JP5696824B1 - 溶接継手の製造方法 - Google Patents

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Abstract

本発明に係る溶接継手の製造方法は、所定のビッカース硬さHV、板厚、C含有量、およびCENを有する鋼板に対し、鋼製外皮にフラックスが充填されたフラックス入りワイヤを用いて、ガスシールドアーク溶接を行うことにより、溶接継手を製造する方法であって、前記ガスシールドアーク溶接時に、前記鋼板の温度が10℃以上の場合に予熱作業を行わず、前記鋼板の温度が10℃未満の場合には前記鋼板の温度が10℃以上となるように前記予熱作業を行い、前記溶接継手の溶接金属が所定の化学組成を有し、前記溶接金属のるCENが0.20〜0.58質量%であり、前記溶接金属の表面下1mmの平均ビッカース硬さHVが、337〜440である。

Description

本発明は、建設機械や産業機械分野で利用される耐摩耗性に優れる高硬度鋼板を溶接する際に、硬さが高くて耐摩耗性に優れ、かつ低温割れの発生しにくい溶接金属を有する溶接継手の製造方法に関する。
本願は、2013年11月8日に国際出願されたPCT/JP2013/080242号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
鉱山での掘削や土木作業用の建設機械に用いられる鋼板は、摩耗のために交換が必要となる場合が多いが、その使用寿命を長くするために、鋼板の硬さを高めた耐摩耗鋼が用いられる。使用される環境や目的によって鋼板の硬さは様々であるが、一般にはHB400級(ブリネル硬さの規格値でHB360からHB440、ビッカース硬さの規格値ではHV380からHV469)、HB450級(ブリネル硬さの規格値でHB410からHB490、ビッカース硬さの規格値ではHV435からHV533)、HB500級(ブリネル硬さの規格値でHB450からHB550、ビッカース硬さの規格値ではHV478からHV585)又はHB600級(ブリネル硬さの規格値でHB550からHB650、ビッカース硬さの規格値ではHV585からHV693)の耐摩耗鋼板が多く用いられている。
耐摩耗鋼の多くは溶接されるが、その溶接金属にも母材(耐摩耗鋼)に近い耐摩耗性が求められることがある。溶接金属の耐摩耗性を高めるためにも、やはりその硬さを高くする必要がある。しかしながら、溶接金属の硬さを高くすると、溶接時に侵入する水素を起因とする低温割れが非常に発生しやすくなる。さらに、高硬度である耐摩耗鋼を母材とするので、拘束力が強くなることも低温割れが生じやすくなる一因である。
このような低温割れを回避するためには、一般に溶接に先立って予熱が行われる。しかし、耐摩耗鋼は、通常の鋼よりも加熱によって硬さが低下しやすいので、あまり高い予熱温度をとることができない。
溶接金属の硬さは、母材と同等程度であることが望ましい。例えばHB400あるいはHB500級耐摩耗鋼を母材とする場合では、溶接金属の硬さを少なくともHV337(HB320)以上、できればHV380(HB360)以上とすることが望ましい。
また、溶接金属部において、耐摩耗性の観点で重要になるのは、表面付近の硬さである。多層盛り溶接においては、下層の溶接金属は、後続パスによって再熱されるために硬さがやや低下するが、多層盛り溶接の場合はその最上層の溶接金属、また1パス溶接の場合はその溶接金属の、それぞれの表面付近が十分な硬さを有していればよい。
以上のようなことから、HV380以上、HV693以下である高硬度の耐摩耗鋼を母材とする溶接継手において、表面硬さがHV337以上、HV533以下であり十分な耐摩耗性を有しながら、予熱をしなくても低温割れが発生しない溶接金属を形成させる溶接方法、または表面硬さがHV380以上、HV533以下であり十分な耐摩耗性を有しながら、予熱をしなくても低温割れが発生しない溶接金属を形成させる溶接方法があれば極めて有用であると考えられる。
高強度溶接金属で発生する水素起因の低温割れを抑制する技術としては、例えば特許文献1から5の方法が提案されている。
これらのうち特許文献1は、高強度ラインパイプなどの用途に用いられる鋼板について、残留オーステナイトを水素のトラップサイトとして機能させることにより、低温割れの発生を防ぐものである。特許文献2は、やはり高強度ラインパイプなどの用途に用いられる鋼板について、酸化物を水素のトラップサイトとして機能させることにより、低温割れの発生を防ぐものである。
特許文献3は、引張強さ800〜1150MPaの鋼材について、Mo炭化物をトラップサイトとして機能させることにより、低温割れの発生を防ぐ技術を開示している。特許文献4は、被覆アーク溶接材料の被覆材にMgを適量配合することによって、溶接直後の溶接金属中の拡散性水素量を3.0〜4.0ml/100g程度に低減して引張強さ880〜1180MPaの鋼材の耐低温割れ性を改善する技術を開示している。特許文献5は、ガスシールドアーク溶接用のフラックス入りワイヤに含まれる水素量を制限することで、低温割れを抑制する技術を開示している。
これらはいずれも母材および溶接金属の強度が1200MPa未満であり、HV380(引張強さ換算約1200MPa)以上の硬さを有して耐摩耗性を具備する溶接金属の低温割れ性を改善できる技術ではない。
さらに、一般に、オーステナイト系ステンレス溶接材料を用いると、溶接金属中への水素の侵入が大きく低減されるので、低温割れ感受性を下げることができる。また、オーステナイト組織であるため延性低下割れも生じにくい。しかし、オーステナイト系ステンレス溶接材料を用いた溶接金属は、強度つまり硬さを高くすることが容易でなく、耐摩耗性を具備することは期待できない。
このようなことから、HV380以上、HV693以下の高硬度の耐摩耗鋼を母材とする溶接継手において、表面硬さがHV337以上HV533以下であって、耐摩耗性に優れるとともに、低温割れが発生しにくい溶接金属、または表面硬さがHV380以上HV533以下であって、耐摩耗性に優れるとともに、低温割れが発生しにくい溶接金属を、ガスシールドアーク溶接によって形成することが求められている。
日本国特開2012−176434号公報 日本国特開2012−218034号公報 日本国特開2005−40816号公報 日本国特開平11−147196号公報 日本国特開2009−255168号公報
本発明の課題は、C含有量が高く表面硬さがHV380以上、HV693以下であるような高硬度鋼板を母材とした溶接継手であって、表面硬さがHV337以上HV533以下であって耐摩耗性に優れるとともに、低温割れが発生しにくい溶接金属、または表面硬さがHV380以上HV533以下であって耐摩耗性に優れるとともに、低温割れが発生しにくい溶接金属を有する溶接継手の製造方法を提供することである。
従来の耐摩耗鋼は、低温割れ防止のために、溶接時の予熱温度が重要だったので、軟鋼用の溶接材料で、予熱温度を最優先して溶接するのが普通であった。従って溶接金属部の硬さが低くて、摩耗が非常に起こりやすかったことを課題としていた。本発明は、それに対して溶接金属部の硬さを高くしようとすると、母材の熱影響部ではなくて、溶接金属自体が非常に割れやすいことを新たに見出した。それで、溶接金属のCENと割れとの関係を調査した上で、溶接金属のCENの適正範囲を見出した。
溶接時に溶接金属で発生する低温割れは、溶接金属の強度と、継手拘束力と、溶接金属中の拡散性水素量とに影響される。発明者らは、表面硬さがHV337以上HV533以下であるような高硬度の溶接金属、または表面硬さがHV380以上HV533以下であるようなさらに高硬度の溶接金属で、低温割れを確実に抑制するための方法を種々検討した結果、その最も確実な方法は、溶接金属中の拡散性水素量を十分低くすること、かつ溶接金属中の合金成分で規定されるCENを0.20〜0.58質量%にすることであるという結論を得た。
図1は、JIS Z3158に規定のy形溶接割れ試験を、種々の鋼板およびフラックス組成などを変化させた溶接材料により様々な条件にて実施し、種々の溶接金属の硬さおよび溶接金属中の拡散性水素量を有する溶接金属を作製し、その割れ発生を抑制する限界予熱温度を求めた結果である。図1には、溶接金属中の拡散性水素量と割れ発生を抑制する限界予熱温度との関係を、溶接金属の硬さレベル別に整理して示している。
ここで、低温割れ試験は、JIS Z3158(y形溶接割れ試験方法;1993年)に準拠し、室温(25℃)にて試験を実施し、表面および断面に割れがないことをもって合格とした。拡散性水素量の測定試験は、JIS Z3118(鋼溶接部の水素量測定方法;2007年)に準拠したガスクロマトグラフ法にて実施した。
図1に示すように、溶接直後における溶接金属中の拡散性水素量が1.0ml/100g未満であれば、低温割れ発生の限界予熱温度は、溶接金属の硬さにはあまり依存しない。従って、拡散性水素量を1.0ml/100g未満とすることにより、硬さがHV337以上HV533以下の溶接金属と、硬さがHV380以上HV533以下の溶接金属との低温割れ感受性を大きく低減することができる。
しかしながら、このレベルまで溶接直後における溶接金属中の拡散性水素量を低減することは、従来の技術では容易ではなかった。発明者らは、種々の検討を重ね、フラックス入りワイヤのフラックス組成の改善によって、溶接金属中の拡散性水素量を、従来には困難であったレベルまで安定して低減できることを新たに知見した。具体的には、フラックス成分にCaFをはじめとする弗化物を一定量含有させるとともに酸化物の量を調整し、かつ弗化物と酸化物との配合比を一定範囲とすることにより、溶接金属中の拡散性水素量を安定して1.0ml/100g未満に抑制することができることを知見した。
溶接金属の低温割れ感受性は、溶接金属の硬さに大きく依存するが、合金元素によっても影響される。発明者らは、HV337以上HV533以下の溶接金属、およびHV380以上HV533以下の溶接金属の、種々の合金組成と低温割れ感受性(割れ抑制予熱温度)との関係を調査した。低温割れ試験は、JIS Z3158(y形溶接割れ試験方法;1993年)に準拠して試験を実施し、予熱温度を変化させて低温割れを生じない最低の予熱温度を、割れ発生限界予熱温度とした。溶接にあたっては、以下で説明する本発明のフラックス入り溶接ワイヤを用いており、溶接金属中の拡散性水素量は、いずれも1.0ml/100g未満である。
その結果、図2に示すように、式1(溶接選書10.「鉄鋼材料の溶接」 産報出版(1999), p.163参照)で計算されるCENを0.58質量%以下とすれば割れ発生限界予熱温度を室温(25℃)以下とすることができ、予熱なしでも低温割れの発生を抑制できることを知見した。
CEN=[C]+(0.75+0.25×tanh(20×([C]−0.12)))×([Si]/24+[Mn]/6+[Cu]/15+[Ni]/20+([Cr]+[Mo]+[Nb]+[V])/5+5×[B]) ・・・(式1)
ただし、[]付元素は、それぞれの元素の含有量(質量%)を表す。また、添加元素が無しの場合は、[]内にゼロを代入する。
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、その要旨は以下のとおりである。
