JP5031531B2 - 母材低温靭性およびhaz低温靭性に優れた低降伏比高張力鋼板とその製造方法 - Google Patents

母材低温靭性およびhaz低温靭性に優れた低降伏比高張力鋼板とその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、溶接特性と低温靭性の優れた低降伏比高張力鋼板とその製造方法に関し、特に、強度・溶接性・低温靭性に優れたLPGおよび液体アンモニア(LAG)などの多種液化ガスを混載する多目的タンク向け厚鋼板に適した溶接特性と低温靭性の優れた低降伏比高張力鋼板とその製造法に関するものである。
液化ガス貯槽用タンクに使用される鋼材は、液化ガスの種類によって異なるが、ガスの液化温度は一般に常圧では低温(LPGの場合−48℃)であるため、母材はもちろん溶接部においても優れた低温靭性が要求される。この要求に対し、鋼中に6.5〜12.0%のNiを添加する方法(例えば、特許文献1参照)や、特定組成の鋼に焼入れ焼戻し処理を行って、焼戻しマルテンサイトとベイナイトの強靱性を利用する方法(例えば、特許文献2参照)が提案されている。
また、液体アンモニアは鋼材の応力腐食割れ(SCC)を引き起こすことが知られ、IGC−CODE 17.13では、酸素分圧、温度など貯槽時の操業条件を規制とするとともに、鋼材のNi含有量を5%以下に制限することなどや実降伏強さを440N/mm以下に抑えることなどを規定している。
このため、表層のみ軟化処理した鋼板(例えば、特許文献3参照)や、軟鋼クラッド鋼と軟質溶接最終層によるタンク製造方法(例えば、特許文献4参照)などが提案されている。
しかし、上記LPGと液体アンモニアを混載するタンクでは、当然のことながら両者に要求される仕様を満足する必要がある。一方、タンクの大容量化や船舶に搭載されることの多いこの種のタンクにおいては高張力化が求められており、LPGからの優れた低温靭性を液体アンモニアからの降伏強さの上限規制に伴う低降伏比の同時達成が課題となっていた。
この課題に対して、熱間圧延後の冷却方法について、600℃までは10℃/s未満の緩冷却、それ以下の温度では10℃/s以上の急速冷却とする二段冷却法を適用することにより、要求される特性を得る方法(例えば、特許文献5参照)が提案されている。しかしながら、本方法で製造した鋼材は、冷却速度のコントロールで材質を作り込むため、板厚方向で冷却履歴が変化する幅広い板厚の鋼板で狙い通りのミクロ組織を得ることが困難となり、要求特性、特に−60℃における母材靭性、さらには溶接部靭性の安定確保ができなかった。
特開昭63−290246号公報 特開昭58−153730号公報 特開平4−17613号公報 特開昭57−139495号公報 特開2005−281842号公報
本発明は、上記実情に鑑み、優れた強度と溶接性、および低温靭性を兼ね備えることが可能なLPGおよび液体アンモニア(LAG)などの多種液化ガスを混載する多目的タンク向け厚鋼板等に適した母材低温靭性およびHAZ低温靭性の優れた低降伏比高張力鋼板とその製造法を提供することを課題とするものである。
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋼材のミクロ組織を二相組織とし、軟相と硬相の相分率バランスをコントロールすることによって、−60℃での低温靭性に耐えうる優れた母材低温靭性およびHAZ低温靭性を有する低降伏比高張力鋼板を得ることについて鋭意研究した結果、低Cと微量Moを組み合わせることによって、広い冷却速度範囲で微細な島状マルテンサイトを微細に分散コントロールでき、さらに、TiO技術と組み合わせることで、溶接部においても良好な低温靭性(HAZ靭性)を確保できることを見出して本発明を完成した。
本発明の要旨は、以下の通りである。
(1) 質量%で、
C:0.03〜0.1%、
Si:0.05〜0.2%、
Mn:1.6〜2.0%、
P:0.015%以下、
S:0.015%以下、
Mo:0.05〜0.15%、
Ti:0.008〜0.02%、
Nb:0.005〜0.05%、
Al:0.005%以下、
N:0.004%以下、
O:0.001〜0.004%
を含有し、残部が鉄および不可避的不純物の化学成分からなり、アシキュラーフェライト組織分率が50%以上で、さらに平均円相当径で1〜5μmの島状マルテンサイト(MA)組織分率が3〜10%を満たすことを特徴とする母材低温靭性およびHAZ低温靭性に優れた低降伏比高張力鋼板。
(2) 質量%で、さらに、
V:0.01〜0.1%、
