JP6566928B2 - ステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤ - Google Patents

ステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤ Download PDF

Info

Publication number
JP6566928B2
JP6566928B2 JP2016237523A JP2016237523A JP6566928B2 JP 6566928 B2 JP6566928 B2 JP 6566928B2 JP 2016237523 A JP2016237523 A JP 2016237523A JP 2016237523 A JP2016237523 A JP 2016237523A JP 6566928 B2 JP6566928 B2 JP 6566928B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
welding
stainless steel
total
slag
flux
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2016237523A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2018089678A (ja
Inventor
竜太朗 千葉
竜太朗 千葉
飛史 行方
飛史 行方
貴之 大塚
貴之 大塚
正明 鳥谷部
正明 鳥谷部
寛規 水田
寛規 水田
Original Assignee
日鉄溶接工業株式会社
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by 日鉄溶接工業株式会社 filed Critical 日鉄溶接工業株式会社
Priority to JP2016237523A priority Critical patent/JP6566928B2/ja
Publication of JP2018089678A publication Critical patent/JP2018089678A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6566928B2 publication Critical patent/JP6566928B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Nonmetallic Welding Materials (AREA)

Description

本発明は、オーステナイト系ステンレス鋼SUS316及びSUS316Lの溶接に適用され、特に−196℃での低温靭性に優れた溶接金属が得られ、かつ、溶接作業性が良好なステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤに関する。
オーステナイト系ステンレス鋼SUS304は耐食性に優れ、強度及び低温靭性等の機械的性能も良好であるため、LNG貯蔵タンクや建築構造部材に適用されている。また、オーステナイト系ステンレス鋼板SUS316は、SUS304にさらにMoを添加しているため高耐食性鋼板として知られている。近年ではLNGや液体窒素などの貯蔵タンクや貯蔵容器にオーステナイト系ステンレス鋼を適用する例が増加しているため、これを溶接するための溶接材料として特に溶接能率の高く、低温靭性も優れたステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤが求められている。
しかし、ステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤは、炭素鋼溶接用フラックス入りワイヤと比べ、溶接作業性の観点から溶接金属の酸素量が1300ppm以上と高くなるスラグ設計を行っているため、溶接金属中に酸化物系の介在物が多く、低温靭性の確保が困難であった。
SUS304鋼板の溶接においては、例えば特許文献1のように、溶接金属中のC、N、Ni、Cr、Mo、Nb、Ti量を限定し、かつ、フェライト量(Delong)を11〜23%に調整した高強度、高靭性の溶接金属が得られるステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤが開示されている。しかし、SUS316鋼板では、耐食性を高めることを目的にMoが添加されているが、一定量を超えて添加するとフェライト中に極めて硬く脆いσ相が析出されるため、溶接金属の靭性が低下する。このため、特許文献1の開示技術では、母材と共金となるようにワイヤ成分や溶接金属のフェライト量を調整してもSUS316鋼板に関しては低温靭性が得られなくなるという問題点がある。
