JP7247079B2 - ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ - Google Patents
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Description
Cは、溶接金属の強度を向上させる効果がある。Cが0.03%未満では、十分な溶接金属の強度が得られない。一方、Cが0.10%を超えると、溶接金属中にCが過剰に歩留まり、溶接金属の強度が高くなり、低温靱性が低下する。したがって、鋼製外皮とフラックスの合計でCは0.03~0.10%とする。なお、Cは、鋼製外皮に含まれる成分の他、フラックスからの金属粉及び合金粉等から添加できる。
Siは、脱酸剤として作用し、溶接金属の低温靭性を向上させる効果がある。Siが0.2%未満では、その効果が得られず、溶接金属の低温靭性が低下する。一方、Siが0.7%を超えると、溶接時に生成するスラグ量が多くなり、スラグ巻込みが発生しやすくなる。また、Siが0.7%を超えると、溶接金属中にSiが過剰に歩留まり、かえって溶接金属の低温靱性が低下する。したがって、鋼製外皮とフラックスの合計でSiは0.2~0.7%とする。なお、Siは、鋼製外皮に含まれる成分の他、フラックスから金属Si、Fe-Si、Fe-Si-Mn等の合金粉末から添加できる。
Mnは、脱酸剤として作用するとともに、溶接金属中に歩留まって溶接金属の強度と低温靱性を向上させる効果がある。Mnが2.8%未満では、溶接金属中にMnが十分に歩留まらず、溶接金属の低温靭性が低下するとともに、十分な強度が得られない。一方、Mnが3.8%を超えると、Mnが溶接金属中に過剰に歩留まり、溶接金属の強度が高くなって低温靱性が低下する。したがって、鋼製外皮とフラックスの合計でMnは2.8~3.8%とする。なお、Mnは、鋼製外皮に含まれる成分の他、フラックスから金属Mn、Fe-Mn、Fe-Si-Mn等の合金粉末から添加できる。
Alは、脱酸力が非常に高く、SiやMnなどのほかの脱酸剤よりも早く酸素を取り込むため、溶接金属中の酸素量を低減し低温靭性を向上させる効果がある。Alが0.20%未満では、溶接金属が十分に脱酸されず、溶接金属の低温靭性が得られない。一方、Alが0.50%を超えると、溶接金属の強度が過剰に高くなる。したがって、鋼製外皮とフラックスの合計でAlは0.20~0.50%とする。なお、Alは鋼製外皮に含まれる成分の他、フラックスから金属Al、Fe-Al、Al-Mg等の合金粉末から添加できる。
Bは、微量の添加により溶接金属の組織を微細化し、溶接金属の低温靱性を向上させる効果がある。Bが0.002%未満では、その効果が十分に得られず、溶接金属の低温靭性が得られない。一方、Bが0.015%を超えると、高温割れが発生しやすくなる。したがって、鋼製外皮とフラックスの合計でBは0.002~0.015%とする。なお、Bは、鋼製外皮に含まれる成分の他、フラックスから金属B、Fe-B、Fe-Mn-B等の合金粉末から添加できる。
Mn/Alは、溶接作業性に影響する。Mn/Alが7未満では、全姿勢溶接においてスパッタ量が多くなる。一方、Mn/Alが17を超えると、立向上進溶接においてメタル垂れが発生しやすくなる。したがって、Mn/Alは7~17とする。
