JP2019181524A - 低水素系すみ肉溶接用被覆アーク溶接棒 - Google Patents

低水素系すみ肉溶接用被覆アーク溶接棒 Download PDF

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Abstract

【課題】優れた耐ピット性を確保しつつ、ヒューム発生量が少ないなど溶接作業性に優れるとともに、優れた溶接金属の機械的性質が得られ、かつ、生産性が良好な低水素系すみ肉溶接用被覆アーク溶接棒を提供する。【解決手段】被覆剤全質量に対する質量%で、金属炭酸塩の合計:5〜15%、金属弗化物の合計:3〜8%、金属弗化物中のNaF:0.2〜1.5%、TiO2換算値の合計:8〜18%、SiO2換算値の合計:10〜20%、Al2O3換算値の合計:1.5〜4.0%、FeO換算値の合計:0.5〜2.0%、MgO:6%超〜10%、Si:0.5〜2.0%、Mn:5〜10%、Ni:0.3〜2.0%、鉄粉:25〜45%、Na2O換算値及びK2O換算値の合計:2〜6%を含有することを特徴とする。【選択図】なし

Description

本発明は、プライマ塗装鋼板のすみ肉溶接において、特に耐ピット性に優れ、ヒューム発生量が少なく、良好なビード形状が得られるなど溶接作業性が良好で、溶接金属の機械的性質に優れ、かつ、生産性にも優れる低水素系すみ肉溶接用被覆アーク溶接棒に関する。
近年、建築、橋梁及び船舶などの溶接構造物の大型化に伴って490MPag級高張力鋼の厚板の鋼板が使用されているが、大気または海洋地域などの過酷な環境下で長時間使用される箇所では、鋼板表面に防錆を目的にプライマを塗装したプライマ塗装鋼板が広く使用されている。
このような厚板のプライマ塗装鋼板を用いた溶接構造物の溶接では、複雑な構造物の溶接が可能で溶接能率が高く、溶接部の機械的性質を確保できるグラビティ溶接での太径の低水素系すみ肉溶接用被覆アーク溶接棒が使用されることが多い。しかし、プライマ塗装鋼板のすみ肉溶接の場合では、溶接時に鋼板表面に塗装したプライマが蒸気化されてピットが多発しやすくなり、またヒューム発生量も多いなど溶接作業性が悪くなるという問題点がある。
また、グラビティ溶接での低水素系すみ肉溶接用被覆アーク溶接棒は、1パス溶接での溶着量を確保するために通常の被覆アーク溶接棒に比べて太径心線で被覆外径が大きく長尺であるから、生産時に被覆割れなどが発生しやすいなど生産性が悪くなるという問題点もある。
このような状況下において、グラビティ溶接で耐ピット性に優れ、ヒューム発生量が少ないなど溶接作業性が良好で、溶接部の機械的性質に優れ、かつ、生産性にも優れた低水素系すみ肉溶接用被覆アーク溶接棒が従来において提案されている。
例えば、特許文献1には、被覆剤中のTiO2、SiO2、MgCO3、MnCO3含有量の比を規定することで、耐ピット性など溶接作業性が改善された低水素系被覆アーク溶接棒が開示されている。特許文献1に記載された低水素系被覆アーク溶接棒によれば、通常のプライマ塗装鋼板の溶接における耐ピット性は改善できる。しかし、ウォッシュプライマ塗装鋼板を溶接した場合には十分な耐ピット性が得られなくなるという問題点がある。また、特許文献1の記載の技術では、ヒューム発生量の低減などの良好な溶接作業性は得られない。また特許文献1の記載の技術では、生産時に被覆割れが生じるなどの問題点もある。
また、特許文献2及び特許文献3には、被覆剤中にグラファイト、活性炭または炭素を含む合金鉄及び窒素化合物を適量添加することにより、溶接時にガス放出による溶融池中にバブリングを発生させて耐ピット性が改善できる被覆アーク溶接棒が開示されている。特許文献2及び特許文献3に記載された被覆アーク溶接棒によれば、通常のプライマ塗装鋼板の溶接における耐ピット性の改善が得られるものの、特許文献1と同様、ウォッシュプライマ塗装鋼板を溶接する場合には十分な耐ピット性が得られず、ヒューム発生量が多くなるなど良好な溶接作業性は得られない。また、生産時に被覆割れが生じるなど良好な生産性も得られない。
