JP7304829B2 - 亜鉛めっき鋼板溶接用フラックス入りワイヤ - Google Patents

亜鉛めっき鋼板溶接用フラックス入りワイヤ Download PDF

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Description

本発明は、亜鉛めっき鋼板溶接用フラックス入りワイヤに関し、特にアークが安定して溶接作業性が良好で、割れが生じることなく、耐食性が良好で、延性の優れる溶接金属が得られる亜鉛めっき鋼板溶接用フラックス入りワイヤに関する。
塗装鋼板は、耐食性を有するので家電製品、建築用鋼板及び自動車などに広く用いられている。
これらの塗装鋼板は、さらに耐食性を向上するために種々の技術が開示されている。例えば特許文献1には、耐食性と表面外観の良好な溶融Zn-Al-Mgめっき鋼板が、特許文献2には、屋外などの厳しい使用環境でも十分な耐食性を有するZn-Mg-Al-Siなどを有する塗装鋼板の開示がある。
これらのZnめっき鋼板を溶接する技術として、特許文献3及び特許文献4には、亜鉛めっき鋼板を特定成分のソリッドワイヤを用いて、マグパルスアーク溶接することによってピットやブローホールなどの気孔欠陥の発生を防止する技術の開示がある。しかし、特許文献3及び特許文献4に開示された技術で亜鉛めっき鋼板を溶接した場合は、ピットやブローホールの発生は低減されるが、亜鉛めっき鋼板を溶接構造物として使用する場合、溶接金属表面の耐食性が得られない。したがって、溶接金属表面の耐食性を確保するために溶接金属表面にジンクリッチペイントなどの塗料を塗布する必要がある。しかしながらこの方法においても、溶接後に塗装作業が必要になるので生産性が劣ることになる。さらに、塗料による防食は永年の使用環境において剥離したり、狭隘な箇所への塗装が困難であり、耐食性が十分ではないという問題があった。
また、特許文献5には、亜鉛めっき鋼板をBa化合物、Al及びMgを含むフラックス入りワイヤを用いて直流正極性を使用して溶接することによって、アークが安定して耐ピット性及び耐ブローホール性が優れるという技術の開示がある。しかし、特許文献5の技術においても、溶接金属表面の耐食性を得るために塗料を塗布する必要があり、生産性及び耐食性に問題があった。
一方、特許文献6には、亜鉛めっき鋼板をフェライト系ステンレス溶接ワイヤを用いて溶接することによって、溶接後に耐食性を維持することができるという技術の開示がある。しかし、特許文献6の技術においては、溶接後に溶接金属表面に塗装作業をする必要はないが、溶接金属部で溶融亜鉛めっきに起因する液体金属脆化割れ(以下、亜鉛脆化割れという。)が生じるという問題があった。
亜鉛脆化割れを防止する技術として特許文献7に、溶接ワイヤ中のC、Si、Mn、Ni、Cr量を適正にしたオーステナイト系ステンレス鋼フラックス入りワイヤを用いて亜鉛めっき鋼板を溶接することによって、溶接時に初晶から室温までフェライト単相で凝固が完了するため、亜鉛の粒界への浸入を防止して亜鉛脆化割れを防止するという技術の開示がある。しかし、特許文献7の技術においては、薄板の亜鉛めっき鋼板を溶接する場合には、溶接金属の溶け落ちを防止するために低電流の溶接条件で溶接する必要があり、この場合アークが不安定となり良好なビード形状が得られないという問題があった。
特開2000-239817号公報 特開2000-64061号公報 特開平8-309533号公報 特開2013-184216号公報 特開2000-84694号公報 特開2009-214171号公報 特開2009-172679号公報
そこで本発明は、上述した問題に鑑みて案出されたものであり、アークが安定して溶接作業性が良好で、亜鉛脆化割れが生じることなく、耐食性が良好で、延性の優れる溶接金属が得られる亜鉛めっき鋼板溶接用フラックス入りワイヤを提供することを目的とする。
