JP2000102891A - オーステナイト系ステンレス鋼溶接材料 - Google Patents

オーステナイト系ステンレス鋼溶接材料

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JP2000102891A
JP2000102891A JP10278103A JP27810398A JP2000102891A JP 2000102891 A JP2000102891 A JP 2000102891A JP 10278103 A JP10278103 A JP 10278103A JP 27810398 A JP27810398 A JP 27810398A JP 2000102891 A JP2000102891 A JP 2000102891A
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ferrite
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JP10278103A
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English (en)
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Yutaka Kida
裕 喜田
Tsukasa Okazaki
司 岡崎
Mitsugi Otani
貢 大谷
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NOF Corp
Toyo Engineering Corp
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NOF Corp
Toyo Engineering Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 耐再熱割れ性ならびにクリープ特性を含む高
温強度に優れた溶接金属を与えるオーステナイト系ステ
ンレス鋼溶接材料の提供。 【解決手段】 重量%表示で、C:0.01〜0.1
5、Si:0.50以下、Mn:2.0以下、P:0.
030以下、S:0.020以下、Ni:6.0〜1
0.0、Cr:14.0〜18.0、Mo:1.0〜
3.0、Nb:0.20以下、Cu:0.05〜3.
0、N:0.01〜0.20(残部の主成分はFe、また
は残部成分の一部にかわり、更に微量のV、Ti、Bを
含有し、以下の条件を満足するオーステナイト系ステン
レス鋼溶接材料。 1.10Cr eq−9.80≦Ni eq≦0.77C
r eq−0.9

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は耐再熱割れ性ならび
にクリープ特性を含む高温強度に優れた溶接金属を与え
るオーステナイト系ステンレス鋼溶接材料に係るもので
ある。
【0002】
【従来の技術】JIS Z 3321で規定されている
Y308(以下、Y308と称す)に代表されるオース
テナイト系ステンレス鋼は、優れた高温性能を有するた
め、発電用ボイラーや石油精製装置などの高温環境で広
く使用されている。しかし、これらの溶接部について
は、装置の運転中のクリープ損傷による割れや、施工時
の応力除去などを目的とした熱処理よる割れなど、いわ
ゆる再熱割れ発生の事例が多く報告されている。割れは
溶接金属や熱影響部で発生するが、割れの原因としては
炭化物の析出による結晶粒界の強度低下やσ相析出に
よる脆化等が考えられている。この割れを防ぐためには
500℃以上の高温で使用する機器においては、高温で
の延性や応力緩和特性の優れた溶接金属を得る溶接材料
での溶接が必要である。
【0003】しかし、溶接金属は、凝固組織であり、圧
延組織の鋼材に比べると高温での脆化原因となる析出物
の析出速度が速く、運転中の高温環境や溶接後の熱処理
により脆化が著しい。特にオーステナイト系ステンレス
鋼溶接材料では、溶接時の凝固割れ高温割れを防ぐ目的
で溶接金属にδ−フェライト組織を数%含むよう成分設
計がなされている。このδ−フェライト相は、600〜
800℃の高温に長時間曝されると脆いσ相に変態する
ため、溶接金属は、高温での使用中や溶接後熱処理によ
り脆化を受けやすく、耐再熱割れ性に劣る。特に、Nb
添加で強度の高いJIS Z 3321で規定されてい
るY347系の溶接材料ではこの傾向が著しい。
【0004】Moを含有したJIS Z 3321で規
定されているY316(以下、Y316と称す)は、前
記Y308に比べ高温強度が高くかつ耐再熱割れ性に優
れているが、 Y316に一般的に使用されるY316
