JP7221742B2 - パルスmag多層盛溶接方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤを用いたパルスMAG多層盛溶接方法に関し、大入熱及び高パス間温度の溶接施工条件においても優れた溶接金属性能が得られ、かつ、溶接時のアークが安定してスパッタ発生量が少なく、優れたビード外観が得られるなど溶接作業性が良好なパルスMAG多層盛溶接方法に関する。
建築鉄骨分野では、高能率な溶接方法としてガスシールドアーク溶接が多く使用されているが、更なる溶接施工の能率向上を図る目的から、大入熱及び高パス間温度の溶接施工条件に対応できる溶接用ソリッドワイヤが開発され、JIS Z3312 YGW18系に規定されている。このようなJIZ Z3312 YGW18系に規定されたソリッドワイヤを用いることで、大入熱及び高パス温度での溶接施工条件でも優れた溶接金属の機械性能を確保できる。このため、大型の溶接構造物のような高い溶接効率が求められる溶接現場ではYGW18系のソリッドワイヤを用いて高電流、高パス間温度の溶接施工条件で多層盛のガスシールドアーク溶接で溶接施工されることが多い。
しかし、YGW18系のソリッドワイヤによるガスシールドアーク溶接では、アークが不安定でスパッタ発生量が多く、ビード外観が不良であるなど溶接作業性が悪いという問題点があった。また、スパッタ発生量が多く大粒になるため、鋼板表面に付着したスパッタを除去する作業も困難となり溶接作業効率が悪くなるという問題点もあった。
これら問題点を解決するための技術として、スパッタ発生量が少なく、ビード外観が良好など溶接作業性に優れるガスシールドアーク溶接用ワイヤの開発が行われている。例えば特許文献1には、ソリッドワイヤ表面に二硫化モリブデン、リン脂質及び常温で液体の潤滑剤からなる送給潤滑剤を適量付着させることでワイヤ送給性を良好にし、溶接時のスパッタ発生量を低減する技術が開示されている。
また、特許文献2には、ワイヤ表層下にアルカリ金属含浸部を有することでスパッタ発生量を低減できる溶接用ソリッドワイヤが開示されている。
しかし、これら溶接用ソリッドワイヤを使用した高電流域のガスシールドアーク溶接では、発生するスパッタ自体が多いので、たとえワイヤ送給性が良好になったとしてもスパッタ発生量を十分に低減できず、ビード外観も改善されないという問題点があった。
ガスシールドアーク溶接でのスパッタ発生量を低減する方法としては、特許文献3において、溶接電流にパルスを付与して溶滴の脱落を促進することで溶滴の肥大化を抑制することによりスパッタ発生量を低減するパルスアーク溶接方法が開示されている。しかし特許文献3に開示されたパルスアーク溶接方法によれば、通常の溶接電流域では溶接時のスパッタ発生量は低減できるものの、550A以上の高電流域でのパルスアーク溶接では、アーク長の変動が非常に大きく、適正条件が少しでもずれると逆にスパッタ発生量が多くなるという問題点があった。
一方、特許文献4には、溶接作業性に優れるフラックス入りワイヤを用いたArガスを使用したパルス溶接方法が開示されている。特許文献4に開示された溶接方法によれば、高電流域でもスパッタ発生量を低減でき、ビード外観も改善することが可能となる。しかし、特許文献4に開示されたパルス溶接方法は、フラックス入りワイヤに積極的にSを添加して溶融池の対流を制御し、溶接ビード上のスラグ生成を抑制する溶接方法であるので、多層盛溶接に適用した場合、高温割れが生じやすくなるという問題点があった。
特開2006-95551号公報 特開2009-255142号公報 特開2016-40046号公報 特開2013-132690公報
そこで本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤを用いたパルスMAG多層盛溶接方法において、大入熱及び高パス間温度の溶接施工条件においても優れた溶接金属性能が得られ、かつ、溶接時のアークが安定してスパッタ発生量が少なく、優れたビード外観が得られるなど溶接作業性が良好なパルスMAG多層盛溶接方法を提供することを目的とする。
