JP6951304B2 - 炭酸ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ - Google Patents

炭酸ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ Download PDF

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本発明は、鋼構造物等に使用される鋼を溶接するにあたって全姿勢溶接での溶接作業性が良好であり、良好な強度及びかつ安定した低温靭性に優れた溶接金属が得られる炭酸ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤに関する。
フラックス入りワイヤを用いたガスシールドアーク溶接は、高能率で溶接作業性に優れることから、造船、橋梁、海洋構造物、鉄骨等の各種溶接構造物を建造する上で広く用いられている。
特にルチール系フラックス入りワイヤは、全姿勢溶接での溶接作業性が非常に優れているので、造船、鉄骨及び海洋構造物等の分野で広く使用されている。しかし、TiO2を主体とした金属酸化物を多く含有するため、低温環境下で使用される鋼構造物の溶接をこのルチール系フラックス入りワイヤにより行った場合、必要な溶接金属の低温靭性が劣るという問題がある。
低温環境下で使用される鋼構造物の溶接に用いられるルチール系フラックス入りワイヤについては、これまで様々な開発が行われている。例えば、特許文献1には、フラックス入りワイヤ中のTiO2、Mn、Si、B及びAlの含有量を規定することにより、全姿勢での溶接作業性に優れ、低温靭性の良好な溶接金属が得られるフラックス入りワイヤの開示がある。
また、特許文献2には、溶接金属のNb、V及びPの量を所定の範囲にすることにより、低温度域まで良好な低温靭性が得られるフラックス入りワイヤの開示がある。
しかし、特許文献1及び特許文献2に記載のフラックス入りワイヤを用いて、全姿勢溶接をした場合、アークが不安定で、スラグ被包性及び耐メタル垂れ性が悪く、十分な溶接作業性が得られないという問題があった。
このため、全姿勢溶接での溶接作業性を改善するために溶融スラグの成分を規定したフラックス入りワイヤが特許文献3及び特許文献4に開示されている。
しかし、特許文献3及び特許文献4に記載のフラックス入りワイヤを用いて、多層盛溶接をした場合、溶接金属の低温靭性にバラツキが生じる場合があった。すなわち、図1に多層盛溶接金属の衝撃試験片1のノッチ位置A、Bを示すが、多積層パスの重なり部を含むノッチ位置Aの場合、安定した低温靭性が得られるが、ノッチ位置が多積層パスの中心部に位置するノッチ位置Bのように積層による再熱が少ない箇所の場合、低温靭性にバラツキが生じるため安定した低温靭性が得られないという問題があった。
特開2002−361486号公報 特開平8−10982号公報 特開2017−185521号公報 特開2016−137508号公報
そこで本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、鋼構造物等に使用される鋼を溶接するにあたって全姿勢溶接での溶接作業性が良好であり、良好な強度及び安定した低温靭性に優れた溶接金属が得られる炭酸ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤを提供することを目的とする
本発明者らは、ルチール系の炭酸ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤについて、全姿勢溶接でアークが安定して、スパッタ発生量及びヒューム発生量が少なく、スラグ被包性及びビード形状が良好で、立向上進溶接でメタル垂れが生じないなどの溶接作業性が良好であり、良好な強度及び−70℃における安定した低温靭性の溶接金属を得るべく、種々検討を行った。
その結果、安定した低温靭性を確保するためには、ワイヤ中のNb、V、P及びSの含有量を極力減らし、合金成分のSi、Mn、Ni、弗素化合物、Mg、Bのそれぞれの含有量の適正化が有効であることを見出した。
