JP2008280602A - 高生産性型高強度・高靭性鋼板とその製造方法 - Google Patents

高生産性型高強度・高靭性鋼板とその製造方法 Download PDF

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Kazuhiro Fukunaga
和洋 福永
Ryuji Uemori
龍治 植森
Yoshiyuki Watabe
義之 渡部
Rikio Chijiiwa
力雄 千々岩
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Abstract

【課題】 高い生産性にて優れた強度と靭性を兼ね備えることが可能な橋梁向け570N/mm級の高強度高靭性鋼板とその製造法を提供すること。
【解決手段】 質量%で、C:0.03〜0.12%、Si:0.05〜0.50%、Mn:1.60〜3.00%、P:0.015%以下、S:0.002〜0.015%、Cu+Ni:0.10%以下、Al:0.001〜0.050%、Ti:0.005〜0.030%、Nb:0.005〜0.100%、N:0.0025〜0.0060%、B:0.0005〜0.0020%、を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなり、母材におけるアスペクト比2以上の旧オーステナイト粒からなるベイナイト組織分率が80%以上を満たすミクロ組織を有することを特徴とする。
【選択図】 なし

Description

本発明は強度・靭性に優れた高生産性橋梁向け高強度高靭性厚鋼板とその製造方法に関するものである。
従来、橋梁用鋼として用いられている高強度高靭性鋼板の製造方法として、TMCP法(制御圧延制御冷却法)が多く採用されており、例えば、極低炭素系にNbおよびBを適量添加した成分組成の鋼を、1050℃〜1250℃の範囲に再加熱し、下記(1)式で定義されるオーステナイト再結晶温度域で累積圧下率30〜80%の1次圧延と、700〜950℃のオーステナイト未再結晶温度域で下記(2)式で定義される累積圧下率の2次圧延を行い、変態前のオーステナイト状態を制御して冷却速度に依存せずベイナイト単相組織とすることを特徴とする材質ばらつきが少なく、優れた低温靭性を併せ持ち、橋梁等に好適な非調質高張力厚鋼板の製造方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
1040−0.05(RX1−30)<T<1160−0.05(RX1−30)・・・(1)式、ここで、RX1:1次圧延の累積圧下率(%)、T:温度(℃)、
(80−RX1)/(120−RX1)<RX2/100<(92−RX1)/(100−RX1)・・・(2)式、ここで、RX2:2次圧延の累積圧下率(%)
しかし、この方法で製造された高張力厚鋼板は材質ばらつきが少ないものの、条切り実施時に残留応力に起因したキャンバーが発生してしまうため問題がある。
また、質量%で、C:0.05〜0.20%、Si:0.10〜0.60%、Mn:0.90〜2.0%、P:0.025%以下(0%を含まない)、S:0.015%以下(0%を含まない)、Al:0.001〜0.1%、N:0.002〜0.01%を満たし、残部鉄および不可避不純物からなる鋼材を用いて、1000℃以上1250℃以下に加熱後、圧延を開始し、850℃以上で圧延を終了した後、10℃/s以上の冷却速度で300℃以下まで冷却し、その後、(Ac+50℃)以上Ac以下の温度域でTemperしてから室温まで空冷することによって、鋼板の金属組織を、全組織に対する占積率で、フェライト:70〜90%、マルテンサイトまたはマルテンサイトとオーステナイトの混合相:1〜15%、残部:ベイナイトとした、建築、橋梁等の各種構造物に最適な引張強度が490N/mm以上で、降伏比が70%以下と低い高靭性鋼材を、合金元素を多量に用いることなく、効率よく製造する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
しかし、この方法で製造する場合、Temper実施による工期拡大が生じることから、生産性の観点で問題となる。