本発明の要旨は、パルスMAG多層盛溶接方法において、ワイヤ全質量に対する質量%で、鋼製外皮とフラックスの合計で、C:0.03~0.20%、Si:0.4~1.5%、Mn:1.5~3.0%、Cu:0.05~0.5%、Ti:0.1~0.5%、Mo:0.15~0.50%、B:0.0015~0.0100%を含有し、Al:0.01%以下であり、さらに、ワイヤ全質量に対する質量%で、フラックス中に、Si酸化物のSiO2換算値の合計:0.01~0.20%、金属弗化物のF換算値の合計:0.01~0.10%、Na化合物及びK化合物のNa2O換算値及びK2O換算値の合計:0.02~0.15%を含有し、残部が鋼製外皮のFe、鉄粉、鉄合金粉のFe分及び不可避不純物からなるガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤを用いて、パルスピーク電流(Ip):460~550A、パルスベース電流(Ib):40~80Aとし、パルスピーク幅(Tp):0.7~2.0msecのパルスを付加して多層盛溶接することを特徴とするパルスMAG多層盛溶接方法にある。
本発明のパルスMAG多層盛溶接方法によれば、ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤを用いたパルスMAG多層盛溶接において、大入熱及び高パス間温度の溶接施工条件においても優れた溶接金属性能が得られ、かつ、溶接時のアークが安定してスパッタ発生量が少なく、優れたビード外観が得られるなど良好な溶接作業性が得られるので、溶接部の品質及び溶接能率の向上を図ることができる。
本発明者らは、上記問題点を解決するために、ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤを用いたパルスMAG多層盛溶接を行う上で、大入熱及び高パス間温度の溶接施工条件においても優れた溶接金属性能が得られ、溶接時にアークが安定し、スパッタ発生量が少なく、優れたビード外観が得られるなど溶接作業性が良好なガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤの成分組成及びパルスMAG多層盛溶接の適正なパルス条件について、詳細に検討した。
その結果、大入熱でのパルスMAG多層盛溶接時のアークの安定性を確保し、スパッタ発生量の低減を図るためには、Na化合物とK化合物のNa2O換算値とK2O換算値の合計量及び金属弗化物のF換算値の合計量を適正にし、Alの含有量を限定することを見出した。また、Si酸化物を適量含有させることにより、ビード外観を良好にすることができることを見出した。
また、大入熱及び高パス間温度でのパルスMAG多層盛溶接においても溶接金属の適正な強度を確保するとともに安定した靭性の向上をも達成させるためには、ワイヤ中のスラグ生成剤である酸化物を極力減らし、合金成分のC、Si、Mn、Cu、Ti、Mo、B及びAlの各含有量におけるそれぞれの適正化が有効であることを知見した。
上述した成分組成のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤを用いて、パルスMAG多層盛溶接する場合のパルス条件のパルスピーク電流(Ip)、パルスベース電流(Ib)及びパルスピーク幅(Tp)を調整して1パルス1ドロップの溶滴移行となる領域にすることで、ビード外観が良好でアークが安定し、スパッタ発生量の少ない溶接が可能となる。
以下、本発明を適用したパルスMAG多層盛溶接方法及びこれに用いられるガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤについて詳細に説明する。なお、ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤの各成分組成の含有率は、ワイヤ全質量に対する質量%で表すものとし、その質量%に対する記載を単に%と記載する。
[鋼製外皮とフラックスの合計でC:0.03~0.20%]
Cは、固溶強化により溶接金属の強度を向上させるために必要な元素である。Cが0.03%未満であると、必要な溶接金属の強度が得られない。一方、Cが0.20%を超えると、溶接金属の強度が過剰に高くなり、靭性が低下する。またCが0.20%を超えると、高温割れ感受性が高くなる。従って、鋼製外皮とフラックスの合計でCは0.03~0.20%とする。なお、Cは、鋼製外皮に含まれる成分の他、フラックスから金属粉及び合金粉等から添加できる。
[鋼製外皮とフラックスの合計でSi:0.4~1.5%]
