JP2014176878A - 水平すみ肉ガスシールドアーク溶接方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】電極のトーチ角度を下板側から20〜40°、溶接の狙い位置を立板と下板との交点から下板側の距離を0〜5mmとして、ワイヤ全質量に対する質量%で、C:0.02〜0.08%、Si:0.2〜1.0%、Mn:1.0〜4.0%、TiO2換算値:3.0〜6.0%、SiO2換算値:1.0〜4.0%、FeO換算値:0.1〜1.0%、Zr酸化物およびZrのZrO2換算値の合計:0.2〜1.5%、MgのMgO換算値およびMgOの合計:1.0〜3.5%、AlのAl2O3換算値およびAl2O3の合計:0.05〜0.70%、Na2O換算値およびK化合物のK2Oの合計:0.05〜0.3%、F換算値:0.03〜0.30%、スラグ形成剤の合計:6.0〜13.0%を含有するフラックス入りワイヤを用いて溶接する。
【選択図】図1
Description
ワイヤ全質量に対する質量%で、鋼製外皮とフラックスの合計で、
C:0.02〜0.08%、
Si:0.2〜1.0%、
Mn:1.0〜4.0%、
Ti酸化物のTiO2換算値:3.0〜6.0%、
Si酸化物のSiO2換算値:1.0〜4.0%、
Fe酸化物のFeO換算値:0.1〜1.0%、
Mg、AlおよびZrの1種または2種以上の合計:0.2〜1.0%であって、かつ、Zr酸化物およびZrのZrO2換算値の1種または2種の合計:0.2〜1.5%、MgのMgO換算値およびMgOの1種または2種の合計:1.0〜3.5%、AlのAl2O3換算値およびAl2O3の1種または2種の合計:0.05〜0.70%を満足し、
Na化合物のNa2O換算値およびK化合物のK2O換算値の1種または2種の合計:0.05〜0.3%、
弗素化合物のF換算値:0.03〜0.30%、
スラグ形成剤の合計:6.0〜13.0%を含有し、
残部はFe不可避不純物からなるフラックス入りワイヤを用いて溶接することを特徴とする水平すみ肉ガスシールドアーク溶接方法。
電極のトーチ角度は、溶接金属の流動性に大きく影響を及ぼす。特に、溶接金属は重力の影響から立板側の脚長が確保しにくくなる。したがって、大脚長を得るためにはいかに立板側の脚長を安定して確保するかが重要となる。図1に示すように電極3のトーチ角度θが下板2側から20°未満であると、シールドガスの流れがノズル前方にしか流れなくなり、結果として大気を巻き込んでピットやブローホールなど気孔欠陥が多発する。一方、電極3のトーチ角度θが下板2側から40°を超えると、アーク点が立板1側に近くなるので立板1にアンダーカットが発生する。また溶接金属が立板1側にあまり流動しなくなるので、立板1側の脚長が10mmを確保できなくなる。したがって、電極3のトーチ角度θは下板2側から20〜40°とする。なお、好ましくは25〜35°である。
図1に示すように溶接の狙い位置は、等脚長で良好なビード外観を得るために重要である。溶接の狙い位置が立板1と下板2との交点から下板2側の距離Lが0mm未満であると、立板1側を狙うようになり上板1側の脚長が過大となり等脚長のビードを得ることができない。一方、溶接の狙い位置が立板1と下板2との交点から下板2側の距離Lが5mmを超えると、下板2側の脚長が過大となり等脚長のビードを得ることができない。したがって、溶接の狙い位置は立板1と下板2との交点から下板2側の距離Lを0〜5mmとする。なお、好ましくは1〜4mmとする。
Cは、鋼製外皮、Fe−Mnおよびグラファイト等から添加され、溶接金属の強度および靭性を調整する重要な元素の1つである。Cが0.02%未満であると、溶接金属の強度および靭性が低下する。一方、Cが0.08%を超えると、アークが強くなりすぎてスパッタ発生量が多くなる。さらに、溶接金属の強度が高くなり靭性が低下する。したがって、鋼製外皮とフラックスの合計でCは0.02〜0.08%とする。なお、好ましくは0.03〜0.07%とする。
