JP6382114B2 - 高張力鋼のAr−CO2混合ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ - Google Patents

高張力鋼のAr−CO2混合ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ Download PDF

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本発明は、590MPa級高張力鋼のAr−CO2混合ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤに関し、特に溶接作業性が良好で溶接金属の低温領域での優れた靭性を得る上で好適な高張力鋼のAr−CO2混合ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤに関する。
近年、ビル、橋梁、海洋構造物などの鋼構造物の大型化や軽量化に伴って、使用される鋼板の高張力化が進み、引張強さが590MPa級の高張力鋼が広く使用されている。
引張強さ590MPa級高張力鋼を使用する構造物では、溶接金属中の拡散性水素量が少なく耐割れ性及び低温靭性などの機械的性質に優れ、また、スラグ生成量が少なく高能率溶接が可能なメタル系フラックス入りワイヤを用いたガスシールドアーク溶接が要望されている。このため、特にスパッタ発生量が少なく、溶接金属の低温靭性などの機械的性質が良好なAr−CO2混合ガスシールドアーク溶接が従来より広く利用されている。
このAr−CO2混合ガスシールドアーク溶接は、アルゴンと炭酸ガスを混合させたAr−CO2混合ガスをシールドガスとして使用するものである。Ar−CO2混合ガスシールドアーク溶接用のメタル系フラックス入りワイヤについては、特許文献1において金属酸化物等の含有量を低くして極低スラグとし、かつ鉄粉の酸素量を低く規制することにより溶接金属の低温靭性を良好なものとし、かつスパッタ発生量が極めて少なく、良好なビード形状が得られるAr−CO2混合ガスシールドアーク溶接用メタル系フラックス入りワイヤが開示されている。しかし、特許文献1に記載のメタル系フラックス入りワイヤは、軟鋼及び490MPa級高張力鋼用溶接用フラックス入りワイヤであるため、590MPa級高張力鋼を溶接する上では、溶接金属の十分な強度が得られないという問題がある。
従来、高張力鋼のAr−CO2混合ガスシールドアーク溶接には、例えば、特許文献2、3に開示されているNi、Cr、Moなどの合金成分を含有したAr−CO2混合ガスシールドアーク溶接用ソリッドワイヤが使用される。しかし、特許文献2や特許文献3に記載のAr−CO2混合ガスシールドアーク溶接用ソリッドワイヤは、合金成分を多く含みワイヤ自体が硬く剛性があるので、溶接時のワイヤ送給装置内での抵抗が大きく、ワイヤ送給性が安定せずアークが不安定になってスパッタ発生量が多くなってしまうという問題があった。
高張力鋼のAr−CO2混合ガスシールドアーク溶接用のフラックス入りワイヤに関しては、特許文献4において、高張力鋼でのAr−CO2混合ガスシールドアーク溶接時において、溶接金属中のC、Mn、Ti、Si等の含有成分を最適化することにより旧γ粒界でのフェライトサイトプレートの発生を抑制し、優れた低温靭性を得る技術が開示されている。この特許文献4の開示技術によれば、溶接作業性が良好で、かつ優れた耐割れ性も得ることができる旨が開示されている。しかし、特許文献4に記載のAr−CO2混合ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤでは、スラグ形成剤の含有量が多いので、溶接金属中の酸素量が多くなり、溶接金属の低温靭性を安定して得ることが難しくなるという問題がある。
溶接金属中の酸素量を低減して優れた低温靭性を得る技術として、特許文献5には、ワイヤ中の金属弗化物の含有量を増加させることで溶接金属の酸素量を低減することを目的としたAr−CO2混合ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤが開示されている。しかし、特許文献5に記載のAr−CO2混合ガスシールドアーク溶接用ワイヤは、溶接金属の低温靭性は優れているものの、ワイヤ中に金属弗化物を多く含むのでアークが荒くスパッタ発生量が多くなるという問題がある。
