JP6863862B2 - ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ - Google Patents

ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ Download PDF

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Description

本発明は、490〜550MPa級鋼のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤであって、特に高電流で溶接を行うときのヒューム発生量が少なく、溶接作業性に優れ、さらに大入熱・高パス間温度の溶接施工条件下においても良好な機械的性能の溶接金属を得ることができるガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤに関する。
建築鉄骨分野では、溶接施工の能率向上を図るため、高電流域でのガスシールドアーク溶接法が従来より使用されている。ガスシールドアーク溶接用ソリッドワイヤを用いた高電流溶接では、1層毎の溶着量を多くすることができるため溶接の高能率化が可能であるが、アークが不安定でスパッタ発生量が多く、ビード外観・形状が不良であるなど溶接作業性が悪いという問題がある。
一方、ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤを用いた高電流溶接では、ヒューム発生量が多くなるという問題の他、スラグ発生量も多くなるので、スラグ巻込み等の溶接欠陥が発生しやすくなるという問題がある。
これらの問題を解決する手段として、スパッタ発生量が少ないガスシールドアーク溶接用ソリッドワイヤの開発が既に行われおり、例えば特許文献1には、二硫化モリブデン、リン脂質及び常温で液体の潤滑剤からなる送給潤滑剤をワイヤ表面に適量付着させることでワイヤ送給性を良好にし、溶接時のスパッタ発生量を低減する技術が開示されている。また特許文献2には、2種類以上のアルカリ金属を含浸させたアルカリ金属含浸部をワイヤ表層下に形成させることでスパッタ発生量を低減できるガスシールドアーク溶接用ソリッドワイヤが開示されている。しかし、ガスシールドアーク溶接用ソリッドワイヤを用いた高電流溶接では、発生するスパッタ自体が多いため、たとえワイヤ送給性が良好になってもスパッタ発生量を十分に低減できず、またビード外観・形状も改善することができないという問題があった。
一方、ヒューム発生量が少ないガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤの開発も行われており、例えば特許文献3には、鋼製外皮中の低C化及びTi、Alの複合添加によりヒューム発生原因のひとつであるCO、CO2の生成を抑制させることでヒューム量を低減する技術が開示されている。このフラックス入りワイヤは、ヒューム発生量の低減については良好であるが、安定した溶接金属の強度及び靱性を得ることはできない。また、スラグ系フラックス入りワイヤのためスラグ生成量が多くなるという問題があった。
また近年では、更なる溶接施工の高能率化を目的として、大入熱・高パス間温度の溶接施工条件に対応するガスシールドアーク溶接用ソリッドワイヤが開発されており、JIS Z3312 YGW18に規定されている。このようなガスシールドアーク溶接用ソリッドワイヤは、溶接金属の強度及び靭性の低下を招くことなく溶接施工が可能な条件として、引張強さが490MPa級の高張力鋼に対して、最大入熱40kJ/cm、最高パス間温度350℃の溶接施工条件が許容される。また、引張強さが520MPa級の高張力鋼に対しては、最大入熱30kJ/cm、最高パス間温度250℃の溶接施工条件が許容される。
