JP5064928B2 - 高強度鋼用のサブマージアーク溶接用フラックス入りワイヤ。 - Google Patents

高強度鋼用のサブマージアーク溶接用フラックス入りワイヤ。 Download PDF

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本発明は、石油、天然ガスの輸送に使われるパイプライン、貯蔵に使われる圧力容器などの溶接に使用される高強度鋼用のサブマージアーク溶接用フラックス入りワイヤに関し、特に高速度の溶接条件においても優れた機械性能の溶接金属、ビード形状および溶接作業性が得られる高強度鋼用のサブマージアーク溶接用フラックス入りワイヤに関する。
サブマージアーク溶接は、高能率で安定した溶接作業性および溶接性能が得られることから、造管、鉄骨、橋梁、車両など幅広い分野で適用されている。近年、サブマージアーク溶接においては、鋼材の高強度化に合わせた溶接金属の高強度化、高靭性化、溶接能率および生産性向上を目的に、高速溶接化が求められている。また、高強度鋼材は石油、天然ガスの輸送に使われるパイプライン、貯蔵に使われる圧力容器などに多く使用されているが、板厚を薄くすることによって使用鋼材量の低減を図っているため、一層の鋼材の高強度化が進められている。
従来、高強度用のサブマージアーク溶接用ワイヤは、溶接金属部の高強度化、高靭化を目的として、Ni、Cr、Mo等の合金成分を含有したソリッドワイヤが主に使用されている。しかし、溶接金属の高強度化のためにワイヤの合金成分量を増加すると、ワイヤ自体が高強度となり、溶接用ワイヤ製造の伸線加工時に、加工硬化が加わりさらにワイヤが硬化する。ワイヤが硬化するとダイス磨耗や断線が多くなるため、製造が困難となる。そこで、一般的には伸線途中に熱処理を行いワイヤの強度を低下させるが、合金成分量が多い場合はワイヤの変態温度が低下するため、焼なまし処理により軟化を行う場合に長時間の保持が必要になる。また、高温の焼ならし処理により軟化を行う場合では、高強度の組織に変態しやすい。したがって、軟化するためには熱処理温度を低く設定し、長時間の保持や徐冷が必要となるため、生産性が非常に悪い。
また、高強度のソリッドワイヤを使用して溶接すると、ワイヤの矯正が困難となり、開先中心とのセンターずれが起きやすく、良好なビードが得られない。このように高強度のソリッドワイヤは生産性および溶接性が低下するという問題があった。そこで、種々のフラックス入りワイヤが開発されてきたが、高強度および高靭性の溶接金属を得るためには溶接金属の酸素量を低くする必要があり、また高強度鋼材の溶接は低温割れ(水素割れ)が発生しやすいため低水素化する必要があり、これまでのフラックス入りワイヤでは適用が困難であった。
これらの点を考慮し生産性、溶接性が良好で高強度および高靭性が得られるサブマージアーク溶接用ワイヤの開発が試みられている。例えば、ワイヤの引張強度の低いサブマージアーク溶接用複合ワイヤが特開2006−142377号公報(特許文献1)に開示されており、ワイヤの生産性および送給性は改善されるが、このフラックス入りワイヤでは、ワイヤ中の酸素量が高いため溶接金属中の酸素量が増加し、良好な低温靭性が得られない。さらに、ワイヤ断面形状は継ぎ目を有すフラックス入りワイヤであるので、大気中の水分を吸湿する。したがって、フラックスの水分量を減少しただけでは不十分であり、溶接金属中の拡散性水素量が増加して溶接後に低温割れが発生し易くなる。
