JP2007107072A - 耐疲労亀裂伝播特性に優れる鋼材 - Google Patents

耐疲労亀裂伝播特性に優れる鋼材 Download PDF

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Abstract

【課題】変動荷重により生じる疲労亀裂による破壊が発生し得る,船舶,橋梁,海洋構造物などの大形構造物に使用される厚板,形鋼として好適な耐疲労亀裂伝播特性に優れた鋼材を提供する。
【解決手段】ミクロ組織を、体積率が15%以上、且つ、平均アスペクト比が5以下のパーライトを有する、フェライト・パーライト組織とし、好ましくは質量%で,C:0.05〜0.20%、Si:1.0%以下,Mn:0.05〜1.2%,P:0.030%以下,S:0.020%以下,Al:0.001〜0.07%,更にCr:0.05〜3.0%,Cu:0.05〜1.0%,Ni:0.05〜1.0%,Mo:0.01〜1.0%を1種又は2種以上、必要に応じてCr,Cu,Ni,Mo、Ti,Nb,V、Ca,REM,Mg、Zrを1種又は2種以上、残部Fe及び不可避的不純物とし、ΔTを100以下とする。
ΔT=5Si+89Mn+11Cr+11Mo+7Cu+20Ni+850Nb+250V
【選択図】図5

Description

本発明は,耐疲労亀裂伝播特性に優れた鋼材に関し、特に、変動荷重により生じる疲労亀裂による破壊が発生し得る,船舶,橋梁,海洋構造物などの大形構造物に使用される厚板,形鋼として好適なものに関する。
鋼板に連続的に変動荷重が与えられると,疲労亀裂が発生する場合がある。特に溶接部では,溶接金属と鋼材との間に不連続な形状変化,組織変化や残留応力変化が存在するために応力が集中しやすく,疲労亀裂の発生点になりやすい。
また,通常,発生した疲労亀裂は伝播を続け,最悪の場合には構造物自体の破壊となる。構造物が船舶,橋梁,海洋構造物などであれば,破壊した場合の社会的影響は大きく,多くの場合は人命の危険を伴うことが予想される。
これら構造物では,溶接部からの疲労破壊の発生を防止するため,構造的に応力集中が生じない設計を採用したり,適切な溶接条件の選定により溶接金属と母材との境界で応力集中が生じることを回避している。
構造物に疲労亀裂が発生した場合,鋼材の疲労伝播速度が遅ければ,構造物の破壊を生じる前に定期点検で亀裂を発見し,補修することが可能で,補修の頻度ひいては定期点検の頻度を低減させ,ライフサイクルコスト的に有利となる。
鋼材の耐疲労亀裂伝播特性に関しては、ミクロ組織において軟質フェライト相に硬質なパーライトやベイナイトあるいはマルテンサイト相を分散させ,その硬度差や第2相の分散状態や量を規定すること、および当該ミクロ組織を有する鋼板の製造方法に関して多数の提案がなされている(例えば,特許文献1〜5)。
特開平6−271984号公報 特許第3037855号公報 特許第2962134号公報 特開平08−73980号公報 特開2001−316756号公報
しかしながら、構造体の設計方法により疲労破壊を防止する場合、設計に大きな制約が生じるために効率的な設計ができず,一方、溶接施工側で応力集中を防止することは溶接の仕上に時間がかかり,非効率的であると同時に高コスト化の原因となっている。
また,特許文献1〜5記載の鋼板は成分組成において高価なMoを必須元素として添加したり、製造条件において熱処理条件や冷却方法に制約が多く、大量の鋼板を必要とする大型構造物への適用は必ずしも容易でなかった。
そこで本発明は,特殊な製造条件を用いずに製造可能な耐疲労亀裂伝播特性に優れる鋼材を提供することを目的とする。
本発明者らは,前記課題を解決するため,フェライト・パーライト鋼を対象に、疲労亀裂伝播特性に優れたミクロ組織および該ミクロ組織を得るための成分組成について、従来技術とは全く発想が異なる鋼素材の凝固ミクロ偏析に着目して,種々検討を行った。