大入熱・高パス間温度の溶接施工条件に対応したガスシールドアーク溶接用ソリッドワイヤは、例えば、特許文献4〜6にあるように、ワイヤ中にMo、Cr等を多く含有したものが提案されている。これらソリッドワイヤによれば、大入熱・高パス間温度の溶接施工条件においても、溶接金属の強度及び靭性を確保することが可能であるが、やはりアークが不安定でスパッタ発生量が多く、ビード外観・形状が不良であるなど溶接作業性が悪いという問題があった。
大入熱・高パス間温度の溶接施工条件で溶接金属の強度及び靭性を確保しつつ、溶接作業性が良好なガスシールドアーク溶接用ワイヤとして、例えば特許文献7や特許文献8には、大入熱・高パス間温度の溶接施工条件の下で、良好な溶接作業性が得られるとともに、機械的性能に優れた溶接金属が得られるフラックス入りワイヤが開示されている。しかし、これらのフラックス入りワイヤでは、ヒューム発生量が多いという問題があった。また、後者はスラグ発生量も多くなるので、スラグ巻込み等の溶接欠陥が発生しやすくなるという問題があった。
特開2006−95551号公報 特開2009−255142号公報 特開平8−197284号公報 特開平10−230387号公報 特開平11−90678号公報 特開2001−287086号公報 特開2005−279683号公報 特開2011−25298号公報
そこで本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、490〜550MPa級鋼のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤであって、特に高電流の溶接を行うときのヒューム発生量及びスパッタ発生量が少なく、溶接作業性に優れ、さらに大入熱・高パス間温度の溶接施工条件においても良好な機械的性能の溶接金属を得ることができるガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤを提供することを目的とする。
本発明者らは、490〜550MPa級鋼における高電流の溶接、さらに大入熱・高パス間温度でのガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤについて、適正な強度及び靱性を有する溶接金属が得られるとともに、アークが安定し、ヒューム発生量及びスパッタ発生量が少なく、ビード形状・ビード外観に優れ、スラグ剥離性が良好であり、溶接欠陥が防止できるなど良好な溶接作業性が得られるガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤの成分組成について詳細に検討した。
その結果、充填フラックス中のCの含有量を少なくすることにより高電流の溶接施工条件においてもヒューム発生量を低減できることを見出した。
また、その他の溶接作業性については、ワイヤ中のC、弗素化合物のF換算値の合計及びNa化合物及びK化合物のNa2O換算値及びK2O換算値の合計を適正化することでアークを安定化させてスパッタ発生量を低減させ、SiO2を適量とすることでビード形状・ビード外観を良好にするとともに、Sを適正化することでスラグ剥離性を良好にすることを見出した。
さらに、高電流の溶接施工条件においても溶接金属の適正な強度と安定した靱性を達成するために、ワイヤ中のスラグ生成剤である酸化物を極力減らし、合金成分のC、Si、Mn、Cu、Tiのそれぞれの適正化が有効であることを見出した。
また、ワイヤ中のMo、B量を適正にすることにより、大入熱・高パス間温度の溶接施工条件においても、溶接金属の靱性を低下させることなく高強度化が可能であることも見出した。
すなわち、本発明の要旨は、鋼製外皮にフラックスを充填してなるガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤにおいて、ワイヤ全質量に対する質量%で、鋼製外皮とフラックスの合計で、C:0.02〜0.10%、Si:0.4〜1.6%、Mn:1.5〜3.0%、S:0.008〜0.030%、Cu:0.05〜0.5%を含有し、さらに、ワイヤ全質量に対する質量%で、フラックス中に、C:0.02以下、Ti:0.1〜0.4%、弗素化合物:F換算値の合計で0.005〜0.1%、SiO2:0.01〜0.2%、Na化合物及びK化合物:Na2O換算値とK2O換算値の合計で0.02〜0.15%を含有し、残部が鋼製外皮のFe、鉄粉、鉄合金粉のFe分及び不可避不純物からなることを特徴とする。
