JP6599808B2 - 高張力鋼のエレクトロスラグ溶接用フラックス入りワイヤ - Google Patents

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本発明は、780MPa級鋼のエレクトロスラグ溶接に用いられるエレクトロスラグ溶接用フラックスワイヤに関し、溶接欠陥が無く、安定した機械的性能を有する溶接金属を得る上で好適な高張力鋼のエレクトロスラグ溶接用フラックス入りワイヤに関する。
建築鉄骨に用いられるボックス柱は、建築構造上の強度を確保するため、高張力鋼板からなるスキンプレート及びダイアフラムを組み合わせて溶接した構造であり、一般的にエレクトロスラグ溶接が用いられている。
エレクトロスラグ溶接は、スキンプレート及びダイアフラムを組み合わせて形成した閉断面の開先内にフラックスを投入し、消耗ノズルまたは非消耗ノズル先端から突出させた溶接ワイヤでアーク溶接を行って溶融スラグを形成した後、アーク溶接を停止し、該溶融スラグの抵抗発熱により溶接ワイヤと母材とを溶融する溶接方法であり、大入熱で1パス溶接が可能な高能率な立向溶接方法である。一方、溶接入熱が過大なため、溶接で形成される溶接金属の冷却速度が遅く、溶接金属の強度が低下しやすいという問題点がある。また、オーステナイト粒界から粗大な粒界フェライトが生成されやすく、溶接金属の靭性も低下しやすいという問題点がある。
近年、構造物の形状の複雑化、大型化、大空間の確保等からボックス柱にかかる負荷が増加し、ボックス柱の高強度化及び高靭性化が進められており、それに伴って、780MPa級の高張力鋼を溶接できるエレクトロスラグ溶接材料の開発が望まれている。
エレクトロスラグ溶接は、一般的に溶接用ソリッドワイヤが用いられ、例えば特許文献1には、ワイヤに含有させる各種成分の最適化を図ることにより、高強度化、高靭性化を達成した780MPa級高張力鋼用のエレクトロスラグ溶接用ソリッドワイヤが開示されている。しかし、高張力鋼用のソリッドワイヤを用いたエレクトロスラグ溶接の場合、ワイヤ自体の剛性が非常に高いので、ワイヤの矯正が十分にできず、非消耗ノズル内で溶接ワイヤが接触してワイヤ送給性が不良となり、健全な溶接金属の形成が困難となる場合がある。また、溶接材料の成分組成の微調整が困難であり、容易に成分設計が可能なフラックス入りワイヤの開発が望まれている。
エレクトロスラグ溶接用フラックス入りワイヤとして、例えば、特許文献2には、溶接金属中のBとNの含有量の比率を最適化することにより高靭性な溶接金属が得られるエレクトロスラグ溶接用フラックス入りワイヤが開示されている。しかし、この特許文献2の開示技術によれば、ワイヤ中のC量が少ないので、780MPa級鋼板の溶接の場合には、必要な溶接金属の強度を確保できない。また特許文献2の開示技術によれば、Al量が多いので、溶接金属中に粗大なAl23が析出し、靭性が低下するとともに、上述したようにBが必須の成分組成として含まれているので、高温割れが発生しやすい。
また、特許文献3には、溶接金属中のBとNの含有量の比率を適正化することにより、優れた溶接金属の靭性が得られるエレクトロスラグ溶接用金属粉末入りワイヤが開示されている。しかしながらこの特許文献3の開示技術によれば、ワイヤ中のAl量が多いので、必要な溶接金属の靭性が得られず、上述したようにBが必須の成分組成として含まれるので、高温割れが発生しやすい。また、特許文献3に記載のフラックス入りワイヤは、かしめタイプのワイヤであるので、かしめ箇所より水分がワイヤ内部に侵入し、拡散性水素が増加して低温割れも発生しやすくなる。
さらに、特許文献4には、優れた溶接金属の靭性及び延性が得られるメタル粉入りエレクトロスラグ溶接用フラックス入りワイヤが開示されているが、ワイヤ中のC量が少ないので、溶接金属の強度が不足するという問題があった。
特開2015−51441号公報 特開2008−200751号公報 特開2009−195975号公報 特開2011−152579号公報
