JP2008303424A - 耐溶接割れ性が優れた高張力鋼材の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】質量%でC:0.001〜0.20%、Si:0.001〜2%、Mn:0.001〜2.5%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、下記数式(A)で定義されるPcmが0.26%以下である組成の鋼を鋳造した鋼素材を、冷却することなくそのまま圧延するか又は一旦室温まで冷却した後で950〜1250℃に再加熱して圧延し、Ar3点以上の温度で圧延を終了して圧延鋼材とし、この圧延鋼材をAr3点以上の温度から室温以上650℃以下の範囲まで冷却速度1℃/sec以上で強制冷却した後、室温以上200℃未満の温度で板厚方向の平均相当塑性歪みで0.1%以上の加工を行い、引張強さが570N/mm2以上の高張力鋼材とする。
[数1]
【選択図】なし
Description
また、圧延終了後に、Ar3点以上の温度から室温以上650℃以下の範囲にまで強制冷却を行っているため、鋼の金属組織がベイナイト及び/又はマルテンサイト等(一部にフェライト及び/又はパ−ライトを含むこともある)になり、製造される高張力鋼材が変態組織強化される。これにより、上記数式(2)で定義されるPcmを低下させたことにより想定される焼き入れ性及び強度の低下を防止することができる。
更に、目標とする鋼材の強度に応じて、Pcmの上限を超えない範囲で固溶元素及び析出元素を添加しているため、製造される高張力鋼材をより強化することができる。
更にまた、冷却後に、室温以上200℃以下の温度条件下で板厚方向の平均相当塑性歪みで0.1%以上10%以下の加工を実施しているため、鋼中に生成したM−A混合物の全て又はその一部をマルテンサイトに変態させることができる。そして、このマルテンサイトは、その後の冷却過程における自己焼戻効果により焼戻され、概ね消失する。また、M−A混合物の生成やその後のマルテンサイト変態によって導入された可動転位も、加工後の冷却過程で時効されるためにM−A混合物に起因する降伏強度の低下を抑制することが可能である。
これらの結果、M−A混合物による影響は低減され、靱性劣化量が低減し、降伏強度の低下も抑制することができるので、耐溶接割れ性が優れ、製造安定性を兼ね備えた高張力鋼材が得られる。
また、圧延終了後に、Ar3点以上の温度から室温以上650℃以下の範囲にまで冷却速度1℃/sec以上で強制冷却を行っているため、鋼の金属組織がベイナイト及び/又はマルテンサイト等(一部にフェライト及び/又はパ−ライトを含むこともある)になり、製造される高張力鋼材が変態組織強化される。これにより、上記数式(2)で定義されるPcmを低下させたことにより想定される焼き入れ性及び強度の低下を防止することができる。
更に、目標とする鋼材の強度に応じて、Pcmの上限を超えない範囲で固溶元素及び析出元素を添加しているため、製造される高張力鋼材をより強化することができる。
更にまた、冷却後に、室温以上100℃未満の温度条件下で板厚方向の平均相当塑性歪みで0.1〜10%の加工を実施しているため、鋼中に生成したM−A混合物の全て又はその一部をマルテンサイトに変態させることができる。そして、このマルテンサイトは、その後の100〜400℃以下の簡易な熱処理によりほぼ完全に焼戻される。また、マルテンサイト変態に伴い生成し降伏強度低下の原因となる可動転位もCやN原子あるいは炭化物などにより固着される。
その結果、M−A混合物による影響は低減され、靱性劣化量が低減するとともに降伏強度を増加させることができ、耐溶接割れ性が優れ、製造安定性及び溶接部靱性を兼ね備えた高張力鋼材が得られる。
また、前記鋼は、更に、質量%で、V:0.0001〜0.2%、Nb:0.0001〜0.1%及びTi:0.0001〜0.1%からなる群から選択された1種又は2種以上の元素を含有していてもよい。
更に、前記鋼は、更に、質量%で、REM:0.0001〜0.1%、Mg:0.0001〜0.02%及びCa:0.0001〜0.02%からなる群から選択された1種又は2種以上の元素を含有していてもよい。
