JP5397460B2 - 耐疲労亀裂伝播特性に優れる鋼材の製造方法 - Google Patents
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1.質量%で、
C:0.05〜0.2%
Si:0.05〜0.7%
Mn:1.48〜2.5%
P:0.03%以下
S:0.02%以下
Al:0.005〜0.1%
Ti:0.005〜0.03%を満足し、
更に、
Cu:0.05〜1%
Ni:0.05〜4%
Cr:0.01〜2%
Mo:0.01〜1%
Nb:0.003〜0.1%
V:0.003〜0.5%
B:0.0005〜0.004%
の1種または2種以上を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼を1200℃〜1350℃に5h以上保持する溶体化処理した後、Ar1以下まで冷却し、再度1000〜1350℃に加熱後、熱間圧延を行い、パーライト、ベイナイト、マルテンサイトの少なくとも1種以上の第2相が体積率15%以上24.6%以下、アスペクト比:5以下であることを特徴とする耐疲労亀裂伝播特性に優れた鋼材の製造方法。
2.1に記載の成分組成の鋼を1200℃〜1350℃に5h以上保持する溶体化処理後Ar1以下まで冷却し、再度1000〜1350℃に加熱後、熱間圧延後、加速冷却を行うことを特徴とする耐疲労亀裂伝播特性に優れた鋼材の製造方法。
3.1または2に記載の成分組成の鋼を1200℃〜1350℃に5h以上保持する溶体化処理後Ar1以下まで冷却し、再度1000〜1350℃に加熱後、熱間圧延し、加速冷却後、Ac1点以下の温度で焼戻しを行うことを特徴とする耐疲労亀裂伝播特性に優れた鋼材の製造方法。
C:0.05〜0.2%
Cは、強度を向上させ、硬質第2相であるパーライト、ベイナイトまたはマルテンサイト分率を支配する基本的な元素であり、溶接構造用鋼としての強度を確保し、硬質第2相であるパーライト、ベイナイトまたはマルテンサイトの体積率を15%以上確保するため、最低0.05%以上必要である。
Siは、鋼中へ固溶し強度を上昇させる基本的な元素であるが、そのような効果を期待するためには最低0.05%以上の添加が必要である。一方、0.7%を越えての添加は母材および溶接熱影響部の靭性を損なうため、上限を0.7%とした。好ましくは、0.6%を上限とすることが望ましい。
Mnは、溶接構造用鋼の高強度化に有用な元素であることから、0.05%以上を添加する。しかしながら、2.5%を越えての添加は、溶接性を阻害することから、上限を2.5%とした。
Pは、鋼中へ不可避的に存在し脆化を促進させることから、少ないことが望ましい。しかしながら、Pを低減することは溶製上、多大なコストアップを招き、実用性を損なうことから、0.03%を上限とした。好ましくは、0.025%を上限とすることが望ましい。
Sも鋼中に不可避的に存在し、MnSを形成して、フェライトの変態核となり、硬質第2相のバンド化を促進させることから、少ないことが望ましい。しかしながら、Sを低減することは溶製上、多大なコストアップを招き、実用性を損なうことから、0.02%を上限とした。好ましくは、0.015%を上限とするのが望ましい。
Alは脱酸元素として最も有効であり、鋼中の酸化物系介在物を低減することで、鋼材の靭性、延性を向上させる。しかしながら、0.005%未満ではその効果が小さく、逆に0.1%を越えての添加は効果が飽和し、逆に靭性を低下させる。したがって、0.005〜0.1%の範囲とした。
TiはTiNとしてフリーNの固定化に有効であり、溶接熱影響部の靭性向上も期待できるが、0.005%未満ではその効果が小さく、逆に0.03%を越えての添加は、Ti炭化物の析出に伴い、耐疲労亀裂伝播特性や靭性の低下をもたらすことから、上限を0.03%とした。
CuはCrと同様に、母材の高強度化に対して多量に添加しても、ミクロ偏析に伴うAr3への影響が小さく、ベイナイトまたはマルテンサイトの粒状化に対して有効な元素である。
Niは、母材や溶接熱影響部の靭性を損なうことなく、高強度化を得る有効な元素であるが、0.05%未満ではその効果が得られない。一方、4%を越えて添加しても疲労特性に与える影響は飽和することから、実用性を考慮し、上限を4%とした。
Crは、母材の高強度化に対して多量に添加しても、ミクロ偏析に伴うAr3への影響が小さく、ベイナイトまたはマルテンサイトの粒状化に対して有効な元素である。しかしながら、0.05%未満では高強度化に対して不十分であり、逆に2%を越えての添加は、溶接性を損なうために、上限を2%とした。
Moは焼入れ性を増加させ、厚肉材の高強度化を図る有用な元素であり、その効果を期待する際には0.01%以上の添加が必要である。一方、Moの増加は溶接性を低下させるので、上限を1%とした。
