JPH08197283A - 溶接変形の少ない高靱性溶接部が得られるマグ溶接用フラックス入りワイヤ - Google Patents

溶接変形の少ない高靱性溶接部が得られるマグ溶接用フラックス入りワイヤ

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JPH08197283A
JPH08197283A JP850795A JP850795A JPH08197283A JP H08197283 A JPH08197283 A JP H08197283A JP 850795 A JP850795 A JP 850795A JP 850795 A JP850795 A JP 850795A JP H08197283 A JPH08197283 A JP H08197283A
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welding
wire
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metal
flux
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JP850795A
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Ryuichi Shimura
竜一 志村
Kazushi Suda
一師 須田
Tsukasa Yoshimura
司 吉村
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Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel Corp
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【目的】溶接時に発生する角変形量を低減できると共
に、耐ピット性に優れ、かつ得られる溶接部については
低温域で高い衝撃靱性の確保ができ、さらに溶接後の仕
上がりビード形状および外観が良好なマグ溶接用フラッ
クス入りワイヤを提供。 【構成】鋼製外皮と充填フラックスの一方または両方に
おいてワイヤ全重量に対して、C,Si,Mnを規制
し、さらにCu,Cr,Mo,V,Nbのうちいずれか
1種または2種以上を含有し、必要に応じNiを添加
し、適量の金属弗化物に対し一定比率の下に金属炭酸塩
および金属酸化物を含有し、かつワイヤ中に占める各元
素の重量%により特定式で定まるパラメータの値が一定
値未満であることを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は建築、土木、海洋構造
物、造船等で用いられる鋼材用の溶接材料に係わり、さ
らに詳しくは、溶接による角変形が少なく、歪取り作業
を軽減もしくは省略することが可能で、かつ良好な溶接
作業性、特に耐ピット性に優れ、溶接変形が少なく、低
温域での高い衝撃靱性特性を有する溶接部が得られるマ
グ溶接用フラックス入りワイヤに関するものである。
【0002】
【従来の技術】各種鋼構造物を溶接する場合、溶融金属
の凝固収縮およびその後の冷却と相変態による収縮・膨
張によって、例えばすみ肉溶接の継手形状の場合には角
変形と呼ばれる面外変形が発生する。このような残留変
形は、例えば圧縮荷重が負荷させる場合には挫屈強度の
低下を生じるといった構造強度の低下の原因となる。ま
た、この変形を拘束治具によって強制的に防止しようと
すると、過大な残留応力が発生することとなる。さら
に、寸法精度が不十分となり製作上の不都合を生じ、美
観をも損ねることとなる。
【0003】そこで、例えば溶接学会誌1983年第5
2巻第4〜9号に記載されている「溶接変形の発生とそ
の防止」に見られるように、溶接時に発生した残留変形
を局所的な加熱により矯正する手法が経験的に多数提案
されている。しかし、溶接部の再加熱によって材質が劣
化することは避けられず、矯正作業に要する時間と費用
は実用上重大な障害となっており、これを軽減もしくは
省略することが可能な溶接材料の開発が望まれていた。
【0004】さらに、溶接部における残留応力や変形の
発生機構に関しては佐藤による「溶接構造要覧」198
8(黒木出版)やK.Masubuchiの「Anal
ysis of Welded Structure
s」1980,PERGAMON PRESSに記載さ