さらに、特許文献4には、被覆剤中に金属弗化物、MgO、TiO2、SiO2、弗素四ケイ素雲母を適量添加することで、スラグの流動性を向上させて溶接作業性、特にヒューム発生量を低減するとともに、金属炭酸塩及びTi、Al、Mg、Si及びSiCの1種以上を適量添加することで耐ピット性を改善できる低水素系被覆アーク溶接棒が開示されている。特許文献4に記載された低水素系被覆アーク溶接棒によれば、通常のプライマ塗装鋼板の溶接でヒューム発生量を低減しつつ耐ピット性が改善されるが、これも特許文献1と同様にウォッシュプライマ塗装鋼板を溶接する場合には十分な耐ピット性が得られない。また、生産時に被覆割れが生じるなど良好な生産性が得られなくなるという問題点があった。
特開昭60−196293号公報 特開昭55−40064号公報 特開昭60−83798号公報 特開昭59−110495号公報
そこで本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、低水素系すみ肉溶接用被覆アーク溶接棒によるプライマ塗装鋼板のすみ肉溶接において、優れた耐ピット性を確保しつつ、ヒューム発生量が少なく、良好なビード形状が得られるなど溶接作業性に優れるとともに、優れた溶接金属の機械的性質が得られ、かつ、生産時に被覆割れが生じることがなく生産性が良好な低水素系すみ肉溶接用被覆アーク溶接棒を提供することを目的とする。
本発明の要旨は、鋼心線に被覆剤が塗布されている低水素系すみ肉溶接用被覆アーク溶接棒において、前記被覆剤は、当該被覆剤全質量に対する質量%で、金属炭酸塩の1種または2種以上の合計:5〜15%、金属弗化物の2種以上の合計:3〜8%、前記金属弗化物中のNaF:0.2〜1.5%、Ti酸化物のTiO2換算値の合計:8〜18%、Si酸化物のSiO2換算値の合計:10〜20%、Al酸化物のAl23換算値の合計:1.5〜4.0%、Fe酸化物のFeO換算値の合計:0.5〜2.0%、MgO:6%超〜10%、Si:0.5〜2.0%、Mn:5〜10%、Ni:0.3〜2.0%、鉄粉:25〜45%、Na酸化物及びK酸化物のNa2O換算値及びK2O換算値の合計:2〜6%を含有し、残部は塗布剤、鉄合金からのFe分及び不可避不純物からなることを特徴とする低水素系すみ肉溶接用被覆アーク溶接棒にある。
本発明の低水素系すみ肉溶接用被覆アーク溶接棒によれば、プライマ塗装鋼板のすみ肉溶接において優れた耐ピット性を確保しつつ、ヒューム発生量が少なく、良好なビード形状が得られるなど溶接作業性が良好で、優れた溶接金属の機械的性質が得られ、かつ、生産性にも優れるので、溶接の高能率化及び品質向上が図れる。
本発明者らは、上述した課題を解決するため、プライマ塗装鋼板のすみ肉溶接で耐ピット性が不良になる原因などについて種々検討した。
プライマ塗装鋼板のすみ肉溶接では、鋼板表面に塗装したプライマが溶接時に蒸気化してガスを発生してピットとなるため、被覆アーク溶接棒でプライマ塗装鋼板を溶接する場合、被覆剤中に金属炭酸塩を多く含有させてアークの吹付けを強くして溶融プール内を攪拌させることにより、溶融プール内に残留するガスを強制的に放出させて耐ピット性を改善する方法が知られている。しかし、グラビティ溶接は、1パス溶接での溶着量を確保する目的から被覆アーク溶接棒の心線径及び被覆外径が大きく、アークの集中性が悪くなってアークの吹付けが弱くなるため、特にピットが発生しやすいウォッシュプライマ塗装鋼板をすみ肉溶接した場合、溶融プール内を十分に攪拌できず、良好な耐ピット性が得られないことを突き止めた。
そこで、グラビティ溶接でのアークの吹付けを向上させるべく低水素系すみ肉溶接用被覆アーク溶接棒の被覆剤成分について種々試作して検討した結果、被覆剤中にNaF及び金属炭酸塩を適量添加することにより、強いアークの吹き付けを確保し、ウォッシュプライマ塗装鋼板のすみ肉溶接でも良好な耐ピット性が得られることを見出した。
次に、その他溶接作業性を改善するべく検討した結果、アークの安定化及びスパッタ発生量の低減に関しては、被覆剤中にNa酸化物及びK酸化物、Ti酸化物、Al酸化物、及び鉄粉を適量添加することでアークを安定化させてスパッタ発生量を低減できるとともに、Na酸化物及びK酸化物の含有量の合計及び金属弗化物の合計量をさらに規定することで、ヒューム発生量を低減できることを見出した。