更にまた、前記鋼は、更に、質量%で、Al:0.0001〜0.1%、Zr:0.0001〜0.3%、Hf:0.0001〜0.3%及びTa:0.0001〜0.3%からなる群から選択された1種又は2種以上の元素を含有していてもよい。
更にまた、前記鋼は、更に、質量%で、N:0.0001〜0.01%を含有していてもよい。
更にまた、前記鋼は、更に、質量%で、B:0.0001〜0.005%を含有していてもよい。
更にまた、前記鋼は、更に、質量%で、S:0.0005〜0.02%を含有していてもよい。
先ず、高張力鋼材の耐溶接割れ性を改善するために、下記数式(3)により定義され、耐溶接割れ性を示すPcmを一定値以下に制限する。なお、下記数式(3)における[C]はC含有量(%)、[Si]はSi含有量(%)、[Mn]はMn含有量(%)、[Cu]はCu含有量(%)、[Ni]はNi含有量(%)、[Cr]はCr含有量(%)、[Mo]はMo含有量(%)、[V]はV含有量(%)、[B]はB含有量(%)である。
このPcmの値は、小さければ小さいほど耐溶接割れ性を改善する効果が高く、溶接する前に行う鋼材の予熱温度を低下させることができ、作業効率を増加させることができる。具体的には、Pcmが0.26%以下になると予熱温度が室温程度となり、予熱が不要となる。従って、本発明の高張力鋼材の製造方法においては、Pcmの上限を0.26%とする。
これにより、鋼の金属組織がベイナイト及び/又はマルテンサイト等(一部にフェライト及び/又はパ−ライトを含むこともある)になり、製造される高張力鋼材が変態組織強化されるため、上記数式(3)で定義されるPcmを低下させたことにより想定される焼入性及び強度の低下を防止することができる。
[C:0.001〜0.20%]
Cは、焼入れ性の制御及びセメンタイトをはじめとする炭化物の生成によって、鋼材の強度を向上させるために添加する。しかしながら、このCを過剰に含有させると、パ−ライト、マルテンサイト及びセメンタイトといった硬質の第2相組織の形成量が増加して、鋼材の延性及び靱性の低下を招くと共に、鋼材の溶接性及び溶接部の靱性が劣化する。具体的には、C含有量が0.20%を超えると、加工性、溶接性及び靭性が著しく劣化する。一方、C含有量が0.001%未満の場合、強度向上の効果が得られず、鋼材を高強度化することができない。よって、C含有量は0.001〜0.20%とする。
Siは、鋼材の脱酸元素であり、通常Mnと共に鋼材の酸素濃度を低減する目的で添加される。また、このSiは、固溶強化元素として、強度の上昇に寄与する。しかしながら、Si含有量が0.001%未満では、上述した固溶強化を図ることができない。また、Si含有量が2%を超えると、低温靱性及び鋼の表面性状が劣化する。このため、Si含有量は0.001〜2%とする。
Mnは、Siと同様に脱酸にも効用があるが、鋼中にあって材料の焼き入れ性を高め、強度向上に寄与する元素である。また、このMnは、安価であることからCに次いで活用される元素である。しかしながら、Mn含有量が4.5%を超えると、凝固時に生成するミクロ偏析が顕著となり、鋼材中に添加量以上に濃縮している部位の存在が多くなる。このようにMnが凝集している部位は、焼き入れ性が高く、また溶接部靱性を劣化させるM−A混合物を生成しやすい。一方、Mn含有量が0.001%未満の場合、鋼中に存在していても材料の焼入れ性を高めることができない。そこで、M−A混合物の生成回避の観点から、Mn含有量は0.001〜4.5%とする。
上記数式(3)により定義され、耐溶接割れ性を示すPcmは0.26%以下とする。このPcmの値を0.26%以下にすることにより、溶接に先立って行う鋼材の予熱温度が室温程度となり、予熱作業が不要となる。なお、鋼材の強度が低い程、Pcmの値を小さくすることが可能となるため、目標強度に応じて、Pcmをできるだけ小さくすることが望ましい。但し、Pcmを0.18%未満にしても、予熱が不要であることに変わりはないため、Pcmの下限値は0.18%とすることが望ましい。