さらに、特許文献6、7には、合金粉を多く含むメタル系フラックス入りワイヤに関する技術の開示がある。しかし、特許文献6や特許文献7に記載のメタル系フラックス入りワイヤにおいても、アークが安定してビード外観・形状が良好で、さらに低温における靭性を確保することができないという問題があった。
特開2009−255164号公報 特開昭57−124594号公報 特開2000−301379号公報 特開2006−281223号公報 特開2011−20154号公報 特開2007−144516号公報 特開2008−93715号公報
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、590MPa級高張力鋼の溶接において、適正な強度と低温領域での良好で安定した靭性を有する溶接金属が得られるとともに、アークの安定性及びビード外観・形状に優れ、スパッタ発生量が少ないなど溶接作業性に優れた高張力鋼のAr−CO2混合ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤを提供することを目的とする。
(1)本発明の要旨は、鋼製外皮にフラックスを充填してなる高張力鋼のAr−CO2混合ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤにおいて、ワイヤ全質量に対する質量%で、鋼製外皮とフラックスの合計で、C:0.03〜0.12%、Si:0.2〜1.5%、Mn:1.5〜3.5%、Cu:0.05〜0.45%、Mo:0.3〜1.0%、Ti:0.04〜0.3%、Al:0.1%以下を含有し、さらに、ワイヤ全質量に対する質量%で、フラックス中に、弗素化合物:F換算値の合計で0.01〜0.1%、SiO2:0.01〜0.2%、Na及びK化合物:Na2O換算値とK2O換算値の合計で0.02〜0.15%を含有し、残部は鋼製外皮のFe、鉄粉、鉄合金粉のFe分及び不可避的不純物からなることを特徴する高張力鋼のAr−CO2混合ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。
(2)ワイヤ全質量に対する質量%で、鋼製外皮とフラックスの合計で、Ni:0.1〜2.0%を含有することを特徴とする(1)に記載の高張力鋼のAr−CO2混合ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。
(3)成形された前記鋼製外皮の合わせ目が溶接されていることで鋼製外皮に継目を無くしたことを特徴とする(1)または(2)に記載の高張力鋼のAr−CO2混合ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤにある。
本発明を適用した高張力鋼のAr−CO2混合ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤによれば、溶接時のアークの安定性及びビード外観・形状が優れ、スパッタ発生量が少ないなど溶接作業性が良好で、590MPa級の強度及び低温で高い靭性を確保し、欠陥のない高品質な溶接金属が得られる。
本発明者らは、上述した課題を解決するために、590MPa級高張力鋼のAr−CO2混合ガスシールドアーク溶接において、適正な強度を有する溶接金属を形成できるとともに、アークが安定し、スパッタの少ない良好な溶接作業性が得られるAr−CO2混合ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤの成分組成について詳細に検討した。
その結果、アークの安定性及びスパッタ発生量の低減は、Na化合物とK化合物のNa2O換算値とK2O換算値の合計量及び弗素化合物のF換算値の合計量を適正にすることが有効で、SiO2を微量含有させることでビード外観・形状を良好にすることを見出した。