Siは、鋼製外皮、金属Si、Fe−SiおよびFe−Si−Mn等から添加され、脱酸剤として作用して溶接金属の強度および靭性を確保するために添加する。また、溶融金属の粘性を向上させてビードを整える役割も果たす。Siが0.2%未満であると、脱酸不足となり溶接部にピット等の溶接欠陥が発生するとともに溶接金属の強度および靭性が低下する。また、溶融金属の粘性が低下してビード形状が凸ビードになりやすく、良好なビード外観を得ることができなくなる。一方、Siが1.0を超えると、溶接金属の強度が高くなり靭性が低下する。したがって、鋼製外皮とフラックスの合計でSiは0.2〜1.0%とする。なお、好ましくは0.3〜0.8%とする。
Mnは、鋼製外皮、金属Mn、Fe−MnおよびFe−Si−Mn等から添加され、脱酸剤として作用するとともに、溶接金属の強度および靭性を確保するために添加する。Mnが1.0%未満であると、脱酸不足となりピット等の溶接欠陥が発生する。さらに、溶接金属の強度および靭性が低下する。一方、Mnが4.0%を超えると、溶接金属の強度が高くなり靭性が低下する。したがって、鋼製外皮とフラックスの合計でMnは1.0〜4.0%とする。なお、好ましくは1.5〜3.5%とする。
Ti酸化物は、フラックスに添加されるスラグ形成剤の主成分であり、ルチール、酸化チタン、チタン酸ソーダ、チタンスラグ、イルミナイト等から添加される。これらは溶融スラグの粘性を高め、ビード全体を均一に包被してビード形状を整える作用を有する。特に、水平すみ肉溶接の1パス溶接で大脚長のビードを得るためには必要不可欠な成分であり、アークを持続して安定させスパッタ発生量を低減させる効果がある。Ti酸化物のTiO2換算値が3.0%未満であると、スラグ生成量が不足してビードを均一に被包できないためスラグ剥離が悪くなり、また、溶融スラグの粘性が低くなるので、ビード形状を整えることができなくなる。その結果、ビード形状が凸ビードとなり満足するビード外観を得ることができない。また、アークを安定させる効果が弱くのでスパッタ発生量も増加する。一方、Ti酸化物のTiO2換算値が6.0%を超えると、アークは安定してスパッタ発生量は減少するが、溶融スラグの粘性が高くなりすぎてスラグ巻き込みが発生しやすく、また、溶融プールからのガス抜けが悪くなるため、ガス溝やピットなどの気孔欠陥が発生しやすくなる。したがって、フラックスにTi酸化物のTiO2換算値は3.0〜6.0%とする。なお、好ましくは3.5〜5.5%とする。
Si酸化物は、珪砂、ジルコンサンド等からフラックスに添加され、スラグ形成剤として作用し、ビード形状を整える効果がある。Si酸化物のSiO2換算値が1.0%未満であると、電極のトーチを下板側に倒したとしてもスラグ形成剤としての効果が不十分でアンダーカットが発生する。一方、Si酸化物のSiO2換算値が4.0%を超えると、ガスの放出が阻害されるので、耐ピット性が悪くなる。また、アークも荒くなりスパッタ発生量が多くなる。したがって、フラックスにSi酸化物のSiO2換算値は1.0〜4.0%とする。好ましくは1.5〜3.5%とする。
Fe酸化物は、酸化鉄、チタンスラグ、イルミナイト等からフラックスに添加される。Fe酸化物は溶融スラグの粘性を調整してビード形状を整え、ビード形状を良好にする。Fe酸化物のFeO換算値が0.1%未満であると、溶融スラグの流動性が悪くビード形状を整えることができなくなり、下板側のビード止端部が不揃いになり、良好なビード外観を得ることができなくなる。一方、Fe酸化物のFeO換算値が1.0%を超えると、電極のトーチを下板側に倒したとしても溶融スラグの粘性が過剰に低下して溶融スラグが流れて立板側にアンダーカットが発生する。したがって、フラックスにFe酸化物のFeO換算値は0.1〜1.0%とする。好ましくは0.1〜0.8%とする。
Mg、AlおよびZrは、脱酸剤として添加され、溶融金属中の酸素量を下げることで、溶接金属の靭性の向上および溶融金属の粘性を調整し、ビード形状を整える効果がある。Mg、AlおよびZrの合計が0.2%未満であると、溶接金属中の酸素量が増え、溶接金属の靭性が低下する。また、溶融金属の粘性が低下して下板側のビード止端部が不揃いとなり、良好なビード外観を得ることができなくなる。一方、Mg、AlおよびZrの合計が1.0%を超えると、アークが粗くなりスパッタ発生量が多くなる。したがって、フラックスのMg、AlおよびZrの1種または2種以上の合計は0.2〜1.0%とする。なお、好ましくは0.3〜0.9%とする。