その結果、1.特定の体積分率を有する粒状パーライト組織が疲労亀裂伝播特性に優れること、2.そのような組織が偏析度と偏析部のフェライト変態挙動に依存し、ミクロ偏析する成分元素の調整により達成可能であることを見出した。
図1は、0.15C鋼においてMn量が変化した場合の、ミクロ組織を示し、(a)は0.6Mn系、(b)は1.42Mn系のミクロ組織を示し、Mn量が増加するにつれて,パーライトは粒状からバンド状へ変化する。
図2は、高Mn鋼においてパーライトがバンド状に伸長する機構を模式的に説明する図で、高Mn鋼の場合、Mnのミクロ凝固偏析(C/Co)が増加し、γ域の圧延中でMnが正偏析、負偏析したミクロ偏析部が層状に形成される(a)。
Mnが負偏析した領域はAr点が高くなるため、冷却過程において先行してフェライト変態が生じ,このフェライト変態に伴いMn正偏析部に炭素が排出される(b)。その結果、Mn正偏析部において炭素が濃化してパーライト変態し、パーライトがバンド化する(c)。
すなわち、添加した合金がミクロ偏析して過度に正負ミクロ偏析部のフェライト変態温度(Ar)差が拡大した場合に,バンド状のパーライトが形成され,パーライトを粒状化するためには,正負ミクロ偏析部のAr温度差を小さくすることが有効である。
上述した観点から,各元素(主要添加合金)についてミクロ偏析に着目して,その正負偏析部のAr温度に与える影響を検討し,各元素のミクロ偏析に伴うArへの影響について知見を得た。
本発明は得られた知見を基に更に検討を加えてなされたもので、すなわち本発明は、
1.ミクロ組織が、体積分率で15%以上、且つ、平均アスペクト比で5以下のパーライトを有する、フェライト・パーライト組織であることを特徴とする耐疲労亀裂伝播特性に優れた鋼材。
2.質量%で,C:0.05〜0.20%、 Si:1.0%以下,Mn:0.05〜1.2%,P:0.030%以下,S:0.020%以下,Al:0.001〜0.07%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物で,ミクロ組織が体積分率で15%以上、且つ、平均アスペクト比で5以下のパーライトを有するフェライト・パーライト組織であることを特徴とする耐疲労亀裂伝播特性に優れた鋼材。
3.2記載の成分組成に、更にCr:0.05〜3.0%, Cu:0.05〜1.0%,Ni:0.05〜1.0%,Mo:0.01〜1.0%を1種又は2種以上含有し,(1)式に示すΔTが100以下,残部Feおよび不可避的不純物で,ミクロ組織が体積分率で15%以上、且つ、平均アスペクト比で5以下のパーライトを有するフェライト・パーライト組織であることを特徴とする耐疲労亀裂伝播特性に優れた鋼材。
ΔT=5Si+89Mn+11Cr+11Mo+7Cu+20Ni (1)
但し、各元素は質量%で、添加しない元素は0とする。
4.3記載の成分組成に,更に質量%で、Ti:0.001〜0.030%,Nb:0.001〜0.050%,V:0.001〜0.10%の1種又は2種以上を含有し,(2)式に示すΔTが100以下,残部Feおよび不可避的不純物で,ミクロ組織が体積分率で15%以上、且つ、平均アスペクト比で5以下のパーライトを有するフェライト・パーライト組織であることを特徴とする耐疲労亀裂伝播特性に優れた鋼材。
ΔT=5Si+89Mn+11Cr+11Mo+7Cu+20Ni+850Nb+250V (2)
但し、各元素は質量%で、添加しない元素は0とする。
5.3または4記載の成分組成に,更に質量%でCa:0.0005〜0.005%,REM:0.001〜0.020%,Mg:0.0005〜0.005%,Zr:0.0005〜0.0030%を1種又は2種以上含有し,上記(2)式に示すΔTが100以下,残部Feおよび不可避的不純物で,ミクロ組織が体積分率で15%以上、且つ、平均アスペクト比で5以下のパーライトを有するフェライト・パーライト組織であることを特徴とする耐疲労亀裂伝播特性に優れた鋼材。