また、溶接金属の適正な強度と同時に安定した低温靭性の向上をも同時に達成させるためには、ワイヤ中のスラグ生成剤である酸化物を極力減らし、合金成分のC、Si、Mn、Cu、Mo、Al量のそれぞれの適正化が有効であることを知見した。
さらに、ワイヤ中のNi、Ti量を適正にすることにより、溶接金属の更なる低温靭性の改善及び高強度化が可能であることも知見した。
本発明を適用した高張力鋼のAr−CO2混合ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤは、各成分組成それぞれの単独及び共存による相乗効果によりなし得たものであるが、以下にそれぞれの各成分組成の添加理由及び限定理由を述べる。なお、以下においては、フラックス入りワイヤの化学成分をワイヤの全質量に対する割合である質量%で表すものとし、その質量%に関する記載を単に%と記載して説明する。
[鋼製外皮とフラックスの合計でC:0.03〜0.12%]
Cは、固溶強化により溶接金属の強度を向上するために必要な元素である。Cが0.03%未満であると、上述した固溶強化が十分に発揮し得ず、溶接金属の所望の強度が得られない。一方、Cが0.12%を超えると、溶接金属の強度が過剰に高くなり靭性が低下し、また溶接割れ感受性が高くなる。従って、鋼製外皮とフラックスの合計でCは0.03〜0.12%とする。なお、Cは、鋼製外皮に含まれる成分の他、フラックスから金属粉及び合金粉等から添加できる。
[鋼製外皮とフラックスの合計でSi:0.2〜1.5%]
Siは、溶接金属の脱酸のために添加する。Siが0.2%未満であると、溶接金属が脱酸不足となり靭性が低下する。一方、Siが1.5%を超えると、溶接金属の酸素量が増加し、低温靭性が安定して得られない。従って、鋼製外皮とフラックスの合計でSiは0.2〜1.5%とする。なお、Siは、鋼製外皮に含まれる成分の他、フラックスから金属Si、Fe−Si、Fe−Si−Mn等の合金粉から添加できる。
[鋼製外皮とフラックスの合計でMn:1.5〜3.5%]
Mnは、溶接金属の靭性確保と強度向上のために添加する。Mnが1.5%未満であると、溶接金属の強度が低く靭性が十分に確保できなくなる。一方、Mnが3.5%を超えると、Mnが溶接金属中に過剰に歩留まり、溶接金属の低温靭性が安定して得られない。従って、鋼製外皮とフラックスの合計でMnは1.5〜3.5%とする。なお、Mnは、鋼製外皮に含まれる成分の他、フラックスからの金属Mn、Fe−Mn、Fe−Si−Mn等の合金粉末から添加できる。
[鋼製外皮とフラックスの合計でCu:0.05〜0.45%]
Cuは、析出強化作用を有し、変態温度を低下させ溶接金属の組織を微細化して靭性を安定させる。Cuが0.05%未満であると、これらの作用が十分に得られず、安定した溶接金属の低温靭性が得られない。一方、Cuが0.45%を超えると、析出脆化が生じて溶接金属の靭性が低下し、また高温割れが発生しやすくなる。従って、鋼製外皮とフラックスの合計でCuは0.05〜0.45%とする。なお、Cuは、鋼製外皮に含まれる成分及び鋼製外皮表面に施したCuめっき分の他、フラックスからの金属Cu、Fe−Si−Cu等の合金粉から添加できる。
[鋼製外皮とフラックスの合計でMo:0.3〜1.0%]
Moは、変態温度を低下させ、溶接金属の組織を微細化して強度及び靭性を向上させる。Moが0.3%未満であると、これらの効果が十分に得られない。一方、Moが1.0%を超えると、溶接金属の強度が過剰に高くなり、かえって低温靭性が安定して得られない。従って、鋼製外皮とフラックスの合計でMoは0.3〜1.0%とする。なお、Moは、鋼製外皮に含まれる成分の他、フラックスからの金属Mo粉から添加できる。
[鋼製外皮とフラックスの合計でAl:0.1%以下]
Alは、0.1%を超えると、溶接金属中に酸化物となって残留して溶接金属の靭性を低下させる。従って、鋼製外皮とフラックスの合計でAlの含有量は0.1%以下に制限する。
[フラックス中に含有する弗素化合物:F換算値の合計:0.01〜0.1%]
