範囲であり、
この温度域における強度をCr,Mo,V,Nb等の元
素添加によって増大させることによって変形量を低減さ
せ得ることが、例えばCr−Mo鋼の高温強度の知見か
ら推測できる。しかし溶接金属部の変態点温度における
高温強度を確保する検討は従来なされておらず、さらに
これらの添加元素は上述した変態点温度を上昇して溶接
変形を増大させる傾向のものであるために、適正添加量
は容易に決定できるものではなかった。
【0007】また、これらを解決する方法として特開平
4−22596号公報および特開平4−22597号公
報として「ガスシールドアーク溶接方法」が提案されて
いるが、適用されている溶接材料はソリッドワイヤであ
り、このソリッドワイヤで溶接した場合、ビードの溶込
みが深く溶接角変形を減少させることは難しい。
4−22596号公報および特開平4−22597号公
報として「ガスシールドアーク溶接方法」が提案されて
いるが、適用されている溶接材料はソリッドワイヤであ
り、このソリッドワイヤで溶接した場合、ビードの溶込
みが深く溶接角変形を減少させることは難しい。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】このように、溶接部材
・形状や溶接入熱量が与えられたものとして、溶接材料
の相変態点温度が溶接時に発生する変形量に及ぼす影響
を定量化して、溶接材料成分の設計指針を与えることが
有効であると考えられる。本発明は鋼構造物に最も汎用
的に使用される普通鋼材ならびに低合金鋼材の溶接継手
を対象として、溶接材料のAr3 変態点温度に着目し、
T形すみ肉溶接時に発生する角変形量を例にして、Ar
3 変態温度と角変形量の関係を検討することにより、発
生する角変形量の少ない溶接材料を具体的に提供するも
のである。またさらに溶接後の仕上がりビード形状を大
幅に改善できると共に、高速溶接時の耐ピット性および
良好なスラグの追従性により、優れたビード形状が得ら
れる溶接材料を提供することを目的とする。
・形状や溶接入熱量が与えられたものとして、溶接材料
の相変態点温度が溶接時に発生する変形量に及ぼす影響
を定量化して、溶接材料成分の設計指針を与えることが
有効であると考えられる。本発明は鋼構造物に最も汎用
的に使用される普通鋼材ならびに低合金鋼材の溶接継手
を対象として、溶接材料のAr3 変態点温度に着目し、
T形すみ肉溶接時に発生する角変形量を例にして、Ar
3 変態温度と角変形量の関係を検討することにより、発
生する角変形量の少ない溶接材料を具体的に提供するも
のである。またさらに溶接後の仕上がりビード形状を大
幅に改善できると共に、高速溶接時の耐ピット性および
良好なスラグの追従性により、優れたビード形状が得ら
れる溶接材料を提供することを目的とする。
【0009】なお変形量の尺度の一つとして角変形量を
取り上げたものであって、適用を角変形に限定するもの
ではなく、たとえば溶接部材の回転変形、収縮変形、膨
張変形等の低減にも適用できる。
取り上げたものであって、適用を角変形に限定するもの
ではなく、たとえば溶接部材の回転変形、収縮変形、膨
張変形等の低減にも適用できる。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らはさらに実験
を重ねた結果、ソリッドワイヤでは溶接時の溶込みが深
いが、それに比べフラックス入りワイヤは溶込みが浅く
なることで溶接変形量を少なくできることや、スラグ剤
成分を含んでいるため高速溶接時のピット発生防止に有
効であることを見い出した。
を重ねた結果、ソリッドワイヤでは溶接時の溶込みが深
いが、それに比べフラックス入りワイヤは溶込みが浅く
なることで溶接変形量を少なくできることや、スラグ剤
成分を含んでいるため高速溶接時のピット発生防止に有
効であることを見い出した。
【0011】すなわち、本発明の要旨とするところは、
ワイヤ全重量に対して重量%で(以下同じ)、TiO
2 ;2.5〜6.5%、TiO2 以外の酸化物;0.3
〜2.5%、および金属弗化物;2.0〜7.0%を含
有するフラックスを鋼製外皮に充填してなるマグ溶接用
フラックス入りワイヤであって、鋼製外皮と充填フラッ
クスの一方または両方においてワイヤ全重量に対して、
C;0.03〜0.09%、Si;0.2〜1.0%、
Mn;0.5〜3.0%を含有し、さらにCu;0.1
〜1.5%、Cr;0.1〜3.0%、Mo;0.1〜
2.0%、V;0.1〜0.5%、Nb;0.01〜
0.05%のうちのいずれか1種または2種以上を含有
し、さらに必要に応じてNi;0.2〜5.0%を含有
するとともに、ワイヤ中に占める各元素の重量%により
下記(1)式で定まるパラメータTが630未満である
ことを特徴とする、高速性に優れた溶接変形の少ないフ
ラックス入りワイヤにある。また上記TiO2 以外の酸