また、ワイヤ全質量に対する質量%で、鋼製外皮とフラックスの合計で、Mo:0.15〜0.5%、B:0.0015〜0.010%をさらに含有することも特徴とするガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤにある。
上述した構成からなる本発明を適用したガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤによれば、490〜550MPa級鋼を溶接するにあたり、特に高電流の溶接を行うときのヒューム発生量及びスパッタ発生量が少なく、アークの安定性が良好で、ビード形状・ビード外観に優れ、スラグ生成量が少なく溶接欠陥を防止できるなど溶接作業性が良好で、さらに、大入熱・高パス間温度の溶接施工条件においても溶接金属の強度及び靱性を十分に確保し、高能率に高品質な溶接金属を得ることができる。
本発明のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤは、各成分組成それぞれの単独及び共存による相乗効果によりなし得たもので、以下にそれぞれの各成分組成の限定理由について説明する。なお、各成分組成の含有率は、ワイヤ全質量に対する質量%で表すものとし、その質量%に関する記載を単に%と記載して表すこととする。
[鋼製外皮とフラックスの合計でC:0.02〜0.10%]
Cは、溶接金属の強度を向上させる効果がある。またCは、アークを安定させて溶滴を細粒化させる効果がある。Cが0.02%未満であると、十分な溶接金属の強度が得られない。またCが0.02%未満であると、溶滴の細粒化が困難となってアークが不安定でスパッタ発生量が多くなる。一方、Cが0.10%を超えると、溶接金属の強度が高くなり靱性が低下する。したがって、鋼製外皮とフラックスの合計でCは0.02〜0.10%とする。なお、Cは鋼製外皮に含まれる成分の他、フラックスから金属粉及び合金粉末等から添加できる。
[鋼製外皮とフラックスの合計でSi:0.4〜1.6%]
Siは、脱酸剤であり溶接金属の酸素量を調整する。またSiは、溶接金属の強度を向上させる効果がある。Siが0.4%未満であると、脱酸不足となり溶接金属の強度が低く、靱性が低下する。一方、Siが1.6%を超えると、溶接金属の強度が過剰に高くなり、靱性が安定して得られない。またSiが1.6%を超えると、溶接時に生成するスラグ量が増加してスラグ巻込み等の溶接欠陥が発生しやすくなる。したがって、鋼製外皮とフラックスの合計でSiは0.4〜1.6%とする。なお、Siは鋼製外皮に含まれる成分の他、フラックスから金属Si、Fe−Si、Fe−Si−Mn等の合金粉末から添加できる。
[鋼製外皮とフラックスの合計でMn:1.5〜3.0%]
Mnは、溶接金属の靱性及び強度を向上させる効果がある。Mnが1.5%未満であると、溶接金属の強度が低くなり靱性が低下する。一方、Mnが3.0%を超えると、溶接金属の強度が高くなり、靱性が安定して得られない。またMnが3.0%を超えると、溶接時に生成するスラグ量が増加してスラグ巻込み等の溶接欠陥が発生しやすくなる。したがって、鋼製外皮とフラックスの合計でMnは1.5〜3.0%とする。なおMnは、鋼製外皮に含まれる成分の他、金属Mn、Fe−Mn、Fe−Si−Mn等の合金粉末から添加できる。
[鋼製外皮とフラックスの合計でS:0.008〜0.030%]
Sは、溶接金属からのスラグ剥離を促進する作用と、スラグの結晶化度を低下させる作用を有し、スラグ剥離性を向上させる効果がある。Sが0.008%未満であると、この効果が得られず、スラグ剥離性が劣化する。一方、Sが0.030%を超えると、溶接金属に割れが発生しやすくなる。したがって、鋼製外皮とフラックスの合計でSは0.008〜0.030%とする。なお、Sは鋼製外皮に含まれる成分の他、フラックスからFeS等の合金粉末から添加できる。