また、スラグ被包性に関しては、被覆剤中にTi酸化物、Si酸化物を適量添加することで溶融プールを完全に被包できるスラグ量を生成するとともに、金属弗化物及びFe酸化物を適量添加することで溶融スラグの流動性を適正にしてビード表面にスラグを均一に被包させてスラグ被包性を改善してビード形状を改善できることを見出した。
さらに、Si酸化物、MgOを適量添加することで、スラグ剥離性を改善するとともに優れたビード形状が得られることを見出した。
また、溶接金属の機械的性質に関しては、被覆剤中に金属炭酸塩を適量添加することで溶接時にCO2ガスを発生させて溶融プールをシールドして溶接金属の靭性を向上すること、脱酸効果のあるSi及びMnを適量添加するとともに、Niを適量添加することにより溶接金属の強度及び靭性を向上することができることを見出した。
生産性に関しては、被覆アーク溶接棒は原材料に水ガラスを添加して混練した塗布剤を心線の周囲に塗布した後に乾燥させて製品とするが、グラビティ溶接に用いる低水素系すみ肉溶接用被覆アーク溶接棒は通常のものに比べて心線が太径であるため、塗布する被覆剤の肉厚が大きくなり、乾燥時に被覆割れなどの欠陥が発生しやすい。そこで本発明では、被覆剤中の水ガラスのNa酸化物及びK酸化物の添加量を限定することにより、乾燥時の被覆割れなどの欠陥を防止して生産性を改善できることを見出した。
以下、本発明の低水素系すみ肉溶接用被覆アーク溶接棒の被覆剤の成分組成及び成分組成の限定理由について詳細に説明する。なお、各成分組成の含有量は、被覆剤全質量に対する質量%で表すこととし、その質量%を表すときには単に%と記載することとする。
[金属炭酸塩の1種または2種以上の合計:5〜15%]
金属炭酸塩は、MgCO3、CaCO3、BaCO3、MnCO3などから添加され、アーク中で分解してCO2ガスを発生して溶融プール及び溶融スラグを大気から保護して溶接金属の靭性を確保するとともに、アークの吹き付けを強くしてピットの発生を防止する効果がある。金属炭酸塩の1種または2種以上の合計が5%未満であると、シールド効果が不足して溶接金属の靭性が低下するとともに、アークの吹付けが弱くなってピットが発生しやすくなる。一方、金属炭酸塩の1種または2種以上の合計が15%を超えると、アークの吹付けが強くなりすぎてスパッタ発生量が多くなる。したがって、金属炭酸塩の1種または2種以上の合計は5〜15%とする。
[金属弗化物の2種以上の合計:3〜8%]
金属弗化物は、CaF2、MgF2、BaF2、AlF3、Na3AlF6、NaF、LiFなどから2種以上にわたり添加され、溶融スラグの流動性を調整してビード形状を良好にする効果がある。金属弗化物の2種以上の合計が3%未満では、溶融スラグの流動性が悪くビード形状が凸状となる。一方、金属弗化物の2種以上の合計が8%を超えると、溶融スラグの流動性が著しく高くなりビードの下脚側が膨らんだ形状となり、またヒューム発生量も多くなる。したがって、金属弗化物の2種以上の合計は3〜8%とする。
[金属弗化物中のNaF:0.2〜1.5%]
金属弗化物中のNaFは、アークの吹付けを強くする効果が高く、ウォッシュプライマ塗装鋼板のすみ肉溶接であってもピットの発生を防ぐことができる。金属弗化物中のNaFが0.2%未満であると、十分なアークの吹付けが得られず、ウォッシュプライマ塗装鋼板のすみ肉溶接ではピットの発生を防止することができない。一方、金属弗化物中のNaFが1.5%を超えると、アークの吹付けが強くなりすぎてスパッタ発生量が多くなる。したがって、金属弗化物中のNaFは0.2〜1.5%とする。
[Ti酸化物のTiO2換算値の合計:8〜18%]