化物が、SiO2 ;0.2〜1.4%、MgO;0.1
〜2.0%を含有するものであることも特徴とする。 T=630.0−476.5C+56.0Si−19.7Mn −16.3Cu−26.6Ni−4.9Cr+38.1Mo +124.8V−19.1Nb ・・・・・(1)
ワイヤ全重量に対して重量%で(以下同じ)、TiO
2 ;2.5〜6.5%、TiO2 以外の酸化物;0.3
〜2.5%、および金属弗化物;2.0〜7.0%を含
有するフラックスを鋼製外皮に充填してなるマグ溶接用
フラックス入りワイヤであって、鋼製外皮と充填フラッ
クスの一方または両方においてワイヤ全重量に対して、
C;0.03〜0.09%、Si;0.2〜1.0%、
Mn;0.5〜3.0%を含有し、さらにCu;0.1
〜1.5%、Cr;0.1〜3.0%、Mo;0.1〜
2.0%、V;0.1〜0.5%、Nb;0.01〜
0.05%のうちのいずれか1種または2種以上を含有
し、さらに必要に応じてNi;0.2〜5.0%を含有
するとともに、ワイヤ中に占める各元素の重量%により
下記(1)式で定まるパラメータTが630未満である
ことを特徴とする、高速性に優れた溶接変形の少ないフ
ラックス入りワイヤにある。また上記TiO2 以外の酸
化物が、SiO2 ;0.2〜1.4%、MgO;0.1
〜2.0%を含有するものであることも特徴とする。 T=630.0−476.5C+56.0Si−19.7Mn −16.3Cu−26.6Ni−4.9Cr+38.1Mo +124.8V−19.1Nb ・・・・・(1)
【0012】
【作用】通常のアーク溶接法の冷却速度の範囲において
Ar3 変態点温度Tは大略(1)式によって予測可能で
ある。この式から明確なようにγフォーマであるNi,
Mn,Cu,Nb,Cを所定量添加してAr3 変態点を
低下させることが可能である。一般に変態点温度が低い
ほど変態膨張量が大きくなり、冷却時の収縮によって発
生する溶接残留変形を緩和することになることから、変
態膨張量の増大が溶接変形の低減に寄与することが考え
られる。しかし過冷オーステナイトの変態はベイナイト
組織の出現等から単純に変態膨張量と明確な対応を示さ
ず、従ってここではAr3 変態点温度に着目した。
Ar3 変態点温度Tは大略(1)式によって予測可能で
ある。この式から明確なようにγフォーマであるNi,
Mn,Cu,Nb,Cを所定量添加してAr3 変態点を
低下させることが可能である。一般に変態点温度が低い
ほど変態膨張量が大きくなり、冷却時の収縮によって発
生する溶接残留変形を緩和することになることから、変
態膨張量の増大が溶接変形の低減に寄与することが考え
られる。しかし過冷オーステナイトの変態はベイナイト
組織の出現等から単純に変態膨張量と明確な対応を示さ
ず、従ってここではAr3 変態点温度に着目した。
【0013】一方、T形すみ肉溶接継手部に発生する角
変形量は図1に示すように、溶接材料のAr3 変態点温
度と明瞭な関係があり、変態点温度が低い値であるほど
発生する角変形量が小さな値であることを見いだした。
この事実は変態点温度が低くなることにより、変態膨張
量が大きくなり、凝固に伴う収縮をある程度解消するた
めであると思われる。
変形量は図1に示すように、溶接材料のAr3 変態点温
度と明瞭な関係があり、変態点温度が低い値であるほど
発生する角変形量が小さな値であることを見いだした。
この事実は変態点温度が低くなることにより、変態膨張
量が大きくなり、凝固に伴う収縮をある程度解消するた
めであると思われる。
【0014】さらにγフォーマであるNi,Mn,Cの
成分系に加えてCu,Cr,Mo,NbおよびVの元素
を含有する場合には(1)式によって与えられる相変態
温度Tの値が後者を含まない場合と比較して若干高い値
であっても、発生する角変形量が小さいことを見いだし
た。この事実はCr,Mo,NbおよびVの元素がいず
れも変態が生じる温度で機械的強度を増加することによ
り、変形を拘束するためのものであると考えられる。溶
接変形によって例えば圧縮荷重に対する座屈強度が低下
することや、継手製作上の寸法精度等の検討から、上述
した変形矯正作業を必要としない角変形量の限界値を与
える変態点温度をCr,Mo,NbおよびVの元素添加
の影響を考慮した結果本発明の関係式(T<630)を
見い出した。
成分系に加えてCu,Cr,Mo,NbおよびVの元素
を含有する場合には(1)式によって与えられる相変態
温度Tの値が後者を含まない場合と比較して若干高い値
であっても、発生する角変形量が小さいことを見いだし
た。この事実はCr,Mo,NbおよびVの元素がいず
れも変態が生じる温度で機械的強度を増加することによ
り、変形を拘束するためのものであると考えられる。溶
接変形によって例えば圧縮荷重に対する座屈強度が低下