(1)本発明の第一の態様に係る溶接継手の製造方法は、ビッカース硬さHVが380以上514以下であり、板厚が20〜100mmであり、Cの含有量が0.120〜0.300質量%であり、下記の式1で計算されるCENが、0.20〜0.75質量%である鋼板、ビッカース硬さHVが514超565以下であり、板厚が12〜100mmであり、Cの含有量が0.120〜0.300質量%であり、下記の式1で計算されるCENが、0.20〜0.75質量%である鋼板、およびビッカース硬さHVが565超693以下であり、板厚が6〜12mmであり、Cの含有量が0.350〜0.450質量%であり、下記の式1で計算されるCENが、0.20〜0.85質量%である鋼板、のいずれか一つに対し、鋼製外皮にフラックスが充填されたフラックス入りワイヤを用いて、ガスシールドアーク溶接を行うことにより、溶接継手を製造する方法であって、(a)前記ガスシールドアーク溶接時に、前記鋼板の温度が10℃以上の場合に予熱作業を行わず、前記鋼板の温度が10℃未満の場合には前記鋼板の温度が10℃以上となるように前記予熱作業を行い、(b)前記フラックス入りワイヤが、CaF、BaF、SrF、MgFのうちの1種以上を含有し、その含有量の合計をαとしたとき、前記αが前記フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%で3.3〜8.0%であり、Ti酸化物、Si酸化物、Mg酸化物、Al酸化物のうちの1種以上を含有し、その含有量の合計をβとしたとき、前記βが前記フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%で0.10〜1.50%であり、CaCO、BaCO、SrCO、MgCOの含有量の合計が、前記フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%で0.60%未満であり、前記フラックス中の鉄粉の含有量が、前記フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%で10.0%未満であり、前記αに対する前記CaFの含有量の比が0.90以上であり、前記βに対する前記αの比が3.0以上80.0以下であり、CaOの含有量が、前記フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%で0.20%未満であり、金属弗化物、金属酸化物、および金属炭酸塩を除く、前記フラックス入りワイヤ中の化学成分が、前記フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%で:C:0.010〜0.060%未満;Si:0.05〜1.80%;Mn:0.50〜4.00%;P:0.050%以下;S:0.020%以下;Al:0.005〜0.150%;Cu:0〜0.75%;Ni:0〜1.00%未満;Cr:0〜3.50%;Mo:0〜1.50%;Ti:0〜0.150%;Nb:0〜0.15%;V:0〜0.45%;B:0〜0.0500%;Mg:0〜2.0%;Ca:0〜2.0%;REM:0〜0.0150%;残部:Feおよび不純物;からなり、(c)前記溶接継手の溶接金属の化学組成が、質量%で:C:0.100〜0.170%;Si:0.05〜0.80%;Mn:0.20〜2.50%;Al:0.0050〜0.1000%;P:0.050%以下;S:0.020%以下;N:0.015%以下;Cu:0〜0.50%;Ni:0〜0.70%未満;Cr:0〜2.50%;Mo:0〜1.00%;Ti:0〜0.100%;Nb:0〜0.100%;V:0〜0.30%;B:0〜0.0100%;O:0〜0.100%;Mg:0〜0.100%;Ca:0〜0.100%;REM:0〜0.0100%;残部:Feおよび不純物;からなり、前記溶接金属の、下記の式1で計算されるCENが、0.20〜0.58質量%であり、前記溶接金属の表面下1mmの平均ビッカース硬さHVが、337〜440であり、上記(a)〜(c)の全てを満足する。
CEN=[C]+(0.75+0.25×tanh(20×([C]−0.12)))×([Si]/24+[Mn]/6+[Cu]/15+[Ni]/20+([Cr]+[Mo]+[Nb]+[V])/5+5×[B]) ・・・(式1)
ただし、[]付元素は、それぞれの元素の含有量(質量%)を表す。
(2)本発明の第二の態様に係る溶接継手の製造方法は、ビッカース硬さHVが380以上514以下であり、板厚が20〜100mmであり、Cの含有量が0.120〜0.300質量%であり、下記の式1で計算されるCENが、0.20〜0.75質量%である鋼板、ビッカース硬さHVが514超565以下であり、板厚が12〜100mmであり、Cの含有量が0.120〜0.300質量%であり、下記の式1で計算されるCENが、0.20〜0.75質量%である鋼板、およびビッカース硬さHVが565超693以下であり、板厚が6〜12mmであり、Cの含有量が0.350〜0.450%質量であり、下記の式1で計算されるCENが、0.20〜0.85質量%である鋼板、のいずれか一つに対し、鋼製外皮にフラックスが充填されたフラックス入りワイヤを用いて、ガスシールドアーク溶接を行うことにより、溶接継手を製造する方法であって、(a)前記ガスシールドアーク溶接時に、前記鋼板の温度が10℃以上の場合に予熱作業を行わず、前記鋼板の温度が10℃未満の場合には前記鋼板の温度が10℃以上となるように前記予熱作業を行い、(b)前記フラックス入りワイヤが、CaF、BaF、SrF、MgFのうちの1種以上を含有し、その含有量の合計をαとしたとき、前記αが前記フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%で3.3〜8.0%であり、Ti酸化物、Si酸化物、Mg酸化物、Al酸化物のうちの1種以上を含有し、その含有量の合計をβとしたとき、前記βが前記フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%で0.10〜1.50%であり、CaCO、BaCO、SrCO、MgCOの含有量の合計が、前記フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%で0.60%未満であり、前記フラックス中の鉄粉の含有量が、前記フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%で10.0%未満であり、前記αに対する前記CaFの含有量の比が0.90以上であり、前記βに対する前記αの比が3.0以上80.0以下であり、CaOの含有量が、前記フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%で0.20%未満であり、金属弗化物、金属酸化物、および金属炭酸塩を除く、前記フラックス入りワイヤ中の化学成分が、前記フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%で:C:0.060〜0.350%;Si:0.05〜1.80%;Mn:0.50〜4.00%;P:0.050%以下;S:0.020%以下;Al:0.005〜0.150%;Cu:0〜0.75%;Ni:0〜1.00%未満;Cr:0〜3.50%;Mo:0〜1.50%;Ti:0〜0.150%;Nb:0〜0.15%;V:0〜0.45%;B:0〜0.0500%;Mg:0〜2.0%;Ca:0〜2.0%;REM:0〜0.0150%;残部:Feおよび不純物;からなり、(c)前記溶接継手の溶接金属の化学組成が、質量%で:C:0.120〜0.250%;Si:0.05〜0.80%;Mn:0.20〜2.50%;Al:0.0050〜0.1000%;P:0.050%以下;S:0.020%以下;N:0.015%以下;Cu:0〜0.50%;Ni:0〜0.70%未満;Cr:0〜2.50%;Mo:0〜1.00%;Ti:0〜0.100%;Nb:0〜0.100%;V:0〜0.30%;B:0〜0.0100%;O:0〜0.100%;Mg:0〜0.100%;Ca:0〜0.100%;REM:0〜0.0100%;残部:Feおよび不純物;からなり、前記溶接金属の、下記の式1で計算されるCENが、0.20〜0.58質量%であり、前記溶接金属の表面下1mmの平均ビッカース硬さHVが、380〜533であり、上記(a)〜(c)の全てを満足する。
CEN=[C]+(0.75+0.25×tanh(20×([C]−0.12)))×([Si]/24+[Mn]/6+[Cu]/15+[Ni]/20+([Cr]+[Mo]+[Nb]+[V])/5+5×[B]) ・・・(式1)
ただし、[]付元素は、それぞれの元素の含有量(質量%)を表す。
(3)本発明の第三の態様に係る溶接継手の製造方法は、ビッカース硬さHVが565超693以下であり、板厚が12〜20mmであり、Cの含有量が0.350〜0.450質量%であり、下記の式2で計算されるCENが、0.20〜0.85質量%である鋼板、およびビッカース硬さHVが565超693以下であり、板厚が20mm超50mm以下であり、Cの含有量が0.350〜0.450質量%であり、下記の式2で計算されるCENが、0.20〜0.85質量%である鋼板、のいずれか一つに対し、鋼製外皮にフラックスが充填されたフラックス入りワイヤを用いて、ガスシールドアーク溶接を行うことにより、溶接継手を製造する方法であって、(a)前記ガスシールドアーク溶接時に、前記鋼板の前記板厚が20mm以下の場合、前記鋼板の温度が100℃以上となるように予熱作業を行い、前記鋼板の前記板厚が20mm超の場合、前記鋼板の温度が150℃以上となるように前記予熱作業を行い、(b)前記フラックス入りワイヤが、CaF、BaF、SrF、MgFのうちの1種以上を含有し、その含有量の合計をαとしたとき、前記αが前記フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%で3.3〜8.0%であり、Ti酸化物、Si酸化物、Mg酸化物、Al酸化物のうちの1種以上を含有し、その含有量の合計をβとしたとき、前記βが前記フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%で0.10〜1.50%であり、CaCO、BaCO、SrCO、MgCOの含有量の合計が、前記フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%で0.60%未満であり、前記フラックス中の鉄粉の含有量が、前記フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%で10.0%未満であり、前記αに対する前記CaFの含有量の比が0.90以上であり、前記βに対する前記αの比が3.0以上80.0以下であり、CaOの含有量が、前記フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%で0.20%未満であり、金属弗化物、金属酸化物、および金属炭酸塩を除く、前記フラックス入りワイヤ中の化学成分が、前記フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%で:C:0.060〜0.350%;Si:0.05〜1.80%;Mn:0.50〜4.00%;P:0.050%以下;S:0.020%以下;Al:0.005〜0.150%;Cu:0〜0.75%;Ni:0〜1.00%未満;Cr:0〜3.50%;Mo:0〜1.50%;Ti:0〜0.150%;Nb:0〜0.15%;V:0〜0.45%;B:0〜0.0500%;Mg:0〜2.0%;Ca:0〜2.0%;REM:0〜0.0150%;残部:Feおよび不純物;からなり、(c)前記溶接継手の溶接金属の化学組成が、質量%で:C:0.120〜0.250%;Si:0.05〜0.80%;Mn:0.20〜2.50%;Al:0.0050〜0.1000%;P:0.050%以下;S:0.020%以下;N:0.015%以下;Cu:0〜0.50%;Ni:0〜0.70%未満;Cr:0〜2.50%;Mo:0〜1.00%;Ti:0〜0.100%;Nb:0〜0.100%;V:0〜0.30%;B:0〜0.0100%;O:0〜0.100%;Mg:0〜0.100%;Ca:0〜0.100%;REM:0〜0.0100%;残部:Feおよび不純物;からなり、前記溶接金属の、下記の式2で計算されるCENが、0.20〜0.58質量%であり、前記溶接金属の表面下1mmの平均ビッカース硬さHVが、380〜533であり、上記(a)〜(c)の全てを満足する。