系溶接材料によるの溶接金属ではMoがσ相の析出を促
進させること、 また、JIS Z 3321で規定さ
れているY304に一般的に使用されるMoを含まない
前記Y308系溶接材料による溶接金属に比べ低δ−フ
ェライト量にした場合の高温割れ感受性が高いことから
Moを含有したY316系溶接材料は、δ−フェライト
量を制限した高温用の溶接材料としては不向きであっ
た。 また、最近、一部石油精製装置でオーステナイト
系ステンレス鋼を700℃を越える高温で使用する場合
が増えてきた。原油の蒸留装置から生じる重質油を高温
下で微粒子状の触媒と接触させ、軽質な留分に分解、精
製する装置に流動接触分解装置と言う石油精製装置であ
る。この装置において、触媒は循環再利用されるが、重
質油を分解した後の触媒表面には炭素や硫黄が付着して
おり、循環再利用する前にこれらを空気で燃焼除去する
必要がある。この空気による触媒表面の炭素、硫黄の燃
焼処理を触媒の再生と呼び、この工程では大量の二酸化
炭素と硫黄酸化物を主成分とする燃焼ガスが生じる。こ
れら流動接触分解装置の再生系の運転時の温度は、70
0℃を越える高温のため、使用される装置材料には高温
でのクリープ特性が求められる。このような高温では、
高温強度の高いNi基合金などを使用する場合もある
が、経済性の観点から、従来、再生系の装置材料には前
記Y304が使用されている。前記Y304の溶接に
は、18.0−21.0%Cr、9.0−11.0%N
i、0.04−0.08%C、残Feを主成分とする母
材と同一成分の前記Y308系の溶接材料が用いられて
いる。
【0005】しかし、前記Y308系溶接材料を用いた
溶接金属は、700℃を越える高温下においては、σ相
脆化が生じるとともに、クリープ強さやクリープ延性
が、母材に比べて著しく劣るという問題があった。
【0006】ところで,含Moのオーステナイト系ステ
ンレス鋼溶接金属においてσ脆化を起こしやすいのは、
δ−フェライト相へCrやMo等のσ化を促進する元素
が凝固偏析すること、5%以下のδ−フェライト量では
高温割れが発生しやすくδ−フェライト量を低下できな
いことが原因であることは良く知られているところであ
る。図1は、Welding Research Supplement、May
1992から抜粋したCr当量とNi当量の相関を示す説
明図である。凝固モードと溶接のままでのδ−フェライ
ト量を制御することは、この図から下記で表される当量
(以下、Ni eqと称す)とCr当量(以下、Cr eqと称
す)を制限することにより可能である。 Ni eq=Ni+35×C+20×N+0.25×Cu Cr eq=Cr+Mo+0.7×Nb しかしながら、この図からは後述の実施例1〜9に示す
ような耐再熱割れ性および後述の実施例10〜14に示
すようなクリープ特性に関する知見は、何等得られな
い。
【0007】また、高温クリープ破断延性や耐脆化性の
優れたNi―Crオーステナイト系ステンレス鋼溶接材
料が、特開平3―169487号公報に開示されてい
る。
【0008】この公報は、(1)クリープ強度を高める
が炭化物を析出し脆化の原因となる炭素にかえ、窒素を
添加すること、(2)δ−フェライト量を重量表示で1
〜12%にすること、(3)また、(1)および(2)
にタングステンを重量表示で3.0%以下加えること等
からなっている。
【0009】オーステナイト系ステンレス鋼溶接材料に
は、オーステナイトで凝固し、その一部がフェライトに
変態するものと、δ−フェライトとして凝固するものが
ある。前記δ−フェライトの大部分は、冷却過程でオー
ステナイトに変態するが、その一部はδ−フェライトの
まま残るものがある。該δ−フェライトは、脆化しにく
く、かつ、クリープ特性が損なわれない。
【0010】上記事情から高温での熱処理において再熱
割れ性に優れ、かつ、クリープ特性を含む高温強度が高
いオーステナイト系ステンレス鋼溶接材料の開発が待た
れていた。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、高温での熱
処理において再熱割れ性に優れ、かつクリープ特性を含
む高温強度が高いオーステナイト系ステンレス鋼溶接材
料を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】発明者らは、上記目的を
達成するため、鋭意検討した。その結果、含Moのオー
ステナイト系ステンレス鋼溶接金属において、凝固モー
ドを制限することによりσ脆化による再熱割れ感受性の
低い溶接金属が得られ、上記目的が達成できるという下
記の知見を得た。
【0013】すなわち、Y308系やY316系のオー
