JP6434381B2 - ステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤ - Google Patents

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Description

本発明は、ステンレス鋼の溶接に適用され、特に高温環境下において、高温引張強さ及び耐割れ性に優れる溶接金属が得られ、かつ、水平すみ肉溶接及び立向上進溶接における溶接作業性が良好で高温用途に適したステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤに関する。
1990年代初頭、石油精製装置の高温環境で使用されるオーステナイト系ステンレス鋼製機器の配管において、Biを含有したオーステナイト系ステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤにより溶接された溶接継手で割れの発生が相次いで報告されている。特に700℃付近の温度域では、使用を開始して1年に満たない短期間に溶接継手の割れが発生するトラブルが報告され、実用上の大きな問題となっている。この割れの原因として、一般的なステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤには、スラグ剥離性の改善のためBiが酸化物の形で添加されている。Biが添加された溶接継手は、700℃以上の温度域に曝された場合、オーステナイト粒界にBiが濃化し、再熱割れが発生するといった事例が報告されている。その結果、Biを添加した溶接継手は、再熱割れによって短時間で粒界強度が低下して延性が著しく低下することが従来から判明している。
ステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤにより溶接された溶接金属の高温環境化での再熱割れを防止する手段として、Bi量を10ppm程度にすれば、溶接金属の高温延性に影響がなく、実用上問題ないことが提言されている。このため、JISではBi≦0.001質量%のワイヤが規定されており、米国石油学会(API)においても、550℃以上で使用される配管の溶接には、Bi≦0.002質量%のワイヤを使用することが推奨されている。
このようなBiの含有量が限りなく0に近い、いわゆるBi無添加のステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤは、高温強度が高く、耐割れ性が優れることから、高温環境下で使用される化学プラントなどに適用されている。しかしながら、このようなBi無添加のステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤは、スラグ剥離性の改善効果を有するBiが低く抑えられているため、従来のステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤと比較すると、スラグ剥離性が悪く、溶接施工の高能率化の要求を満足できないといった問題点があった。したがって、Biを含有したステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤと同等の溶接作業性を有し、高温強度が高く、耐割れ性に優れるBi無添加のステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤの開発が望まれていた。
このように、高温用途に適したステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤの技術は、種々検討されており、例えば、特許文献1には、TiO2、SiO2、ZrO2、金属弗化物、Al23、Bi及びBi化合物を含有するオーステナイト系ステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤが開示されている。しかし、このステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤでは、ZrO2含有量が多く、溶接金属及び溶接スラグ間に窒化物を生成するため、スラグ剥離性が悪いという問題点があった。
また、特許文献2には、O、Nb、V、C、N、Cr、TiO2、SiO2、Al23及び金属弗化物等を限定した高温用途用のステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤが開示されている。しかし、このステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤでは、溶接金属中のNb含有量が多くなり、スラグ剥離性が悪くなる。また、N含有量が少なくなるので、オーステナイトとフェライトの晶出量によって、安定した固溶強化が得られず、溶接金属の引張強さが低くなる。さらには、SUS304N2などのオーステナイト系ステンレス鋼に適用した場合、希釈の影響によって溶接金属中のN含有量が多くなり、スラグ剥離性が悪くなるという問題点があった。