Cr:0.05〜0.5%、
Ni:0.05〜0.6%、
Cu:0.05〜0.3%、
Ca:0.0005〜0.0035%、
Mg:0.0005〜0.005%
の一種または二種以上を含有することを特徴とする上記(1)に記載の母材低温靭性およびHAZ低温靭性に優れた低降伏比高張力鋼板。
(3) 上記(1)または(2)に記載の化学成分の鋼片を1050℃以上1200℃以下の温度に加熱後、850℃以下の未再結晶温度域において累積圧下率で30%以上の熱間圧延をし、720℃以上で熱間圧延を完了させた後、700℃以上の温度から5℃/s以上の冷却速度で100℃以上200℃以下まで冷却することを特徴とする母材低温靭性およびHAZ低温靭性に優れた低降伏比高張力鋼板の製造方法。
本発明によれば、LPGおよび液体アンモニア(LAG)などの多種液化ガスを混載する多目的タンク向け厚鋼板等に適した−60℃での低温靭性に耐えうる優れた母材低温靭性およびHAZ低温靭性を有する低降伏比高張力鋼板が得られる。また、本発明鋼は200℃以下まで一気に冷却しても、狙い通りのミクロ組織を得ることが可能であるため、不安定である遷移沸騰領域での冷却履歴に起因した鋼板の形状不良を回避することが可能であるという顕著な効果を奏するものである。
以下本発明を詳細に説明する。
本発明は、前記した課題を解決するために、TiO鋼を適用し、かつ、低Cと微量Moを組み合わせることによって、広い冷却速度範囲で微細な島状マルテンサイト(以下MAと称する)を分散させることで要求特性を満足させる技術である。
本発明の対象となる鋼材では、応力腐食割れ(SCC)を回避するために降伏強さ(YS)を低くすること、および近年のタンクの大型化に伴う鋼材重量低減のための高い引張強さ(TS)化が要求される。例えば、板厚15〜40mm程度の厚鋼板で、YP32〜36k級、TS470〜600MPa程度で、靭性は−60℃のHAZで3桁の衝撃吸収エネルギー値が望まれる。これを満足させるためには、鋼材に荷重が付与された際、要求特性以上のできるだけ早い段階で降伏し、その後は破断することなく高い引張強さ(TS)を確保できるような特性が必要となる。
そのような特性を得るための考え方として、鋼材のミクロ組織を二相組織とすることが挙げられる。軟相と硬相の相分率バランスをコントロールすることで、要求特性を満たすことが可能となる。鋼材に荷重が付与された際、要求特性以上のできるだけ早い段階で降伏し、その後は破断することなく高い引張強さ(TS)を確保できるような特性を満足させる二相組織には(a)フェライト+ベイナイト組織、(b)フェライト+MA組織などが挙げられる。
(a)については、軟相であるフェライトが優先的に降伏することで低YSとなり、降伏後は強度の高いベイナイト組織が高TS確保を担うものである。この場合、鋼材のミクロ組織は上部ベイナイト主体となるため、−60℃での靭性確保は難しい。
一方、(b)についてはMAの周辺のフェライトに可動転位が導入されるため、明確な降伏点を発現しなくなり、さらにベース組織となるフェライトをアシキュラーフェライトとすることで高TSを確保するものである。これについて、(1)MA分率が10%を超える、(2)MAサイズが平均円相当径で5μmを超える場合、逆にMAが破壊の起点となり靭性劣化を招く。これまでは、MAを活用した材質制御を行う場合、高い確率で5μm以上の粗大なMAが10%以上発生するケースが見受けられ、−60℃での低温靭性に耐えうる特性は得られないものと思われてきた。しかしながら、本願発明者らの研究により、低C化と微量Mo添加を組み合わせることで、MAを微細に分散コントロールが容易となり、−60℃での低温靭性に耐えうる優れた低温靭性を確保できることを見出した。さらには、TiO技術と組み合わせることで、溶接部(HAZ)においても良好な低温靭性を確保できることがわかった。
それに加えて、本願発明鋼は200℃以下まで一気に冷却しても、狙い通りのミクロ組織を得ることが可能であるため、不安定である遷移沸騰領域での冷却履歴に起因した鋼板の形状不良を回避することが可能である。
以下に本発明の限定理由について説明する。まず、本発明鋼材の組成限定理由について説明する。以下の組成についての%は、質量%を意味する。
C:0.03〜0.1%
Cは強度を確保するために必要な元素であり、0.03%以上の添加が必要であるが、多量の添加は低温靭性、特にHAZの靱性低下を招くおそれがあるために、その上限値を0.1%とする。望ましくは0.04%〜0.1%、さらに望ましくは0.05〜0.1%である。
Si:0.05〜0.2%
