JP2012228704A - 炭酸ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ワイヤ全質量に対する質量%で、C:0.03〜0.10%、Si:0.1〜0.4%、Mn:1.7〜2.8%、Mo:0.1〜0.3%、Ni:0.1〜3.0%、Mg:0.35〜0.65%、B:0.0010〜0.0100%、Ti酸化物のTiO2換算値:4.8〜6.5%、Si酸化物のSiO2換算値:0.3〜0.8%、Zr酸化物のZrO2換算値:0.2〜0.5%、AlのAl2O3換算値及びAl2O3の1種又は2種の合計:0.4〜1.2%、アルカリ金属化合物のNa2O換算値及びK2O換算値の1種又は2種の合計:0.06〜0.20%、弗素化合物のF換算値が0.03%以下であることを特徴とする。
【選択図】なし
Description
Cは、溶接金属の焼入れ性を高め、溶接金属の強度及び低温靭性を確保するうえで重要な元素である。ワイヤ成分のCが0.03%未満では、必要な溶接金属の強度及び低温靭性が得られない。一方、ワイヤ成分のCが0.10%を超えると、溶接金属の高温割れ感受性が高くなり、クレータ割れ等の高温割れが生じやすくなる。また、溶接金属の強度が過度に高くなり溶接金属の低温靭性がかえって低下する。従って、ワイヤ成分のCは0.03〜0.10%とする。なお、ワイヤ成分のC源としては、鋼製外皮中のC、フラックス中のC単体、鉄粉及び金属粉中のC等がある。
Siは、溶接金属の酸素量を低下させて溶接金属の低温靭性を向上させるうえで重要な元素であるが、大入熱及び高パス間温度での溶接施工条件においては、溶接金属中のSiが過多であると、再熱部においてマルテンサイトと残留オーステナイトの混合組織(以下、MAという。)の生成が促進され、かえって溶接金属の低温靭性が低下してしまう。しかしながら、ワイヤ成分のSiが0.4%以下であれば、−40℃における靭性について許容できる範囲となる。一方、ワイヤ成分のSiが0.1%未満では、脱酸効果が不足するためブローホール等の気孔欠陥が発生する。従って、ワイヤ成分のSiは0.1〜0.4%とする。なお、ワイヤ成分のSi源としては、鋼製外皮中のSi、フラックス中のFe−Si、Fe−Si−Mnのような合金中のSi等がある。
Mnは、溶接金属の酸素量を下げて必要な溶接金属の低温靭性を得ると共に、溶接金属の焼き入れ性を高めて溶接金属の強度を確保する上で重要な元素である。ワイヤ成分のMnが1.7%未満であると、大入熱及び高パス間温度の溶接施工条件の下ではMnによる充分な効果が得られず、溶接金属の強度及び低温靭性の低下を招く。ワイヤ成分のMnが2.8%を超えると、溶接金属の強度が過度に高くなり溶接金属の低温靭性がかえって低下する。従って、ワイヤ成分のMnは1.7〜2.8%とする。ワイヤ成分のMn源としては、鋼製外皮中のMn、フラックス中の金属Mn、Fe−Mn、Fe−Si−Mnのような合金中のMn等がある。
Moは、Mnと同様に微量添加で溶接金属の焼入れ性を高める元素であり、特に、大入熱及び高パス間温度の溶接施工条件の下で強度を確保するために必須となる元素である。ワイヤ成分のMoが0.1%未満であると、必要な溶接金属の強度が得られず溶接金属の低温靭性も低下する。一方、ワイヤ成分のMoが0.3%を超えると、溶接金属の強度が高くなりすぎ溶接金属の低温靭性がかえって低下する。従って、ワイヤ成分のMoは0.1〜0.3%とする。なお、ワイヤ成分のMo源としては、金属Mo、Fe−Moのような合金中のMo等がある。
