JP6033755B2 - Ar−CO2混合ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ - Google Patents
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(1)鋼製外皮にフラックスを充填してなるAr−CO2混合ガスシールドアーク溶 接用フラックス入りワイヤにおいて、ワイヤ全質量に対する質量%で、鋼製外皮とフ ラックスとの合計で、C:0.03〜0.08%、Si:0.2〜0.6%、Mn: 1.0〜2.5%、Cu:0.1〜0.5%、Ni:1.6〜3.5%、Ti:0. 01〜0.2%、B:0.002〜0.015%、さらに、ワイヤ全質量に対する質 量%で、フラックス中に、Ti酸化物:TiO2換算値の合計で3〜8%、Al酸化 物:Al2O3換算値の合計で0.1〜0.9%、Si酸化物:SiO2換算値の合 計で0.1〜1%、Zr酸化物:ZrO2換算値の合計で0.01〜0.8%、Mg :0.1〜0.8%、Na及びK化合物:Na2O換算値とK2O換算値との合計で 0.05〜0.2%、弗素化合物:F換算値の合計で0.01〜0.3%を含有し、 残部が鋼製外皮のFe、鉄粉、鉄合金粉のFe分及び不可避不純物からなり、ワイヤ 中の全水素量が、ワイヤ全質量に対する質量比で20ppm以下であることを特徴と するAr−CO2混合ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。
但し、[V]、[Nb]は、V、Nbのそれぞれのワイヤ全質量%に対する質量%で、
鋼製外皮とフラックスとの合計を示す。
Cは、溶接時にアークの安定化に寄与するとともに溶接金属の強度向上の効果がある。しかし、Cが0.03%未満では、この効果が十分に得られない。一方、Cが0.08%超では、Cが溶接金属中に過剰に歩留まることにより、溶接金属の強度が高くなり低温靱性が低下する。従って、鋼製外皮とフラックスとの合計でCは0.03〜0.08%とする。なお、Cは、鋼製外皮に含まれる成分の他、フラックスから金属粉及び合金粉等から添加できる。
Siは、溶接時に一部が溶接スラグとなることにより溶接ビードの外観や形状を良好にし、溶接作業性の向上に寄与する。しかし、Siが0.2%未満では、溶接ビードの外観や形状を良好にする効果が十分に得られない。一方、Siが0.6%超では、Siが溶接金属中に過剰に歩留まることにより、溶接金属の低温靱性が低下する。従って、鋼製外皮とフラックスとの合計でSiは0.2〜0.6%とする。なお、Siは、鋼製外皮に含まれる成分の他、フラックスから金属Si、Fe−Si、Fe−Si−Mn等の合金粉末から添加できる。
Mnは、Siと同様、溶接時に一部が溶接スラグとなることにより溶接ビードの外観や形状を良好にし、溶接作業性の向上に寄与する。また、Mnは、溶接金属に歩留まることにより、溶接金属の強度と低温靱性及びCTOD値を高める効果がある。しかし、Mnが1.0%未満では、これらの効果が十分に得られない。一方、Mnが2.5%超では、Mnが溶接金属中に過剰に歩留まり、溶接金属の強度が過剰になることにより、かえって溶接金属の低温靱性及びCTOD値が低下する。従って、鋼製外皮とフラックスとの合計でMnは1.0〜2.5%とする。なお、Mnは、鋼製外皮に含まれる成分の他、フラックスから金属Mn、Fe−Mn、Fe−Si−Mn等の合金粉末から添加できる。
Cuは、溶接金属の組織を微細化し、低温靭性及び強度を高める効果がある。しかし、Cuが0.1%未満では、これらの効果が十分に得られない。一方、Cuが0.5%超では、溶接金属の強度が過剰になり低温靭性が低下する。従って、鋼製外皮とフラックスとの合計でCuは0.1〜0.5%とする。なお、Cuは、鋼製外皮及び鋼製外皮表面に施したCuめっき分の他、フラックスから金属Cu、Cu−Zr、Fe−Si−Cu等の合金粉末から添加できる。