弗素化合物は、アークを集中させて安定にする効果がある。弗素化合物のF換算値の合計が0.01%未満では、この効果が得られない。一方、弗素化合物のF換算値の合計が0.1%を超えると、アークが荒く不安定になりスパッタ発生量が多くなる。従って、フラックス中に含有する弗素化合物のF換算値の合計は0.01〜0.1%とする。なお、弗素化合物は、フラックスからの蛍石、弗化ソーダ、弗化カリ、弗化リチウム、弗化マグネシウム、珪弗化カリウム等から添加でき、F換算値はそれらに含有されるF量の合計である。
[フラックス中に含有するSiO2:0.01〜0.2%]
SiO2は、ビード止端部のなじみを良好にしてビード外観・形状を良好にする。SiO2が0.01%未満であると、溶接ビードのビード止端部のなじみが悪くなりビード外観・形状が悪くなる。一方、SiO2が0.2%を超えると、溶接金属中の酸素量が増加して低温靭性が低下する。また、ビード表面のスラグ量が多くなり、多層盛溶接でスラグを除去する手間が生じる。従って、フラックス中に含有するSiO2は0.01〜0.2%とする。なお、SiO2は、フラックスからの珪砂、珪酸ソーダ及び珪酸カリからなる水ガラスの固質成分等から添加できる。
[フラックス中に含有するNa及びK化合物のNa2O換算値とK2O換算値の合計で0.02〜0.15%]
Na及びK化合物は、アークをソフトにして安定にする。Na及びK化合物のNa2O換算値とK2O換算値の合計が0.02%未満であると、アークが不安定になりスパッタ発生量が多くなる。一方、Na及びK化合物のNa2O換算値とK2O換算値の合計が0.15%を超えると、逆にアークが強くなってスパッタ発生量が多くなる。また、ビード止端部のなじみが悪くなりビード外観・形状が不良となる。さらに、ビード表面のスラグ量が多くなり、多層盛溶接でスラグを除去する手間が生じる。従って、フラックス中に含有するNa及びK化合物のNa2O換算値とK2O換算値の合計は0.02〜0.15%とする。なお、NaやK化合物は、フラックスからの珪酸ソーダ及び珪酸カリからなる水ガラスの固質成分、カリ長石、弗化ソーダ、珪弗化カリウム等の粉末から添加できる。
[鋼製外皮とフラックスの合計でNi:0.1〜2.0%]
Niは、変態温度を低下させて溶接金属の組織を微細化して低温靭性をより向上させると共に、溶接金属中に固溶して靭性を低下させることなく強度を高める作用を有する。Niが0.1%未満であると、靭性の低下を防止する効果が十分に得られない。一方、Niが2.0%を超えると、溶接金属の強度が過剰に高くなると共に、粒界が脆化して靭性が低下する。従って、鋼製外皮とフラックスの合計でNiは0.1〜2.0%とする。なお、Niは、鋼製外皮に含まれる成分の他、フラックスからの金属Ni、Fe−Ni等の合金粉から添加できる。
[鋼製外皮とフラックスの合計でTi:0.04〜0.3%]
Tiは、脱酸剤として作用するとともに、溶接金属中にTiの微細酸化物を生成し溶接金属の低温靭性をより向上させる。Tiが0.04%未満であると、溶接金属の低温靭性の向上の効果が得られない。一方、Tiが0.3%を超えると、溶接金属中の固溶Tiが多くなって靭性が低下する。従って、鋼製外皮とフラックスの合計でTiは0.04〜0.3%とする。なお、Tiは、鋼製外皮に含まれる成分の他、フラックスからの金属Ti、Fe−Ti等の合金粉から添加できる。
[成形した鋼製外皮の合わせ目を溶接することで鋼製外皮に継目を無くす]
本発明の高張力鋼のAr−CO2混合ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤは、鋼製外皮をパイプ状に成型し、その内部にフラックスを充填した構造である。ワイヤの種類としては、成形した鋼製外皮の合わせ目を溶接して得られる鋼製外皮に継目の無いワイヤと、鋼製外皮に合わせ目の溶接を行わないままとした鋼製外皮に継目を有するワイヤとに大別できる。本発明においては、何れの断面構造のワイヤを採用することができるが、鋼製外皮に継目を有するワイヤは、溶接金属の強度が高くなると低温割れが生じやすくなるので水分含有量の少ない原材料を用いる必要がある。一方、鋼製外皮に継目が無いワイヤは、ワイヤ中の全水素量を低減することを目的とした熱処理が可能であり、また製造後のフラックスの吸湿が無いため、溶接金属の拡散性水素量を低減し、耐低温割れ性の向上を図ることができるので、より好ましい。