Ti酸化物は、スラグの主成分であり、溶接時の溶融スラグの融点や粘性を調整して耐メタル垂れ性、スラグ被包性、ビード外観を改善するなど良好な溶接作業性を与える効果がある。Ti酸化物のTiO2換算値の合計が5.0%未満では、溶融スラグの粘性が不足するため、立向上進溶接及び立向下進溶接において耐メタル性が不良になる。また、Ti酸化物のTiO2換算値の合計が5.0%未満では、スラグ生成量が少ないため、各姿勢溶接でスラグ剥離性やビード外観の不良など溶接作業性が悪くなる。一方、Ti酸化物のTiO2換算値の合計が8.0%を超えると、スラグ生成量が多くなりすぎ、各姿勢溶接で溶接部にスラグ巻込み等の溶接欠陥が発生しやすくなる。また、Ti酸化物のTiO2換算値の合計が8.0%を超えると、溶接金属中にTi酸化物が過剰に残存し、溶接金属の低温靱性が低下する。したがって、フラックス中のTi酸化物のTiO2換算値の合計は5.0~8.0%とする。なお、Ti酸化物は、フラックスからルチール、酸化チタン、チタンスラグ、イルミナイト等から添加できる。
Si酸化物は、溶接時に溶融スラグの粘性や融点を調整してスラグ被包性を改善する効果がある。Si酸化物のSiO2換算値の合計が0.2%未満では、この効果が十分に得られず、各姿勢溶接でスラグ被包性が悪くなってビード形状が不良になる。一方、Si酸化物のSiO2換算値の合計が0.7%を超えると、溶融スラグの凝固が遅くなり、立向上進溶接、立向下進溶接において、メタル垂れが発生しやすくなる。また、Si酸化物のSiO2換算値の合計が0.7%を超えると、溶接金属中にSi酸化物が過剰に残存するため、溶融スラグの塩基度が低下して溶接金属中の酸素量が増加し、溶接金属の低温靭性が低下する。したがって、フラックス中のSi酸化物のSiO2換算値の合計は0.2~0.7%とする。なお、Si酸化物は、フラックスから珪砂、カリ長石、ジルコンサンド、珪酸ソーダ等から添加できる。
Zr酸化物は、溶接時に溶融スラグの粘性や融点を調整し、特に立向上進溶接での耐メタル垂れ性及びビード形状を改善する効果がある。Zr酸化物のZrO2換算値が0.2%未満では、この効果が十分に得られず、立向上進溶接でメタル垂れが発生しやすくなり、ビード形状が不良になる。一方、Zr酸化物のZrO2換算値が0.7%を超えると、各姿勢溶接でスラグ剥離性が不良になる。したがって、フラックス中のZr酸化物のZrO2換算値の合計は0.2~0.7%とする。なお、Zr酸化物は、フラックスからジルコンサンド、酸化ジルコニウム等から添加できるとともに、Ti酸化物に微量含有される。
Al酸化物は、溶接時に溶融スラグの融点や粘性を調整して、特に立向上進溶接での耐メタル垂れ性及びビード形状を改善する効果がある。Al酸化物のAl2O3換算値の合計が0.1%未満では、その効果が十分に得られず、立向上進溶接でメタル垂れが発生しやすくなり、ビード形状が不良になる。一方、Al酸化物のAl2O3換算値の合計が0.5%を超えると、Al酸化物として溶接金属中に残存し、溶接金属の低温靭性が低下する。したがって、フラックス中での合計でのAl酸化物のAl2O3換算値の合計は0.1~0.5%とする。なお、Al酸化物はフラックスからアルミナ、カリ長石等から添加できる。
金属弗化物は、アークを強くするとともに、特に立向上進溶接及び立向下進溶接で耐メタル垂れ性及びビード形状を改善する効果がある。金属弗化物のF換算値の合計が0.02%未満では、この効果が十分に得られず、アークが不安定になり、立向上進溶接及び立向下進溶接でメタル垂れが発生しやすく、ビード形状が不良になる。一方、金属弗化物のF換算値の合計が0.15%を超えると、アークが不安定となり、立向上進溶接でメタル垂れが発生しやすく、ビード形状が不良になる。したがって、フラックス中の金属弗化物のF換算値の合計は0.02~0.15%とする。なお、金属弗化物はフラックスからCaF2、NaF、LiF、MgF2、K2SiF6、Na3AlF6、AlF3等から添加でき、F換算値はこれらに含有されるF量の合計である。