ステナイト系ステンレス鋼溶接材料では、そのNi当量
とCr当量のバランスにより、凝固の形態がオーステナ
イト相単相の場合(Aモード)、オーステナイト相初晶で
凝固最終段階でδ−フェライト相となる場合(以下、A
Fモードと称す)、δ−フェライト相が初晶で凝固最終
段階でオーステナイト相となる場合(以下、FAモード
と称す)、δ−フェライト相単相で凝固し固相でδ−フ
ェライト相からオーステナイト相に変態する場合(以
下、Fモードと称す)となることはよく知られたところ
である。
【0014】また、溶接金属では高温割れを防ぐために
数%のδ−フェライト相を含むよう成分設計がなされる
ため、凝固モードはAモード以外のδ−フェライト相を
含むモードとなる。この場合、初晶がオーステナイト相
とδ−フェライト相の場合に大別できるが、この中で初
晶がオーステナイト相のAFモードは、最終凝固相であ
るδ−フェライト相にCrやMo等のフェライト相のσ
化を促進する元素が偏析し、高温環境下でσ脆化を起こ
しやすい。これに対し、凝固初晶がδ−フェライト相で
あるFAモードやFモードはCrやMoの偏析がAFモ
ードに比べ少なくσ脆化を起こしにくい。また初晶がδ
−フェライト相の場合AFモードに比べ同一のδ−フェ
ライト量においても高温割れの感受性が低く、低δ−フ
ェライト量にすることが可能である。しかし、高温環境
で使用される場合には、δ−フェライト相が連続化した
場合、δ−フェライト相より析出するσ相も連続化し脆
化が著しくなることより、δ−フェライト量を8%に制
限すれば上記目的が達成できる。以上に記載の知見を得
た。
【0015】さらに検討を重ねた結果、V、Tiおよび
Bの微量添加が上記目的を達成するため、より有効であ
ることも知った。
【0016】本発明は、上記事情および上記知見に基づ
きなされたもので、本発明の目的は以下の手段により達
成できる。
【0017】すなわち、本発明は、(1)重量%表示
で、 C:0.01〜0.15 Si:0.50以下 Mn:2.0以下 P:0.030以下 S:0.020以下 Ni:6.0〜10.0 Cr:14.0〜18.0 Mo:1.0〜3.0 Nb:0.20以下 Cu:0.05〜3.0 N:0.01〜0.20 残部はFeおよび不可避不純物からなり、以下の条件を満
足するオーステナイト系ステンレス鋼溶接材料、 1.10Cr eq−9.80≦Ni eq≦0.77C
r eq−0.9 ここで、 Ni eq=Ni+35C+20N+0.25Cu Cr eq=Cr+Mo+0.7Nb および(2)重量%表示で、 V:0.01〜0.50 Ti:0.01〜0.50 B:0.001〜0.01 を更に含有してなる(1)に記載のオーステナイト系ス
テンレス鋼溶接材料を含む。
【0018】
【発明の実施の形態】以下に本発明において構成される
各種成分について述べる。
【0019】本発明において、Cは0.01〜0.15
wt.%が選択される。
【0020】Cは、侵入型の固溶強化元素であるととも
に、炭化物による析出強化することから高温強度を高め
る効果があり0.01wt.%以上の添加が必要であ
る。オーステナイト系ステンレス鋼溶接材料の一つであ
る前記Y308材において重量%表示で0.08%以下
と規格されている。本発明では、前記本発明を構成する
各種成分との相関から0.15wt.%以上でも可能で
あるが、0.15wt.%を超える添加は、長時間高温
加熱による粗大な炭化物の析出による脆化が顕著となる
ため、避けることが好ましい。
【0021】本発明において、Siは0.5wt.%以
下が選択される。
【0022】Siは、脱酸効果があり、また溶融金属の
湯流れを良くし溶接作業性の改善に効果がある。前記Y
308材において0.65wt.%以下と規格されてい
る。
【0023】本発明では、本発明を構成する各種成分と
の相関から0.5wt.%を越える添加は長時間高温加
熱によるσ脆化を促進するため、避けることが好まし
い。
【0024】本発明において、Mnは2.0wt.%以
下が選択される。
【0025】Mnは、オーステナイト相形成元素である
が、2.0wt.%を越える添加はδ−フェライト相が
減少し、溶接時高温割れを生じやすくなるため、避ける
ことが好ましい。
【0026】本発明において、Pは0.030wt.%
以下が選択される。Pの0.030wt.%を越える添
加は、本発明を構成する各種成分との相関から高温割れ
を生じやすくなるため、避けることが好ましい。
【0027】本発明において、Sは0.02wt.%以
下が選択される。Sは、高温割れを促進し、また再熱割
れにも悪影響を及ぼすため、前記Y308材において
0.03wt.%以下と規格されている。本発明では本
発明を構成する各種成分との相関から0.020wt.
