JP2007146220A - 靭性に優れた厚鋼板の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】Ni等の高価な合金元素の添加や生産性が低い制御圧延法による結晶粒微細化に頼ることなく、優れた靭性を有する厚鋼板の製造方法を提供する。
【解決手段】所定の化学成分を含有する熱間圧延、または熱処理終了後の冷却過程にある脆性破壊の発生起点となる円相当径1〜30μmの炭化物、窒化物、酸化物、またはそれらの複合酸化物である硬質第二相を有する厚鋼板につき100℃以下の温度で0.1〜0.8%の軽塑性歪を付与する。
【選択図】図1

Description

本発明は、Ni等の高価な合金元素の添加や生産性が低い制御圧延法による結晶粒微細化に頼ることなく、優れた靭性を有する板厚8mm以上の厚鋼板の製造方法に関するものである。
厚鋼板は、造船、建築、橋梁、海洋構造物、圧力容器、ラインパイプ、機械部品等の様々な用途に構造部材として用いられている。近年、建築構造物の大型化に伴い、使用鋼材の厚肉化の要請が高まっている。これに伴い、厚鋼板の靭性を向上させる観点から、Ni含有量を増加させ、或いは結晶粒の微細化させる等、冶金学的な方法が従来において提案されている。Ni含有量を増加させる方法は、ミクロ組織によらず靭性を向上させる方法であるが、当然コストの増加を招く。したがって、製造方法の工夫により結晶粒を微細化することが好ましい。
近年において、この結晶粒の微細化により、靭性向上を図る試みが種々行われている。この結晶粒の微細化に関しては、例えば、熱間圧延における制御圧延を強化し、さらに制御圧延を容易にするためにNb等のマイクロアロイを添加する方法等が一般的である。しかしながら、制御圧延の強化は生産性の低下を招き、またNb等のマイクロアロイの添加は、溶接部の靭性劣化を生じやすくなる。
ちなみに、結晶粒の微細化技術としては、近年において下記の特許文献に示す開示技術が提案されている。
例えば、特許文献1には、650℃〜850℃のオーステナイト未再結晶温度域において圧延を施す際に、1パス当たりの圧下率が15%以上の高圧下率で圧延(累積圧下量:50%以上)を行うことによって、オーステナイト中の変形帯などのフェライト変態核生成サイトを増加させることでフェライト組織の微細化を実現する技術が提案されている。
またフェライト組織の微細化を念頭においた技術としては、例えば特許文献2に示されるように、圧延時における圧下率の下限を規定する方法も提案されている。
また、このフェライトの微細化技術をさらに改良したものとして、例えば、特許文献3のような技術も提案されている。この技術では、鋼片の熱間圧延時において、1パス当たりの圧下率を15%以上としつつ、圧延の1パスあるいは2パス毎に冷却速度1℃/sec以上の強制冷却を施しながら圧延を行うことにより、高圧下率圧延に伴う発熱現象を抑制し、高圧下圧延によるオーステナイト中へ発生させる変形帯の蓄積をより効率的に活用するものである。
また、特許文献4には、高圧下圧延を行いつつ、各板厚における圧延中の冷却速度を規定することによって、低温靭性に優れた厚鋼板を得る技術が提案されている。
これらの技術は、上述したように溶接部の靭性劣化や著しい生産性の低下、さらに圧延機に多大な負荷が生じるといった課題が常に残存する。従って、単なる結晶粒の微細化技術に頼らない生産性の高い安価な高靭性化技術が切望されていた。
一方、熱間圧延、または熱処理終了後に軽塑性歪を付与する方法としては、薄鋼板であれば調質圧延が公知である。薄鋼板では降伏点を消失することによる二次加工時のストレッチャーストレインを防止するために約1%の圧下率で圧延を行っている。しかし、薄鋼板のような平面応力状態ではへき開破壊に代表される脆性破壊は起り難く、靭性への影響はほとんどない上に、厚鋼板では適切な温度と歪量で圧延しないと伸びや靭性が劣化してしまう危険性がある。また、薄鋼板の調質圧延と類似して、厚鋼板に軽圧下を付与する設備、および方法として、例えば特許文献5〜10に形状矯正を主な目的としたもの、特許文献11に降伏点をなくし2次加工性を良好にすることを目的としたものが開示されている。しかし、これらの方法では適切な圧延温度、塑性歪量が限定されていないため、伸びや靭性が劣化してしまう問題があり、靭性を安定的に向上させることはできない。