また、特開昭48−85443号公報(特許文献2)には、充填するフラックスに強塩基性のスラグ形成成分を含有し、中性フラックスまたは弱塩基性フラックスと組み合わせて使用することにより、良好な溶接作業性および高靭性が得られる潜弧溶接用複合ワイヤが開示されている。しかし、溶接金属中の酸素量は組み合せフラックスの影響も受けるため、中性フラックスや弱塩基性フラックスとを組み合わせる方法では、大幅な酸素量の低減には限界があった。また、充填するフラックス中にスラグ形成成分を多量に含んでいるため、合金成分が不足し、より一層の高強度および高靭性化の要求に対しては不十分である。
さらに、サブマージアーク溶接用高靭性複合ワイヤが特開昭49−103858号公報(特許文献3)、低温用鋼の大入熱潜弧溶接用太径シームレスフラックス入りワイヤが特開昭61−242791号公報(特許文献4)に開示されているが、これらに記載のワイヤ成分では溶接金属の強度が不足するという問題がある。
特開2006−142377号公報 特開昭48−85443号公報 特開昭49−103858号公報 特開昭61−242791号公報
本発明は、特に高速度の溶接条件においても優れた機械性能の溶接金属、ビード形状および溶接作業性が得られる高強度鋼用のサブマージアーク溶接用フラックス入りワイヤを提供することを目的とする。
本発明の要旨は、鋼製外皮中にフラックスを充填した高強度鋼用のサブマージアーク溶接用フラックス入りワイヤにおいて、鋼製外皮およびフラックス成分の合計がワイヤ全質量%で、C:0.06〜0.30%、Si:0.06〜0.5%、Mn:1.0〜3.0%、Ni:2.0〜9.0%、Cr:1.5〜3.5%、Mo:1.0〜4.0%、Ti:0.02〜0.10%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、前記ワイヤに充填するフラックスのCはワイヤ全質量%で0.02〜0.26%、ワイヤ全水素量が50ppm以下で、フラックス充填率が10〜30質量%であることを特徴とする。
また、前記フラックスはフラックス全質量%で、Oが0.1〜1.0%であることを特徴とする。さらに、鋼製外皮に継ぎ目の無いことも特徴とする高強度鋼用のサブマージアーク溶接用フラックス入りワイヤにある。
本発明の高強度鋼用のサブマージアーク溶接用ワイヤによれば、高強度鋼の高速サブマージアーク溶接において、多量の合金成分を含有したワイヤの製造を容易にし、溶接金属中の酸素量が低く高強度で高靭性の溶接金属を得ることができ、さらに良好な溶接作業性およびビード形状が得られ、溶接金属の拡散性水素量を低くすることができるので溶接欠陥のない高品質の溶接部を得ることができる。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋼製外皮と充填フラックスの合計であるワイヤ成分、フラックス充填率および充填フラックスの酸素量、水素量などについて鋭意検討した。その結果、ワイヤに適量のC、Si、Mn、Ni、Cr、Mo、Tiを含み、フラックスの充填率を限定することにより、ワイヤの生産性が良好で、高強度の溶接金属が得られること、また、充填フラックスのOを適正化とすることによって高靭性の溶接金属が得られることを見出した。溶接金属の高靭性化については、溶接金属の酸素バランスおよび合金元素添加による結晶粒組織適正化が最も重要である。
そこで本発明者らは、先ず、強脱酸剤のMgやAlを適用し、溶接金属の酸素量コントロールを行ったが、Mgは水素吸蔵合金として知られているように、Mg原材料自体の水素量も多いため、溶接金属の拡散性水素量が高くなり、低温割れが発生した。また、Mgは溶接中にMg+2H2O→Mg(OH)2+H2の反応を起こし、水素ガスを発生させるため、ブローホールやピットおよびポックマークが多量に発生した。Alは溶接金属に粗大なAl酸化物を多量に生成させるため、高強度鋼のベイナイト主体組織では、粗大な酸化物が破壊の起点となり、強度および靭性を著しく低下させた。