することや、継手製作上の寸法精度等の検討から、上述
した変形矯正作業を必要としない角変形量の限界値を与
える変態点温度をCr,Mo,NbおよびVの元素添加
の影響を考慮した結果本発明の関係式(T<630)を
見い出した。
【0015】本発明は代表的な溶接時の冷却速度から、
溶接材料に含まれる各種成分のAr3 相変態点温度Tを
(1)式によって与える。 T=630.0−476.5C+56.0Si−19.7Mn −16.3Cu−26.6Ni−4.9Cr+38.1Mo +124.8V−19.1Nb ・・・・・(1)
溶接材料に含まれる各種成分のAr3 相変態点温度Tを
(1)式によって与える。 T=630.0−476.5C+56.0Si−19.7Mn −16.3Cu−26.6Ni−4.9Cr+38.1Mo +124.8V−19.1Nb ・・・・・(1)
【0016】また溶接材料の相変態点温度と発生する角
変形量の関係を検討することから、実用的に発生する変
形量が十分に小さい値であると判断される(2)式の関
係を与えるものである。 T<630 ・・・・・・・(2)
変形量の関係を検討することから、実用的に発生する変
形量が十分に小さい値であると判断される(2)式の関
係を与えるものである。 T<630 ・・・・・・・(2)
【0017】さらに金属弗化物をワイヤ全重量に対し
2.0〜7.0%添加することにより、優れた高速溶接
性が得られると同時に、ビード形状および耐ピット性を
大幅に改善できることを見出した。以下に本発明におけ
る溶接ワイヤの成分元素の限定理由について説明する。
2.0〜7.0%添加することにより、優れた高速溶接
性が得られると同時に、ビード形状および耐ピット性を
大幅に改善できることを見出した。以下に本発明におけ
る溶接ワイヤの成分元素の限定理由について説明する。
【0018】Cは変態点低下の効果があり、強度の点か
らも0.03%以上が必要となる。しかし、過度の添加
は溶接金属部の高温割れ感受性の増大と靱性低下につな
がるために、上限を0.09%とする。
らも0.03%以上が必要となる。しかし、過度の添加
は溶接金属部の高温割れ感受性の増大と靱性低下につな
がるために、上限を0.09%とする。
【0019】Siは脱酸剤として使用し、溶接金属中の
酸素量を低減するとともにビード形状を改善する効果が
あり、0.2%未満では脱酸不足で溶接金属中にブロー
ホール等の溶接欠陥が発生し、1.0%を超えるとフェ
ライトを固溶硬化させ溶接金属の靱性を低下させるの
で、Siの範囲は0.2〜1.0%とする。
酸素量を低減するとともにビード形状を改善する効果が
あり、0.2%未満では脱酸不足で溶接金属中にブロー
ホール等の溶接欠陥が発生し、1.0%を超えるとフェ
ライトを固溶硬化させ溶接金属の靱性を低下させるの
で、Siの範囲は0.2〜1.0%とする。
【0020】MnはSi同様脱酸剤であり、溶接金属の
流動性改善、溶接金属強度および衝撃靱性向上に効果が
あるとともに変態点を低下させる効果もある。0.5%
未満では脱酸不足となり溶接部にブローホール等の溶接
欠陥が発生し易くなるとともに変態点低下の効果が得ら
れず、逆に3.0%を超えると溶接金属の強度が高く、
高温割れ感受性が増加し衝撃靱性が低下する。
流動性改善、溶接金属強度および衝撃靱性向上に効果が
あるとともに変態点を低下させる効果もある。0.5%
未満では脱酸不足となり溶接部にブローホール等の溶接
欠陥が発生し易くなるとともに変態点低下の効果が得ら
れず、逆に3.0%を超えると溶接金属の強度が高く、
高温割れ感受性が増加し衝撃靱性が低下する。
【0021】Cuも変態点を低下させる効果と固溶強化
により強度上昇に有効な元素であるため、0.1%以上
添加する必要があるが、1.5%を超えると溶接金属の
衝撃靱性を低下させるともに溶接性を損なうため、上限
を1.5%とした。
により強度上昇に有効な元素であるため、0.1%以上
添加する必要があるが、1.5%を超えると溶接金属の
衝撃靱性を低下させるともに溶接性を損なうため、上限
を1.5%とした。
【0022】CrはCuと同様に固溶強化により強度上
昇に有効な元素であるため、0.1%以上添加するが、
過度の添加は、溶接金属強度が高くなり衝撃靱性を劣化
させ、さらに溶接性を損なうため、上限を3.0%とし
た。
昇に有効な元素であるため、0.1%以上添加するが、
過度の添加は、溶接金属強度が高くなり衝撃靱性を劣化
させ、さらに溶接性を損なうため、上限を3.0%とし
た。
【0023】Moは溶接金属の降伏応力を高め、溶接時
に発生する溶接角変形の抑制に大きな効果をもたらす元
素である。そのため、0.1%未満の添加量では溶接金
属への析出強化が不十分でこの効果が得られず、逆に
2.0%を超えると、過度に降伏応力が高くなりすぎ溶
接角変形の抑制には逆に不利となるため、2.0%以下