Cuは、焼入れ性の向上に有効であり、またフェライト中に固溶し、この固溶強化によって、鋼材の強度を向上させる効果がある。また、Cuは、析出強化に有効な元素であり、金属Cuの析出相を形成し、微細組織の形成を促進すると共に、延性の劣化を抑制する効果もある。しかしながら、Cu含有量が0.001%未満の場合、析出量が不十分となり、前述した効果が得られない。また、Cu含有量が2%を超える場合には、析出強化が著しくなり、鋳造時に粒界に析出して内部割れを引き起こし、圧延製造工程中に鋼塊及び鋼板で疵が発生しやすくなり、更には鋼材の熱間加工性等を劣化させる要因ともなる。よって、Cuを添加する場合は、その含有量を0.001〜2%とする。
Niは、強度を向上させる作用を有し、特に靭性を低下させることなく強度向上が図れる点で有用な元素である。しかしながら、Ni含有量が0.001%未満では、強度向上にはほとんど機能しない。即ち、Ni含有量が0.001%未満の場合、強度を向上させる効果が得られない。また、3%を超える量のNiを含有させても、効果が飽和し、含有量に見合う効果が期待できなくなり、経済的に不利になると共に、焼入れ強化による強度上昇が顕著となり、靱性及び延性の劣化を招く。よって、Niを添加する場合は、その含有量を0.001〜3%とする。
Crは、焼入れ性の向上と析出硬化とにより、母材(鋼材)の強度向上に有効な元素である。このCrの含有量が0.001%未満の場合、上述した強度上昇効果は充分に発揮されず、また2%を超えると靭性が低下する。従って、Crを添加する場合は、その含有量を0.001〜2%とする。
Moは、焼入れ性の向上、及び析出強化に寄与して強度を向上させる効果がある。Mo含有量が0.001%未満では、析出強化に寄与することができず、十分な強度が確保できない。これに対して、Mo含有量が1%を超えてしまうと、合金コストが上昇するだけでなく、強度が顕著に上昇して靭性の劣化が生じる。従って、Moを添加する場合は、その含有量を0.001〜1%にする。
次に、圧延後の圧延鋼材を、圧延終了温度、即ち、Ar3点以上の温度から室温以上650℃以下の範囲にまで冷却速度1℃/sec以上で強制冷却を行い、更にこの100〜200℃未満または室温〜100℃未満の温度範囲で板厚方向の平均相当塑性歪みで0.1%以上10%以下の加工を行った後、そのまま空冷するか、又は強制冷却する。その後、必要に応じて100〜400℃の温度条件下で熱処理を行い、引張強さが570N/mm2以上の高張力鋼材を製造する。以下、上述した製造条件の数値限定理由について説明する。
圧延前の再加熱温度が950℃未満の場合、鋼材の金属組織がオ−ステナイト単相にならない。また、圧延前の再加熱温度が1250℃を超えると、オ−ステナイト結晶粒の成長が早くなり、オ−ステナイト結晶粒が粗大となるため、鋼材の靱性が劣化する。よって、圧延前に鋼素材を再加熱する場合は、その加熱温度を950〜1250℃の範囲とする。
本発明においては、圧延の条件は特に規定しないが、鋼材のAr3点以上で圧延を終了する必要がある。これは、Ar3温度未満で圧延した場合、金属組織中に加工されたフェライトが混在し、鋼材の靱性が劣化するからである。
[冷却開始温度:Ar3点以上]
Ar3点未満の温度から冷却を行った場合、冷却開始前に粗大なフェライトが生成し、鋼材の強度が低下すると共に靱性が劣化する。よって、圧延後の圧延鋼板は、Ar3点以上の温度から冷却する。
圧延後の圧延鋼板の冷却は、冷却速度1℃/sec以上で行う。この冷却は水冷によって実施するのが望ましいが、これと同等の冷却速度が得られればどのような方法でもよい。また、冷却の終了温度が650℃を超えると、金属組織にフェライトが増加するため、鋼材の強度を高められない。一方、水冷等の現在の設備能力では、圧延鋼板を室温より低い温度まで冷却することは困難である。よって、圧延鋼板の冷却終了温度は、室温以上650℃以下とする。なお、圧延鋼板の冷却終了温度については、狙いとする強度レベルによって適宜調整することができる。