以上のことから、溶接金属の酸素量コントロールは、ワイヤに少量のMgおよびAlを含有することによって容易に調整することが可能であったが、低温割れ、ブローホール、ピット、ポックマーク等の溶接欠陥発生、溶接金属の強度および靭性の低下により、適用が困難な状態であった。そこで、MgおよびAlに代わる強脱酸剤として新たに見出したのがCの添加である。ただし、脱酸の効果を有意に働かせるためには、鋼製外皮のCを多くするより、充填フラックスのCを多くした方が効果は大きい傾向が認められた。
これは、サブマージアーク溶接の場合、溶接電流が高いため、鋼製外皮中に添加されたCは、溶融金属中の酸素と結びつく前に、酸化消耗する傾向が認められた。そこで、Cが溶接金属の脱酸をする前に酸化消耗せずに溶融プールまで維持させるために、充填フラックスに添加させることにした。鋼製外皮にCを添加し、溶接金属の酸素量をコントロールする場合は、Cの酸化消耗を考慮し、多量に添加する必要があり、多量に添加すると、ワイヤ自体の引張強度が高くなるため、生産性、ワイヤ送給性および溶接作業性が劣る結果となった。
ワイヤ成分の調整、フラックス充填率、充填フラックスの酸素量コントロールおよび低水素原材料の適用等により優れた機械的性能を有する溶接金属を得ることが可能となったが、さらに、鋼製外皮に継ぎ目をなくすことによって、製造工程中、焼鈍を行うことが可能となり、ワイヤの水素量をより低減することができ、また酸洗処理やメッキ処理を行うことも可能となるため、ワイヤ表面状態の清浄化および耐錆性化することができ、ワイヤ送給性が良好となり溶接作業性を向上させることが可能となった。
本発明は、以上の知見からなされたものであり、以下に本発明における高強度鋼用のサブマージアーク溶接用フラックス入りワイヤの成分等限定理由について説明する。
ワイヤ全体のCは固溶強化により、溶接金属の強度を確保する重要な元素であると共に、アーク中の酸素と反応しアーク雰囲気および溶接金属の酸素量を低減する効果がある。鋼製外皮とフラックス成分の合計(以下、ワイヤ成分という。)のCが0.06質量%(以下、%という。)未満では、前記脱酸および強度確保の効果が不十分であり、靭性も低下する。一方、0.30%を超えると溶接金属のCが高くなるためマルテンサイト主体の組織となり、強度は高くなるが靭性が低下する。したがって、ワイヤ成分のCは0.06〜0.30%とする。
また、Cによる脱酸の効果を有意に働かせるためには、鋼製外皮のCを多くするより充填フラックスのCを多くした方が効果は大きいため、充填フラックスのCはワイヤ成分の0.02〜0.26%とする。充填フラックスのCがワイヤ成分の0.02%未満であると、十分な脱酸効果が得られず靭性が劣化する。一方、0.26%を超えると脱酸が過剰となり、溶接金属の硬さが過剰となって靭性が劣化する。
ワイヤ成分のSiは溶接金属の強度および靭性向上に重要な元素であり、溶接中に酸素と結合しスラグ成分となるため、溶接金属の酸素量を低減する効果がある。ワイヤ成分のSiが0.06%未満では、溶接金属の強度が低く、酸素量が多くなって靭性が低下する。一方、0.5%を超えると溶接金属のマトリックスを固溶強化し、著しく靭性が低下する。したがって、ワイヤ成分のSiは0.06〜0.5%とする。
ワイヤ成分のMnは焼入れ性を向上させて、強度を高めるのに有効な成分である。ワイヤ成分のMnが1.0%未満では、焼入れ性が不足し、強度が不足する。一方、3.0%を超えると焼入れ性が過多となり、溶接金属の強度が高くなり靭性が低下する。したがって、ワイヤ成分のMnは1.0〜3.0%とする。
