JP2005298962A - 加工性に優れた高張力鋼板の製造方法 - Google Patents

加工性に優れた高張力鋼板の製造方法 Download PDF

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謙次 林
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隆 阿部
Hisafumi Maeda
尚史 前田
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Abstract

【課題】生産性の低下および製造コストの増大を引き起こすことなく、経済性に優れ、優れた加工性と高い強度を兼備した高張力鋼板を安定して製造することができる高張力鋼板の製造方法を提供すること。
【解決手段】スラブを1000℃以上1350℃以下の温度に加熱し、製品板厚となるまで熱間圧延し、引続きAr変態点以上の温度から直ちに加速冷却を行い、平均温度が400℃以上600℃以下の温度域まで冷却を行って高張力鋼板を製造するにあたり、熱間圧延後直ちに加速冷却を行う際、鋼板表面の温度が300℃以上の範囲にあるとき、0.3秒以上の一時的に水冷されない時間を、1回あるいは2回以上で、合計の非水冷時間が1.5秒以上、15秒以下となるように設ける。
【選択図】なし

Description

本発明は、建築物、橋梁、貯蔵タンク、圧力容器など鉄鋼構造物に用いられる高張力鋼板の製造技術に関し、特に加工性に優れた高張力鋼板の製造方法に関する。
建築、橋梁、貯蔵タンク、圧力容器などの鉄鋼構造物に用いられる鋼板は、強度が高く、靭性が優れていることはもちろん、それに加え、成形時のスプリングバックによる弾性的変形回復が生じることのない優れた加工性も要求される。近年、それらの鋼材に対しては高強度化が求められ、570MPa級以上の高張力鋼板が多く用いられている。鋼材の高強度化に伴い、鋼材の加工における荷重の増大、また、加工性が低下する傾向にあり、加工性の改善に対する要望は多い。従来の調質高張力鋼板やTMCP鋼板などの溶接構造用鋼板は、高い強度を有するものの、より強度の低い鋼板に比べ降伏比(以下「YR」とする)が高く塑性変形能は劣っていた。
一般的に、加工性の改善には、鋼材の塑性変形能を高めるという目的で、塑性変形能の指数であるYRの低減が考えられる。引張強度(以下「TS」とする)が570MPa級以上の鋼の降伏比の低減の手段としては、特許文献1などで提案されている(γ+α)2相域からの焼入工程を含む多段熱処理によって、フェライトと硬質の第2相からなる混合組織を生成させる方法が一般的である。しかし、この方法は大幅な低YR化が可能である一方、再加熱処理が必要となるため、製造コストが増大する。
また、特許文献2では、圧延後から水冷開始までに鋼板を空冷する時間を設けることにより初析フェライトを生成させることによって低YR化を図る提案がなされている。しかしながら、この方法では、生産性が著しく低下し、製造コストが増大する。
さらに、特許文献3、特許文献4では、Ar点以上からの冷却において5〜15℃/sec、5〜15℃/secの比較的遅い冷却速度に制御する方法が提案されているが、この技術も、生産性が著しく低下し、製造コストが増大する。また、上記特許文献4では実施例から、500MPa級の鋼板が製造できているのに過ぎない。
特許文献5、特許文献6などでは、圧延後の加速冷却をAr点直下で停止し、誘導加熱方式により再加熱することにより低降伏比する方法が提案されている。しかしながら、この技術は、既存の設備に加え、新たな加熱設備が必要となる。
特公昭59−52207号公報 特開昭59−211528号公報 特開平1−176027号公報 特開平5−214440号公報 特開2003−213332号公報 特開2003−213333号公報