そこで本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、780MPa級高張力鋼のエレクトロスラグ溶接において、溶接欠陥が無く、適正な強度及び安定した靭性を有する溶接金属が得られる高張力鋼のエレクトロスラグ溶接用フラックス入りワイヤを提供することを目的とする。
本発明者らは、上述した問題点を解決するため、780MPa級高張力鋼のエレクトロスラグ溶接において、融合不良、溶込み不良や高温割れおよび低温割れ等の溶接欠陥が無く、適正な強度を有するとともに安定した高靭性が得られる溶接金属が得られるエレクトロスラグ溶接用フラックス入りワイヤの成分組成について詳細に検討した結果、以下の知見を得た。
非消耗ノズルを用いたエレクトロスラグ溶接は、閉断面開先内にSiO2を主体としたフラックスを投入し、非消耗式ノズル先端から突き出したフラックス入りワイヤでアーク発生して溶融スラグを形成した後、該溶融スラグのスラグ浴の抵抗発熱によってフラックス入りワイヤ及び母材を溶融しながら溶接を行うものである。しかし、溶接が長時間におよぶと、スラグ浴を形成するSiO2成分が分解されてスラグ浴が徐々に減少するので、スラグ浴による抵抗発熱が小さくなり、スラグ浴自体が不安定となり、エレクトロスラグ溶接中にアークが突発的に発生し、融合不良や溶込み不足等の溶接欠陥が発生することを突き止めた。
そこで、フラックス入りワイヤ中にSiO2を適量含有させることで、スラグ浴の減少を防止し、突発的なアーク発生を抑え、溶接欠陥の無い健全な溶接金属が得られることを見出した。
また、フラックス入りワイヤ中のC、P、S、Cu量の上限を規定することで、溶接金属の偏析や析出脆化を抑え、高温割れを防止できることを見出した。
さらに、適正な強度と同時に安定した低温靭性の向上をも同時に達成させるためには、フラックス入りワイヤ中のC、Si、Mn、Cu、Ni、Cr、Mo、Ti、Al、Na化合物及びK化合物の含有量の適正化が有効であることを見出した。
また、フラックス入りワイヤ中に弗素化合物を適正添加するとともに、ワイヤ外皮の合わせ目を溶接して継目を無くすことで、溶接金属中の拡散性水素量を低減して低温割れを防止できることを見出した。
すなわち、本発明の要旨は、鋼製外皮にフラックスを充填してなるエレクトロスラグ溶接用フラックス入りワイヤにおいて、ワイヤ全質量に対する質量%で、鋼製外皮とフラックスの合計で、C:0.10〜0.20%、Si:0.2〜1.0%、Mn:1.3〜2.5%、Cu:0.1〜0.5%、Ni:1.5〜2.5%、Cr:0.3〜0.7%、Mo:0.3〜0.7%、Ti:0.15〜0.25%を含有し、Al:0.05%以下であり、さらに、ワイヤ全質量に対する質量%で、フラックス中に、弗素化合物のF換算値の合計:0.01〜0.1%、Si酸化物のSiO2換算値の合計:0.01〜0.2%、Na化合物及びK化合物のNa2O換算値とK2O換算値の合計:0.02〜0.1%を含有し、残部は鋼製外皮のFe、鉄粉、鉄合金粉のFe分及び不可避不純物からなることを特徴とする。
また、成形された鋼製外皮の合わせ目が溶接されていることで鋼製外皮に継目を無くしたことも特徴とする高張力鋼のエレクトロスラグ溶接用フラックス入りワイヤにある。
本発明に係る高張力鋼のエレクトロスラグ溶接用フラックス入りワイヤによれば、溶接欠陥が無く、780MPa級鋼の溶接で適正な強度及び安定した高靭性が得られる高品質な溶接金属を得ることができる。
本発明の実施例におけるエレクトロスラグ溶接方法の概要を示す図である。
本発明を適用した高張力鋼のエレクトロスラグ溶接用フラックス入りワイヤ(以下、フラックス入りワイヤともいう。)は、各成分組成それぞれの単独及び共存による相乗効果によりなし得たものであるが、以下にそれぞれの各成分組成の添加理由及び限定理由について説明する。なお、各成分組成の含有率は、フラックス入りワイヤ全質量に対する質量%で表すものとし、その質量%に関する記載を単に%と記載する。
