JP3793429B2 - ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、軟鋼および490〜590N/mm2 級高張力鋼などにウオッシュプライマ、無機ジンクプライマ等のプライマを塗装した鋼板(以下、プライマ塗装鋼板という)を高電流で高速度の溶接条件で水平すみ肉溶接する場合において問題となるビード形状および耐ピット性を改善したガスシ−ルドア−ク溶接用フラックス入りワイヤ(以下、フラックス入りワイヤという)に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、船舶、橋梁などの溶接構造物の水平すみ肉溶接に使用されているフラックス入りワイヤは、高速度の溶接条件で優れたビード形状およびなじみ性を得ることを目的とした特開平9−94692号公報や特開平9−94693号公報、耐ピット性の改善を目的とした特開平3−180298号公報など種々提案されている。
【0003】
しかし、施工現場からは、図1に示すプライマ塗装鋼板の水平すみ肉溶接において、溶接作業能率および溶接部の品質向上のために、高電流で高速度の溶接条件で溶接を行った場合でも、ビード形状や耐ピット性が劣化しないフラックス入りワイヤの要求が依然として強い。図1の溶接部の模式図において、1は立板、2は下板で、4は立板1および下板2に塗装されたプライマを示し(厚さを誇張している)、3はすみ肉ビードである。
【0004】
前記公報記載のフラックス入りワイヤを使用して、プライマ塗装鋼板の水平すみ肉溶接を高電流で高速度の溶接条件で溶接すると、高電流化に伴う強いアーク力によって、溶融プールの後退が大きくなり、 図2(a)に模式図を示すようにビード形状は、余盛部5が大きい凸状になりやすい。加えて高速度の溶接では溶融金属の凝固速度が速くなるのでプライマ燃焼ガスの外部脱出が制約され耐ピット性が劣化する。また、図2(b)に示すようにビード止端部6が膨らみ、なじみ性不良が目立つようになる。この場合は、ビード止端部と下板2との接触角度θが小さくなって溶接構造物の耐疲労強度が低下したり溶接ビードへの塗料の塗装性が悪くなる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、プライマ塗装鋼板の高電流で高速度の溶接条件での水平すみ肉溶接に使用して、図2(C)に示すような余盛部5が小さくフラットで、ビード止端部と母材(特に下板2側ビード止端部6)とのなじみ性が良好、すなわち、ビード止端部と下板2との接触角度θが大きいビード形状と優れた耐ピット性が得られるガスシ−ルドア−ク溶接用フラックス入りワイヤを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は、
(1) 鋼製外皮内にフラックスを充填してなるガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤにおいて、ワイヤ全質量に対する質量%で、フラックスに、
Na化合物のNa換算値:0.05〜0.22%、
F化合物のF換算値:0.03〜0.25%
を含有し、Naを前記Na化合物のNa換算値としたとき、
F換算値:(Na−0.1)〜(Na+0.1)%
とし、さらにフラックスに、
Ti酸化物(TiO2換算値):2〜4%、
Si酸化物(SiO2換算値):0.6〜1.2%
を含有すると共に、フラックスおよび外皮の一方または両方に、
鉄酸化物:0.2〜0.8%
C:0.05〜0.12%、
Si:0.3〜1.2%、
Mn:1.5〜4.0%、
AlおよびAl酸化物の一方または両方のAl2O3換算値、ならびにMgおよびMg酸化物の一方または両方のMgO換算値の1種または2種の合計:0.2〜1.2%、
ただし、
AlおよびAl酸化物の一方または両方のAl2O3換算値:1.0%以下でかつ、