Zrは、金属ジルコン、Fe−Si−Zr等からフラックスに添加され、脱酸剤として作用し、溶接中にZrO2となりスラグの一部となる。また、ZrO2は、ジルコンサンドおよび酸化ジルコニウム等から添加され、スラグ被包性を改善してビード形状を改善するスラグ形成剤として作用する。ZrO2を添加することにより、スラグの凝固温度が高くなりスラグの凝固が早くなるので、大脚長を得るためのビード保持作用が大きく、ビード形状を良好にする。Zr酸化物およびZrのZrO2換算値の1種または2種の合計が0.2%未満であると、電極のトーチを下板側に倒したとしても大脚長を得るためのビードを保持する力が弱まり、上板側の脚長が得られず、ビード波形が不揃いとなりやすく、良好なビード外観を得ることができなくなる。一方、Zr酸化物およびZrのZrO2換算値の1種または2種の合計が1.5%を超えると、アークが荒くなりスパッタ発生量が多くなるとともに、スラグ剥離性が悪くなる。したがって、フラックスにZr酸化物およびZrのZrO2換算値の1種または2種の合計は0.2〜1.5%とする。なお、好ましくは0.3〜1.3%とする。
Mgは、金属Mg、Al−Mg等からフラックスに添加され、脱酸剤として作用し、溶接中にMgOとなりスラグの一部となる。また、MgOは、マグネシアクリンカー、天然マグネシア等から添加される。MgOは、スラグの凝固温度を高くしてスラグの凝固を早くするので、大脚長を得るためのビード保持作用が大きく、下板側のビード止端部形状をフラットに滑らかにする。MgのMgO換算値およびMgOの1種または2種の合計が1.0%未満であると、電極のトーチを下板側に倒したとしてもビードを保持する力が弱まり、アンダーカットが発生して大脚長を確保することができない。また、下板側のビード止端部形状がオーバーラップとなる。一方、MgのMgO換算値およびMgOの1種または2種の合計が3.5%を超えると、溶融スラグの粘性が高くなってスラグ巻き込みが発生しやすく、ビードの波形が不揃いでビード外観が悪くなる。したがって、フラックスにMgのMgO換算値およびMgOの1種または2種の合計は1.0〜3.5%とする。なお、好ましくは1.5〜3.0%とする。
Alは、金属Al、Fe−Al、Al−Mg等からフラックスに添加され、脱酸剤として作用し、溶接中にAl2O3となりスラグの一部となる。また、Al2O3は、アルミナ、長石等から添加される。Al2O3は、スラグの凝固温度を上昇させてビード形状を整える効果がある。AlのAl2O3換算値およびAl2O3の1種または2種の合計が0.05%未満であると、電極のトーチを下板側に倒したとしてもアンダーカットが生じやすくなる。一方、AlのAl2O3換算値およびAl2O3の1種または2種の合計が0.70%を超えると、スラグが固化してスラグ剥離性が悪くなる。したがって、フラックスのAlのAl2O3換算値およびAl2O3の1種または2種の合計は0.05〜0.70%とする。なお、好ましくは0.10〜0.60%とする。
Fは、弗化ソーダ、珪弗化カリ、氷晶石、弗化アルミニウム、弗化リチウムおよび蛍石等からフラックスに添加され、アークの安定性を向上させて耐ピット性を向上させる。弗素化合物のF換算値が0.03%未満であると、アークの集中性が弱くなり安定したアーク状態を得ることができず、耐ピット性も悪化する。一方、弗素化合物のF換算値が0.30%を超えると、アークが荒くなりスパッタ発生量および溶接ヒュームの発生量が多くなる。したがって、フラックスの弗素化合物のF換算値は0.03〜0.30%とする。なお、好ましくは0.05〜0.25%とする。
NaおよびKは、カリ長石または珪酸ソーダや珪酸カリからなる水ガラスの固質成分、弗化ソーダや珪酸化カリなどの弗素化合物からフラックスに添加され、アーク安定剤としての作用がある。Na化合物のNa2O換算値およびK化合物のK2O換算値の1種または2種の合計が0.05%未満では、アークが不安定となってスパッタ発生量が多くなる。一方、Na化合物のNa2O換算値およびK化合物のK2O換算値の1種または2種の合計が0.3%を超えると、スパッタやヒューム発生量が増加する。したがって、フラックスのNaおよびK化合物のNa2O換算値およびK2O換算値の1種または2種の合計は0.05〜0.3%とする。なお、好ましくは0.1〜0.25%とする。