Siは、溶接金属の脱酸及び溶接金属の強度確保のために添加する。Siが0.4%未満であると、溶接金属が脱酸不足となって溶接金属の靭性が低下するとともに、必要な溶接金属の強度が得られない。一方、Siが1.5%を超えると、溶接金属の強度が過剰に高くなり、靭性が安定して得られない。また、Siが1.5%を超えると、溶接時に生成するスラグ量が増加してスラグ巻き込み等の溶接欠陥が発生しやすくなる。従って、鋼製外皮とフラックスの合計でSiは0.4~1.5%とする。なお、Siは、鋼製外皮に含まれる成分の他、フラックスから金属Si、Fe-Si、Fe-Si-Mn等の合金粉から添加できる。
[鋼製外皮とフラックスの合計でMn:1.5~3.0%]
Mnは、溶接金属の靭性確保と強度向上のために添加する。Mnが1.5%未満であると、溶接金属の強度が低く、靭性が十分に確保できなくなる。一方、Mnが3.0%を超えると、溶接金属の靭性が安定して得られず、また生成スラグ量が増加してスラグ巻き込み等の溶接欠陥が発生しやすくなる。従って、鋼製外皮とフラックスの合計でMnは1.5~3.0%とする。なお、Mnは、鋼製外皮に含まれる成分の他、フラックスからの金属Mn、Fe-Mn、Fe-Si-Mn等の合金粉末から添加できる。
[鋼製外皮とフラックスの合計でCu:0.05~0.5%]
Cuは、析出強化作用を有し、変態温度を低下させて溶接金属の組織を微細化して靭性を安定させる。Cuが0.05%未満であると、安定した溶接金属の靭性が得られない。一方、Cuが0.5%を超えると、析出脆化が生じて溶接金属の靭性が低下するとともに、高温割れが発生しやすくなる。従って、鋼製外皮とフラックスの合計でCuは0.05~0.5%とする。なお、Cuは、鋼製外皮に含まれる成分及びフラックス入りワイヤ表面に施したCuめっき分の他、フラックスからの金属Cu、Fe-Si-Cu等の合金粉から添加できる。
[鋼製外皮とフラックスの合計でTi:0.1~0.5%]
Tiは、脱酸剤として作用するとともに、溶接金属中にTiの微細酸化物を生成して溶接金属の靭性をより向上させる。Tiが0.1%未満であると、その効果が十分に得られず、溶接金属の靭性が低下する。一方、Tiが0.5%を超えると、溶接金属中の固溶Tiが多くなり、溶接金属の靭性が低下する。従って、鋼製外皮とフラックスの合計でTiは0.1~0.5%とする。なお、Tiは、鋼製外皮に含まれる成分の他、フラックスからの金属Ti、Fe-Ti等の合金粉から添加できる。
[鋼製外皮とフラックスの合計でMo:0.15~0.50%]
Moは、大入熱及び高パス間温度の溶接施工条件で、溶接金属の強度を確保する上で重要な元素である。Moが0.15%未満であると、この効果が十分に得られず、大入熱及び高パス間温度での溶接施工条件で溶接金属の必要な強度が得られない。一方、Moが0.50%を超えると、溶接金属の強度が過剰に高くなり、靭性が安定して得られない。従って、鋼製外皮とフラックスの合計でMoは0.15~0.50%とする。なお、Moは、鋼製外皮に含まれる成分の他、フラックスからの金属Mo粉から添加できる。
[鋼製外皮とフラックスの合計でB:0.0015~0.0100%]
Bは、大入熱及び高パス間温度での溶接施工条件での溶接金属の組織を微細化して靭性を向上させる。Bが0.0015%未満であると、その効果が十分に得られず、大入熱及び高パス間温度での溶接施工条件で溶接金属の靭性が低下する。一方、Bが0.0100%を超えると、溶接金属の強度が過剰に高くなるとともに、粒界が脆化して溶接金属の靭性が低下する。従って、鋼製外皮とフラックスの合計でBは0.0015~0.0100%とする。なお、Bは、鋼製外皮に含まれる成分の他、Fe-Si-B、Fe-Mn-B等の合金粉から添加できる。
[鋼製外皮とフラックスの合計でAl:0.01%以下]
Alは、0.01%を超えると、溶接金属中に酸化物となって残留し、溶接金属の靭性を低下させる。またAlは、0.01%を超えると、アークが不安定となり、スパッタ発生量が増加する。従って、鋼製外皮とフラックスの合計で含有量は0.01%以下とする。なお、Alは必須の成分ではなく、含有率が0%でもよい。
[フラックス中のSi酸化物のSiO2換算値の合計:0.01~0.20%]