また、溶接金属の強度は、ワイヤ中のC、Si、Mnの含有量を適正化することで、溶接作業性についてはTi酸化物の合計、Na化合物及びK化合物のNa2O換算値及びK2O換算値の合計、弗素化合物のF換算値を適正化することでアークを安定化させてスパッタ発生量を低減させて、Si、Ti酸化物の合計を適正化することでビード形状を良好にするとともに、Si酸化物を適量とすることでスラグ被包性を良好にすることを見出した。
さらに、Zr酸化物及びAl酸化物の各含有量を適正化することで立向上進溶接においてもメタル垂れが生じない良好なビード形状が得られることを見出した。
すなわち本発明の要旨は、炭酸ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤにおいて、ワイヤ全質量に対する質量%で、鋼製外皮とフラックスの合計で、C:0.04〜0.10%、Si:0.1〜1.0%、Mn:1.0〜3.0%、Ni:0.5〜4.0%を含有し、Nb:0.005%以下、V:0.005%以下、P:0.015%以下、S:0.010%以下、さらに、ワイヤ全質量に対する質量%で、フラックス中に、Ti酸化物のTiO2換算値の合計:3〜9%、Si酸化物のSiO2換算値の合計:0.05〜1.0%、Zr酸化物のZrO2換算値の合計:0.1〜0.8%、Al酸化物のAl23換算値の合計:0.05〜1.0%、Na化合物及びK化合物のNa2O換算値及びK2O換算値の1種または2種の合計:0.05〜0.2%、弗素化合物のF換算値の合計:0.01〜0.15%、Mg:0.1〜0.8%、B:0.002〜0.015%を含有し、残部が鋼製外皮のFe分、フラックス中の鉄粉、鉄合金粉のFe分及び不可避不純物からなることを特徴とする炭酸ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤにある。
本発明の炭酸ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤによれば、全姿勢溶接でアークが安定してスパッタ発生量が少なく、スラグ被包性及びビード形状が良好で、立向上進溶接でメタル垂れが生じないなどの溶接作業性が良好であり、良好な強度及び−60℃における安定した低温靭性に優れるなど品質の良好な溶接金属が得られる。
衝撃試験片のノッチ位置を示す図である。
以下、本発明のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤの成分と、その組成の限定理由とについて説明する。なお、各成分の含有量は、フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%で表すこととし、その質量%を表すときには単に%と記載して表すこととする。
[鋼製外皮とフラックスの合計でC:0.04〜0.10%]
Cは、溶接金属の焼入れ性を高めて強度を向上させる効果がある。Cが0.04%未満であると、焼入れ性が不足して溶接金属の強度が低下する。一方、Cが0.10%を超えると、溶接金属の強度が高くなりすぎて靭性が低下する。したがって、鋼製外皮とフラックスの合計でCは0.04〜0.10%とする。なお、Cは、鋼製外皮に含まれる成分の他、フラックスからの金属粉及び合金粉等から添加できる。
[鋼製外皮とフラックスの合計でSi:0.1〜1.0%]
Siは、脱酸剤であり溶接金属の酸素量を低減して溶接金属の強度及び靭性を向上させるとともに、溶接時に一部が溶接スラグとなることによりビード形状を良好にする効果がある。Siが0.1%未満であると、溶接金属の強度及び靭性が低下する。またSiが0.1%未満であると、ビード形状を良好にする効果が十分に得られずビード形状が不良となる。一方、Siが1.0%を超えると、Siが溶接金属中に過剰に歩留り、靭性が低下する。したがって、鋼製外皮とフラックスの合計でSiは0.1〜1.0%とする。なお、Siは、鋼製外皮に含まれる成分の他、フラックスからの金属Si、Fe−Si、Fe−Si−Mn等の合金粉末から添加できる。