MgおよびMg酸化物の一方または両方のMgO換算値:0.8%以下で、
さらに、
ZrおよびZr酸化物の一方または両方のZrO2換算値:0.05〜0.2%
を含有することを特徴とするガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。
(2) 前記Na化合物の少なくとも一部が珪酸ソーダを主成分とする水ガラスであることを特徴とする(1)記載のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。
(3) ワイヤの全水素量が50ppm以下であることを特徴とする(1)または(2)に記載のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。
(4) 鋼製外皮は貫通した隙間がないワイヤ断面形態であることを特徴とする(1)ないし(3)のいずれかに記載のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤにある。
【0007】
【発明の実施の形態】
高電流で高速度の溶接条件で行う水平すみ肉溶接において良好なビード形状と耐ピット性を両立するためには、溶融スラグによる溶融金属の被包性(以下、スラグ被包性という)とともにアーク力の調整が最も重要である。この観点からフラックス入りワイヤの成分組成について種々検討した。
【0008】
その結果、アーク力の調整は特にNa、Fおよび鉄酸化物の適量を組み合わせることにより行なえること、これにより高電流域での溶接条件範囲を広くし、またアーク力を適度することにより溶融プールの拡大と撹拌および溶融プールの過度の後退を抑制することができることがわかった。高電流の溶接条件では必然的にアーク力が強くなり、適正なアーク電圧は高めに設定される。また、造船所などの大規模の溶接施工現場では多数の装置が稼働しており出力電圧の変化が起こる場合がある。この場合、アーク安定剤としてNaとともにKを主体とする従来のフラックス入りワイヤでは、アーク電圧が高くなるのに伴い電圧変化に対してアーク状態の変動が大きくなりビード形状や耐ピット性が悪くなる。これに対し、鉄酸化物とNaとFの組み合わせで成分を調整することによりアーク電圧の変化に対するアーク状態の変動を小さくでき、さらにNaによるアーク集中性を活かしたやや強めのアーク状態にしてビード形状および耐ピット性を良好にできるという知見を得た。
【0009】
さらに、C、SiおよびMnは溶接金属に必要な強度、衝撃値を確保するための基本的な合金成分である。また、Mnの脱酸生成物であるMnOは生成量が多く主要なスラグ成分となる。スラグ被包性についてはTiO2 、MnO、SiO2 を基本系として、Al2 O3 、MgO、ZrO2 、鉄酸化物、Na、Fを適量にして、薄く均一な厚さで適度な粘性(流動性)をもった溶融スラグ層を形成して溶融金属を被包することによって、ビード形状を良好とし、特にビード止端部と母材(下板)とのなじみ性が良好となることがわかった。
【0010】
以下に本発明のフラックス入りワイヤの成分組成およびその含有量の限定理由を述べる。なお、以下に述べる各成分組成の含有量は、ワイヤ全質量に対する質量%で示す。
Na化合物のNa換算値:0.05〜0.22%
アーク安定剤としてアルカリ弗化物(NaF、Na3 AlF6 等)、炭酸塩(Na2 CO3 )、チタン酸塩(TiO2 −Na2 O系)、珪酸塩(SiO2 −Na2 O系)などのNa化合物をNa換算値で0.05%以上フラックス中に含有させることにより、安定したアーク状態が保持されるとともに、溶融スラグの粘性が調整されて図2(c)に示すような止端部のなじみ性が良好なビードになる。また、Naによるアーク集中性は溶融プールの撹拌に効果的で、耐ピット性が向上する。しかし、Na換算値が0.22%を超えるとアーク長が長くなりアーク状態が不安定になるとともに、溶融プールの撹拌が弱くピットが発生しやすく、また、溶融スラグの粘性が小さくなり過ぎてスラグ被包性が悪くビード止端部のなじみ性が劣化する。