加工温度が200℃未満の場合、加工により付与される平均相当塑性歪み0.1%未満であると、M−A混合物をマルテンサイトに変態させることができない。一方、加工による平均相当塑性歪みが10%を超えると、鋼の延性が損なわれて伸びが低下する。よって、室温以上200℃未満の温度条件下では、板厚方向の平均相当塑性歪みで0.1%〜10%の加工を行う。これにより強制冷却後の金属組織中に生成するM−A混合物の全部又は一部を、マルテンサイトに変態させることができる。なお、M−A混合物をマルテンサイトに変態させるためには熱的安定性の観点から低温で加工するほど良いが、この温度が低くなりすぎると自己焼戻の効果が低減するので、100℃〜200℃の範囲で加工する必要がある。
室温以上100℃未満の温度で平均相当塑性歪み0.1〜10%の加工を行う場合、塑性加工後に、100〜400℃の温度で熱処理(焼戻)を行う。塑性加工を100℃未満の温度で実施した場合、M−A混合物の殆どを変態させマルテンサイトに変態させることはできるが、その後の自己焼戻効果が十分でない場合もある。このような場合には、加工後に100〜400℃の温度で熱処理を行うことにより、マルテンサイトを焼戻すことが可能となり、鋼中のM−A混合物を完全に消失させることができる。また、このような加工と熱処理によってマルテンサイト変態に伴って導入された可動転位をC、Nおよびセメンタイトなどの炭化物などによって固着することができる。可動転位は降伏強度の低下をもたらすのでこの加工と熱処理は降伏応力を顕著に改善することができる。一方、このような効果は加工後の熱処理温度が100℃未満の場合、C、Nの拡散が遅く、所定の効果が得られない場合がある。また、極度に高温で熱処理を行った場合にはセメンタイトなどの炭窒化物や金属結晶粒が成長して粗大化するなど強度、靱性の低下を招く。よって塑性加工後に熱処理を行う場合には、100〜400℃の温度範囲で実施する。なお、より良好な強度および靱性特性を得るには150〜400℃の温度範囲で熱処理することが好ましい。
また、圧延後の圧延鋼板を、Ar3点以上の温度から室温以上650℃以下の範囲にまで冷却速度1℃/sec以上で強制冷却しているため、鋼の金属組織がベイナイト及び/又はマルテンサイト等(一部にフェライト及び/又はパ−ライトを含むこともある)になり、Pcmを低下させたことにより想定される焼き入れ性及び強度の低下を防止することができる。
更に、目標とする鋼材の強度に応じて、Pcmの上限を超えない範囲で固溶元素及び析出元素を添加しているため、製造される高張力鋼材をより強化することができる。
なお、下記表1および表2に示す鋼A〜AJは本発明の範囲内の実施例であり、下記表3および表4に示す鋼A1〜A12はいずれも本発明の範囲から外れる比較例であり、下記表3および表4における下線は、本発明の範囲外であることを示す。また、下記表1〜表4に示す鋼組成における残部は、Fe及び不可避的不純物である。具体的には、下記表3および表4に示すように、鋼A1及びA2はMn含有量およびPcmが過剰である。また、鋼A3及びA4は、夫々C及びSiが過剰であり、鋼A5は個々の元素の含有量は条件を満たしているが、Pcmが過剰である。更に、鋼A6〜A9は、夫々Mo、Cr、Cu及びNiの含有量が過剰であり、鋼A10〜A12は、夫々V、Ti及びNbの含有量が過剰である。
また、靱性は、各鋼板(母材)及び溶接部から切り出したJIS4号試験片を使用し、Vノッチシャルピ−試験によって測定した。
更に、斜めy型割れ試験は、JIS Z3158に規定されているy型溶接割れ試験法に基づき、低水素溶材を使用して室温で行った。
また、比較例3は加工を行わなかった為にM―A混合物の分解や可動転位の固着が行われなかったので降伏強度が低いままである。
比較例7は100℃以下の温度で加工を行ったにもかかわらず、100〜400℃以下の熱処理をおこなっていないので、M―A混合物の分解はおきたとしても可動転位の固着が行われなかったので降伏強度が低いままである。
比較例10および11は100℃以下の温度で加工を行いその後に熱処理を行ってはいるが、熱処理の温度が低すぎ100〜400℃以下の条件を満たさなかったので、やはり可動転位の固着が行われなかったので降伏強度が低いままである。