Siは脱酸剤として、また固溶強化により鋼の強度を増加させるのに有効な元素であるが、0.05%未満の含有量ではそれらの効果が少なく、0.2%を超えて含有すると、HAZ靱性を劣化させる。このため、Siは0.05〜0.2%に限定した。
Mn:1.6〜2.0%
Mnは、鋼の強度を増加するため高強度化には有効な元素であり、焼入れ性確保の観点から、1.6%以上の含有量が必要である。ただし、2.0%を超えるMnを添加すると靱性が劣化する。このため、Mnは1.6〜2.0%に限定した。
P:0.015%以下
Pは、粒界に偏析して鋼の靱性を劣化させるので、できるだけ低減することが望ましいが、0.015%まで許容できるため、0.015%以下に限定した。
S:0.015%以下
Sは、主にMnSを形成して鋼中に存在し、圧延冷却後の組織を微細にする作用を有するが、0.015%以上の含有は、板厚方向の靱性・延性を低下させる。これを回避するためには、Sは0.015%以下であることが必須であるため、Sは0.015%以下に限定した。
Mo:0.05〜0.15%
Moは、析出強化や固溶強化で鋼板の強度を確保するために有効な元素であり、0.05%以上の含有量が必要であるが、0.15%を超える添加は鋼板の加工性を損ないかつ大幅なコストアップとなる。このためMoは0.05〜0.15%に限定したが、好ましくは0.05〜0.10%である。
Ti:0.008〜0.02%
Tiは、Oと結合してIGFの生成促進を達成できるだけではなく、Nと結合して鋼中にTiNを形成させることができるため、0.008%以上の添加が望まれる。ただし、0.020%を超えてTiを添加すると、母材靱性を劣化させるおそれがあるため、Tiは0.008〜0.02%に限定した。
Nb:0.005〜0.05%
Nbは、オーステナイトの未再結晶域を拡大して、フェライトの細粒化を促進する効果があるとともに、Nb炭化物を生成し強度の確保を図ることができる元素であるため、0.005%以上が必要である。しかしながら、0.05%を超えるNbを添加すると、Nb炭化物によるHAZ脆化が特に低温で生じやすくなるため、Nbは0.005〜0.05%に限定した。
Al:0.005%以下
Alは、脱酸剤として含有される元素で、Alとしてスラグとなって浮上し酸素を低下させるので、TiOを生成させるためには少ない方が好ましいので、実質的にはAlは含有しないようにする必要がある。しかしながら、工業生産的に制約があり、0.005%以下が許容できる範囲であることから、Alは0.005%以下に限定した。
N:0.004%以下
Nは、不可避的不純物として含有されるものであるが、固溶強化元素としても非常に大きな効果があるため、0.004%を超えて添加するとHAZ靱性を劣化するおそれが考えられる。そのため、Nの上限は0.004%に限定した。
O:0.001〜0.004%
Oは、TiOを形成させるために少なくとも0.001%以上は必要であるが、0.004%を超える添加では粗大なTiOを生成し、靱性を劣化するおそれが考えられる。そのため、Oは0.0001〜0.004%に限定した。
以上が本願発明における必須の元素であり、これらの効果を損なわない範囲で以下の元素を添加することも有効である。
V:0.01〜0.1%、Cr:0.05〜0.5%、Ni:0.05〜0.6%、Cu:0.05〜0.3%、Ca:0.0005〜0.0035%、Mg:0.0005〜0.005%の一種または二種以上を選択的に添加
V、Cr、Ni、Cuは、いずれも焼入れ性向上に有効な元素であり、必要に応じ一種または二種以上を選択して含有できる。なかでもVは、VNでの組織微細化効果を最適化することができ、VNによる析出強化を促進させる効果を有する。また、V、Cr、Ni、Cuの含有によりAr3点が低下することから、フェライト粒の微細化効果がさらに大きくなることが期待される。この様な効果を得るためには、V:0.01%以上、Cr:0.05%以上、Ni:0.05%以上、Cu:0.05%以上とする必要がある。また、Ca添加により、MnSの形態を制御し、低温靭性をさらに向上させるため、厳しいHAZ特性が要求される場合には選択してCa:0.0005%以上を添加できる。Ca:0.0005%未満ではこの効果が得られない。さらに、Mgは、HAZにおけるオーステナイトの粒成長を抑制し細粒化させる作用があり、その結果HAZ靱性が向上することから、特にHAZ靱性が厳しい場合には選択してMg:0.0005%以上を添加できる。Mg:0.0005%未満ではこの効果が得られない。