CEN=[C]+(0.75+0.25×tanh(20×([C]−0.12)))×([Si]/24+[Mn]/6+[Cu]/15+[Ni]/20+([Cr]+[Mo]+[Nb]+[V])/5+5×[B]) ・・・(式2)
ただし、[]付元素は、それぞれの元素の含有量(質量%)を表す。
(4)上記(1)〜(3)に記載の溶接継手の製造方法は、前記フラックス入りワイヤ中の前記CaOの含有量が、前記フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%で0.15%以下であってもよい。
(5)上記(1)〜(4)のいずれか一項に記載の溶接継手の製造方法は、前記金属弗化物、前記金属酸化物、および前記金属炭酸塩を除く、前記フラックス入りワイヤ中の前記化学組成が、前記フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%で:Ni:0〜0.1%であってもよい。
(6)上記(1)〜(5)のいずれか一項に記載の溶接継手の製造方法は、前記金属弗化物、前記金属酸化物、および前記金属炭酸塩を除く、前記フラックス入りワイヤ中の前記化学組成が、前記フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%で:Cu:0〜0.50%;Cr:0〜1.00%;Mo:0〜0.50%;Ti:0〜0.050%;Nb:0〜0.05%であってもよい。
(7)上記(1)〜(6)のいずれか一項に記載の溶接継手の製造方法は、前記フラックス入りワイヤの前記鋼製外皮にスリット状の隙間があってもよい。
(8)上記(1)〜(6)のいずれか一項に記載の溶接継手の製造方法は、前記フラックス入りワイヤの前記鋼製外皮にスリット上の隙間がなくてもよい。
(9)上記(1)〜(8)のいずれか一項に記載の溶接継手の製造方法は、前記フラックス入りワイヤの表面にパーフルオロポリエーテル油が塗布されていてもよい。
本発明の上記各態様によれば、C含有量が高く表面硬さがHV380以上、HV693以下であるような高硬度鋼板を母材とする溶接継手であって、表面硬さがHV320以上HV533以下であって耐摩耗性に優れるとともに低温割れが発生しにくい溶接金属、または表面硬さがHV380以上HV533以下であって耐摩耗性に優れるとともに低温割れが発生しにくい溶接金属を有する溶接継手を得ることができる。
母材の硬さおよび溶接金属中の拡散性水素量と割れ発生限界予熱温度との関係を示す図である。 HV337以上、HV533以下で溶接金属中の拡散性水素量1.0ml/100g未満の溶接金属における、CENと割れ発生限界予熱温度との関係を示す図である。 ワイヤの切断断面を示す図である。 ワイヤの切断断面を示す図である。 ワイヤの切断断面を示す図である。
高硬度鋼板を母材とする溶接継手において、発明者らは、上記のように、溶接直後における溶接金属中の拡散性水素量が1.0ml/100g未満であれば、低温割れ発生限界予熱温度は、溶接金属の硬さにはあまり依存せず、HV337以上HV533以下の溶接金属とHV380以上HV533以下の溶接金属との低温割れ感受性を大きく低減することができることを知見した。
さらに発明者らは、溶接直後における溶接金属中の拡散性水素量を1.0ml/100g未満とするために、フラックス入りワイヤのフラックス成分の組合せとその配合比とを種々変化させて検討を重ねた。
その結果、水素低減に特に効果のあるのはCaFをはじめとする弗化物であり、フラックス成分に一定量を含有させることにより溶接金属中の拡散性水素量を大きく低減でき、さらに酸化物の量を調整し、かつ弗化物と酸化物の配合比を一定範囲とすることにより、拡散性水素量を安定して1.0ml/100g未満に抑制することができることを知見するに至った。
本発明は、このような検討に基づいてなされたものである。以下、本実施形態に係る溶接継手の製造方法の一態様について説明する。
本発明は、耐摩耗鋼板として広く用いられている、C含有量が質量%で0.12〜0.45%で、HV380以上、HV693以下の高硬度の厚鋼板を母材として用い、それをガスシールドアーク溶接して形成した溶接継手を対象とする。
本発明では、溶接金属を、上記(1)または(2)に記載した化学組成を有するものとする。
以下、溶接金属の化学組成の限定理由について説明する。以下の説明において、「%」は特に説明がない限り、「質量%」を意味する。
(C:0.100〜0.250%)
Cは、溶接金属の硬さに最も影響する元素である。母材硬さがHV380以上であるときに、溶接金属にある程度の耐摩耗性を確保するためには、溶接金属の表面硬さは少なくともHV337以上であることが望ましい。そのためには溶接金属のC含有量は0.100%以上が必要である。また、母材硬さがHV380以上であるときに、母材に近い耐摩耗性を確保するためには、溶接金属の表面硬さもHV380以上であることが望ましい。溶接金属の表面硬さをHV380以上にする必要がある場合には、溶接金属のC含有量を0.120%以上にする必要がある。しかし、C含有量が0.250%を超えると、溶接金属の硬さがHV533を超えて溶接金属の靭性が低下することがあるので、C含有量の上限を0.250%とする。なお、後述するC含有量が0.010〜0.060%未満のフラックス入りワイヤを用いて作られた溶接継手の溶接金属のC含有量は、0.100〜0.170%となることが通常である。安定してHV380以上の母材硬さを得るためには、C含有量の下限を0.130%または0.140%としてもよい。また、溶接金属の靭性を安定して得るために、C含有量の上限を0.230%または0.210%としてもよい。
(Si:0.05〜0.80%)
Siは、脱酸元素であり、溶接金属のO含有量を低減して清浄度を高めるためにフラックスには一定量添加する。そのため溶接金属中のSi含有量も0.05%以上が含有される。必要に応じて、Si含有量の下限を0.10%、0.15%又は0.20%としてもよい。Siは、0.80%を超えて含有すると溶接金属の靱性を劣化させることがあるため、これを上限とする。溶接金属の靭性改善のため、Si含有量の上限を0.70%、0.65%、0.60%又は0.50%としてもよい。
(Mn:0.20〜2.50%)
Mnは、MnSを形成してSによる粒界脆化を抑制する効果があるので、溶接金属には少なくとも0.20%以上含有させるようにする。またMnは溶接金属の焼入性を確保して強度を高める効果のある元素であるので、硬さを安定的に得るためには、0.50%以上含有することが望ましい。溶接金属の硬さ向上のため、Mn含有量の下限を0.60%、0.70%、0.80%又は0.90%としてもよい。一方、Mnは、2.50%を超えて含有すると、粒界脆化感受性が増加して溶接金属の靱性が劣化するため、これを上限とする。溶接金属の靭性改善のため、Mn含有量の上限を2.30%、2.10%、1.90%、1.70%又は1.50%に制限してもよい。
(Al:0.0050〜0.1000%)
Alは脱酸元素であり、Siと同様に、溶接金属中のO含有量を低減することにより、溶接金属の清浄度を向上させる効果があるので、フラックスには一定量を添加する必要がある。本実施形態に係るフラックス入りワイヤを用いて得られた溶接継手の溶接金属には、通常、0.0050%以上のAlが含まれる。Al量が0.0050%未満であった場合、溶接金属の低温靱性が低下するおそれがある。一方、0.1000%を超えて含有させると、窒化物や酸化物を形成して、溶接金属の靱性を劣化させるので、これを上限とする。溶接金属の靭性改善のため、Al含有量の上限を0.0900%、0.0800%、0.0700%又は0.0600%に制限してもよい。
(P:0.050%以下)
Pは不純物元素であり、靱性を劣化させる。そのため極力低減する必要があるが、靱性への悪影響が許容できる範囲として、溶接金属のP含有量は0.050%以下に制限する。必要に応じて、P含有量の上限を0.030%、0.0250%、0.0200%又は0.0150%に制限してもよい。P含有量の下限を制限する必要はない。P含有量の下限は0%である。
(S:0.020%以下)
Sも不純物元素であり、溶接金属中に過大に存在すると靱性と延性とをともに劣化させるため、極力低減することが好ましい。靱性、延性への悪影響が許容できる範囲として、溶接金属のS含有量は0.020%以下に制限する。必要に応じて、S含有量の上限を0.015%、0.010%、0.008%又は0.006%に制限してもよい。S含有量の下限を制限する必要はない。S含有量の下限は0%である。
(N:0.015%以下)
Nは、溶接金属中には不可避的に含有されるが、0.015%を超えると粗大なAlNやBNを形成して靭性を低下させる。溶接金属への影響を許容できる上限としてN含有量は0.015%以下に制限する。必要に応じて、N含有量の上限を0.010%、0.008%又は0.006%に制限してもよい。N含有量の下限を制限する必要はない。N含有量の下限は0%である。
(O:0〜0.100%)
Oは、溶接金属中には不可避的に含有されるが、靱性、延性への悪影響が許容できる範囲として、溶接金属のO含有量は0.100%以下に制限する。必要に応じて、O含有量の上限を0.080%、0.060%、0.050%又は0.040%としてもよい。O含有量の下限を制限する必要はない。O含有量の下限は0%である。
(Cu:0〜0.50%)
Cuは、溶接金属の強度と靭性とを向上させることができるので、選択元素として含有できる。しかしながら、Cu含有量が0.50%を超えると靭性が低下することがあるため、溶接金属のCu含有量は0.50%以下とする。必要に応じて、Cu含有量の上限を0.40%又は0.30%としてもよい。Cu含有量の下限を制限しなくてもよい。このため、Cu含有量の下限は0%である。一方、強化効果を十分に得るために、溶接金属に0.10%以上含有させてもよい。溶接金属中にCuを含有させる方法としては、ワイヤの外皮表面のめっき、あるいは、フラックスに単体または合金元素として添加する等の方法がある。