れているが、溶接変形は主として溶接時の入熱に対する
部材の幾何学的形状によって決定されるもので、鋼構造
物溶接部の相変態温度が、残留応力や変形に影響を与え
る因子であることも明記されてはいるが、鋼構造物を対
象とした溶接材料で具体的な影響度の定量化やワイヤ成
分に関する検討はなされていない。
【0005】また、相変態の超塑性現象に着目して、残
留応力の緩和や変形低減を検討した結果が溶接学会全国
大会講演概要第37集p.314〜315、第38集
p.78〜79および第39集p.338〜341で報
告されている。しかし、これらはいずれも低合金鋼およ
びステンレス鋼のマルテンサイト変態温度に着目したも
のであり、3.5〜12%のNiを含有し、軟鋼および
50キロ級高張力鋼にみられる普通鋼材の成分および組
織に対してそのまま適用できる知見ではなく、このよう
に高いNiを含有している場合には、溶接材料費が高く
なり、歪取り作業が省略可能であっても経済的知見から
実用的なものではない。さらに、これを造船および海洋
構造物の普通鋼および低合金鋼に適用する場合には、溶
接金属部が電気的に過度な貴になり、溶接熱影響部にお
ける選択的な腐食現象が発生して不都合が生じる。
【0006】溶接変形に及ぼす最大の影響因子は、鋼材
板厚に対する溶接入熱量であり、続いて溶接金属の相変
態温度がある。これらに加えて変形が発生する温度にお
いて、その変形に抗する材料の強度を挙げることができ
る。相変態温度は、大略400〜700℃の範囲であ
り、この温度域における強度をCr,Mo,V,Nb等
の元素添加によって増大させることによって変形量を低
減させ得ることが、例えばCr−Mo鋼の高温強度の知
見から推測できる。しかし、溶接金属部の変態点温度に
おける高温強度を確保する検討は従来なされておらず、
さらにこれらの添加元素は上述した変態点温度を上昇し
て溶接変形を増大させる傾向のものであるために、適正
添加量は容易に決定できるものではなかった。
【0007】また、これらを解決する方法として、特開
平4−22596号および特開平4−22597号公報
に、「ガスシールドアーク溶接方法」が提案されている
が、適用されている溶接材料はソリッドワイヤであり、
このソリッドワイヤで溶接した場合、ビードの溶込みが
深く溶接角変形を減少させることは難しい。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】このように、溶接部材
・形状や溶接入熱量が与えられたものとして、溶接材料
の相変態点温度が溶接時に発生する変形量に及ぼす影響
を定量化して、溶接材料成分の設計指針を与えることが
有効であると考えられる。本発明は、鋼構造物に最も汎
用的に使用される普通鋼材並びに低合金鋼材の溶接継手
を対象として、溶接材料のAr3 変態点温度に着目し、
T形すみ肉溶接時に発生する角変形量を例にして、Ar
3 変態温度と角変形量の関係を検討することにより、発
生する角変形量の少ない溶接材料を具体的に提供するも
のである。またさらに、溶接後の仕上がりビード形状お
よび耐ピット性を改善すると共に、優れた衝撃靱性特性
を有する溶接部が得られる溶接材料を提供することを目
的とする。
【0009】なお、変形量の尺度の一つとして角変形量
を取り上げたものであって、適用を角変形に限定するも
のではなく、例えば溶接部材の回転変形、収縮変形、膨
張変形等の低減にも適用できる。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、さらに実
験を重ねた結果、ソリッドワイヤでは溶接時の溶込みが
深いが、それに比べフラックス入りワイヤは溶込みが浅
くなることで溶接変形量を少なくできることやスラグ剤
成分を含んでいるため低温域で衝撃靱性の優れた溶接部
が得られると共に溶接時のピット発生防止に有効である
ことを見出した。
【0011】すなわち、本発明の要旨とするところは、
ワイヤ全重量に対して重量%(以下同じ)で、金属弗化
物を2.0〜7.5%、金属酸化物を金属弗化物の1/
3〜1/20、金属炭酸塩を金属弗化物の1/3〜1/
15含有したフラックスを鋼製外皮に充填してなるマグ
溶接用フラックス入りワイヤであって、鋼製外皮とフラ
ックスの一方または両方においてワイヤ全重量に対し
て、C;0.03〜0.09%、Si;0.2〜1.0
%、Mn;0.5〜3.0%を含有し、さらにCu;
0.1〜1.5%、Cr;0.1〜3.0%、Mo;
0.1〜2.0%、V;0.1〜0.5%、Nb;0.