Niは、溶接金属の低温靱性及びCTOD値を向上させる効果がある。しかし、Niが1.6%未満では、この効果が十分に得られない。一方、Niが3.5%超では、溶接金属に高温割れが発生し易くなる。従って、鋼製外皮とフラックスとの合計でNiは1.6〜3.5%とする。なお、Niは、鋼製外皮に含まれる成分の他、フラックスからの金属Ni、Fe−Ni等の合金粉末から添加できる。
Tiは、溶接金属の組織を微細化して低温靭性及びCTOD値を向上させる効果がある。しかし、Tiが0.01%未満では、この効果が十分に得られない。一方、Tiが0.2%超では、靭性を阻害する上部ベイナイト組織を生成し、靭性及びCTOD値が低くなる。従って、鋼製外皮とフラックスとの合計でTiは0.01〜0.2%とする。なお、Tiは、鋼製外皮に含まれる成分の他、フラックスからの金属Ti、Fe−Ti等の合金粉末から添加できる。
Bは、微量の添加により溶接金属のミクロ組織を微細化し、溶接金属の低温靱性及びCTOD値を向上させる効果がある。しかし、Bが0.002%未満では、この効果が十分に得られない。一方、Bが0.015%超では、溶接金属が過度に硬化することにより低温靱性及びCTOD値が低下するとともに、溶接金属に高温割れが発生し易くなる。従って、Bは0.002〜0.015%とする。なお、Bは、鋼製外皮に含まれる成分の他、フラックスからの金属B、Fe−B、Fe−Mn−B等合金粉末及び硼砂から添加できる。
Ti酸化物は、溶接時にアークの安定化に寄与するとともに、溶接ビードの形状を良好にし、溶接作業性の向上に寄与する効果がある。また、Ti酸化物は、立向上進溶接において、溶接スラグにTi酸化物として含まれることによって溶融スラグの粘性や融点を調整し、溶融メタルが垂れるのを防ぐ効果がある。しかし、Ti酸化物のTiO2換算値の合計が3%未満では、これらの効果が十分に得られず、アークが不安定でスパッタ発生量が多く、溶接ビード形状が劣化する。また、立向上進溶接において溶融メタルが垂れやすくなる。一方、Ti酸化物のTiO2換算値の合計が8%超では、アークが安定してスパッタ発生量も少ないが、溶接金属にTi酸化物が過剰に残存することにより、低温靱性が低下する。従って、Ti酸化物のTiO2換算値の合計は3〜8%とする。なお、Ti酸化物は、フラックスからのルチール、酸化チタン、チタンスラグ、イルメナイト等から添加される。
Al酸化物は、溶接時に溶接スラグの粘性や融点を調整し、特に立向上進溶接における溶融メタルが垂れるのを防ぐ効果がある。しかし、Al酸化物のAl2O3換算値の合計が0.1%未満では、この効果が十分に得られない。一方、Al酸化物のAl2O3換算値の合計が0.9%を超えると、溶接金属中にAl酸化物が過剰に残存することにより、低温靱性が低下する。従って、Al酸化物のAl2O3換算値の合計は0.1〜0.9%とする。なお、Al酸化物は、フラックス中からアルミナ等から添加できる。
Si酸化物は、溶融スラグの粘性や融点を調整してスラグ被包性を向上させる効果がある。しかし、Si酸化物のSiO2換算値の合計が0.1%未満では、この効果が十分に得られない。一方、Si酸化物のSiO2換算値の合計が1%超では、溶融スラグの塩基度が低下することにより、溶接金属の酸素量が増加して低温靭性が低下する。従って、Si酸化物のSiO2換算値の合計は0.1〜1%とする。なお、Si酸化物は、フラックスから珪砂、ジルコンサンド、珪酸ソーダ等から添加できる。
Zr酸化物は、溶接スラグの粘性や融点を調整し、特に立向上進溶接における溶融メタルが垂れるのを防ぐ効果がある。しかし、Zr酸化物のZrO2換算値の合計が0.01%未満では、この効果が十分に得られない。一方、Zr酸化物のZrO2換算値の合計が0.8%超では、スラグ剥離性が悪くなる。従って、Zr酸化物のZrO2換算値の合計は0.01〜0.8%とする。なお、Zr酸化物は、フラックスからジルコンサンド、酸化ジルコニウム等から添加できる。