(Ni:0〜0.70%未満)
Niは靱性向上に有効な元素とされる選択元素として含有できる。しかし、C含有量が高い場合にはその効果は限定的であり、高価な元素でもあるので、溶接金属へのNi含有量は0.70%未満とする。必要に応じて、Ni含有量の上限を0.60%、0.40%又は0.20%としてもよい。Ni含有量の下限を制限しなくてもよい。このため、Ni含有量の下限は0%である。一方、靭性向上効果を得るために、溶接金属に0.05%以上含有させてもよい。
(Cr:0〜2.50%)
Crは、焼入性を高めることにより溶接金属の硬さ向上に有効な元素であり、選択元素として含有できる。しかしながら、2.50%を超えて過剰に含有させると、靱性を低下させることがあるため、Cr含有量は2.50%を上限とする。必要に応じて、Cr含有量の上限を1.50%、1.00%、0.70%又は0.40%としてもよい。Cr含有量の下限を制限しなくてもよい。このため、Cr含有量の下限は0%である。一方、溶接金属の硬さ向上の目的で添加する場合には、その効果を得るために0.10%以上含有させてもよい。
(Mo:0〜1.00%)
Moは、焼入性を高めることにより溶接金属の硬さ向上に有効な元素であり、選択元素として含有できる。しかしながら、1.00%を超えて過剰に含有させると、靱性を低下させることがあるため、Mo含有量は1.00%を上限とする。必要に応じて、Mo含有量の上限を0.70%、0.60%、0.40%又は0.20%としてもよい。Mo含有量の下限を制限しなくてもよい。このため、Mo含有量の下限は0%である。一方、硬さ向上の目的で添加する場合には、その効果を得るために0.05%以上含有させてもよい。
(Ti:0〜0.100%)
TiもAlと同様、脱酸元素として有効であり、溶接金属中のO含有量を低減させる効果があり、選択元素として含有できる。また、固溶Nを固定して靱性への悪影響を緩和するためにも有効であるが、溶接金属中のTi含有量が0.100%を超えて過剰になると、粗大な酸化物の形成に起因した靱性劣化、過度な析出強化による靱性劣化が生じる可能性が大きくなるので、Ti含有量の上限は0.100%とする。必要に応じて、Ti含有量の上限を0.080%、0.050%、0.030%又は0.020%としてもよい。Ti含有量の下限を制限しなくてもよい。このため、Ti含有量の下限は0%である。靱性改善の目的に、0.010%以上含有させてもよい。
(Nb:0〜0.100%)
Nbは固溶により溶接金属の硬さを向上させる効果があり、選択元素として含有できる。しかしながら、0.100%を超えて含有させると、溶接金属中に過剰に含有され、粗大な析出物を形成して靭性を劣化させるため好ましくないので、Nb含有量の上限を0.100%とする。必要に応じて、Nb含有量の上限を0.080%、0.050%、0.030%又は0.020%としてもよい。Nb含有量の下限を制限しなくてもよい。このため、Nb含有量の下限は0%である。溶接金属の硬さ向上目的に0.010%以上含有させてもよい。
(V:0〜0.30%)
Vは、焼入性を高めることにより溶接金属の硬さ向上に有効な元素であり、選択元素として含有できる。しかしながら、0.30%を超えて過剰に含有させると、靱性を低下させることがあるため、V含有量は0.30%を上限とする。必要に応じて、V含有量の上限を0.25%、0.20%又は0.15としてもよい。V含有量の下限を制限しなくてもよい。このため、V含有量の下限は0%である。溶接金属の硬さ向上のために0.01%以上含有させてもよい。
(B:0〜0.0100%)
Bは、溶接金属中に適正量含有させると、固溶Nと結びついてBNを形成して、固溶Nの靭性に対する悪影響を減じる効果がある。またBは、焼入性を高めて強度向上に寄与する効果もあり、選択元素として含有できる。これらの効果を得るために0.0003%以上含有させてもよい。一方、B含有量が0.0100%超になると、溶接金属中のBが過剰となり、粗大なBNやFe23(C、B)等のB化合物を形成して靭性を逆に劣化させるため、好ましくない。そこで、Bを含有させる場合のB含有量の上限は0.0100%とする。必要に応じて、B含有量の上限を0.0080%、0.0060%、0.0040%又は0.0020%としてもよい。B含有量の下限を制限する必要はなく、B含有量の下限は0%である。
(Mg:0〜0.100%)
Mg含有量の下限を制限する必要はなく、Mg含有量の下限は0%である。しかし、Mgは強脱酸元素であり、溶接金属中のO含有量を低減し、溶接金属の延性及び靭性を向上させために、0.001%以上含有させてもよい。しかし、溶接金属中のMg含有量が0.100%を超えると、溶接金属中での粗大酸化物の形成による靭性低下が無視できなくなる。このため、Mgを含有させる場合にも、Mg含有量を0.100%以下とする。必要に応じて、Mg含有量の上限を0.0080%、0.0060%、0.0040%又は0.0020%としてもよい。
(Ca:0〜0.100%)
(REM:0〜0.0100%)
CaおよびREM含有量の下限を制限する必要はなく、CaおよびREM含有量の下限は0%である。しかし、Ca、REMはいずれも溶接金属中での硫化物の構造を変化させ、また硫化物、酸化物のサイズを微細化して延性及び靭性向上に有効であり、Caを0.002%以上、REMを0.0002%以上、含有してもよい。一方、過剰に含有すると、硫化物や酸化物の粗大化を生じ、延性、靭性の劣化を招くため、含有させる場合のそれぞれの上限を、Caでは0.100%、REMでは0.0100%とする。
以上の化学組成を含有する溶接金属は、鉄(Fe)を主成分とする残部が本実施形態に係る溶接継手の特性を阻害しない範囲で、製造過程等で混入する不純物を含有してもよい。
(CEN:0.20〜0.58質量%)
図2に示すように、HV380以上、HV533以下の溶接金属において、溶接金属中の拡散性水素量が1.0ml/100g未満であるとき、式1で計算されるCENを0.58質量%以下とすることで、JIS Z3158のy形溶接割れ試験において、割れ発生限界予熱温度が25℃以下となり、実質的に予熱なしでの溶接が可能となる。
ここで、溶接割れを確実に防止するために、CENの上限を0.55質量%、0.53質量%、0.50質量%、0.47質量%又は0.45質量%としてもよい。溶接金属の硬さをHV380以上とするために、CENの下限を0.20質量%とする。溶接金属の硬さが高い方が、耐摩耗性が向上するため、CENの下限を0.24質量%、0.28質量%、0.30質量%又は0.32質量%としてもよい。
(a)母材のビッカース硬さHVが380以上514以下(HB360以上475以下に相当)であり、母材の板厚が20〜100mmであり、母材のCの含有量が0.120〜0.300%であり、式1で計算されるCENが、0.20〜0.75質量%である母材。
(b)母材のビッカース硬さHVが514超565以下(HB475超530以下に相当)であり、母材の板厚が12〜100mmであり、母材のCの含有量が0.120〜0.300%であり、式1で計算されるCENが、0.20〜0.75質量%である母材。
(c)母材のビッカース硬さHVが565超693以下(HB530超650以下に相当)であり、母材の板厚が6〜12mmであり、母材のCの含有量が0.350〜0.450%であり、式1で計算されるCENが、0.20〜0.85質量%である母材。
上記(a)〜(c)のいずれかひとつを満足する母材に対し、ガスシールドアーク溶接時に、母材の温度が10℃以上の場合、溶接時の予熱作業を行う必要がないが、母材の温度が10℃未満の場合には、母材の温度が10℃以上となるように予熱作業を行う必要がある。つまり、母材(鋼板)の温度が10℃未満の場合のみ、母材(鋼板)の温度が10℃以上になるように予熱作業を行う必要がある。この母材の温度(予熱温度)の上限を特に定める必要はないが、75℃未満又は50℃未満としても差し支えない。
(d)母材のビッカース硬さHVが565超693以下(HB530超650以下に相当)であり、母材の板厚が12〜20mmであり、母材のCの含有量が0.350〜0.450%であり、式1で計算されるCENが、0.20〜0.85質量%である母材。
(e)母材のビッカース硬さHVが565超693以下(HB530超650以下に相当)であり、母材の板厚が20mm超50mm以下であり、母材のCの含有量が0.350〜0.450%であり、式1で計算されるCENが、0.20〜0.85質量%である母材。
上記(d)または(e)を満足する母材に対し、ガスシールドアーク溶接時に、母材の板厚が20mm以下の場合、母材を100℃以上に予熱を行い、母材の板厚が20mm超の場合、母材を150℃以上の予熱を行う。この母材の温度(予熱温度)の上限を特に定める必要はないが、175℃未満又は150℃未満としても差し支えない。また、HV380以上にするために、CENを0.20質量%以上とする。
CEN=[C]+(0.75+0.25×tanh(20×([C]−0.12)))×([Si]/24+[Mn]/6+[Cu]/15+[Ni]/20+([Cr]+[Mo]+[Nb]+[V])/5+5×[B]) ・・・(式1)
ただし、[]付元素は、それぞれの元素の含有量(質量%)を表す。
式1では、含有されていない元素は、その元素に対応する[]内にゼロを代入する。この計算方法は、母材(鋼板)および溶接金属、共通である。
本発明では、溶接金属について、さらに、その表面下1mmの平均ビッカース硬さをHV337以上HV533以下、またはHV380以上HV533以下にする。本発明では、溶接金属について、さらに、溶接直後の拡散性水素量が1.0ml/100g未満であるようにする。
表面下1mmの位置の硬さが、HV337以上、HV533以下となれば、溶接金属に必要な耐摩耗性の要件を満たす。HV337未満では、耐磨耗性が不足する。HV533を超えると、低温割れが発生しやすくなる。
硬さの測定は、溶接金属において、溶接方向と垂直の断面を切断し、研磨したサンプルを採取し、溶接金属の表面下1mmの位置のビッカース硬さを10点測定し、平均値を算出することによって求めるものとする。
また、溶接直後における溶接金属中の拡散性水素量については、図1を引用して先に説明したように、1.0ml/100g未満であれば、低温割れ発生限界予熱温度は、溶接金属の硬さにはあまり依存せず、硬さがHV337以上HV533以下の溶接金属、およびHV380以上HV533以下の溶接金属の低温割れ感受性を大きく低減することができる。
拡散性水素量は、JIS Z 3118(鋼溶接部の水素量測定方法;2007年)に準拠したガスクロマトグラフ法により測定する。
なお、水素の拡散速度は常温で比較的大きいため、溶接金属の拡散性水素量は溶接直後に測定する必要がある。このため、溶接直後に測定しない限り、拡散性水素量を正確に測定できない。
