JP2007054878A - 耐火構造用鋼の被覆アーク溶接棒 - Google Patents

耐火構造用鋼の被覆アーク溶接棒 Download PDF

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Abstract

【課題】 800℃までの耐火性に優れた耐火構造用鋼に使用する被覆アーク溶接用溶接棒に関し、高温強度だけでなく、極めて良好な靭性や継手健全性にも優れた溶接金属を得ることが可能な溶接棒を提供することを課題とする。
【解決手段】 Mo、Nb、Vを必須として組成を最適化した被覆剤と、同様に、成分を最適化した鋼心線とを組み合わせ、かつ被覆剤の被覆率を25〜45%に限定した溶接棒とすることにより、高温強度だけでなく、極めて良好な靭性や継手健全性にも優れた溶接金属を得ることが可能となる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、特に、700〜800℃での耐火性能に優れた耐火構造用鋼(以下、耐火鋼ということもある)からなる建築構造物などの溶接鋼構造物の被覆アーク溶接(SMAW)において使用される被覆アーク溶接棒に関するものである。
従来、建築物などに使用される鋼材は、火災時の鋼構造物の安全性を確保するために、火災時における鋼材表面温度が350℃以下で使用するように耐火基準が定められており、鋼材表面にロックウールなどの耐火被覆をする必要があった。しかし、建築鋼構造物の建設において鋼材表面の耐火被覆施工に要する費用低減、その施工工程省略、さらには景観上の点からも、耐火被覆施工を完全に省略したいという要求は非常に高まっている。
このような背景を踏まえ、昭和62年の防耐火総プロの成果を受けて(38条認定により)、鋼材の耐火性能を考慮した建築鋼構造物の設計が可能となり、鋼材の高温耐力と、実際の建築鋼構造物に加わっている荷重とを考慮して耐火被覆施工の必要性を決定し、場合によっては無耐火被覆で鋼材を使用することも可能となった。
こうした状況から、600℃での高温降伏強度が常温時の2/3以上となる耐火性能に優れた鋼材(以下、600℃耐火鋼という場合もある)が開発された(例えば特許文献1、参照)。
また、その後、700℃あるいは800℃での高温降伏強度を保証する耐火性能に優れた鋼材(700℃耐火鋼あるいは800℃耐火鋼という場合もある)も提案されている(例えば特許文献2、3、参照)。従来、これらの耐火鋼の高温強度を確保するためには、Cr、Moなどの合金元素を添加する方法が一般的である。しかし、このような鋼材成分設計のみで、800℃耐火鋼としての耐火性能を確保することは、600℃耐火鋼に比べて、高温での組織変態や、炭化物等の析出物の粗大化または消失を十分抑制するため、合金元素の多量添加が必要となり、溶接性の低下や、建築構造用鋼で規定される室温降伏強度の上限を上回る問題が生じ、無耐火被覆での800℃耐火性能を十分確保した400MPa級、490MPa級鋼の製造は困難であった。最近、合金元素の添加を抑えて、Ac1変態温度の向上、熱間圧延の条件の適正化等により、溶接性や室温降伏強度を維持しつつ、800℃での耐火性能に優れた高温耐火建築構造用鋼が開発され、実用化されつつある。
従来、一般に600℃耐火鋼では、無耐火被覆で使用できる範囲は、比較的可燃物量が少ない立体駐車場や外部鉄骨に限られているため、今後、その使用範囲を建築鋼構造物まで拡大するために、さらに、700℃および800℃耐火鋼の実用化が望まれている。
一方、建築鋼構造物の建設には、溶接が一般的に多く用いられる。700℃および800℃の高温耐火建築用鋼構造物では、溶接部は構造物の作用応力の大きな部位には設けられないため、溶接部は、母材と同程度の高温強度特性まで高い特性は要求されない。しかし、火災時の建築鋼構造物における安全性の確保から、例えば、800℃耐火建築用鋼構造物の溶接部には母材の800℃高温強度の1/2程度の作用応力、具体的には800℃で70MPa程度の降伏強度の確保が要求される。また、建築鋼構造物の安全性の点から溶接部の靭性は、通常の溶接金属と同程度、すなわち0℃のシャルピーエネルギーで27J以上が要求される。
従来、600℃耐火鋼の溶接する際に優れた耐火性能を有する溶接部を得るためのアーク溶接ワイヤ、溶接棒、フラックスなどの溶接材料が多数開発、提案されている(例えば特許文献4〜12、参照)。
しかし、800℃耐火鋼用の溶接材料としては、近年、800℃耐火鋼のサブマージアーク溶接方法およびそのための溶接ワイヤとフラックスが提案されている(例えば特許文献13、参照)のみである。サブマージアーク溶接以外の例えば、CO溶接やArとCOの混合ガスをシールドガスとするMIG溶接またはMAG溶接等のガスシールドアーク用の溶接ワイヤや、被覆アーク溶接(SMAW)用の被覆アーク溶接棒により、十分な耐火性能を満足する溶接金属が得られるものはなかった。
特に、実際の建築用鋼構造物の建造において、柱製作時の鉄骨部位の工場内あるいは現地での特に細かい部位や狭隘な箇所の溶接施工や補修溶接として適する被覆アーク溶接(SMAW)に用いられる被覆アーク溶接棒は提案されていない。