特開昭63−223124号公報 特公昭56−4610号公報 特許第2579721号公報 特許第3212347号公報 特開2000−102805号公報 特開2001−286917号公報 特開2002−205104号公報 特開2002−178006号公報 特開2002−35819号公報 特開2001−181504号公報 特開2002−66603号公報
そこで本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、Ni等の高価な合金元素の添加や生産性が低い制御圧延法による結晶粒微細化に頼ることなく、優れた靭性を有する厚鋼板の製造方法を提供することを課題とする。
本発明は、前述の課題を解決するために鋭意検討の結果なされたものであり、その要旨とするところは特許請求の範囲に記載した通りの下記内容である。
(1)質量%で、
C :0.01〜0.20%、
Si:0.01〜1.6%、
Mn:0.2〜2.5%、
P :0.030%以下、
S :0.020%以下、
Al:0.005〜0.10%、
N :0.001〜0.008%
を含有し、残部Feおよび不可避不純物からなり、熱間圧延、または熱処理終了後の冷却過程にある脆性破壊の発生起点となる円相当径1〜30μmの硬質第二相を有する厚鋼板を100℃以下の温度で0.1〜0.8%の軽塑性歪を付与することを特徴とする、靭性に優れた厚鋼板の製造方法。
(2)質量%で、
Cu:0.1〜1.5%、
Ni:0.05〜5.0%、
Cr:0.01〜1.5%、
Mo:0.01〜1.5%、
W :0.01〜1.5%、
Ti:0.001〜0.1%、
Nb:0.003〜0.2%、
Zr:0.003〜0.2%、
V :0.003〜0.2%、
B :0.0002〜0.005%
の1種または2種以上を、さらに含有することを特徴とする、(1)に記載の靭性に優れた厚鋼板の製造方法。
(3)質量%で、
Ca:0.0005〜0.01%、
Mg:0.0005〜0.01%、
REM:0.0005〜0.01%
の1種または2種以上を、さらに含有することを特徴とする、(1)または(2)に記載の靭性に優れた厚鋼板の製造方法。
本発明により、脆性破壊の発生起点となる硬質第二相をNi等の高価な金属元素を用いることなく、安価に、且つ、生産性良く無害化して、優れた靭性を有する厚鋼板を得ることが可能となり、この分野における効果は大きい。
一般的に冷間加工を行うと厚鋼板の靭性は低下することが知られている。さらに冷間加工後に歪時効硬化を起こすと著しく靭性劣化する。これらは降伏強度の上昇が主因とされている。しかし、本発明者らは、極めて小さな塑性歪を付与することによって降伏応力の著しい上昇を回避できる上に、逆に厚鋼板の靭性が著しく向上することを知見した。軽塑性歪付与による靭性向上理由は、脆性破壊の起点となる鋼中の硬質第二相の先割れや第二相周りの残留応力を圧縮化することによって硬質第二相を無害化できることにある。硬質第二相は、1μmより小さく、30μmより大きいと応力集中源とはならず脆性破壊の発生起点とならないため、靭性向上効果が認められるサイズとして、1〜30μmと限定した。このような第二相無害化による物性への効果は、靭性だけではなく疲労破壊、応力腐食割れ(SCC)、水素誘起割れ(HIC)特性等にも効果がある。
極めて小さな塑性歪を付与する方法は、引張、曲げ等種々考えられるが、工業的生産を鑑みると圧延機による圧下が好ましい。図1はJIS SM490鋼に各温度で軽圧下を付与した場合の塑性歪量と靭性変化量との関係を、温度25℃、95℃についてそれぞれ示したものである。図2はJIS SM490鋼に各塑性歪量で軽圧下を付与した場合の温度と靭性変化量との関係を、塑性歪量0.25%、0.75%についてそれぞれ示したものである。靭性は、JIS4号シャルピー衝撃試験片を用いたシャルピー衝撃試験によって得られる破面遷移温度vTrsの圧延前後の変化ΔvTrs(=圧延後のvTrs−圧延前のvTrs)を指標とした。図3は、軽圧下圧延に用いた圧延機の模式図を示したものである。
図1、2に示すように、圧下率の増加とともにΔvTrsは低下し、靭性を向上させることができる。一方、圧下率が大きすぎるとΔvTrsは上昇し、軽歪付与前の厚鋼板の靭性に戻るか、逆に靭性は劣化してしまう。また温度が低いほど歪時効硬化の影響を受けないため靭性は向上する傾向にある。
vTrsは約±5℃のバラツキがあることから、ΔvTrsが−10℃以下を靭性向上の有意差と判断すると、付与歪量を限定した理由は、0.1%未満では、靭性向上の効果が少なく、0.8%以上では降伏応力の上昇に伴い靭性が低下するからである。より顕著な靭性向上効果を発揮させるためには、付与歪量は0.2〜0.7%にするのが好ましい。