ワイヤ成分のNiは溶接金属の強度および靭性確保を目的とする。ワイヤ成分のNiが2.0%未満では、強度が低く靭性が低下する。一方、9.0%を超えるとオーステナイト分率が過大になり、溶接金属の強度が低下し、靭性を向上する効果も飽和する上に、溶接時に高温割れが発生する。したがって、ワイヤ成分のNiは2.0〜9.0%とする。
ワイヤ成分のCrは溶接金属の強度確保を目的とする。ワイヤ成分のCrが1.5%未満では、強度が低くなる。一方、3.5%を超えると強度が過多となり靭性が低下する。したがって、ワイヤ成分のCrは1.5〜3.5%とする。
ワイヤ成分のMoは溶接金属の強度確保を目的とする。ワイヤ成分のMoが1.0%未満では、強度が低く、4.0%を超えると溶接金属中に金属間化合物を生成し、溶接金属を著しく硬化させ、靭性が低下する。したがって、ワイヤ成分のMoは1.0〜4.0%とする。
ワイヤ成分のTiは溶接中に酸素と結合し、スラグ成分となるため、溶接金属の酸素量を低減する効果がある。ワイヤ成分のTiが0.02%未満では、溶接金属の酸素量が高くなって靭性が低下する。一方、0.10%を超えると溶接金属中にTiCなどのTi化合物が多量に析出し、靭性が劣化する。したがって、ワイヤ成分のTiは0.02〜0.10%とする。
ワイヤ成分に含まれる全水素量が多くなると、溶接時に水素ガスとしてブローホールやピット、ポックマークなどの溶接欠陥を発生させる。また、溶接金属の拡散性水素量が多くなるため、低温割れが発生する。したがって、溶接欠陥や低温割れを防ぐためには、ワイヤ成分の全水素量を50ppm以下にする必要がある。
前述のワイヤ成分のフラックス充填率は、10〜30%とする。フラックス充填率が10%未満では、目的の高強度化および高靭性化に対して必要な合金成分が不足し、十分な機械的性能が得られない。一方、30%を超えると、シームレスフラックス入りワイヤは、ワイヤ製造時、成型後にシーム部を溶接し継ぎ目を無くすが、そのシーム部の溶接時にフラックス成分が入り込みやすくなり、溶接欠陥が発生し、生産性が劣化する。また、フラックス充填充填率が多くなると、充填フラックスの酸素量が増加し、溶接金属の酸素量も増加するため、靭性が低下する。
充填するフラックスのフラックス全質量%でOは、0.1〜1.0%とする。Oが0.1%未満では、母材やワイヤ成分の不可避不純物中のAlが極めて微細なAlの酸化物となり、それらはTiNとの格子整合性がよいため、TiNの析出核となる。同様にAlの酸化物を核としてMnS等が複合析出する。TiNやMnS等は通常のフェライト主体の組織では、ピンニング効果により、オーステナイト粒界の成長を阻害し、組織を微細化するため、靭性を向上できるが、高強度鋼のベイナイト主体の組織では、それらが破壊の起点となり、溶接金属の靭性を低下させる。
一方、1.0%を超えると、溶接金属の酸素量が増加し、溶接金属中に粗大なAl23、Ti酸化物等の酸化物が多量に生成される。通常のフェライト主体の組織では、それらの酸化物は少量であれば、オーステナイト粒内に微細なフェライト(アシキュラーフェライト)を生成するための核となり、靭性を向上させるが、高強度鋼のベイナイト主体の組織では、粗大な酸化物は破壊の起点となり、強度および靭性が低下する。
なお、充填するフラックスのOは、予め充填フラックス原料の酸素量を測定し、合金成分の配合量から合金成分の酸素量を算出して充填フラックスのOを調整する。フラックス中の合金成分は、鋼製外皮の成分とその含有量を考慮して、各限定した範囲内で配合成分を調整し、種々の高強度鋼(母材)の成分に応じたフラックス入りワイヤとすることができる。
また、溶接金属の酸素量を低下させるために、充填フラックスの主体は金属粉とし、スラグ形成剤となる酸化物等は添加しないことが望ましい。その他、PおよびSは共に低融点の化合物を生成して、靭性を低下させるため、できるだけ低いことが好ましい。