また、上記800℃耐火鋼のサブマージアーク溶接方法(例えば特許文献13、参照)を含むガスシールドアーク溶接では、800℃での高温耐火性能を確保するために、鋼材中、および、この鋼材を溶接するための溶接材料中には、靱性に対して有害な元素、例えばMo、Nb、V等の合金元素を多く含有するため、溶接継手に形成される溶接金属の靱性は、0℃における2mmVノッチシャルピー衝撃試験の吸収エネルギー(vE0)で27J程度と低いという問題があった。最近の鋼構造物の安全性重視傾向から、建築鋼構造物の溶接部においても、0℃における2mmVノッチシャルピー衝撃試験の吸収エネルギー(vE0)で70J以上の高い靭性、さらには100J以上の極めて高い靱性が要求される可能性も出てきている。
さらに、700〜800℃での耐火性能を向上するためにMo、Nb、V等の合金元素を多量に含有した溶接金属では、700℃前後において溶接金属の粒界が脆化して延性が極端に低下する高温脆化あるいは再熱脆化の問題も生じやすい。このため、Mo、Nb、V等の合金元素を多量に含有した従来の耐火鋼用の溶接材料を用いて溶接する場合には、溶接金属の高温脆化感受が高くなり、700〜800℃での建築構造物において十分な安全性を確保することに限界があった。
以上のように、700〜800℃耐火鋼の被覆アーク溶接用の溶接棒として、700〜800℃での高温耐力を維持しつつ、0℃における2mmVノッチシャルピー衝撃試験の吸収エネルギー(vE0)で70J以上、さらには、100J以上の優れた靱性を有し、かつ700〜800℃において溶接金属の高温脆化を抑制できる溶接金属が得られるようなものはない現状にある。
特開平2−77523号公報 特開平9−209077号公報 特開平10−68015号公報 特開平2−52196号公報 特開平2−217195号公報 特開平2−205298号公報 特開平2−274394号公報 特開平2−63698号公報 特開平2−274394号公報 特開平2−75494号公報 特開平2−200393号公報 特開平2−268994号公報 特開2003−311477号公報
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みて、耐火性に優れた建築構造用鋼の被覆アーク溶接において、700〜800℃での高温耐力を維持しつつ、0℃における2mmVノッチシャルピー衝撃試験の吸収エネルギー(vE0)で70J以上、さらには、100J以上の優れた靱性を有し、かつ700〜800℃での耐高温脆化特性に優れた溶接金属が得られる耐火構造用鋼の被覆アーク溶接棒を提供することを目的とする。
本発明は上記課題を解決するものであって、その要旨は下記に示すとおりである。
(1)鋼心線外周に溶接棒全質量に対する質量%で25〜45%となるように被覆剤を被覆し、
前記鋼心線中に該鋼心線全質量に対する質量%で、
C:0.005〜0.08%、
Si:0.01〜1%、
Mn:0.1〜2%、
P:0.02%以下、
S:0.01%以下、
Al:0.1%以下、
N:0.01%以下、
O:0.02%以下を含有し、
さらに、Mo:0.01〜1.14%、Nb:0.008〜0.13%、および、V:0.008〜0.62%の1種または2種以上を含有し、残部がFe及び不可避不純物からなり、
前記被覆剤中に該被覆剤全質量に対する質量%で、
金属炭酸塩:30〜60%、
金属弗化物:13〜30%、
Mg:0.3〜5%、
Mo:0.25〜2.6%、
Nb:0.05〜0.7%、
V:0.02〜1.5%を含有し、
かつ前記鋼心線および前記被覆剤中のMo、Nb、Vの含有量が下記(1)〜(3)を満足することを特徴とする耐火構造用鋼の被覆アーク溶接棒。
0.09≦0.37SMo+0.85WMo≦0.97 ・・・(1)
0.007≦0.15SNb+0.85WNb≦0.11 ・・・(2)
0.007≦0.35SV+0.85WV≦0.53 ・・・(3)
但し、上記SMo、SNb、SVは、それぞれ被覆剤中のMo、Nb、Vの含有量(被覆剤全質量に対する質量%)を示し、上記WMo、WNb、WVは、それぞれ鋼心線中のMo、Nb、Vの含有量(鋼心線全質量に対する質量%)を示す。
(2)前記被覆剤中に、該被覆剤全質量に対する質量%で、さらに、
Cu:0.1〜3%、Ni:0.1〜6%、Cr:0.01〜3%、W:0.01〜3%、Ti:0.01〜1.5%、Ta:0.01〜3%、および、B:0.001〜0.3%の1種または2種以上を含有することを特徴とする前記(1)に記載の耐火構造用鋼の被覆アーク溶接棒。
(3)前記鋼心線中に、該鋼心線全質量に対する質量%で、さらに、
Cu:0.05〜1.5%、Ni:0.05〜3%、Cr:0.01〜1.5%、W:0.01〜1.5%、Ti:0.005〜0.1%、Ta:0.01〜0.5%、および、B:0.0005〜0.01%の1種または2種以上を含有することを特徴とする前記(1)または(2)に記載の耐火構造用鋼の被覆アーク溶接棒。
(4)前記鋼心線中に、該鋼心線全質量に対する質量%で、さらに、
Ca:0.0002〜0.1%、Mg:0.0002〜0.1%、REM:0.0002〜0.1%、の1種または2種以上を含有することを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の耐火構造用鋼の被覆アーク溶接棒。