[鋼製外皮とフラックスの合計でC:0.10〜0.20%]
Cは、固溶強化により溶接金属の強度を向上するために必要な元素である。Cが0.10%未満であると、必要な溶接金属の強度が得られない。一方、Cが0.20%を超えると、溶接金属の強度が過度に高くなり、島状マルテンサイトが増加して靭性が低下する。またCが0.20%を超えると、溶接割れ感受性が高くなり、高温割れが発生しやすくなる。従って、鋼製外皮とフラックスの合計でCは0.10〜0.20%とする。なお、Cは、鋼製外皮に含まれる成分の他、フラックスから金属粉及び合金粉等から添加できる。
[鋼製外皮とフラックスの合計でSi:0.2〜1.0%]
Siは、溶接金属の強度確保と脱酸のために添加する。Siが0.2%未満であると、必要な溶接金属の強度が得られず、また脱酸不足となって靭性が低下する。一方、Siが1.0%を超えると、島状マルテンサイトが増加し、靭性が低下する。従って、鋼製外皮とフラックスの合計でSiは0.2〜1.0%とする。なお、Siは、鋼製外皮に含まれる成分の他、フラックスから金属Si、Fe−Si、Fe−Si−Mn等の合金粉末から添加できる。
[鋼製外皮とフラックスの合計でMn:1.3〜2.5%]
Mnは、溶接金属の靭性確保と強度向上のために添加する。Mnが1.3%未満であると、必要な溶接金属の強度が得られない。またMnが1.3%未満であると、脱酸不足となって酸素量が高くなり、溶接金属の組織が粗大化し、靭性が十分に確保できなくなる。一方、Mnが2.5%を超えると、溶接金属組織が粗大な上部ベイナイト組織となり、靭性が低下する。従って、鋼製外皮とフラックスの合計でMnは1.3〜2.5%とする。なお、Mnは、鋼製外皮に含まれる成分の他、フラックスからの金属Mn、Fe−Mn、Fe−Si−Mn等の合金粉末から添加できる。
[鋼製外皮とフラックスの合計でCu:0.1〜0.5%]
Cuは、析出強化作用を有し、変態温度を低下させて組織を微細化して溶接金属の靭性を安定させる作用を有する。Cuが0.1%未満であると、安定した溶接金属の靭性が得られない。一方、Cuが0.5%を超えると、析出脆化が生じ、靭性が低下する。また、溶接割れ感受性が高くなり、高温割れが発生しやすくなる。従って、鋼製外皮とフラックスの合計でCuは0.1〜0.5%とする。なお、Cuは、鋼製外皮及び鋼製外皮表面に施したCuめっき分の他、フラックスから金属Cu等の合金粉末から添加できる。
[鋼製外皮とフラックスの合計でNi:1.5〜2.5%]
Niは、変態温度を低下させて組織を微細化するとともに、溶接金属中に固溶して靭性を低下させることなく強度を高める作用を有する。Niが1.5%未満であると、溶接金属の靭性の低下を防止する効果が十分に得られない。一方、Niが2.5%を超えると、粒界が脆化して溶接金属の靭性が低下する。従って、鋼製外皮とフラックスの合計でNiは1.5〜2.5%とする。なお、Niは、鋼製外皮に含まれる成分の他、フラックスからの金属Ni、Fe−Ni等の粉末から添加できる。
[鋼製外皮とフラックスの合計でCr:0.3〜0.7%]
Crは、変態温度を低下させ、組織を微細化して溶接金属の靭性を向上させる作用を有する。Crが0.3%未満であると、これらの効果が十分に得られず、溶接金属の靭性が低下する。一方、Crが0.7%を超えると、溶接金属の強度が過剰に高くなる。またCrが0.7%を超えると、溶接金属の硬化が著しくなり、靭性が低下する。従って、鋼製外皮とフラックスの合計でCrは0.3〜0.7%とする。なお、Crは、鋼製外皮に含まれる成分の他、フラックスからの金属Cr、Fe−Cr等の粉末から添加できる。
[鋼製外皮とフラックスの合計でMo:0.3〜0.7%]