Ti酸化物は、ルチール、酸化チタン、チタン酸ソーダ、チタンスラグ、イルミナイトなどから添加され、アーク安定剤及びスラグ生成剤として作用し、アークを安定にしてスパッタ発生量を少なくし、スラグ被包性及びビード形状を良好にする効果がある。Ti酸化物のTiO2換算値の合計が8%未満では、アークが不安定となってスパッタ発生量が多くなる。またTi酸化物のTiO2換算値の合計が8%未満では、スラグ量が不足し、スラグ被包性が悪くなってビード形状が不良になる。一方、Ti酸化物のTiO2換算値の合計が18%を超えると、スラグ量が過多となってスラグの被包状態にムラができてビード形状が不良になる。したがって、Ti酸化物のTiO2換算値の合計は8〜18%とする。
[Si酸化物のSiO2換算値の合計:10〜20%]
Si酸化物は、珪砂、長石、水ガラスなどから添加され、スラグ剥離性の改善とビード形状を良好にする効果がある。Si酸化物のSiO2換算値の合計が10%未満では、スラグ剥離性及びビード形状が不良になる。一方、Si酸化物のSiO2換算値の合計が20%を超えると、スラグの粘性が高くなってビード表面をスラグが均一に被包できずビード形状が不良になる。またSi酸化物のSiO2換算値の合計が20%を超えると、溶融プール中のガスが放出されにくくなり、ピットが発生しやすくなる。したがって、Si酸化物のSiO2換算値の合計は10〜20%とする。
[Al酸化物のAl23換算値の合計:1.5〜4.0%]
Al酸化物は、アルミナ、長石などから添加され、溶融スラグの粘度を調整するとともに、スラグ剥離性を改善する効果がある。Al酸化物のAl23換算値の合計が1.5%未満では、スラグ剥離性が悪く、溶融スラグの粘度が低くなってビード形状が不良になる。一方、Al酸化物のAl23換算値の合計が4.0%を超えると、スラグがガラス状となりスラグ剥離性が悪く、溶融スラグの粘度が高くなってビード形状が不良になる。したがって、Al酸化物のAl23換算値の合計は1.5〜4.0%とする。
[Fe酸化物のFeO換算値の合計:0.5〜2.0%]
Fe酸化物は、FeO、Fe23などから添加され、溶融スラグの流動性を調整してスラグ被包性を良好にしてビード形状を改善する効果がある。Fe酸化物のFeO換算値の合計が0.5%未満では、溶融スラグの流動性が悪くなってスラグ被包性が悪くビード形状が不良になる。一方、Fe酸化物のFeO換算値の合計が2.0%を超えると、スラグ量が過多となりスラグの被包状態にムラができてビード形状が不良になる。したがって、Fe酸化物のFeO換算値の合計は0.5〜2.0%とする。
[MgO:6%超〜10%]
MgOは、マグネシアクリンカーなどから添加され、スラグ剥離性及びビード形状を良好にする効果がある。MgOが6%以下では、その効果が得られず、スラグ剥離性及びビード形状が不良になる。一方、MgOが10%を超えると、スラグ量が過多となってスラグの被包状態にムラができてビード形状が不良になる。したがって、MgOは6%超〜10%とする。
[Si:0.5〜2.0%]
Siは、金属Si、Fe−Si、Fe−Si−Mnなどの合金粉などから添加され、脱酸剤として作用し、溶接金属の靭性を向上させるとともに、ピットの発生を防止する効果がある。Siが0.5%未満では、脱酸不足となって溶接金属の靭性が低下するとともに、ピットが発生しやすくなる。一方、Siが2.0%を超えると、溶接金属の粒界に低融点酸化物が析出して靭性が低下する。したがって、Siは0.5〜2.0%とする。
[Mn:5〜10%]
Mnは、金属Mn、Fe−Mn、Fe−Si−Mnなどの合金粉などから添加され、脱酸剤として作用し、溶接金属の強度及び靭性を向上させるとともに、ピットの発生を防止する効果がある。Mnが5%未満では、脱酸不足となって溶接金属の強度及び靭性が低下するとともに、ピットが発生しやすくなる。一方、Mnが10%を超えると、溶接金属の強度が高くなって靭性が低下する。したがって、Mnは5〜10%とする。
[Ni:0.3〜2.0%]
Niは、金属Ni、Fe−Niなどの合金粉などから添加され、溶接金属の強度及び靭性を向上させる効果がある。Niが0.3%未満では、必要な溶接金属の強度及び靭性が得られない。一方、Niが2.0%を超えると、溶接金属の強度が高くなって靭性が低下する。したがって、Niは0.3〜2.0%とする。
[鉄粉:25〜45%]