本発明によれば、800℃までの耐火性に優れた耐火構造用鋼の被覆アーク溶接において、700〜800℃における高温強度とともに、極めて良好な靱性や耐高温脆化特性の優れた溶接金属を得ることが可能な被覆アーク溶接棒を提供することができ、産業上の効果は顕著である。
建築鋼構造物の耐火設計では、ボイラなどの圧力容器用耐熱鋼のように500〜600℃程度の高温かつ高圧環境下で長時間連続して使用する際の高温強度は要求されず、火災継続時間内の比較的短時間に鋼構造物が崩壊しないだけの高温降伏強度が維持できればよい。例えば、700℃および800℃耐火鋼では、一般に、700℃および800℃の温度、30分程度の保持時間での高温降伏強度が確保できれば十分利用できると考えられている。
従来の600℃耐火鋼の設計では、高温降伏強度が常温降伏強度の2/3以上となるように性能を定めており、700℃耐火鋼においてもこの基準を適用した。しかし、一般に鉄骨構造物の実設計範囲が常温降伏強度下限の0.2〜0.4倍であることを勘案し、実設計での常温降伏強度は、常温降伏強度下限比0.4以上であれば使用できるとの考えに基づき、800℃耐火鋼の設計では常温降伏強度に対する下限比0.4以上を考慮し、800℃降伏強さの目標値が設定されている。すなわち、700℃降伏強さは常温降伏強さ325MPa級(引張強さ490MPa級)の鋼材への適用を想定し、溶接金属の目標値をその2/3、すなわち217MPaとした。また、800℃降伏強さの目標値は400MPa鋼で94MPa、490MPa鋼で130MPaとしている。
また、鉄骨構造物の実設計において、その溶接部は作用応力が小さい位置に設けられる。本発明者らの検討の結果、溶接部に形成される溶接金属の800℃での降伏強さの目標値は、母材の800℃降伏強さの1/2、例えば490MPa鋼を使用する場合には、溶接金属の800℃での降伏強さの目標は70MPa程度とすることで十分であることを確認した。また、発明者らは、同様の根拠により溶接金属の700℃での降伏強さ目標は220MPa程度とすることで十分であることを確認した。
そこで、発明者らは、700〜800℃での高温耐火構造用鋼の被覆アーク溶接の際に、700℃、800℃の降伏強さが各々220MPa以上、70MPa以上の高温強度を有し、かつ、0℃における2mmVノッチシャルピー衝撃試験の吸収エネルギー(vE0)で100J以上の靭性を有し、さらに、高温で負荷応力や溶接残留応力による高温脆化割れを生じない程度の耐高温脆化性を有する溶接金属を得るための被覆アーク溶接棒について詳細な実験に基づいて検討した。
種々の化学組成の被覆アーク溶接棒を用いて後述する実施例と同じ700℃及び800℃耐火構造用鋼を被覆アーク溶接(SMAW)し、図1に示す開先形状の継手を作製した。被覆アーク溶接は、板厚16mmの鋼板1間に角度50°、間隔12mmで開先2を設け、鋼板1の裏面に配置された厚み16mm、幅40mmの裏当金3とで形成された空間を、被覆アーク溶接棒を用いて、電流170A、電圧24V、平均的入熱17kJ/cmの溶接条件で溶接を行った。
図2に示す溶接継手に形成された溶接金属の位置、方向から2mmVノッチシャルピー衝撃試験片4、丸棒の高温引張試験片5をそれぞれ採取した。引張試験は700℃および800℃で、また、2mmVノッチシャルピー衝撃試験は0℃でそれぞれ試験を行い、溶接金属の耐火特性(降伏強度、ここでは0.2%耐力を降伏強度とする)、耐高温脆化特性(引張試験の伸び、絞り値)、靱性(2mmVノッチシャルピー衝撃試験の0℃における吸収エネルギー:vE0)を評価した。
その結果、溶接金属の靭性を良好に維持しつつ、700℃及び800℃における耐火特性を向上させるためには、(A)溶接金属組織の高温変態抑制のためにAc1変態温度を十分高めるとともに、700℃及び800℃での30分程度の時間で高温強度を維持する効果が高い、Nb、MoおよびVを被覆剤中に適正量複合添加し、(B)溶接金属中のNb、MoおよびVの耐火特性向上および靭性阻害の寄与を考慮した、下記(1)〜(3)式を満足するように、該被覆剤中に複合添加するNb、MoおよびVと、鋼心線中に1種または2種以上を選択的に添加するNb、MoおよびVの各成分含有量を調整することが有効であることを確認した。
以上が本発明の耐火構造用鋼の被覆アーク溶接棒において、溶接金属の700〜800℃での高温降伏強度、0℃での靭性、耐高温脆化特性を同時に良好に維持するための技術思想である。本発明では、かかる技術思想を具現化し、本発明の効果を安定して十分に発揮させるために、被覆アーク溶接棒を構成する鋼心線および被覆剤の成分組成を以下に示す理由で限定する必要がある。
以下に本発明の被覆アーク溶接棒における鋼心線および被覆剤の各成分組成の限定理由を詳細に説明する。
なお、以下に示す「%」は特に説明がない限り、「質量%」を意味するものとする。
先ず、本発明における鋼心線中の各成分元素の限定理由を以下に示す。
鋼心線中のC含有量は0.005〜0.08%とする。これは、C含有量が0.005%未満であると、溶接金属の強度が十分でなく、また、高温割れが生じる恐れもあるため、C含有量の下限は0.005%とする。一方、C含有量が0.08%を超えると、溶接金属が硬化し、靭性や耐割れ性が劣化するため、C含有量の上限は0.08%とする。