Niは、溶接金属の強度及び低温靭性を向上させる効果がある。ワイヤ成分のNiが0.1%未満では、その効果が不十分となり、溶接金属の強度及び低温靭性の低下を招く。ワイヤ成分のNiが3.0%を超えると、溶接金属の強度が過度に上昇し溶接金属の低温靭性がかえって低下する。従って、ワイヤ成分のNiは0.1〜3.0%とする。なお、ワイヤ成分のNi源としては、金属Ni、Ni−Mgのような合金中のNi等がある。
Mgは、強脱酸剤として溶接金属の酸素を低減することにより溶接金属の低温靭性を向上させる効果がある。特に、大入熱及び高パス間温度の溶接施工条件では、溶融プールが大きくなって他の脱酸剤(C、Si、Mn)の消耗が多いため、主にMgで脱酸して溶接金属の低温靭性を確保する。ワイヤ成分のMgが0.35%未満であると、溶接金属の酸素が多くなって溶接金属の低温靭性が低下する。一方、ワイヤ成分のMgが0.65%を超えると、スパッタ発生量が多くなる。従って、ワイヤ成分のMgは0.35〜0.65%とする。なお、ワイヤ成分のMg源としては、金属Mg、Al−Mg、Ni−Mgのような合金中のMg等がある。
Bは、微量の添加により溶接金属の焼入れ性を高めて、溶接金属の低温靭性を向上させる効果がある。ワイヤ成分のBが0.0010%未満では、その効果が不十分となり、溶接金属の低温靭性の低下を招く。ワイヤ成分のBが0.0100%を超えると、溶接金属の高温割れ感受性が高くなり、クレータ割れ等の高温割れが生じやすくなる。また、溶接金属の強度が過大となり溶接金属の低温靭性がかえって低下する。従って、ワイヤ成分のBは0.0010〜0.0100%とする。なお、Bの効果は、金属単体、合金又は酸化物による何れでも発揮することができるため、フラックスに添加する場合の形態は自由である。
ルチール、チタンスラグ等のTi酸化物は、アーク安定剤であるとともにビード形状を良好にする効果がある。また、Ti酸化物は、溶融スラグの粘性と融点を適度なものとすることにより、立向上進溶接で溶融メタルが垂れるのを防止する効果がある。さらに、Ti酸化物は、一部がTi酸化物として溶接金属に歩留り、溶接金属のミクロ組織を微細化して溶接金属の低温靭性を向上させる効果がある。Ti酸化物のTiO2換算値が4.8%未満であると、アークが不安定となりスパッタ発生量が多くなるとともに、ビード形状も不良となる。また、立向上進溶接で溶融メタルが垂れるようになる。一方、Ti酸化物のTiO2換算値が6.5%を超えると、アークが安定してスパッタ発生量も少なくなるが、多層盛溶接でスラグ量が多くなり、スラグ剥離性が不良となる。また、溶接金属へのTi酸化物の歩留りが過剰になり、非金属介在物が多くなって溶接金属の低温靭性が低下する。従って、Ti酸化物のTiO2換算値は4.8〜6.5%とする。
珪砂やジルコンサンド、珪酸ソーダ等のSi酸化物は、大入熱及び高パス間温度の溶接施工条件においても溶融スラグの粘性を高め、特に、立向上進溶接でメタル垂れが発生するのを防止してビード形状を平滑にする効果がある。Si酸化物のSiO2換算値が0.3%未満であると、溶融スラグの粘性が低くなり、立向上進溶接でメタル垂れが発生し易くなることにより、ビード形状が凸形となり平滑なビード形状が得られない。一方、0.8%を超えると、溶接金属中のMA生成が促進され、溶接金属の低温靭性が低下する。従って、Si酸化物のSiO2換算値は0.3〜0.8%とする。
ジルコンサンド、酸化ジルコン等のZr酸化物は、溶融スラグの凝固温度を高くして立向上進溶接で溶融メタルを垂れにくくする効果がある。Zr酸化物のZrO2換算値が0.2%未満であると、立向上進溶接で溶融メタルが垂れ易くなることにより、ビード形状が凸形となり平滑なビード形状が得られない。一方、0.5%を超えると、スラグ巻込みが発生し易くなる。従って、Zr酸化物のZrO2換算値は0.2〜0.5%とする。