本発明の要旨とするところは、ステンレス鋼外皮内にフラックスが充填された亜鉛めっき鋼板溶接用フラックス入りワイヤにおいて、ワイヤ全質量に対する質量%で、ステンレス鋼外皮とフラックスの合計で、C:0.005~0.040%、Si:0.10~0.80%、Mn:0.50~2.00%、Ni:7.0~10.0%、Cr:26.0~30.0%、Ti:0.10~0.50%を含有し、さらに、ワイヤ全質量に対する質量%で、フラックス中に、Ti酸化物のTiO2換算値の合計:4.0~7.0%、Si酸化物のSiO2換算値の合計:2.0~4.0%、Na酸化物、Na弗化物、K酸化物及びK弗化物の1種または2種以上:Na換算値及びK換算値の合計で0.20~1.00%、金属弗化物のF換算値の合計:0.20~0.60%、Bi及びBi酸化物の一方または両方のBi換算値の合計:0.050超~0.120%を含有し、Zr酸化物のZrO2換算値の合計:0.20%以下、Al酸化物のAl23換算値の合計:0.20%以下であり、残部はステンレス鋼外皮のFe分、鉄合金粉からのFe分及び不純物からなる組成を備えることを特徴とする亜鉛めっき鋼板溶接用フラックス入りワイヤにある。
本発明の亜鉛めっき鋼板溶接用フラックス入りワイヤによれば、アークが安定してスパッタ発生量が少なく、スラグ剥離性及びビード形状が良好であるなど溶接作業性が良好で、亜鉛脆化割れが生じることなく、溶接金属の耐食性が良好であるので溶接金属表面に塗装作業をする必要がなく、延性の優れる溶接金属が得られ、高能率に高品質の溶接が可能である。
本発明者らは、上述した課題を解決するために、溶接金属の耐食性を向上するために、Ni及びCrを含むオーステナイト組織にフェライトを比較的多く含む溶接金属となるようにすることを基本とし、さらに、亜鉛めっき鋼板を溶接した場合にアークが安定してスパッタ発生量が少なく、スラグ剥離性及びビード形状観が良好で、亜鉛脆化割れが生じず延性に優れた溶接金属が得られる溶接用フラックス入りワイヤの成分組成について詳細に検討した。
その結果、アークの安定性は、C、Ti、Na酸化物、Na弗化物、K酸化物及びK弗化物の1種または2種以上のNa換算値及びK換算値の合計及び金属弗化物のF換算値を適量にし、Zr酸化物のZrO2換算値の合計量を低減することで得られることを見出した。
スパッタ発生量の低減は、Mn、Ti及びNa酸化物、Na弗化物、K酸化物及びK弗化物の1種または2種以上のNa換算値及びK換算値の合計を適量にすることで、スラグ剥離性は、Ti酸化物のTiO2換算値の合計、Si酸化物のSiO2換算値の合計及びBi及びBi酸化物の一方または両方のBi換算値の合計を適量にし、Al酸化物のAl23換算値の合計量を低減することで、さらに、ビード形状は、Si、Ti酸化物のTiO2換算値の合計、Si酸化物のSiO2換算値の合計及び金属弗化物のF換算値の合計量を適正にすることで良好になることを見出した。
また、溶接金属の亜鉛脆化割れは、Ni、Cr及びTi酸化物のTiO2換算値の適正化で生じなくなり、溶接金属の延性は、C、Mn、Ni及びCrの適量添加により良好になることを見出した。
本発明の亜鉛めっき鋼板溶接用フラックス入りワイヤは、各成分組成それぞれ単独及び共存による相乗効果によりなし得たもので、以下にそれぞれの各成分組成の限定理由を述べる。なお、各成分組成の含有率は、フラックス入りワイヤ全質量に対する質量%で表すものとし、その質量%に関する記載を単に%と記載して表すこととする。
[ステンレス鋼外皮とフラックスの合計でC:0.005~0.040%]
Cは、アークを安定にする効果がある。Cが0.005%未満であると、その効果が得られずアークが不安定になる。一方、Cが0.040%を超えると、溶接金属の延性が低下する。従って、ステンレス鋼外皮とフラックスの合計でCは0.005~0.040%とする。なお、Cは、ステンレス鋼外皮に含まれる成分の他、フラックスから金属粉及び合金粉として添加できる。)
[ステンレス鋼外皮とフラックスの合計でSi:0.10~0.80%]