[鋼製外皮とフラックスの合計でCu:0.05〜0.5%]
Cuは、析出強化作用を有し、変態温度を低下させ溶接金属の組織を微細化して靭性を安定させる効果がある。Cuが0.05%未満であると、この効果が得られず、安定した溶接金属の靱性が得られない。一方、Cuが0.5%を超えると、析出脆化が生じて溶接金属の靭性が低下し、また高温割れが発生しやすくなる。したがって、鋼製外皮とフラックスの合計でCuは0.05〜0.5%とする。なお、Cuは、鋼製外皮に含まれる成分及び鋼製外皮表面に施したCuめっき分の他、フラックスからの金属Cu、Fe−Si−Cu等の合金粉から添加できる。
[フラックス中のC:0.02%以下]
フラックス中のCは、合金粉末中に含まれる。しかし、フラックス中のCは、酸素と反応しやすく、COガス及びCO2ガスの生成を促進させるので、ヒュームの発生量が多くなる。特にその含有量が0.02%を超えるとヒュームの発生量が著しく多くなる。したがって、フラックス中のCは0.02%以下とする。なお、フラックス中のCは、C含有量の少ない合金粉末を用いることのよって0.02%以下とすることができる。また、フラックス中のCは必須成分ではなく、含有率が0%でもよい。
[フラックス中のTi:0.1〜0.4%]
Tiは、脱酸剤として作用するとともに、溶接金属中にTiの微細酸化物を生成し溶接金属の靭性をより向上させる効果がある。Tiが0.1%未満であると、この効果が得られず、溶接金属の靭性が低下する。一方、Tiが0.4%を超えると、溶接金属中の固溶Tiが多くなり、靭性が低下する。したがって、鋼製外皮とフラックスの合計でTiは0.1〜0.4%とする。なお、鋼製外皮にTiを添加すると、剛性が強くなりフラックス入りワイヤの成形工程で生産性が低下する。よって、Tiはフラックスからの金属Ti、Fe−Ti等の合金粉から添加する。
[フラックス中の弗素化合物:F換算値の合計:0.005〜0.1%]
弗素化合物は、アークを集中させて安定させる効果がある。弗素化合物のF換算値の合計が0.005%未満では、この効果が得られず、アークが不安定でスパッタ発生量が多くなる。一方、弗素化合物のF換算値の合計が0.1%を超えると、アークが荒く不安定になり、スパッタ発生量が多くなる。したがって、フラックス中に含有する弗素化合物のF換算値の合計は0.005〜0.1%とする。なお、弗素化合物は、フラックスからのCaF2、NaF、LiF、MgF2、K2SiF6、Na3AlF6、AlF3等から添加でき、F換算値はそれらに含有されるFの含有量の合計である。
[フラックス中のSiO2:0.01〜0.2%]
フラックス中のSi酸化物(SiO2)は、溶融スラグの粘性を高めてスラグ被包性を向上させてビード止端部のなじみを良好にし、ビード外観・形状を良好にする効果がある。SiO2が0.01%未満であると、溶接ビードのビード止端部のなじみが悪くなり、ビード外観・形状が悪くなる。一方、SiO2が0.2%を超えると、溶接金属中の酸素量が増加して靭性が低下する。また、SiO2が0.2%を超えるとスラグ量が多くなり、スラグ巻込み等の溶接欠陥が発生しやすくなる。したがって、フラックス中に含有するSiO2は0.01〜0.2%とする。なお、SiO2は、フラックスからの珪砂、珪酸ソーダ及び珪酸カリウムからなる水ガラスの固質成分等から添加できる。
[フラックス中のNa化合物及びK化合物:Na2O換算値とK2O換算値の合計で0.02〜0.15%]
Na化合物及びK化合物は、アークをソフトにして安定にする効果がある。Na化合物及びK化合物中のNa2O換算値とK2O換算値の合計が0.02%未満であると、アークが不安定になり、スパッタ発生量が多くなる。一方、Na化合物及びK化合物中のNa2O換算値とK2O換算値の合計が0.15%を超えると、アークが不安定でスパッタ発生量が多くなる。またNa化合物及びK化合物中のNa2O換算値とK2O換算値の合計が0.15%を超えると、溶接時に生成するスラグ量が多くなり、スラグ巻込み等の溶接欠陥が発生しやすくなる。したがって、フラックス中に含有するNa化合物及びK化合物中のNa2O換算値とK2O換算値の合計は0.02〜0.15%とする。なお、Na化合物やK化合物は、珪酸ソーダ及び珪酸カリウムからなる水ガラスの固質成分、NaF、K2SiF6等の粉末から添加できる。