[鋼製外皮とフラックスの合計でMn:1.0〜3.0%]
Mnは、Siと同様に脱酸剤であり溶接金属の酸素量を低減して強度及び靭性を向上させる効果がある。Mnが1.0%未満であると、溶接金属の強度及び靭性が低下する。一方、Mnが3.0%を超えると、溶接金属の強度が高くなりすぎて靭性が低下する。したがって、鋼製外皮とフラックスの合計でMnは1.0〜3.0%とする。なお、Mnは、鋼製外皮に含まれる成分の他、フラックスからの金属Mn、Fe−Mn、Fe−Si−Mn等の合金粉末から添加できる。
[鋼製外皮とフラックスの合計でNi:0.5〜4.0%]
Niは特にノッチ位置Bの靭性を安定させる効果がある。Niが0.5%未満であると、十分な効果が得られないため、ノッチ位置Bでの靭性が低下する。一方、Niが4.0%を超えると、溶接金属の強度が過剰となり、高温割れが発生しやすくなる。したがって、鋼製外皮とフラックスの合計でNiは0.5〜4.0%とする。なお、Niは、鋼製外皮に含まれる成分の他、フラックスからの金属Ni、Fe−Ni等の合金粉末から添加できる。
[鋼製外皮とフラックスの合計でNb:0.005%以下、V:0.005%以下]
Nb及びVは、溶接金属の組織を細かくして靭性を向上させる効果があるが、Nbが0.005%を超え、又はVが0.005%を超えると、溶接金属の強度が高くなり、特にノッチ位置Aでの靭性が低下する。したがって、鋼製外皮とフラックスの合計でNbは0.005%以下、Vは0.005%以下とする。
[鋼製外皮とフラックスの合計でP:0.015%以下、S:0.010%以下]
P及びSは不可避不純物であり、低融点化合物を生成する。Pが0.015%を超え、又はSが0.010%を超えると、溶接金属の靭性が低下し、高温割れが発生しやすくなる。したがって、Pは0.015%以下、Sは0.010%以下とする。
[フラックス中のTi酸化物のTiO2換算値の合計:3〜9%]
Ti酸化物は、アークを安定化させてビード形状を良好にする効果がある。またTi酸化物は、立向上進溶接では、溶融スラグの粘性や融点を調整してメタル垂れを防ぐ効果がある。Ti酸化物のTiO2換算値の合計が3%未満であると、アークが不安定となりスパッタ発生量が多くなる。また、立向上進溶接でメタル垂れが発生してビード形状が不良となる。一方、Ti酸化物のTiO2換算値の合計が9%を超えると、溶接金属中にTi酸化物が過剰に残存するため、ノッチ位置Bの靭性が低下し、またスラグ巻込みが発生しやすくなる。したがって、フラックス中のTi酸化物のTiO2換算値の合計は3〜9%とする。なお、Ti酸化物は、フラックスからのルチール、酸化チタン、チタンスラグ、イルメナイト等から添加できる。
[フラックス中のSi酸化物のSiO2換算値の合計:0.05〜1.0%]
Si酸化物は、溶融スラグの粘性や融点を調整してスラグ被包性を向上させる効果がある。Si酸化物のSiO2換算値の合計が0.05%未満であると、スラグ被包性が低下してビード形状が不良となる。一方、Si酸化物のSiO2換算値の合計が1.0%を超えると、溶融スラグの塩基度が低下することにより、溶接金属中の酸素量が増加して靭性が低下する。したがって、フラックス中のSi酸化物のSiO2換算値の合計は0.05〜1.0%とする。なお、Si酸化物は、フラックスからの珪砂、ジルコンサンド、珪酸ソーダ等から添加できる。
[フラックス中のZr酸化物のZrO2換算値の合計:0.1〜0.8%]
Zr酸化物は、溶融スラグの粘性や融点を調整し、特に立向上進溶接のメタル垂れを防ぐ効果がある。フラックス中のZr酸化物のZrO2換算値の合計が0.1%未満であると、立向上進溶接でメタル垂れが発生して、ビード形状が不良となる。一方、フラックス中のZr酸化物のZrO2換算値の合計が0.8%を超えると、スパッタ発生量が多くなり、スラグ被包性が低下してビード形状が不良となる。したがって、フラックス中のZr酸化物のZrO2換算値の合計は0.1〜0.8%とする。なお、Zr酸化物は、フラックスからのジルコンサンド、酸化ジルコニウム等から添加できる。