本発明によれば,成分組成の調整によりミクロ偏析に起因するパーライトの形態制御が可能で、特殊な製造条件を適用せずに耐疲労亀裂伝播特性に優れた粒子状に分散したミクロ組織が得られ,実製造上極めて容易に耐疲労亀裂伝播特性の優れた鋼材を提供でき,産業上極めて有用である。
本発明では、ミクロ組織を規定する。
[ミクロ組織]
本発明鋼のミクロ組織は、体積分率が15%以上、且つ平均アスペクト比5以下の粒状パーライトを有する、フェライト+パーライト組織であることを特徴とする。
図3に、疲労亀裂伝播特性に及ぼすパーライト体積分率の影響を示す。パーライト体積分率の増加とともに,疲労亀裂伝播速度は低下し,15%を超えると特に顕著となるため、パーライト体積分率は15%以上とする。
図4に、パーライト体積分率及びパーライトのアスペクト比(伸長性)が疲労亀裂伝播速度に与える影響を示す。パーライトのアスペクト比(伸長性)は圧延方向の断面ミクロ組織における平均アスペクト比で評価した。
アスペクト比5以下の鋼は、アスペクト比10の鋼に対して、パーライト体積分率が15%以上となると疲労亀裂伝播速度は大きく低下する。
図5に、供試鋼のミクロ組織を、成分組成におけるC,Mnの範囲、強度範囲と併せて示す。(a)が鋼A,(b)が鋼Bのミクロ組織を示し、アスペクト比が小さい鋼Aは,パーライトが粒状に分散している。
ミクロ組織のパーライト体積分率を15%以上とし、且つ粒状とすることは,疲労亀裂先端に硬質のパーライト相の存在する確率を高めることを意味し,疲労亀裂の進行を分岐させる,あるいは,疲労亀裂がパーライトのラメラーを分断する際の抵抗により,疲労亀裂伝播速度が遅延すると推測される。
本発明鋼として好ましい成分組成について述べる。含有量の%は質量%である。
C:0.05〜0.20%
Cは,パーライト体積分率を支配する基本的な元素であり,ミクロ組織のパーライト体積分率を15%以上確保しようとした場合には,最低0.05%以上必要である。一方,Cを0.20%を越えて添加すると,溶接構造用鋼として必要な溶接性を低下させるために,上限を0.20%とした。好ましくは,0.08〜0.18%の範囲のC量とする。
Si:1.0%以下
Siは,鋼中へ固溶し強度を上昇させる基本的な元素であるが,母材および溶接熱影響部の靭性を損なう悪影響もあることから,上限を1%とした。好ましくは,0.6%を上限とする。
Mn:0.05〜1.2%
Mnは,溶接構造用鋼の場合、多量に添加して,強度を上昇させる有用な元素で,0.05%以上の添加が必要である。しかしながら,Mnの多量添加はミクロ偏析に伴う正負ミクロ偏析部のAr温度差を拡大させ,パーライトをバンド化させ,耐疲労亀裂伝播特性を向上させる場合、好ましくない。そのため,Mnの上限は1.2%とした。
P:0.030%以下
Pは,鋼中へ不可避的に存在し,パーライトのバンド状組織化を促進して,耐疲労亀裂伝播特性も低減させることから,少ないことが望ましい。しかしながら,Pを低減することは溶製上,多大なコストアップを招き,実用性を損なうことから,0.030%を上限とした。好ましくは,0.025%を上限とする。
S:0.020%以下
Sも鋼中に不可避的に存在し,MnSを形成して,フェライトの変態核となり,結果的にパーライトのバンド状組織化を促進させることから,少ないことが望ましい。しかしながら, Sを低減することは溶製上,多大なコストアップを招き,実用性を損なうことから,0.020%を上限とした。好ましくは,0.015%を上限とする。
Al:0.001〜0.07%