本発明の高張力鋼のAr−CO2混合ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤの残部は、鋼製外皮のFe、成分調整のために添加する鉄粉、Fe−Si、Fe−Mn、Fe−Ti合金などの鉄合金粉のFe分及び不可避的不純物である。
また、フラックス充填率は特に限定しないが、生産性の観点からワイヤ全質量に対して8〜20%とするのが好ましい。
なお、シールドガスは、ArとCO2との混合ガスとするが、CO2の混合量は5〜25体積%の範囲として溶接金属の酸素量を低減する。また、シールドガスの流量は耐欠陥性及び大気からの窒素の混入を防ぐために20〜35リットル/分であることが好ましい。
以下、本発明の効果を実施例により具体的に説明する。
JIS G3141に規定されるSPCCを鋼製外皮(C:0.01〜0.05%)として使用し、鋼製外皮を成形する工程でU字型に成形した後、鋼製外皮の合わせ目を溶接した継目が無いワイヤと、溶接しない隙間のあるワイヤとを造管して伸線し、表1に示す各種成分のフラックス入りワイヤを試作した。ワイヤ径は1.2mmとした。なお、鋼製外皮の合わせ目を溶接した継目が無いワイヤは、伸線途中で焼鈍を実施したが、鋼製外皮の合わせ目のあるワイヤは、フラックスを充填前に乾燥し、ワイヤ製造後はフラックスの吸湿を防ぐために、ビニール製の袋に封入して、溶接直前までその状態で保管した。
Figure 0006382114
試作したフラックス入りワイヤを用いて、溶接作業性、溶着金属性能及び耐割れ性の調査を行った。
溶接作業性及び溶着金属性能は、JIS G3106 SM570に規定される板厚20mmの鋼板を用い、JIS Z3313に準じて表2に示す溶接条件で溶着金属試験を実施した。調査項目は溶接時のアークの安定性、スパッタの発生状況及びビード外観・形状等の溶接作業性を調査した。なお、溶接時のワイヤ送給は6m長さのコンジットケーブルを用いた。また、溶着金属部からA0号引張試験片及び衝撃試験を採取して機械的性能を調査した。
引張強さの評価は590〜690MPaを良好とした。また、靭性の評価は、−40℃におけるシャルピー衝撃試験を実施し、吸収エネルギーの平均値は80J以上、最低値は60J以上を良好とした。
耐割れ性の試験は、JIS G 3106 SM570に規定される板厚40mmの鋼板を用い、JIS Z3257に準拠して表2に示す溶接条件でU形溶接割れ試験を実施した。溶接後48時間経過した試験体について、表面割れ及び断面割れ(5断面)の割れ発生有無をJIS Z 2343に準拠した浸透探傷試験により調査した。これらの結果を表3にまとめて示す。
Figure 0006382114
Figure 0006382114
表1及び表3中のワイヤ記号1〜が本発明例、ワイヤ記号7〜22は比較例である。本発明例であるワイヤ記号1〜は、フラックス入りワイヤ中のC、Si、Mn、Cu、Mo、Ti、Alが適正で、フラックス中の弗素化合物のF換算値の合計、SiO2、Na及びK化合物のNa2O換算値とK2O換算値の合計が適量であるので、アークがほぼ安定してスパッタ発生量が少ないか又はやや少なく、ビード外観・形状が良好で、溶着金属の引張強さおよび吸収エネルギーの平均値及び最低値ともに良好であった。
なお、ワイヤ記号1及びワイヤ記号4〜6はNiが適量添加されているので、溶着金属の引張強さ及び吸収エネルギーの最低値がさらに良好であり、極めて満足な結果であった。
比較例中ワイヤ記号は、Cが少ないので、溶着金属の引張強さが低かった。また、弗素化合物のF換算値の合計が少ないので、アークが不安定であった。
ワイヤ記号は、Cが多いので、溶着金属の引張強さが高く吸収エネルギーの平均値及び最低値が低かった。また、クレータ部に割れが生じた。さらに、弗素化合物のF換算値の合計が多いので、アークが荒くスパッタ発生量が多かった。
ワイヤ記号は、Siが少ないので、溶着金属の吸収エネルギーの平均値及び最低値が低かった。また、SiO2が少ないので、ビード外観・形状が不良であった。