また、特許文献2には、オーステナイト系ステンレス鋼SUS304と同程度の高強度な溶接継手性能と全姿勢溶接で良好な溶接作業性を得るためにワイヤ中のNi、Cr、Ti、Bi、弗化物、スラグ剤の合計を限定するステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤが開示されている。しかし、この特許文献2に開示されているステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤではTi含有量が多いため、全姿勢溶接での溶接作業性が良好である半面、ビード表面にスラグが焼き付いてしまうという問題点がある。さらにBiを0.01%以上添加しているため、スラグ剥離性は向上するがオーステナイト粒界にBiが偏析するため低温靭性が低くなるという問題点がある。
特開平8−267282号公報 特開2007−160314号公報
そこで本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、オーステナイト系ステンレス鋼SUS316及びSUS316Lの溶接に適用され、特に−196℃での低温靭性に優れた溶接金属が得られ、かつ、溶接作業性が良好なステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤを提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の課題を解決するために、各種成分組成のステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤを試作して詳細に検討した。その結果、ステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤ中の成分(外皮成分、フラックス成分)を適正化することによって、溶接金属の低温靭性が向上し、水平すみ肉溶接及び立向上進溶接で溶接作業性が良好となることを見出した。
すなわち、本発明の要旨は、ステンレス鋼外皮にフラックスを充填してなるステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤにおいて、ワイヤ全質量に対する質量%で、ステンレス鋼外皮とフラックスの合計で、C:0.005〜0.10%、Si:0.2〜0.8%、Mn:1.0〜3.0%、Cr:15〜22%、Ni:9〜13%、Mo:1.0〜3.5%、Ti:0.15〜0.5%、N:0.01〜0.05%を含有し、さらにワイヤ全質量に対する質量%で、フラックス中に、Ti酸化物:TiO2換算値の合計で5.5〜7.0%、Si酸化物:SiO2換算値の合計で0.1〜1.0%、Zr酸化物:ZrO2換算値の合計で0.01〜0.20%、Al酸化物:Al23換算値の合計で0.01〜0.20%、Na化合物及びK化合物:Na2O換算値及びK2O換算値の合計で0.01〜0.30%、弗素化合物:F換算値の合計で0.1〜1.0%を含有し、残部はステンレス鋼外皮のFe分、鉄合金粉からのFe分、鉄粉及び不可避不純物であることを特徴とするステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤにある。
本発明のステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤによれば、特に−196℃での低温靭性に優れた溶接金属が得られ、かつ、水平すみ肉及び立向上進溶接における溶接作業性が良好であるので高能率に溶接でき、高品質の溶接金属が得られるステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤを提供することができる。
本発明者らは、上述した課題を解決するために、各種成分組成のステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤを試作して詳細に検討した。その結果、ステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤ中のC、Si、Mn、Cr、Ni、Mo、Tiの含有量を適性化することによって、−196℃での低温靭性が向上することを見出した。
水平すみ肉溶接及び立向上進溶接における溶接作業性については、従来のBiを含有したステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤと比較すると、スラグ剥離性が劣化し、溶接施工の高能率化を満足できないといった問題があり、種々検討した結果、TiO2量を適正化し、溶接スラグの熱膨張率を調整して溶接金属と溶接スラグの熱膨張差を増加させることにより、スラグ剥離性を向上できることを見出した。また、このスラグ剥離性向上の効果は、Al23及び弗素化合物を適量併せて添加することによりさらに良好できることも見出した。またアークの安定性及びスパッタ発生量の低減は、TiO2、ZrO2、Na化合物及びK化合物、弗素化合物を適量添加することで実現することができ、ビード形状は、Si、SiO2、Al23、Na化合物及びK化合物を適量添加することで良好にできることを見出した。
さらに、TiO2及びTiの含有量を適正化することで、立向上進溶接におけるメタル垂れ性を抑え、ビード形状を良好にすることを見出した。