%を越える添加は避けることが好ましい。
【0028】本発明において、Niは6.0〜10.0
wt.%が選択される。
【0029】Niは、前記Y308材において9.0〜
11.0wt.%と規格されている。Niは、オーステ
ナイト相の安定化のため6.0wt.%以上必要であ
る。
【0030】本発明では本発明を構成する各種成分との
相関から10.0wt.%を越える添加は、高温割れを
防ぐための適正なδ−フェライト量を維持するために必
要なCr量の増加を招き、σ脆化を促進させるため、避
けるのが好ましい。
【0031】本発明において、Crは14.0〜18.
0wt.%が選択される。
【0032】Crは、前記Y308材において19.5
〜22.0%と規格されている。
【0033】Crは、高温での耐酸化性を向上させ、ま
たオーステナイト相に一定量のδ-フェライト相を含有
させ耐高温割れ性を得るために14.0wt.%以上の
添加が必要である。本発明では本発明を構成する各種成
分との相関から18.0wt.%を越える添加は、δ−
フェライト量を増加させσ脆化を促進するため、避ける
のが好ましい。
【0034】本発明において、Moは1.0〜3.0w
t.%が選択される。Moは、置換型の固溶強化元素で
あり、溶接金属のクリープ強度を高める効果があり、
1.0%wt.以上必要である。しかし、3.0wt.
%を越える添加は、本発明を構成する各種成分との相関
からσ脆化を促進させるため、避けるのが好ましい。
【0035】本発明において、Nbは0.20wt.%
以下が選択される。
【0036】Nbは、炭窒化物による析出強化元素でク
リープ強度を高めるが、0.20wt.%を越える添加
は粒界への炭化物の析出による粒界割れを促進させるた
め、避けるのが好ましい。
【0037】本発明において、Cuは0.05〜3.0
wt.%以下が選択される。
【0038】Cuは、オーステナイト相の固溶強化元素
で0.05wt.%以上の添加でクリープ強度を高める
が、3.0wt.%を越える添加は粒界脆化の原因とな
るため、避けるのが好ましい。
【0039】本発明において、Nは0.01〜0.20
wt.%が選択される。
【0040】Nは、侵入型の固溶強化元素であるととも
に、窒化物による析出強化することから高温強度を高め
る効果があるため、0.01wt.%以上必要である。
0.20wt.%を超える添加はブローホールの発生や
δ−フェライト量低下による高温割れの発生など溶接欠
陥の発生が顕著となるため、避けるのが好ましい。
【0041】本発明におけるNi当量(以下、Ni e
pと称す)について、上記各種成分組成に基づきNi
eqが1.10Cr eq−9.80≦Ni eq≦0.
77Cr eq−0.9で制限されることについて説明
する。ここに、Ni eqおよびCr eqは、以下で表
される。 Ni eq=Ni+35×C+20×N+0.25×Cu Cr eq=Cr+Mo+0.7×Nb 本発明において、まず、Ni eq≦0.77Cr eq
−0.9の条件を満足すれば、前記チャートから凝固初
晶がδ−フェライト相となり、凝固モードがFAモード
となる。次に、前記チャートからNi eqがNi eq
≧1.10×Cr eq−9.80を満足すれば、溶接
金属のδ−フェライト量が8%以下となる。以上説明し
たように、本発明において第一の発明である高温性能に
優れたオーステナイト系ステンレス鋼溶接材料は、上記
成分と残部成分としてFeおよび不可避不純物からな
る。後述の実施例1〜9および比較例1〜5に示すよう
に、Nieq、Cr eqおよび上記成分範囲の条件を
同時に満足すれば、σ脆化による再熱割れ感受性が低く
耐高温割れ性に優れた溶接金属を得ることが可能とな
る。
【0042】また、本発明において第二の発明として、
前記第一の発明における残部成分であるFeの一部にか
えてV、TiおよびBを添加することによりクリープ強
度がさらに高められたオーステナイト系ステンレス鋼溶
接材料とすることもできる。
【0043】すなわち、本発明において、Vは0.01
〜0.50wt.%が選択される。Vは、炭窒化物によ
る析出強化元素でクリープ強度を高めるため、0.01
wt.%以上必要である。0.50wt.%を越える添
加は析出物の粗大化を起こし逆効果となるので、避ける
のが好ましい。本発明において、Tiは0.01〜0.