【0011】
さらに、上記Na化合物の少なくとも一部、好ましくはNa換算値として0.05%以上が珪酸ソーダを主成分とする水ガラス(SiO2 −Na2 O−H2 O)であることがさらに好ましい。これにより、SiO2 −Na2 O複合酸化物がフラックス中に均一に分散され、アーク状態が安定化するとともに、溶融スラグと溶融金属間の界面張力が調整され、余盛が小さくフラットで止端部のなじみ性が良いビード形状が得られる。この場合、配合原料粉を湿式混合(造粒)してから充填するが、水分は耐ピット性を損なうのでフラックス充填前の高温焼成あるいは充填後のワイヤ縮径工程の途中で脱水素焼鈍を行い極力低減する必要がある。
【0012】
F化合物のF換算値:0.03〜0.25%
Fはアーク雰囲気中の水素分圧の低下、溶融プールの撹拌作用および溶融スラグの粘性の低下によりプライマ燃焼ガスの放出を容易にしてピットの発生を防止する。このためにF化合物をF換算値で0.03%以上フラックス中に含有させるが、F換算値が0.03%未満では耐ピット性への効果が小さい。F換算値が0.25%を超えるとアーク力が強過ぎてアークが不安定で、また、溶融スラグの粘性が低下し過ぎてスラグ被包性が悪く、立板側のビ−ド止端部に除去しにくいスラグが薄く残ったり、溶融プールの後退が大きくなり図2(a)に示すようなビードの凸状化や止端部が膨らむなどの悪影響が現れる。
【0013】
ただしF換算値は、Naを先に述べたNa化合物のNa換算値とすると、(Na−0.1)〜(Na+0.1)%を満足するように含有させる必要がある。Na換算値に対するF換算値の割合が不足(F換算値がNa−0.1%未満)するとアーク長が長くなりアーク力が弱くビード形状の劣化とともに溶融プールの撹拌力が低下しピットが発生しやすくなる。
【0014】
一方、Na換算値に対するF換算値の割合が過剰(Na+0.1%超)になるとアーク長が短くなりアーク力が強過ぎてアークと溶融プールが不安定な状態となり、また、溶融プールの後退が激しくビード形状が不良となる。FはNa、Al、Mgなどの弗化物で含有させてよく、これらのF換算値をもって含有量とする。
【0015】
鉄酸化物:0.2〜0.8%
FeO、Fe2 O3 、Fe3 O4 などの鉄酸化物は、ヘマタイト、ミルスケール、チタンスラグ、鉄粉(表面酸化鉄)などとしてフラックス中に含有させるほか、外皮金属(表面、内面スケール)としても含有させられる。鉄酸化物を0.2%以上含有させることによって、溶融スラグの粘性を小さくしてビード止端部のなじみ性と耐ピット性を改善する。また、アーク状態についてもアーク幅を広げ、NaおよびFによる強すぎるアークの集中性を緩和し溶融プール幅を広げ、かつ過剰な溶融プールの後退を抑制するように作用し、耐ピット性およびビード形状を良好にする。しかし、鉄酸化物が0.8%を超えると溶融スラグの粘性が小さくなり過ぎて、立板側ビードの脚長が小さく図2(b)に示すビード止端部が膨れたビード形状になる。
【0016】
本発明のフラックス入りワイヤにおいては、さらに成分が以下の範囲であることが好ましい。
Ti酸化物(TiO2 換算値):2〜4%
フラックス中のルチル、酸化チタン、ならびにチタンスラグおよびチタン酸ソーダなどのTi酸化物がTiO2 換算値で2%未満ではスラグ生成量が不足しスラグ被包状態が悪く、滑らかなビ−ド外観が得られず凸状ビードとなり、スラグ剥離性も悪くなる。一方、Ti酸化物のTiO2 換算値が4%を超えるとスラグ生成量が多く、溶融スラグの粘性も高くなり過ぎるためにプライマ燃焼ガスの放出が阻害されてピットやガス溝が発生しやすくなる。また、ビ−ド止端部が膨れてなじみ性が悪くなる。
【0017】
Si酸化物(SiO2 換算値):0.6〜1.2%