鉄粉は、アーク状態をソフトにする効果を有する。鉄粉が25%未満では、アークが不安定になってスパッタ発生量が多くなる。一方、鉄粉が45%を超えると、アークの吹付けが弱くなり、ピットが発生しやすくなる。したがって、鉄粉は25〜45%とする。
[Na酸化物及びK酸化物のNa2O換算値及びK2O換算値の合計:2〜6%]
Na酸化物及びK酸化物は、水ガラス中の珪酸ソーダ及び珪酸カリウム、カリ長石、カリガラス及びソーダ長石などから添加され、特にアークを安定にしてスパッタ発生量を少なくする効果がある。またNa酸化物及びK酸化物は、被覆アーク溶接棒を生産する際、塗布剤の粘度を調整して乾燥時の被覆割れを防止して生産性を向上する効果もある。Na酸化物及びK酸化物のNa2O換算値及びK2O換算値の合計が2%未満では、生産時に被覆割れが生じやすくなる。また、アークが不安定となってスパッタ発生量が多くなる。一方、Na酸化物及びK酸化物のNa2O換算値及びK2O換算値の合計が6%を超えると、アークの吹付けが強くなりすぎてスパッタ発生量が多くなるとともに、ヒューム発生量も多くなる。したがって、Na酸化物及びK酸化物のNa2O換算値及びK2O換算値の合計は2〜6%とする。
なお、本発明の低水素系すみ肉溶接用被覆アーク溶接棒の被覆剤中の残部は、上記の成分のほか、生産性の観点からアルギン酸ソーダ、セルロースなどの塗布剤が0.1〜3%、Fe−Si、Fe−Mn、Fe−Si−Mnなどの鉄合金からのFe分及び不可避不純物である。また、使用する鋼心線は、JIS G 3523 SWY11を用いることが好ましい。さらに、鋼心線への被覆剤の被覆率は35〜55%であることが好ましい。
以下、本発明の効果を実施例により更に詳細に説明する。
表1に示す各種被覆剤を直径6.4mm、長さ700mmのJIS G 3523 SWY11の鋼心線に被覆率40〜47%で塗布した後に400℃で焼成して溶接棒を各種試作し、生産性、溶接作業性及び機械的性質について調査した。
Figure 2019181524
生産性の評価は、各種試作溶接棒を500kg生産し、被覆割れなどの欠陥の有無を目視で確認し、被覆外観が良好で欠陥がないものを良好とした。
溶接作業性の評価は、各種試作溶接棒を用い、JIS G 3106 SM490A、板厚12mm×幅100mm×長さ1000mmの鋼板表面に膜厚25〜35μmのウォッシュプライマを塗装したプライマ塗装鋼板をT字型に組んだT字試験体にて、交流溶接機を用いてグラビティ溶接で溶接電流300Aの水平すみ肉溶接を行い、アーク状態の良否、スパッタ発生量及びヒューム発生量、スラグ被包性、スラグ剥離性及びビード形状の良否を目視で調査した。なお、耐ピット性は、溶接ビード全長にピットが全く発生しなかったものを良好とした。
機械的性質の評価は、JIS G 3106 SM490Aの板厚20mmの鋼板を用い、JIS Z 3111に準じて交流溶接機で溶着金属試験を行い、引張試験片(A1号)と衝撃試験片(Vノッチ試験片)を採取して引張試験及び衝撃試験を行った。引張試験は引張強さが490〜590MPa、衝撃試験は試験温度−20℃で各々繰り返し3回の吸収エネルギーの平均値が47J以上を良好とした。これらの調査結果を表2にまとめて示す。
Figure 2019181524
表1及び表2中No.1〜No.12が本発明例、No.13〜No.24は比較例である。本発明であるNo.1〜No.12は、被覆剤中の金属炭酸塩の合計、金属弗化物の2種以上の合計、金属弗化物中のNaF、Ti酸化物のTiO2換算値の合計、Si酸化物のSiO2換算値の合計、Al酸化物のAl23換算値の合計、Fe酸化物のFeO換算値の合計、MgO、Si、Mn、Ni、鉄粉、Na酸化物及びK酸化物のNa2O換算値及びK2O換算値の合計が適正であるので、被覆アーク溶接棒の生産時に被覆割れなどの欠陥がなく生産性が良好であった。また、ウォッシュプライマ塗装鋼板での水平すみ肉溶接でのアーク状態が良好で、スパッタ発生量、ヒューム発生量が少なく、スラグ被包性、スラグ剥離性及びビード形状が良好で、ピットは発生しなかった。さらに、溶着金属の引張強さ及び吸収エネルギーも適正であり、極めて満足な結果であった。