高強度橋梁用鋼の製造方法としてDQ+Temper法が採用されることが多い。
橋梁用鋼板には、高い強度のほかに条切特性(条切性)の確保も要求される。条切性とは、厚鋼板を任意の細長い条に切断する際の切断性を意味し、切断後変形せずに形状を維持できるものほど条切性は良い。TMCP法の圧延工程であるDQとは、熱間圧延後水冷設備により鋼板を急速冷却させる技術であり、少ない合金添加によって高強度が得られるため、溶接特性に優れた高強度鋼板の製造に向いている。一方、冷却による熱収縮や冷却によって生じる相変態の際の膨張・収縮が、鋼板を急速冷却させるために残留応力として鋼板内部に残りやすい。鋼材内部に残留応力が残っている場合、条切後の残留応力の解放により、鋼材の変形が予想されるため、条切前に残留応力を解放しておく必要がある。その手法として、600℃程度でのTemper処理が実施され、強度と条切性の確保を達成している。しかしながら、前記にも述べたようにTemperなどの熱処理は、必然的に鋼材の製造工期が拡大されることになるため、生産性の観点で好ましくない。
特開2006−206958号公報 特開2007−23328号公報
そこで、本発明は高い生産性にて優れた強度と靭性を兼ね備えることが可能な橋梁向け570N/mm級の高強度高靭性鋼板とその製造法を提供することである。
本発明者は上記課題を解決すべく鋭意研究し、鋼成分として比較的合金コストの低いMnの多量添加とBの添加を組み合わせ、かつミクロ組織を制御することによって、優れた強度と靭性を兼ね備えた橋梁向け高強度高靭性厚鋼板とすることができることを見出して本発明を完成した。
本発明の要旨は、以下の通りである。
(1) 質量%で、
C:0.03〜0.12%、
Si:0.05〜0.50%、
Mn:1.60〜3.00%、
P:0.015%以下、
S:0.002〜0.015%、
Cu+Ni:0.10%以下、
Al:0.001〜0.050%、
Ti:0.005〜0.030%、
Nb:0.005〜0.100%、
N:0.0025〜0.0060%、
B:0.0005〜0.0020%、
を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなり、母材におけるアスペクト比2以上の旧オーステナイト粒からなるベイナイト組織分率が80%以上を満たすことを特徴とする570N/mm級の高強度高靭性鋼板。
(2) 質量%で、
V:0.10%以下、
Cr:0.50%以下、
Mo:0.20%以下、
Ca:0.0035%以下、
Mg:0.0050%以下、
の一種または二種以上を更に加えたことを特徴とする上記(1)に記載の570N/mm級の高強度高靭性鋼板。
(3) 上記(1)あるいは(2)に記載の化学成分の鋼片を1050℃以上1200℃以下の温度に加熱後、少なくとも未再結晶温度域において累積圧下率で30%以上の熱間圧延をし、720℃以上で熱間圧延を完了させた後、700℃以上の温度から5℃/s以上の冷却速度で300℃以上500℃以下まで冷却し、その後少なくとも200℃以下まで放冷したのち、当該鋼板における弾性歪の3倍以上の歪を鋼板表面に付与する冷間矯正を施すことを特徴とする570N/mm級の高強度高靭性鋼板の製造方法。
(4) 上記(3)で得られた鋼板を再加熱し、500〜650℃で焼戻し処理を施すことを特徴とする570N/mm級の高強度高靭性鋼板の製造方法。
本発明によれば高い強度及び靭性を有し、さらに優れた条切特性を備えた高水準の鋼板が得られ、強度と条切性の確保のためのTemperなどの熱処理を行う必要がなく、産業上極めて有用なものである。
本発明は、高い生産性にて優れた強度と靭性を兼ね備えることが可能な橋梁向け570N/mm級の高強度高靭性鋼板とするために、比較的合金コストの低いMnの多量添加とBの添加を組み合わせることによって、低コストでかつ高強度・高靱性を確保しながら、冷間矯正技術を組み合わせることで、熱処理を施すことなく優れた条切性を確保しようとする技術である。
高強度の確保と優れた靱性を両立させるためには、ベイナイト組織を主体とするミクロ組織の制御が重要であり、かつ結晶粒径を細かくすることが有効である。