Alは脱酸元素として最も有効であり,鋼中の酸化物系介在物を低減することで,鋼材の靭性,延性を向上させる。しかしながら,0.001%未満ではその効果が小さく,逆に0.07%を超えての添加は,効果が飽和し,逆に靭性を低下させる。したがって,0.001〜0.07%の範囲とした。
本発明鋼として好ましい成分組成は、以上の成分組成に更にCr:0.05〜3.0%,Cu:0.05〜1.0%,Ni:0.05〜1.0%,Mo:0.01〜1.0%を1種又は2種以上含有させ、パラメータΔTを100以下とする成分調整を行う(ΔT= 5Si +89Mn+11Cr+11Mo+7Cu+20Ni+850Nb+250V、各元素は含有量(質量%)で、含有しない元素は0とする)。
Cr:0.05〜3.0%
Crは,母材の高強度化に対して多量に添加しても,ミクロ偏析に伴うArへの影響が小さく,パーライトの粒状化に対して有効な元素であり,Mnと同様に比較的安価な元素でもあることから,極めて有用な元素である。しかしながら,0.05%未満では高強度化に対して不十分であり,逆に3.0%を越えての添加は,溶接性を損なうために,上限を3.0%とした。
Cu:0.05〜1.0%
CuもCrと同様に,母材の高強度化に対して多量に添加しても,ミクロ偏析に伴うArへの影響が小さく,パーライトの粒状化に対して有効な元素である。しかし,0.05%未満ではその効果が小さく,逆に1.0%を越えての添加は,Cu析出に伴う脆化を助長するので,上限を1.0%とした。なお,Cuは熱間脆性も促進させることから,添加に際しては,Niとの併用などの対策も必要となる場合があるので,注意が必要である。
Ni:0.05〜1.0%
Niは,母材や溶接熱影響部の靭性を損なうことなく,高強度化を得る有効な元素であるが,0.05%未満ではその効果が見られない。一方,ミクロ偏析により正負偏析部のArが拡大して,パーライトの粒状化を阻害する元素でもあり,且つ,非常に高価な元素でもあるので,実用性を考慮すると上限は1.0%とした。
Mo:0.01〜1.0%
Moは,パーライトを粒状化したまま高強度化を得る有用な元素であり,0.01%以上の添加が必要である。一方,Moの増加は溶接性を低下させるとともにNiと同様に非常に高価な元素でもあるので,実用性を考慮すると上限は1.0%とした。
ΔT=5Si+89Mn+11Cr+11Mo+7Cu+20Ni+850Nb+250V
ΔTは,ミクロ偏析部のAr温度を支配し、パーライトの分散化を図り,鋼の疲労亀裂伝播速度を遅延させる上で極めて重要なパラメータである。ΔTが100を越える場合には,正負ミクロ偏析部のAr温度差が拡大し,パーライトの粒状化が妨げられるので,上限を100以下とした。好ましくは,80以下にする。
図6、7にΔTがミクロ組織に影響を及ぼすことを示すミクロ組織写真を示す。図6において(a)はΔTが2、(b)はΔTが32、(c)はΔTが55の場合で、図7で(a)はΔTが119、(b)はΔTが141、(c)はΔTが149の場合を示す。ΔTが100を超えると、パーライトがバンド状に形成していることがわかる。
更に、特性を向上させる場合、Ti:0.001〜0.030%,Nb:0.001〜0.050%,V:0.001〜0.10%、Ca:0.0005〜0.005%,REM:0.001〜0.020%,Mg:0.0005〜0.005%,Zr:0.0005〜0.0030%の1種又は2種以上を添加することが好ましい。
Ti:0.001〜0.030%
Tiは,鋼中のNと結合してTiNを形成し,鋼中のNを固定化させる有効な元素であり,鋼の靭性やHAZ靭性向上に対して有効な元素である。しかし,0.001%未満ではその効果が小さく,逆に0.030%を越えての添加は,TiCの析出に伴う脆化を助長させるので,0.001〜0.030%の範囲とした。
Nb:0.001〜0.050%