鋼心線中のSi含有量は0.01〜1%とする。Si含有量が0.01%未満では脱酸が不十分となって、溶接欠陥が生じたり、溶接金属の靱性が劣化する懸念があるため、Si含有量の下限は0.01%とする。一方、Si含有量が1%を超えると、鋼心線の製造性に悪影響を与え、かつ、溶接金属が硬化し、靭性や耐割れ性が劣化するので、鋼心線中のSi量の上限は1%に限定する。
鋼心線中のMn含有量は0.1〜2%とする。Mn含有量が0.1%未満であると、溶接金属の強度が十分でない場合が生じるため、Mn含有量の下限は0.1%とする。一方、Mn含有量が2%を超えると、溶接金属が硬化し、靭性や耐割れ性が劣化するので、鋼心線中のMn量の上限は2%に限定する。
鋼心線中のPは溶接金属の結晶粒界に偏析し、粒界脆化を生じて靭性に対して有害な不可避的不純物である。そこで鋼心線中のP量は0.02%以下に限定する。
鋼心線中のSは溶接金属中で粗大な介在物となり、また、Pと同様に溶接金属の結晶粒界に偏析し、粒界脆化を生じることで、靭性に対して悪影響を及ぼす不可避的不純物である。そこで鋼心線中のS量は0.01%以下に限定する。
鋼心線中のAl含有量は鋼製造時に使用される脱酸剤であるが、0.1%を超えると、溶接金属中に粗大な介在物を形成して靭性を劣化させるため、本発明では鋼心線中のAl量は0.1%以下に限定する。
鋼心線中のNは侵入型固溶元素として溶接金属を硬化させ、靭性や耐割れ性に有害な不可避的不純物である。本発明において鋼心線中にNを0.01%を超えて含有すると、溶接金属のN量が過剰となって靭性を明確に劣化させるため、鋼心線中のN量は0.01%以下に限定する。
鋼心線中のO含有量は0.02%を超えると、溶接金属のO量を上昇させ、粗大な酸化物が形成され、これが脆性破壊の起点となって靭性を劣化させるため、好ましくない。また心線中のO量が多いと溶接中に被覆剤中の脱酸剤や合金剤と反応してその歩留りを低下させ、溶接金属性能のばらつきの原因となる。そこで、本発明では鋼心線中のO量は0.02%以下に限定する。
鋼心線中のMo、Nb、Vは溶接金属の耐火特性発現のために有効な成分である。しかし、溶接金属中にこれらの成分を過度に添加すると、溶接金属の靭性が低下し、また、本発明者らの検討によれば、これらの成分は被覆剤から溶接金属中に添加することが、有効であることから、鋼心線中のMo、Nb、Vは1種または2種以上を以下の含有量の範囲で添加する。
Moは溶接金属の高温強度を高める効果を有するが、鋼心線中のMo含有量が0.01%未満では効果が明確でなく、一方、1.14%超では、溶接金属中のMoが過剰となって靭性を過度に劣化させる場合があり、また、鋼心線の製造性を劣化させるため、鋼心線中にMoを含有させる場合には、その含有量を0.01〜1.14%に限定する。
Nbも、溶接金属の700〜800℃における高温強度を高める元素として有効である。鋼心線中のNb含有量が0.008%未満では効果が明確でなく、一方、0.13%超では溶接金属の靭性を低下させる場合があるため、鋼心線にNbを含有させる場合は、その含有量を0.008%〜0.13%とする。
Vも、溶接金属の700〜800℃における高温強度を高める元素として有効である。鋼心線中のV含有量が0.008%未満では効果が明確でなく、一方、0.62%超では溶接金属の靭性を低下させる場合があるため、鋼心線にVを含有させる場合は、その含有量を0.008%〜0.62%とする。
鋼心線中の基本成分は上記の通りであるが、さらに、溶接金属の強度調整等の目的のために、必要に応じて、鋼心線中に、Cu%、Ni、Cr、W、Ti、Ta、Bの1種または2種以上を以下の含有範囲で添加させることができる。
鋼心線中のCuは、その含有量が0.05%未満であると溶接金属の強度向上効果が明確でなく、一方、1.5%超であると鋼心線の製造性に有害であり、また、溶接金属の靱性を阻害する。このため、鋼心線中にCuを含有する場合は、そ含有量を0.05〜1.5%に限定する。
鋼心線中のNiは溶接金属の高強度化とともに靱性向上に非常に有効な元素である。その含有量が0.05%未満であると強度、靱性向上効果が明確でなく、一方、3%超であると、溶接金属の強度を過度に高めて靱性の向上が飽和ないしは劣化傾向となる。このため、鋼心線中にNiを含有する場合は、その含有量を0.05〜3%に限定する。
鋼心線中のCrは、その含有量が0.01%未満であると溶接金属の強度向上効果が明確でなく、一方、1.5%超であると、溶接金属の靱性を阻害する。このため、鋼心線中にCrを添加する場合は、その含有量を0.01〜1.5%に限定する。ただし、鋼心線中のCrは700℃における溶接金属の耐火強度については効果が小さく、800℃における耐火強度についてはほとんど効果がない一方で靱性への悪影響が顕著である。このため、特別の理由がない限り、積極的には含有させない方が好ましい。
鋼心線中のWはCrと同様、その含有量が0.01%未満であると溶接金属の強度向上効果が明確でなく、一方、1.5%超であると、溶接金属の靱性を阻害する。このため、鋼心線中にWを含有させる場合は、その含有量を0.01〜1.5%に限定する。
