JP6382114B2 - 高張力鋼のAr−CO2混合ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ - Google Patents
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Description
Cは、固溶強化により溶接金属の強度を向上するために必要な元素である。Cが0.03%未満であると、上述した固溶強化が十分に発揮し得ず、溶接金属の所望の強度が得られない。一方、Cが0.12%を超えると、溶接金属の強度が過剰に高くなり靭性が低下し、また溶接割れ感受性が高くなる。従って、鋼製外皮とフラックスの合計でCは0.03〜0.12%とする。なお、Cは、鋼製外皮に含まれる成分の他、フラックスから金属粉及び合金粉等から添加できる。
Siは、溶接金属の脱酸のために添加する。Siが0.2%未満であると、溶接金属が脱酸不足となり靭性が低下する。一方、Siが1.5%を超えると、溶接金属の酸素量が増加し、低温靭性が安定して得られない。従って、鋼製外皮とフラックスの合計でSiは0.2〜1.5%とする。なお、Siは、鋼製外皮に含まれる成分の他、フラックスから金属Si、Fe−Si、Fe−Si−Mn等の合金粉から添加できる。
Mnは、溶接金属の靭性確保と強度向上のために添加する。Mnが1.5%未満であると、溶接金属の強度が低く靭性が十分に確保できなくなる。一方、Mnが3.5%を超えると、Mnが溶接金属中に過剰に歩留まり、溶接金属の低温靭性が安定して得られない。従って、鋼製外皮とフラックスの合計でMnは1.5〜3.5%とする。なお、Mnは、鋼製外皮に含まれる成分の他、フラックスからの金属Mn、Fe−Mn、Fe−Si−Mn等の合金粉末から添加できる。
Cuは、析出強化作用を有し、変態温度を低下させ溶接金属の組織を微細化して靭性を安定させる。Cuが0.05%未満であると、これらの作用が十分に得られず、安定した溶接金属の低温靭性が得られない。一方、Cuが0.45%を超えると、析出脆化が生じて溶接金属の靭性が低下し、また高温割れが発生しやすくなる。従って、鋼製外皮とフラックスの合計でCuは0.05〜0.45%とする。なお、Cuは、鋼製外皮に含まれる成分及び鋼製外皮表面に施したCuめっき分の他、フラックスからの金属Cu、Fe−Si−Cu等の合金粉から添加できる。
Moは、変態温度を低下させ、溶接金属の組織を微細化して強度及び靭性を向上させる。Moが0.3%未満であると、これらの効果が十分に得られない。一方、Moが1.0%を超えると、溶接金属の強度が過剰に高くなり、かえって低温靭性が安定して得られない。従って、鋼製外皮とフラックスの合計でMoは0.3〜1.0%とする。なお、Moは、鋼製外皮に含まれる成分の他、フラックスからの金属Mo粉から添加できる。
Alは、0.1%を超えると、溶接金属中に酸化物となって残留して溶接金属の靭性を低下させる。従って、鋼製外皮とフラックスの合計でAlの含有量は0.1%以下に制限する。
弗素化合物は、アークを集中させて安定にする効果がある。弗素化合物のF換算値の合計が0.01%未満では、この効果が得られない。一方、弗素化合物のF換算値の合計が0.1%を超えると、アークが荒く不安定になりスパッタ発生量が多くなる。従って、フラックス中に含有する弗素化合物のF換算値の合計は0.01〜0.1%とする。なお、弗素化合物は、フラックスからの蛍石、弗化ソーダ、弗化カリ、弗化リチウム、弗化マグネシウム、珪弗化カリウム等から添加でき、F換算値はそれらに含有されるF量の合計である。
SiO2は、ビード止端部のなじみを良好にしてビード外観・形状を良好にする。SiO2が0.01%未満であると、溶接ビードのビード止端部のなじみが悪くなりビード外観・形状が悪くなる。一方、SiO2が0.2%を超えると、溶接金属中の酸素量が増加して低温靭性が低下する。また、ビード表面のスラグ量が多くなり、多層盛溶接でスラグを除去する手間が生じる。従って、フラックス中に含有するSiO2は0.01〜0.2%とする。なお、SiO2は、フラックスからの珪砂、珪酸ソーダ及び珪酸カリからなる水ガラスの固質成分等から添加できる。