[鋼製外皮とフラックスの合計でMo:0.15〜0.5%]
Moは、大入熱・高パス間温度の溶接施工条件で、溶接金属の強度を確保するうえで重要な効果がある。Moが0.15%未満であると、これらの効果が十分に得られず、大入熱・高パス間温度での溶接施工条件で溶接金属に必要な強度が得られない。一方、Moが0.5%を超えると、溶接金属の強度が過剰に高くなり、靭性が安定して得られない。したがって、鋼製外皮とフラックスの合計でMoは0.15〜0.5%とする。なお、Moは、鋼製外皮に含まれる成分の他、フラックスからの金属Mo粉から添加できる。
[鋼製外皮とフラックスの合計でB:0.0015〜0.010%]
Bは、大入熱・高パス間温度での溶接施工条件での溶接金属の組織を微細化して靭性を向上させる効果がある。Bが0.0015%未満であると、その効果が得られず、大入熱・高パス間温度での溶接施工条件で溶接金属の靭性が低下する。一方、Bが0.010%を超えると、粒界が脆化して靭性が低下し、また高温割れが発生しやすくなる。したがって、鋼製外皮とフラックスの合計でBは0.0015〜0.010%とする。なお、Bは、鋼製外皮に含まれる成分の他、Fe−Si−B、Fe−Mn−B等の合金粉から添加できる。
本発明のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤは、鋼製外皮をパイプ状に成形し、その内部にフラックスを充填した構造である。ワイヤの種類としては、成形した鋼製外皮の合わせ目を溶接して得られる鋼製外皮に継目の無いワイヤと、鋼製外皮に合わせ目の溶接を行わないままとした鋼製外皮に継目を有するワイヤとに大別できる。本発明においては、何れの断面構造のワイヤを採用することができるが、鋼製外皮に継目を有するワイヤは、溶接金属の強度が高くなると低温割れが生じやすくなるので水分含有量の少ない原材料を用いる必要がある。一方、鋼製外皮に継目が無いワイヤは、ワイヤ中の全水素量を低減することを目的とした熱処理が可能であり、また製造後のフラックスの吸湿が無いため、溶接金属の拡散性水素量を低減し、耐低温割れ性の向上を図ることができるので、より好ましい。
本発明のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤの残部は、鋼製外皮のFe、成分調整のために添加する鉄粉、Fe−Si、Fe−Mn、Fe−Ti合金などの鉄合金粉のFe分及び不可避不純物である。不可避不純物については特に規定しないが、高温割れ及び溶接金属の靱性の観点から、Al:0.1%以下、P:0.05%以下であることが好ましい。
また、フラックス充填率は特に限定しないが、生産性の観点からワイヤ全質量に対して8〜20%とするのが好ましい。
なお、シールドガスは、炭酸ガスとし、シールドガスの流量は耐欠陥性及び大気からの窒素の混入を防ぐために20〜35リットル/分であることが好ましい。
以下、本発明の効果を実施例により具体的に説明する。
表1に示す化学成分のJIS G3141に規定されるSPCCを鋼製外皮として使用し、鋼製外皮をU字形に成形、フラックス充填率を8〜20%で充填してC字形に成形した後、鋼製外皮の合わせ目を溶接して造管、伸線し、表2に示す各種成分のフラックス入りワイヤを試作した。なお、試作したワイヤ径は1.4mmとした。
Figure 0006863862
Figure 0006863862
表2に示す試作したフラックス入りワイヤを用いて、アーク安定性、ヒューム発生量、スパッタ発生量、スラグ剥離性、ビード外観・形状及び溶接金属性能の調査を行った。