鋼心線中のTiは溶接金属組織の微細化を通して靭性向上に有効な元素であるが、その含有量が0.005%未満であると溶接金属の靭性向上効果が明確でなく、一方、0.1%超であると、溶接金属中に粗大な析出物を形成して靭性を劣化させる。このため、鋼心線中にTiを含有させる場合、その含有量を0.005〜0.1%に限定する。
鋼心線中のTaは主として析出強化により溶接金属の強度向上に有効な元素であるが、その含有量が0.01%未満であると強度向上効果が明確でなく、一方、0.5%超であると、溶接金属の靱性を阻害する。このため、鋼心線中にTaを含有させる場合、その含有量を0.01〜0.5%に限定する。
鋼心線中のBは主として焼入性を高めて溶接金属の粒界フェライト生成を抑制して、溶接金属の強度、靭性向上に有効な元素であるが、その含有量が0.0005%未満では効果が明確でなく、一方、0.01%超であると、鋼心線の製造性を劣化させるとともに、溶接金属を過度に硬くして靭性を劣化させる。このため、鋼心線中にBを含有させる場合、その含有量を0.0005〜0.01%に限定する。
本発明では、溶接金属の延性改善の必要がある場合には、鋼心線中に、Ca、Mg、REMの1種または2種以上を以下の含有範囲で含有することができる。
鋼心線中のCa、Mg、REMは、いずれも溶接金属中で硫化物の構造を変化させ、また溶接金属中での硫化物、酸化物のサイズを微細化して延性及び靭性向上に有効な元素である。鋼心線中にCa、Mg、REMの1種又は2種を添加する場合、その効果を発揮するための含有量の下限は、いずれも0.0002%である。一方、溶接金属中にこれらを過剰に添加すると、硫化物や酸化物の粗大化を生じ、延性、靭性の劣化を招く、また、溶接ビード形状の劣化、溶接性の劣化の可能性も生じる。これらのため、Ca、Mg、REMの1種又は2種を添加する場合、いずれの成分もその含有量の上限を0.1%とする。
本発明の溶接棒は、上記成分組成を含有した鋼心線の外周に、溶接棒全質量に対する質量%で25〜45%となるように被覆剤を被覆し、かつ被覆剤の成分組成を以下のように限定する。
本発明において被覆剤は、被覆アーク溶接時のアーク安定性、ガスシールド、溶接ビード形状などの溶接性を維持させるとともに、溶接金属の700〜800℃での高温耐力、靭性、および、700〜800℃での耐高温脆化特性などの機械的特性を向上するために、被覆剤中の成分組成を限定する。
本発明における被覆剤中の各成分元素の限定理由を以下に示す。
被覆剤中の金属炭酸塩は、被覆アーク溶接時にアーク雰囲気を大気から保護する働きがあり、アーク熱で分解してガスを発生する金属炭酸塩であれば特に種類を限定する必要はなく、例えば、CaCO、MgCO、BaCOなど金属炭酸塩の1種または2種以上が用いられる。被覆剤中の前記金属炭酸塩の含有量が30%未満ではアーク雰囲気を大気から保護するシールドガスの発生が不足して溶接金属に大気中の窒素や水素が多量に溶解し、靭性や耐割れ性の劣化を招くため好ましくない。一方、被覆剤中の前記金属炭酸塩の含有量が60%を超えると、溶接時のアークが不安定になりビード形状が悪化し、スラグの剥離性も悪くなるのでこれも好ましくない。そのため、本発明においては、被覆材に含有する金属炭酸塩の含有量は30〜60%とする。
被覆剤中の金属弗化物は、溶接時に発生する溶融スラグの流動性調整のため添加し、このような作用を有する金属弗化物であれば種類は特に限定する必要はない。例えば、CaF・MgF、AlFなどの金属弗化物の1種または2種以上が用いられる。被覆剤中の金属弗化物が、13%未満では溶融スラグの粘性が不足し、スラグの被包性が悪くなり、ビード形状も劣化する。一方、30%を超えて被覆剤中に含有すると、アークの安定性が悪くなる。このため、被覆剤中の金属弗化物は13〜30%とする。
被覆剤中のMgは、溶接金属において脱酸剤として働き清浄な溶接金属を得るのに有効な他、溶接時のアーク安定剤として溶接作業性確保の上でも非常に効果的であるため添加する。その含有量が0.3%未満では十分な脱酸効果が得られず、一方、5%を超えて添加すると溶接時アークが不安定となり、スパッタが増加するとともにスラグの流動性が劣化し、ビード形状が悪化する。このため、本発明においては、被覆材中のMg含有量を0.3〜5%とした。なお、本発明において、被覆剤中のMgの形態は特に限定する必要はなく、金属Mg、Mg含有合金、Mg酸化物等のいずれの形態でも上記効果はほぼ同等に得られる。
被覆剤中のMo、Nb、Vは、本発明において、目的とする溶接金属の耐火特性を十分に発現するために特に重要な必須成分である。また、本発明者らの検討によれば、これらの3成分を被覆剤から溶接金属中に適量かつ複合して添加することで、700℃及び800℃における溶接金属の耐火特性を安定して確保することができ、その効果は、鋼心線から添加する場合に比べて顕著となることを確認した。また、これらの3成分を複合添加することにより少ない合金元素量で、高温強度が確保できるため、他の合金元素量の増加による靱性の劣化や高温強度の低下は抑制でき、構造物として要求される性靭性を良好に維持しつつ、700℃及び800℃における溶接金属の耐火特性を向上することができる。
被覆剤中のMoは発明において溶接金属の高温強度を高める元素として重要である。Mo含有量が0.25%未満ではNbおよびVとの複合添加による効果が十分でなく、一方、2.6%超では、溶接金属中のMoが過剰となって溶接金属の靭性を過度に劣化させる場合がある。このため、被覆剤中のMo含有量は0.25〜2.6%に限定する。