フラックス中の珪砂やジルコンサンド、珪酸ソーダなどのSi酸化物がSiO2 換算値で0.6%未満では溶融スラグの粘性が不足しスラグ被包性が悪く、ビード形状が不良となる。SiO2 換算値が1.2%を超えるとスラグの粘性が大きくなり過ぎてプライマ燃焼ガスの放出が阻害されピットやガス溝が発生しやすくなる。また、ビ−ド止端部が膨れてなじみ性が悪くなる。
【0018】
以下の成分はフラックスおよび外皮の一方または両方に含有させられる。
C:0.05〜0.12%
Cは溶接金属の機械的性質を確保するために0.05%以上含有させる。Cが0.05%未満では強度不足となり、0.12%を超えると強度が高くなり過ぎて衝撃値が低下する。なお、ヒューム、スパッタの低減のためには外皮金属のCを極力抑えること(C:0.03%以下)が好ましい。
【0019】
Si:0.3〜1.2%
Siは溶接金属の機械的性質を確保するために0.3%以上含有させる。Siが0.3%未満では強度不足や脱酸不足により衝撃値が低下し、1.2%を超えると強度が高くなり過ぎて衝撃値が低下する。また、ビード表面にスラグ焼き付きが起こりやすくなる。なお、Siの脱酸反応で生成するSiO2 は他のSi酸化物から含有させたSiO2 と同様にスラグ被包性を良好にする。
【0020】
Mn:1.5〜4.0%
Mnは溶接金属の機械的性質を確保し、脱酸反応で生成するMnOをスラグの主要成分として利用するために1.5〜4.0%含有させる。Mnが1.5%未満では強度不足や脱酸不足により衝撃値が低下し、またスラグのMnOが不足しビード止端部のなじみ性が劣化する。Mnが4.0%を超えると強度が高くなり過ぎて衝撃値が低下し、また過剰なMnOの生成はビード形状を凸状にする。
【0021】
AlおよびAl酸化物の一方または両方のAl2 O3 換算値、ならびにMgおよびMg酸化物の一方または両方のMgO換算値の1種または2種の合計:0.2〜1.2%、
Al、Mgは強脱酸剤として作用し溶接金属の衝撃値を向上させるが、これらの脱酸生成物であるAl2 O3 およびMgOは、アルミナ(Al2 O3 )などのAl酸化物、マグネシア(MgO)などのMg酸化物と同様に溶融スラグの凝固を速めてビード形状を全体的に整える作用をする。したがってAlおよびAl酸化物の一方または両方のAl2 O3 換算値、ならびにMgおよびMg酸化物の一方または両方のMgO換算値の1種または2種の合計で0.2%以上含有させる。しかし、これが1.2%を超えると溶融スラグの凝固むらや流動性過剰および凝固速度が速くなることによる悪影響が重なり、ビード形状および耐ピット性の劣化が顕著になる。
【0022】
ただし、上記のAlおよびAl酸化物の一方または両方のAl2 O3 換算値が1.0%を超えると溶融スラグの凝固むらが観察され、スラグが厚目に被包した部分にピットやガス溝が発生しやすくなる。また、ビード止端部のなじみ性が悪くなり、ビード表面が凹凸となり滑らかさがなくなる。
【0023】
また、上記のMgおよびMg酸化物の一方または両方のMgO換算値が0.8%を超えると溶融スラグの流動性が増しスラグが下板側に垂れ落ち止端部が膨らんだり、溶融プールの後退距離が大きくなり過ぎてビードが凸状になる。また、溶融スラグの凝固が速くなりピットやガス溝が発生しやすくなる。
【0024】
ZrおよびZr酸化物の一方または両方のZrO2 換算値:0.05〜0.2%
Zrも強脱酸剤として作用し、Zrの脱酸生成物であるZrO2 はジルコンサンド(ZrO2 −SiO2 )などのZr酸化物と同様に少量でスラグ被包性を良くしてビード形状を改善する効果がある。したがって、ZrおよびZr酸化物の一方または両方のZrO2 換算値が0.05%未満であるとスラグ被包性が悪くビード形状が不良となる。しかし、これが0.2%を超えると全体的に丸みを帯びたビード形状となり止端部のなじみ性やスラグ剥離性の劣化が生じ、また、スラグの凝固が速くなりピットが発生しやすくなる。
