JP6599808B2 - 高張力鋼のエレクトロスラグ溶接用フラックス入りワイヤ - Google Patents
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Cは、固溶強化により溶接金属の強度を向上するために必要な元素である。Cが0.10%未満であると、必要な溶接金属の強度が得られない。一方、Cが0.20%を超えると、溶接金属の強度が過度に高くなり、島状マルテンサイトが増加して靭性が低下する。またCが0.20%を超えると、溶接割れ感受性が高くなり、高温割れが発生しやすくなる。従って、鋼製外皮とフラックスの合計でCは0.10〜0.20%とする。なお、Cは、鋼製外皮に含まれる成分の他、フラックスから金属粉及び合金粉等から添加できる。
Siは、溶接金属の強度確保と脱酸のために添加する。Siが0.2%未満であると、必要な溶接金属の強度が得られず、また脱酸不足となって靭性が低下する。一方、Siが1.0%を超えると、島状マルテンサイトが増加し、靭性が低下する。従って、鋼製外皮とフラックスの合計でSiは0.2〜1.0%とする。なお、Siは、鋼製外皮に含まれる成分の他、フラックスから金属Si、Fe−Si、Fe−Si−Mn等の合金粉末から添加できる。
Mnは、溶接金属の靭性確保と強度向上のために添加する。Mnが1.3%未満であると、必要な溶接金属の強度が得られない。またMnが1.3%未満であると、脱酸不足となって酸素量が高くなり、溶接金属の組織が粗大化し、靭性が十分に確保できなくなる。一方、Mnが2.5%を超えると、溶接金属組織が粗大な上部ベイナイト組織となり、靭性が低下する。従って、鋼製外皮とフラックスの合計でMnは1.3〜2.5%とする。なお、Mnは、鋼製外皮に含まれる成分の他、フラックスからの金属Mn、Fe−Mn、Fe−Si−Mn等の合金粉末から添加できる。
Cuは、析出強化作用を有し、変態温度を低下させて組織を微細化して溶接金属の靭性を安定させる作用を有する。Cuが0.1%未満であると、安定した溶接金属の靭性が得られない。一方、Cuが0.5%を超えると、析出脆化が生じ、靭性が低下する。また、溶接割れ感受性が高くなり、高温割れが発生しやすくなる。従って、鋼製外皮とフラックスの合計でCuは0.1〜0.5%とする。なお、Cuは、鋼製外皮及び鋼製外皮表面に施したCuめっき分の他、フラックスから金属Cu等の合金粉末から添加できる。
Niは、変態温度を低下させて組織を微細化するとともに、溶接金属中に固溶して靭性を低下させることなく強度を高める作用を有する。Niが1.5%未満であると、溶接金属の靭性の低下を防止する効果が十分に得られない。一方、Niが2.5%を超えると、粒界が脆化して溶接金属の靭性が低下する。従って、鋼製外皮とフラックスの合計でNiは1.5〜2.5%とする。なお、Niは、鋼製外皮に含まれる成分の他、フラックスからの金属Ni、Fe−Ni等の粉末から添加できる。
Crは、変態温度を低下させ、組織を微細化して溶接金属の靭性を向上させる作用を有する。Crが0.3%未満であると、これらの効果が十分に得られず、溶接金属の靭性が低下する。一方、Crが0.7%を超えると、溶接金属の強度が過剰に高くなる。またCrが0.7%を超えると、溶接金属の硬化が著しくなり、靭性が低下する。従って、鋼製外皮とフラックスの合計でCrは0.3〜0.7%とする。なお、Crは、鋼製外皮に含まれる成分の他、フラックスからの金属Cr、Fe−Cr等の粉末から添加できる。
Moは、Ni及びCrと同様、変態温度を低下させ、組織を微細化して溶接金属の靭性を向上させる作用を有する。Moが0.3%未満であると、これらの効果が十分に得られず、溶接金属の靭性が低下する。一方、Moが0.7%を超えると、溶接金属の強度が過剰に高くなる。またMoが0.7%を超えると、溶接金属が過度に硬化し、靭性が低下する。従って、鋼製外皮とフラックスの合計でMoは0.3〜0.7%とする。なお、Moは、鋼製外皮に含まれる成分の他、フラックスからの金属Mo、Fe−Mo等の粉末から添加できる。
Tiは、脱酸剤として作用するとともに、溶接金属中にTiの微細酸化物を生成して溶接金属の靭性を向上させる作用を有する。Tiが0.15%未満であると、これらの効果が得られず、溶接金属の靭性が低下する。一方、Tiが0.25%を超えると、溶接金属中の固溶Tiが多くなり、靭性が低下する。従って、鋼製外皮とフラックスの合計でTiは0.15〜0.25%とする。なお、Tiは、鋼製外皮に含まれる成分の他、フラックスからの金属Ti、Fe−Ti等の合金粉末から添加できる。
Alは、0.05%を超えると溶接金属中に粗大なAl2O3を析出させ靭性を低下させるので、鋼製外皮とフラックスの合計でAlは0.05%以下とする。