被覆剤中のNbも、発明において溶接金属の700〜800℃における高温強度を高める元素として重要である。被覆剤中のNb含有量が0.05%未満ではMoおよびVとの複合添加による効果が明確でなく、0.7%超では溶接金属の靭性を低下させる場合があるため、本発明においては、被覆剤中のNb含有量を0.05〜0.7%とする。
被覆剤中のVも、本発明において溶接金属の700〜800℃における高温強度を高める元素として重要である。被覆剤中のV含有量が0.02%未満ではMoおよびNbとの複合添加による効果が明確でなく、一方、1.5%超では溶接金属の靭性を低下させる場合がある。このため、本発明においては、被覆剤中のV含有量を0.02〜1.5%とする。
以上の基本成分組成からなる被覆剤による上記効果を発揮させるためには、上記各成分組成の限定とともに、溶接棒全質量に対する被覆剤の質量%、つまり、被覆剤の被覆率を25〜45%とする必要がある。
被覆率が25%未満では保護筒としての機能が不十分になって被覆アーク溶接時にシールドガスの発生が不足し、大気中のN混入による溶接金属中のNが増加し靭性が低下したり、スパッタが増加したり、生成スラグ量の不足によってビード外観が悪化する。一方、被覆率が45%を超えると、スラグ量が多くなりすぎるためにスラグ巻き込み等の欠陥が発生し易くなると共に、開先幅の狭い溶接継手に適用した場合に運棒が困難になるため、好ましくない。
したがって、本発明では、鋼心線外周に溶接棒全質量に対する質量%で25〜45%となるように被覆剤を被覆する。
被覆剤中の基本成分は上記の通りであるが、さらに、溶接金属特性の調整、作業性の改善、等のために、被覆剤中に、被覆剤全質量に対する質量%で、さらに、必要に応じて、Cu、Ni、Cr、W、Ti、Ta、Bの1種または2種以上を以下の含有範囲で添加させることができる。
被覆剤中のCuは、その含有量が0.1%未満では溶接金属の強度向上効果が明確でない。一方、3%超であると溶接金属の靱性が劣化する。このため、被覆剤中にCuを含有させる場合、その含有量は0.1〜3%に限定する。
被覆剤中のNiは、その含有量が0.1%未満では溶接金属の強度・靭性向上の効果が明確でない。一方、6%超であると溶接金属の降伏応力が低下し、耐溶接割れ性が劣化する。このため、Niを被覆剤中に含有させる場合、その含有量を0.1〜6%に限定する。
被覆剤中のCrは、その含有量が0.01%未満では溶接金属の強度向上効果が明確でない。一方、3%超であると溶接金属の靱性が劣化する。このため、Crを被覆剤中に含有させる場合はその含有量を0.01〜3%に限定する。
被覆剤中のWはその含有量が0.01%未満では溶接金属の強度向上効果が明確でない。一方、3%超であると溶接金属の靱性が劣化するため、Wを被覆剤中に含有させる場合はその含有量を0.01〜3%に限定する。
被覆剤中のTiは、その含有量が0.01%未満では溶接金属の靭性向上効果が明確でない。一方、1.5%超であると溶接金属の靱性が劣化し、かつ、スラグ剥離性の悪化等、溶接作業性を損なうようになる。このため、Tiを被覆剤中に含有させる場合はその含有量を0.01〜1.5%に限定する。
被覆剤中のTaは、その含有量が0.01%未満では溶接金属の強度向上効果が明確でない。一方、3%超であると溶接金属の靱性が劣化する。このため、Taを被覆剤中に含有させる場合はその含有量を0.01〜3%に限定する。
被覆剤中のBはその含有量が0.001%未満では溶接金属の強度・靭性向上効果の効果が明確でない。一方、0.3%超であると溶接金属の靱性が劣化し、かつ再熱脆化が顕著に生じる。このため、Bを被覆剤中に含有させる場合はその含有量を0.001〜0.3%に限定する。
本発明では、被覆剤中のその他の成分として、溶接金属の脱酸剤、合金剤、アーク安定剤、スラグ生成剤、粘結剤として作用する成分を本発明の目的とする溶接金属の特性を阻害しない範囲で添加することができる。
例えば、その他の成分として通常知られている脱酸剤を添加してもよい。
合金剤は前述のMo、Nb、Vなどに加えてSi、Mn等をその他成分として、溶接金属の脱酸、強度増加などの向上の目的で、それぞれ必要に応じて添加することができる。なお、これら合金剤の形態は金属粉のほか、鉄及び他の金属との合金粉の形で添加される。
アーク安定剤、スラグ生成剤として、そのほかに、鉄分、アルカリ成分、ルチールなどを添加することができる。
また、粘結剤としては、珪酸カリ、珪酸ソーダなどを添加できる。
本発明の被覆アーク溶接棒において、合金元素の中でも、特に、溶接金属組織の高温変態抑制のためにAc1変態温度を十分高めるとともに、700℃及び800℃での30分程度の時間で高温強度を維持する効果が高い、Mo、Nb、Vについては、被覆剤中に複合添加することを基本するが、鋼心線中にも、Mo、NbおよびVの1種または2種以上を添加することができる。
なお、本発明では、被覆剤および鋼心線の両方にMo、Nb、Vを添加する場合には、溶接金属の靭性を良好に維持しつつ、700℃及び800℃における耐火特性を向上させるためには溶接金属中のNb、MoおよびVの耐火特性向上および靭性阻害の寄与を考慮した、下記(1)〜(3)式を満足するように、該被覆剤中のNb、MoおよびVと、鋼心線中のNb、MoおよびVの1種または2種以上の各成分含有量を調整する。