Si酸化物は、溶融スラグの粘性を高め、スラグ被包性を向上させビード止端部をなじみやすくしてビード外観を良好にする。Si酸化物のSiO2換算値の合計が0.01%未満であると、溶接ビードのビード止端部のなじみが悪くなり、ビード外観が不良となる。一方、Si酸化物のSiO2換算値の合計が0.20%を超えると、溶接金属中の酸素量が増加して靭性が低下する。また、Si酸化物のSiO2換算値の合計が0.20%を超えると、スラグ量自体が多くなってスラグ巻き込み等の溶接欠陥が発生しやすくなる。従って、フラックス中のSi酸化物のSiO2換算値の合計は0.01~0.20%とする。なお、SiO2は、フラックスからの珪砂、珪酸ソーダ及び珪酸カリウムからなる水ガラスの固質成分等から添加できる。
[フラックス中の金属弗化物のF換算値の合計:0.01~0.10%]
金属弗化物は、アークを集中させて安定させる効果を有する。金属弗化物のF換算値の合計が0.01%未満では、この効果が十分に得られず、アークが不安定でスパッタ発生量が多くなる。一方、金属弗化物のF換算値の合計が0.10%を超えると、アークが荒く不安定になり、スパッタ発生量が多くなる。従って、フラックス中の金属弗化物のF換算値の合計は0.01~0.10%とする。なお、金属弗化物は、フラックスからのCaF2、NaF、LiF、MgF2、K2SiF6、Na3AlF6、AlF3等から添加でき、F換算値はそれらに含有されるF量の合計である。
[フラックス中のNa化合物及びK化合物のNa2O換算値とK2O換算値の合計:0.02~0.15%]
Na化合物及びK化合物は、アークをソフトにして安定にする。Na化合物及びK化合物のNa2O換算値とK2O換算値の合計が0.02%未満であると、アークが不安定になり、スパッタ発生量が多くなる。一方、Na化合物及びK化合物のNa2O換算値とK2O換算値の合計が0.15%を超えると、アークが強くなりすぎて不安定となってスパッタ発生量が多くなる。また、Na化合物及びK化合物のNa2O換算値とK2O換算値の合計が0.15%を超えると、ビード止端部のなじみが悪くなってビード外観が不良となるとともに、生成するスラグ量が多くなってスラグ巻き込み等の溶接欠陥が発生しやすくなる。従って、フラックス中のNa化合物及びK化合物のNa2O換算値とK2O換算値の合計は0.02~0.15%とする。なお、Na化合物及びK化合物は、珪酸ソーダ及び珪酸カリウムからなる水ガラスの固質成分、K2SiO3、Na2SiO3、NaF、K2SiF6等の粉末から添加できる。
本発明に用いるガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤは、鋼製外皮をパイプ状に成型し、その内部にフラックスを充填した構造である。ワイヤの種類としては、成型した鋼製外皮の合わせ目を溶接して得られる鋼製外皮に継目が無いワイヤと、鋼製外皮に合わせ目を溶接しないままとした鋼製外皮に継目を有するワイヤに大別できる。本発明においては、何れの断面構造のワイヤを採用することができるが、鋼製外皮に継目を有するワイヤは、溶接金属の強度が高くなると低温割れが生じやすくなるので水分含有量の少ない原材料を用いる必要がある。一方、鋼製外皮に合わせ目の無いワイヤは、ワイヤ中の全水素量を低減することを目的とした熱処理が可能であり、また製造後のフラックスの吸湿が無いので、溶接金属の拡散性水素量を低減し、耐低温割れ性の向上を図ることができるので、より好ましい。
本発明に用いるガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤの残部は、鋼製外皮のFe、成分調整のために添加する鉄粉、Fe-Si、Fe-Mn、Fe-Si-Mn、Fe-Si-Cu、Fe-Ti合金等の鉄合金粉のFe分及び不可避不純物である。
また、フラックス充填率は特に限定しないが、生産性の観点からワイヤ全質量に対して5~20%とするのが好ましい。
以下、パルスMAG多層盛溶接する場合のパルス条件について詳細に説明する。
[パルスピーク電流(Ip):460~550A]
パルスピーク電流(Ip)は、パルス上部のピーク電流値であり、溶滴の離脱に影響するパラメータである。パルスピーク電流(Ip)が460A未満では、電磁ピンチ効果による溶滴の離脱がスムーズに行われなくなって1パルス1ドロップでの溶滴移行ができなくなり、アークが不安定となってスパッタ発生量が多くなるとともに、ビード外観が不良になる。一方、パルスピーク電流(Ip)が550Aを超えると、スパッタ発生量が多くなる。従って、パルスピーク電流(Ip)は460~550Aとする。
[パルスベース電流(Ib):40~80A]