にする。
に発生する溶接角変形の抑制に大きな効果をもたらす元
素である。そのため、0.1%未満の添加量では溶接金
属への析出強化が不十分でこの効果が得られず、逆に
2.0%を超えると、過度に降伏応力が高くなりすぎ溶
接角変形の抑制には逆に不利となるため、2.0%以下
にする。
【0024】Vは析出硬化により強度の上昇に有効であ
り、溶接歪抑制効果を高める働きをするため0.1%以
上添加するが、過度の添加は常温での強度上昇によって
靱性を損なうことになるため、上限を0.5%とした。
り、溶接歪抑制効果を高める働きをするため0.1%以
上添加するが、過度の添加は常温での強度上昇によって
靱性を損なうことになるため、上限を0.5%とした。
【0025】NbについてもMo同様、析出により降伏
応力を高め、溶接時に発生する溶接角変形の抑制に大き
な効果をもたらす元素である。0.01%未満の添加量
では析出強化量が不足するため、0.01%以上添加す
るが、過度の添加は特に室温における降伏応力が高くな
りすぎ溶接角変形の抑制には逆効果となり、さらには強
度上昇による靱性劣化を招くため、上限を0.05%と
する必要がある。
応力を高め、溶接時に発生する溶接角変形の抑制に大き
な効果をもたらす元素である。0.01%未満の添加量
では析出強化量が不足するため、0.01%以上添加す
るが、過度の添加は特に室温における降伏応力が高くな
りすぎ溶接角変形の抑制には逆効果となり、さらには強
度上昇による靱性劣化を招くため、上限を0.05%と
する必要がある。
【0026】Niは代表的なγフォーマであり、変態点
を低下させる効果が大きい元素である。0.2%未満で
はその効果が得られず、5.0%を超えると溶接金属強
度が過度に高くなり衝撃靱性を低下させるとともに、溶
接材料のコスト上昇に加えて、海洋構造物等では海水に
よる局部腐食が発生し、溶接継手に悪影響を与える。し
たがって、Ni添加量は0.2〜5.0%に限定する必
要がある。
を低下させる効果が大きい元素である。0.2%未満で
はその効果が得られず、5.0%を超えると溶接金属強
度が過度に高くなり衝撃靱性を低下させるとともに、溶
接材料のコスト上昇に加えて、海洋構造物等では海水に
よる局部腐食が発生し、溶接継手に悪影響を与える。し
たがって、Ni添加量は0.2〜5.0%に限定する必
要がある。
【0027】なお、上記元素の添加方法は外皮、フラッ
クスの一方または両方に添加してもよい。以上が溶接時
に発生する角変形量を低減させる手段であるが、本発明
者らはさらに溶接時の浅溶込みとスパッタ量低減および
良好なビード形状、さらには優れた高速溶接性を得るた
めにスラグ剤成分についても検討した。本発明では上記
検討結果を踏まえ、各成分の添加量を下記の様に限定し
た。
クスの一方または両方に添加してもよい。以上が溶接時
に発生する角変形量を低減させる手段であるが、本発明
者らはさらに溶接時の浅溶込みとスパッタ量低減および
良好なビード形状、さらには優れた高速溶接性を得るた
めにスラグ剤成分についても検討した。本発明では上記
検討結果を踏まえ、各成分の添加量を下記の様に限定し
た。
【0028】TiO2 は、アーク安定性およびスラグ被
包性を高めるうえでも不可欠な成分であり、2.5%未
満ではその効果が得られない。逆に6.5%を超えると
スラグの粘性が高くなりすぎてビード形状が悪化し、大
型の非金属介在物が増加するためミクロ組織が微細化さ
れず機械的性能、特に衝撃靱性が低下するので、TiO
2 は2.5〜6.5%に限定する。
包性を高めるうえでも不可欠な成分であり、2.5%未
満ではその効果が得られない。逆に6.5%を超えると
スラグの粘性が高くなりすぎてビード形状が悪化し、大
型の非金属介在物が増加するためミクロ組織が微細化さ
れず機械的性能、特に衝撃靱性が低下するので、TiO
2 は2.5〜6.5%に限定する。
【0029】TiO2 以外の酸化物としては、SiO
2 、ZrO2 、Al2 O3 、MnO、MgO、FeOお
よびFe2 O3 等を示すが、これらはスラグの粘性を調
整するとともにビード形状を良くし、全姿勢溶接性を良
好にする効果がある。0.3%未満ではこれらの効果が
有効に発揮されず、逆に2.5%を超えるとスラグ量が
増大し、スラグ巻き込み等の溶接欠陥を生じたり溶接効
率が低下したりするので、TiO2 以外の酸化物は0.
3〜2.5%に限定する必要がある。
2 、ZrO2 、Al2 O3 、MnO、MgO、FeOお
よびFe2 O3 等を示すが、これらはスラグの粘性を調
整するとともにビード形状を良くし、全姿勢溶接性を良
好にする効果がある。0.3%未満ではこれらの効果が
有効に発揮されず、逆に2.5%を超えるとスラグ量が
増大し、スラグ巻き込み等の溶接欠陥を生じたり溶接効
率が低下したりするので、TiO2 以外の酸化物は0.