Nbは,微量の添加で組織の微細化とNbの析出強化により極めて熱間圧延溶接構造用鋼材の高強度化に対して有効な元素であるが,0.001%以上の添加を必要とする。逆に,Arに与える影響も大きいので,上限は0.050%とした。
V:0.001〜0.10%
VもNbと同様に微量添加で高強度化を得る有用な元素であり,その効果を得るためには0.001%以上添加する必要がある。逆に,0.10%を越えての添加は,HAZ靭性を低下させることから,上限を0.10%とした。
Ca:0.0005〜0.005%,REM:0.001〜0.020%,Mg:0.0005〜0.005%,Zr:0.0005〜0.0030%を1種又は2種以上
これらの元素は,いずれも溶接熱影響部の靭性を向上させるために有用な元素であり,適用される溶接法に応じて,HAZ靭性が求められる場合などに適用するが,各元素の下限値未満ではその効果が小さく,逆に,上限以上添加しても鋼の清浄性を阻害する結果となるので, 添加する場合は、Ca:0.0005〜0.005%,REM:0.001〜0.020%,Mg:0.0005〜0.005%,Zr:0.0005〜0.0030%の範囲とし,1種又は2種以上添加することとした。
上記成分組成を有する鋼は,常用の溶製,鋳造技術を適用して,成分調整を行った後,素材を溶製し,フェライト+パーライト組織を前提に、厚板や形鋼を常用の製造プロセスを用いて製造することが可能である。
靭性が要求される場合はCRなどの製造プロセスを採用しても構わない。また,圧延後も,空冷することが望ましいが,組織微細化のために加速冷却をおこなっても構わない。
好ましい製造条件を以下に説明する。
素材加熱温度:1000〜1350℃
素材加熱温度が、1000℃未満では、バンド状のパーライトが生成するために耐疲労亀裂伝播特性を低下させる。一方,1350℃を越えての加熱は,初期γ粒の粗大化に伴い、フェライト粒が粗大化するため,耐疲労亀裂伝播特性はもとより,低温靭性も低下させる。よって,素材の加熱温度は1000〜1350℃とすることが好ましい。
圧延仕上げ温度:750〜950℃
圧延仕上げ温度が750℃未満では、変形抵抗の増大に伴う圧延負荷が大きくなり、生産性も低下する。一方,950℃を越えての圧延仕上げでは、フェライト粒が粗大化して、耐疲労亀裂伝播特性はもとより,低温靭性も低下させる。よって、圧延仕上げ温度は750〜950℃の範囲とすることが好ましい。なお、形鋼の場合、圧延仕上げ温度は、粗圧延の仕上げ温度を意味する。
圧延後の冷却:放冷または加速冷却
圧延後の冷却は、YP325クラスまでは放冷を基本とするが、YP355以上や鋼材の厚肉サイズでは一部加速冷却を行い、フェライト粒の微細化を図ることで強度を確保しても構わない。
加速冷却を実施する場合は,バンド状組織の生成に影響を及ぼさないように、冷却開始温度は,Ar±50℃、冷却速度≦40℃/s、冷却停止温度500〜700℃とすることが好ましい。
常用プロセスにより溶製した鋼素材を用いて,厚鋼板および形鋼を常用プロセスにて製造し,強度,靭性および疲労亀裂伝播特性を調べるとともに,ミクロ組織についても検討した。
供試材の化学組成を表1に,得られた鋼材の強度,靭性およびΔK=25MPa√mにおける疲労亀裂伝播速度とミクロ組織を表2に示す。ミクロ組織の解析は,圧延方向より顕微鏡観察用の小サンプルを採取し,鏡面研磨後,ナイタールにて腐食させ圧延断面のミクロ組織を観察した(観察倍率×100または×500)。
パーライト体積分率は、パーライト部分をトレースした後,画像処理により求めたパーライトの面積から,パーライト面積/測定視野面積×100の演算処理で求めた。
また、トレースしたパーライトの縦横長さを画像処理により求め,各パーライトについての縦横比(アスペクト比)を平均して、パーライトの平均アスペクト比とした。
開発鋼は,パーライト体積分率が15%以上、且つ,パーライトのアスペクト比が5未満の鋼で,疲労亀裂伝播速度が8×10−8m/cycle以下と極めて疲労亀裂伝播速度が遅い。