溶接作業性及び溶接金属性能は、表3に示す条件No.T1の施工条件で、35°レ形開先、ルートギャップ8mmの裏当金付きの試験体を用いた多層盛溶接金属試験を行い、溶接時のアーク安定性及びビード外観・形状を調査した。なお、溶接時のワイヤ送給は6m長さのコンジットケーブルを用いた。溶接終了後、裏当金を削除してX線透過試験を行った。また、溶接金属部からA0号引張試験片及び衝撃試験を採取して機械的性能を調査した。
強度の評価は、引張強さが490〜690MPa、靭性の評価は、0℃におけるシャルピー衝撃試験を各5本実施し、吸収エネルギーの平均値が80J以上、最低値が60J以上を良好とした。
ヒュームの発生量は、JIS Z 3930に準じ、1分間溶接した際に発生するヒュームの重量を測定することにより、単位時間当たりの値(g/min)を求めた。なお、ヒュームの測定は、表3に示す条件No.T2の施工条件で3回測定した平均値とし、800g/min以下を良好とした。
スパッタの発生量は、銅製の捕集箱を用いて、1分間溶接した際に発生するスパッタの重量を測定することにより、単位時間当りの値(g/min)を求めた。なお、スパッタの測定は、表3に示す条件No.T2の施工条件で5回測定した平均値とし、1.5g/min以下を良好とした。それらの結果を表4にまとめて示す。
Figure 0006863862
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表2及び表4中のワイヤ記号W1〜W8、W10が本発明例、ワイヤ記号W11〜W15、W17、W18、W20は比較例である。本発明例であるワイヤ記号W1〜W8、W10は、フラックス入りワイヤ中のC、Si、Mn、S、Cuの含有量が適正で、フラックス中のC、Ti、弗素化合物のF換算値の合計、SiO、Na化合物及びK化合物のNaO換算値とKO換算値の合計が適量であるので、大電流の溶接施工条件においてもアークが安定して、ヒューム発生量及びスパッタ発生量が少なく、スラグ剥離性及びビード外観・形状が良好で、溶接欠陥がなく、溶接金属の引張強さ及び吸収エネルギーの平均値及び最低値ともに良好で極めて満足な結果であった。
比較例中ワイヤ記号W11は、Cが少ないので、アークが不安定で、スパッタ発生量が多く、溶接金属の引張強さが低かった。また、Tiが多いので、溶接金属の吸収エネルギーが低値であった。さらに、Sが少ないのでスラグ剥離性が不良であった。
ワイヤ記号W12は、Cが多いので、溶接金属の引張強さが高く、吸収エネルギーが低値であった。また、Sが多いので、クレータ部に割れが生じた。
ワイヤ記号W13は、Siが少ないので、溶接金属の引張強さが低く、吸収エネルギーが低値であった。また、フラックス中のCが多いので、ヒューム発生量が多かった。
ワイヤ記号W14は、Siが多いので、溶接金属の引張強さが高く、吸収エネルギーの最低値が低かった。また、スラグ生成量が多くなりスラグ巻込み欠陥が生じた。さらに、F換算値の合計が少ないので、アークが不安定で、スパッタ発生量が多かった。
ワイヤ記号W15は、Mnが少ないので、溶接金属の引張強さが低く、吸収エネルギーが低値であった。また、F換算値の合計が多いので、アークが不安定で、スパッタ発生量が多かった。
ワイヤ記号W17は、Cuが少ないので、溶接金属の吸収エネルギーの最低値が低かった。また、Na2O換算値とK2O換算値の合計が少ないので、アークが不安定で、スパッタ発生量が多かった。
ワイヤ記号W18は、Cuが多いので、溶接金属の吸収エネルギーが低かった。また、クレータ割れが生じた。さらに、Na2O換算値とK2O換算値の合計が多いので、アークが不安定で、スパッタ発生量が多かった。また、スラグ生成量が多くなりスラグ巻込み欠陥が生じた。
ワイヤ記号W20は、SiO2が多いので、溶接金属の吸収エネルギーが低かった。また、スラグ生成量が多くなりスラグ巻込み欠陥が生じた。さらに、フラックス中のCが多いので、ヒューム発生量が多かった。
実施例1と同様に表1に示す化学成分のJIS G3141に規定されるSPCCを鋼製外皮として使用し、鋼製外皮をU字形に成形、フラックス充填率を8〜15%で充填してC字形に成形した後、鋼製外皮の合わせ目を溶接して造管、伸線し、表5に示す各種成分のフラックス入りワイヤを試作した。なお、試作したワイヤ径は1.4mmとした。