本発明に係るステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤは、ステンレス鋼外皮及びフラックス各成分組成それぞれの単独及び共存による相乗効果によりなし得たもので、以下にそれぞれの各成分組成の限定理由について説明をする。なお、各成分組成の含有量は、ワイヤ全質量に対する質量%で示すこととし、その質量%を示すときには単に%と記載して示すこととする。
まず、ステンレス鋼外皮とフラックスの合計で、以下の通りに限定する。
[C:0.005〜0.10%]
Cは、ステンレス鋼外皮、フェロマンガン、フェロシリコンマンガン及びグラファイト等から添加され、溶接金属の強度を確保する。Cが0.005%未満では、溶接金属の強度が低くなる。一方、Cが0.10%を超えると、溶接金属の靭性及び延性が低下する。したがって、Cの含有量は0.005〜0.10%とする。
[Si:0.2〜0.8%]
Siは、ステンレス鋼外皮、金属シリコン、フェロシリコン及びフェロシリコンマンガン等から添加され、脱酸元素並びにビード形状やスラグ被包性を改善する効果を有する。Siが0.2%未満では、溶接時の脱酸反応によって形成されるスラグ量が少なく、ビード形状が悪くなる。またSiが0.2%未満では、溶接金属の酸素量が高いため、靭性が低下する。一方、Siが0.8%を超えると、溶接金属の靭性が低下すると共にスラグ量が過多となり、スラグ被包性が悪くなる。したがって、Siの含有量は0.2〜0.8%とする。
[Mn:1.0〜3.0%]
Mnは、ステンレス鋼外皮、金属マンガン、フェロマンガン、フェロシリコンマンガン及び窒化Mn等から添加され、脱酸元素として溶接金属の機械性能を調整する効果を有する。Mnが1.0%未満では、脱酸元素としての効果が得られず、溶接金属の強度及び靭性が低下する。一方、Mnが3.0%を超えると、スパッタの発生量が多くなると共に溶接金属の延性が低下する。したがって、Mnの含有量は1.0〜3.0%とする。
[Cr:15〜22%]
Crは、ステンレス鋼外皮、金属クロム及びフェロクロム、窒化Cr等から添加され、溶接金属のフェライトを晶出させる元素であり、適切なオーステナイト/フェライト量を得るために添加される。Crが15%未満では、溶接金属のフェライトの晶出量が減少してオーステナイト量が多くなり、溶接金属に割れが発生しやすくなる。一方、Crが22%を超えると、溶接金属のフェライト生成量が過多となるため靭性が低下する。したがって、Crの含有量は15〜22%とする。
[Ni:9〜13%]
Niは、ステンレス鋼外皮、金属ニッケル及びフェロニッケル等から添加され、溶接金属のオーステナイト相を安定化させる元素であり、優れた靭性を得るために添加している。Niが9%未満では、溶接金属のオーステナイトの晶出量が減少してフェライト量が多くなり、靭性が低下する。一方、Niが13%を超えると、溶接金属のオーステナイト組織が粗大に成長するため強度が低下する。したがって、Niの含有量は9〜13%とする。
[Mo:1.0〜3.5%]
Moは、金属モリブデン及びフェロモリブデン等から添加され、溶接金属のオーステナイト相中に固溶され、強度を改善する効果を有する。Moが1.0%未満では、オーステナイト相中への固溶強化の効果は得られず、強度が低下する。一方、Moが3.5%を超えると、溶接金属のフェライト中より極めて硬く脆いσ相が析出され、靭性が低下する。したがって、Moの含有量は1.0〜3.5%とする。
[Ti:0.15〜0.5%]
Tiは、ステンレス鋼外皮、金属チタン及びフェロチタン等から添加され、脱酸を促進させて溶接金属中の酸化物を低減し、靭性を改善するとともに、立向上進溶接での溶接作業性を良好にする効果を有する。Tiが0.15%未満では、脱酸が不十分で、溶接金属の靭性が低下する。また、立向上進溶接において、メタル垂れが発生してビード形状が不良となる。一方、Tiが0.5%を超えると、溶接時に溶滴が粗大に成長し、大粒のスパッタが発生する。したがって、Tiの含有量は0.15〜0.5%とする。
[N:0.01〜0.05%]
Nは、ステンレス鋼外皮、窒化クロム及び窒化マンガン等から添加され、溶接金属のオーステナイト中に固溶され強度を向上する効果を有する。Nが0.01%未満では、その効果は得られず、強度が低下する。一方、Nが0.05%を超えると、溶接時に溶融池に固溶しきれないNが発生して溶滴移行が円滑に行われず、スパッタ発生量が増加する。したがって、Nの含有量は0.01〜0.05%とする。
次に、ワイヤ全質量に対する質量%で、フラックス中に含有する成分組成を、以下の通りに限定する。
[Ti酸化物:TiO2換算値の合計で5.5〜7.0%]
TiO2は、ルチール、酸化チタン、チタン酸ソーダ、チタンスラグ、イルミナイト等から添加させる。これらは、溶接スラグの熱膨張率を調整し、溶接金属と溶接スラグの熱膨張差を増加させることによってスラグ剥離性を向上させるとともに、立向上進溶接での溶接作業性を良好にする効果を有する。Ti酸化物のTiO2換算値の合計が5.5%未満であると、溶接金属と溶接スラグの熱膨張差が少なくなり、スラグ剥離性が不良になる。また、立向上進溶接において、メタル垂れが発生してビード形状が不良となる。一方、Ti酸化物のTiO2換算値の合計が7.0%を超えると、スラグが溶滴を完全に被包して溶滴の移行が阻害されるため、アークが不安定になる。したがって、Ti酸化物のTiO2換算値の合計は5.5〜7.0%とする。