パルスベース電流(Ib)は、パルス下部のベース電流値であり、このベース期間でアークを保持できる電流値が必要となる。パルスベース電流(Ib)が40A未満では、アークが不安定となってスパッタ発生量が多くなる。一方、パルスベース電流(Ib)が80Aを超えると、溶滴の離脱が速やかに行われず、アークが不安定となってスパッタ発生量が多くなる。従って、パルスベース電流(Ib)は40~80Aとする。
[パルスピーク幅(Tp):0.7~2.0msec]
パルスピーク幅(Tp)は、ピーク電流の保持時間であり、溶滴の離脱に影響するパラメータである。パルスピーク幅(Tp)が0.7msec未満では、電磁ピンチ効果による溶滴の離脱がスムーズに行われなくなって1パルス1ドロップでの溶滴移行ができなくなり、スパッタ発生量が多くなる。一方、パルスピーク幅(Tp)が2.0msecを超えると、溶滴の離脱を行うための電磁ピンチ力が過剰になり、ピーク電流領域内で溶滴が移行してしまうため、スパッタが大粒化してスパッタ発生量が多くなる。従ってパルスピーク幅(Tp)は0.7~2.0msecとする。
以下、本発明を適用したパルスMAG多層盛溶接方法の実施例について説明する。
JIS G3141に規定されるSPCCを鋼製外皮(C:0.01~0.05%)として使用し、鋼製外皮を成形する工程でU字型に成形した後、鋼製外皮の合わせ目を溶接した継目が無いワイヤを造管して伸線し、表1に示す各種成分のフラックス入りワイヤを試作した。ワイヤ径は1.2mmとした。
Figure 0007221742000001
表1に示す試作したフラックス入りワイヤを用いて、溶接作業性、スパッタ発生量の測定、溶接欠陥の有無及び溶接金属性能の調査を行った。
溶接作業性及び溶接金属性能は、表2に示すパルスMAG条件で、溶接速度20cm/min、パス間温度350℃以下の大入熱及び高パス間温度での溶接施工条件でパルスMAG多層盛溶接を実施し、チップ母材間距離25mm、シールドガスにAr-CO2混合ガスを使用し、ガス流量は20リットル/min、板厚25mmのJIS G3106に準拠したSM490B鋼板を、35°レ開先、ルートギャップ8mmの裏当金付きの開先として多層盛の溶接金属試験を実施した。
溶接作業性の調査は、溶接時のアークの安定性及びビード外観を目視で実施した。なお、溶接欠陥の有無は溶接終了後に裏当金を撤去してX線透過試験を実施して溶接欠陥の有無を調査した。
溶接金属の機械的性能の調査は、鋼板の板厚の中央の溶接金属部から引張試験片(JIS Z2241 10号)及びシャルピー衝撃試験(JIS Z2242 Vノッチ試験片)を採取して機械的性能を調査した。
引張強さは540~670MPa、靭性の評価は、0℃におけるシャルピー衝撃試験を各5本実施し、吸収エネルギーの平均値は80J以上、最低値は60J以上を良好とした。その際、初層溶接時に高温割れの有無を目視で調査した。
スパッタの発生量は、銅製の捕集箱を用いて、表2に示すパルスMAG溶接条件で、JIS G3106に準拠したSM490B鋼板の板厚12mmを用いてビードオンプレート溶接を30秒×5回繰り返し行い、1分間当たりのスパッタ発生量が1.0g以下を良好とした。それらの結果を表2にまとめて示す。
Figure 0007221742000002
表2中の試験No.1~No.13が本発明例、試験No.14~No.28は比較例である。本発明例である試験No.1~No.13は、パルスMAG溶接条件のパルスピーク電流(IP)、パルスベース電流(Ib)及びパルスピーク幅(Tp)が適正で、使用したワイヤ記号W1~W13のC、Si、Mn、Cu、Ti、Mo、B、Al、Si化合物のSiO2換算値の合計、金属弗化物のF換算値の合計、Na化合物及びK化合物のNa2O換算値とK2O換算値の合計が適量であるので、大入熱及び高パス間温度での溶接施工条件でのパルスMAG多層盛溶接でも、アークが安定してスパッタ発生量が少なく、ビード外観が良好で、溶接欠陥がなく、溶接金属の引張強さ及び吸収エネルギーの平均値及び最低値ともに良好であるなど極めて満足な結果であった。
比較例中試験No.14は、使用したワイヤ記号W14のCが少ないので、溶接金属の引張強さが低かった。また、Si酸化物のSiO2換算値の合計が少ないので、ビード外観が不良であった。
試験No.15は、使用したワイヤ記号W15のCが多いので、溶接金属の引張強さが高く、吸収エネルギー平均値が低く、また、クレータ部に割れが生じた。さらに、金属弗化物のF換算値の合計が少ないので、アークが不安定でスパッタ発生量が多かった。