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであって、再加熱処理や冷却開始温度の規制など、生産性の低下および製造コストの増大を引き起こすことなく、経済性に優れ、優れた加工性と高い強度を兼備した高張力鋼板を安定して製造することができる高張力鋼板の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は、加速冷却を行った高張力鋼板における加工性劣化の原因の究明を行い、その原因を解決する方法について鋭意研究を進めた。一般に、加速冷却を行った高張力鋼板は、通常板厚方向に硬さ分布を有しており、表面部分(裏面部分も含む)がその他の部分に比べ硬化している。そして、このような表面部分に硬化層が存在することが鋼板としての加工性を劣化させる原因となっている。そこで、本発明者らは、この点に着目して研究を重ねた結果、表面部分の硬さを低減することにより、鋼板の表面部分と板厚中心の硬さの差は小さくなり、鋼板の曲げ加工性は飛躍的に向上するとともに、全厚引張試験におけるYRの低下にもつながるという知見を見出した。さらに、誘導加熱装置を併用することにより、鋼板内部の温度上昇を抑制し、表面部分を効果的に加熱することができるため、より高い効果が得られることも見出した。
本発明は、このような知見に基づいて完成されたものであり、以下の(1)〜(6)を提供する。
(1)スラブを1000℃以上1350℃以下の温度に加熱し、製品板厚となるまで熱間圧延し、引続きAr変態点以上の温度から直ちに加速冷却を行い、平均温度が400℃以上600℃以下の温度域まで冷却を行う高張力鋼板の製造方法であって、熱間圧延後直ちに加速冷却を行う際、鋼板表面の温度が300℃以上の範囲にあるとき、0.3秒以上の一時的に水冷されない時間を、1回あるいは2回以上で、合計の非水冷時間が1.5秒以上、15秒以下となるように設けることを特徴とする、加工性に優れた高張力鋼板の製造方法。
(2)上記(1)において、加速冷却終了後、誘導加熱装置を用いて、表面の最高到達温度が500℃以上Ac変態点以下の温度で焼戻し処理を施すことを特徴とする、加工性に優れた高張力鋼板の製造方法。
(3)上記(1)または(2)において、得られた鋼板の板厚方向の硬度差が45HV以下であることを特徴とする、加工性に優れた高張力鋼板の製造方法。
(4)上記(1)または(2)において、得られた鋼板の板厚方向の硬度差が45HV以下であり、引張強度が550MPa以上であることを特徴とする、加工性に優れた高張力鋼板の製造方法。
(5)上記(1)〜(4)のいずれかにおいて、質量%で、C:0.03〜0.18%、Si:0.01〜0.55%、Mn:0.5〜2%、Al:0.005〜0.1%、N:0.0005〜0.005%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなることを特徴とする、加工性に優れた高張力鋼板の製造方法。
(6)上記(1)〜(4)のいずれかにおいて、質量%で、C:0.03〜0.18%、Si:0.01〜0.55%、Mn:0.5〜2%、Al:0.005〜0.1%、N:0.0005〜0.005%を含有し、さらに、必要に応じてCu≦1%、Ni≦2%、Cr≦1%、Mo≦0.8%、Nb≦0.05%、V≦0.1%、Ti≦0.025%、B≦0.002%、Ca≦0.005%の1種または2種以上を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなることを特徴とする、加工性に優れた高張力鋼板の製造方法。
本発明によれば、表面部分の硬さを減じることにより板厚方向の硬度差を小さくするので、経済的に加工性に優れた高張力鋼板を得ることができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明では、スラブを1000℃以上1350℃以下の温度に加熱し、製品板厚となるまで熱間圧延し、引続きAr変態点以上の温度から直ちに加速冷却を行い、平均温度が400℃以上600℃以下の温度域まで冷却を行って高張力鋼板を製造するにあたり、熱間圧延後直ちに加速冷却を行う際、鋼板表面の温度が300℃以上の範囲にあるとき、0.3秒以上の一時的に水冷されない時間を、1回あるいは2回以上で、合計の非水冷時間が1.5秒以上、15秒以下となるように設ける。
また、加速冷却終了後、誘導加熱装置を用いて、表面の最高到達温度が500℃以上Ac変態点以下の温度で焼戻し処理を施すことが好ましい。
上記得られた鋼板の板厚方向の硬度差が45HV以下であることが好ましく、さらに得られた鋼板の板厚方向の硬度差が45HV以下であり、かつ引張強度が550MPa以上であることが好ましい。