[Si酸化物:SiO2換算値の合計で0.1〜1.0%]
SiO2は、珪砂、ジルコンサンド等から添加され、スラグ形成剤として作用し、スラグの粘性を調整してスラグ被包性を良好にする効果がある。Si酸化物のSiO2換算値の合計が0.1%未満であると、スラグの粘性が低くなり、スラグ被包性が悪くなる。一方、Si酸化物のSiO2換算値の合計が1.0%を超えると、スラグ量が増加して溶接金属とスラグ量とのバランスが悪くなり、ビード形状が不良になる。したがって、Si酸化物のSiO2換算値の合計は0.1〜1.0%とする。
[Zr酸化物:ZrO2換算値の合計で0.01〜0.20%]
ZrO2は、ジルコンサンド及び酸化ジルコニウム等から添加され、スラグの粘性を調整し、溶滴移行の際に発生するスパッタ発生量を低減する効果を有する。Zr酸化物のZrO2換算値の合計が0.01%未満であると、スラグの粘性が低くなり、溶滴移行の際に小粒のスパッタが発生する。一方、Zr酸化物のZrO2換算値の合計が0.20%を超えると、スラグの粘性が高くなり、溶滴が大きく成長し、溶滴移行が円滑に行われず、アークが不安定になる。したがって、Zr酸化物のZrO2換算値の合計は0.01〜0.20%とする。
[Al酸化物:Al23換算値の合計で0.01〜0.20%]
Al23は、アルミナ、カリ長石、曹長石等から添加され、スラグの融点を調整してビード形状を向上させる効果を有する。Al酸化物のAl23換算値の合計が0.01%未満であると、スラグの融点が低くなるので、溶接金属とスラグの凝固が不均一となり、ビード形状が不良になる。一方、Al酸化物のAl23換算値の合計が0.20%を超えると、スラグの融点が高くなり、冷却速度の速いビード部にスラグが残ってスラグ剥離性が悪くなる、したがって、Al酸化物のAl23換算値の合計は0.01〜0.20%とする。
[Na化合物及びK化合物:Na2O換算値及びK2O換算値の合計で0.01〜0.30%]
Na化合物及びK化合物は、水ガラスのNaO2及びK2O、弗化ソーダや珪弗化カリ等の弗化物等から添加され、アークを安定にし、スパッタ発生量を低減する効果を有する。Na化合物及びK化合物のNa2O換算値及びK2O換算値の合計が0.01%未満では、アークが不安定となり、溶滴移行が短絡移行となってスパッタ発生量が増加する。一方、Na化合物及びK化合物のNa2O換算値及びK2O換算値の合計が0.30%を超えると、スラグの凝固が早くなり、ビード形状が悪くなる。したがって、Na化合物及びK化合物のNa2O換算値及びK2O換算値の合計は0.01〜0.30%とする。
[弗素化合物:F換算値の合計で0.1〜1.0%]
弗素化合物は、弗化ソーダ、珪弗化カリ、ジルコンフッ化カリ、氷晶石、弗化アルミ、弗化リチウム及び蛍石などから添加され、アークの安定性を向上させる効果を有する。弗素化合物のF換算値の合計が0.1%未満では、上述の効果が不十分であり、アークが不安定になる。一方、弗素化合物のF換算値の合計が1.0%を超えると、スラグの融点が低下して溶接金属よりスラグの凝固が早くなり、ビード形状が不均一になる。したがって、弗素化合物のF換算値の合計は0.1〜1.0%とする。
残部は、Fe分及び不可避不純物である。Fe分は、ステンレス鋼外皮のFe分、フラックスの鉄粉、鉄合金(フェロシリコン、フェロマンガン、フェロシリコンマンガン等のフェロアロイ)粉などからのFe分である。不可避不純物は、P、S、Bi、などの不可避に混入される不純物であり、できるだけ少ないことが望ましい。
なお、Biは、粒界強度が低下して延性を著しく低下させるため、Biは0.001%以下とすることが好ましい。
以上、本発明のステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤの成分組成の限定理由を説明したが、ステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤの製造方法に言及すると、例えば、ステンレス鋼外皮を帯鋼から管状に成形する場合、配合、混合・撹拌、乾燥した充填フラックスをU形に成形した溝に満たした後に丸型に成形し、所定のワイヤ径まで伸線する。この際、成形した外皮シームを溶接してシームレスタイプのステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤとすることもできる。また、ステンレス鋼外皮がパイプの場合、パイプを振動させてフラックスを充填、所定のワイヤ径まで伸線することができる。いずれの製造方法もワイヤ径は、0.8〜3.6mmまで製造が可能である。
フラックスは、供給及び充填が円滑に行えるように、固着剤(珪酸カリ及び珪酸ソーダの水ガラス)を添加して造粒して用いることもできる。
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。