Moは、Ni及びCrと同様、変態温度を低下させ、組織を微細化して溶接金属の靭性を向上させる作用を有する。Moが0.3%未満であると、これらの効果が十分に得られず、溶接金属の靭性が低下する。一方、Moが0.7%を超えると、溶接金属の強度が過剰に高くなる。またMoが0.7%を超えると、溶接金属が過度に硬化し、靭性が低下する。従って、鋼製外皮とフラックスの合計でMoは0.3〜0.7%とする。なお、Moは、鋼製外皮に含まれる成分の他、フラックスからの金属Mo、Fe−Mo等の粉末から添加できる。
[鋼製外皮とフラックスの合計でTi:0.15〜0.25%]
Tiは、脱酸剤として作用するとともに、溶接金属中にTiの微細酸化物を生成して溶接金属の靭性を向上させる作用を有する。Tiが0.15%未満であると、これらの効果が得られず、溶接金属の靭性が低下する。一方、Tiが0.25%を超えると、溶接金属中の固溶Tiが多くなり、靭性が低下する。従って、鋼製外皮とフラックスの合計でTiは0.15〜0.25%とする。なお、Tiは、鋼製外皮に含まれる成分の他、フラックスからの金属Ti、Fe−Ti等の合金粉末から添加できる。
[鋼製外皮とフラックスの合計でAl:0.05%以下]
Alは、0.05%を超えると溶接金属中に粗大なAl23を析出させ靭性を低下させるので、鋼製外皮とフラックスの合計でAlは0.05%以下とする。
[フラックス中に含有する弗素化合物のF換算値の合計:0.01〜0.1%]
弗素化合物は、溶接金属中の拡散性水素量を低減し、低温割れを防止する効果を有する。弗素化合物のF換算値の合計が0.01%未満では、この効果が得られず、溶接金属の拡散性水素量が増加し、低温割れが発生しやすくなる。一方、弗素化合物のF換算値の合計が0.1%を超えると、スラグ浴が不安定となって溶込み不良が発生し、健全な溶接金属が得られない。従って、フラックス中に含有する弗素化合物のF換算値の合計は0.01〜0.1%とする。なお、弗素化合物は、フラックスからCaF2、NaF、LiF、MgF2、K2SiF6、Na3AlF6、AlF3等から添加でき、F換算値はそれらに含有されるF量の合計である。
[フラックス中に含有するSi酸化物のSiO2換算値の合計:0.01〜0.2%]
Si酸化物は、スラグ浴の主成分であり、スラグ浴の保持効果を有する。Si酸化物のSiO2換算値の合計が0.01%未満であると、その効果が得られず、スラグ浴が減少し、エレクトロスラグ溶接時にアークが発生してスラグ浴が不安定になり、融合不良等が発生して健全な溶接金属が得られない。一方、Si酸化物のSiO2換算値の合計が0.2%を超えると、スラグ量が多くなり、溶接金属の靭性を低下させる。従って、フラックス中に含有するSi酸化物のSiO2換算値の合計は0.01〜0.2%とする。なお、Si酸化物は、フラックスから珪砂、珪酸ソーダ及び珪酸カリからなる水ガラスの固質成分等から添加できる。
[フラックス中に含有するNa化合物及びK化合物のNa2O換算値とK2O換算値の合計:0.02〜0.1%]
Na化合物及びK化合物は、エレクトロスラグ溶接でのスラグ浴の流動性を向上する作用を有する。Na化合物及びK化合物のNa2O換算値とK2O換算値の合計が0.02%未満であると、その効果が得られず、スラグ浴の流動性が悪くなり、溶込み不良や融合不良等の溶接欠陥が発生しやすくなる。一方、Na化合物及びK化合物のNa2O換算値とK2O換算値の合計が0.1%を超えると、フラックス入りワイヤ中の各成分の希釈率が低くなり、必要な溶接金属の強度が得られない。従って、フラックス中に含有するNa化合物及びK化合物のNa2O換算値とK2O換算値の合計は0.02〜0.1%とする。なお、Na化合物及びK化合物は、フラックスから珪酸ソーダ及び珪酸カリからなる水ガラスの固質成分、K2SiO3、Na2SiO3、NaF、K2SiF6の粉末から添加できる。
[成形された鋼製外皮の合わせ目が溶接されることで鋼製外皮に継目を無くす]