以上のような溶接金属を有する溶接継手を製造するには、溶接しようとする高硬度厚鋼板を母材とし、例えば、上記母材2枚を間に開先を形成するように溶接位置にセットし、フラックス入り溶接ワイヤを用いてガスシールドアーク溶接を行い、母材間に溶接金属を生成させることによって、溶接金属とその両側の母材鋼板とから成る溶接継手が形成される。
以下、上記溶接金属を形成するために用いられる、鋼板、フラックス入り溶接ワイヤ及び溶接条件などについて説明する。
母材とする鋼板としては、C含有量が、質量%で、0.120%以上、0.450%以下であり、HV380以上、HV693以下である高硬度厚鋼板を対象とする。
用いる鋼板の板厚としては、一般的に厚板といわれる6mm以上100mm以下のものを対象としている。
このような条件を満たす鋼板は、土木・建築作業用の機械など、耐摩耗性が必要な個所に広く用いられているもので、C含有量以外の化学組成について特に限定されるものではないが、一例をあげれば、
C:0.120〜3.000%、Si:0.10〜0.55%、Mn:0.20〜2.00%、Al:0.01〜0.10%、P:0.020%以下、S:0.015%以下、Cu:0.50%以下、Ni:1.00%以下、Cr:1.20%以下、Mo:0.60%以下、Nb:0.05%以下、V:0.10%以下、B:0.0050%以下を含有する鋼がある。また、式1で計算されるCENが0.20〜0.85質量%であるものを対象としている。
母材の溶接熱影響部(HAZ)で溶接割れを生じないようにするために、CENの上限を0.85質量%とする。より確実にHAZ部での溶接割れを防止するために、CENの上限を0.80質量%、0.75質量%、0.73質量%、0.70質量%、0.68質量%、0.65質量%、0.63質量%又は0.60質量%としてもよい。母材の硬さをHV380以上とするために、CENの下限を0.20質量%とする。母材の硬さを高めるため、CENの下限を0.24質量%、0.28質量%、0.30質量%、0.32質量%、0.35質量%又は0.38質量%としてもよい。母材の硬さがHV565以下の鋼板は一般的にCENが0.75質量%を超えることは少ないため、母材の硬さがHV565以下の鋼板のCENの上限を0.75質量%とする。
母材の硬さの測定方法は、母材の板厚方向断面の表面下1mmの位置のビッカース硬さを5点以上測定し、平均値を求める方法とする。
続いて、用いるフラックス入り溶接ワイヤについて、フラックス成分と合金成分とに分けて説明する。なお、フラックス入り溶接ワイヤについての説明中の成分の含有量は、フラックス入り溶接ワイヤ全質量に対する質量%を表す。
最初に、ワイヤの鋼製外皮の内部に挿入されるフラックス成分について説明する。
CaF、BaF、SrF、MgFの金属弗化物の1種または2種以上と、Ti酸化物(例えばTiO)、Si酸化物(例えばSiO)、Mg酸化物(例えばMgO)、Al酸化物(例えばAl)の金属酸化物の1種または2種以上を、溶接ワイヤ中に一定量含有させ、かつそれらの弗化物と酸化物との比を一定範囲とすることで、溶接金属中の拡散性水素量を安定して1.0ml/100g未満とすることができる。
この効果を得るには、含有するCaF、BaF、SrF、MgFの合計量をαとしたとき、合計量αがフラックス入りワイヤの全質量に対する質量%で3.3%以上、8.0%以下であること、また含有するTi酸化物、Si酸化物、Mg酸化物、Al酸化物の合計量をβとしたとき、合計量βがフラックス入りワイヤの全質量に対する質量%で0.10%以上、1.50%以下であること、さらに上記αに対する上記CaFの含有量の比が0.90以上であり、上記合計量βに対する上記合計量αの比([合計量α]/[合計量β])が3.0以上、80.0以下であることが要件となる。
含有する金属弗化物の合計量αが3.3%未満では、溶接金属中の拡散性水素量を安定して1.0ml/100g未満とすることができない。溶接金属中の拡散性水素量をより低減するために、合計量αの下限を3.5%、3.7%又は3.9%としてもよい。また、8.0%を超えると、溶接ヒューム、スラグが過剰に生成するため、溶接作業性が著しく低下し、好ましくない。溶接ヒュームやスラグの過剰生成などを回避するために、合計量αの上限を7.5%、7.0%、6.5%、6.0%又は5.7%としてもよい。含有する金属酸化物の合計量βが0.10%未満では、溶接ビードの形状が悪くなることがあり、1.50%超では、靭性を低下させることがある。溶接ビードの形状をよくするため、合計量βの下限を0.20%、0.30%、0.40%又は0.50%としてもよい。靭性の改善のため、合計量βの上限を1.30%、1.20%、1.10%、1.00%、0.90%又は0.80%としてもよい。
さらに、上記合計量βに対する上記合計量αの比が3.0未満では、溶接金属中の拡散性水素量を安定して1.0ml/100g未満とすることができず、80.0超では、溶接ヒューム、スラグが過剰に生成するため、溶接作業性が著しく低下し、好ましくない。溶接金属中の拡散性水素量をより低減するために、上記比([合計量α]/[合計量β])の下限を3.2、3.5、3.7又は4.0にしてもよい。溶接ヒュームやスラグの過剰生成などを回避するために、上記比([合計量α]/[合計量β])の上限を40.0、30.0、20.0、15.0又は13.0としてもよい。αに対するCaFの含有量の比が0.90未満である場合、溶接金属中の拡散性水素量を1.0ml/100g未満とすることができなくなる。何故なら、CaFは、金属弗化物の中で最も拡散性水素量を低減させる効果が大きいからである。αに対するCaFの含有量の比が最大となるのは、フラックス中にCaF以外の金属弗化物が含まれない場合である。従って、αに対するCaFの含有量の比の上限値は1.0である。
以上から、含有する金属弗化物の合計量α、金属酸化物の合計量β、および金属酸化物の合計量βに対する金属弗化物の合計量αの比を、それぞれ上記のように限定する。
なお、上記合計量βは、フラックス入りワイヤ中の含有量であり、フラックスの造粒に使用されるバインダー(SiOを主成分とする水ガラス)などに含まれるものも合計した含有量とする。
本実施形態に係るフラックス入り溶接ワイヤでは、CaCO、BaCO、SrCO、MgCOの金属炭酸塩の1種または2種以上を、アーク安定性作用とアーク集中性とを高める目的でさらに添加できる。しかし、これら金属炭酸塩の1種または2種以上を0.60%以上添加すると、アークの集中性が強すぎるので、スパッタ発生量が多くなり、さらに溶接金属の酸素量も多くなる。したがって、これらの金属炭酸塩を含有させる場合には、その含有量を合計で0.60%未満とする。これらの金属炭酸塩の含有量の合計の下限は0%である。スパッタ発生量の抑制のため、その上限を0.50%、0.40%、0.20%又は0.10%としてもよい。
金属弗化物が拡散性水素量を低減する理由については、必ずしも明らかではないが、金属弗化物が溶接アークにより分解し、生成されたフッ素が水素と結合してHFガスとして大気中に散逸したか、あるいは、そのまま溶接金属中に水素がHFとして固定されたためではないかと考えている。
また、本発明においては、フラックスにCaOは添加しないことが好ましい。従って、CaO含有量の下限値は0%である。しかしながら、フラックスの原料にCaOが含有されている場合がある。その場合、CaOの含有量を0.20%未満に制限する。好ましくは0.15%以下又は0.10%以下とする。0.20%未満に制限すれば、本実施形態に係る溶接継手の製造方法による効果は得られる。CaOは、大気に触れることで、CaOHに変化するため、溶接金属中の拡散性水素を増加させる可能性がある。
金属弗化物、金属酸化物、および金属炭酸塩を除く、フラックス入りワイヤ中の合金元素量も以下のように限定される。
(C:溶接金属の表面下1mmの平均ビッカース硬さHVを337〜440とする場合、0.010〜0.350%であり、溶接金属の表面下1mmの平均ビッカース硬さHVを380〜533とする場合、0.060〜0.350%)
フラックス入りワイヤ中のC含有量が0.010%未満であると、溶接金属のC含有量が0.100%未満になって溶接金属の硬さがHV337未満になるので、フラックス入りワイヤ中のC含有量は0.010%以上とする。さらにフラックス入りワイヤ中のC含有量が0.060%未満であると、溶接金属のC含有量が0.120%未満になって溶接金属の硬さがHV380未満になるので、溶接金属の硬さをHV380とするためには、フラックス入りワイヤ中のC含有量は0.060%以上とする。溶接金属の硬さの向上のために、C含有量の下限値を0.020%または0.030%としてもよい。溶接金属の硬さのさらなる向上のために、C含有量の下限を0.070%、0.080%、0.090%、0.100%又は0.110%としてもよい。フラックス入りワイヤ中のC含有量が0.350%を超えると、溶接金属のC含有量が0.250%を超えてしまうので、フラックス入りワイヤ中のC含有量は0.350%以下とする。溶接金属の耐低温割れ性の改善のため、C含有量の上限を0.300%、0.250%、0.180%、0.170%又は0.160%としてもよい。
(Si:0.05〜1.80%)
フラックス入りワイヤ中のSi含有量が0.05%未満であると、溶接金属のSi含有量が0.05%未満になるので、フラックス入りワイヤ中のSi含有量は0.05%以上とする。溶接金属中のO含有量の低減のため、Si含有量の下限を0.10%、0.20%、0.30%又は0.40%としてもよい。フラックス入りワイヤ中のSi含有量が1.80%を超えると、酸化消耗を考慮しても溶接金属のSi量が0.80%を超えてしまうので、フラックス入りワイヤ中のSi含有量は1.80%以下とする。溶接金属の靭性改善のため、Si含有量の上限を1.50%、1.20%、1.00%、0.80%又は0.60%としてもよい。
(Mn:0.50〜4.00%)
フラックス入りワイヤ中のMn含有量が0.50%未満であると、溶接金属のMn含有量が0.20%未満になるので、フラックス入りワイヤ中のMn含有量は0.50%以上とする。溶接金属の硬さの向上のため、Mn含有量の下限を0.70%、0.80%、0.90%、1.00%又は1.10%としてもよい。フラックス入りワイヤ中のMn含有量が4.00%を超えると、酸化消耗を考慮しても溶接金属のMn量が2.50%を超えてしまうので、フラックス入りワイヤ中のMn量は4.00%以下とする。溶接金属の靭性改善のため、Mn含有量の上限を3.00%、2.50%、2.20%、2.00%又は1.80%としてもよい。
(P:0.050%以下)
フラックス入りワイヤ中のP含有量が0.050%を超えると、溶接金属のP含有量が0.050%を超えてしまうことがあるので、フラックス入りワイヤ中のP含有量は0.050%以下とする。必要に応じて、P含有量の上限を0.030%、0.025%、0.020%又は0.015%に制限してもよい。P含有量の下限を制限する必要はない。P含有量の下限は0%である。
(S:0.020%以下)
フラックス入りワイヤ中のS含有量が0.020%を超えると、溶接金属のS含有量が0.020%を超えてしまうことがあるので、フラックス入りワイヤ中のS含有量は0.020%以下とする。必要に応じて、S含有量の上限を0.015%、0.010%、0.008%又は0.006%に制限してもよい。S含有量の下限を制限する必要はない。S含有量の下限は0%である。