Alは、酸化物となって、Al2O3とともに溶融スラグの粘性及び凝固点を調整することによって、スラグ被包性を高めてビード形状を良好にする効果がある。AlのAl2O3換算値及びAl2O3の1種又は2種の合計が0.4%未満であると、立向上進溶接で溶融メタルが垂れ易くなることによりビード形状が凸形となり、平滑なビード形状が得られない。一方、1.2%を超えると、溶接金属中に非金属介在物として残留して溶接金属の低温靭性が低下する。従って、AlのAl2O3換算値及びAl2O3の1種又は2種の合計は0.4〜1.2%とする。なお、ワイヤ成分のAl源としては、金属Al、Fe−Alのような合金中のAl等がある。
カリ長石、珪酸ソーダや珪酸カリからなる水ガラスの固質成分、弗化ソーダや珪弗化カリ等の弗素化合物からのNa及びKは、アーク安定剤及びスラグ形成剤として作用する。アルカリ金属化合物のNa2O換算値及びK2O換算値の1種又は2種の合計が0.06%未満であると、アークが不安定となりスパッタ発生量が多くなると共に、ビード外観が劣化する。一方、0.20%を超えると、スラグ剥離性が不良となる。また、立向上進溶接で溶融メタルが垂れやすくなる。従って、アルカリ金属化合物のNa2O換算値及びK2O換算値の1種又は2種の合計は0.06〜0.20%とする。
弗化ソーダや珪弗化カリ等の弗素化合物は、アークの指向性を高めて安定した溶融プールを形成する効果があるが、大入熱及び高パス間温度の溶接施工条件においては、弗素化合物のF換算値が0.03%超であると、スパッタ発生量が多くなる。従って、弗素化合物のF換算値は0.03%以下とする。
ワイヤ中の水素は、溶接金属の拡散性水素源となるので、耐低温割れ性を高める観点からできるだけ低減することが好ましい。ワイヤ中の全水素量が20ppmを超えると、拡散性水素量(JIS Z3118)が4ml/100gを超えるので、多層盛溶接をした場合に低温割れ感受性が高まり、低温割れの可能性が大きくなる。従って、ワイヤ中の全水素量は20ppm以下とすることが好ましい。なお、ワイヤ中の全水素量は、不活性ガス融解熱伝導度法等により測定することができる。また、拡散性水素量は、JIS Z3118に記載の方法により測定することができる。
Claims (2)
- 鋼製外皮内にフラックスを充填してなる炭酸ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤにおいて、
ワイヤ全質量に対する質量%で、
C:0.03〜0.10%、
Si:0.1〜0.4%、
Mn:1.7〜2.8%、
Mo:0.1〜0.3%、
Ni:0.1〜3.0%、
Mg:0.35〜0.65%、
B:0.0010〜0.0100%、
Ti酸化物のTiO2換算値:4.8〜6.5%、
Si酸化物のSiO2換算値:0.3〜0.8%、
Zr酸化物のZrO2換算値:0.2〜0.5%、
AlのAl2O3換算値及びAl2O3の1種又は2種の合計:0.4〜1.2%、
アルカリ金属化合物のNa2O換算値及びK2O換算値の1種又は2種の合計:0.06〜0.20%を含有し、
弗素化合物のF換算値が0.03%以下であり、
残部が鉄粉、鉄合金のFe分、鋼製外皮のFe分及び不可避不純物からなること
を特徴とする炭酸ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。 - ワイヤの全水素量が20ppm以下であること
を特徴とする請求項1に記載の炭酸ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。
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