Mgは、強脱酸剤として作用して溶接金属中の酸素を低減し、溶接金属の低温靱性を向上させる効果がある。Mgが0.1%未満では、その効果が十分に得られず、脱酸不足となって溶接金属の低温靱性が低下する。一方、Mgが0.8%を超えると、溶接時にアーク中で激しく酸素と反応してアークが不安定になり、スパッタ発生量が多くなる。したがって、フラックス中のMgは0.1~0.8%とする。なお、Mgは、フラックスから金属Mg、Al-Mg等の合金粉末から添加できる。
Na酸化物、Na弗化物、K酸化物及びK弗化物はアーク安定剤として作用し、アークの安定性を良好する効果がある。Na酸化物、Na弗化物、K酸化物及びK弗化物の1種または2種以上のNa換算値及びK換算値の合計が0.03%未満であると、アークが不安定となってスパッタ発生量が多くなる。一方、Na酸化物、Na弗化物、K酸化物及びK弗化物の1種または2種以上のNa換算値及びK換算値の合計が0.20%を超えると、アーク長が長くなって不安定になり、スパッタ及びヒュームの発生量が多くなる。また、Na酸化物、Na弗化物、K酸化物及びK弗化物の1種または2種以上のNa換算値及びK換算値の合計が0.20%を超えると、立向上進溶接及び立向下進溶接でメタル垂れが発生しやすくなり、ビード形状が不良になる。したがって、フラックス中のフラックス中のNa酸化物、Na弗化物、K酸化物及びK弗化物の1種または2種以上のNa換算値及びK換算値の合計は0.03~0.20%とする。なお、Na酸化物、Na弗化物、K酸化物、K弗化物は、珪酸ソーダ及び珪酸カリからなる水ガラスの固質成分、NaF、Na2Ti3O7、K2SiF6、Na2SiF6等から添加でき、Na換算値及びK換算値はこれらに含有されるNa及びK量の合計である。
Tiは、溶接金属の組織を微細化して低温靭性を向上させる効果がある。Tiが0.05%未満では、溶接金属の低温靭性をより向上する効果が得られない。一方、Tiが0.40%を超えると、靭性を阻害する上部ベイナイト組織を生成し、溶接金属の低温靭性が低下する。したがって、鋼製外皮とフラックスの合計でTiは0.05~0.40%とする。なお、Tiは、鋼製外皮に含まれる成分の他、フラックスから金属Ti、Fe-Ti等の合金粉末から添加できる。
Claims (2)
- 鋼製外皮にフラックスを充填してなるガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤにおいて、
ワイヤ全質量に対する質量%で、鋼製外皮とフラックスとの合計で、
C:0.03~0.10%、
Si:0.2~0.7%、
Mn:2.8~3.8%、
Al:0.20~0.50%、
B:0.002~0.015%を含有し、
かつ、Mn/Al:7~17であり、
さらに、ワイヤ全質量に対する質量%で、フラックス中に、
Ti酸化物のTiO2換算値の合計:5.0~8.0%、
Si酸化物のSiO2換算値の合計:0.2~0.7%、
Zr酸化物のZrO2換算値の合計:0.2~0.7%、
Al酸化物のAl2O3換算値の合計:0.1~0.5%、
金属弗化物のF換算値の合計:0.02~0.15%
Mg:0.1~0.8%、
Na酸化物、Na弗化物、K酸化物及びK弗化物の1種または2種類以上のNa換算値及びK換算値の合計:0.03~0.20%を含有し、
残部が鋼製外皮のFe、フラックス中の鉄粉、鉄合金粉のFe分及び不可避不純物からなることを特徴とするガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。 - ワイヤ全質量に対する質量%で、鋼製外皮とフラックスの合計で、
Ti:0.05~0.40%を更に含有することを特徴とする請求項1に記載のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。
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