3〜2.5%に限定する必要がある。
【0030】上記のTiO2 以外の酸化物のうち特にS
iO2 は、TiO2 と同様にアークの安定性およびスラ
グの被包性を高める上で有効な成分であり、0.2%以
上添加するのが好ましい。一方、1.4%を超えると安
定した溶接ビードが形成されず、溶接部の耐割れ性が劣
化するので、1.4%以下にするのが好ましい。
iO2 は、TiO2 と同様にアークの安定性およびスラ
グの被包性を高める上で有効な成分であり、0.2%以
上添加するのが好ましい。一方、1.4%を超えると安
定した溶接ビードが形成されず、溶接部の耐割れ性が劣
化するので、1.4%以下にするのが好ましい。
【0031】また、同じくTiO2 以外の酸化物のうち
特にMgOは、スラグ粘性を調整するとともにビード形
状を良くし、優れた全姿勢溶接性を得るために効果があ
る元素である。0.1%未満ではこの効果が有効に発揮
されず、逆に2.0%を超えると、スラグの被包性が急
激に低下しビード形状が凸形となると同時に、スラグ巻
き込み等の溶接欠陥を生じたりして溶接効率を低下させ
るので、MgOは0.1〜2.0%にするのが好まし
い。
特にMgOは、スラグ粘性を調整するとともにビード形
状を良くし、優れた全姿勢溶接性を得るために効果があ
る元素である。0.1%未満ではこの効果が有効に発揮
されず、逆に2.0%を超えると、スラグの被包性が急
激に低下しビード形状が凸形となると同時に、スラグ巻
き込み等の溶接欠陥を生じたりして溶接効率を低下させ
るので、MgOは0.1〜2.0%にするのが好まし
い。
【0032】金属弗化物は、スラグ剤として溶融金属を
被包し、ビード形状を良好にするとともに溶融金属から
のスラグ浮上分離を促し、溶接金属中の酸素量を低下さ
せて良好な機械的性能を得、さらに高速溶接時の耐ピッ
ト性改善にも有効である。この金属弗化物としては、C
aF2 、BaF2 、MgF2 、NaF、MnF2 、K2
SiF6 、SrF2 等が有効であり、アルカリ金属弗化
物を使用する場合には、アークの安定性も向上させる。
そこで、2.0%未満では上記効果が得られず、また
7.0%を超えるとスラグ流動性が過剰となりビード形
状が劣化するので、金属弗化物は2.0〜7.0%とし
た。なお、溶接金属の衝撃靱性向上およびX線性能を確
保するためにも、金属弗化物を2.0〜7.0%添加す
る必要がある。
被包し、ビード形状を良好にするとともに溶融金属から
のスラグ浮上分離を促し、溶接金属中の酸素量を低下さ
せて良好な機械的性能を得、さらに高速溶接時の耐ピッ
ト性改善にも有効である。この金属弗化物としては、C
aF2 、BaF2 、MgF2 、NaF、MnF2 、K2
SiF6 、SrF2 等が有効であり、アルカリ金属弗化
物を使用する場合には、アークの安定性も向上させる。
そこで、2.0%未満では上記効果が得られず、また
7.0%を超えるとスラグ流動性が過剰となりビード形
状が劣化するので、金属弗化物は2.0〜7.0%とし
た。なお、溶接金属の衝撃靱性向上およびX線性能を確
保するためにも、金属弗化物を2.0〜7.0%添加す
る必要がある。
【0033】以上が必須成分であるが、この他にも溶接
能率向上を目的として鉄粉を、アーク安定剤としてはア
ーク中で分離し易い物質、たとえばLi、Na、K、C
a、SrおよびBa等の酸化物、弗化物および炭酸塩等
を必要に応じて添加することができる。
能率向上を目的として鉄粉を、アーク安定剤としてはア
ーク中で分離し易い物質、たとえばLi、Na、K、C
a、SrおよびBa等の酸化物、弗化物および炭酸塩等
を必要に応じて添加することができる。
【0034】さらに、本発明に係わるワイヤのフラック
ス充填率は8〜20%とすることが望ましい。その理由
は、充填率が20%を超えると伸線時に断線トラブルが
多発し生産性が悪くなるからであり、また8%より少な
くなるとアークの安定性が損なわれるからである。なお
ワイヤの断面形状にはなんらの制限もなく2mm以下の
細径の場合は比較的単純な円筒状のものが一般的であ
る。また、シームレスワイヤにおいては表面にCu等の
メッキ処理を施すことも有効である。
ス充填率は8〜20%とすることが望ましい。その理由
は、充填率が20%を超えると伸線時に断線トラブルが
多発し生産性が悪くなるからであり、また8%より少な
くなるとアークの安定性が損なわれるからである。なお
ワイヤの断面形状にはなんらの制限もなく2mm以下の
細径の場合は比較的単純な円筒状のものが一般的であ
る。また、シームレスワイヤにおいては表面にCu等の
メッキ処理を施すことも有効である。
【0035】
実施例1 表1に実施例ワイヤのフラックス組成と(1)式で計算
されるAr3 点(T値)を示す。ワイヤ径はいずれも
1.0mmで鋼板は表2に示すJIS G3106のS
M400Bを用いた。この鋼板を図2に示すT形すみ肉
溶接試験体を製作するために、表3に示す溶接条件で両
側1パス溶接した。なお図中1,2はすみ肉溶接される
母材を、3(2個所)は拘束部分を、4(4個所)は仮
付溶接部分を示す。
されるAr3 点(T値)を示す。ワイヤ径はいずれも
1.0mmで鋼板は表2に示すJIS G3106のS
M400Bを用いた。この鋼板を図2に示すT形すみ肉
溶接試験体を製作するために、表3に示す溶接条件で両
側1パス溶接した。なお図中1,2はすみ肉溶接される
母材を、3(2個所)は拘束部分を、4(4個所)は仮
付溶接部分を示す。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
【表3】
【0039】溶接終了後、角変形量δを測定した。その
