JP6434381B2 - ステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤ - Google Patents
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Description
Cは、ステンレス鋼外皮、フェロマンガン、フェロシリコンマンガン及びグラファイト等から添加され、Cr炭化物及びTi炭化物を生成して、溶接金属の高温引張強さを高める効果がある。Cが0.005%未満では、Cr炭化物及びTi炭化物の生成が不十分で高温での引張強さが低くなる。一方、Cが0.10%を超えると、Cr炭化物及びTi炭化物が粗大化し、高温に保持した後の靭性が低くなる。したがって、Cの含有量は0.005〜0.10%とする。
Siは、ステンレス鋼外皮、金属シリコン、フェロシリコン及びフェロシリコンマンガン等から添加され、ビード形状やスラグ被包性を改善する効果を有する。Siが0.2%未満では、溶接時の脱酸反応によって形成されるスラグ量が少なく、ビード形状が悪くなる。一方、Siが1.0%を超えると、スラグ量が過多となり、スラグ被包性が悪くなる。したがって、Siの含有量は0.2〜1.0%とする。
Mnは、ステンレス鋼外皮、金属マンガン、フェロマンガン、フェロシリコンマンガン及び窒化Mn等から添加され、低融点化合物の偏析を低減して耐割れ性を改善する効果を有する。Mnが1.5%未満では、オーステナイト粒界に低融点化合物が偏析するため、耐割れ性が悪くなる。一方、Mnが4.5%を超えると、炭化物及び窒化物を生成して常温での靭性が低下する。したがって、Mnの含有量は1.5〜4.5%とする。
Niは、ステンレス鋼外皮、金属ニッケル及びフェロニッケル等から添加され、オーステナイト相を安定化させる元素であり、フェライト量の調整及び耐割れ性を改善する効果を有する。Niが8%未満では、オーステナイトの晶出量が減少してフェライト量が多くなり、常温での靭性が低下する。一方、Niが13%を超えると、フェライトの晶出量が少なくなり、低融点化合物の偏析が助長されて耐割れ性が悪くなる。したがって、Niの含有量は8〜13%とする。
Crは、ステンレス鋼外皮、金属クロム及びフェロクロム、窒化Cr等から添加され、フェライト相を安定化させる元素であり、溶接金属の引張強さを増加させる効果を有する。Crが16%未満では、フェライトの晶出量が減少してオーステナイト量が多くなり、常温での引張強さが低下する。一方、Crが23%を超えると、Cr炭化物の生成が多くなり、高温での引張強さが低下する。したがって、Crの含有量は16〜23%とする。
Moは、ステンレス鋼外皮、金属モリブデン及びフェロモリブデン等から添加され、オーステナイト相中に固溶され、引張強さを改善する効果を有する。Moが0.01%未満では、固溶強化の効果は得られず、常温での引張強さが低下する。一方、Moが1.0%を超えると、フェライト中より極めて硬く脆いσ相が析出され、高温に保持したあとの靭性が低下する。したがって、Moの含有量は0.01〜1.0%とする。
Tiは、ステンレス鋼外皮、金属チタン及びフェロチタン等から添加され、脱酸を促進させて溶接金属中の酸化物を低減し、靭性を改善するとともに、立向上進溶接での溶接作業性を良好にする効果を有する。Tiが0.55%未満では、脱酸が不十分で、常温での靭性が低下する。また、立向上進溶接において、メタル垂れが発生してビード形状が不良となる。一方、Tiが1.0%を超えると、溶接時に溶滴が粗大に成長し、大粒のスパッタが発生する。したがって、Tiの含有量は0.55〜1.0%とする。
Nは、ステンレス鋼外皮、窒化クロム及び窒化マンガン等から添加され、オーステナイト中に固溶され引張強さを向上する効果を有する。Nが0.01%未満では、その効果は得られず、常温での引張強さが低下する。一方、Nが0.05%を超えると、溶接時に溶融池に固溶しきれないNが発生して溶滴移行が円滑に行われず、スパッタ発生量が増加する。したがって、Nの含有量は0.01〜0.05%とする。
Nbは、ステンレス鋼外皮に含有されていて、不可避的にワイヤ中に含有される成分である。このNbの含有量が多くなると溶接金属とスラグ間で化合物を生成してスラグ剥離性を悪くする作用があるので、少ないほうが望ましく、0.05%以下であれば許容できる。Nbの含有量は、好ましくは0.02%以下である。
TiO2は、ルチール、酸化チタン、チタン酸ソーダ、チタンスラグ、イルミナイト等から添加させる。これらは、溶接スラグの熱膨張率を調整し、溶接金属と溶接スラグの熱膨張差を増加させることによってスラグ剥離性を向上させるとともに、立向上進溶接での溶接作業性を良好にする効果を有する。Ti酸化物のTiO2換算値の合計が5%未満であると、溶接金属と溶接スラグの熱膨張差が少なくなり、スラグ剥離性が不良になる。また、立向上進溶接において、メタル垂れが発生してビード形状が不良となる。一方、Ti酸化物のTiO2換算値の合計が8%を超えると、スラグが溶滴を完全に被包して溶滴の移行が阻害されるため、アークが安定性になる。したがって、Ti酸化物のTiO2換算値の合計は5〜8%とする。