TMCP技術を適用する際、特に変態点直上付近の低温で圧延する場合にはオーステナイト粒径の細粒化が進み靭性確保には有効であるが、鋼材の焼入れ性確保の観点では不利となり、高強度の確保はより困難となることが考えられる。したがって、低温圧延を採用する場合、合金添加によって(a)焼入れ性の向上、および(b)合金添加そのものによる強度アップを図ることが必要となる。
(a)および(b)について、いずれも靭性確保の観点からは好ましくないため、特に(b)の観点からできる限り合金添加量を減らしながら、強度確保することが重要であるといえる。(a)と(b)を同時に満足させる効果を示す元素としてMnが挙げられる。Mnは、オーステナイト活性化元素の一つとしてあげられ、焼入れ性を向上させる効果を持つ元素である。同様な効果を示す元素として、Cu、Niが挙げられるが、これらの元素はMnに比べてCとの親和力が低いためCの拡散を抑制する効果が低い。そのため、Mnに比べて焼入れ性を高める効果が低くなり、同様の効果を発揮させるためにはより多くの添加が必要となり、できる限り合金添加量を減らしながら焼入れ性を上げる観点からは不利であるといえる。本発明者らの研究により、1.6〜3.0%のMn添加が、300〜500℃での冷却停止温度でも高強度・高靭性を両立させるために有効であることを見出した。
また、(a)の観点から、Bの添加は低温圧延により細粒となったオーステナイトの焼入れ性低下を防ぐ効果を示すため有効である。Bを添加しない場合、合金元素の拡散の観点から局所的に焼入れ性の高い領域が発生し、強度のバラツキを引き起こす原因となりかねない。しかしながら、本発明者らの研究により、0.0005〜0.0020%のB添加により、細粒となったオーステナイト粒でも高強度を得るために必要な焼入れ性を確保できることを見出した。その結果、局所的な焼入れ性の差に起因した強度のバラツキを低減することが可能となる。
以下に本発明の限定理由について説明する。まず、本発明鋼板の組成限定理由について説明する。以下の組成についての%は、質量%を意味する。
C:0.03〜0.12%
Cは強度を確保するために必要な元素であり、0.03%以上の添加が必要であるが、多量の添加はHAZの靱性低下を招くおそれがあるために、その上限値を0.12%とする。
Si:0.05〜0.50%
Siは脱酸剤として、また固溶強化により鋼の強度を増加させるのに有効な元素であるが、0.05%未満の含有量ではそれらの効果が少なく、0.50%を超えて含有すると、HAZ靱性を劣化させる。このため、Siは0.05〜0.50%に限定した。
Mn:1.60〜3.00%
Mnは、鋼の強度を増加するため高強度化には有効な元素であり、焼入れ性確保の観点から、1.60%以上の含有量が必要である。ただし、3.00%を超えるMnを添加すると靱性が劣化する。このため、Mnは1.60〜3.00%に限定した。
P:0.015%以下
Pは、粒界に偏析して鋼の靱性を劣化させるので、できるだけ低減することが望ましいが、0.015%まで許容できるため、0.015%以下に限定した。
S:0.002〜0.015%
Sは、主にMnSを形成して鋼中に存在し、圧延冷却後の組織を微細にする作用を有するが、0.015%以上の含有は、板厚方向の靱性・延性を低下させる。このため、Sは0.015%以下であることが必須である。また、MnSによる組織の微細化効果を得るためには、Sは0.002%以上の添加が必要である。そのため、Sは0.002〜0.015%に限定した。
Cu+Ni:0.10%以下
Cuは従来強度を確保するために有効な元素であるが、Cuによる熱間加工性の低下を補償するためにCu添加量とほぼ同量のNiを添加することが必須となる。ところが、Niは、非常にコストの高い元素であるため、Niを多量に添加することは本発明鋼の目的である低コスト化を達成できない要因となりうる。さらに、前記のように、焼入れ性確保の観点からCu、Niを添加せずMnを添加するほうが高強度・高靭性確保に対して有効である。このため、CuおよびNiはできる限り添加しないことが好ましい。しかし、スクラップを用いてスラブを製造する場合、それぞれ0.05%未満程度は不可避的に混入してしまうおそれがあるため、Cu+Niを0.10%以下に限定した。