比較例中のNo.13は、金属弗化物中のNaFが少ないので、アークの吹付けが弱くピットが発生した。また、Al酸化物のAl23換算値の合計が少ないので、スラグ剥離性が悪くビード形状も不良であった。
No.14は、Fe酸化物のFeO換算値の合計が少ないので、スラグ被包性が悪くビード形状が不良であった。また、Na酸化物及びK酸化物のNa2O換算値及びK2O換算値の合計が多いので、アークの吹付けが強くなりすぎてスパッタ発生量が多く、ヒューム発生量も多かった。
No.15は、Ti酸化物のTiO2換算値の合計が少ないので、アークが不安定でスパッタ発生量が多かった。また、スラグ被包性が悪くビード形状が不良であった。さらに、Niが少ないので、溶着金属の引張強さ及び吸収エネルギーが低かった。
No.16は、Al酸化物のAl23換算値の合計が多いので、スラグ剥離性が悪くビード形状も不良であった。また、鉄粉が少ないので、アークが不安定でスパッタ発生量が多かった。
No.17は、MgOが少ないので、スラグ剥離性が悪くビード形状も不良であった。また、Niが多いので、溶着金属の引張強さが高く、吸収エネルギーが低かった。さらに、鉄粉が多いので、アークの吹付けが弱く、ピットが発生した。
No.18は、金属炭酸塩の合計が多いので、アークの吹き付けが強すぎてスパッタ発生量が多かった。また、Si酸化物のSiO2換算値の合計が多いので、スラグ被包性が悪くビード形状が不良でピットも発生した。
No.19は、金属炭酸塩の合計が少ないので、アークの吹付けが弱く、ピットが発生した。また、溶接金属の吸収エネルギーが低かった。また、MgOが多いので、スラグ被包性が悪くビード形状が不良であった。
No.20は、金属弗化物の2種以上の合計が少ないので、ビード形状が凸状となった。また、Siが少ないので、ピットが発生し、溶着金属の吸収エネルギーが低かった。さらに、Na酸化物及びK酸化物のNa2O換算値及びK2O換算値の合計が少ないので、生産時に被覆表面に被覆割れが発生した。また、アークの吹付けが弱く不安定でスパッタ発生量が多かった。
No.21は、金属弗化物の2種以上の合計が多いので、ビード形状が不良でヒューム発生量も多かった。また、Siが多いので、溶着金属の吸収エネルギーが低かった。
No.22は、Ti酸化物のTiO2換算値の合計が多いので、スラグ量が過多となってスラグの被包性及びビード形状が不良であった。また、Mnが多いので、溶着金属の引張強さが高く、吸収エネルギーが低かった。
No.23は、Si酸化物のSiO2換算値の合計が少ないので、スラグ剥離性が悪くビード形状も不良であった。また、Mnが少ないので、ピットが発生し、溶着金属の引張強さ及び吸収エネルギーが低かった。
No.24は、金属弗化物中のNaFが多いので、アークの吹付けが強すぎてスパッタ発生量が多かった。また、Fe酸化物のFeO換算値が多いので、スラグ被包性が悪くビード形状が不良であった。

Claims (1)

  1. 鋼心線に被覆剤が塗布されている低水素系すみ肉溶接用被覆アーク溶接棒において、
    前記被覆剤は、当該被覆剤全質量に対する質量%で、
    金属炭酸塩の1種または2種以上の合計:5〜15%、
    金属弗化物の2種以上の合計:3〜8%、
    前記金属弗化物中のNaF:0.2〜1.5%、
    Ti酸化物のTiO2換算値の合計:8〜18%、
    Si酸化物のSiO2換算値の合計:10〜20%、
    Al酸化物のAl23換算値の合計:1.5〜4.0%、
    Fe酸化物のFeO換算値の合計:0.5〜2.0%、
    MgO:6%超〜10%、
    Si:0.5〜2.0%、
    Mn:5〜10%、
    Ni:0.3〜2.0%、
    鉄粉:25〜45%、
    Na酸化物及びK酸化物のNa2O換算値及びK2O換算値の合計:2〜6%を含有し、
    残部は、塗布剤、鉄合金からのFe分及び不可避不純物からなることを特徴とする低水素系すみ肉溶接用被覆アーク溶接棒。
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