【0025】
以上、本発明のフラックス入りワイヤの成分組成の限定理由を述べたが、その他のワイヤ成分は主に外皮部と鉄粉によるFeである。また、Ni、Cu、Cr、Mo、Nb、V、Bなどの合金剤を含有させて適用鋼種の要求品質に適合した溶接金属の種々の特性(強度、靭性、耐火性、耐熱性、耐候性等)を高めること、S、Biなどのスラグ剥離補助剤を含有させることも、本発明の効果を損なうことのない範囲で可能である。また、本発明のフラックス入りワイヤはアーク電圧の変化に対してアーク状態が敏感に変動してアークの集中性を損なうK化合物を実質的に含有しないことが好ましいが、原料事情によってK化合物を併用する場合にはK換算値で0.03%以下に制限する。
【0026】
なおワイヤ中の水素は、アーク雰囲気中の水素分圧を上げピットの発生を助長する。ワイヤの全水素量を50ppm以下にすることにより耐ピット性の改善効果が一層発揮される。ワイヤの低水素化はフラックス原料の種類、充填フラックスの乾燥条件或いはワイヤの中間焼鈍条件を適宜選択することによって可能である。なお、ワイヤの全水素量の測定は不活性ガス融解熱伝導法による分析で行うものとする。
【0027】
また鋼製外皮部に貫通した隙間がないワイヤ断面形態のシームレスフラックス入りワイヤであることが好ましい。これにより低水素化が可能であるとともに、吸湿性のあるNa化合物の原料をフラックス中に含むフラックス入りワイヤにおいて、保管、使用中に大気からの水分吸収を防止するので耐ピット性の改善効果がさらに大きくなる。
【0028】
本発明のフラックス入りワイヤは、フラックス充填後の伸線加工性が良好な軟鋼やSiやMnを高く含有する低合金鋼、TiやNiなどを少量添加した低合金鋼の外皮内にフラックスをワイヤ全重量に対して8〜25%充填後、ダイス伸線やローラ圧延加工により通常のワイヤ径(1.0〜2.0mm)に縮径して製造される。また溶接用シールドガスはCO2 ガスが一般的であるが、Ar−CO2などの混合ガスも使用できる。
【0029】
【実施例】
以下に、実施例により本発明の効果をさらに詳細に説明する。
軟鋼パイプに、水ガラス(珪酸ソーダの種類、濃度を変化させた)で造粒したフラックスを充填後、伸線して(外皮部の軟化および脱水素のための中間焼鈍を1回実施、水素量の変化には温度及び保持時間で対応)、フラックス充填率15%、ワイヤ径1.4mmの、鋼製外皮部に貫通した隙間がないシームレスタイプのフラックス入りワイヤを試作した。表1〜表3に試作したフラックス入りワイヤを示す。
【0030】
【表1】
【0031】
【表2】
【0032】
【表3】
【0033】
これらの試作フラックス入りワイヤを用いて、無機ジンクプライマ塗装鋼板をT字すみ肉試験体(鋼種SM490B、板厚16mm、試験体長さ1000mm、プライマ膜厚は下板約30μm、立板(端面塗装あり)約30μm、立板−下板の間隙なし)に組み立てて水平すみ肉溶接試験を行った。溶接条件は電流420A、チップ/母材間測定のアーク電圧41V、溶接速度60cm/min、チップ/母材間距離25mm、電源極性DC(ワイヤ+)、シールドガスCO2 ガス(流量25リットル/min)で、両側同時溶接(左右電極シフト50mm)した。
【0034】
評価は、アーク安定性、アーク長、集中性などのアーク状態の評価、外観観察とビード止端部と母材との接触角度θの測定によるビード形状の評価、ピットの発生個数とスラグ状態(スラグの被包状態と剥離性)の観察による耐ピット性の評価により行なった。それらの結果を表4にまとめて示す。
【0035】
【表4】
【0036】
表4中、ワイヤ記号W1〜W8は各成分組成とも適量であるのでアーク状態、ビード形状、耐ピット性、凝固スラグ状態のいずれも良好で、極めて満足な結果であった。