特開平11−192586号公報 特開平7−276085号公報
そこで本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、ステンレス鋼の溶接に適用され、特に高温環境下において、優れた高温引張強さ及び耐割れ性に優れる溶接金属が得られ、かつ、水平すみ肉溶接及び立向上進溶接における溶接作業性が良好なステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤを提供することを目的とする。
本発明者らは、上述した課題を解決するために、各種成分組成のステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤを試作して詳細に検討した。その結果、ステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤ中の成分(金属成分、フラックス成分)を適正化することによって、溶接金属の高温での引張強さ、靭性及び耐割れ性が向上し、水平すみ肉溶接及び立向上進溶接で溶接作業性が良好となることを見出して、本発明を完成した。
本発明の要旨は、ステンレス鋼外皮にフラックスを充填してなるステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤにおいて、ワイヤ全質量に対する質量%で、ステンレス鋼外皮とフラックスの合計で、C:0.005〜0.10%、Si:0.2〜1.0%、Mn:1.5〜4.5%、Ni:8〜13%、Cr:16〜23%、Mo:0.01〜1.0%、Ti:0.55〜1.0%、N:0.01〜0.05%を含有し、Nb:0.05%以下であり、さらにワイヤ全質量に対する質量%で、フラックス中に、Ti酸化物:TiO2換算値の合計で5〜8%、Si酸化物:SiO2換算値の合計で0.1〜1.5%、Zr酸化物:ZrO2換算値の合計で0.01〜0.1%、Al酸化物:Al23換算値の合計で0.01〜0.1%、Na化合物及びK化合物:Na2O換算値及びK2O換算値の合計で0.01〜0.30%、弗素化合物:F換算値の合計で0.1〜1.0%を含有し、Bi:0.001%以下であり、残部はステンレス鋼外皮のFe分、合金鉄中のFe分、フラックスとして含有する鉄粉のうちのFe分及び不可避不純物であることを特徴とするステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤである。
本発明を適用したステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤによれば、特に高温環境下において、優れた高温引張強さ及び耐割れ性に優れる溶接金属が得られ、かつ、水平すみ肉溶接及び立向上進溶接における溶接作業性が良好なステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤを提供することができる。
本発明者らは、上述した課題を解決するために、各種成分組成のステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤを試作して詳細に検討した。その結果、ステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤ中のC、Cr、Ni、Mo、Nb、Biの含有量を適性化することによって、高温での引張強さ、靭性及び耐割れ性が向上することを見出した。
また、高温で長時間保持した場合、フェライト/オーステナイト粒界へ炭化物やフェライト相中にσ相が析出してフェライト相内が脆化し、高温引張強さが低下するので、フェライト生成元素であるCrを適正化することによって、フェライト量を低く抑え、フェライト/オーステナイト粒界中の炭化物やσ相を低減できることを見出した。
また、C量の調整を行うことで、オーステナイト相に適正な炭化物を析出させ、引張強さを向上できることを突き止めたが、それに伴って、靭性が低下したため、さらなる検討を行った。その結果、Ti量を適正化することで、脱酸を促進させて溶接金属中の酸化物を低減し、靭性を改善できることを見出した。
一方、フェライト量が低くなるとともに、耐割れ性が悪くなる傾向が認められたため、Mn添加量の適正化も行い、低融点化合物の偏析を低減させ、耐割れ性を改善できることを見出した。