Siは、脱酸剤として作用するとともにビード形状を改善する効果がある。Siが0.10%未満であると、脱酸により形成されるスラグ量が少なくなりビード形状が不良となる。一方、Siが0.80%を超えると、溶接金属の粘性が低下してビード形状が不良となる。従って、ステンレス鋼外皮とフラックスの合計でSiは0.10~0.80%とする。なお、Siは、ステンレス鋼外皮に含まれる成分の他、フラックスから金属Si、Fe-Si、Fe-Si-Mnなどの合金粉として添加できる。
[ステンレス鋼外皮とフラックスの合計でMn:0.50~2.00%]
Mnは、溶接金属のオーステナイト相を安定化させて、溶接金属の延性を良好にする効果がある。Mnが0.50%未満であると、溶接金属の延性が低下する。一方、Mnが2.00%を超えると、スパッタ発生量が多くなる。また、Mnが2.00%を超えると、溶接金属の延性が低下する。従って、ステンレス鋼外皮とフラックスの合計でMnは0.50~2.00%とする。なお、Mnは、ステンレス鋼外皮に含まれる成分の他、フラックスから金属Mn,Fe-Mn、Fe-Si-Mnなどの合金粉として添加できる。
[ステンレス鋼外皮とフラックスの合計でNi:7.0~10.0%]
Niは、オーステナイト形成元素であり、溶接金属中のオーステナイト相を安定化させ、溶接金属の延性を向上させる効果がある。Niが7.0%未満であると、溶接金属の延性が低下する。一方、Niが10.0%を超えると、P、Sなどの割れに有害な微量成分の偏析を促進して亜鉛脆化割れが生じやすくなる。従って、ステンレス鋼外皮とフラックスの合計でNiは7.0~10.0%とする。なお、Niは、ステンレス鋼外皮に含まれる成分の他、フラックスから金属Ni、Fe-Niなどの合金粉として添加できる。
[ステンレス鋼外皮とフラックスの合計でCr:26.0~30.0%]
Crは、フェライト形成元素であり、溶接金属の凝固完了時にフェライト単相とし、溶接金属の亜鉛脆化割れを抑制する。Crが26.0%未満であると、溶接金属に亜鉛脆化割れが生じやすくなる。なお、ステンレス鋼の溶接金属は、Crが13%程度で良好な耐食性が得られるが、本発明は、Crを含有しない亜鉛めっき鋼板に適用し、母材希釈を50%(一般的には母材希釈10~40%)受けても溶接金属のCr量が13%確保できることも考慮してCrの下限を26.0%とした。一方、Crが30.0%を超えると、Cr炭化物やσ相の析出が生じやすく、溶接金属の延性が低下する。従って、ステンレス鋼外皮とフラックスの合計でCrは26.0~30.0%とする。なお、Crは、ステンレス鋼外皮に含まれる成分の他、フラックスから金属Cr、Fe-Crなどの合金粉として添加できる。
[ステンレス鋼外皮とフラックスの合計でTi:0.10~0.50%]
Tiは、アークを安定にする効果がある。Tiが0.10%未満であると、アークが不安定となる。一方、Tiが0.50%を超えると、溶接時に溶滴が粗大に成長し、大粒のスパッタが発生する。従って、ステンレス鋼外皮とフラックスの合計でTiは0.10~0.50%とする。なお、Tiは、ステンレス鋼外皮に含まれる成分の他、フラックスから金属Ti、Fe-Tiなどの合金粉として添加できる。
[フラックス中に含有するTi酸化物のTiO2換算値の合計;4.0~7.0%]
Ti酸化物は、スラグ剥離性を向上させるとともに、ビード止端部にSi酸化物と共に適正な厚みのスラグを形成して溶融亜鉛の止端部への進入を防いで母材熱影響部の亜鉛脆化割れを防止する効果がある。Ti酸化物のTiO2換算値の合計が4.0%未満であると、スラグ剥離性が不良になり、母材熱影響部に亜鉛脆化割れが生じやすくなる。一方、Ti酸化物のTiO2換算値が7.0%を超えると、スラグ量が多くなってビード形状が不良になる。従って、フラックス中に含有するTi酸化物のTiO2換算値の合計は4.0~7.0%とする。なお、Ti酸化物は、フラックスからルチール、酸化チタン、チタンスラグ、イルミナイトなどとして添加できる。
[フラックスに含有するSi酸化物のSiO2換算値の合計:2.0~4.0%]