一方、0.1%を超えるVを添加した場合、溶接性や靱性を損い、0.5%を超えるCrを添加した場合、溶接性や靱性を損ないかつコストも上昇することが考えられるため、これらを上限とした。また、0.3%を超えるCuを添加した場合、熱間加工性を低下させるおそれがあり、0.6%を超えるNiを添加した場合、大幅なコストアップとなり、さらにはスラブでの表面疵の発生が顕著となるため、これらの値を上限とした。0.0035%を超えるCaの添加では、鋼の清浄度を損ない、靭性の劣化や水素誘起割れ感受性を高めてしまうので、0.0035%を上限とした。Mgは0.005%を超える添加では、オーステナイト細粒化効果代が小さくコスト上得策ではないため、0.005%を上限とした。
次に組織に関する規定について述べる。
以下に述べる組織分率の測定については、Point−fraction法を用い、MA分率の測定に際してはレペラエッチングと呼ばれるMA現出エッチングを適用し、撮影した写真を用いて実施した。なお、圧延組織を受け継いで扁平あるいは針状にのびたフェライトをここではアシキュラーフェライトと呼ぶことにする。
母材におけるアシキュラーフェライト組織分率が50%以上とする理由について、アシキュラーフェライトの組織分率が50%未満の場合、細粒化が十分ではなく、平均のフェライト粒径も粗大となるために、高い強度および優れた低温靭性を確保することができない。また、MAサイズが平均円相当径で1〜5μmである理由については、1μm未満では小さすぎることから低YR発現に対して有効ではなく、5μmを超えるMAでは破壊の起点となり靭性を劣化させてしまうからである。また、MAの組織分率についても、3%未満では低YR効果に寄与せず、10%を超える場合、破壊の起点の絶対量が増加するため、靭性を劣化させてしまう。したがって、母材におけるアシキュラーフェライト組織分率が50%以上で、さらに平均円相当径で1〜5μmのMA組織分率を3〜10%に限定した。
次に、本発明鋼材の製造条件限定の理由について説明する。
加熱温度については、1050℃以上1200℃以下の温度であることが必要である。この理由は、1050℃未満の加熱では、凝固中に生成した靱性に悪影響を及ぼす粗大な介在物が溶けずに残る可能性があるためである。また、高温加熱すると冷却速度を制御して造り込んだ析出物を再溶解させてしまう可能性があるからである。上述を踏まえると、相変態を完了させる意味での加熱温度としては1200℃以下で十分であり、そのときに生じると考えられる結晶粒の粗大化も、あらかじめ防ぐことができるからである。以上より、加熱温度を1050℃以上1200℃以下に限定した。
850℃以下の未再結晶温度域において累積圧下率で30%以上の熱間圧延を行う必要がある。その理由として、未再結晶温度域における圧下量の増加は、圧延中のオーステナイト粒の微細化に寄与し、結果としてフェライト粒を微細化し機械的性質を向上させる効果があるからである。なかでも850℃以下での圧延は、アシキュラーフェライト化促進による高強度・高靭性の確保に対して非常に有効であり、このような効果は850℃以下の未再結晶域での累積圧下率が30%以上で顕著になる。このため、850℃以下の未再結晶温度域において累積圧下率で30%以上に限定した。
また、鋼片は720℃以上で熱間圧延を完了させた後、700℃以上の温度から5℃/s以上の冷却速度で100℃以上200℃以下まで冷却する必要がある。720℃以上で熱間圧延を完了させる理由として、720℃以下で圧延を実施した場合、相変態により生成したフェライトに歪を与えることになり、靭性が低下してしまうからである。また、700℃以上から冷却する理由として、700℃未満より冷却を開始すると焼入れ性の観点から不利となり、所要の強度が得られない可能性があることに加え、MAサイズが5μm以上となるためである。また、冷却速度が5℃/s未満では、均一なミクロ組織を有した鋼を得ることが期待できないため、結果的に加速冷却の効果が小さい。また、100℃以上200℃以下まで冷却する必要がある。その理由として200℃を超える温度での冷却停止では、アシキュラーフェライトのサイズが大きくなり、強度・靭性確保が困難になることに加え、MA組織分率が10%以上となるためであり、100℃未満の温度での冷却停止は、鋼材特性に大きな変化を与えないことから、操業上の負荷のみが大きくなるためである。上記の理由により、鋼片は720℃以上で熱間圧延を完了させた後、700℃以上の温度から5℃/s以上の冷却速度で100℃以上200℃以下まで冷却することに限定した。
次に、本発明の実施例について述べる。