本発明の高強度鋼用のサブマージアーク溶接用フラックス入りワイヤは、高電流で溶接してもアークが安定した溶接を可能とするために、ワイヤ外径を3.2〜6.4mmとすることが好ましい。
本発明の高強度鋼用のサブマージアーク溶接用フラックス入りワイヤは鋼製外皮が継ぎ目の無い(以下、シームレスという。)断面形状のため、耐吸湿性能に優れており、さらに製造工程中に焼鈍を行うことができるため、溶接金属の拡散性水素量を極力低減することができる。帯鋼から成形し、シーム部の溶接を行わない通常のシーム有りのフラックス入りワイヤでは、充填フラックスが吸湿しやすく、また製造工程中、焼鈍を行うことができないため、溶接金属の拡散性水素量は多くなる傾向がある。このシーム有りのフラックス入りワイヤが製造工程中に焼鈍できない理由は、シーム部に若干の間隙が空いているため、焼鈍を行うと、充填フラックス中の合金剤が酸化し、酸化物となってしまうため、溶接金属の酸素量が増加してしまうことや所定の焼入れ特性を得ることができず、溶接金属の強度および靭性が低下してしまうからである。
また、シーム有りのフラックス入りワイヤは、ワイヤ断面が非対称となり、ワイヤ自体がねじれ易く、溶接時に開先中心とのセンターずれを生じ易いが、シームレスワイヤはワイヤ断面が同心円からなり、全ての方向について対称であり、扱いやすく、ねじれが発生し難いワイヤを得ることができる。
なお、シームレスワイヤは、製造工程中に酸洗処理やメッキ処理を行うことも可能となるため、ワイヤ表面状態を清浄化および耐錆性化することができるので、ワイヤ送給性が良好となり溶接作業性を向上させることができる。また、前述したがシーム有りのフラックス入りワイヤは、シーム部に若干の間隙が空いているため、酸洗処理もメッキ処理もできないためワイヤ表面状態は、シームレスワイヤに比べて劣る。
本発明の高強度鋼用のサブマージアーク溶接用フラックス入りワイヤの製造方法は、鋼製パイプにフラックスを振動充填した後、縮径、焼鈍して素線とする。または、帯鋼を成型工程でU字型に成型してフラックスを充填し、O字型に成型してシーム部を溶接後、縮径、焼鈍して素線とする。それらの素線を、必要に応じて酸洗処理、めっき処理した後に伸線して所定径の製品とする。
また、本発明の高強度鋼用のサブマージアーク溶接用フラックス入りワイヤと組み合わせるフラックスとしては、溶接金属の酸素量を低減させるため、下記式で示される塩基度で1.3以上であることが好ましい。塩基度=(CaO+MgO+CaF2+BaO+0.5×(MnO+FeO))/(SiO2+0.5×(Al23+TiO2+ZrO2))ただし、各成分は質量%を示す。
以下、実施例により本発明の効果をさらに詳細に説明する。
表1に示す鋼製外皮を用い、表2に示す各種成分のフラックス入りワイヤを試作した。表1に示すF1の鋼製パイプは、フラックスを振動充填した後、縮径、焼鈍して素線とした。F2の帯鋼は、成型工程でU字型に成型してフラックスを充填し、O字型に成型してシーム部を溶接後、縮径、焼鈍して素線とした。F3の帯鋼は、成型工程でU字型に成型してフラックスを充填し、ラップ型に成型後、縮径、焼鈍して素線とした。さらに、それらの素線を4.0mm径まで伸線した。なお、フラックスの酸素量は、フラックス充填前に不活性ガス融解−赤外線吸収法を用いて測定し、ワイヤ全水素量は4.0mm径の製品ワイヤを熱伝導度方式による高周波加熱法によって測定した。
Figure 0005064928