Al:0.001〜0.050%
Alは、Siと同様に脱酸上必要な元素であるが、0.001%未満では脱酸が充分に行われず、0.050%を超える過度の添加はHAZ靱性を劣化させる。このため、Alは0.001〜0.050%に限定した。
Ti:0.005〜0.030%
Tiは、Nと結合して鋼中にTiNを形成させるために、0.005%以上の添加が望まれる。ただし、0.030%を超えてTiを添加すると、脆化要因となるTiCの生成が促進され、靱性を低下させるおそれがある。このため、Tiは0.005〜0.030%に限定した。
Nb:0.005〜0.100%
Nbは、オーステナイトの未再結晶域を拡大して、フェライトの細粒化を促進する効果があるとともに、Nb炭化物を生成し強度の確保を図ることができる元素であるため、0.005%以上が必要である。しかしながら、0.100%を超えるNbを添加すると、Nb炭化物によるHAZ脆化が生じやすくなるため、Nbは0.005〜0.100%に限定した。
N:0.0025〜0.0060%
Nは、Tiと結合して鋼中にTiNを形成させるために、0.0025%以上の添加が必要である。ただし、Nは固溶強化元素としても非常に大きな効果があるため、多量に添加するとHAZ靱性を劣化するおそれが考えられる。そのため、HAZ靱性に大きな影響を与えずTiNの効果を最大限に得られるように、Nの上限を0.0060%とした。
B:0.0005〜0.0020%
Bは、細粒オーステナイトの焼入性向上効果ために0.0005%以上の添加が必要であるが、0.0020%以上添加すると過剰の粗大なBNが生成し、靱性劣化を引き起こす。そのため、Bは0.0005〜0.0020%に限定した。
以上が本発明における必須の元素であり、これらの効果を損なわない範囲で以下の元素を添加することも有効である。
Mo:0.20%以下、V:0.10%以下、Cr:0.50%以下、Ca:0.0035%以下、Mg:0.0050%以下の一種または二種以上を添加
Mo、V、Crは、いずれも焼入れ性向上に有効な元素であり、必要に応じ一種または二種以上を選択して含有できる。なかでもVは、VNでの組織微細化効果を最適化することができ、VNによる析出強化を促進させる効果を有する。また、Mo、V、Crの含有によりAr3点が低下することから、フェライト粒の微細化効果がさらに大きくなることが期待される。これらの成分の下限は特に限定するものではないが、Mo0.05%、V0.01%、Cr0.05%以上とすることが好ましい。また、Ca添加により、MnSの形態を制御し、低温靱性をさらに向上させるため、厳しいHAZ特性を要求される場合は選択して添加でき、0.001%以上添加することが好ましい。さらに、Mgは、HAZにおけるオーステナイトの粒成長を抑制し細粒化させる作用があり、その結果HAZ靱性が向上することから、特にHAZ靱性が厳しい場合には選択して添加でき、0.001%以上添加することが好ましい。
一方、0.20%を超えるMoおよび0.50%を超えるCrを添加した場合、溶接性や靱性を損ないかつコストも上昇することが考えられ、0.10%を超えるVを添加した場合、溶接性や靱性を損なうため、これらを上限とした。また、0.0035%を超えるCaの添加では、鋼の清浄度を損ない、靱性の劣化や水素誘起割れ感受性を高めてしまうので、0.0035%を上限とした。Mgは0.0050%を超える添加では、オーステナイト細粒化効果代が小さくコスト上得策ではないため、0.0050%を上限とした。
次に組織に関する規定について述べる。
母材におけるアスペクト比2以上の旧オーステナイト粒からなるベイナイト組織分率が80%以上とする理由について、圧延によって形成される旧オーステナイト粒のアスペクト比が2未満の場合、形成されるベイナイト組織のパケットやブロックといった内部構造が十分に微細とならないため、570N/mm級の高強度と高靭性を両立することができない。また、ベイナイト組織分率が80%未満である場合には所定の強度を確保することができない。したがって、アスペクト比2以上の旧オーステナイト粒からなるベイナイト組織分率を80%以上に限定した。
次に、本発明鋼材の製造条件限定の理由について説明する。