弗素化合物は、溶接金属中の拡散性水素量を低減し、低温割れを防止する効果を有する。弗素化合物のF換算値の合計が0.01%未満では、この効果が得られず、溶接金属の拡散性水素量が増加し、低温割れが発生しやすくなる。一方、弗素化合物のF換算値の合計が0.1%を超えると、スラグ浴が不安定となって溶込み不良が発生し、健全な溶接金属が得られない。従って、フラックス中に含有する弗素化合物のF換算値の合計は0.01〜0.1%とする。なお、弗素化合物は、フラックスからCaF2、NaF、LiF、MgF2、K2SiF6、Na3AlF6、AlF3等から添加でき、F換算値はそれらに含有されるF量の合計である。
Si酸化物は、スラグ浴の主成分であり、スラグ浴の保持効果を有する。Si酸化物のSiO2換算値の合計が0.01%未満であると、その効果が得られず、スラグ浴が減少し、エレクトロスラグ溶接時にアークが発生してスラグ浴が不安定になり、融合不良等が発生して健全な溶接金属が得られない。一方、Si酸化物のSiO2換算値の合計が0.2%を超えると、スラグ量が多くなり、溶接金属の靭性を低下させる。従って、フラックス中に含有するSi酸化物のSiO2換算値の合計は0.01〜0.2%とする。なお、Si酸化物は、フラックスから珪砂、珪酸ソーダ及び珪酸カリからなる水ガラスの固質成分等から添加できる。
Na化合物及びK化合物は、エレクトロスラグ溶接でのスラグ浴の流動性を向上する作用を有する。Na化合物及びK化合物のNa2O換算値とK2O換算値の合計が0.02%未満であると、その効果が得られず、スラグ浴の流動性が悪くなり、溶込み不良や融合不良等の溶接欠陥が発生しやすくなる。一方、Na化合物及びK化合物のNa2O換算値とK2O換算値の合計が0.1%を超えると、フラックス入りワイヤ中の各成分の希釈率が低くなり、必要な溶接金属の強度が得られない。従って、フラックス中に含有するNa化合物及びK化合物のNa2O換算値とK2O換算値の合計は0.02〜0.1%とする。なお、Na化合物及びK化合物は、フラックスから珪酸ソーダ及び珪酸カリからなる水ガラスの固質成分、K2SiO3、Na2SiO3、NaF、K2SiF6の粉末から添加できる。
本発明の高張力鋼のエレクトロスラグ溶接用フラックス入りワイヤは、鋼製外皮をパイプ状に成型し、その内部にフラックスを充填した構造である。フラックス入りワイヤの種類としては、成形した鋼製外皮の合わせ目を溶接して得られる鋼製外皮に継目の無いフラックス入りワイヤと、鋼製外皮に合わせ目の溶接を行わないままとした鋼製外皮に継目を有するフラックス入りワイヤとに大別できる。本発明の鋼製外皮に継目が無いフラックス入りワイヤは、ワイヤ中の全水素量を低減することを目的とした熱処理が可能であり、また製造後のフラックス入りワイヤ内のフラックスの吸湿が無いため、溶接金属の拡散性水素量を低減し、耐低温割れ性の向上を図ることができる。
2 非消耗ノズル
3 鋼板
4 水冷銅当て金
5 溶接金属
6 溶融スラグ
Claims (2)
- 鋼製外皮にフラックスを充填してなるエレクトロスラグ溶接用フラックス入りワイヤにおいて、
ワイヤ全質量に対する質量%で、鋼製外皮とフラックスの合計で、
C:0.10〜0.20%、
Si:0.2〜1.0%、
Mn:1.3〜2.5%、
Cu:0.1〜0.5%、
Ni:1.5〜2.5%、
Cr:0.3〜0.7%、
Mo:0.3〜0.7%、
Ti:0.15〜0.25%を含有し、
Al:0.05%以下であり、
さらに、ワイヤ全質量に対する質量%で、フラックス中に、
弗素化合物のF換算値の合計:0.01〜0.1%、
Si酸化物のSiO2換算値の合計:0.01〜0.2%、
Na化合物及びK化合物のNa2O換算値とK2O換算値の合計:0.02〜0.1%を含有し、
残部は鋼製外皮のFe、鉄粉、鉄合金粉のFe分及び不可避不純物からなることを特徴とする高張力鋼のエレクトロスラグ溶接用フラックス入りワイヤ。 - 成形された鋼製外皮の合わせ目が溶接されていることで鋼製外皮に継目を無くしたことを特徴とする請求項1に記載の高張力鋼のエレクトロスラグ溶接用フラックス入りワイヤ。
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JP2016061412A JP6599808B2 (ja) | 2016-03-25 | 2016-03-25 | 高張力鋼のエレクトロスラグ溶接用フラックス入りワイヤ |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2016061412A JP6599808B2 (ja) | 2016-03-25 | 2016-03-25 | 高張力鋼のエレクトロスラグ溶接用フラックス入りワイヤ |
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- 2016-03-25 JP JP2016061412A patent/JP6599808B2/ja active Active
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