[フラックス中のAl酸化物のAl23換算値の合計:0.05〜1.0%]
Al酸化物は、Zr酸化物と同様溶融スラグの粘性を調整し、特に立向上進溶接のメタル垂れを防ぐ効果がある。Al酸化物のAl23換算値の合計が0.05%未満であると、立向上進溶接でメタル垂れが発生してビード形状が不良となる。一方、Al酸化物のAl23換算値の合計が1.0%を超えると、溶接金属中にAl酸化物が残存して特にノッチ位置Bの靭性が低下する。したがって、フラックス中のAl酸化物のAl23換算値の合計は0.05〜1.0%とする。なお、Al酸化物は、フラックスからのアルミナ等から添加できる。
[フラックス中のNa化合物及びK化合物のNa2O換算値及びK2O換算値の1種または2種の合計:0.05〜0.2%]
Na化合物及びK化合物は、アークを安定にしてスパッタ発生量を抑制させる効果がある。フラックス中にNa化合物及びK化合物のNa2O換算値及びK2O換算値の1種または2種の合計が0.05%未満であると、アークが不安定となりスパッタ発生量が多くなる。一方、フラックス中にNa化合物及びK化合物のNa2O換算値及びK2O換算値の1種または2種の合計が0.2%を超えると、ヒューム発生量が多くなる。したがって、フラックス中のNa化合物及びK化合物のNa2O換算値及びK2O換算値の1種または2種の合計は0.05〜0.2%とする。なお、Na化合物及びK化合物は、珪酸ソーダ及び珪酸カリウムからなる水ガラスの固質成分、フラックスからの弗化ソーダ、氷晶石、弗化アルミ、珪弗化カリウム及び弗化ジルコンカリ等から添加できる。
[フラックス中の弗素化合物のF換算値の合計:0.01〜0.15%]
弗素化合物は、アークを安定にしてスパッタ発生量を抑制させる効果がある。また弗素化合物は、溶融スラグの塩基度を高くして特にノッチ位置Bの靭性を向上させる効果がある。弗素化合物のF換算値の合計が0.01%未満であると、アークが不安定となりスパッタ発生量が多くなる。また、溶融スラグの塩基度が低くなり溶接金属の酸素量が多くなり特にノッチ位置Bの靭性が低下する。一方、弗素化合物のF換算値の合計が0.15%を超えると、スパッタ発生量が多く、立向上進溶接でメタル垂れが発生してビード形状が不良となる。したがって、フラックス中の弗素化合物のF換算値の合計は0.01〜0.15%とする。なお、弗素化合物は、フラックスからの蛍石、弗化ソーダ、氷晶石、弗化アルミ、珪弗化カリウム及び弗化ジルコンカリ等から添加できる。
[フラックス中のMg:0.1〜0.8%]
Mgは、脱酸剤として溶接金属中の酸素量を低減させて特にノッチ位置Bの靭性を向上させる効果がある。フラックス中のMgが0.1%未満であると、溶接金属の酸素量が増加して特にノッチ位置Bの靭性が低下する。一方、フラックス中のMgが0.8%を超えると、溶接金属の組織が硬くなりすぎてノッチ位置Aの靭性が低下し、またアーク中で酸素と激しく反応するためスパッタ発生量が多くなる。したがって、フラックス中のMgは0.1〜0.8%とする。なお、Mgは、フラックスからの金属Mg、Al−Mg等の合金粉末から添加できる。
[フラックス中のB:0.002〜0.015%]
Bは、溶接金属の組織を細かくして特にノッチ位置Bの靭性を向上させる効果がある。フラックス中のBが0.002%未満であると、特にノッチ位置Bの靭性が低下する。一方、フラックス中のBが0.015%を超えると、溶接金属が硬くなりすぎてノッチ位置Aの靭性が低下する。したがって、フラックス中のBは0.002〜0.015%とする。なお、Bは金属B、Fe−B、Fe−Mn−B等の合金粉末から添加できる。
本発明のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤの残部は、鋼製外皮のFe、成分調整のためフラックス中に添加する鉄粉、Fe−Mn、Fe−Si合金等の鉄合金粉のFe分及び不可避不純物である。