次に、軽塑性歪を付与する際の温度を限定した理由は、100℃超では、歪時効硬化による強度上昇があることから靭性向上効果が小さくなるので、より顕著な靭性向上効果を発揮させるために、塑性歪付与温度は100℃以下とした。
次に、本発明の製造方法に基づいて製造される厚鋼板の成分は通常の厚鋼板のそれと同様であるが、その化学成分を限定した理由について説明をする。以下、組成における質量%は、単に%と記載する。
なお、以下%は質量%を意味するものとする。
Cは、鋼の焼き入れ性と強度を制御する最も基本的な元素であり、焼入れ硬化層の硬さおよび深さを高めて鋼の強度の向上に対して有効に寄与する。ちなみに、このCは、セメンタイトをはじめとする炭化物を生成し、強度を向上させる元素として従来から知られているが、これを多量に添加した場合において強度をより向上させることができる反面、粒界強度が低下してしまい、母材および溶接部の靭性や耐溶接割れ性を低下させ、焼戻し後においても靱性を確保することができない。即ち、Cの含有量が0.01%未満では、鋼の強度を向上させるために有効な効果を発揮させることができない。またCが0.2%超では母材および溶接部の靭性や耐溶接割れ性を低下させる。このため、本発明においては、このCの含有量を0.01〜0.20%に限定した。
Siは、焼入れ加熱時にオーステナイトの核生成サイト数を増加させ、オーステナイトの粒成長を抑制するとともに、焼入れ硬化層の粒径を微細化させる機能を担う。またSiは、Siは、強度確保のほか製鋼時の脱酸元素等に必須の元素であり、その効果を得るためには0.01%以上の含有が必要となる。これに対して、1.6%を越える過剰なSiの含有は粗大な酸化物を形成して延性や靭性の低下を招く。このため、本発明においては、このSiの含有量を0.01〜1.6%に限定した。
Mnは、鋼材の焼入れ性を高めることにより、母材の強度上昇の役割を有し、また安価であることからCに次いで活用される元素である。このMnが0.2%未満では母材強度を確保できない。一方、Mnの含有量が2.5%を超えると粒界脆化等により母材靭性や溶接部の靭性、さらに溶接割れ性などを劣化させるため、含有量に見合う効果を期待できない。このため、Mnの含有量を0.5〜2.5%とした。
Pは、鋼中に不可避不純物として含有する元素であり、意図的に添加する元素ではない。このPは、鋼の靭性を劣化させる元素であり、0.030%を超えると母材だけでなくHAZの靭性を著しく阻害するので、極力少ないほうがよい。このため、本発明においては、このPの含有量を0.030%以下に限定した。
Sは、MnSなどの硫化物系介在物を形成し、割れの起点となって加工性を劣化させるため、Pと同様に低いほど好ましい。即ち、このSが、0.020%を超えるとMnS析出が顕著となり、母材のHAZ靭性を阻害し、板厚方向の延性も低下させる。このため、本発明においては、このSの含有量を0.020%以下に限定した。
Alは、脱酸剤とし作用するが、鋼中のNと結合してオーステナイト粒径の細粒化等に有効な元素であり、効果を発揮するためには0.005%以上含有する必要がある。一方、0.10%を越えて過剰に含有すると、粗大な酸化物を形成して延性を極端に劣化させる。このため、本発明においては、このAlの含有量を0.005〜0.10%に限定した。
Nは、AlやTi等と窒化物を形成してオーステナイト粒微細化に有効に働くため、微量であれば機械的性質の向上に寄与する。また、工業的に鋼中のNを完全に除去することは不可能であり、必要以上に低減することは製造工程に過大な負担をかけるため好ましくない。そのため工業的に制御が可能で、製造工程への負荷が許容できる範囲として下限を0.001 %とした。過剰に含有すると、オーステナイト粒の微細化を図ることができず、固溶Nが増加し、歪時効特性が劣化するために、上限を0.008%とした。
以上が本発明の基本成分の限定理由であるが、本発明においては、強度や靭性の調整のために、必要に応じてCu、Ni、Cr、Mo、W、Ti、Nb、Zr、V、Bの1種あるいは2種以上含有することができる。以下に、各元素の成分限定理由を述べる。
Cuは、靭性を低下させずに強度の上昇に有効な元素であるが、0.1%未満では効果がなく、1.5%を超えると鋼片加熱時や溶接時に割れを生じやすくする。このため、本発明においては、このCuの含有量を0.1〜1.5%とした。