本発明の高張力鋼のエレクトロスラグ溶接用フラックス入りワイヤは、鋼製外皮をパイプ状に成型し、その内部にフラックスを充填した構造である。フラックス入りワイヤの種類としては、成形した鋼製外皮の合わせ目を溶接して得られる鋼製外皮に継目の無いフラックス入りワイヤと、鋼製外皮に合わせ目の溶接を行わないままとした鋼製外皮に継目を有するフラックス入りワイヤとに大別できる。本発明の鋼製外皮に継目が無いフラックス入りワイヤは、ワイヤ中の全水素量を低減することを目的とした熱処理が可能であり、また製造後のフラックス入りワイヤ内のフラックスの吸湿が無いため、溶接金属の拡散性水素量を低減し、耐低温割れ性の向上を図ることができる。
本発明の高張力鋼のエレクトロスラグ溶接用フラックス入りワイヤの残部は、鋼製外皮のFe、鉄粉、Fe−Mn、Fe−Si、Fe−Si−Mn、Fe−Ti合金等の鉄合金粉のFe分と不可避不純物である。不可避不純物については特に規定しないが、高温割れの観点から、P及びSは各々0.030%以下が好ましい。
以下、本発明の効果を実施例により具体的に説明する。
JIS G3141に規定されるSPCCを鋼製外皮(鋼製外皮全質量に対する質量%で、C:0.01〜0.05%)として使用し、鋼製外皮を成形する工程でU字型に成形した後、鋼製外皮の合わせ目を溶接した継目が無いワイヤと、鋼製外皮の合わせ目をかしめて溶接しない継目のあるワイヤを造管、焼鈍、伸線し、表1に示す各種成分のフラックス入りワイヤを試作した。なお、ワイヤ径は1.6mm、フラックス充填率は10〜18%とした。
Figure 0006599808
試作したフラックス入りワイヤを用い、表2に示す板厚25mmの780MPa級鋼板を、図1に示すようにJIS Z 3353に準じてギャップ25mmのI型の開先形状に組み、水冷銅当て金4を使用し、非消耗電極式溶接装置を用いてエレクトロスラグ溶接を行った。
このエレクトロスラグ溶接では、2枚の鋼板3と、2枚の水冷銅当て金4との間に形成される空間に溶融スラグ6と溶融金属5が流れ落ちないように保持し、溶融スラグ6の中へ電極となるフラックス入りワイヤ1を連続的に送り込みながら、このフラックス入りワイヤ1と、鋼板3とを溶融して溶接を行う。フラックス入りワイヤ1は、スチールパイプである非消耗ノズル2の中を挿通されて、溶融スラグ6へガイドされる。表3に示す溶接条件でエレクトロスラグ溶接を行い、溶接欠陥の有無及び溶接金属の機械性能の調査を行った。なお、組み合わせたフラックスの成分組成を表4に示す。
Figure 0006599808
Figure 0006599808
Figure 0006599808
溶接金属の機械的性能の調査は、溶接試験体の板厚1/2tを中心に引張試験片(JIS Z 2241 10号)及び衝撃試験片(JIS Z 2242 Vノッチ試験片)を採取して機械試験を実施した。
引張強さの評価は、780〜920MPaを良好とした。また、靭性の評価は、0℃におけるシャルピー衝撃試験を各3本実施し、吸収エネルギー値が平均値69J以上、最低値47J以上を良好とした。
溶接欠陥の有無は、JIS Z 3060に準拠した超音波探傷試験で、融合不良、高温割れ及び低温割れが無く、断面マクロの外観評価で溶込み状態が良好であるものを合格とした。これらの調査結果を表5にまとめて示す。
Figure 0006599808
表1及び表5中のワイヤ記号W1〜W9は本発明例、ワイヤ記号W10〜W28は比較例である。本発明例であるW1、W2、W4〜W9は、ワイヤ中のC、Si、Mn、Cu、Ni、Cr、Mo、Ti、Al、P、S、F換算値の合計、SiO2換算値の合計、Na2O換算値及びK2O換算値の合計量が適正であり、ワイヤ外皮に継目が無いので、溶接金属の引張強さ、吸収エネルギーの平均値及び最低値ともに良好であり、溶接欠陥も無く、極めて満足な結果であった。なお、ワイヤ記号W3はワイヤ外皮に継目があったが、低温割れは発生せず、良好な結果であった。