ここで、冷却時の温度を板厚方向の平均温度により規定した理由は、鋼板の板厚が大きい場合や冷却速度が速い場合には、板厚方向の各部位で温度履歴が異なってしまうことにより基準が明確でなくなってしまうことを防ぐため、全体的な材質として最も良く関係する平均温度を基準とすることが好ましいからである。なお、平均温度は、板厚、表面温度および冷却条件等が与えられた場合に、シミュレーション計算等により求められるものを用いることができる。例えば、差分法を用い、板厚方向の温度分布を平均化することにより得られた温度を平均温度とすることができる。
・圧延条件:
スラブ加熱温度は、鋼中の成分を均一化とMo、Nb、Vなどの析出強化元素を固溶させるため1000℃以上を確保する必要があるが、加熱温度が過剰に高い場合は、結晶粒が粗大化し母材の靭性劣化を招く恐れがあるために1350℃以下とし、好ましくは1250℃以下する。また、母材の靭性を向上させ、より安定に確保する観点から、1050℃以下の温度域で20%以上の累積圧下を付与することが望ましい。これにより、γ粒の再結晶に伴い組織が細粒化し、母材の靭性を向上および安定化させる。同様の効果を狙い、各圧延パス毎の圧下量を5%以上、さらには10%以上とすることが望ましい。
・加速冷却:
本発明では、熱間圧延終了後、Ar変態点以上の温度から直ちに加速冷却を行い、組織の制御を行う。この際の冷却停止温度は400℃以上600℃以下とする。これは、冷却停止温度を400℃未満とすると、加速冷却によりマルテンサイトが生成してしまい靭性が劣化し、一方、冷却停止温度を600℃超とすると、ベイナイト変態が十分進行しないため高張力鋼板としての強度を確保するのが困難となるからである。
・加速冷却時の冷却方法:
本発明では、熱間圧延後の冷却の際に非冷却時間を設ける。図1に、この際の鋼板の表面部分と板厚中心部の冷却曲線を従来と比較して示す。なお、図中実線はこのように非冷却時間を設けた場合であり、破線は従来の連続冷却の場合である。図1から明らかなように、非冷却時間を設けることにより、表面部分に比べ高温である板厚内部からの熱により表面部分は復熱し、これにより表面部分のみ硬さを低下させることができる。その際、鋼板の板厚中心に近くなるほど、非冷却時間を設けることによる復熱の影響は小さく、鋼板の内部では、冷却熱履歴の変化は小さく、冷却速度の低下はほとんど無いかあるいはごく僅かに抑えることができるため、硬さはほとんど低下しない。このため、図2に示すように、表面部分と板厚中心部との硬度差が小さい。したがって、全厚としての強度を大きく低下させることなく、また、熱間圧延後の冷却に要する時間は変わらないため、生産性を低下させることなく、加工性に優れた高張力鋼板を製造することができる。
この際の冷却制御は、具体的には図3に示すような装置で行うことが可能である。この装置においては、複数個のテーブルロール2上を矢印X方向に連続的に移送される高温の鋼板1の上面および下面に向け、板幅方向にスリットノズル4,4が設けられており、これによって第1冷却ブロックが構成されている。3はスリットノズル4に冷却水を供給するヘッダー管である。この第1冷却ブロックに続き、鋼板1の上面および下面に向け設けられた複数個のスプレーノズル5,5によって、第2〜第20冷却ブロックが構成されている。このような各冷却ブロックは、各々テーブルロール2と、テーブルロール2の上方に、鋼板1を間に挟んで設けられた水切りロール6とによって、隣接する冷却ブロックに冷却水が進入しないように区画されている。スリットノズル4およびスプレーノズル5の各々には、遮断弁7が取り付けられており、この遮断弁7によって所定の冷却ブロックの冷却水をオフにすることにより、所望の非冷却時間を設けることができる。
水冷されない時間を0.3秒以上としたのは、0.3秒より短い場合、表面部分の硬さの低下が十分でなく、期待する効果が得られないためである。好ましくは0.8秒以上である。
また、非水冷時間の長さと回数は製品板厚、サイズ、強度レベルに応じて設定することができる。しかし、合計の非冷却時間が短すぎる場合、表面部分の硬さの低下が十分でなく、期待する効果が得られず、また、長過ぎると、板厚中心部およびその周辺の冷却速度が低下することにより、通常の冷却方法に比べ強度が低下することに加え、生産性の低下を招くことになる。したがって、合計の非水冷時間は1.5秒以上、15秒以下とする。好ましくは3秒以上、13秒以下である。