01〜0.05%のうちのいずれか1種または2種以上
を含有し、さらに必要に応じてNi;0.2〜5.0%
を含有すると共に、ワイヤ中に占める各元素の重量%に
より下記(1)式で定まるパラメータTが630未満で
あることを特徴とする溶接変形の少ない高靱性溶接部が
得られるマグ溶接用フクラッス入りワイヤにある。
【0012】 T=630−476.5C+56.0Si−19.7Mn −16.3Cu−26.6Ni−4.9Cr+38.1Mo +124.8V−19.1Nb ……(1)
【0013】
【作用】通常のアーク溶接法の冷却速度の範囲において
Ar3 変態点温度Tは大略(1)式によって予測可能で
ある。この式から明確なようにγ相形成元素であるN
i,Mn,Cu,NbおよびCを所定量添加してAr3
変態点を低下させることが可能である。一般に変態点温
度が低いほど変態膨張量が大きくなり、冷却時の収縮に
よって発生する溶接残留変形を緩和することになること
から、変態膨張量の増大が溶接変形の低減に寄与するこ
とが考えられる。しかし、過冷オーステナイトの変態
は、ベイナイト組織の出現等から単純に変態膨張量と明
確な対応を示さず、したがってここでは、Ar3 変態点
温度に着目した。
【0014】一方、T形すみ肉溶接継手部に発生する角
変形量は図1に示すように、溶接材料のAr3 変態点温
度と明瞭な関係があり、変態点温度が低い値であるほど
発生する角変形量が小さな値であることを見出した。こ
の事実は、変態点温度が低くなることにより、変態膨張
量が大きくなり、凝固に伴う収縮をある程度解消するた
めであると思われる。
【0015】さらに、γ相形成元素であるNi,Mnお
よびCの成分系に加えてCu,Cr,Mo,Nbおよび
Vの元素を含有する場合には(1)式によって与えられ
る相変態温度Tの値が後者を含まない場合と比較して若
干高い値であっても、発生する角変形量が小さいことを
見出した。この事実は、Cr,Mo,NbおよびVの元
素がいずれも変態が生じる温度で機械的強度を増加する
ことにより、変形を拘束するためのものであると考えら
れる。溶接変形によって、例えば圧縮荷重に対する座屈
強度が低下することや継手製作上の寸法精度等の検討か
ら、上述した変形矯正作業を必要としない角変形量の限
界値を与える変態点温度をCr,Mo,NbおよびVの
元素添加の影響を考慮した結果本発明の関係式(T<6
30)を見出した。
【0016】本発明は代表的な溶接時の冷却速度から、
溶接材料に含まれる各種成分のAr 3 相変態点温度Tを
(1)式によって与える。 T=630−476.5C+56.0Si−19.7Mn −16.3Cu−26.6Ni−4.9Cr+38.1Mo +124.8V−19.1Nb ……(1) また、溶接材料の相変態点温度と発生する角変形量を検
討することから、実用的に発生する変形量が十分に小さ
い値であると判断される(2)式の関係を与えるもので
ある。
【0017】 T<630 ……(2) さらに、金属弗化物をワイヤ全重量に対し2.0〜7.
5%添加することと金属酸化物を金属弗化物の1/3〜
1/20および金属炭酸塩を金属弗化物の1/3〜1/
15含有することにより、溶接時のビード形状、耐ピッ
ト性改善および溶接金属部の高靱性が得られることを見
出した。以下に、本発明における溶接ワイヤの成分元素
の限定理由について説明する。
【0018】Cは、変態点低下に効果があり、強度の点
からも0.03%以上が必要となる。しかし、過度の添
加は溶接金属部の高温割れ感受性の増大と靱性低下につ
ながるために、上限を0.09%とする。Siは、脱酸
剤として使用し、溶接金属中の酸素量を低減するととも
にビード形状を改善する効果があり、0.2%未満では
脱酸不足で溶接金属中にブローホール等の溶接欠陥が発
生し、1.0%を超えるとフェライトを固溶硬化させ溶
接金属の靱性を低下させるので、Siの範囲は0.2〜
1.0%とする。
【0019】Mnは、Si同様脱酸剤であり、溶接金属
の流動性改善、溶接金属強度および衝撃靱性向上に効果
があるとともに変態点を低下させる効果もある。0.5
%未満では脱酸不足となり溶接部にブローホール等の溶
接欠陥が発生し易くなるとともに変態点低下の効果が得
られず、逆に3.0%を超えると溶接金属の強度が高
く、高温割れ感受性が増加し衝撃靱性が低下する。
【0020】Cuも、変態点を低下させる効果があり、
固溶強化により強度上昇に有効な元素であるため、0.