(Al:0.005〜0.150%)
フラックス入りワイヤ中のAl含有量が0.005%未満であると、溶接金属のAl含有量が0.005%未満になるので、フラックス入りワイヤ中のAl含有量は0.005%以上とする。溶接金属中のO含有量の一層の低減のため、Al含有量の下限を0.007%、0.010%又は0.012%としてもよい。フラックス入りワイヤ中のAl含有量が0.150%を超えると、溶接金属のAl含有量が0.100%を超えてしまうことがあるので、フラックス入りワイヤ中のAl含有量は0.150%以下とする。溶接金属の靭性改善のため、Al含有量の上限を0.090%、0.070%、0.050%又は0.040%に制限してもよい。
(Cu:0〜0.75%以下)
フラックス入りワイヤ中のCu含有量が0.75%を超えると、溶接金属のCu含有量が0.50%を超えてしまうので、フラックス入りワイヤ中のCu含有量は0.75%以下とする。溶接金属のCu含有量を低減するために、Cu含有量を0.50%以下としてもよい。必要に応じて、Cu含有量の上限を0.40%又は0.30%としてもよい。Cu含有量の下限を制限しなくてもよい。このため、Cu含有量の下限は0%である。一方、溶接金属の硬さを向上させるために、溶接金属にCuを0.10%以上含有させてもよい。
(Ni:0〜1.00%未満)
フラックス入りワイヤ中のNi含有量が1.00%以上であると、溶接金属のNi含有量が0.70%以上となり、ワイヤの合金コストが高くなるので、フラックス入りワイヤ中のNi含有量は1.00%未満とする。溶接金属の凝固割れの防止のため、Ni含有量の上限を、0.50%、0.40%、0.30%、0.20%又は0.10%としてもよい。Ni含有量の下限を制限しなくてもよい。このため、Ni含有量の下限は0%である。
(Cr:0〜3.50%)
フラックス入りワイヤ中のCr含有量が3.50%を超えると、溶接金属のCr含有量が2.50%を超えてしまうので、フラックス入りワイヤ中のCr含有量は3.50%以下とする。必要に応じて、Cr含有量の上限を1.50%、1.00%、0.50%又は0.10%としてもよい。Cr含有量の下限を制限しなくてもよい。このため、Cr含有量の下限は0%である。一方、溶接金属の硬さ向上の目的で添加する場合には、その効果を得るために0.05%以上含有させてもよい。
(Mo:0〜1.50%)
フラックス入りワイヤ中のMo含有量が1.50%を超えると、溶接金属のMo含有量が1.00%を超えてしまうので、フラックス入りワイヤ中のMo含有量は1.50%以下とする。靱性向上のため、Mo含有量の上限を0.70%、0.50%、0.30%又は0.20%としてもよい。Mo含有量の下限を制限しなくてもよい。このため、Mo含有量の下限は0%である。一方、溶接金属の硬さ向上の目的で添加する場合には、その効果を得るために0.05%以上含有させてもよい。
(Ti:0〜0.150%)
フラックス入りワイヤ中のTi含有量が0.150%を超えると、溶接金属のTi含有量が0.100%を超えてしまうので、フラックス入りワイヤ中のTi含有量は0.150%以下とする。靱性向上のため、Ti含有量の上限を0.100%、0.080%又は0.050%としてもよい。Ti含有量の下限を制限しなくてもよい。このため、Ti含有量の下限は0%である。靱性改善の目的に、0.010%以上含有させてもよい。
(Nb:0〜0.15%)
フラックス入りワイヤ中のNb含有量が0.15%を超えると、溶接金属のNb含有量が0.10%を超えてしまうので、フラックス入りワイヤ中のNb含有量は0.15%以下とする。靱性向上のため、Nb含有量の上限を0.10%、0.08%又は0.05%としてもよい。Nb含有量の下限を制限しなくてもよい。このため、Nb含有量の下限は0%である。溶接金属の硬さ向上の目的で0.01%以上含有させてもよい。
(V:0〜0.45%)
フラックス入りワイヤ中のV含有量が0.45%を超えると、溶接金属のV含有量が0.30%を超えてしまうので、フラックス入りワイヤ中のV含有量は0.45%以下とする。靭性向上のため、V含有量の上限を0.25%、0.20%又は0.15%としてもよい。V含有量の下限を制限しなくてもよい。このため、V含有量の下限は0%である。溶接金属の硬さ向上のために0.01%以上含有させてもよい。
(B:0〜0.0500%)
フラックス入りワイヤ中のB含有量が0.0500%を超えると、溶接金属のB含有量が0.0100%を超えてしまうので、フラックス入りワイヤ中のB含有量は0.0500%以下とする。靭性の向上のため、B含有量の上限を0.0400%、0.0200%、0.0100%又は0.0050%としてもよい。B含有量の下限を制限する必要はなく、B含有量の下限は0%である。
(Mg:0〜2.0%)
フラックス入りワイヤ中のMg含有量が2.0%を超えると、溶接金属のMg含有量が0.10%を超えてしまうので、フラックス入りワイヤ中のMg含有量は2.0%以下とする。溶接金属の靭性と延性の改善のため、Mg含有量の上限を1.5%、1.0%、0.4%又は0.2%としてもよい。Mg含有量の下限を制限する必要はなく、Mg含有量の下限は0%である。
(Ca:0〜2.0%)
フラックス入りワイヤ中のCa含有量が2.0%を超えると、溶接金属のCa含有量が0.10%を超えてしまうので、フラックス入りワイヤ中のCa含有量は2.0%以下とする。溶接金属の靭性と延性の改善のため、Ca含有量の上限を1.5%、1.0%、0.5%又は0.3%としてもよい。Ca含有量の下限を制限する必要はなく、Ca含有量の下限は0%である。
(REM:0〜0.0150%)
フラックス入りワイヤ中のREM含有量が0.0150%を超えると、溶接金属のREM含有量が0.0100%を超えてしまうので、フラックス入りワイヤ中のREM含有量は0.0150%以下とする。溶接金属の靭性と延性の改善のため、REM含有量の上限を0.0100%、0.0050%又は0.0030%としてもよい。REM含有量の下限を制限する必要はなく、REM含有量の下限は0%である。
以上が本実施形態に係るフラックス入りワイヤの化学組成に関する限定理由である。その他の残部の合金の化学成分は、Feを主成分とする残部が本実施形態に係る溶接継手の特性を阻害しない範囲で、製造過程等で混入する不純物を含有してもよい。Fe成分としては、鋼製外皮のFe、フラックス中に添加された鉄粉及び合金成分中のFeが含まれる。フラックス中の鉄粉の含有量は、フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%で10.0%未満とする。鉄粉含有量が多いと、酸素量が多くなる場合がある。必要に応じて、鉄粉の含有量を5.0%未満又は1.0%未満としてもよい。鉄粉を含有する必要はないので、鉄粉の含有量の下限値は0%である。
続いて、フラックス入りワイヤの形態について説明する。
フラックス入りワイヤには、鋼製外皮にスリット状の継目がないシームレスワイヤ(すなわち鋼製外皮の継目が溶接されているワイヤ)と、鋼製外皮の継目にスリット状の隙間を有するシームを有するワイヤとに大別できる。本発明ではいずれの断面構造も採用することができるが、溶接金属の低温割れを抑制するためには、スリット状の継ぎ目がない(シームレスワイヤ)とすることが好ましい。
溶接時に溶接部に侵入する水素は、溶接金属内及び鋼材側に拡散し、応力集中部に集積して低温割れの発生原因となる。この水素源は溶接材料が保有する水分、大気から混入する水分、鋼表面に付着した錆びやスケール等が上げられるが、十分に溶接部の清浄性、ガスシールドの条件が管理された溶接の下では、ワイヤ中に主として水分で含有される水素が、溶接継ぎ手中に存在する拡散性水素の主要因となる。
このため、鋼製外皮をスリット状の継ぎ目がない(シームレスの)管とし、ワイヤ製造後から使用するまでの間に、鋼製外皮からフラックスへの大気中の水素の侵入を抑制することが望ましい。鋼製外皮にスリット状の継ぎ目がある(シームを有する)管とした場合、大気中の水分は外皮のスリット状の継ぎ目(シーム部)からフラックス中に侵入しやすく、そのままでは、水分等の水素源の侵入を防止することはできない。従って、製造後使用するまでの期間が長い場合、ワイヤ全体を真空包装するか、乾燥した状態に保持できる容器内で保存することが望ましい。
また、ワイヤの送給性をよくするため、ワイヤ表面に潤滑油が塗布される場合がある。拡散性水素を低減する観点から、ワイヤ表面に塗布される潤滑油は、パーフルオロポリエーテル(PFPE)油のように水素分を含まない油が好ましい。
本発明で用いるフラックス入りワイヤは、通常のフラックス入りワイヤの製造方法と同様の製造工程によって製造することができる。
すなわち、まず、外皮となる鋼帯、及び、金属弗化物、合金成分、金属酸化物、金属炭酸塩及びアーク安定剤が所定の含有量になるように配合したフラックスを準備する。鋼帯を長手方向に送りながら成形ロールによりオープン管(U字型)に成形して鋼製外皮とし、この成形途中でオープン管の開口部からフラックスを供給し、開口部の相対するエッジ面を突合せシーム溶接する。溶接により得られた継目無し管を伸線し、伸線途中あるいは伸線工程完了後に焼鈍処理して、所望の線径を有するスリット状の継ぎ目がない(シームレス)ワイヤを得る。また、スリット状の継目がある(シームを有する)ワイヤは、オープン管の開口部からフラックスを供給した後、シーム溶接をしない継目有りの管とし、それを伸線することで得られる。突合せシーム溶接されて作ったスリット状の隙間が無いワイヤを切断した断面は、図3Aのように見える。この断面は、研磨して、エッチングすれば、溶接跡が観察されるが、エッチングしないと溶接跡は観察されない。そのため、シームレスと呼ぶことがある。溶接学会編「新版 溶接・接合技術入門」(2008年)産報出版、p.111には、シームレスタイプと記載されている。図3Bのように、突合せてから、ろう付けしたり、図3Cのように、かしめてから、ろう付けしても、スリット状の隙間が無いワイヤが得られる。図3B、図3Cにおいて、ろう付けせず、そのままのワイヤは、スリット状の隙間があるワイヤとなる。
本発明では、上記鋼板に対して、上述した条件に適合するフラックス入りワイヤを使用して、ガスシールドアーク溶接による多層盛溶接を行って、上述した条件に適合する溶接金属を形成することによって、目的を達成することができるものであり、ガスシールドアーク溶接の方法は、特に限定されず、通常用いられる方法を採用することができる。例えば、シールドガスとしては、100%COガスの他、Arガスと3〜20vol%のCOガスとの混合ガスなどを用いることができる。シールドガスの流量は、通常の条件、すなわち約15〜30L/minとすることができる。
また、電流、電圧などの溶接条件については、例えば電流200〜350A、電圧25〜35Vなどである。溶接入熱が10〜50kJ/cmとなるように、溶接速度を制御してもよい。
製造される溶接継手の形状は、用途等に応じて決定され、特に限定されるものではない。通常の突合せ継手、角継手、T継手など、開先を形成する溶接継手に適用できる。したがって、溶接される鋼板の形状も、少なくとも溶接継手を形成する部分が板状であればよく、全体が板でなくともよく、例えば、形鋼なども含むものである。また、別々の鋼板から構成されるものに限定されず、1枚の鋼板を管状などの所定の形状に成形したものの突合せ溶接継手であってもよい。