0.09≦0.37SMo+0.85WMo≦0.97 ・・・(1)
0.007≦0.15SNb+0.85WNb≦0.11 ・・・(2)
0.007≦0.35SV+0.85WV≦0.53 ・・・(3)
但し、上記SMo、SNb、SVは、それぞれ被覆剤中のMo、Nb、Vの含有量(被覆剤全質量に対する質量%)を示し、上記WMo、WNb、WVは、それぞれ鋼心線中のMo、Nb、Vの含有量(鋼心線全質量に対する質量%)を示す。
本発明の効果を実施例によりさらに詳細に説明する。
図1に示すように、表1に示す化学組成の板厚16mmの700〜800℃耐火鋼からなる鋼板1間に角度50°、間隔12mmの開先2を設け、継手に供した。この継手の鋼板1開先部の裏面に厚み16mm、幅40mmの裏当金3を配置し、電流170A、電圧24V、入熱実績は14.7〜18.0kJ/cm(平均入熱17kJ/cm程度)の溶接条件で、溶接棒を用いて、被覆アーク溶接(SMAW)を行い、溶接継手を作製した。なお、溶接棒は、表2に示した化学組成の線径4mmの鋼心線(WA1〜WA10、WB1〜WB6)と表3に示した化学組成の被覆剤(FA1〜FA10、FB1〜FB13)とを様々組み合わせて表4に示した溶接棒(LA1〜LA19、LB1〜LB21)を作成し、用いられた。なお、表4において、溶接棒番号LA1〜LA19は、鋼心線組成、被覆剤組成、被覆率が全て本発明の規定範囲を満足している溶接棒であり、溶接棒番号LB1〜WB13は本発明の規定範囲を満足していない比較の溶接棒である。
図2に示す溶接継手に形成された溶接金属の位置、方向から、2mmVノッチシャルピー衝撃試験片4、丸棒の高温引張試験片5をそれぞれ採取した。引張試験は700℃及び800℃で実施し、また、2mmVノッチシャルピー衝撃試験は0℃で実施し、溶接金属の耐火特性(降伏強度、ここでは0.2%耐力を降伏強度とする)、耐高温脆化特性(引張試験の伸び、絞り値)、靱性(2mmVノッチシャルピー衝撃試験の0℃における吸収エネルギー:vE0)を評価した。合わせて目視によるビード形状の良し悪し、断面組織調査による欠陥の有無、種類も調査した。
これらの溶接棒により溶接継手に形成した溶接金属の機械的特性、溶接性の評価結果を表5に示す。
表5に示すように、本発明例の継手JA1〜JA19はいずれも、高温強度は0.2%耐力で、700℃では275MPa以上、800℃では81MPa以上と、本発明が目標とする、700℃で220MPa以上、800℃で70MPa以上の要求を十分満足している。また、高温での脆化は高温引張試験の延性値に反映されるが、本発明例においては、700℃、800℃とも引張試験の絞り値は十分高く高温脆化も生じていない。さらに、靭性も0℃におけるシャルピー吸収エネルギーが全て115J以上の高い靭性レベルが得られている。すなわち、本発明の耐火構造用鋼用被覆アーク溶接棒を用いた溶接継手においては、溶接金属の特性は高温強度、靭性、耐高温脆化、いずれも極めて良好なレベルが達成されることが明らかである。さらにビード形状も良好で、欠陥もない。
一方、表5における比較例の継手JB1〜JB21は本発明の要件を満足していないため、少なくとも高温強度、靭性、耐高温脆化特性のいずれの特性が本発明のものに比べて極端に劣っている劣っている。また、ビード形状が良好でなかったり、溶接欠陥が生じて継手健全性に問題がある。
すなわち、継手JB1は、溶接棒の鋼心線のC含有量が過大であるために、溶接金属のC量が過大となり、溶接金属の靱性が本発明に比べて劣る。また、溶接金属に低温割れも生じている。
継手JB2は、溶接棒の鋼心線のP含有量が過大であるために、溶接金属のP量が過大となり、溶接金属の靱性が本発明に比べて劣る。
継手JB3は、溶接棒の鋼心線のSiおよびCr含有量が過大であるために、溶接金属のSiおよびCr量が過大となり、溶接金属の靱性が本発明に比べて劣る。
継手JB4は、溶接棒の鋼心線のNおよびB含有量が過大であるために、溶接金属のNおよびB量が過大となり、溶接金属の靱性が本発明に比べて劣る。また、溶接金属に高温割れも生じており、継手の健全性も劣る。
継手JB5は、溶接棒の鋼心線のMo含有量が過大であるために、溶接金属のMo量が過大となり、溶接金属の靱性が本発明に比べて劣る。
継手JB6は、溶接棒の鋼心線のNb含有量が過大であるために、溶接金属のNb量が過大となり、溶接金属の靱性が本発明に比べて劣る。
継手JB7は、被覆剤の金属炭酸塩の量が過小であるため、シールド不足となって溶接金属のN、O量が過大となり、その結果、溶接金属の靱性が劣る。
継手JB8は、被覆剤の金属炭酸塩の量が過大であるため、ビード形状が悪く、また、スラグ剥離性の悪化に起因してスラグ巻き込みが生じており、強度、靱性には問題ないものの、継手健全性が劣り、好ましくない。
継手JB9は、被覆剤の金属弗化物の量が過小であるため、スラグの流動性が悪く良好なビード形状が得られない。また、アンダーカットも生じており、好ましくない。