1%以上添加する必要があるが、1.5%を超えると溶
接金属の衝撃靱性を低下させるとともに溶接性を損なう
ため上限を1.5%とする。Crは、Cuと同様に固溶
強化により強度上昇に有効な元素であるため、0.1%
以上添加するが、過度の添加は、溶接金属強度が高くな
り衝撃靱性を劣化させ、さらに溶接性を損なうため、上
限を3.0%とする。
【0021】Moは、溶接金属の降伏応力を高め、溶接
時に発生する溶接角変形の抑制に大きな効果をもたらす
元素である。そのため、0.1%未満の添加量では溶接
金属への析出強化が不十分でこの効果が得られず、逆に
2.0%を超えると、過度に降伏応力が高くなりすぎ溶
接角変形の抑制には逆に不利となるため、2.0%以下
とする。
【0022】Vは、析出硬化により強度の上昇に有効で
あり、溶接歪抑制効果を高める働きをするため0.1%
以上添加するが、過度の添加は常温での強度上昇によっ
て靱性を損なうので、上限を0.5%とする。Nbにつ
いても、Mo同様、析出により降伏応力を高め、溶接時
に発生する溶接角変形の抑制に大きな効果をもたらす元
素である。そのため、0.01%未満の添加量では析出
強化量が不足するため、0.01%以上添加するが、過
度の添加は特に室温における降伏応力が高くなりすぎ溶
接角変形の抑制には逆効果となり、さらには強度上昇に
よる靱性劣化を招くため、上限を0.05%とする必要
がある。
【0023】Niは、代表的なγ相形成元素であり、変
態点を低下させる効果が大きい元素である。0.2%未
満ではその効果が得られず、5.0%を超えると溶接金
属強度が過度に高くなり衝撃靱性を低下させるととも
に、溶接材料のコスト上昇に加えて、海洋構造物等では
海水による局部腐食が発生し、溶接継手に悪影響を与え
る。したがって、Ni添加量は0.2〜5.0%に限定
する必要がある。
【0024】なお、上記元素の添加方法は、外皮、フラ
ックスの一方または両方に添加してもよい。以上が溶接
時に発生する角変形量を低減させる手段であるが、本発
明者らは、さらに溶接時の浅溶込みとスパッタ量低減お
よび良好なビード形状、さらには優れた耐ピット性およ
び高靱性を得るためにスラグ剤成分についても検討し
た。本発明では上記検討結果を踏まえ、各成分の添加量
を下記の様に限定した。
【0025】金属酸化物と金属炭酸塩は生成スラグの塩
基度を高め、低温域での安定した衝撃靱性を得るために
必要であり、金属酸化物は溶滴移行等のアーク現象を改
善し、美麗なビード形状および耐ピット性を得るために
必要な成分である。金属弗化物を主成分に、金属酸化物
は金属弗化物の1/3〜1/20、金属炭酸塩は金属弗
化物の1/3〜1/15でなければならない。
【0026】まず金属弗化物は、スラグ剤として溶融金
属を被包し、ビード形状を良好にするとともに溶融金属
からのスラグ浮上分離を促し、溶接金属中の酸素量を低
下させて良好な機械的性能特に溶接金属の衝撃靱性向上
が得られ、さらにX線性能確保、すなわち溶接時の耐ピ
ット性改善にも有効である。2.0%未満では上記効果
が得られず、また7.5%を超えるとスラグ流動性が過
剰となりビード形状が劣化するので、金属弗化物は2.