Mgは、強脱酸剤として機能することにより溶接金属中の酸素を低減し、溶接金属の低温靱性及びCTOD値を高める効果がある。しかし、Mgが0.1%未満では、この効果が十分に得られない。一方、Mgが0.8%超では、溶接時にアーク中で激しく酸素と反応してスパッタやヒュームの発生量が多くなる。従って、Mgは0.1〜0.8%とする。なお、Mgは、フラックスから金属Mg、Al−Mg等の合金粉末から添加できる。
Na及びK化合物は、アーク安定剤及びスラグ形成剤としてとして作用する。Na及びK化合物のNa2O換算値及びK2O換算値の合計が0.05%未満であると、アークが不安定となりスパッタ発生量が多くなる。また、ビード外観も不良になる。一方、Na及びK化合物のNa2O換算値及びK2O換算値の合計が0.2%を超えると、スラグ剥離性が不良となる。また、立向上進溶接ではメタルが垂れやすくなる。従って、Na及びK化合物のNa2O換算値とK2O換算値の合計は0.05〜0.2%とする。なお、Na及びK化合物は、カリ長石、珪酸ソーダ及び珪酸カリからなる水ガラスの固質成分、弗化ソーダ、珪弗化カリウム等の粉末から添加できる。
弗素化合物は、アークを安定させる効果がある。しかし、弗素化合物のF換算値の合計が0.01%未満では、この効果が十分に得られない。一方、弗素化合物のF換算値の合計が0.3%を超えると、アークが不安定になり、スパッタ発生量が多くなる。さらに、立向上進溶接では溶融メタル垂れが発生しやすくなる。従って、弗素化合物のF換算値の合計は0.01〜0.3%とする。なお、弗素化合物は、CaF2、NaF、KF、LiF、MgF2、K2SiF6、AlF3等から添加でき、F換算値はそれらに含有されるF量の合計である。
ワイヤの水素は、溶接金属の拡散性水素源となるので、可能な限り低減する必要がある。ワイヤ全質量に対する質量比でワイヤの全水素量が20ppmを超えると、拡散性水素量(JIS Z 3118)が4ml/100gを超えるので、多層盛溶接をした場合に、低温割れ感受性が高まる。従って、ワイヤ中の全水素量は、ワイヤ全質量に対する質量比で20ppm以下とする。なお、ワイヤ中の全水素量は、不活性ガス熱伝導度法などにより測定することができる。
Alは、溶接時に溶接スラグにAl酸化物として溶接スラグに含まれることによって溶接スラグの粘性や融点を調整し、特に立向上進溶接における溶融メタルが垂れ落ちるのを防ぐ効果がある。しかし、Alが0.3%を超えると、Alは、酸化物として過度に溶接金属に残留して溶接金属の靭性が低下する。従って、Alは0.3%以下とする。なお、Alは、鋼製外皮に含まれる成分の他、フラックスからの金属Al、Fe−Al、Al−Mg等の合金粉末から添加できる。
Nは、微量の添加で介在物の組成を核生成促進に効果的なTiNの生成により、溶接金属の凝固組織が微細になり、耐高温割れ性が改善される。しかし、Nが0.008%を超えると、溶接部へのNの溶解度が小さい軟鋼または高張力鋼からなる鋼板を溶接する場合、溶接部の溶解度を超えるため、溶接金属中にブローホールが発生する。またNが0.008%を超えると、却って靭性が低下する。従って、Nは0.008%以下とする。なお、N源は、鋼製外皮に含まれる成分の他、脱酸剤や合金粉に金属窒化物として含まれる。
Vは、微細な窒炭化物を析出し、溶接金属の強度を向上させる。しかし、Vが0.03%を超えると、強度が過多となり靭性が低下する。従って、Vは0.03%以下とする。
Nbは、微細な窒炭化物を析出し、溶接金属の強度を向上させる。しかし、Nbが0.03%を超えると、強度が過多となり靭性が低下する。従って、Nbは0.03%以下とする。
[V]、[Nb]は、V、Nbのそれぞれのワイヤ全質量に対する質量%で、鋼製外皮とフラックスとの合計を示す。VおよびNbは、ともに微細な窒炭化物を析出し、溶接金属の強度を向上させるが、[V]+2×[Nb]が0.07%を超えると、強度が過多となり靭性が低下する。従って、[V]+2×[Nb]は0.07%以下とする。
