JP2020022990A - 炭酸ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ - Google Patents
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Cは、溶接金属の焼入れ性を高めて強度を向上させる効果がある。Cが0.04%未満であると、焼入れ性が不足して溶接金属の強度が低下する。一方、Cが0.10%を超えると、溶接金属の強度が高くなりすぎて靭性が低下する。したがって、鋼製外皮とフラックスの合計でCは0.04〜0.10%とする。なお、Cは、鋼製外皮に含まれる成分の他、フラックスからの金属粉及び合金粉等から添加できる。
Siは、脱酸剤であり溶接金属の酸素量を低減して溶接金属の強度及び靭性を向上させるとともに、溶接時に一部が溶接スラグとなることによりビード形状を良好にする効果がある。Siが0.1%未満であると、溶接金属の強度及び靭性が低下する。またSiが0.1%未満であると、ビード形状を良好にする効果が十分に得られずビード形状が不良となる。一方、Siが1.0%を超えると、Siが溶接金属中に過剰に歩留り、靭性が低下する。したがって、鋼製外皮とフラックスの合計でSiは0.1〜1.0%とする。なお、Siは、鋼製外皮に含まれる成分の他、フラックスからの金属Si、Fe−Si、Fe−Si−Mn等の合金粉末から添加できる。
Mnは、Siと同様に脱酸剤であり溶接金属の酸素量を低減して強度及び靭性を向上させる効果がある。Mnが1.0%未満であると、溶接金属の強度及び靭性が低下する。一方、Mnが3.0%を超えると、溶接金属の強度が高くなりすぎて靭性が低下する。したがって、鋼製外皮とフラックスの合計でMnは1.0〜3.0%とする。なお、Mnは、鋼製外皮に含まれる成分の他、フラックスからの金属Mn、Fe−Mn、Fe−Si−Mn等の合金粉末から添加できる。
Niは特にノッチ位置Bの靭性を安定させる効果がある。Niが0.5%未満であると、十分な効果が得られないため、ノッチ位置Bでの靭性が低下する。一方、Niが4.0%を超えると、溶接金属の強度が過剰となり、高温割れが発生しやすくなる。したがって、鋼製外皮とフラックスの合計でNiは0.5〜4.0%とする。なお、Niは、鋼製外皮に含まれる成分の他、フラックスからの金属Ni、Fe−Ni等の合金粉末から添加できる。
Nb及びVは、溶接金属の組織を細かくして靭性を向上させる効果があるが、Nbが0.005%を超え、又はVが0.005%を超えると、溶接金属の強度が高くなり、特にノッチ位置Aでの靭性が低下する。したがって、鋼製外皮とフラックスの合計でNbは0.005%以下、Vは0.005%以下とする。
P及びSは不可避不純物であり、低融点化合物を生成する。Pが0.015%を超え、又はSが0.010%を超えると、溶接金属の靭性が低下し、高温割れが発生しやすくなる。したがって、Pは0.015%以下、Sは0.010%以下とする。
Ti酸化物は、アークを安定化させてビード形状を良好にする効果がある。またTi酸化物は、立向上進溶接では、溶融スラグの粘性や融点を調整してメタル垂れを防ぐ効果がある。Ti酸化物のTiO2換算値の合計が3%未満であると、アークが不安定となりスパッタ発生量が多くなる。また、立向上進溶接でメタル垂れが発生してビード形状が不良となる。一方、Ti酸化物のTiO2換算値の合計が9%を超えると、溶接金属中にTi酸化物が過剰に残存するため、ノッチ位置Bの靭性が低下し、またスラグ巻込みが発生しやすくなる。したがって、フラックス中のTi酸化物のTiO2換算値の合計は3〜9%とする。なお、Ti酸化物は、フラックスからのルチール、酸化チタン、チタンスラグ、イルメナイト等から添加できる。
Si酸化物は、溶融スラグの粘性や融点を調整してスラグ被包性を向上させる効果がある。Si酸化物のSiO2換算値の合計が0.05%未満であると、スラグ被包性が低下してビード形状が不良となる。一方、Si酸化物のSiO2換算値の合計が1.0%を超えると、溶融スラグの塩基度が低下することにより、溶接金属中の酸素量が増加して靭性が低下する。したがって、フラックス中のSi酸化物のSiO2換算値の合計は0.05〜1.0%とする。なお、Si酸化物は、フラックスからの珪砂、ジルコンサンド、珪酸ソーダ等から添加できる。
Zr酸化物は、溶融スラグの粘性や融点を調整し、特に立向上進溶接のメタル垂れを防ぐ効果がある。フラックス中のZr酸化物のZrO2換算値の合計が0.1%未満であると、立向上進溶接でメタル垂れが発生して、ビード形状が不良となる。一方、フラックス中のZr酸化物のZrO2換算値の合計が0.8%を超えると、スパッタ発生量が多くなり、スラグ被包性が低下してビード形状が不良となる。したがって、フラックス中のZr酸化物のZrO2換算値の合計は0.1〜0.8%とする。なお、Zr酸化物は、フラックスからのジルコンサンド、酸化ジルコニウム等から添加できる。