また、本発明のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤは、フラックス充填後の伸線加工性が良好な軟鋼または合金の鋼製外皮をパイプ状に成形し、その内部にフラックスを充填した後、ダイス伸線やローラー圧延加工により所定のワイヤ径(1.0mm〜1.6mm)に縮径して製造されるものである。
フラックス入りワイヤの断面形態は、成形した鋼製外皮の合わせ目を溶接して得られる鋼製外皮に継目の無い(以下、シームレスタイプという。)ワイヤと、鋼製外皮の合わせ目の溶接を行わないままとした鋼製外皮に継目を有するワイヤとに大別できる。本発明においては、何れの断面構造のワイヤを採用することができるが、鋼製外皮に継目が無いワイヤは、ワイヤ中の全水素量を低減することを目的とした熱処理が可能であり、また製造後のフラックスの吸湿が無いため、溶接金属の拡散性水素量を低減し、耐低温割れ性の向上を図ることができるので、より好ましい。
また、フラックス充填率は特に制限はしないが、生産性の観点から、ワイヤ全質量に対して8〜20%とするのが好ましい。
以下、本発明の効果を実施例により具体的に説明する。
鋼成外皮にJIS G3141に規定されるSPCCの鋼製外皮を用いて表1〜2に示す各種成分組成でワイヤ径1.2mmまで縮径したシームレスタイプのフラックス入りワイヤを試作した。
Figure 0006951304
Figure 0006951304
試作したワイヤは、JIS Z G3126 SLA365に規定される鋼板を用いて立向上進すみ肉溶接による溶接作業性の評価、溶着金属試験として機械特性評価を実施した。これらの溶接条件を表3に示す。
Figure 0006951304
立向上進溶接による溶接作業性の評価は、半自動MAG溶接をしたときのアーク安定性、スパッタ発生状態、ヒューム発生状態、溶融メタル垂れ性の有無、ビード形状、スラグ被包性、高温割れの有無について調査した。
溶着金属試験は、JIZ Z 3111に準じて溶接を行い、X線透過試験により溶接欠陥の有無を調査した後、溶着金属の板厚方向中央部から引張試験片(A0号)及び衝撃試験片(Vノッチ試験片)を採取した。
靭性の評価は、図1に示す衝撃試験片のノッチ位置A及びBともに試験温度−70℃におけるシャルピー衝撃試験により行い、各々繰返し3本の平均値が60J以上を良好とした。強度の評価は、引張強さが550〜700MPaのものを良好とした。これらの結果を表4にまとめて示す。表1及び表4のワイヤ記号W1〜W20は本発明例、表2及び表4のワイヤ記号W21〜W39は比較例である。
Figure 0006951304
本発明例であるワイヤ記号W1〜W20は、C、Si、Mn、Mn、Ni、Nb、V、P、S、Ti酸化物のTiO2換算値の合計、Si酸化物のSiO2換算値の合計、Zr酸化物のZrO2換算値の合計、Al酸化物のAl23換算値の合計、Na化合物及びK化合物のNa2O換算値及びK2O換算値の1種または2種の合計、弗素化合物のF換算値の合計、Mg、Bの各含有量が適正であるので、全姿勢溶接でアークが安定してスパッタ発生量が少なく、スラグ被包性及びビード形状が良好で、立向上進溶接でメタル垂れが生じないなどの溶接作業性が良好であり、引張強さが良好で、衝撃試験片のノッチ位置A及びBとも安定した吸収エネルギーが得られ、溶接欠陥のない優れた溶接金属が得られ、極めて満足な結果であった。
比較例中ワイヤ記号W21は、Cが少ないので、溶接金属の引張強さが低かった。また、Pが多いので、溶接金属の吸収エネルギーが低値で、クレータ割れも生じた。
ワイヤ記号W22は、Cが多いので、溶接金属の引張強さが高く、吸収エネルギーも低値であった。また、Al酸化物のAl23換算値の合計が少ないので、メタル垂れが生じた。
ワイヤ記号W23は、Siが少ないので、ビード形状が不良で、溶接金属の引張強さが低く、吸収エネルギーも低値であった。また、Na化合物及びK化合物のNa2O換算値とK2O換算値の1種または2種の合計が少ないので、アークが不安定で、スパッタ発生量も多かった。
ワイヤ記号W24は、Siが多いので、溶接金属の吸収エネルギーが低値であった。また、Ti酸化物のTiO2換算値の合計が少ないので、アークが不安定で、スパッタ発生量が多く、メタル垂れも生じた。