水平すみ肉溶接及び立向上進溶接における溶接作業性については、従来のBiを含有したステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤと比較すると、スラグ剥離性が劣化し、溶接施工の高能率化を満足できないといった問題があり、種々検討した結果、TiO2量を適正化し、溶接スラグの熱膨張率を調整して溶接金属と溶接スラグの熱膨張差を増加させることにより、スラグ剥離性を向上できることを見出した。上記の効果は、Al23及び弗素化合物を適量併せて添加することにより良好できる。また、アークの安定性及びスパッタ量の低減は、TiO2、ZrO2、Na及びK化合物、弗素化合物を適量添加することで、また、ビード形状は、Si、SiO2、Al23、Na化合物及びK化合物を適量添加することで良好にできることを見出した。
さらに、TiO2及びTiを適正化することで、立向上進溶接におけるメタル垂れ性を抑え、ビード形状を良好にすることを見出した。
本発明のステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤは、ステンレス鋼外皮及びフラックス各成分組成それぞれの単独及び共存による相乗効果によりなし得たもので、以下にそれぞれの各成分組成の添加理由及び限定理由を述べる。なお、各成分組成の含有量は、ワイヤ全質量に対する質量%で示すこととし、その質量%を示すときには単に%と記載して示すこととする。
まず、ステンレス鋼外皮とフラックスの合計で、以下の通りに限定する。
[C:0.005〜0.10%]
Cは、ステンレス鋼外皮、フェロマンガン、フェロシリコンマンガン及びグラファイト等から添加され、Cr炭化物及びTi炭化物を生成して、溶接金属の高温引張強さを高める効果がある。Cが0.005%未満では、Cr炭化物及びTi炭化物の生成が不十分で高温での引張強さが低くなる。一方、Cが0.10%を超えると、Cr炭化物及びTi炭化物が粗大化し、高温に保持した後の靭性が低くなる。したがって、Cの含有量は0.005〜0.10%とする。
[Si:0.2〜1.0%]
Siは、ステンレス鋼外皮、金属シリコン、フェロシリコン及びフェロシリコンマンガン等から添加され、ビード形状やスラグ被包性を改善する効果を有する。Siが0.2%未満では、溶接時の脱酸反応によって形成されるスラグ量が少なく、ビード形状が悪くなる。一方、Siが1.0%を超えると、スラグ量が過多となり、スラグ被包性が悪くなる。したがって、Siの含有量は0.2〜1.0%とする。
[Mn:1.5〜4.5%]
Mnは、ステンレス鋼外皮、金属マンガン、フェロマンガン、フェロシリコンマンガン及び窒化Mn等から添加され、低融点化合物の偏析を低減して耐割れ性を改善する効果を有する。Mnが1.5%未満では、オーステナイト粒界に低融点化合物が偏析するため、耐割れ性が悪くなる。一方、Mnが4.5%を超えると、炭化物及び窒化物を生成して常温での靭性が低下する。したがって、Mnの含有量は1.5〜4.5%とする。
[Ni:8〜13%]
Niは、ステンレス鋼外皮、金属ニッケル及びフェロニッケル等から添加され、オーステナイト相を安定化させる元素であり、フェライト量の調整及び耐割れ性を改善する効果を有する。Niが8%未満では、オーステナイトの晶出量が減少してフェライト量が多くなり、常温での靭性が低下する。一方、Niが13%を超えると、フェライトの晶出量が少なくなり、低融点化合物の偏析が助長されて耐割れ性が悪くなる。したがって、Niの含有量は8〜13%とする。
[Cr:16〜23%]
Crは、ステンレス鋼外皮、金属クロム及びフェロクロム、窒化Cr等から添加され、フェライト相を安定化させる元素であり、溶接金属の引張強さを増加させる効果を有する。Crが16%未満では、フェライトの晶出量が減少してオーステナイト量が多くなり、常温での引張強さが低下する。一方、Crが23%を超えると、Cr炭化物の生成が多くなり、高温での引張強さが低下する。したがって、Crの含有量は16〜23%とする。
[Mo:0.01〜1.0%]
Moは、ステンレス鋼外皮、金属モリブデン及びフェロモリブデン等から添加され、オーステナイト相中に固溶され、引張強さを改善する効果を有する。Moが0.01%未満では、固溶強化の効果は得られず、常温での引張強さが低下する。一方、Moが1.0%を超えると、フェライト中より極めて硬く脆いσ相が析出され、高温に保持したあとの靭性が低下する。したがって、Moの含有量は0.01〜1.0%とする。
[Ti:0.55〜1.0%]
Tiは、ステンレス鋼外皮、金属チタン及びフェロチタン等から添加され、脱酸を促進させて溶接金属中の酸化物を低減し、靭性を改善するとともに、立向上進溶接での溶接作業性を良好にする効果を有する。Tiが0.55%未満では、脱酸が不十分で、常温での靭性が低下する。また、立向上進溶接において、メタル垂れが発生してビード形状が不良となる。一方、Tiが1.0%を超えると、溶接時に溶滴が粗大に成長し、大粒のスパッタが発生する。したがって、Tiの含有量は0.55〜1.0%とする。
[N:0.01〜0.05%]