Biは、多層盛溶接において溶接スラグの溶接金属からの剥離を促進させて、スラグ剥離性を良好にする。Bi及びBi酸化物に含まれるBi換算値が0.003%未満であると、その効果が不十分である。一方、Bi及びBi酸化物に含まれるBi換算値が0.01%を超えると、溶接金属に割れが生じる場合があり、また靭性が低下する。従って、Bi及びBi酸化物に含まれるBi換算値は0.003〜0.01%とする。
本発明のAr−CO2混合ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤは、鋼製外皮をパイプ状に成形し、その内部にフラックスを充填した構造である。ワイヤの種類としては、成形した鋼製外皮の合わせ目を溶接して得られる鋼製外皮に継目の無いワイヤと、鋼製外皮の合わせ目の溶接を行わないままとした鋼製外皮に継目を有するワイヤとに大別できる。本発明においては、何れの断面構造のワイヤを採用することができるが、鋼製外皮に継目が無いワイヤは、ワイヤ中の全水素量を低減することを目的とした熱処理が可能であり、また製造後のフラックスの吸湿が無いため、溶接金属の拡散性水素量を低減し、耐低温割れ性の向上を図ることができるので、より好ましい。
Claims (4)
- 鋼製外皮にフラックスを充填してなるAr−CO2混合ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤにおいて、
ワイヤ全質量に対する質量%で、鋼製外皮とフラックスとの合計で、
C:0.03〜0.08%、
Si:0.2〜0.6%、
Mn:1.0〜2.5%、
Cu:0.1〜0.5%、
Ni:1.6〜3.5%、
Ti:0.01〜0.2%、
B:0.002〜0.015%、
さらに、ワイヤ全質量に対する質量%で、フラックス中に、
Ti酸化物:TiO2換算値の合計で3〜8%、
Al酸化物:Al2O3換算値の合計で0.1〜0.9%、
Si酸化物:SiO2換算値の合計で0.1〜1%、
Zr酸化物:ZrO2換算値の合計で0.01〜0.8%、
Mg:0.1〜0.8%、
Na及びK化合物:Na2O換算値とK2O換算値との合計で0.05〜0.2%、
弗素化合物:F換算値の合計で0.01〜0.3%を含有し、
残部が鋼製外皮のFe、鉄粉、鉄合金粉のFe分及び不可避不純物からなり、
ワイヤ中の全水素量が、ワイヤ全質量に対する質量比で20ppm以下であることを 特徴とするAr−CO2混合ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。 - ワイヤ全質量に対する質量%で、鋼製外皮とフラックスとの合計で、
Al:0.3%以下、
N:0.008%以下、
V:0.03%以下、
Nb:0.03%以下で、
かつ、[V]+2×[Nb]:0.07%以下、
の何れか1以上を更に含有することを特徴とする請求項1に記載のAr−CO2混合ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。
但し、[V]、[Nb]は、V、Nbのそれぞれのワイヤ全質量に対する質量%で、鋼製外皮とフラックスとの合計を示す。 - ワイヤ全質量に対する質量%で、フラックス中に、
Bi及びBi酸化物:Bi換算値で0.003〜0.01%を更に含有することを特徴とする請求項1または2に記載のAr−CO2混合ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。 - 成形した鋼製外皮に合わせ目を溶接することで鋼製外皮に継目を無くしたことを特徴とする請求項1乃至3のうち何れか1項に記載のAr−CO2混合ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。
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