ワイヤ記号W25は、Mnが少ないので、溶接金属の引張強さが低く、吸収エネルギーが低値であった。また、Si酸化物のSiO2換算値の合計が少ないので、スラグ被包性及びビード形状が不良であった。
ワイヤ記号W26は、Mnが多いので、溶接金属の引張強さが高く、吸収エネルギーが低値であった。また、Zr酸化物のZrO2換算値の合計が多いので、スパッタ発生量が多く、スラグ被包性及びビード形状も不良であった。
ワイヤ記号W27は、Niが少ないので、ノッチ位置Bの吸収エネルギーが低値であった。また、Zr酸化物のZrO2の合計が少ないので、メタル垂れが生じた。
ワイヤ記号W28は、Niが多いので、溶接金属の引張強さが高く、クレータ割れも生じた。また、Na化合物及びK化合物のNa2O換算値とK2O換算値の1種または2種の合計が多いので、ヒューム発生量が多かった。
ワイヤ記号W29は、Nbが多いので、溶接金属の引張強さが高く、ノッチ位置Aの吸収エネルギーが低値であった。また、弗素化合物のF換算値の合計が多いので、スパッタ発生量が多く、メタル垂れも生じた。
ワイヤ記号W30は、Vが多いので、溶接金属の引張強さが高く、ノッチ位置Aの吸収エネルギーが低値であった。
ワイヤ記号W31は、Sが多いので、溶接金属の吸収エネルギーが低値で、クレータ割れも生じた。また、Si酸化物のSiO2換算値の合計が少ないので、スラグ被包性及びビード形状が不良であった。
ワイヤ記号W32は、Ti酸化物のTiO2換算値の合計が多いので、ノッチ位置Bの吸収エネルギーが低値で、スラグ巻込みが生じた。
ワイヤ記号W33は、Si酸化物のSiO2換算値の合計が多いので、溶接金属の吸収エネルギーが低値であった。
ワイヤ記号W34は、Al酸化物のAl23換算値の合計が多いので、ノッチ位置Bの吸収エネルギーが低値であった。
ワイヤ記号W35は、Bが多いので、ノッチ位置Aの吸収エネルギーが低値であった。
ワイヤ記号W36は、弗素化合物のF換算値の合計が少ないので、アークが不安定で、スパッタ発生量も多く、ノッチ位置Bの吸収エネルギーが低値であった。
ワイヤ記号W37は、Mgが少ないので、ノッチ位置Bの吸収エネルギーが低値であった。
ワイヤ記号W38は、Mgが多いので、ヒューム発生量及びスパッタ発生量が多く、ノッチ位置Aの吸収エネルギーが低値であった。
ワイヤ記号W39は、Bが少ないので、ノッチ位置Bの吸収エネルギーが低値であった。
1 衝撃試験片
A、B ノッチ位置

Claims (1)

  1. 鋼製外皮にフラックスを充填してなる炭酸ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤにおいて、
    ワイヤ全質量に対する質量%で、鋼製外皮とフラックスの合計で、
    C:0.04〜0.10%、
    Si:0.1〜1.0%、
    Mn:1.0〜3.0%、
    Ni:0.5〜4.0%を含有し、
    Nb:0.005%以下、
    V:0.005%以下、
    P:0.015%以下、
    S:0.010%以下であり、
    さらに、ワイヤ全質量に対する質量%で、フラックス中に、
    Ti酸化物のTiO2換算値の合計:3〜9%、
    Si酸化物のSiO2換算値の合計:0.05〜1.0%、
    Zr酸化物のZrO2換算値の合計:0.1〜0.8%、
    Al酸化物のAl23換算値の合計:0.05〜1.0%、
    Na化合物及びK化合物のNa2O換算値及びK2O換算値の1種または2種の合計:0.05〜0.2%、
    弗素化合物のF換算値の合計:0.01〜0.15%、
    Mg:0.1〜0.8%、
    B:0.002〜0.015%を含有し、
    残部が鋼製外皮のFe分、フラックス中の鉄粉、鉄合金粉のFe分及び不可避不純物からなることを特徴とする炭酸ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。
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