鋼板の表面温度を300℃以上としたのは、非水冷時間を設ける温度は、鋼板の温度が低い場合は表面部分の復熱が小さくなり、期待される効果が十分得られないためである。
・誘導加熱装置を用いる焼戻し
非冷却時間を設ける既述の冷却方法により、従来に比べ板厚方向の硬度差を小さくすることができるが、特に鋼板が厚い場合には、板厚方向での冷却速度が異なるために、ある程度の硬度差は存在してしまう。そこで、通常のガス燃焼による加熱炉の代わりに誘導加熱装置を用い、鋼板表面部分に誘導電流を集中させることにより、鋼板内部に比べて表面部分の温度が高くなる温度分布を与えることができる。したがって、誘導加熱装置を用いることにより、特に板厚が厚い場合には、さらに板厚方向硬度差の小さい鋼板を得ることが可能となる。
誘導加熱装置を用いた場合の加熱温度は、板厚中心部あるいは全厚での強度が目標の強度となる適正な温度とすることができるが、表面の最高到達温度が500℃未満では、表面部分の硬さの低減効果が十分でなく、一方、Ac点を超えると表面部分の変態による組織が大きく変化し、板厚方向に不均一な組織となることに加え、表面部分の強度低下と鋼板内部の温度上昇により、全厚としての強度が大幅に低下する恐れがあるため、加熱温度は、鋼板の表面温度で500℃以上、Ac変態点以下、とした。好ましくは600℃以上である。
誘導加熱装置の配置は、オンラインでもオフラインでも構わないが、エネルギーコストの観点からは、加速冷却直後に加熱が可能なオンラインが好ましい。
板厚方向の硬度差:45HV以下
板厚方向の硬さは表面部分に最も硬さが高くなる位置が存在し、板厚中心部で最も硬さが低下する。そして、このように表面部分の硬さが高く、硬度差が大きいと加工性は劣化する。本発明では上述の手法により、このような硬度差を小さくするものであるが、このような加工性の劣化を抑制する観点からは、板厚方向の硬度差は45HV以下が望ましい。さらに、望ましくは35HV以下である。
引張強度:550MPa
本発明は、上述のように表面部分の硬度を低下させて厚さ方向の硬度差を小さくし、良好な加工性を確保するものであるが、引張強度は高く維持することができ、全厚引張り試験において降伏比も低くすることができる。この際の引張強度は550MPa以上であることが好ましい。
本発明においては、溶接構造用高張力鋼板としての一般的な成分に対してその効果を発揮するものであるが、質量%で、C:0.03〜0.18%、Si:0.01〜0.55%、Mn:0.5〜2%、Al:0.005〜0.1%、N:0.0005〜0.005%を含有し、残部Feおよび不可避不純物からなるものであることが好ましい。特に、溶接性および靱性、強度を安定して確保する観点からは、質量%で、C:0.03〜0.18%、Si:0.01〜0.55%、Mn:0.5〜2%、Al:0.005〜0.1%、N:0.0005〜0.005%を含有し、さらに、必要に応じてCu≦1%、Ni≦2%、Cr≦1%、Mo≦0.8%、Nb≦0.05%、V≦0.1%、Ti≦0.025%、B≦0.002%、Ca≦0.005%の1種または2種以上を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなるものであることが好ましい。以下、これらについて説明する。
C:0.03〜0.18%
Cは高張力鋼板としての母材強度確保に必要な元素である。0.03%未満ではCu、Ni,Cr、Moなどの焼入性向上元素の多量添加が必要となり、コスト高、溶接性の劣化を招き、また、大入熱溶接が施される場合には、溶接金属へのCの希釈が少なくなり、継手強度の確保が困難となる。一方、過剰な添加は母材の靭性および溶接性感受性の劣化をもたらし、また溶接継手部の靭性の劣化を招く。このためC含有量の範囲を0.03〜0.18%とする。
Si:0.01〜0.55%
Siは母材強度および溶接継手強度を確保する上で有効に働き、そのためには0.01%以上添加することが好ましい。しかし、0.55%を超える多量の添加は溶接割れ感受性と溶接継手靭性を劣化させる。このため、Si含有量の範囲を0.01〜0.55%とする。
Mn:0.5〜2%
Mnは、母材強度および溶接継手強度を確保する上で有効に働き、そのためには0.5%以上添加することが好ましい。しかし、2%を超える多量の添加は溶接割れ感受性を劣化させ、必要以上の焼入性をもたらし母材靭性および継手靭性を劣化させる。このため、Mn含有量の範囲を0.5〜2%とする。より好ましくは、1.6%以下である。