Nbは、微量の添加で組織の微細化とNbの析出強化により極めて熱間圧延溶接構造用鋼材の高強度化に対して有効な元素であるが、0.003%以上の添加を必要とする。一方、0.1%を越えての添加は逆に靭性を損なうので、上限は0.1%とした。
VもNbと同様に微量添加で高強度化を得る有用な元素であり、その効果を得るためには0.003%以上添加する必要がある。逆に、0.5%を越えての添加は、HAZ靭性を低下させることから、上限を0.5%とした。
Bは、焼入れ性を向上させる有用な元素であるが、その効果を期待する場合には0.0005%以上の添加が必要である。逆に、0.004%を越えての添加しても効果は飽和することから、上限を0.004%とした。
Caは鋳造時のノズル詰まり防止や介在物の形態を制御し、いっそうのHAZ靭性向上を期待する場合に添加するが、その量が0.0005%未満では効果がなく、逆に0.006%を越えて添加すると清浄性を損なうことから、上限を0.006%とした。
Mgは、鋼中のSを固定して鋼板の靭性を向上させる働きや微細な酸化物や酸硫化物あるいはそれらの複合の介在物となりTiNの析出の核として微細分散に効果的な元素である。この効果は0.0005%以上の添加で有効となり、0.006%を越えて添加すると効果が飽和するとともに鋼中の介在物量が粗大化および増加し、清浄性を阻害し靭性をかえって劣化させる。
REMは、鋼中のSを固定して鋼板の靭性を向上させる働きや微細な酸化物や酸硫化物あるいはそれらの複合の介在物となりTiNの析出の核として微細分散に効果的な元素である。この効果は0.0005%以上の添加で有効となり、0.02%を越えて添加すると効果が飽和するとともに鋼中の介在物量が粗大化および増加し、清浄性を阻害し靭性をかえって劣化させる。
上記組成の溶鋼を、転炉、電気炉、真空溶解炉等通常の方法で溶製し、連続鋳造法、造塊法などの通常公知の鋳造方法でスラブ等の圧延素材とする。
溶体化処理
本発明で、溶体化処理は、ミクロ凝固偏析を解消し、耐疲労亀裂伝播特性を向上させる重要な工程である。
溶体化処理後、Ac1点以下まで冷却した後、1000〜1350℃に再加熱する。再加熱は溶体化処理で粗大化したγを微細化させるために必要な工程で、Ac1点以上の温度から再加熱すると、γの再結晶が不十分で粗大なまま残留し、母材の靭性を低下させるためAc1点以下まで冷却する。
再加熱後、熱間圧延を行い所望の板厚とするが、本発明では、所望する強度靭性に応じて、熱間圧延において適宜、圧下率、圧延温度を規定する制御圧延を実施したり、熱間圧延後、加速冷却し、更に焼き戻しを行うことが可能である。熱間圧延、加速冷却および加速冷却後の焼き戻しは常法でよく、本発明では特に規定しない。以下、本発明の効果を実施例で示す。
アスペクト比(伸長性)が5以下の第2相の場合、体積率が15%以上では疲労亀裂伝播速度は大きく低下し、アスペクト比(伸長性)が10の場合は体積率が増加しても疲労亀裂伝播速度の低下は小さい。
Claims (3)
- 質量%で、
C:0.05〜0.2%
Si:0.05〜0.7%
Mn:1.48〜2.5%
P:0.03%以下
S:0.02%以下
Al:0.005〜0.1%
Ti:0.005〜0.03%を満足し、
更に、
Cu:0.05〜1%
Ni:0.05〜4%
Cr:0.01〜2%
Mo:0.01〜1%
Nb:0.003〜0.1%
V:0.003〜0.5%
B:0.0005〜0.004%
の1種または2種以上を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼を1200℃〜1350℃に5h以上保持する溶体化処理した後、Ar1以下まで冷却し、再度1000〜1350℃に加熱後、熱間圧延を行い、パーライト、ベイナイト、マルテンサイトの少なくとも1種以上の第2相が体積率15%以上24.6%以下、アスペクト比:5以下であることを特徴とする耐疲労亀裂伝播特性に優れた鋼材の製造方法。 - 請求項1に記載の成分組成の鋼を1200℃〜1350℃に5h以上保持する溶体化処理後Ar1以下まで冷却し、再度1000〜1350℃に加熱後、熱間圧延後、加速冷却を行うことを特徴とする耐疲労亀裂伝播特性に優れた鋼材の製造方法。
- 請求項1または2に記載の成分組成の鋼を1200℃〜1350℃に5h以上保持する溶体化処理後Ar1以下まで冷却し、再度1000〜1350℃に加熱後、熱間圧延し、加速冷却後、Ac1点以下の温度で焼戻しを行うことを特徴とする耐疲労亀裂伝播特性に優れた鋼材の製造方法。
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