SiO2は、珪砂、ジルコンサンド等から添加され、スラグ形成剤として作用し、スラグの粘性を調整してスラグ被包性を良好にする効果がある。Si酸化物のSiO2換算値の合計が0.1%未満であると、スラグの粘性が低くなり、スラグ被包性が悪くなる。一方、Si酸化物のSiO2換算値の合計が1.5%を超えると、スラグ量が増加して溶接金属とスラグ量とのバランスが悪くなり、ビード形状が不良になる。したがって、Si酸化物のSiO2換算値の合計は0.1〜1.5%とする。
ZrO2は、ジルコンサンド及び酸化ジルコニウム等から添加され、スラグの粘性を調整し、溶滴移行の際に発生するスパッタ発生量を低減する効果を有する。Zr酸化物のZrO2換算値の合計が0.01%未満であると、スラグの粘性が低くなり、溶滴移行の際に小粒のスパッタが発生する。一方、Zr酸化物のZrO2換算値の合計が0.1%を超えると、スラグの粘性が高くなり、溶滴が大きく成長し、溶滴移行が円滑に行われず、アークが不安定になる。したがって、Zr酸化物のZrO2換算値の合計は0.01〜0.1%とする。
Al2O3は、アルミナ、カリ長石、曹長石等から添加され、スラグの融点を調整してビード形状を向上させる効果を有する。Al酸化物のAl2O3換算値の合計が0.01%未満であると、スラグの融点が低くなるので、溶接金属とスラグの凝固が不均一となり、ビード形状が不良になる。一方、Al酸化物のAl2O3換算値の合計が0.1%を超えると、スラグの融点が高くなり、冷却速度の速いビード部にスラグが残ってスラグ剥離性が悪くなる、したがって、Al酸化物のAl2O3換算値の合計は0.01〜0.1%とする。
Na化合物及びK化合物は、水ガラスのNa2O及びK2O、沸化ソーダや珪弗化カリ等の弗化物等から添加され、アークを安定にし、スパッタ発生量を低減する効果を有する。Na化合物及びK化合物のNa2O換算値及びK2O換算値の合計が0.01%未満では、アークが不安定となり、溶滴移行が短絡移行となってスパッタ発生量が増加する。一方、Na化合物及びK化合物のNa2O換算値及びK2O換算値の合計が0.30%を超えると、スラグの凝固が早くなり、ビード形状が悪くなる。したがって、Na化合物及びK化合物のNa2O換算値及びK2O換算値の合計は0.01〜0.30%とする。
弗素化合物は、弗化ソーダ、珪弗化カリ、ジルコンフッ化カリ、氷晶石、弗化アルミ、弗化リチウム及び蛍石などから添加され、アークの安定性を向上させる効果を有する。弗素化合物のF換算値の合計が0.1%未満では、上述の効果が不十分であり、アークが不安定になる。一方、弗素化合物のF換算値の合計が1.0%を超えると、スラグの融点が低下して溶接金属よりスラグの凝固が早くなり、ビード形状が不均一になる。したがって、弗素化合物のF換算値の合計は0.1〜1.0%とする。
Biは、溶接部が高温に長時間保持された場合、オーステナイト粒界にBiが濃化し易く、耐割れ性を悪くするので、フラックス中のBiは0.001%以下とする。
Claims (1)
- ステンレス鋼外皮にフラックスを充填してなるステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤにおいて、
ワイヤ全質量に対する質量%で、ステンレス鋼外皮とフラックスの合計で、
C:0.005〜0.10%、
Si:0.2〜1.0%、
Mn:1.5〜4.5%、
Ni:8〜13%、
Cr:16〜23%、
Mo:0.01〜1.0%、
Ti:0.55〜1.0%、
N:0.01〜0.05%を含有し、
Nb:0.05%以下であり、
さらにワイヤ全質量に対する質量%で、フラックス中に、
Ti酸化物:TiO2換算値の合計で5〜8%、
Si酸化物:SiO2換算値の合計で0.1〜1.5%、
Zr酸化物:ZrO2換算値の合計で0.01〜0.1%、
Al酸化物:Al2O3換算値の合計で0.01〜0.1%、
Na化合物及びK化合物:Na2O換算値及びK2O換算値の合計で0.01〜0.30%、
弗素化合物:F換算値の合計で0.1〜1.0%を含有し、
Bi:0.001%以下であり、
残部はステンレス鋼外皮のFe分、合金鉄中のFe分、フラックスとして含有する鉄粉のうちのFe分及び不可避不純物であることを特徴とするステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤ。
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