加熱温度については、1050℃以上1200℃以下の温度であることが必要である。この理由は、1050℃未満の加熱では、凝固中に生成した靱性に悪影響を及ぼす粗大な介在物が溶けずに残る可能性があるためである。また、高温加熱すると冷却速度を制御して造り込んだ析出物を再溶解させてしまう可能性があるからである。上述を踏まえると、相変態を完了させる意味での加熱温度としては1200℃以下で十分であり、そのときに生じると考えられる結晶粒の粗大化も、あらかじめ防ぐことができるからである。以上より、加熱温度を1050℃以上1200℃以下に限定した。
次に、未再結晶温度域において累積圧下率で30%以上の熱間圧延を行う必要がある。その理由として、未再結晶温度域における圧下量の増加は、圧延中のオーステナイト粒の微細化に寄与し、結果としてフェライト粒を微細化し機械的性質を向上させる効果があるからである。未再結晶域の中でも特に800℃以下での圧延は、細粒化による高強度・高靭性の確保のために非常に有効であり、このような効果は800℃以下での累積圧下率が30%以上で顕著になる。このため、未再結晶温度域において累積圧下率で30%以上に限定した。特に、圧延温度を800℃以下とすることで効果がより顕著に現れるため望ましい。
また、鋼片は720℃以上で熱間圧延を完了させた後、700℃以上の温度から5℃/s以上の冷却速度で300℃以上500℃以下まで冷却し、その後少なくとも200℃以下まで放冷する必要がある。720℃以上で熱間圧延を完了させる理由として、720℃以下で圧延を実施した場合、相変態により生成したフェライトに歪を与えることになり、靭性が低下してしまうからである。また、700℃以上から冷却する理由として、700℃未満より冷却を開始すると焼入れ性の観点から不利となり、所要の強度が得られない可能性があるからである。また、冷却速度が5℃/s未満では、均一なミクロ組織を有した鋼を得ることが期待できないため、結果的に加速冷却の効果が小さい。また、300℃以上500℃以下まで冷却することで変態は充分に完了しており、かつその後少なくとも200℃以下まで放冷することで、焼きもどしなどの熱処理を省略しても十分な機械的特性を確保することが可能となるためである。上記の理由により、鋼片は720℃以上で熱間圧延を完了させた後、700℃以上の温度から5℃/s以上の冷却速度で300℃以上500℃以下まで冷却し、その後少なくとも200℃以下まで放冷することに限定した。
さらに、得られた鋼板に弾性歪の3倍以上の歪を鋼板表面に付与する冷間矯正を施す必要がある。圧延・冷却後の鋼板に冷間矯正を施すことによって、残留応力を解放し、優れた条切性を確保することが可能となるが、弾性歪の3倍未満の塑性歪では残留応力の解放が十分ではなく、優れた条切性を確保できない。これらの理由により、得られた鋼板に弾性歪の3倍以上の歪を鋼板表面に付与する冷間矯正を施すことに限定した。
上記により、所定の特性の鋼板、例えば、板厚20〜70mmの570N/mm級の高強度高靭性鋼板が得られるが、さらに厳しい靱性値および条切性が特に要求され、熱間圧延、加速冷却後に焼戻し処理を施す場合は、焼戻し処理温度は500〜650℃であることが必要である。焼戻し処理を行う場合、焼戻し処理温度が高温になるほど結晶粒成長の駆動力が大きくなるが、650℃を超えるとそれが顕著になる。また、500℃未満の焼戻し処理では、靱性改善効果および条切性改善効果が十分に得られないことが考えられる。これらの理由により、熱間圧延後に焼戻し処理をする場合は、500〜650℃の焼戻し処理条件にて行うことに限定した。
次に、本発明の実施例について述べる。
表1の化学成分を有する鋳片を表2に示す条件にて熱間圧延を行い鋼板とした後、機械的性質を評価するために試験を行った。引張試験片は各鋼板の板厚の1/4部位からJIS4号試験片を採取し、YS(0.2%耐力)、TS、Elを評価した。母材靱性は各鋼板の板厚1/4部位よりJIS2mmVノッチ試験片を採取し、−5℃でシャルピー衝撃試験を行い得られる衝撃吸収エネルギー値にて評価した。また、旧オーステナイトアスペクト比およびベイナイト分率は、ナイタール腐食液にてエッチングした鋼材の組織を、光学顕微鏡あるいはSEMを用いて任意の倍率で観察することによって評価した。また、条切性は鋼板長さ辺りのキャンバー発生量(mm/m)で評価し、1mm/mを超えるものについては条切性が悪いとした。冷間矯正度は、(付与歪)/(弾性歪)で得られる値とする。