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表2に示す各種フラックス入りワイヤと表3に示す溶融型フラックスを組み合わせて表4に示す板厚20mm、長さ1500mmの鋼板を、図1に示す開先角度:90°、開先深さ7.5mmのX型開先形状に加工し、表5に示す溶接条件および図2に示す電極配置の溶接施工条件で、3電極による表側と裏側の両面1パスの溶接を実施した。なお、表3に示す溶融型フラックスは、溶解後、粒度を20×200メッシュに整粒したものを用いた。
Figure 0005064928
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各試作ワイヤの評価は、ワイヤ製造時の生産性、溶接金属の拡散性水素量、溶接後のビード形状および溶接欠陥の有無、溶接金属の引張強度、靭性および酸素量を調査した。
ワイヤの生産性はシームレスのフラックス入りワイヤを製造する時のシーム部を溶接する時に、充填フラックスの溶接部への入り込みの有無および伸線時の断線の有無を調査した。溶接金属の拡散性水素量の測定はJIS Z 3118に準拠して表3に示すフラックスと組み合わせて測定し、6ml/100g以下を良好とした。ビード形状については、ビード幅および高さが均一で、凹凸の無い美しいビード形状であれば良好とし○、1つでも劣るものについては×とした。
溶接欠陥は外観検査およびX線透過試験、超音波探傷試験により、アンダーカット、ブローホール、ピット、スラグ巻き込み、融合不良、高温割れおよび低温割れの有無を調査し、欠陥が全く無ければ良好とし○、1つでも欠陥が発生した場合には劣るとし×とした。なお、低温割れは、溶接終了後48時間経過した後にX線透過試験および超音波探傷試験を行って調べた。
溶接金属の機械的性能評価は、図3に示すように表側の鋼板表面下7mmを中心にシャルピー衝撃試験片(JIS Z2202 4号)および引張試験片(JIS Z 3111 A2号)を採取して、機械試験を実施した。靭性の評価は−20℃におけるシャルピー衝撃試験により行い、各々繰返し数3本の平均により評価した。なお、シャルピー吸収エネルギーは、90J以上であれば良好とした。引張強度の評価は900MPa以上であれば良好とし、これらの調査結果を表6にまとめて示す。
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表2および表6から明らかなように、本発明例であるワイヤ記号W1〜W10は、ワイヤ成分のC、Si、Mn、Ni、Cr、Mo、Tiが適正で、充填フラックスのCおよび充填フラックスのOも適正であるので、引張強度が十分得られ、溶接金属の酸素量が低いのでシャルピー吸収エネルギーも良好であった。また、フラックス充填率が適正でワイヤ全水素量も低く、シームレスのフラックス入りワイヤであるため、ワイヤの生産性、ビード形状が良好で、拡散性水素量が低く、溶接欠陥もないなど、極めて満足な結果であった。
これに対し、比較例であるワイヤ記号W11は、フラックスの充填率が低いので、合金元素が不足し、引張強度およびシャルピー吸収エネルギーが低値であった。ワイヤ記号W12は、ワイヤ成分のSiが少ないため、溶接金属の酸素量が高くなり、シャルピー吸収エネルギーが低値であった。ワイヤ記号W13は、フラックスの充填率が高いため、ワイヤ製造時にシーム部の溶接時にフラックスが入り込み、生産性が劣化した。また、充填フラックスのOが多く、溶接金属の酸素量も増加してシャルピー吸収エネルギーが低値となった。
ワイヤ記号W14は、ワイヤ成分のMnが多いため、引張強度が高くなり、シャルピー吸収エネルギーが低値であった。ワイヤ記号W15は、ワイヤ成分の水素量が高いため、溶接時に水素ガスが発生し、ブローホールやピットおよびポックマークなどの溶接欠陥が発生した。また、拡散性水素量が高いため、低温割れも生じた。さらに、Tiが多いため、シャルピー吸収エネルギーが低値であった。