一方,発明範囲のパーライト体積分率、またはアスペクト比のいずれかが逸脱する比較鋼では,疲労亀裂伝播速度が高くなった。記号L(厚板)は、成分組成においてC量が高いため、低温割れ感受性など溶接性やHAZ靭性が低く、溶接用鋼として適当でないため比較鋼とした。
0.16C鋼においてMn量が変化した場合の、ミクロ組織を示し、(a)は0.6Mn系、(b)は1.42Mn系のミクロ組織を示す写真。 高Mn鋼においてパーライトがバンド状に伸長する機構を模式的に説明する図。 疲労亀裂伝播特性に及ぼすパーライト体積分率の影響を示す図。 パーライト体積分率及びパーライトのアスペクト比(伸長性)が疲労亀裂伝播速度に与える影響を示す図 図2の供試鋼のミクロ組織を示す図で(a)は粒状パーライト組織鋼、(b)はバンド状パーライト組織鋼を示す図。 ΔTがミクロ組織に及ぼす影響を示すミクロ組織写真で(a)はΔTが2、(b)はΔTが32、(c)はΔTが55の場合を示す。 ΔTがミクロ組織に及ぼす影響を示すミクロ組織写真で(a)はΔTが119、(b)はΔTが141、(c)はΔTが149の場合を示す。

Claims (5)

  1. ミクロ組織が、体積分率で15%以上、且つ、平均アスペクト比で5以下のパーライトを有する、フェライト・パーライト組織であることを特徴とする耐疲労亀裂伝播特性に優れた鋼材。
  2. 質量%で,C:0.05〜0.20%、Si:1.0%以下,Mn:0.05〜1.2%,P:0.030%以下,S:0.020%以下,Al:0.001〜0.07%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物で,ミクロ組織が体積分率で15%以上、且つ、平均アスペクト比で5以下のパーライトを有するフェライト・パーライト組織であることを特徴とする耐疲労亀裂伝播特性に優れた鋼材。
  3. 請求項2記載の成分組成に、更にCr:0.05〜3.0%,Cu:0.05〜1.0%,Ni:0.05〜1.0%,Mo:0.01〜1.0%を1種又は2種以上含有し,(1)式に示すΔTが100以下,残部Feおよび不可避的不純物で,ミクロ組織が体積分率で15%以上、且つ、平均アスペクト比で5以下のパーライトを有するフェライト・パーライト組織であることを特徴とする耐疲労亀裂伝播特性に優れた鋼材。
    ΔT=5Si+89Mn+11Cr+11Mo+7Cu+20Ni (1)
    但し、各元素は質量%で、添加しない元素は0とする。
  4. 請求項3記載の成分組成に,更に質量%で、Ti:0.001〜0.030%,Nb:0.001〜0.050%,V:0.001〜0.10%の1種又は2種以上を含有し,(2)式に示すΔTが100以下,残部Feおよび不可避的不純物で,ミクロ組織が体積分率で15%以上、且つ、平均アスペクト比で5以下のパーライトを有するフェライト・パーライト組織であることを特徴とする耐疲労亀裂伝播特性に優れた鋼材。
    ΔT=5Si+89Mn+11Cr+11Mo+7Cu+20Ni+850Nb+250V (2)
    但し、各元素は質量%で、添加しない元素は0とする。
  5. 請求項3または4記載の成分組成に,更に 質量%でCa:0.0005〜0.005%,REM:0.001〜0.020%,Mg:0.0005〜0.005%,Zr:0.0005〜0.0030%を1種又は2種以上含有し,上記(2)式に示すΔTが100以下,残部Feおよび不可避的不純物で,ミクロ組織が体積分率で15%以上、且つ、平均アスペクト比で5以下のパーライトを有するフェライト・パーライト組織であることを特徴とする耐疲労亀裂伝播特性に優れた鋼材。
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