比較例16は逆に熱処理の温度が高すぎたために炭化物や金属組織の粗大化など、これも降伏強度が低下した。
比較例17〜19は室温まで冷却が行われる途中で加工を行ったものであるが、加工温度が高すぎた為に、やはり炭化物や金属組織の粗大化など、これも降伏強度や引張強度が低下している。
比較例24は、比較例7と同様に、100℃以下の温度で加工を行ったにもかかわらず、100〜400℃以下の熱処理をおこなっていないので、M―A混合物の分解はおきたとしても可動転位の固着が行われなかったので降伏強度が低いままである。
比較例28、29、32、33は比較例17〜19と同様に室温まで冷却が行われる途中で加工を行ったものであるが、加工温度が高すぎた為に、やはり炭化物や金属組織の粗大化など、これも降伏強度や引張強度が低下している。
比較例41は比較例7と同様に100℃以下の温度で加工を行ったにもかかわらず、100〜400℃以下の熱処理をおこなっていないので、M―A混合物の分解は生じたとしても可動転位の固着が行われなかったので降伏強度が低いままである。
比較例45,46は室温での加工後に熱処理を行う点では適正であるが、その温度が高すぎる為に金属組織や炭化物などの析出物が粗大化するなどして鋼の降伏強度、引張強度が低下した。
また、比較例54は加工を行わなかった場合の例を示したもので、このような場合にはM−A混合物やマルテンサイト変態に伴う可動転位の発生により、降伏応力の低下が生じている。
比較例62は、引張強度700N/mm2級の鋼でも冷却ままではM−A混合物やマルテンサイト変態に伴う可動転位の生成などにより降伏強度が低いことを示している。
比較例61は同じく700N/mm2の鋼で加工温度も低く加工量も小さすぎた為に加工の効果が殆ど現れていないことを示す。
比較例67は適正な温度で加工されているが、加工歪み量が大きすぎるので、金属組織や析出物の粗大化が進み母材靱性が低下している。
比較例68は加工温度が低すぎM−A混合物の分解や可動転位の固着が不十分で降伏応力が低いままである。
また、比較例70〜71および78、80、82、86、88、90、105〜107は加工温度が高すぎ金属組織や炭化物などの析出物が粗大化するなどして鋼の降伏強度、引張強度が低下している。
比較例100は100℃未満の温度で加工されたので熱処理を行う必要があるが、その温度が低すぎたので十分な強度の増加が認められない。
比較例99では熱処理そのものを行っていない。
具体的には、比較例No.114及びNo.115の鋼板は、Mn含有量およびPcmが過剰であるために溶接部の靱性が劣っており、溶接割れも発生していた。
また、比較例No.116及びNo.117の鋼板は、夫々C及びSi含有量が過剰であり、母材靱性及び溶接部靱性が劣っていた。更に、これらの鋼板はPcmも過剰であるため、溶接割れが発生した。
比較例No.118の鋼板は、個々の元素の含有量は条件を満たしているが、Pcmが過剰であるため、溶接割れが発生し、更に母材靱性及び溶接部靱性も良好ではなかった。
また、比較例No.119〜No.122の鋼板は、夫々Mo、Cr、Cu及びNiの含有量が過剰であり、比較例No.123〜No.125の鋼板は、夫々V、Ti及びNbの含有量が過剰であるため、母材靱性及び溶接部靱性が不良であった。
更に、比較例No.120及びNo.121の鋼板は、Pcmも過剰であるため、溶接割れが発生した。
Claims (9)
- 質量%で、C:0.001〜0.20%、Si:0.001〜2%、Mn:0.001〜4.5%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、C含有量(%)を[C]、Si含有量(%)を[Si]、Mn含有量(%)を[Mn]、Cu含有量(%)を[Cu]、Ni含有量(%)を[Ni]、Cr含有量(%)を[Cr]、Mo含有量(%)を[Mo]、V含有量(%)を[V]、B含有量(%)を[B]としたとき、下記数式(A)で定義されるPcmが0.26%以下である組成を有する鋼を鋳造する工程と、前記鋳造後の鋼素材を、冷却することなくそのまま圧延するか、又は一旦室温まで冷却した後で950〜1250℃に再加熱して圧延し、Ar3点以上の温度で前記圧延を終了する工程と、前記圧延後の圧延鋼材を、Ar3点以上の温度から室温以上650℃以下の温度範囲にまで冷却速度1℃/sec以上で強制冷却した後、空冷して100〜200℃未満の温度とし、この温度範囲で板厚方向の平均相当塑性歪みで0.1%以上10%以下の加工を行い、引張強さが570N/mm2以上の高張力鋼材を得ることを特徴とする耐溶接割れ性が優れた高張力鋼材の製造方法。