Na及びK化合物は、アークをソフトにして安定にする。Na及びK化合物のNa2O換算値とK2O換算値の合計が0.02%未満であると、アークが不安定になりスパッタ発生量が多くなる。一方、Na及びK化合物のNa2O換算値とK2O換算値の合計が0.15%を超えると、逆にアークが強くなってスパッタ発生量が多くなる。また、ビード止端部のなじみが悪くなりビード外観・形状が不良となる。さらに、ビード表面のスラグ量が多くなり、多層盛溶接でスラグを除去する手間が生じる。従って、フラックス中に含有するNa及びK化合物のNa2O換算値とK2O換算値の合計は0.02〜0.15%とする。なお、NaやK化合物は、フラックスからの珪酸ソーダ及び珪酸カリからなる水ガラスの固質成分、カリ長石、弗化ソーダ、珪弗化カリウム等の粉末から添加できる。
Niは、変態温度を低下させて溶接金属の組織を微細化して低温靭性をより向上させると共に、溶接金属中に固溶して靭性を低下させることなく強度を高める作用を有する。Niが0.1%未満であると、靭性の低下を防止する効果が十分に得られない。一方、Niが2.0%を超えると、溶接金属の強度が過剰に高くなると共に、粒界が脆化して靭性が低下する。従って、鋼製外皮とフラックスの合計でNiは0.1〜2.0%とする。なお、Niは、鋼製外皮に含まれる成分の他、フラックスからの金属Ni、Fe−Ni等の合金粉から添加できる。
Tiは、脱酸剤として作用するとともに、溶接金属中にTiの微細酸化物を生成し溶接金属の低温靭性をより向上させる。Tiが0.04%未満であると、溶接金属の低温靭性の向上の効果が得られない。一方、Tiが0.3%を超えると、溶接金属中の固溶Tiが多くなって靭性が低下する。従って、鋼製外皮とフラックスの合計でTiは0.04〜0.3%とする。なお、Tiは、鋼製外皮に含まれる成分の他、フラックスからの金属Ti、Fe−Ti等の合金粉から添加できる。
本発明の高張力鋼のAr−CO2混合ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤは、鋼製外皮をパイプ状に成型し、その内部にフラックスを充填した構造である。ワイヤの種類としては、成形した鋼製外皮の合わせ目を溶接して得られる鋼製外皮に継目の無いワイヤと、鋼製外皮に合わせ目の溶接を行わないままとした鋼製外皮に継目を有するワイヤとに大別できる。本発明においては、何れの断面構造のワイヤを採用することができるが、鋼製外皮に継目を有するワイヤは、溶接金属の強度が高くなると低温割れが生じやすくなるので水分含有量の少ない原材料を用いる必要がある。一方、鋼製外皮に継目が無いワイヤは、ワイヤ中の全水素量を低減することを目的とした熱処理が可能であり、また製造後のフラックスの吸湿が無いため、溶接金属の拡散性水素量を低減し、耐低温割れ性の向上を図ることができるので、より好ましい。
Claims (3)
- 鋼製外皮にフラックスを充填してなる高張力鋼のAr−CO2混合ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤにおいて、
ワイヤ全質量に対する質量%で、鋼製外皮とフラックスの合計で、
C:0.03〜0.12%、
Si:0.2〜1.5%、
Mn:1.5〜3.5%、
Cu:0.05〜0.45%、
Mo:0.3〜1.0%、
Ti:0.04〜0.3%、
Al:0.1%以下を含有し、
さらに、ワイヤ全質量に対する質量%で、フラックス中に、
弗素化合物:F換算値の合計で0.01〜0.1%、
SiO2:0.01〜0.2%、
Na及びK化合物:Na2O換算値とK2O換算値の合計で0.02〜0.15%を含有し、
残部は、鋼製外皮のFe、鉄粉、鉄合金粉のFe分及び不可避的不純物からなることを特徴とする高張力鋼のAr−CO2混合ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。 - ワイヤ全質量に対する質量%で、鋼製外皮とフラックスの合計で、
Ni:0.1〜2.0%を含有することを特徴とする請求項1に記載の高張力鋼のAr−CO2混合ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。 - 成形された前記鋼製外皮の合わせ目が溶接されていることで鋼製外皮に継目を無くしたことを特徴とする請求項1または2に記載の高張力鋼のAr−CO2混合ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。
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