表3は、各鋼における機械的性質をまとめたものを示す。鋼1〜22aは本発明の例である鋼板について示したものである。表1および表2から明らかなようにこれらの鋼板は化学成分と製造条件の各要件を満足しており、表3に示すように、母材特性は優れ、条切りを実施しても形状が良好であることがわかる。また、規定範囲内であれば、Mo、V、Cr、Ca、Mgを添加しても、焼戻し処理を施しても良好な靱性が得られることがわかる。
一方、鋼1〜22bは表1および表2から明らかなように化学成分は満足しているものの、製造条件にて本発明から逸脱したものである。これらの鋼は、それぞれ再加熱温度(鋼6−b、鋼10−b)、累積圧下率(鋼16−b)、圧延終了温度(鋼3−b、鋼7−b、鋼12−b、鋼15−b、鋼19−b)、冷却開始温度(鋼1−b、鋼4−b、鋼9−b、鋼13−b、鋼17−b)、冷却速度(鋼22−b)、冷却停止温度(鋼2−b、鋼5−b、鋼11−b、鋼14−b、鋼18−b)焼戻し温度(鋼21−b)、冷間矯正度(鋼8−b)の条件が発明のものと異なっているため、強度あるいは靱性が劣っている。また、鋼20−bは表3に示すアスペクト比が2以下であるため、靭性が劣っている。
さらに、鋼23〜40は表1から明らかなように、化学成分について本発明から逸脱した比較例を示したものである。これらの鋼は、それぞれC量(鋼23)、Si量(鋼24)、Mn量(鋼25、39)、P量(鋼26)、S量(鋼27)、B量(鋼28、鋼33)、Al量(鋼29)、Ti量(鋼30)、Nb量(鋼31)、N量(鋼32、鋼40)、Mo量(鋼34)、V量(鋼35)、Cr量(鋼36)、Ca量(鋼37)、Mg量(鋼38)の条件が発明のものと異なっているため、強度あるいは靱性が劣っているといえる。
Figure 2008280602
Figure 2008280602
Figure 2008280602

Claims (4)

  1. 質量%で、
    C:0.03〜0.12%、
    Si:0.05〜0.50%、
    Mn:1.60〜3.00%、
    P:0.015%以下、
    S:0.002〜0.015%、
    Cu+Ni:0.10%以下、
    Al:0.001〜0.050%、
    Ti:0.005〜0.030%、
    Nb:0.005〜0.100%、
    N:0.0025〜0.0060%、
    B:0.0005〜0.0020%
    を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなり、母材におけるアスペクト比2以上の旧オーステナイト粒からなるベイナイト組織分率が80%以上を満たすことを特徴とする570N/mm級の高強度高靭性鋼板。
  2. 質量%で、
    V:0.10%以下、
    Cr:0.50%以下、
    Mo:0.20%以下、
    Ca:0.0035%以下、
    Mg:0.0050%以下、
    の一種または二種以上を更に加えたことを特徴とする請求項1に記載の570N/mm級の高強度高靭性鋼板。
  3. 請求項1または請求項2に記載の化学成分の鋼片を1050℃以上1200℃以下の温度に加熱後、少なくとも未再結晶温度域において累積圧下率で30%以上の熱間圧延をし、720℃以上で熱間圧延を完了させた後、700℃以上の温度から5℃/s以上の冷却速度で300℃以上500℃以下まで冷却し、その後少なくとも200℃以下まで放冷したのち、当該鋼板における弾性歪の3倍以上の歪を鋼板表面に付与する冷間矯正を施すことを特徴とする570N/mm級の高強度高靭性鋼板の製造方法。
  4. 請求項3で得られた鋼板を再加熱し、500〜650℃で焼戻し処理を施すことを特徴とする570N/mm級の高強度高靭性鋼板の製造方法。
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