Si酸化物は、スラグ剥離性を良好にすると共に溶融スラグの流動性を調整してビード形状を良好にする。Si酸化物のSiO2換算値が2.0%未満であると、スラグ剥離性及びビード形状が不良となる。一方、Si酸化物のSiO2換算値が4.0%を超えると、溶融スラグが流れやすくなってビード形状が不良となる。従って、フラックス中のSi酸化物のSiO2換算値の合計は2.0~4.0%とする。なお、Si酸化物は、フラックスから珪砂、カリ長石、珪酸ソーダ、珪酸カリなどとして添加できる。
[フラックスに含有するNa酸化物、Na弗化物、K酸化物及びK弗化物の1種または2種以上:Na換算値及びK換算値の合計で0.20~1.00%]
Na酸化物、Na弗化物、K酸化物及びK弗化物は、アークをソフトにして安定にする。Na酸化物、Na弗化物、K酸化物及びK弗化物の1種または2種以上のNa換算値とK換算値の合計が0.20%未満であると、アークが不安定になりスパッタ発生量が多くなる。一方、Na酸化物、Na弗化物、K酸化物及びK弗化物1種または2種以上のNa換算値とK換算値の合計が1.00%を超えると、アークが強くなりすぎ、スパッタ発生量が多くなる。また、Na酸化物、Na弗化物、K酸化物及びK弗化物1種または2種以上のNa換算値とK換算値の合計が1.00%を超えると、ビード止端部の母材とのなじみが悪くなり、ビード形状が不良となる。従って、フラックス中に含有するNa酸化物、Na弗化物、K酸化物及びK弗化物の1種または2種以上のNa換算値とK換算値の合計は0.20~1.00%とする。なお、Na酸化物、Na弗化物、K酸化物及びK弗化物は、フラックスから珪酸ソーダ及び珪酸カリからなる水ガラスの固質酸化物成分、NaF、K2SiF6、K2ZrF6、Na3AlF6等の金属弗化物の粉末として添加できる。Na換算値及びK換算値はそれらに含有されるNa量及びK量の合計である。
[フラックス中に含有する金属弗化物のF換算値の合計:0.20~0.60%]
金属弗化物は、アークを集中させて安定させる効果がある。金属弗化物のF換算値の合計が0.20%未満では、この効果が得られず、アークが不安定でスパッタ発生量が多くなる。一方、金属弗化物のF換算値の合計が0.60%を超えると、溶融スラグの融点が低下してビード形状が不良になる。従って、フラックス中に含有する金属弗化物のF換算値の合計は0.20~0.60%とする。なお、金属弗化物は、フラックスからのCaF2、NaF、LiF、MgF2、K2SiF6、K2ZrF6、Na3AlF6、AlF3等から添加でき、F換算値はそれらに含有されるF量の合計である。
[フラックス中に含有するBi及びBi酸化物の一方または両方のBi換算値の合計:0.050超~0.120%]
Bi及びBi酸化物は、溶接スラグの溶接金属からの剥離を促進して、スラグ剥離性を良好にする。Bi及びBi酸化物の一方または両方のBi換算値が0.050%以下であると、スラグ剥離を促進する効果が不十分である。一方、Bi及びBi酸化物の一方または両方のBi換算値が0.120%を超えると、溶接金属の延性が低下する。従って、フラックスに含有するBi及びBi酸化物の一方または両方のBi換算値は0.050超~0.120%とする。なお、Bi及びBi酸化物は、金属Biや酸化Bi等から添加される。
[フラックス中に含有するZr酸化物のZrO2換算値の合計:0.20%以下]
Zr酸化物は、Ti酸化物に不純物として含有されているが、Zr酸化物のZrO2換算値の合計が0.20%を超えると、アークが不安定となる。従って、Zr酸化物のZrO2換算値の合計は0.20%以下とする。なお、Zr酸化物のZrO2換算値の合計は、必須の元素ではなく、含有率が0%とされていてもよい。
[フラックス中に含有するAl酸化物のAl23換算値の合計:0.20%以下]
Al酸化物は、Si酸化物に不純物として含有されているが、Al酸化物のAl23換算値の合計が0.20%を超えると、スラグ剥離性が不良となる。従って、Al酸化物のAl23換算値の合計は0.20%以下とする。なお、Al酸化物のAl23換算値の合計は、必須の元素ではなく、含有率が0%とされていてもよい。