スラグ形成剤は、フラックスに添加されビード形状を整える作用がある。大脚長を得るための溶接時でのスラグ形成剤の役割は非常に大きく、溶融スラグが溶融金属を押さえ込み、良好なビード形状を得るためには不可欠である。スラグ形成剤の合計が6.0%未満であると、電極のトーチを下板側に倒したとしてスラグ生成量が不足してビードを整えることができなくなり、アンダーカットが発生して大脚長のビードを得ることができなくなり、下板側のビード止端部形状がオーバーラップとなる。また、アークが荒くなりスパッタ発生量が多くなる。一方、スラグ形成剤の合計が13.0%を超えると、アークが安定してスパッタ発生量も減少するが、スラグ生成量が多くなり、スラグ巻き込みが発生しやすくなり、耐ピット性も悪くなる。したがって、フラックスのスラグ形成剤の合計は6.0〜13.0%とする。なお、好ましくは7.0〜12.0%とする。
鋼製外皮のCは、アークの強さ、スパッタ発生量およびヒューム発生量などの溶接作業性や溶接性能に影響する。特に、大脚長を得るための溶接で安定したビードを得るためには、アークの強さをできるだけソフトにして溶融プールに与える影響を少なくする必要がある。製鋼外皮のCが鋼製外皮に対する質量%で0.010%を超えると、アークが強くなり、溶融プールが乱れやすく、ビード波形が不揃いとなりやすく、安定したビード外観を得ることができない。なお、製鋼外皮のCの下限については特に限定しないが、製鋼時のコスト面から0.001%とする。したがって、鋼製外皮のCは0.010%以下とする。なお、好ましくは0.002〜0.008%とする。
Biは、金属Biや酸化Bi等からフラックスに添加され、スラグ剥離性を向上させ、ビード表面に光沢を出してビード外観を良好にする作用があり、1種または2種添加する。金属BiおよびBi酸化物のBi換算値の1種または2種の合計が0.005%未満では、その効果が得られず、スラグ剥離性が悪くなる。一方、金属BiおよびBi酸化物のBi換算値の1種または2種の合計が0.045%を超えると、高温割れが発生し、溶接金属の靭性も低下する。したがって、フラックスの金属BiおよびBi酸化物のBi換算値の1種または2種の合計は0.005〜0.045%とする。なお、好ましくは0.010〜0.035%とする。
2 下板
3 電極
θ トーチ角度
L 立板と下板との交点から下板側の距離
Claims (3)
- 水平すみ肉ガスシールドアーク溶接方法において、電極のトーチ角度を下板側から20〜40°、溶接の狙い位置を立板と下板との交点から下板側の距離を0〜5mmとして、
ワイヤ全質量に対する質量%で、鋼製外皮とフラックスの合計で、
C:0.02〜0.08%、
Si:0.2〜1.0%、
Mn:1.0〜4.0%、
Ti酸化物のTiO2換算値:3.0〜6.0%、
Si酸化物のSiO2換算値:1.0〜4.0%、
Fe酸化物のFeO換算値:0.1〜1.0%、
Mg、AlおよびZrの1種または2種以上の合計:0.2〜1.0%であって、かつ、Zr酸化物およびZrのZrO2換算値の1種または2種の合計:0.2〜1.5%、MgのMgO換算値およびMgOの1種または2種の合計:1.0〜3.5%、AlのAl2O3換算値およびAl2O3の1種または2種の合計:0.05〜0.70%を満足し、
弗素化合物のF換算値:0.03〜0.30%、
Na化合物のNa2O換算値およびK化合物のK2O換算値の1種または2種の合計:0.05〜0.3%、
スラグ形成剤の合計:6.0〜13.0%を含有し、
残部はFeおよび不可避不純物からなるフラックス入りワイヤを用いて溶接することを特徴とする水平すみ肉ガスシールドアーク溶接方法。 - フラックス入りワイヤの鋼製外皮のCが鋼製外皮に対する質量%で0.010質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の水平すみ肉ガスシールドアーク溶接方法。
- フラックス入りワイヤのワイヤ全質量に対する質量%で、フラックスに、金属BiとBi酸化物のBi換算値の1種または2種の合計:0.005〜0.045%を更に含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の水平すみ肉ガスシールドアーク溶接方法。
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