Nは、ステンレス鋼外皮、窒化クロム及び窒化マンガン等から添加され、オーステナイト中に固溶され引張強さを向上する効果を有する。Nが0.01%未満では、その効果は得られず、常温での引張強さが低下する。一方、Nが0.05%を超えると、溶接時に溶融池に固溶しきれないNが発生して溶滴移行が円滑に行われず、スパッタ発生量が増加する。したがって、Nの含有量は0.01〜0.05%とする。
[Nb:0.05%以下]
Nbは、ステンレス鋼外皮に含有されていて、不可避的にワイヤ中に含有される成分である。このNbの含有量が多くなると溶接金属とスラグ間で化合物を生成してスラグ剥離性を悪くする作用があるので、少ないほうが望ましく、0.05%以下であれば許容できる。Nbの含有量は、好ましくは0.02%以下である。
次に、ワイヤ全質量に対する質量%で、フラックス中に含有する成分組成を、以下の通りに限定する。
[Ti酸化物:TiO2換算値の合計で5〜8%]
TiO2は、ルチール、酸化チタン、チタン酸ソーダ、チタンスラグ、イルミナイト等から添加させる。これらは、溶接スラグの熱膨張率を調整し、溶接金属と溶接スラグの熱膨張差を増加させることによってスラグ剥離性を向上させるとともに、立向上進溶接での溶接作業性を良好にする効果を有する。Ti酸化物のTiO2換算値の合計が5%未満であると、溶接金属と溶接スラグの熱膨張差が少なくなり、スラグ剥離性が不良になる。また、立向上進溶接において、メタル垂れが発生してビード形状が不良となる。一方、Ti酸化物のTiO2換算値の合計が8%を超えると、スラグが溶滴を完全に被包して溶滴の移行が阻害されるため、アークが安定性になる。したがって、Ti酸化物のTiO2換算値の合計は5〜8%とする。
[Si酸化物:SiO2換算値の合計で0.1〜1.5%]
SiO2は、珪砂、ジルコンサンド等から添加され、スラグ形成剤として作用し、スラグの粘性を調整してスラグ被包性を良好にする効果がある。Si酸化物のSiO2換算値の合計が0.1%未満であると、スラグの粘性が低くなり、スラグ被包性が悪くなる。一方、Si酸化物のSiO2換算値の合計が1.5%を超えると、スラグ量が増加して溶接金属とスラグ量とのバランスが悪くなり、ビード形状が不良になる。したがって、Si酸化物のSiO2換算値の合計は0.1〜1.5%とする。
[Zr酸化物:ZrO2換算値の合計で0.01〜0.1%]
ZrO2は、ジルコンサンド及び酸化ジルコニウム等から添加され、スラグの粘性を調整し、溶滴移行の際に発生するスパッタ発生量を低減する効果を有する。Zr酸化物のZrO2換算値の合計が0.01%未満であると、スラグの粘性が低くなり、溶滴移行の際に小粒のスパッタが発生する。一方、Zr酸化物のZrO2換算値の合計が0.1%を超えると、スラグの粘性が高くなり、溶滴が大きく成長し、溶滴移行が円滑に行われず、アークが不安定になる。したがって、Zr酸化物のZrO2換算値の合計は0.01〜0.1%とする。
[Al酸化物:Al23換算値の合計で0.01〜0.1%]
Al23は、アルミナ、カリ長石、曹長石等から添加され、スラグの融点を調整してビード形状を向上させる効果を有する。Al酸化物のAl23換算値の合計が0.01%未満であると、スラグの融点が低くなるので、溶接金属とスラグの凝固が不均一となり、ビード形状が不良になる。一方、Al酸化物のAl23換算値の合計が0.1%を超えると、スラグの融点が高くなり、冷却速度の速いビード部にスラグが残ってスラグ剥離性が悪くなる、したがって、Al酸化物のAl23換算値の合計は0.01〜0.1%とする。
[Na化合物及びK化合物:Na2O換算値及びK2O換算値の合計で0.01〜0.30%]
Na化合物及びK化合物は、水ガラスのNa2O及びK2O、沸化ソーダや珪弗化カリ等の弗化物等から添加され、アークを安定にし、スパッタ発生量を低減する効果を有する。Na化合物及びK化合物のNa2O換算値及びK2O換算値の合計が0.01%未満では、アークが不安定となり、溶滴移行が短絡移行となってスパッタ発生量が増加する。一方、Na化合物及びK化合物のNa2O換算値及びK2O換算値の合計が0.30%を超えると、スラグの凝固が早くなり、ビード形状が悪くなる。したがって、Na化合物及びK化合物のNa2O換算値及びK2O換算値の合計は0.01〜0.30%とする。
[弗素化合物:F換算値の合計で0.1〜1.0%]
弗素化合物は、弗化ソーダ、珪弗化カリ、ジルコンフッ化カリ、氷晶石、弗化アルミ、弗化リチウム及び蛍石などから添加され、アークの安定性を向上させる効果を有する。弗素化合物のF換算値の合計が0.1%未満では、上述の効果が不十分であり、アークが不安定になる。一方、弗素化合物のF換算値の合計が1.0%を超えると、スラグの融点が低下して溶接金属よりスラグの凝固が早くなり、ビード形状が不均一になる。したがって、弗素化合物のF換算値の合計は0.1〜1.0%とする。
[Bi:0.001%以下]