本発明の亜鉛めっき鋼板溶接用フラックス入りワイヤは、鋼製外皮(ステンレス鋼外皮)をパイプ状に成形し、その内部にフラックスを充填した構造である。ワイヤの種類としては、成形した鋼製外皮の合わせ目を溶接して得られる鋼製外皮に継目の無いワイヤと、鋼製外皮の合わせ目の溶接を行わないままとした鋼製外皮に継目を有するワイヤとに大別できる。本発明においては、何れの断面構造のワイヤを採用することができる。
本発明の亜鉛めっき鋼板溶接用フラックス入りワイヤの残部は、ステンレス鋼外皮のFe、フラックスとしてのFe-Si、Fe-Mn、Fe-Si―Mn、Fe-Ni、Fe-Cr、Fe-Tiなどの鉄合金粉のFe分及び不純物である。また、フラックス充填率は特に制限はしないが、生産性の観点から、ワイヤ全質量に対して15~30%とするのが好ましい。
なお、本発明が対象とする被溶接材の亜鉛めっき鋼板は、一般的なJIS G 3302に準拠した溶融亜鉛めっき鋼板、JIS G 3317に準拠した溶融亜鉛―5%アルミニウム合金めっき鋼板、JIS G 3321に準拠した溶融55%アルミニウムー亜鉛めっき鋼板、Zn-11%Al-3%Mg-0.2%Siめっき鋼板(スーパーダイマ(登録商標))、Zn-7%Al-3%Mgめっき鋼板(ZAM(登録商標))などの亜鉛めっき鋼板を含む。
以下、本発明の効果を具体的に説明する。
表1に示すステンレス鋼外皮を用い、ステンレス鋼外皮の帯鋼をU字形に成形してフラックスを充填し、ステンレス鋼外皮の合わせ目を溶接して縮径、焼鈍、伸線して表2及び表3に示す各種組成の亜鉛めっき鋼板溶接用フラックス入りワイヤを試作した。なお、ワイヤ径は1.2mm、フラックス充填率は18~28%とした。
Figure 0007304829000001
Figure 0007304829000002
Figure 0007304829000003
これらの試作ワイヤを用いて、溶接作業性、耐亜鉛脆化割れ性及び溶着金属性能について調査した。
溶接作業性の調査は、表4に示す亜鉛めっき鋼板の板厚6mmを用いてT字に組み、表5に示す条件No.T1の溶接条件で水平すみ肉溶接をビード長さ400mm実施した。水平すみ肉溶接は、片側の溶接が終了したら常温まで冷却した後、他方の側も水平すみ肉溶接を実施した。調査項目は、アークの安定性、スパッタ発生量、スラグ剥離性及びビード形状について目視で実施した。
Figure 0007304829000004
Figure 0007304829000005
耐亜鉛脆化割れ性は、水平すみ肉溶接試験のビード全長をJIS Z 2343-1に準拠して浸透探傷試験で割れの有無を調査した。
溶着金属性能は、JIS Z 3111に準拠して表5に示す条件No.T2の溶接条件で溶着金属試験を行った。なお、鋼板は板厚20mmのJIS G 3106に準拠したSM490B鋼の開先面に表2及び表3に示す各種試作のフラックス入りワイヤで2層バタリング溶接してJIS Z 3111に準じて溶着金属試験を行い、溶着金属の板厚方向の中心部から引張試験(A0号)を採取し、引張試験を実施した。引張試験の評価は、伸びが15%以上を良好とした。それらの結果を表6にまとめて示す。
Figure 0007304829000006
表2、表3及び表6中ワイヤ記号W1~W12が本発明例、ワイヤ記号W13~W36は比較例である。本発明例であるワイヤ記号W1~W12は、C、Si、Mn、Ni、Cr、Ti、Ti酸化物のTiO2換算値の合計、Si酸化物のSiO2換算値の合計、Na酸化物、Na弗化物、K酸化物及びK弗化物の1種または2種以上のNa換算値とK換算値の合計、金属弗化物のF換算値の合計、Bi及びBi酸化物の一方または両方のBi換算値の合計、Zr酸化物のZrO2換算値の合計及びAl酸化物のAl23換算値の合計が適量であるので、水平すみ肉溶接試験において、アークが安定してスパッタ発生量が少なく、スラグ剥離性及びビード形状が良好であり、溶接金属部及び熱影響部共に亜鉛脆化割れも生じなかった。また、溶着金属試験においても引張試験の伸びが良好であり、極めて満足な結果であった。