- 質量%で、C:0.001〜0.20%、Si:0.001〜2%、Mn:0.001〜4.5%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、C含有量(%)を[C]、Si含有量(%)を[Si]、Mn含有量(%)を[Mn]、Cu含有量(%)を[Cu]、Ni含有量(%)を[Ni]、Cr含有量(%)を[Cr]、Mo含有量(%)を[Mo]、V含有量(%)を[V]、B含有量(%)を[B]としたとき、下記数式(A)で定義されるPcmが0.26%以下である組成を有する鋼を鋳造する工程と、前記鋳造後の鋼素材を、冷却することなくそのまま圧延するか、又は一旦室温まで冷却した後で950〜1250℃に再加熱して圧延し、Ar3点以上の温度で前記圧延を終了する工程と、前記圧延後の圧延鋼材を、Ar3点以上の温度から室温以上650℃以下の温度範囲にまで冷却速度1℃/sec以上で強制冷却した後、空冷して室温〜100℃未満の温度とし、この温度範囲で板厚方向の平均相当塑性歪みで0.1%以上10%以下の加工を行い、更に100〜400℃の温度で熱処理を施し、引張強さが570N/mm2以上の高張力鋼材を得ることを特徴とする耐溶接割れ性が優れた高張力鋼材の製造方法。
- 前記鋼は、更に、質量%で、Cu:0.001〜2%、Ni:0.001〜3%、Cr:0.001〜2%及びMo:0.001〜1%からなる群から選択された1種又は2種以上の元素を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の耐溶接割れ性が優れた高張力鋼材の製造方法。
- 前記鋼は、更に、質量%で、V:0.0001〜0.2%、Nb:0.0001〜0.1%及びTi:0.0001〜0.1%からなる群から選択された1種又は2種以上の元素を含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の耐溶接割れ性が優れた高張力鋼材の製造方法。
- 前記鋼は、更に、質量%で、REM:0.0001〜0.1%、Mg:0.0001〜0.02%及びCa:0.0001〜0.02%からなる群から選択された1種又は2種以上の元素を含有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の耐溶接割れ性が優れた高張力鋼材の製造方法。
- 前記鋼は、更に、質量%で、Al:0.0001〜0.1%、Zr:0.0001〜0.3%、Hf:0.0001〜0.3%及びTa:0.0001〜0.3%からなる群から選択された1種又は2種以上の元素を含有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の耐溶接割れ性が優れた高張力鋼材の製造方法。
- 前記鋼は、更に、質量%で、N:0.0001〜0.01%を含有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の耐溶接割れ性が優れた高張力鋼材の製造方法。
- 前記鋼は、更に、質量%で、B:0.0001〜0.005%を含有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の耐溶接割れ性が優れた高張力鋼材の製造方法。
- 前記鋼は、更に、質量%で、S:0.0005〜0.02%を含有することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の耐溶接割れ性が優れた高張力鋼材の製造方法。
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