後、溶接金属の縦断面を観察し溶接金属の割れの有無お
よびビード形状を判定した。総合評価として、角変形量
δの大きさが図3に示されるwとdの値を用いて(3)
式で計算されるδの値が1.2×10-2rad未満でか
つ割れの発生が見られないこと、およびビード形状の優
れているものを合格、それ以外はすべて不合格とした。 δ=0.5sin-1(2d/w) ・・・・・・・(3)
後、溶接金属の縦断面を観察し溶接金属の割れの有無お
よびビード形状を判定した。総合評価として、角変形量
δの大きさが図3に示されるwとdの値を用いて(3)
式で計算されるδの値が1.2×10-2rad未満でか
つ割れの発生が見られないこと、およびビード形状の優
れているものを合格、それ以外はすべて不合格とした。 δ=0.5sin-1(2d/w) ・・・・・・・(3)
【0040】表4に試験結果を示す。表4で明らかなよ
うに、本発明ワイヤを用いて高速溶接した溶接継手は、
すべて角変形量が少なく、割れの発生も無く、かつビー
ド形状も良好であるのに対して、比較ワイヤでは種々の
問題が発生している。
うに、本発明ワイヤを用いて高速溶接した溶接継手は、
すべて角変形量が少なく、割れの発生も無く、かつビー
ド形状も良好であるのに対して、比較ワイヤでは種々の
問題が発生している。
【0041】
【表4】
【0042】まず、比較ワイヤ7は、本発明範囲を超え
るCが0.11%含有されているため、角変形量は小さ
いものの溶接金属に割れが発生している。比較ワイヤ8
は、角変形量は1.06×10-2radと小さいもの
の、高速溶接時のビード形状を改善するためのスラグ成
分のうち、本発明範囲を超えるTiO2 が7.0%含有
され、かつ金属弗化物が1.5%と少ないため、スラグ
の粘性が高くなり、高速溶接においてビード形状が劣化
した。
るCが0.11%含有されているため、角変形量は小さ
いものの溶接金属に割れが発生している。比較ワイヤ8
は、角変形量は1.06×10-2radと小さいもの
の、高速溶接時のビード形状を改善するためのスラグ成
分のうち、本発明範囲を超えるTiO2 が7.0%含有
され、かつ金属弗化物が1.5%と少ないため、スラグ
の粘性が高くなり、高速溶接においてビード形状が劣化
した。
【0043】比較ワイヤ9は、Nbが本発明範囲を超え
る0.07%含有されているため、比較ワイヤ7同様に
溶接金属が硬化し割れが発生している。比較ワイヤ10
は、金属弗化物を本発明範囲を超える7.8%含有して
おり、かつTiO2 以外の酸化物が0.2%と少ないた
め、スラグの粘性および被包性が著しく低下し、溶接作
業性が極端に劣化し、かつビード形状が不良となってい
る。
る0.07%含有されているため、比較ワイヤ7同様に
溶接金属が硬化し割れが発生している。比較ワイヤ10
は、金属弗化物を本発明範囲を超える7.8%含有して
おり、かつTiO2 以外の酸化物が0.2%と少ないた
め、スラグの粘性および被包性が著しく低下し、溶接作
業性が極端に劣化し、かつビード形状が不良となってい
る。
【0044】比較ワイヤ11は、Moが本発明範囲を超
える2.5%含有されるとともに、パラメーターT値が
643と高くなっているため、溶接金属が著しく硬くな
り、割れを発生させるとともに角変形量が1.69×1
0-2radと大きくなっている。比較ワイヤ12は、T
iO2 が2.0%と少ないためアークが不安定となり、
かつTiO2 以外の酸化物も1.1%と少ないため、ス
ラグ量が不足しビード形状が不良となった。
える2.5%含有されるとともに、パラメーターT値が
643と高くなっているため、溶接金属が著しく硬くな
り、割れを発生させるとともに角変形量が1.69×1
0-2radと大きくなっている。比較ワイヤ12は、T
iO2 が2.0%と少ないためアークが不安定となり、
かつTiO2 以外の酸化物も1.1%と少ないため、ス
ラグ量が不足しビード形状が不良となった。
【0045】なお、本実験ではSM400B材を用いた
が、母材希釈は小さいので鋼板の種類が変わっても、本
ワイヤの角変形量の低減効果は失われるものではない。
さらに、シールドガス組成についてもAr−CO2 混合
ガスに変更して使用しても本発明に係わるワイヤの場合
は、なんら性能に影響することなく角変形量は良好な性
能が得られる。
が、母材希釈は小さいので鋼板の種類が変わっても、本
ワイヤの角変形量の低減効果は失われるものではない。
さらに、シールドガス組成についてもAr−CO2 混合
ガスに変更して使用しても本発明に係わるワイヤの場合
は、なんら性能に影響することなく角変形量は良好な性
能が得られる。
【0046】実施例2 表5に実施例ワイヤのフラックス組成と(1)式で計算
されるAr3 点(T値)を示す。ワイヤ径はいずれも
1.0mmで鋼板は表2に示すJIS G3106のS
M400Bを用いた。この鋼板を図2に示すT形すみ肉
溶接試験体を製作するために、表3に示す溶接条件で両
側1パス溶接した。なお図中1,2はすみ肉溶接される
母材を、3(2個所)は拘束部分を、4(4個所)は仮
付溶接部分を示す。
されるAr3 点(T値)を示す。ワイヤ径はいずれも
1.0mmで鋼板は表2に示すJIS G3106のS
M400Bを用いた。この鋼板を図2に示すT形すみ肉
溶接試験体を製作するために、表3に示す溶接条件で両
側1パス溶接した。なお図中1,2はすみ肉溶接される
母材を、3(2個所)は拘束部分を、4(4個所)は仮
付溶接部分を示す。
【0047】
【表5】
【0048】溶接終了後、角変形量δを測定した。その
後、溶接金属の縦断面を観察し溶接金属の割れの有無お