比較例中ワイヤ記号W13は、Cが少ないので、アークが不安定であった。
ワイヤ記号W14は、Cが多いので、溶着金属の伸びが低値であった。
ワイヤ記号W15は、Siが少ないので、ビード形状が不良であった。
ワイヤ記号W16は、Siが多いので、ビード形状が不良であった。
ワイヤ記号W17は、Mnが少ないので、溶着金属の伸びが低値であった。
ワイヤ記号W18は、Mnが多いので、スパッタ発生量が多かった。また、Mnが多いので、溶着金属の伸びが低値であった。
ワイヤ記号W19は、Niが少ないので、溶着金属の伸びが低値であった。
ワイヤ記号W20は、Niが多いので、溶接金属部に亜鉛脆化割れが生じた。
ワイヤ記号W21は、Crが少ないので、溶接金属部に亜鉛脆化割れが生じた。
ワイヤ記号W22は、Crが多いので、溶着金属の伸びが低値であった。
ワイヤ記号W23は、Tiが少ないので、アークが不安定であった。
ワイヤ記号W24は、Tiが多いので、大粒のスパッタ発生量が多かった。
ワイヤ記号W25は、Ti酸化物のTiO2換算値の合計が少ないので、スラグ剥離性が不良で、母材熱影響部に亜鉛脆化割れが生じた。
ワイヤ記号W26は、Ti酸化物のTiO2換算値の合計が多いので、ビード形状が不良であった。
ワイヤ記号W27は、Si酸化物のSiO2換算値が少ないので、スラグ剥離性及びビード形状が不良であった。
ワイヤ記号W28は、Si酸化物のSiO2換算値が多いので、ビード形状が不良であった。
ワイヤ記号W29は、Na酸化物、Na弗化物、K酸化物及びK弗化物の1種または2種以上のNa換算値とK換算値の合計が少ないので、アークが不安定でスパッタ発生量が多かった。
ワイヤ記号W30は、Na酸化物、Na弗化物、K酸化物及びK弗化物の1種または2種以上のNa換算値とK換算値の合計が多いので、アークが強くスパッタ発生量が多く、ビード形状が不良であった。
ワイヤ記号W31は、金属弗化物のF換算値が少ないので、アークが不安定でスパッタ発生量が多かった。
ワイヤ記号W32は、金属弗化物のF換算値が多いので、ビード形状が不良であった。
ワイヤ記号W33は、Bi及びBi酸化物の一方または両方のBi換算値の合計が少ないので、スラグ剥離性が不良であった。
ワイヤ記号W34は、Bi及びBi酸化物の一方または両方のBi換算値の合計が多いので、溶着金属の伸びが低値であった。
ワイヤ記号W35は、Zr酸化物のZrO2換算値の合計が多いので、アークが不安定であった。
ワイヤ記号W36は、Al酸化物のAl23換算値の合計が多いので、スラグ剥離性が不良であった。

Claims (1)

  1. ステンレス鋼外皮内にフラックスが充填された亜鉛めっき鋼板溶接用フラックス入りワイヤにおいて、
    ワイヤ全質量に対する質量%で、ステンレス鋼外皮とフラックスの合計で、
    C:0.005~0.040%、
    Si:0.10~0.80%、
    Mn:0.50~2.00%、
    Ni:7.0~10.0%、
    Cr:26.0~30.0%、
    Ti:0.10~0.50%を含有し、
    さらに、ワイヤ全質量に対する質量%で、フラックス中に、
    Ti酸化物のTiO2換算値の合計:4.0~7.0%、
    Si酸化物のSiO2換算値の合計:2.0~4.0%、
    Na酸化物、Na弗化物、K酸化物及びK弗化物の1種または2種以上:Na換算値及びK換算値の合計で0.20~1.00%、
    金属弗化物のF換算値の合計:0.20~0.60%、
    Bi及びBi酸化物の一方または両方のBi換算値の合計:0.050超~0.120%を含有し、
    Zr酸化物のZrO2換算値の合計:0.20%以下、
    Al酸化物のAl23換算値の合計:0.20%以下であり、
    残部はステンレス鋼外皮のFe分、鉄合金粉からのFe分及び不純物からなる組成を備えることを特徴とする亜鉛めっき鋼板溶接用フラックス入りワイヤ。
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