表1の化学成分を有する鋳片を表2−1及び表2−2に示す条件にて熱間圧延を行い鋼板とした後、機械的性質を評価するために試験を行った。引張試験片は各鋼板の板厚の1/4部位からJIS4号試験片を採取し、YS(0.2%耐力)、TS、El、YRを評価した。母材靱性は各鋼板の板厚1/4部位よりJIS2mmVノッチ試験片を採取し、−60℃でシャルピー衝撃試験を行い得られる衝撃吸収エネルギー値にて評価した。また、アシキュラーフェライト分率はナイタール腐食液にてエッチングした鋼材の組織を、MAサイズおよびMA分率はレペラ腐食法にてエッチングした鋼材の組織を光学顕微鏡あるいはSEMを用いて任意の倍率で観察することによって評価した。HAZ靱性は、溶接入熱6kJ/mm相当の再現熱サイクル試験を実施した鋼材を、−60℃でのシャルピー衝撃試験により得られる衝撃吸収エネルギー値によって評価した。
表3−1及び表3−2は、各鋼における機械的性質をまとめたものを示す。鋼1−a〜4−a、鋼6−a〜21−aは本発明の例である鋼板について示したものである。表1および表2−1及び表2−2から明らかなようにこれらの鋼板は化学成分と製造条件の各要件を満足しており、表3−1及び表3−2に示すように、低降伏比でありかつ母材特性およびHAZ靭性が優れていることがわかる。また、規定範囲内であれば、V、Cr、Ni、Cu、Ca、Mgを添加しても良好な靱性が得られることがわかる。
一方、鋼1−b〜4−b、鋼6−b〜21−bは、表1および表2−1及び表2−2から明らかなように本発明範囲の化学成分は満足しているものの、製造条件にて本発明から逸脱したものである。これらの鋼は、それぞれ再加熱温度(鋼2−b、鋼15−b、鋼21−b)、累積圧下率(鋼6−b、鋼9−b、鋼14−b、鋼16−b)、圧延終了温度(鋼1−b、鋼4−b、鋼10−b)、冷却開始温度(鋼7−b、鋼12−b、鋼19−b)、冷却速度(鋼3−b、鋼13−b、鋼18−b)、冷却停止温度(鋼8−b、鋼11−b、鋼17−b、鋼20−b)の条件が発明のものと異なっているため、母材靭性および継手靱性が劣っている。
さらに、鋼22〜41は表1から明らかなように、化学成分について本発明から逸脱した比較例を示したものである。これらの鋼は、それぞれC量(鋼22)、Si量(鋼28)、Mn量(鋼31)、P量(鋼35)、S量(鋼38)、Mo量(鋼27、鋼39)、Ti量(鋼23、鋼41)、Nb量(鋼36)、Al量(鋼30)、N量(鋼24)、O量(鋼32、鋼40)、V量(鋼33)、Cr量(鋼37)、Ni量(鋼25)、Cu量(鋼29)、Ca量(鋼34)、Mg量(鋼26)の条件が発明のものと異なっているため靭性、特にHAZ靱性が劣っている。

Claims (3)

  1. 質量%で、
    C:0.03〜0.1%、
    Si:0.05〜0.2%、
    Mn:1.6〜2.0%、
    P:0.015%以下、
    S:0.015%以下、
    Mo:0.05〜0.15%、
    Ti:0.008〜0.02%、
    Nb:0.005〜0.05%、
    Al:0.005%以下、
    N:0.004%以下、
    O:0.001〜0.004%
    を含有し、残部が鉄および不可避的不純物の化学成分からなり、アシキュラーフェライト組織分率が50%以上で、さらに平均円相当径で1〜5μmの島状マルテンサイト(MA)組織分率が3〜10%を満たすことを特徴とする母材低温靭性およびHAZ低温靭性に優れた低降伏比高張力鋼板。
  2. 質量%で、さらに、
    V:0.01〜0.1%、
    Cr:0.05〜0.5%、
    Ni:0.05〜0.6%、
    Cu:0.05〜0.3%、
    Ca:0.0005〜0.0035%、
    Mg:0.0005〜0.005%
    の一種または二種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の母材低温靭性およびHAZ低温靭性に優れた低降伏比高張力鋼板。
  3. 請求項1または請求項2に記載の化学成分の鋼片を1050℃以上1200℃以下の温度に加熱後、850℃以下の未再結晶温度域において累積圧下率で30%以上の熱間圧延をし、720℃以上で熱間圧延を完了させた後、700℃以上の温度から5℃/s以上の冷却速度で100℃以上200℃以下まで冷却することを特徴とする母材低温靭性およびHAZ低温靭性に優れた低降伏比高張力鋼板の製造方法。
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