表1に示す化学成分のステンレス鋼外皮を用い、表2に示す成分組成のステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤを作製した。即ち、表2に示す各成分組成の含有量は、ワイヤ全質量に対する質量%で、ステンレス鋼外皮とフラックスの合計である。このワイヤの作製においては、ステンレス鋼外皮にフラックスを充填し、端面同士を溶接してシームレス状にした後、縮径してステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤを試作した。なお、ワイヤ径は1.2mm、フラックス充填率は19〜24%とした。
Figure 0006566928
Figure 0006566928
これら試作したワイヤを用いて、溶接作業性、溶着金属性能及び耐割れ性について調査を行った。
溶接作業性評価は、表3に示す成分のSUS316L鋼板を用い、表4に示す溶接条件で水平すみ肉溶接及び立向上進すみ肉溶接を行い、アーク安定性、スパッタ発生量、スラグ被包性、スラグ剥離性、メタル垂れの有無(立向上進すみ肉溶接のみ)及びビード形状を調査した。
Figure 0006566928
Figure 0006566928
溶着金属試験は、板厚20mm、ベベル角度10°を設けたSM490A鋼板に2層バタリングを行い、JIS Z 3323に準拠し、表4に示す溶接条件にて多層盛溶接を行った。溶着金属部より、引張試験片及び衝撃試験片を採取し、試験を行った。室温にて引張試験、試験温度−196℃で衝撃試験を行い、引張強さが510MPa以上、伸びが30%以上、吸収エネルギーが3本の平均値で30J以上を良好とした。
耐割れ性の評価は、表3に示す成分の板厚20mm、開先角度20°(ベベル角度10°)、V開先を設けたSUS316L鋼板を用い、表4に示す溶接条件で多層盛溶接して溶接継手を作製し、JIS Z 3122に準拠して側曲げ試験片を採取して側曲げ試験を行い、疵が3mm以下を良好とした。それらの調査結果を表5にまとめて示す。
Figure 0006566928
表2及び表4中のワイヤ記号W1〜W8が本発明例、ワイヤ記号W9〜W19は比較例である。本発明例であるワイヤ記号W1〜W8は、ステンレス鋼外皮とフラックスとの合計のC、Si、Mn、Cr、Ni、Mo、Ti、N及びフラックスのTiO2換算値、SiO2換算値、ZrO2換算値、Al23換算値、Na2O換算値及びK2O換算値の合計、F換算値が適正であるので、溶着金属の引張強さ及び吸収エネルギーが良好で、耐割れ性も良好であった。また、水平すみ肉溶接及び立向上進溶接におけるアーク安定性が良好でスパッタ発生量が少なく、ビード形状、スラグ被包性、スラグ剥離性が良好であり極めて満足な結果であった。
比較中ワイヤ記号W9は、Cが少ないので、溶着金属の引張強さが低かった。また、Al23換算値が多いので、水平すみ肉溶接及び立向上進溶接でスラグ剥離性が不良であった。さらに、Na2O換算値及びK2O換算値の合計が多いので、水平すみ肉溶接及び立向上進溶接で共にビード形状が不良であった。
ワイヤ記号W10は、Cが多いので、溶着金属の吸収エネルギーと伸びが低値であった。また、Crの含有量が少ないので側曲げ試験片に5.0mmの疵が発生した。さらに、ZrO2換算値が多いので、アーク状態が不安定であった。
ワイヤ記号W11は、Siが少ないので、溶着金属の吸収エネルギーが低値であり、ビード形状も不良であった。また、ZrO2換算値が少ないので、スパッタ発生量が多かった。
ワイヤ記号W12は、Siが多いので、溶着金属の吸収エネルギーが低値であり、スラグ被包性も不良であった。また、Niが多いので、溶着金属の引張強さが低かった。さらに、Al23換算値が少ないので、ビード形状が不良であった。
ワイヤ記号W13は、Mnが少ないので、溶着金属の引張強さ及び吸収エネルギーが低かった。また、F換算値が少ないので、アーク状態が不安定であった。
ワイヤ記号W14は、Mnが多いので、溶着金属の伸びが低く、スパッタ発生量も多かった。また、Crが多いので、溶着金属の吸収エネルギーが低値であった。また、F換算値が多いので、ビード形状が不良であった。
ワイヤ記号W15は、Niが少ないので、溶着金属の吸収エネルギーが低値であった。また、TiO2換算値が多いので、アークが不安定であった。
ワイヤ記号W16は、Moが少ないので、溶着金属の引張強さが低かった。また、SiO2換算値が多いので、ビード形状が不良であった。さらに、Na2O換算値及びにK2O換算値の合計が少ないので、アークが不安定となりスパッタ発生量が多かった。
ワイヤ記号W17は、Moが多いので、溶着金属の吸収エネルギーが低かった。また、Nが少ないので、溶着金属の引張強さも低かった。さらに、TiO2換算値が少ないのでスラグ剥離性が不良で、立向上進溶接において、メタル垂れが発生してビード形状が不良であった。
ワイヤ記号W18は、Tiが少ないので、溶着金属の吸収エネルギーが低く、立向上進溶接において、メタル垂れが発生してビード形状が不良であった。また、Nが多いので、スパッタ発生量が多かった。
ワイヤ記号W19は、Tiが多いので、スパッタ発生量が多かった。また、SiO2換算値が少ないので、スラグ被包性が不良であった。