ワイヤ記号W16は、シーム有りのフラックス入りワイヤのため、溶接時にワイヤがねじれビード蛇行が発生した。また、ワイヤ中のフラックスが吸湿したため、拡散性水素量が高くなり、低温割れも生じた。さらに、充填フラックスのOが高いため、溶接金属の酸素量も多く、強度およびシャルピー吸収エネルギーが低値であった。ワイヤ記号W17は、ワイヤ成分のSiが多いため、引張強度が高くなり、シャルピー吸収エネルギーが低値であった。
ワイヤ記号W18は、充填フラックスのOが低いため、溶接金属のシャルピー吸収エネルギーが低値であった。ワイヤ記号W19は、ワイヤ成分のMnが少ないため、引張強度が低値であった。ワイヤ記号W20は、ワイヤ成分のNiが少ないため、引張強度およびシャルピー吸収エネルギーが低値であった。ワイヤ記号W21は、ワイヤ成分のNiが多いため、溶接時に高温割れが発生した。また、引張強度が低値であった。
ワイヤ記号W22は、ワイヤ成分のCrが少ないため、引張強度が低値であった。ワイヤ記号W23は、ワイヤ成分のCrが多いため、引張強度が高くなり、シャルピー吸収エネルギーが低値であった。ワイヤ記号W24は、ワイヤ成分のMoが少ないため、引張強度が低値であった。ワイヤ記号W25は、ワイヤ成分のMoが多いため、引張強度が高くなり、シャルピー吸収エネルギーが低値であった。
ワイヤ記号W26は、ワイヤ成分のTiが少ないため、溶接金属の酸素量が高くなり、シャルピー吸収エネルギーが低値であった。ワイヤ記号W27は、ワイヤ成分の充填フラックスに含まれるCが少ないため、溶接金属の酸素量が高く、引張強度およびシャルピー吸収エネルギーが低値であった。ワイヤ記号W28は、ワイヤ成分のトータルCが少ないため、脱酸が不十分となり、溶接金属の酸素量が高く、引張強度およびシャルピー吸収エネルギーが低値であった。
ワイヤ記号W29は、充填フラックスに含まれるCが多いため、脱酸が過剰となり、溶接金属の酸素量が低下し、引張強度が高くなりシャルピー吸収エネルギーが低値であった。ワイヤ記号W30は、ワイヤ成分のトータルCが多いため、脱酸が過剰となり、溶接金属中の酸素量が低下し、引張強度が高くなりシャルピー吸収エネルギーが低値であった。
本発明の実施例で用いた試験板の開先形状を示す図である。 本発明の実施例における溶接電極の配置を示す図である。 本発明の実施例における試験片の採取位置を示した図である。 代理人 弁理士 椎 名 彊 他1

Claims (3)

  1. 鋼製外皮中にフラックスを充填した高強度鋼用のサブマージアーク溶接用フラックス入りワイヤにおいて、鋼製外皮およびフラックス成分の合計がワイヤ全質量%で、C:0.06〜0.30%、Si:0.06〜0.5%、Mn:1.0〜3.0%、Ni:2.0〜9.0%、Cr:1.5〜3.5%、Mo:1.0〜4.0%、Ti:0.02〜0.10%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、前記ワイヤに充填するフラックスのCはワイヤ全質量%で0.02〜0.26%、ワイヤ全水素量が50ppm以下で、フラックス充填率が10〜30質量%であることを特徴とする高強度鋼用のサブマージアーク溶接用フラックス入りワイヤ。
  2. 前記フラックスはフラックス全質量%で、Oが0.1〜1.0%であることを特徴とする請求項1記載の高強度鋼用のサブマージアーク溶接用フラックス入りワイヤ。
  3. 鋼製外皮に継ぎ目の無いことを特徴とする請求項1または2記載の高強度鋼用のサブマージアーク溶接用フラックス入りワイヤ。
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