0〜7.5%添加する必要がある。なお、この金属弗化
物としては、CaF2 ,BaF2 ,MgF2 ,NaF,
MnF2 ,K2SiF6 ,SrF2 等が有効であり、ア
ルカリ金属弗化物を使用する場合には、アークの安定性
も向上させることができる。なお、CaF2 は、シール
ドガス組成としてArベースの混合ガスで使用する場合
は、CaF2 のみでもスパッタ発生量を減少させること
ができるが、シールドガス組成としてCO2 ガスを用い
る場合は、CaF2 のみではスパッタの発生量が多くな
るのでアルカリ金属弗化物との併用が望ましい。
【0027】次に金属弗化物と金属炭酸塩および金属酸
化物との比率を上記の如く決定した理由を説明する。金
属弗化物と金属炭酸塩のフラックス中に占める割合は多
ければ多いほど溶接金属の酸素量は低下し、低温域にお
ける衝撃靱性を改善する効果が大きい。そこで、金属炭
酸塩を金属弗化物の1/3を超えて添加すると、Ar−
CO2 シールドガス溶接の場合、金属炭酸塩の急激な分
解に伴うCO2 ガスの放出が過剰となるためアーク現象
が損なわれ、スパッタが多発するばかりか、分解放出さ
れたCO2 ガスにより溶着金属の酸素量がマグ溶接とし
ては多くなりすぎ、低温靱性の低下を招く。
【0028】その一方、金属炭酸塩が金属弗化物の1/
15未満では、塩基度を高める成分が金属弗化物のみと
なり十分な靱性改善効果が期待できない。したがって、
金属炭酸塩は金属弗化物の1/3〜1/15の範囲に限
定する必要がある。かかる効果を発揮する金属弗化物と
してはCaF2 ,BaF2 ,MgF2 ,NaF2 ,Li
2 ,AlF2 ,K2 SiF6 ,Na2 AlF6 ,Na
2 SiF6 ,K2 ZrF6 等がある。金属炭酸塩として
は、CaCO3 ,MnCO3 ,LiCO3 ,Na2 CO
3 ,MgCO3 ,BaCO3 等を使用することができ
る。
【0029】さらに、金属酸化物の最適添加量の決定も
重要かつ困難な問題であり、本発明者らは種々の実験を
行った結果、以下の知見を見出したのである。すなわ
ち、金属酸化物の量が金属弗化物の1/20未満ではア
ークが不安定でスパッタが多くビード形状の改善効果も
認められないが、1/20以上の添加で溶接アーク現
象、ビード形状は大幅に改善され良好な溶接が実現され
る。また、衝撃靱性は、金属酸化物の添加量の増加につ
れ減少傾向を示し、1/3超で著しく低下することが判
明した。
【0030】したがって、金属酸化物の添加量は溶接作
業性および衝撃靱性確保の両面から考慮して、金属弗化
物の1/3〜1/20の範囲にしなければならない。な
お、本発明ワイヤに用いる金属酸化物は主にTiO2
SiO2 を用いるが、ZrO2 ,Al2 3 ,MnO,
MgO,K2 O,Na2 O,CaO,FeOおよびFe
2 3 等を用いることができる。Al2 3 ,MnOお
よびMgOはスラグ物性を調整してビード形状を整える
効果の他スラグ塩基度を高める効果も期待できる。ま
た、K2 O,Na2 OおよびCaOはCO2 ガス比の高
い溶接でアーク現象を改善し、溶接作業性に優れたフラ
ックス入りワイヤを設計するとき少量用いる。Zr
2 ,FeOおよびFe2 3 は主にスラグ物性調整の
ために用いる。
【0031】以上が必須成分であるが、この他にも溶接
能率向上を目的として鉄粉を、アーク安定剤としてはア
ーク中で分離し易い物質、例えばLi,Na,K,C
a,SrおよびBa等の酸化物、弗化物および炭酸塩等
を必要に応じて添加することができる。さらに、本発明
に係わるワイヤのフラックス充填率は8〜20%とする
ことが望ましい。その理由は、フラックス充填率が20
%を超えると伸線時に断線のトラブルが多発し生産性が
悪くなるからであり、また8%より少なくなるとアーク
の安定性が損なわれるからである。なお、ワイヤの断面
形状には何等の制限もなく2.0mmφ以下の細径の場
合には比較的単純な円筒状のものが一般的である。ま
た、シームレスワイヤにおいては表面にCuメッキ処理
を施すことも有効である。
【0032】
【実施例】表1、表2(表1のつづき)に実施例ワイヤ
のフラックス組成と(1)式で計算されるAr3
(T)を示す。ワイヤ径はいずれも1.0mmで、鋼板
は表3に示すJIS G 3106のSM400Bを用
いた。この鋼板を図2に示すT形すみ肉溶接試験体を製
作するために、表4に示す溶接条件で両側1パス溶接し
た。溶接終了後、角変形量δを測定した。その後、溶接
金属の縦断面を観察し、溶接金属の割れの有無およびビ
ード形状を判定した。総合評価として、角変形量δの大
きさが図3に示されるwとdの値を用いて(3)式 δ=0.5sin-1(2d/w) ……(3) で計算されるδの値が1.2×10-2rad未満でかつ