よびビード形状を実施例1と同様に判定した。表6に試
験結果を示す。表6で明らかなように、本発明ワイヤを
用いて高速溶接した溶接継手はすべて角変形量が少な
く、割れ発生も無く、かつビード形状も良好であるのに
対して、比較ワイヤでは種々の問題が発生している。
後、溶接金属の縦断面を観察し溶接金属の割れの有無お
よびビード形状を実施例1と同様に判定した。表6に試
験結果を示す。表6で明らかなように、本発明ワイヤを
用いて高速溶接した溶接継手はすべて角変形量が少な
く、割れ発生も無く、かつビード形状も良好であるのに
対して、比較ワイヤでは種々の問題が発生している。
【0049】
【表6】
【0050】まず、比較ワイヤ19は高速溶接時のビー
ド形状を改善するためのスラグ成分のうち、SiO2 お
よびMgOが添加されていないため、スラグの粘性が高
くなりビード形状が劣化し、この点で好ましくない。比
較ワイヤ20はパラメータT値は568と小さくなって
いるが、Cが本発明範囲を超える0.11%含有され、
かつ金属弗化物が1.5%と少ないため、溶接金属が著
しく硬化しビード形状も劣化した。
ド形状を改善するためのスラグ成分のうち、SiO2 お
よびMgOが添加されていないため、スラグの粘性が高
くなりビード形状が劣化し、この点で好ましくない。比
較ワイヤ20はパラメータT値は568と小さくなって
いるが、Cが本発明範囲を超える0.11%含有され、
かつ金属弗化物が1.5%と少ないため、溶接金属が著
しく硬化しビード形状も劣化した。
【0051】比較ワイヤ21は高速溶接時のビード形状
を改善するためのスラグ成分のうち、TiO2 が添加さ
れていないため、アークが不安定となりスパッタが発生
し溶接作業性が著しく劣化した。比較ワイヤ22は本発
明が1種または2種以上の添加を規定しているNi、C
u、Cr、Mo、V、Nbがいずれも添加されていない
ため、パラメータT値は589と小さいものの、相変態
温度での機械的強度が低下し角変形量が増大した。
を改善するためのスラグ成分のうち、TiO2 が添加さ
れていないため、アークが不安定となりスパッタが発生
し溶接作業性が著しく劣化した。比較ワイヤ22は本発
明が1種または2種以上の添加を規定しているNi、C
u、Cr、Mo、V、Nbがいずれも添加されていない
ため、パラメータT値は589と小さいものの、相変態
温度での機械的強度が低下し角変形量が増大した。
【0052】比較ワイヤ23は、高速溶接時のビード形
状を改善するためのスラグ成分のうち、SiO2 が添加
されておらず、かつ金属弗化物を本発明範囲を超える
7.8%含有しているため、ビード形状が劣化した。ま
た、パラメータT値も647と本発明範囲を超えている
ため、角変形量が1.70×10-2radと大きくなる
と同時に、溶接金属が硬化し割れが発生した。比較ワイ
ヤ24は、高速溶接時のビード形状を改善するためのス
ラグ成分のうち、MgOが本発明範囲を超える2.5%
添加されているため、スラグの被包性が著しく低下し、
ビード形状が凸になるとともに、スラグ巻き込みが発生
した。
状を改善するためのスラグ成分のうち、SiO2 が添加
されておらず、かつ金属弗化物を本発明範囲を超える
7.8%含有しているため、ビード形状が劣化した。ま
た、パラメータT値も647と本発明範囲を超えている
ため、角変形量が1.70×10-2radと大きくなる
と同時に、溶接金属が硬化し割れが発生した。比較ワイ
ヤ24は、高速溶接時のビード形状を改善するためのス
ラグ成分のうち、MgOが本発明範囲を超える2.5%
添加されているため、スラグの被包性が著しく低下し、
ビード形状が凸になるとともに、スラグ巻き込みが発生
した。
【0053】なお、本実験ではSM400B材を用いた
が、母材希釈は小さいので鋼板の種類が変わっても、本
ワイヤの角変形量の低減効果は失われるものではない。
さらに、シールドガス組成についてもAr−CO2 混合
ガスに変更して使用しても本発明に係わるワイヤの場合
は、なんら性能に影響することなく角変形量は良好な性
能が得られる。
が、母材希釈は小さいので鋼板の種類が変わっても、本
ワイヤの角変形量の低減効果は失われるものではない。
さらに、シールドガス組成についてもAr−CO2 混合
ガスに変更して使用しても本発明に係わるワイヤの場合
は、なんら性能に影響することなく角変形量は良好な性
能が得られる。
【0054】
【発明の効果】以上のように、本発明の組成範囲にある
溶接ワイヤであれば、溶接作業性が良好で高速溶接時の
耐ピット性に優れていることはもちろん、溶接時に発生
する溶接角変形が少なく、歪取り作業を軽減もしくは省
略できる溶接材料であって、建築、土木分野をはじめ各
種溶接分野での適用範囲拡大に寄与するものである。
溶接ワイヤであれば、溶接作業性が良好で高速溶接時の
耐ピット性に優れていることはもちろん、溶接時に発生
する溶接角変形が少なく、歪取り作業を軽減もしくは省
略できる溶接材料であって、建築、土木分野をはじめ各
種溶接分野での適用範囲拡大に寄与するものである。
【図1】変態点温度と角変形量の関係を示すグラフ
【図2】T字すみ肉溶接継手の概略を示す図
【図3】角変形量δの定義を説明する図
1、2 母材 3 拘束部分 4 仮付溶接部分
Claims (3)
- 【請求項1】 ワイヤ全重量に対して重量%で、TiO
2 ;2.5〜6.5%、TiO2 以外の酸化物;0.3
〜2.5%、および金属弗化物;2.0〜7.0%を含
有するフラックスを鋼製外皮に充填してなるマグ溶接用
フラックス入りワイヤであって、鋼製外皮と充填フラッ