Claims (1)

  1. ステンレス鋼外皮にフラックスを充填してなるステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤにおいて、
    ワイヤ全質量に対する質量%で、ステンレス鋼外皮とフラックスの合計で、
    C:0.005〜0.10%、
    Si:0.2〜0.8%、
    Mn:1.0〜3.0%、
    Cr:15〜22%、
    Ni:9〜13%、
    Mo:1.0〜3.5%、
    Ti:0.15〜0.5%、
    N:0.01〜0.05%を含有し、
    さらにワイヤ全質量に対する質量%で、フラックス中に、
    Ti酸化物:TiO2換算値の合計で5.5〜7.0%、
    Si酸化物:SiO2換算値の合計で0.1〜1.0%、
    Zr酸化物:ZrO2換算値の合計で0.01〜0.20%、
    Al酸化物:Al23換算値の合計で0.01〜0.20%、
    Na化合物及びK化合物:Na2O換算値及びK2O換算値の合計で0.01〜0.30%、
    弗素化合物:F換算値の合計で0.1〜1.0%を含有し、
    残部はステンレス鋼外皮のFe分、鉄合金粉からのFe分、鉄粉及び不可避不純物であることを特徴とするステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤ。
JP2016237523A 2016-12-07 2016-12-07 ステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤ Active JP6566928B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016237523A JP6566928B2 (ja) 2016-12-07 2016-12-07 ステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤ

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016237523A JP6566928B2 (ja) 2016-12-07 2016-12-07 ステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤ

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2018089678A JP2018089678A (ja) 2018-06-14
JP6566928B2 true JP6566928B2 (ja) 2019-08-28

Family

ID=62564069

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2016237523A Active JP6566928B2 (ja) 2016-12-07 2016-12-07 ステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤ

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6566928B2 (ja)

Families Citing this family (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN109623192B (zh) * 2018-12-21 2021-06-01 中国船舶重工集团公司第七二五研究所 具有极小温升的不锈钢焊条焊芯、不锈钢焊条及制备与应用
WO2021002259A1 (ja) * 2019-07-01 2021-01-07 株式会社神戸製鋼所 オーステナイト系ステンレス鋼フラックス入りワイヤ、溶接金属及び溶接方法
KR102197132B1 (ko) * 2019-11-26 2020-12-31 주식회사 세아에삽 Lng 탱크 제작용 스테인리스강 플럭스 코어드 와이어
CN111378903A (zh) * 2020-05-19 2020-07-07 江苏阀邦半导体材料科技有限公司 一种应用在半导体阀门的超纯净双重冶炼配方
JP7323497B2 (ja) * 2020-09-07 2023-08-08 株式会社神戸製鋼所 フラックス入りワイヤ

Family Cites Families (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2000102891A (ja) * 1998-09-30 2000-04-11 Toyo Eng Corp オーステナイト系ステンレス鋼溶接材料
JP3934399B2 (ja) * 2001-11-05 2007-06-20 新日鐵住金ステンレス株式会社 凝固結晶粒を微細にするオーステナイト系ステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤ
JP4566899B2 (ja) * 2005-12-09 2010-10-20 日鐵住金溶接工業株式会社 高強度ステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤ
JP6140069B2 (ja) * 2013-12-20 2017-05-31 日鐵住金溶接工業株式会社 ステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤ
JP6110800B2 (ja) * 2014-01-29 2017-04-05 日鐵住金溶接工業株式会社 ステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤ

Also Published As

Publication number Publication date
JP2018089678A (ja) 2018-06-14

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6566928B2 (ja) ステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤ
JP6719217B2 (ja) ステンレス鋼フラックス入りワイヤ
JP4566899B2 (ja) 高強度ステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤ
JP5138242B2 (ja) 二相ステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤ
JP6250475B2 (ja) Ni基合金フラックス入りワイヤ
JP6599781B2 (ja) 二相ステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤ
JP2014113615A (ja) 炭酸ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ
JP6434381B2 (ja) ステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤ
JP2015217393A (ja) 炭酸ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ
JP6110800B2 (ja) ステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤ
JP5706354B2 (ja) 二相ステンレス鋼用被覆アーク溶接棒
JP6786472B2 (ja) 二相ステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤ
JP2014034051A (ja) ステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤ
JP2011025298A (ja) ガスシールドアーク溶接方法
JP6140069B2 (ja) ステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤ
JP4300153B2 (ja) ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ
JP6017406B2 (ja) セルフシールドアーク溶接用ステンレス鋼フラックス入りワイヤ
JP5409459B2 (ja) オーステナイト系ステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤ
WO2020217963A1 (ja) Ni基合金フラックス入りワイヤ
KR102456990B1 (ko) 저온용 강의 가스 실드 아크 용접용 플럭스 충전 와이어
JP2010064087A (ja) ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ
JP2021115596A (ja) 亜鉛めっき鋼板溶接用フラックス入りワイヤ
JP2020131234A (ja) セルフシールドアーク溶接用ステンレス鋼フラックス入りワイヤ
JP2020142277A (ja) 耐候性鋼のAr−CO2混合ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ
JP7323497B2 (ja) フラックス入りワイヤ

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20181029

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20190708

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20190723

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20190730

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6566928

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250