次に、実施例により本実施形態に係る溶接継手の実施可能性および効果について説明する。
表1に示す成分の鋼板を母材として使用した。また、溶接の裏当金には母材と同じ鋼板を使用した。
鋼帯を長手方向に送りながら成形ロールによりオープン管に成形し、この成形途中でオープン管の開口部からフラックスを供給し、開口部の相対するエッジ面を突合わせシーム溶接することでスリット状の継目が無い管とし、造管したワイヤの伸線作業の途中で焼鈍を加え、最終のワイヤ径がφ1.2mmのフラックス入りワイヤを試作した。また、一部は、シーム溶接をしないスリット状の継目がある管とし、それを伸線することで、ワイヤ径がφ1.2mmのフラックス入りワイヤを試作した。スリット状の隙間が有るワイヤの場合、溶接施工するまで、ワイヤ全体を真空包装して乾燥した状態に保持できる容器内に保存した。
試作したフラックス入りワイヤの化学成分の分析は以下のように行った。まず、充填されたフラックスをフラックス入りワイヤから取り出し、フラックス入りワイヤを鋼製外皮とフラックスとに分けた。鋼製外皮の化学成分は、化学分析によって各金属成分の含有量を測定することにより求められた。フラックスの化学成分は以下の手順により行われた。先ずX線回折、及び蛍光X線分析によってフラックスの構成物および成分についての定量評価を行った。この後、浮遊選鉱、及び磁力選鉱などの選鉱法を用いてフラックスをスラグ分と合金分とに分離し、それぞれの化学成分を、化学分析、及びガス分析などを行うことにより分析した。試作したフラックス入りワイヤの化学組成を表2−1−1〜表2−2、表3−1−1〜表3−2に示す。
このフラックス入りワイヤを用い、上記の母材を、ルートギャップ16mm、開先角度20°で突き合わせ、裏当金を用いて、表4−1−1〜表4−2−3に示す溶接条件で溶接を実施した。母材の開先面及び裏当金の表面には、試験を行うフラックス入りワイヤを用いて2層以上、かつ余盛高さ3mm以上のバタリングを実施した。
ここで、Ti酸化物、Si酸化物、Mg酸化物、Al酸化物は、それぞれTiO、SiO、MgO、Alを使用した。表2−2、表2−4において、金属炭酸塩とはCaCO、BaCO、SrCO、MgCOである。
得られた溶接金属の化学組成分析結果を表5−1−1、表5−1−2、表5−2−1、表5−2−2、表5−2−4、表5−2−5に示す。この溶接金属から、溶接方向と垂直の断面を研磨したサンプルを採取し、溶接金属の表面下1mmの位置のビッカース硬さを10点測定し、SAE J417(1983年)硬さ換算表からブリネル硬さに換算した。また、JIS Z3111(2005年)に準拠した4号シャルピー試験片(2mmVノッチ)を採取し、溶接金属の−40℃でのシャルピー吸収エネルギーを測定した。この−40℃吸収エネルギーが27J以上のものを合格とした。
得られた硬さおよびシャルピー試験の結果を表5−1−3、表5−2−3、表5−2−6に示す。
また、それぞれ同じ溶接条件によって得られた溶接継手に、低温割れ試験と拡散性水素量測定試験を行った。低温割れ試験は、JIS Z3158(y形溶接割れ試験方法;1993年)に準拠し、室温(25℃)にて試験を実施し、表面および断面に割れがないことをもって合格とした。拡散性水素量測定試験は、JIS Z3118(鋼溶接部の水素量測定方法;2007年)に準拠したガスクロマトグラフ法にて実施した。この拡散性水素量が1.0ml/100g未満のものを合格とした。
それぞれの結果を表5−1−3、表5−2−3、表5−2−6に示す。
溶接中、ヒュームまたはスラグの発生の著しい水準は、溶接作業性が不良と判定した。ヒューム、スラグとも発生が少ない水準を溶接作業性が良好と判定した。それぞれの結果を表5−1−3、表5−2−3、表5−2−6に示す。
表5−1−3の試験結果に示されるように、本発明例である実施例1〜54の溶接金属は、硬さ、靭性、耐低温割れ性、溶接作業性のすべてが優れ、合格であった。
一方、表5−2−3、表5−2−6の試験結果に示されるように、比較例101〜165の溶接金属は、本発明で規定する要件を満たしていないため、硬さ、靭性、耐低温割れ性、溶接作業性の少なくとも1つ以上が不合格となった。表5−2−1〜表5−2−6の比較例における下線の数字は、本発明範囲外であることを示す。
本発明によれば、C含有量が高く表面硬さがHV380以上、HV693以下であるような高硬度鋼板を母材とする溶接継手において、表面硬さがHV337以上HV533以下であって耐摩耗性に優れる溶接金属、または表面硬さがHV380以上HV533以下であって耐摩耗性に優れる溶接金属を、予熱をしなくとも低温割れを発生させないで得ることができるので、溶接施工能率を著しく向上させることができ、産業界における価値はきわめて高い。

Claims (9)

  1. ビッカース硬さHVが380以上514以下であり、
    板厚が20〜100mmであり、
    Cの含有量が0.120〜0.300質量%であり、
    下記の式1で計算されるCENが、0.20〜0.75質量%である鋼板、
    ビッカース硬さHVが514超565以下であり、
    板厚が12〜100mmであり、
    Cの含有量が0.120〜0.300質量%であり、
    下記の式1で計算されるCENが、0.20〜0.75質量%である鋼板、および
    ビッカース硬さHVが565超693以下であり、
    板厚が6〜12mmであり、
    Cの含有量が0.350〜0.450質量%であり、
    下記の式1で計算されるCENが、0.20〜0.85質量%である鋼板、
    のいずれか一つに対し、鋼製外皮にフラックスが充填されたフラックス入りワイヤを用いて、ガスシールドアーク溶接を行うことにより、溶接継手を製造する方法であって、
    (a)前記ガスシールドアーク溶接時に、前記鋼板の温度が10℃以上の場合に予熱作業を行わず、前記鋼板の温度が10℃未満の場合には前記鋼板の温度が10℃以上となるように前記予熱作業を行い、
    (b)前記フラックス入りワイヤが、
    CaF、BaF、SrF、MgFのうちの1種以上を含有し、その含有量の合計をαとしたとき、前記αが前記フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%で3.3〜8.0%であり、
    Ti酸化物、Si酸化物、Mg酸化物、Al酸化物のうちの1種以上を含有し、その含有量の合計をβとしたとき、前記βが前記フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%で0.10〜1.50%であり、
    CaCO、BaCO、SrCO、MgCOの含有量の合計が、前記フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%で0.60%未満であり、
    前記フラックス中の鉄粉の含有量が、前記フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%で10.0%未満であり、
    前記αに対する前記CaFの含有量の比が0.90以上であり、
    前記βに対する前記αの比が3.0以上80.0以下であり、
    CaOの含有量が、前記フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%で0.20%未満であり、
    金属弗化物、金属酸化物、および金属炭酸塩を除く、前記フラックス入りワイヤ中の化学成分が、前記フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%で:
    C:0.010〜0.060%未満;
    Si:0.05〜1.80%;
    Mn:0.50〜4.00%;
    P:0.050%以下;
    S:0.020%以下;
    Al:0.005〜0.150%;
    Cu:0〜0.75%;
    Ni:0〜1.00%未満;
    Cr:0〜3.50%;
    Mo:0〜1.50%;
    Ti:0〜0.150%;
    Nb:0〜0.15%;
    V:0〜0.45%;
    B:0〜0.0500%;
    Mg:0〜2.0%;
    Ca:0〜2.0%;
    REM:0〜0.0150%;
    残部:Feおよび不純物;
    からなり、
    (c)前記溶接継手の溶接金属の化学組成が、質量%で:
    C:0.100〜0.170%;
    Si:0.05〜0.80%;
    Mn:0.20〜2.50%;
    Al:0.0050〜0.1000%;
    P:0.050%以下;
    S:0.020%以下;
    N:0.015%以下;
    Cu:0〜0.50%;
    Ni:0〜0.70%未満;
    Cr:0〜2.50%;
    Mo:0〜1.00%;
    Ti:0〜0.100%;
    Nb:0〜0.100%;
    V:0〜0.30%;
    B:0〜0.0100%;
    O:0〜0.100%;
    Mg:0〜0.100%;
    Ca:0〜0.100%;
    REM:0〜0.0100%;
    残部:Feおよび不純物;
    からなり、
    前記溶接金属の、下記の式1で計算されるCENが、0.20〜0.58質量%であり、
    前記溶接金属の表面下1mmの平均ビッカース硬さHVが、337〜440であり、
    上記(a)〜(c)の全てを満足する
    ことを特徴とする溶接継手の製造方法。
    CEN=[C]+(0.75+0.25×tanh(20×([C]−0.12)))×([Si]/24+[Mn]/6+[Cu]/15+[Ni]/20+([Cr]+[Mo]+[Nb]+[V])/5+5×[B]) ・・・(式1)
    ただし、[]付元素は、それぞれの元素の含有量(質量%)を表す。
  2. ビッカース硬さHVが380以上514以下であり、
    板厚が20〜100mmであり、
    Cの含有量が0.120〜0.300質量%であり、
    下記の式1で計算されるCENが、0.20〜0.75質量%である鋼板、
    ビッカース硬さHVが514超565以下であり、
    板厚が12〜100mmであり、
    Cの含有量が0.120〜0.300質量%であり、
    下記の式1で計算されるCENが、0.20〜0.75質量%である鋼板、および
    ビッカース硬さHVが565超693以下であり、
    板厚が6〜12mmであり、
    Cの含有量が0.350〜0.450質量%であり、
    下記の式1で計算されるCENが、0.20〜0.85質量%である鋼板、
    のいずれか一つに対し、鋼製外皮にフラックスが充填されたフラックス入りワイヤを用いて、ガスシールドアーク溶接を行うことにより、溶接継手を製造する方法であって、
    (a)前記ガスシールドアーク溶接時に、前記鋼板の温度が10℃以上の場合に予熱作業を行わず、前記鋼板の温度が10℃未満の場合には前記鋼板の温度が10℃以上となるように前記予熱作業を行い、