Figure 0006863862
表5に示す試作したフラックス入りワイヤを用いて、溶接作業性、ヒューム発生量、スパッタ発生量の測定及び溶接金属性能の調査を行った。
溶接作業性及び溶接金属性能は、表3に示す条件No.T3の大入熱・高パス間温度の施工条件で、35°レ開先、ルートギャップ8mmの裏当金付きの開先を用いた多層盛溶接金属試験を行い、実施例1と同様に溶接時のアークの安定性及びビード外観・形状を調査した。溶接終了後裏当金を削除してX線透過試験を実施した。また、溶接金属部からA0号引張試験片及び衝撃試験を採取して機械的性能を調査した。
引張強さは、520〜720MPa、靭性の評価は、0℃におけるシャルピー衝撃試験を各5本実施し、吸収エネルギーの平均値は80J以上、最低値は60J以上を良好とした。
ヒュームの発生量は、JIS Z3930に準じ、1分間溶接した際に発生するヒュームの重量を測定することにより、単位時間当たりの値(g/min)を求めた。なお、ヒュームの測定は、表3に示す条件No.T2の施工条件で3回測定した平均値とし、800g/min以下を良好とした。
スパッタの発生量は、銅製の捕集箱を用いて、1分間溶接した際に発生するスパッタの重量を測定することにより、単位時間当りの値(g/min)を求めた。なお、スパッタの測定は、表3に示す条件No.T2の施工条件で5回測定した平均値とし、1.5g/min以下を良好とした。それらの結果を表6にまとめて示す。
Figure 0006863862
表5及び表6中のワイヤ記号W23が本発明例、ワイヤ記号W26は比較例である。本発明例であるワイヤ記号W23は、フラックス入りワイヤ中のC、Si、Mn、S、Cu、Mo及びBの含有量が適正で、フラックス中のC、Ti、弗素化合物のF換算値の合計、SiO、Na化合物及びK化合物のNaO換算値とKO換算値の合計が適量であるので、大電流・高パス間温度の溶接施工条件においてもアークが安定して、ヒューム発生量及びスパッタ発生量が少なく、スラグ剥離性及びビード外観・形状が良好で、溶接欠陥がなく、溶接金属の引張強さ及び吸収エネルギーの平均値及び最低値ともに良好で極めて満足な結果であった。
ワイヤ記号W26は、Moが多いので、溶接金属の引張強さが高く、吸収エネルギーの最低値が低かった。

Claims (2)

  1. 鋼製外皮にフラックスを充填してなるガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤにおいて、
    ワイヤ全質量に対する質量%で、鋼製外皮とフラックスの合計で、
    C:0.02〜0.10%、
    Si:0.4〜1.6%、
    Mn:1.5〜3.0%、
    S:0.008〜0.030%、
    Cu:0.05〜0.5%を含有し、
    さらに、ワイヤ全質量に対する質量%で、フラックス中に、
    C:0.02%以下、
    Ti:0.1〜0.4%、
    弗素化合物:F換算値の合計で0.005〜0.1%、
    SiO2:0.01〜0.2%、
    Na化合物及びK化合物:Na2O換算値とK2O換算値の合計で0.02〜0.15%を含有し、
    残部が鋼製外皮のFe、鉄粉、鉄合金粉のFe分及び不可避不純物からなることを特徴とするガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。
  2. ワイヤ全質量に対する質量%で、鋼製外皮とフラックスの合計で、
    Mo:0.15〜0.5%、
    B:0.0015〜0.010%をさらに含有することを特徴とする請求項1に記載のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。
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