Niは、焼入性を高め、靭性および強度の改善に有効な元素であるので、より靭性向上効果を高めたい場合には添加しても良い。その効果を得るためには0.05%以上の添加が必要であるが、5.0%以上の過剰な添加では、効果が飽和する一方で、HAZ靭性や溶接性の劣化を生じる懸念があり、また高価な元素であるため、経済性も考慮して、本発明におけるNiの含有量を0.05〜5.0%とした。
Crは、焼入れ性の向上と析出硬化により、母材の強度向上に有効な元素であり、同時に鋼表面の粒界酸化を抑制させることによる平滑性の向上にも寄与する。これらの効果を得るためには、このCrを少なくとも、0.01%以上含有させる必要である。一方、1.5%を超えるとNiと同様の理由で好ましくない。このため、本発明においては、このCrの含有量を0.01〜1.5%とした。
Moは、焼入れ性向上、強度向上、耐焼戻し脆化、再結晶抑制に有効な元素で、その効果を得るためには0.01%以上の添加が必要であるが、1.5%を超えると靭性および溶接性が劣化する。このため、本発明においては、このMoの含有量を0.01〜1.5%とした。
Wは、焼入れ性を高めて強度を確保するのに必要な元素であるが、効果を発揮でき、他特性に悪影響を及ぼさない範囲として、その量を0.01〜1.5%とした。
Tiは、析出強化により母材強度向上に寄与するとともに、高温でも安定なTiNの形成により加熱オーステナイト粒径微細化にも有効な元素である。これらの効果を発揮させるためにはこのTiを0.001%以上含有する必要がある。一方、Tiの含有量が0.1%を越えると、粗大な酸化物を形成して延性を極端に劣化させる。このため、本発明においては、Tiの含有量を0.001〜0.1%とした。
Nb、Zr、Vは、析出強化により母材の強度向上に寄与するが、0.003%未満では効果がなく、0.2%を超える過剰の添加では、延性や靭性が劣化する。したがって、Nb、Zr、Vともにその含有量を0.005〜0.2%とした。
Bは、固溶状態でオーステナイト粒界に偏析することで、微量で焼入れ性を高めることが可能な元素であるが、粒界に偏析した状態では、オーステナイトの再結晶抑制にも有効である。焼入れ性、再結晶抑制に効果を発揮するためには0.0002%以上の添加が必要であるが、一方、0.005%を超える過剰の添加は、粗大な析出物を生じて、靭性が劣化してしまう。このため、本発明においては、Bの含有量を0.0002〜0.005%とした。
さらに、本発明においては、延性の向上、継手靭性の向上のために、必要に応じて、Mg、Ca、REMの1種または2種以上を添加することができる。
Mg、Ca、REMはいずれも硫化物の熱間圧延中の展伸を抑制して延性向上に有効である。酸化物を微細化させて継手靭性の向上にも有効に働く。その効果を発揮するための下限の含有量は、0.0005%である。一方、過剰に含有すると、硫化物や酸化物の粗大化を生じ、延性、靭性の劣化を招くため、上限の含有量を、0.01%とした。
以上、本発明の製造方法に基づいて製造される厚鋼板の化学成分を限定した理由について説明をしたが、軽塑性歪を付与する前の厚鋼板の製造方法は、複雑な熱間圧延や熱処理によってミクロ組織を精緻に制御する必要はない。厚板であれば鋼種等に応じ、熱間圧延時の加熱温度、圧延温度、圧下率、冷却温度、冷却速度などを適切に制御し製造すれば良い。例えば、1000〜1300℃に加熱した鋼片をAr1〜1200℃、累積圧下率30%以上で圧延し、次に空冷しても良く、あるいは高強度化を図るために、Ar1点以上の温度から、5℃/s以上の冷却速度で室温〜Ar1点の温度まで加速冷却しても良い。さらに強度、靭性、伸びを調整することを目的として、Ac1点以下の温度で焼き戻し処理をしても良い。
以下に、本発明の効果を実施例によってさらに具体的に述べる。
表1は、試作鋼の成分分析値を示している。
Figure 2007146220
この表1における鋼No1〜30で示される各試作鋼は、全ての本発明の化学成分を限定した範囲内にある。
また表2は、製造条件について比較検討した結果について示している。
Figure 2007146220
この表2においては、表1に示す各鋼No1〜30について、上述の如く1000〜1300℃に加熱した鋼片をAr1〜1200℃、累積圧下率30%以上で熱間圧延する。次に空冷し、或いは、Ar1点以上の温度から5℃/s以上の冷却速度で室温〜Ar1点の温度まで加速冷却し、さらに一部の鋼Noに関しては、Ac1点以下の温度で焼き戻し処理をしても良い。