Al:0.005〜0.1%
Alは鋼の脱酸剤として添加され、通常0.005%以上は含有する。また、結晶粒の微細化による母材靭性確保のためには0.01%程度添加する。しかし、0.1%を超えるAl添加は母材靭性を損なう。このため、Al含有量の範囲を0.005〜0.1%とする。
N:0.0005〜0.005%
Nは、Al、Nbなどと反応し析出物を形成することで結晶粒を微細化し母材靭性を向上させる効果があるため添加する。0.0005%未満の添加では結晶粒の微細化および強度確保に必要な析出物が形成されず、0.005%を超える添加はむしろ母材および大入熱溶接継手の靭性を損なう。このため、N含有量の範囲を0.0005〜0.005%とする。
P、S
P、Sはいずれも不可避的に含まれる不純物元素である。健全な母材および溶接継手を得るためにはいずれも0.015%以下に制限されることが望ましい。
上記組成に加え、必要に応じてCu≦1%、Ni≦2%、Cr≦1%、Mo≦0.8%、Nb≦0.05%、V≦0.1%、Ti≦0.025%、B≦0.002%、Ca≦0.005%の1種または2種以上添加するが、これらについては以下の通りである。
Cu、Ni、Cr、Mo、Nb、V
本発明鋼として、600MPa級以上の高張力鋼板を得る場合や、耐候性を必要とする場合に、これらの1種または2種以上を添加する。その場合、Cu、Crについては上限を1%、Niについては上限を2%、Moについては、溶接性の確保と必要以上の焼入性を防止するため、上限を0.8%とする。Nbは母材強度確保に有効であるが、多量の添加は強化に寄与せず、逆に、溶接継手靭性を劣化させることから添加する場合の上限は0.05%、好ましくは、0.03%とする。Vは母材強度と溶接継手強度を確保する上で有効に働くので、選択的に添加しても良いが、0.1%を超える添加は溶接割れ感受性を劣化させる。
Ti、B
Tiはミクロ組織の細粒化や、B添加鋼の場合には焼入性に有効なBの確保のために添加するが、Tiにおいては、0.025%を超える添加は母材靭性を損ねることからTiの添加量は0.025%以下とする。Bは、ごく微量の添加で焼入性を高める効果が得られるが、過剰に添加するとBNを形成し逆に焼入性の低下がおこり、また、溶接熱影響部が著しく硬化するため、Bの添加量の上限は、0.002%とする。
Ca
Caは、靭性を劣化させるMnSの形態を変化させる効果があるが、過剰の添加は焼入性を招くため上限は0.005%とする。
以上のように本発明では、熱間圧延後直ちに加速冷却する際に、非冷却時間を設けることにより、主に鋼板表面部分を復熱させるので、鋼板表面部分と板厚中心部との間の硬度差を小さくすることができ、生産性を低下させることなく、優れた加工性と高い強度を兼備した高張力鋼板を経済的に製造することができる。
また、誘導加熱装置を用いることにより、鋼板表面部分と板厚中心部との硬度差をさらに小さくすることができることと、誘導加熱装置を用いることにより急速加熱ができるので従来より短時間で焼戻し処理を行うことができることから、優れた加工性と高い強度を兼備した高張力鋼板を製造することができる。
本発明では、鋼板の板厚は特に限定されないが、このような鋼板表面部分と板厚中心部との間の硬度差は板厚10mm以上で顕著となることから板厚10mm以上に対して効果が大きい。板厚の好ましい範囲は18〜60mmである。
以下、本発明の実施例について説明する。
表1に示す化学成分の鋼を溶製し、鋼塊を作製し、表2に示す製造条件にて所定の板厚に熱間圧延後、様々な条件で所定の温度まで冷却し供試鋼を得た。一部では、さらに誘導加熱による焼戻しを施した。誘導加熱を用いた際の鋼板表面温度は、放射温度計を用いて測定した。母材の機械的性質の評価として、ブリネル硬さ試験、ビッカース硬さ試験、全厚の引張試験、およびシャルピー衝撃試験を行った。その結果を表2に併記する。なお、No.3,4,5,9,10,13,15,16,18,19は本発明の範囲内である実施例、No.1,2,6,7,8,11,12,14,17は比較例である。