クスの一方または両方においてワイヤ全重量に対して、 C ;0.03〜0.09% Si;0.2〜1.0% Mn;0.5〜3.0% を含有し、さらに、 Cu;0.1〜1.5% Cr;0.1〜3.0% Mo;0.1〜2.0% V ;0.1〜0.5% Nb;0.01〜0.05% のうちのいずれか1種または2種以上を含有し、かつワ
イヤ中に占める各元素の重量%により下記(1)式で定
まるパラメータTが630未満であることを特徴とす
る、高速性に優れた溶接変形の少ないフラックス入りワ
イヤ。 T=630.0−476.5C+56.0Si−19.7Mn −16.3Cu−26.6Ni−4.9Cr+38.1Mo +124.8V−19.1Nb ・・・・・(1) - 【請求項2】 ワイヤ全重量に対してさらに、 Ni;0.2〜5.0% を含有することを特徴とする、請求項1記載の高速性に
優れた溶接変形の少ないフラックス入りワイヤ。 - 【請求項3】 TiO2 以外の酸化物がワイヤ全重量に
対して、 SiO2 ;0.2〜1.4% MgO ;0.1〜2.0% を含有するものであることを特徴とする、請求項1また
は2記載の高速性に優れた溶接変形の少ないフラックス
入りワイヤ。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP27426394A JPH081378A (ja) | 1994-04-22 | 1994-10-14 | 高速性に優れた溶接変形の少ないフラックス入りワイヤ |
Applications Claiming Priority (3)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP6-106288 | 1994-04-22 | ||
JP10628894 | 1994-04-22 | ||
JP27426394A JPH081378A (ja) | 1994-04-22 | 1994-10-14 | 高速性に優れた溶接変形の少ないフラックス入りワイヤ |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH081378A true JPH081378A (ja) | 1996-01-09 |
Family
ID=26446406
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP27426394A Pending JPH081378A (ja) | 1994-04-22 | 1994-10-14 | 高速性に優れた溶接変形の少ないフラックス入りワイヤ |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH081378A (ja) |
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2006198630A (ja) * | 2005-01-18 | 2006-08-03 | Nippon Steel & Sumikin Welding Co Ltd | 高張力鋼溶接用フラックス入りワイヤ |
JP2010194571A (ja) * | 2009-02-25 | 2010-09-09 | Nippon Steel & Sumikin Welding Co Ltd | 2電極水平すみ肉ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ |
JP2012139699A (ja) * | 2010-12-28 | 2012-07-26 | Kobe Steel Ltd | サブマージアーク溶接用フラックス入りワイヤ |
JP2019171457A (ja) * | 2018-03-29 | 2019-10-10 | 株式会社神戸製鋼所 | 高速溶接用フラックス入りワイヤ及び高速アーク溶接方法 |
-
1994
- 1994-10-14 JP JP27426394A patent/JPH081378A/ja active Pending
Cited By (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2006198630A (ja) * | 2005-01-18 | 2006-08-03 | Nippon Steel & Sumikin Welding Co Ltd | 高張力鋼溶接用フラックス入りワイヤ |
JP4509807B2 (ja) * | 2005-01-18 | 2010-07-21 | 日鐵住金溶接工業株式会社 | 高張力鋼溶接用フラックス入りワイヤ |
JP2010194571A (ja) * | 2009-02-25 | 2010-09-09 | Nippon Steel & Sumikin Welding Co Ltd | 2電極水平すみ肉ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ |
JP2012139699A (ja) * | 2010-12-28 | 2012-07-26 | Kobe Steel Ltd | サブマージアーク溶接用フラックス入りワイヤ |
JP2019171457A (ja) * | 2018-03-29 | 2019-10-10 | 株式会社神戸製鋼所 | 高速溶接用フラックス入りワイヤ及び高速アーク溶接方法 |
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Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20030701 |