なお、試験No.A1〜A7においては、硬質第二相を円相当径1〜30μmとし、塑性歪付与時における温度を100℃以下、塑性歪量を0.1〜0.8%とし、本発明で定義した製造方法の範囲内としている。
これに対して、試験No.B1〜B2では、硬質第二相の円相当径を本発明の範囲から逸脱させている。また、試験No.C1〜C7では、塑性歪付与時における温度を本発明の範囲から逸脱させている。また試験No.D1〜D7では、塑性歪量を本発明の範囲から逸脱させている。さらに試験No.E1〜E7では、塑性歪付与時における温度並びに塑性歪量を、本発明の範囲から逸脱させている。
ちなみに塑性歪は、圧延装置による圧延によって付与した。また表3に機械的性質(強度、伸び、靭性)を示す。
Figure 2007146220
靭性は、板厚中心部から圧延方向に平行にJIS4号衝撃試験片を採取し、シャルピー衝撃試験に供し、破面遷移温度(vTrs)で評価した。なお、それぞれ圧延前後の変化量ΔYP、TS、EL、vTrs(=圧延後のYP、TS、EL、vTrs−圧延前のYP、TS、EL、vTrs)を合わせて示す。
試験No.A1〜A7は、ΔvTrsが−10℃以下の大幅な靭性改善が認められた。これに対して試験No.B1、B2は、本発明の製造要件である塑性歪付与温度、歪量は満足しているが、脆性破壊の起点となる硬質第二相サイズが本発明要件を満足しておらず、硬質第二相の影響が小さいため、vTrsが−10℃以下の大幅な靭性改善は認められなかった。
一方、試験No.C1〜C7は本発明の製造要件のうち、塑性歪量の限定範囲は満足しているが、塑性歪付与温度の限定範囲が外れている。そのためΔvTrsは±10℃の範囲に入っており、塑性歪付与前後の靭性変化はほとんどなく、大幅な靭性改善は認められなかった。
また、試験No.D1〜D7は本発明の製造要件のうち、塑性歪付与温度の限定範囲は満足しているが、塑性歪量の限定範囲が外れている。そのため、試験No.C1、C2、C4、C6、C7は、塑性歪付与前後の靭性変化はほとんどなく、逆に試験No.C3、C5は、YPの上昇を伴い靭性は大幅に劣化していた。
さらに、試験No.E1〜E7は塑性歪付与温度、塑性歪量ともに本発明の限定範囲を満たしていないため、本発明例のような大幅な靭性改善は認められず、逆に靭性は劣化していた。
以上示したように、本発明の方法を適用することにより、Ni等の高価な合金元素の添加や生産性が低い制御圧延法による結晶粒微細化に頼ることなく、優れた靭性を有する厚鋼板を製造できることが確認された。
本発明で製造した厚鋼板は靭性に優れ、造船、建築、橋梁、海洋構造物、圧力容器、ラインパイプ、機械部品などあらゆる用途に用いることができる。
各温度での軽圧下圧延の塑性歪量と靭性変化量ΔvTrsとの関係を示す図である。 各塑性歪量での軽圧下圧延の温度と靭性変化量ΔvTrsとの関係を示す図である。

Claims (3)

  1. 質量%で、
    C :0.01〜0.20%、
    Si:0.01〜1.6%、
    Mn:0.2〜2.5%、
    P :0.030%以下、
    S :0.020%以下、
    Al:0.005〜0.10%、
    N :0.001〜0.008%
    を含有し、残部Feおよび不可避不純物からなり、熱間圧延又は熱処理終了後の冷却過程にある脆性破壊の発生起点となる円相当径1〜30μmの硬質第二相を有する厚鋼板を100℃以下の温度で0.1〜0.8%の軽塑性歪を付与することを特徴とする靭性に優れた厚鋼板の製造方法。
  2. 質量%で、
    Cu:0.1〜1.5%、
    Ni:0.05〜5.0%、
    Cr:0.01〜1.5%、
    Mo:0.01〜1.5%、
    W :0.01〜1.5%、
    Ti:0.001〜0.1%、
    Nb:0.003〜0.2%、
    Zr:0.003〜0.2%、
    V :0.003〜0.2%、
    B :0.0002〜0.005%
    の1種または2種以上を、さらに含有することを特徴とする請求項1に記載の靭性に優れた厚鋼板の製造方法。
  3. 質量%で、
    Ca:0.0005〜0.01%、
    Mg:0.0005〜0.01%、
    REM:0.0005〜0.01%
    の1種または2種以上を、さらに含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の靭性に優れた厚鋼板の製造方法。
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