割れの発生が見られないことおよびビード形状の優れて
いるものを合格とし、衝撃靱性は−40℃での吸収エネ
ルギーが70J以上を合格として、それ以外はすべて不
合格とした。表5に試験結果を示す。
【0033】表5から明らかなように、本発明ワイヤを
用いて溶接した溶接継手は、全て角変形量が少なく、ビ
ード形状も良好で、かつ高靱性が得られているのに対し
て、比較ワイヤでは種々の問題が発生している。まず、
比較ワイヤ7は、金属炭酸塩の含有量が金属弗化物の1
/2.8と本発明範囲を上回っているため、アーク中の
CO2 ガスが過剰となり、スパッタが多発すると同時に
衝撃靱性が低下した。
【0034】比較ワイヤ8は、本発明範囲を超える金属
弗化物が8.0%含有されているため、スラグの流動性
が著しく高まり、ビード形状が劣化した。比較ワイヤ9
は、逆に本発明範囲を下回る金属弗化物が0.7%含有
され、かつ金属酸化物が金属弗化物の1/0.1と多量
に含有されているため、ビード形状は良好であったもの
の、溶接金属中の酸素量が多いため、衝撃靱性が低下し
た。
【0035】比較ワイヤ10は、金属酸化物が金属弗化
物の1/23.3と少ないため、アーク状態が不安定
で、良好なビード形状が得られなかった。比較ワイヤ1
1は、ワイヤ中に占める各元素の重量%により定まるパ
ラメータTの値が630を上回る643となっているた
め、角変形量が1.34×10-2radと大きくなっ
た。
【0036】比較ワイヤ12は、金属炭酸塩が金属弗化
物の1/21.7と本発明範囲を下回っているため、十
分な靱性改善が得られないと同時に、本発明が1種又は
2種以上の添加を規定しているCu,Cr,Mo,V,
Nbがいずれも添加されていないため、パラメータTの
値は630を下回っているものの、相変態温度での機械
的強度が低下し、角変形量が増大した。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
【表3】
【0040】
【表4】
【0041】
【表5】
【0042】
【発明の効果】以上のように、本発明の溶接ワイヤによ
れば、溶接作業性が良好でかつ溶接時の耐ピット性に優
れているとともに、得られる溶接部については低温度域
での高い衝撃靱性が確保できることはもちろん、溶接時
に発生する溶接角変形が少なく、歪取り作業を軽減もし
くは省略できるという著しく優れた効果が奏されるの
で、建築、土木、海洋構造物、造船分野をはじめ各種溶
接分野での適用範囲拡大に寄与できるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】変態点温度と角変形量の関係を示す図である。
【図2】T形すみ肉溶接継手の概略を示す図である。
【図3】角変形量δの定義を説明する図である。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ワイヤ全重量に対して重量%で、金属弗
    化物を2.0〜7.5%、金属酸化物を金属弗化物の1
    /3〜1/20、金属炭酸塩を金属弗化物の1/3〜1
    /15含有したフラックスを鋼製外皮に充填してなるマ
    グ溶接用フラックス入りワイヤであって、鋼製外皮とフ
    ラックスの一方または両方においてワイヤ全重量に対し
    て、 C ;0.03〜0.09% Si;0.2〜1.0% Mn;0.5〜3.0% を含有し、さらに Cu;0.1〜1.5% Cr;0.1〜3.0% Mo;0.1〜2.0% V ;0.1〜0.5% Nb;0.01〜0.05% のうちのいずれか1種または2種以上を含有し、かつワ
    イヤに占める各元素の重量%により下式(1)で定まる
    パラメータTが630未満であることを特徴とする溶接
    変形の少ない高靱性溶接部が得られるマグ溶接用フラッ
    クス入りワイヤ。 T=630−476.5C+56.0Si−19.7Mn −16.3Cu−26.6Ni−4.9Cr+38.1Mo +124.8V−19.1Nb ……(1)
  2. 【請求項2】 ワイヤ全重量に対してさらに、 Ni;0.2〜5.0% を含有することを特徴とする請求項1記載の溶接変形の
    少ない高靱性溶接部が得られるマグ溶接用フラックス入
    りワイヤ。
JP850795A 1995-01-23 1995-01-23 溶接変形の少ない高靱性溶接部が得られるマグ溶接用フラックス入りワイヤ Withdrawn JPH08197283A (ja)

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