    (b)前記フラックス入りワイヤが、
    CaF、BaF、SrF、MgFのうちの1種以上を含有し、その含有量の合計をαとしたとき、前記αが前記フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%で3.3〜8.0%であり、
    Ti酸化物、Si酸化物、Mg酸化物、Al酸化物のうちの1種以上を含有し、その含有量の合計をβとしたとき、前記βが前記フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%で0.10〜1.50%であり、
    CaCO、BaCO、SrCO、MgCOの含有量の合計が、前記フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%で0.60%未満であり、
    前記フラックス中の鉄粉の含有量が、前記フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%で10.0%未満であり、
    前記αに対する前記CaFの含有量の比が0.90以上であり、
    前記βに対する前記αの比が3.0以上80.0以下であり、
    CaOの含有量が、前記フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%で0.20%未満であり、
    金属弗化物、金属酸化物、および金属炭酸塩を除く、前記フラックス入りワイヤ中の化学成分が、前記フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%で:
    C:0.060〜0.350%;
    Si:0.05〜1.80%;
    Mn:0.50〜4.00%;
    P:0.050%以下;
    S:0.020%以下;
    Al:0.005〜0.150%;
    Cu:0〜0.75%;
    Ni:0〜1.00%未満;
    Cr:0〜3.50%;
    Mo:0〜1.50%;
    Ti:0〜0.150%;
    Nb:0〜0.15%;
    V:0〜0.45%;
    B:0〜0.0500%;
    Mg:0〜2.0%;
    Ca:0〜2.0%;
    REM:0〜0.0150%;
    残部:Feおよび不純物;
    からなり、
    (c)前記溶接継手の溶接金属の化学組成が、質量%で:
    C:0.120〜0.250%;
    Si:0.05〜0.80%;
    Mn:0.20〜2.50%;
    Al:0.0050〜0.1000%;
    P:0.050%以下;
    S:0.020%以下;
    N:0.015%以下;
    Cu:0〜0.50%;
    Ni:0〜0.70%未満;
    Cr:0〜2.50%;
    Mo:0〜1.00%;
    Ti:0〜0.100%;
    Nb:0〜0.100%;
    V:0〜0.30%;
    B:0〜0.0100%;
    O:0〜0.100%;
    Mg:0〜0.100%;
    Ca:0〜0.100%;
    REM:0〜0.0100%;
    残部:Feおよび不純物;
    からなり、
    前記溶接金属の、下記の式1で計算されるCENが、0.20〜0.58質量%であり、
    前記溶接金属の表面下1mmの平均ビッカース硬さHVが、380〜533であり、
    上記(a)〜(c)の全てを満足する
    ことを特徴とする溶接継手の製造方法。
    CEN=[C]+(0.75+0.25×tanh(20×([C]−0.12)))×([Si]/24+[Mn]/6+[Cu]/15+[Ni]/20+([Cr]+[Mo]+[Nb]+[V])/5+5×[B]) ・・・(式1)
    ただし、[]付元素は、それぞれの元素の含有量(質量%)を表す。
  3. ビッカース硬さHVが565超693以下であり、
    板厚が12〜20mmであり、
    Cの含有量が0.350〜0.450質量%であり、
    下記の式2で計算されるCENが、0.20〜0.85質量%である鋼板、および
    ビッカース硬さHVが565超693以下であり、
    板厚が20mm超50mm以下であり、
    Cの含有量が0.350〜0.450質量%であり、
    下記の式2で計算されるCENが、0.20〜0.85質量%である鋼板、
    のいずれか一つに対し、鋼製外皮にフラックスが充填されたフラックス入りワイヤを用いて、ガスシールドアーク溶接を行うことにより、溶接継手を製造する方法であって、
    (a)前記ガスシールドアーク溶接時に、前記鋼板の前記板厚が20mm以下の場合、前記鋼板の温度が100℃以上となるように予熱作業を行い、前記鋼板の前記板厚が20mm超の場合、前記鋼板の温度が150℃以上となるように前記予熱作業を行い、
    (b)前記フラックス入りワイヤが、
    CaF、BaF、SrF、MgFのうちの1種以上を含有し、その含有量の合計をαとしたとき、前記αが前記フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%で3.3〜8.0%であり、
    Ti酸化物、Si酸化物、Mg酸化物、Al酸化物のうちの1種以上を含有し、その含有量の合計をβとしたとき、前記βが前記フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%で0.10〜1.50%であり、
    CaCO、BaCO、SrCO、MgCOの含有量の合計が、前記フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%で0.60%未満であり、
    前記フラックス中の鉄粉の含有量が、前記フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%で10.0%未満であり、
    前記αに対する前記CaFの含有量の比が0.90以上であり、
    前記βに対する前記αの比が3.0以上80.0以下であり、
    CaOの含有量が、前記フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%で0.20%未満であり、
    金属弗化物、金属酸化物、および金属炭酸塩を除く、前記フラックス入りワイヤ中の化学成分が、前記フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%で:
    C:0.060〜0.350%;
    Si:0.05〜1.80%;
    Mn:0.50〜4.00%;
    P:0.050%以下;
    S:0.020%以下;
    Al:0.005〜0.150%;
    Cu:0〜0.75%;
    Ni:0〜1.00%未満;
    Cr:0〜3.50%;
    Mo:0〜1.50%;
    Ti:0〜0.150%;
    Nb:0〜0.15%;
    V:0〜0.45%;
    B:0〜0.0500%;
    Mg:0〜2.0%;
    Ca:0〜2.0%;
    REM:0〜0.0150%;
    残部:Feおよび不純物;
    からなり、
    (c)前記溶接継手の溶接金属の化学組成が、質量%で:
    C:0.120〜0.250%;
    Si:0.05〜0.80%;
    Mn:0.20〜2.50%;
    Al:0.0050〜0.1000%;
    P:0.050%以下;
    S:0.020%以下;
    N:0.015%以下;
    Cu:0〜0.50%;
    Ni:0〜0.70%未満;
    Cr:0〜2.50%;
    Mo:0〜1.00%;
    Ti:0〜0.100%;
    Nb:0〜0.100%;
    V:0〜0.30%;
    B:0〜0.0100%;
    O:0〜0.100%;
    Mg:0〜0.100%;
    Ca:0〜0.100%;
    REM:0〜0.0100%;
    残部:Feおよび不純物;
    からなり、
    前記溶接金属の、下記の式2で計算されるCENが、0.20〜0.58質量%であり、
    前記溶接金属の表面下1mmの平均ビッカース硬さHVが、380〜533であり、
    上記(a)〜(c)の全てを満足する
    ことを特徴とする溶接継手の製造方法。
    CEN=[C]+(0.75+0.25×tanh(20×([C]−0.12)))×([Si]/24+[Mn]/6+[Cu]/15+[Ni]/20+([Cr]+[Mo]+[Nb]+[V])/5+5×[B]) ・・・(式2)
    ただし、[]付元素は、それぞれの元素の含有量(質量%)を表す。
  4. 前記フラックス入りワイヤ中の前記CaOの含有量が、前記フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%で0.15%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の溶接継手の製造方法。
  5. 前記金属弗化物、前記金属酸化物、および前記金属炭酸塩を除く、前記フラックス入りワイヤ中の前記化学組成が、前記フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%で:
    Ni:0〜0.1%である
    ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の溶接継手の製造方法。
  6. 前記金属弗化物、前記金属酸化物、および前記金属炭酸塩を除く、前記フラックス入りワイヤ中の前記化学組成が、前記フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%で:
    Cu:0〜0.50%;
    Cr:0〜1.00%;
    Mo:0〜0.50%;
    Ti:0〜0.050%;
    Nb:0〜0.05%
    であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の溶接継手の製造方法。
  7. 前記フラックス入りワイヤの前記鋼製外皮に、スリット状の隙間がないことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の溶接継手の製造方法。
  8. 前記フラックス入りワイヤの前記鋼製外皮に、スリット状の隙間があることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の溶接継手の製造方法。
  9. 前記フラックス入りワイヤの表面にパーフルオロポリエーテル油が塗布されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の溶接継手の製造方法。
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