継手JB10は、被覆剤の金属弗化物の量が過大であるため、アーク安定の劣化に起因してビード形状が劣り、また、溶接金属のN、O量も過大となり、その結果、溶接金属の靱性が劣る。
継手JB11は、被覆剤にMoが含有されていないため、溶接金属の高温強度が十分でない。
継手JB12は、被覆剤にNbが含有されていないため、溶接金属の高温強度が十分でない。
継手JB13は、被覆剤にVが含有されていないため、溶接金属の高温強度が十分でない。
継手JB14は、被覆剤中のMo含有量が過大なため、溶接金属の靱性が本発明に比べて劣る。
継手JB15は、被覆剤中のNb含有量が過大なため、溶接金属の靱性が本発明に比べて劣る。
継手JB16は、被覆剤中のV含有量が過大なため、溶接金属の靱性が本発明に比べて劣る。
継手JB17は、被覆剤中のMo含有量が過小なため、溶接金属の高温強度が十分でない。
継手JB18は、被覆剤中のNb含有量が過小なため、溶接金属の高温強度が十分でない。
継手JB19は、被覆剤中のV含有量が過小なため、溶接金属の高温強度が十分でない。
継手JB20は、鋼心線、被覆剤とも組成は本発明を満足しているが、被覆剤の被覆率が過小なため、被覆剤の保護筒としての機能が不十分で、溶接金属中のNが過大となり、靱性が劣る。
継手JB21は、鋼心線、被覆剤とも組成は本発明を満足しているが、被覆剤の被覆率が過大なため、発生するスラグ量が過大となって、スラグ巻き込みを生じており、継手の健全性確保の観点から好ましくない。
以上の実施例から、本発明の溶接棒によれば、700℃〜800℃までの耐火性に優れた耐火構造用鋼の被覆アーク溶接(SMAW)において、高温強度が十分高い上に、靭性や耐高温脆化特性にも優れ、かつ、ビード形状も良好で溶接欠陥のない溶接金属を得ることが可能であることが明らかである。
Figure 2007054878
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溶接継手の開先形状を示す模式図である。 溶接継手からの高温引張試験および2mmVノッチシャルピー衝撃試験片の採取要領を示す模式図である。
符号の説明
1 鋼板
2 裏当金
3 溶接ビード
4 2mmVノッチシャルピー衝撃試験片
5 丸棒引張試験片
6 開先

Claims (4)

  1. 鋼心線外周に溶接棒全質量に対する質量%で25〜45%となるように被覆剤を被覆し、
    前記鋼心線中に該鋼心線全質量に対する質量%で、
    C:0.005〜0.08%、
    Si:0.01〜1%、
    Mn:0.1〜2%、
    P:0.02%以下、
    S:0.01%以下、
    Al:0.1%以下、
    N:0.01%以下、
    O:0.02%以下を含有し、
    さらに、Mo:0.01〜1.14%、Nb:0.008〜0.13%、および、V:0.008〜0.62%の1種または2種以上を含有し、残部がFe及び不可避不純物からなり、
    前記被覆剤中に該被覆剤全質量に対する質量%で、
    金属炭酸塩:30〜60%、
    金属弗化物:13〜30%、
    Mg:0.3〜5%、
    Mo:0.25〜2.6%、
    Nb:0.05〜0.7%、
    V:0.02〜1.5%を含有し、
    かつ前記鋼心線および前記被覆剤中のMo、Nb、Vの含有量が下記(1)〜(3)を満足することを特徴とする耐火構造用鋼の被覆アーク溶接棒。
    0.09≦0.37SMo+0.85WMo≦0.97 ・・・(1)
    0.007≦0.15SNb+0.85WNb≦0.11 ・・・(2)
    0.007≦0.35SV+0.85WV≦0.53 ・・・(3)
    但し、上記SMo、SNb、SVは、それぞれ被覆剤中のMo、Nb、Vの含有量(被覆剤全質量に対する質量%)を示し、上記WMo、WNb、WVは、それぞれ鋼心線中のMo、Nb、Vの含有量(鋼心線全質量に対する質量%)を示す。
  2. 前記被覆剤中に、該被覆剤全質量に対する質量%で、さらに、
    Cu:0.1〜3%、Ni:0.1〜6%、Cr:0.01〜3%、W:0.01〜3%、Ti:0.01〜1.5%、Ta:0.01〜3%、および、B:0.001〜0.3%の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の耐火構造用鋼の被覆アーク溶接棒。
  3. 前記鋼心線中に、該鋼心線全質量に対する質量%で、さらに、
    Cu:0.05〜1.5%、Ni:0.05〜3%、Cr:0.01〜1.5%、W:0.01〜1.5%、Ti:0.005〜0.1%、Ta:0.01〜0.5%、および、B:0.0005〜0.01%の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の耐火構造用鋼の被覆アーク溶接棒。
  4. 前記鋼心線中に、該鋼心線全質量に対する質量%で、さらに、
    Ca:0.0002〜0.1%、Mg:0.0002〜0.1%、REM:0.0002〜0.1%、の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の耐火構造鋼の被覆アーク溶接棒。
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