ワイヤ記号10は、Siが多いので、溶着金属の吸収エネルギーの最低値が低かった。また、Na及びK化合物のNa2O換算値とK2O換算値の合計が多いので、アークが強くスパッタ発生量が多かった。
ワイヤ記号11は、Mnが少ないので、溶着金属の引張強さが低く、吸収エネルギーの平均値が低かった。
ワイヤ記号12は、Mnが多いので、溶着金属の吸収エネルギーの最低値が低かった。また、Na及びK化合物のNa2O換算値とK2O換算値の合計が少ないので、アークが不安定でスパッタ発生量が多かった。
ワイヤ記号13は、Cuが少ないので、溶着金属の吸収エネルギーの最低値が低かった。
ワイヤ記号14は、Cuが多いので、溶着金属の吸収エネルギーの平均値及び最低値が低かった。また、クレータ部に割れが生じた。
ワイヤ記号15は、Moが少ないので、溶着金属の引張強さが低く、吸収エネルギーの平均値が低かった。
ワイヤ記号16は、Moが多いので、溶着金属の引張強さが高く、吸収エネルギーの最低値が低かった。また、Na及びK化合物のNa2O換算値とK2O換算値の合計が多いので、アークが強くスパッタ発生量が多かった。また、鋼製外皮に継目を有するので、溶接割れ試験で割れが生じた。
ワイヤ記号17は、Alが多いので、溶着金属の吸収エネルギーの平均値が低かった。
ワイヤ記号18は、弗素化合物のF換算値の合計が少ないので、アークが不安定であった。また、Cuが少なく、Niも少ないので、溶着金属の吸収エネルギーの最低値が低かった。
ワイヤ記号19は、SiO2が多いので、溶着金属の吸収エネルギーの最低値が低かった。
ワイヤ記号20は、Na及びK化合物のNa2O換算値とK2O換算値の合計が少ないので、アークが不安定でスパッタ発生量が多かった。また、Tiが多いので、溶着金属の吸収エネルギーの平均値および最低値が低かった。
ワイヤ記号21は、SiO2が少ないので、ビード外観・形状が不良であった。また、Niが多いので、溶着金属の引張強さが高く吸収エネルギーの平均値及び最低値が低かった。また、鋼製外皮に継目を有するので、溶接割れ試験で割れが生じた。
ワイヤ記号22は、Na及びK化合物のNa2O換算値とK2O換算値の合計が多いので、アークが強くスパッタ発生量が多かった。また、Cuが少なく、Tiも少ないので、溶着金属の吸収エネルギーの最低値が低かった。

Claims (3)

  1. 鋼製外皮にフラックスを充填してなる高張力鋼のAr−CO2混合ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤにおいて、
    ワイヤ全質量に対する質量%で、鋼製外皮とフラックスの合計で、
    C:0.03〜0.12%、
    Si:0.2〜1.5%、
    Mn:1.5〜3.5%、
    Cu:0.05〜0.45%、
    Mo:0.3〜1.0%、
    Ti:0.04〜0.3%、
    Al:0.1%以下を含有し、
    さらに、ワイヤ全質量に対する質量%で、フラックス中に、
    弗素化合物:F換算値の合計で0.01〜0.1%、
    SiO2:0.01〜0.2%、
    Na及びK化合物:Na2O換算値とK2O換算値の合計で0.02〜0.15%を含有し、
    残部は、鋼製外皮のFe、鉄粉、鉄合金粉のFe分及び不可避的不純物からなることを特徴とする高張力鋼のAr−CO2混合ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。
  2. ワイヤ全質量に対する質量%で、鋼製外皮とフラックスの合計で、
    Ni:0.1〜2.0%を含有することを特徴とする請求項1に記載の高張力鋼のAr−CO2混合ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。
  3. 成形された前記鋼製外皮の合わせ目が溶接されていることで鋼製外皮に継目を無くしたことを特徴とする請求項1または2に記載の高張力鋼のAr−CO2混合ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。
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