試験No.16は、使用したワイヤ記号W16のSiが少ないので、溶接金属の引張強さが低く、吸収エネルギー平均値が低かった。また、Na化合物及びK化合物のNa2O換算値及びK2O換算値の合計が少ないので、アークが不安定でスパッタ発生量も多かった。
試験No.17は、使用したワイヤ記号W17のSiが多いので、溶接金属の引張強さが高く、吸収エネルギーの最低値が低かった。また、スラグ巻き込み欠陥が生じた。さらに、パルスピーク電流(Ip)が高いので、アークが強くスパッタ発生量が多かった。
試験No.18は、使用したワイヤ記号W18のMnが少ないので、溶接金属の引張強さが低く、吸収エネルギー平均値が低かった。また、金属弗化物のF換算値の合計が多いので、アークが不安定でスパッタ発生量が多かった。
試験No.19は、使用したワイヤ記号W19のMnが多いので、溶接金属の吸収エネルギーの最低値が低く、スラグ巻き込み欠陥が生じた。さらに、パルスベース電流(Ib)が低いので、アークが不安定でスパッタ発生量が多かった。
試験No.20は、使用したワイヤ記号W20のCuが少ないので、溶接金属の吸収エネルギーの最低値が低かった。また、Na化合物及びK化合物のNa2O換算値及びK2O換算値の合計が多いので、アークが強くスパッタ発生量が多かった。また、ビード外観が不良で、スラグ巻き込み不良が生じた。
試験No.21は、使用したワイヤ記号W21のCuが多いので、溶接金属の吸収エネルギーの平均値が低かった。また、クレータ部に割れが生じた。さらに、パルスピーク電流(Ip)が低いので、アークが不安定でスパッタ発生量が多く、く、ビード外観が不良であった。
試験No.22は、使用したワイヤ記号W22のTiが少ないので、溶接金属の吸収エネルギー平均値が低かった。また、パルスピーク幅(Tp)が短いので、スパッタ発生量が多かった。
試験No.23は、使用したワイヤ記号W23のTiが多いので、溶接金属の吸収エネルギー平均値が低かった。
試験No.24は、使用したワイヤ記号W24のMoが少ないので、溶接金属の引張強さが低かった。また、Si酸化物のSiO2換算値の合計が多かったので、溶接金属の吸収エネルギーの平均値が低く、スラグ巻き込み欠陥が生じた。
試験No.25は、使用したワイヤ記号W25のMoが多いので、溶接金属の引張強さが高く、吸収エネルギーの最低値が低かった。また、パルスベース電流(Ib)が高いので、アークが不安定でスパッタ発生量が多かった。
試験No.26は、使用したワイヤ記号W26のBが少ないので、溶接金属の吸収エネルギーの平均値が低かった。また、パルスピーク時間(Tp)が長いので、スパッタが大粒となりスパッタ発生量が多かった。
試験No.27は、使用したワイヤ記号w27のBが多いので、溶接金属の引張強さが高く、吸収エネルギーの平均値が低かった。
試験No.28は、使用したワイヤ記号w27のAlが多いので、溶接金属の吸収エネルギーの平均値が低かった。また、アークが不安定でスパッタ発生量が多かった。

Claims (1)

  1. パルスMAG多層盛溶接方法において、
    ワイヤ全質量に対する質量%で、鋼製外皮とフラックスの合計で、
    C:0.03~0.20%、
    Si:0.4~1.5%、
    Mn:1.5~3.0%、
    Cu:0.05~0.5%、
    Ti:0.1~0.5%、
    Mo:0.15~0.50%、
    B:0.0015~0.0100%を含有し、
    Al:0.01%以下であり、
    さらに、ワイヤ全質量に対する質量%で、フラックス中に、
    Si酸化物のSiO2換算値の合計:0.01~0.20%、
    金属弗化物のF換算値の合計:0.01~0.10%、
    Na化合物及びK化合物のNa2O換算値及びK2O換算値の合計:0.02~0.15%を含有し、残部が鋼製外皮のFe、鉄粉、鉄合金粉のFe分及び不可避不純物からなるガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤを用いて、
    パルスピーク電流(Ip):460~550A、
    パルスベース電流(Ib):40~80Aとし、
    パルスピーク幅(Tp):0.7~2.0msecのパルスを付加して多層盛溶接することを特徴とするパルスMAG多層盛溶接方法。
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