比較例のうち、No.1,8,12,14は水冷されない時間を設けない通常の冷却方法により製造したものであるが、実施例は、これらの通常の直接焼入れによりに比べ、強度を大きく低下させることなく、表面部分の硬さが低下しており、いずれも、ΔHV(板厚方向の硬さの差)≦45となり、また、YRが低下していることが確認された。
また、比較例のNo.2は、水冷されない時間を設けているものの、合計の時間が1.1秒と短いために、表面部分の硬さおよびYRに効果がほとんど現れない。No.11は、鋼板の表面温度が300℃未満で水冷されない時間を設けているために、表面硬さおよびYRに効果が現れていない。一方、No.7は、水冷されない時間の合計が17秒と長いために、強度が大幅に低下している。No.6は、冷却停止温度が本発明範囲より低いために、実施例に比べて靭性が劣るとともに、ΔHVが45を超えている。
実施例の中では、誘導加熱を用いた焼戻しを行ったNo.16,18,19は、行わない場合より表面部分の硬さが低下し、板厚方向の硬度差がより小さくなっており、また、YRも低下した。これに対し、比較例のNo.17は、誘導加熱により、表面温度がAcを超える温度となっており、全厚での強度が大幅に低下した。
Figure 2005298962
Figure 2005298962
本発明によれば、経済的に曲げ等の加工性に優れた高張力鋼板を得ることができ、建築物、橋梁、貯蔵タンク、圧力容器、ペンストックなど鉄鋼構造物に有効であり、工業的に利用価値が高い。
鋼板の表面部分と板厚中心部の冷却曲線を示す図。 本発明を適用した場合と従来について、鋼板の厚さ方向の硬度分布を比較して示す図。 本発明を実施するための冷却制御装置を示す図。
符号の説明
1;鋼板
2;テーブルロール
3;ヘッダー管
4;スリットノズル
5;スプレーノズル
6;水切りロール
7;遮断弁

Claims (6)

  1. スラブを1000℃以上1350℃以下の温度に加熱し、製品板厚となるまで熱間圧延し、引続きAr変態点以上の温度から直ちに加速冷却を行い、平均温度が400℃以上600℃以下の温度域まで冷却を行う高張力鋼板の製造方法であって、熱間圧延後直ちに加速冷却を行う際、鋼板表面の温度が300℃以上の範囲にあるとき、0.3秒以上の一時的に水冷されない時間を、1回あるいは2回以上で、合計の非水冷時間が1.5秒以上、15秒以下となるように設けることを特徴とする、加工性に優れた高張力鋼板の製造方法。
  2. 加速冷却終了後、誘導加熱装置を用いて、表面の最高到達温度が500℃以上Ac変態点以下の温度で焼戻し処理を施すことを特徴とする、請求項1に記載の加工性に優れた高張力鋼板の製造方法。
  3. 得られた鋼板の板厚方向の硬度差が45HV以下であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の加工性に優れた高張力鋼板の製造方法。
  4. 得られた鋼板の板厚方向の硬度差が45HV以下であり、引張強度が550MPa以上であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の加工性に優れた高張力鋼板の製造方法。
  5. 質量%で、C:0.03〜0.18%、Si:0.01〜0.55%、Mn:0.5〜2%、Al:0.005〜0.1%、N:0.0005〜0.005%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなることを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の加工性に優れた高張力鋼板の製造方法。
  6. 質量%で、C:0.03〜0.18%、Si:0.01〜0.55%、Mn:0.5〜2%、Al:0.005〜0.1%、N:0.0005〜0.005%を含有し、さらに、必要に応じてCu≦1%、Ni≦2%、Cr≦1%、Mo≦0.8%、Nb≦0.05%、V≦0.1%、Ti≦0.025%、B≦0.002%、Ca≦0.005%の1種または2種以上を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなることを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の加工性に優れた高張力鋼板の製造方法。
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