50wt.%が選択される。Tiは、Vと同様、炭窒化
物析出によりクリープ強度を高めるため、0.01w
t.%以上の添加が必要である。0.50wt.%を越
えると添加効果が減退するので、避けるのが好ましい。
本発明において、Bは0.001〜0.01wt.%が
選択される。Bは、高温での粒界強化に有効でクリープ
強度を高めるが、そのためには0.001wt.%以上
の添加が必要である。0.01wt.%を越える添加
は、溶接時の耐高温割れ性を損ねるので、避けるのが好
ましい。
【0044】
【実施例】以上のように本発明を説明したが、実施例を
用いてさらに本発明を詳細に説明する。なお、言うまで
もないことであるが、本発明はこれらの実施例に限定さ
れるものではない。 実施例1 オーステナイト系ステンレス鋼溶接材料として径1.2
mmのワイヤを用意した。その組成を重量%表示で以下
に示す。Cとして0.095、Siとして0.32、M
nとして1.25、Pとして0.022、Sとして0.
003、Niとして8.54、Crとして16.52、
Moとして2.54、Nbとして、0.12、Cuとし
て0.21、Nとして0.032を含有し、残部はFe
であった。このとき、Ni eq=Ni+35×C+20
×N+0.25×CuおよびCr eq=Cr+Mo+0.
7×NbからのNieqおよびCr eqの計算値はそれぞ
れ12.56および19.05であった。これらを表1
に示す。また、凝固モードがFAモードとなる条件であ
るNi eq=0.77×Cr eq−0.90および溶
接金属のフェライト量が8%以下となる条件であるNi
eq=1.10×Cr eq−9.80の計算値は、そ
れぞれ13.77および11.12であった。前者のN
i eq=Ni+35×C+20×N+0.25×Cuの
計算値から後者のNi eq=0.77×Cr eq−
0.90およびNi eq=1.10×Cr eq−9.
80の計算値の差は−1.21当量(負)および1.4
4当量(正)であった。この差を表2に記載する。この
結果からNi eq≦0.77×Cr eq−0.90お
よびNi eq≧1.10×Cr eq−9.80を満
足していることが分かる。このワイヤを用いてティグ溶
接し、溶接部より試験片を採取し、700℃で3000
h加熱後の衝撃試験(シャルピー2mmVノッチ 試験温
度0℃)を実施した。溶接条件は、 ・母材:Y304 板厚15mm(開先内を溶接するワイ
ヤで2層バタリング溶接) ・溶接電源:DCEN ・溶接電流:150A ・溶接電圧:10V ・溶接速度:10cm/min ・シールドガス:Ar(ガス流量 15 l/min) とした。開先形状とシャルピー衝撃試験片は、JIS
Z 2202にしたがって採取した。
【0045】衝撃吸収エネルギーは32Jであった。結
果を表2に併記する。 実施例2〜9 実施例1の組成を有するワイヤにかえ、表1に併記する
組成を有するワイヤを用い、実施例1と同様に実施し
た。前記それぞれの差と衝撃吸収エネルギーを表2に併
記する。表2に併記した実施例1〜実施例9の差(Ni
eq−0.77×Cr eq+0.90)と衝撃吸収エ
ネルギーの関係、また、表2に併記した実施例1〜実施
例9の差(Ni eq−1.10×Cr eq+9.8
0)と衝撃吸収エネルギーの関係から凝固モードをFA
モードとすることにより、また、フェライト量を8%以
下にすることにより、長時間の熱処理による脆化を抑制
することができることがわかる。 比較例1 実施例1の組成を有するワイヤに換え、下記組成(重量
%表示)のワイヤを用い実施例1と同様に実施した。
【0046】Cとして0.077、Siとして0.3
1、Mnとして1.56、Pとして0.019、Sとし
て0.002、Niとして11.84、Crとして1
9.79、Moとして2.25、Nbとして0.05、
Cuとして0.12、Nとして0.085を含有し、残
部はFeであった。
【0047】組成を表1に、下記に示した差と衝撃吸収