Biは、溶接部が高温に長時間保持された場合、オーステナイト粒界にBiが濃化し易く、耐割れ性を悪くするので、フラックス中のBiは0.001%以下とする。
残部は、Fe分及び不可避不純物である。Fe分は、ステンレス鋼外皮のFe分、フラックスの鉄粉、鉄合金(フェロシリコン、フェロマンガン、フェロシリコンマンガン等のフェロアロイ)粉などからのFe分である。不可避不純物は、P、S、Biなどの不可避に混入される不純物をいい、0%であることが望ましいが、0%にすることは生産コストが高くなるという問題もあるために難しい。
なお、耐割れ性の観点からPは0.040%以下、Sは0.020%以下であることが好ましい。
以上、本発明のステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤの成分組成の限定理由を述べたが、ステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤの製造方法に言及すると、例えば、ステンレス鋼外皮を帯鋼から管状に成形する場合、配合、混合・撹拌、乾燥した充填フラックスをU形に成形した溝に満たした後に丸型に成形し、所定のワイヤ径まで伸線する。この際、成形した外皮シームを溶接してシームレスタイプのステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤとすることもできる。また、ステンレス鋼外皮がパイプの場合、パイプを振動させてフラックスを充填、所定のワイヤ径まで伸線することができる。いずれの製造方法もワイヤ径は、0.8〜3.6mmまで製造が可能である。
フラックスは、供給及び充填が円滑に行えるように、固着剤(珪酸カリ及び珪酸ソーダの水ガラス)を添加して造粒して用いることもできる。
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。
表1に示す化学成分のステンレス鋼外皮を用い、表2に示す成分組成のステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤを作製した。このワイヤの作製においては、ステンレス鋼外皮にフラックスを充填し、端面同士を溶接してシームレス状にした後、縮径してステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤを試作した。なおワイヤ径は1.2mm、フラックス充填率は19〜24%とした。
Figure 0006434381
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これら試作したワイヤにて、溶接作業性、溶着金属性能及び耐割れ性について調査を行った。
溶接作業性評価は、表3に示す成分のSUS304L鋼板を用い、表4に示す溶接条件で水平すみ肉溶接及び立向上進すみ肉溶接を行い、アーク安定性、スパッタ発生量、スラグ被包性、スラグ剥離性、メタル垂れの有無(立向上進すみ肉溶接のみ)、ビード形状を調査した。
Figure 0006434381
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溶着金属試験は、板厚20mm、ベベル角度10°を設けたSM490A鋼板に2層バタリングを行い、ギャップ16mmの開先にて、JIS Z 3323に準拠し、表4に示す溶接条件にて多層盛溶接を行った。溶着金属部より、引張試験片及び衝撃試験片を採取し、室温及び650℃の高温で試験を行った。
常温試験は、室温にて引張試験、試験温度−20℃で衝撃試験を行い、引張強さが520MPa以上、吸収エネルギーが3本の平均値で60J以上を良好とした。
高温試験は、引張試験片を650℃まで加熱した直後に引張試験を行い、引張強さが300MPa以上を良好とした。また、衝撃試験は衝撃試験片を650℃×2h保持し、室温まで空冷した後、試験温度−20℃で吸収エネルギーが3本の平均値で30J以上を良好とした。
耐割れ性の評価は、表3に示す成分の板厚20mmのSUS304L鋼板を用い、べべル角度10°、ギャップ16mmの開先にて、表4に示す溶接条件で多層盛溶接して溶接継手を作製し、JIS Z 3122に準拠して側曲げ試験片を採取して側曲げ試験を行い、疵が3mm以下を良好とした。それらの調査結果を表5にまとめて示す。
Figure 0006434381
表2及び表4中のワイヤ記号W1〜W8が本発明例、ワイヤ記号W9〜W19は比較例である。
本発明例であるワイヤ記号W1〜W8は、ステンレス鋼外皮とフラックスとの合計のC、Si、Mn、Ni、Cr、Mo、Ti、N及びフラックスのTiO2換算値の合計、SiO2換算値の合計、ZrO2換算値の合計、Al23換算値の合計、Na2O換算値及びK2O換算値の合計、F換算値の合計、Biが適正であるので、常温試験及び高温試験での溶着金属の引張強さ及び吸収エネルギーが良好で、耐割れ性も良好であった。また、水平すみ肉溶接及び立向上進溶接におけるアーク安定性が良好でスパッタ発生量が少なく、ビード形状、スラグ被包性、スラグ剥離性が良好であった。