Al酸化物は、Zr酸化物と同様溶融スラグの粘性を調整し、特に立向上進溶接のメタル垂れを防ぐ効果がある。Al酸化物のAl2O3換算値の合計が0.05%未満であると、立向上進溶接でメタル垂れが発生してビード形状が不良となる。一方、Al酸化物のAl2O3換算値の合計が1.0%を超えると、溶接金属中にAl酸化物が残存して特にノッチ位置Bの靭性が低下する。したがって、フラックス中のAl酸化物のAl2O3換算値の合計は0.05〜1.0%とする。なお、Al酸化物は、フラックスからのアルミナ等から添加できる。
Na化合物及びK化合物は、アークを安定にしてスパッタ発生量を抑制させる効果がある。フラックス中にNa化合物及びK化合物のNa2O換算値及びK2O換算値の1種または2種の合計が0.05%未満であると、アークが不安定となりスパッタ発生量が多くなる。一方、フラックス中にNa化合物及びK化合物のNa2O換算値及びK2O換算値の1種または2種の合計が0.2%を超えると、ヒューム発生量が多くなる。したがって、フラックス中のNa化合物及びK化合物のNa2O換算値及びK2O換算値の1種または2種の合計は0.05〜0.2%とする。なお、Na化合物及びK化合物は、珪酸ソーダ及び珪酸カリウムからなる水ガラスの固質成分、フラックスからの弗化ソーダ、氷晶石、弗化アルミ、珪弗化カリウム及び弗化ジルコンカリ等から添加できる。
弗素化合物は、アークを安定にしてスパッタ発生量を抑制させる効果がある。また弗素化合物は、溶融スラグの塩基度を高くして特にノッチ位置Bの靭性を向上させる効果がある。弗素化合物のF換算値の合計が0.01%未満であると、アークが不安定となりスパッタ発生量が多くなる。また、溶融スラグの塩基度が低くなり溶接金属の酸素量が多くなり特にノッチ位置Bの靭性が低下する。一方、弗素化合物のF換算値の合計が0.15%を超えると、スパッタ発生量が多く、立向上進溶接でメタル垂れが発生してビード形状が不良となる。したがって、フラックス中の弗素化合物のF換算値の合計は0.01〜0.15%とする。なお、弗素化合物は、フラックスからの蛍石、弗化ソーダ、氷晶石、弗化アルミ、珪弗化カリウム及び弗化ジルコンカリ等から添加できる。
Mgは、脱酸剤として溶接金属中の酸素量を低減させて特にノッチ位置Bの靭性を向上させる効果がある。フラックス中のMgが0.1%未満であると、溶接金属の酸素量が増加して特にノッチ位置Bの靭性が低下する。一方、フラックス中のMgが0.8%を超えると、溶接金属の組織が硬くなりすぎてノッチ位置Aの靭性が低下し、またアーク中で酸素と激しく反応するためスパッタ発生量が多くなる。したがって、フラックス中のMgは0.1〜0.8%とする。なお、Mgは、フラックスからの金属Mg、Al−Mg等の合金粉末から添加できる。
Bは、溶接金属の組織を細かくして特にノッチ位置Bの靭性を向上させる効果がある。フラックス中のBが0.002%未満であると、特にノッチ位置Bの靭性が低下する。一方、フラックス中のBが0.015%を超えると、溶接金属が硬くなりすぎてノッチ位置Aの靭性が低下する。したがって、フラックス中のBは0.002〜0.015%とする。なお、Bは金属B、Fe−B、Fe−Mn−B等の合金粉末から添加できる。
A、B ノッチ位置
Claims (1)
- 鋼製外皮にフラックスを充填してなる炭酸ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤにおいて、
ワイヤ全質量に対する質量%で、鋼製外皮とフラックスの合計で、
C:0.04〜0.10%、
Si:0.1〜1.0%、
Mn:1.0〜3.0%、
Ni:0.5〜4.0%を含有し、
Nb:0.005%以下、
V:0.005%以下、
P:0.015%以下、
S:0.010%以下であり、
さらに、ワイヤ全質量に対する質量%で、フラックス中に、
Ti酸化物のTiO2換算値の合計:3〜9%、
Si酸化物のSiO2換算値の合計:0.05〜1.0%、
Zr酸化物のZrO2換算値の合計:0.1〜0.8%、
Al酸化物のAl2O3換算値の合計:0.05〜1.0%、
Na化合物及びK化合物のNa2O換算値及びK2O換算値の1種または2種の合計:0.05〜0.2%、
弗素化合物のF換算値の合計:0.01〜0.15%、
Mg:0.1〜0.8%、
B:0.002〜0.015%を含有し、
残部が鋼製外皮のFe分、フラックス中の鉄粉、鉄合金粉のFe分及び不可避不純物からなることを特徴とする炭酸ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。
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