エネルギーを表2に併記した。表2から(Ni eq−
1.10Cr eq+9.80)の計算値は正となり条
件を満たしているが、(Ni eq−0.77Cr eq
+0.9)の計算値は正の値となっているため、条件を
満たしていない。それ故、表2から両条件を満たしてい
る実施例1〜9の衝撃吸収エネルギーに比較して著しく
低下していることが分かる。 比較例2〜5 実施例1の組成を有するワイヤにかえ、表1に併記する
組成を有するワイヤを用い、実施例1と同様に実施し
た。前記それぞれの差と衝撃吸収エネルギーを表2に併
記した。比較例1と同様に実施例1〜9の衝撃吸収エネ
ルギーに比較して著しく低下していることが分かる。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】 実施例10〜13 表3に示す板厚15mmのY304を母材に使用し、同
表に示すワイヤ(径1.2mm)を用いて実施例1に示
す溶接条件で溶接継手を作製し、クリープ破断試験片を
採取し、730℃でクリープ破断試験を行った。クリー
プ破断試験の結果の例として、クリープ試験時の負荷応
力78N/mm2ならびに59N/mm2でのクリープ
破断時間ならびにクリープ破断絞りを表4に示す。 実施例14 表3に示すV,TiおよびBの添加されていない本発明
の範囲内に属するものを実施例10〜13と同様にクリ
ープ破断特性を調べた。結果を表4に併記する。
【0050】表4に示すようにクリープ特性は、実施例
10〜13に比較して劣ることが分かる。
【0051】
【表3】
【0052】
【表4】 表2から本発明によるワイヤは、長時間の熱処理による
脆化を抑制することができることがわかる。
【0053】さらに、表4から本発明によるワイヤ、特
にV、Ti、Bを微量添加したワイヤによる溶接継手の
クリープ破断特性が優れていることがわかる。
【0054】
【発明の効果】本発明の高温性能に優れたオーステナイ
ト系ステンレス鋼溶接材料は以下に記載の効果を奏す
る。 (1)高温での熱処理において再熱割れ性に優れ、かつ
クリープ特性を含む高温強度が高いオーステナイト系ス
テンレス鋼溶接材料を提供することができる。 (2)高温において再熱割れ性に優れ、かつクリープ特
性を含む高温強度が高いため、不具合が生じ難く、安
全、かつ、安定した運転が可能となった。 (3)また、高温において再熱割れ性に優れ、かつクリ
ープ特性を含む高温強度が高いため、定期修理において
検査の手間および不具合を生じた配管、機器等の修理、
交換等が極めて少なくなった。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来のCr当量とNi当量との相関を示す説明
図である。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%表示で、 C:0.01〜0.15 Si:0.50以下 Mn:2.0以下 P:0.030以下 S:0.020以下 Ni:6.0〜10.0 Cr:14.0〜18.0 Mo:1.0〜3.0 Nb:0.20以下 Cu:0.05〜3.0 N:0.01〜0.20 残部はFeおよび不可避不純物からなり、以下の条件を満
    足することを特徴とするオーステナイト系ステンレス鋼
    溶接材料。 1.10Cr eq−9.80≦Ni eq≦0.77C
    r eq−0.9 ここで、 Ni eq=Ni+35C+20N+0.25Cu Cr eq=Cr+Mo+0.7Nb であり、単位はそれぞれ当量である。
  2. 【請求項2】 重量%表示で、残部成分の一部にかわり V:0.01〜0.50 Ti:0.01〜0.50 B:0.001〜0.01 を更に含有してなる請求項1に記載のオーステナイト系
    ステンレス鋼溶接材料。
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