比較例におけるワイヤ記号W9は、Cが少ないので、高温試験での溶着金属の引張強さが低かった。また、Siが多いので、水平すみ肉溶接及び立向上進溶接でスラグ被包性が不良であった。
ワイヤ記号W10は、Cが多いので、高温試験での溶着金属の吸収エネルギーが低かった。また、ZrO2換算値が少ないので、水平すみ肉溶接及び立向上進溶接でスパッタ発生量が多かった。さらに、Al23換算値が少ないので、ビード形状が不良であった。
ワイヤW記号11は、Siが少ないので、水平すみ肉溶接及び立向上進溶接でビード形状が不良であった。また、Mnが少ないので、側曲げ試験片に5.0mmの疵が発生した。さらに、TiO2換算値が多いので、水平すみ肉溶接及び立向上進溶接でアーク状態が不安定であった。
ワイヤ記号W12は、Mnが多いので、常温試験での溶着金属の吸収エネルギーが低かった。また、Nが少ないので、常温試験での溶着金属の引張強さが低かった。さらに、Na2O換算値及びにK2O換算値の合計が少ないので、水平すみ肉溶接及び立向上進溶接でアーク状態が不安定でスパッタ発生量が多かった。
ワイヤ記号W13は、Niが少ないので、常温試験での溶着金属の吸収エネルギーが低かった。また、SiO2換算値が少ないので、水平すみ肉溶接及び立向上進溶接でスラグ被包性が不良であった。さらに、F換算値が多いので、ビード形状が不良であった。
ワイヤ記号W14は、Niが多いので、側曲げ試験片に4.0mmの疵が発生した。また、Crが少ないので、常温試験での溶着金属の引張強さが低かった。さらに、SiO2換算値が多いので、水平すみ肉溶接及び立向上進溶接でビード形状が不良であった。
ワイヤ記号W15は、Crが多いので、高温試験での溶着金属の引張強さが低かった。また、Tiが多いので、水平すみ肉溶接及び立向上進溶接でスパッタ発生量が多かった。さらに、ZrO2換算値が多いので、アーク状態が不安定であった。
ワイヤ記号W16は、Moが少ないので、常温試験での溶着金属の引張強さが低かった。また、F換算値が少ないので、水平すみ肉溶接及び立向上進溶接でアークが不安定であった。さらに、TiO2換算値が少ないので、スラグ剥離性が不良で、特に立向上進溶接ではメタル垂れが発生し、ビード形状が不良であった。
ワイヤ記号W17は、Moが多いので、高温試験での溶着金属の吸収エネルギーが低かった。また、Al23換算値が多いので、水平すみ肉溶接及び立向上進溶接でスラグ剥離性が不良であった。
ワイヤ記号W18は、Tiが少ないので、常温試験での吸収エネルギーが低かった。また、立向上進溶接ではメタル垂れが発生し、ビード形状が不良であった。また、Nbが多いので、水平すみ肉溶接及び立向上進溶接でスラグ剥離性が不良であった。
ワイヤ記号W19は、Nが多いので、水平すみ肉溶接及び立向上進溶接でスパッタ発生量が多かった。また、Na2O換算値及びK2O換算値の合計が多いので、ビード形状が不良であった。さらに、Biが多いので、側曲げ試験片に4.5mmの疵が発生した。

Claims (1)

  1. ステンレス鋼外皮にフラックスを充填してなるステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤにおいて、
    ワイヤ全質量に対する質量%で、ステンレス鋼外皮とフラックスの合計で、
    C:0.005〜0.10%、
    Si:0.2〜1.0%、
    Mn:1.5〜4.5%、
    Ni:8〜13%、
    Cr:16〜23%、
    Mo:0.01〜1.0%、
    Ti:0.55〜1.0%、
    N:0.01〜0.05%を含有し、
    Nb:0.05%以下であり、
    さらにワイヤ全質量に対する質量%で、フラックス中に、
    Ti酸化物:TiO2換算値の合計で5〜8%、
    Si酸化物:SiO2換算値の合計で0.1〜1.5%、
    Zr酸化物:ZrO2換算値の合計で0.01〜0.1%、
    Al酸化物:Al23換算値の合計で0.01〜0.1%、
    Na化合物及びK化合物:Na2O換算値及びK2O換算値の合計で0.01〜0.30%、
    弗素化合物:F換算値の合計で0.1〜1.0%を含有し、
    Bi:0.001%以下であり、
    残部はステンレス鋼外皮のFe分、合金鉄中のFe分、フラックスとして含有する鉄粉のうちのFe分及び不可避不純物であることを特徴とするステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤ。
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