比較例中ワイヤ記号W10は、Cが少ないので、溶接金属の引張強さが低値であった。また、Na2O換算値とK2O換算値の合計が少ないので、溶接部に融合不良が発生した。
ワイヤ記号W11は、Cが多いので、溶接金属の引張強さが高く、吸収エネルギーの平均値が低値であった。また、高温割れが発生した。
ワイヤ記号W12は、Siが少ないので、溶接金属の引張強さが低く、吸収エネルギーの平均値及び最低値ともに低値であった。
ワイヤ記号W13は、Siが多いので、溶接金属の吸収エネルギーの平均値が低値であった。
ワイヤ記号14は、Mnが少ないので、溶接金属の引張強さが低く、吸収エネルギーの平均値及び最低値ともに低値であった。
ワイヤ記号15は、Mnが多いので、溶接金属の吸収エネルギーの平均値及び最低値ともに低値であった。また、F換算値の合計が少なく、ワイヤ外皮に継目があるので、低温割れが発生した。
ワイヤ記号W16は、SiO2換算値の合計が多いので、溶接金属の吸収エネルギーの平均値が低値であった。
ワイヤ記号W17は、Cuが少ないので、吸収エネルギーの最低値が低値であった。
ワイヤ記号W18は、Cuが多いので、溶接金属の吸収エネルギーの平均値及び最低値ともに低値であり、また高温割れが発生した。
ワイヤ記号W19は、Niが少ないので、溶接金属の吸収エネルギーの平均値が低値であった。
ワイヤ記号W20は、Niが多いので、溶接金属の吸収エネルギーの平均値が低値であった。
ワイヤ記号W21は、Crが少ないので、溶接金属の吸収エネルギーの平均値及び最低値ともに低値であった。
ワイヤ記号W22は、Crが多いので、溶接金属の引張強さが高く、吸収エネルギーの平均値及び最低値ともに低値であった。また、F換算値が多いので、溶接部に溶込み不良が発生した。
ワイヤ記号W23は、Moが少ないので、溶接金属の吸収エネルギーの平均値が低値であった。
ワイヤ記号W24は、Moが多いので、溶接金属の引張強さが高く、吸収エネルギーの平均値及び最低値ともに低値であった。
ワイヤ記号W25は、Tiが少ないので、溶接金属の吸収エネルギーの平均値が低値であった。
ワイヤ記号W26は、Tiが多いので、溶接金属の吸収エネルギーの平均値及び最低値ともに低値であった。
ワイヤ記号W27は、Alが多いので、溶接金属の吸収エネルギーの平均値が低値であった。
ワイヤ記号W28は、Na2O換算値とK2O換算値の合計が多いので、溶接金属の強度が低値であった。また、SiO2換算値の合計が少ないので、溶接部に融合不良が発生した。
1 フラックス入りワイヤ
2 非消耗ノズル
3 鋼板
4 水冷銅当て金
5 溶接金属
6 溶融スラグ

Claims (2)

  1. 鋼製外皮にフラックスを充填してなるエレクトロスラグ溶接用フラックス入りワイヤにおいて、
    ワイヤ全質量に対する質量%で、鋼製外皮とフラックスの合計で、
    C:0.10〜0.20%、
    Si:0.2〜1.0%、
    Mn:1.3〜2.5%、
    Cu:0.1〜0.5%、
    Ni:1.5〜2.5%、
    Cr:0.3〜0.7%、
    Mo:0.3〜0.7%、
    Ti:0.15〜0.25%を含有し、
    Al:0.05%以下であり、
    さらに、ワイヤ全質量に対する質量%で、フラックス中に、
    弗素化合物のF換算値の合計:0.01〜0.1%、
    Si酸化物のSiO2換算値の合計:0.01〜0.2%、
    Na化合物及びK化合物のNa2O換算値とK2O換算値の合計:0.02〜0.1%を含有し、
    残部は鋼製外皮のFe、鉄粉、鉄合金粉のFe分及び不可避不純物からなることを特徴とする高張力鋼のエレクトロスラグ溶接用フラックス入りワイヤ。
  2. 成形された鋼製外皮の合わせ目が溶接されていることで鋼製外皮に継目を無くしたことを特徴とする請求項1に記載の高張力鋼のエレクトロスラグ溶接用フラックス入りワイヤ。
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