ワイヤ記号 W9は、Siが高いのでスラグ焼き付きが生じ、また、Mnが低 いのでビード止端部のなじみが悪く、さらにSi酸化物のSiO2 換算値が低いのでスラグ被包性が悪くビード形状がやや不良となった。
【0037】
ワイヤ記号W10は、Mnが高いのでやや凸状ビードとなりビード止端部のなじみがやや悪かった。
ワイヤ記号W11は、Ti酸化物のTiO2 換算値が低いのでスラグ被包性およびスラグ剥離性が不良で、ビードはやや凸状となった。
ワイヤ記号W12は、Ti酸化物のTiO2 換算値が高いのでピットが発生し、ビード形状がやや不良となった。
【0038】
ワイヤ記号W13は、Si酸化物のSiO2 換算値が高いのでピットが発生し、ビード形状がやや不良となった。
ワイヤ記号W14は、AlおよびAl酸化物の一方または両方のAl2 O3 換算値、ならびにMgおよびMg酸化物の一方または両方のMgO換算値の1種または2種の合計が低いので、ビード形状がやや不良となった。
【0039】
ワイヤ記号W15は、上記Al2 O3 換算値およびMgO換算値の1種または2種の合計が高いので、スラグの凝固むらがおこりビード形状、耐ピット性がやや不良となった。
ワイヤ記号W16は、AlおよびAl酸化物の一方または両方のAl2 O3 換算値が高いので、スラグの凝固むらがおこり、スラグ被包性とスラグ剥離性が不良で、ビード形状と耐ピット性がやや不良となった。
【0040】
ワイヤ記号W17は、MgおよびMg酸化物の一方または両方のMgO換算値が高いので、スラグが下板側に垂れてビード形状が不良で、ピットも発生した。ワイヤ記号W18は、ZrまたはZr酸化物を含有してないためにスラグ被包性が悪く、ビード形状がやや不良となった。
ワイヤ記号W19は、ZrおよびZr酸化物の一方または両方のZrO2 換算値が高いので凸気味のビード形状となり、スラグ剥離性が不良でピットも発生した。
【0041】
ワイヤ記号W20は、ワイヤの全水素量が高いためにピットが発生した。
ワイヤ記号W21は、鉄酸化物が低いのでアークの集中性が過剰となりビード形状と耐ピット性が不良となった。
ワイヤ記号W22は、鉄酸化物が高いのでビード形状が不良となった。
【0042】
ワイヤ記号W23は、Na化合物のNa換算値が低く、アーク安定剤としてKを主体として含有しているためにアーク力が弱くピットが発生し、ビード形状も不良となった。
ワイヤ記号W24は、Na化合物のNa換算値が高いためにアークが不安定でスラグ被包性、ビード形状および耐ピット性が不良となった。
ワイヤ記号W25は、F化合物のF換算値が低いのでピットが発生した。
【0043】
ワイヤ記号W26は、F化合物のF換算値が高いのでアークが不安定でスラグ被包性、スラグ剥離性およびビード形状が不良となった。
ワイヤ記号W27は、Na換算値に対するF換算値が低いのでアーク力が弱くビード形状が不良でピットも発生した。
ワイヤ記号W28は、Na換算値に対するF換算値が高いのでアークが強くアーク不安定でビード形状が不良となった。
【0044】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤによれば、高電流で高速度の溶接条件で行うプライマ塗布鋼板の水平すみ肉溶接において問題となるビード形状および耐ピット性を改善でき、溶接の高能率化および溶接部の品質向上が図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】水平すみ肉溶接部の模式図
【図2】(a)、(b)、(c)は実施例における水平すみ肉溶接試験後のビード断面を示す模式図
【符号の説明】
1 立板
2 下板
3 すみ肉ビ−ド
4 プライマ
5 余盛部
6 止端部
θ ビード止端部と下板との接触角度
Claims (4)
- 鋼製外皮内にフラックスを充填してなるガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤにおいて、ワイヤ全質量に対する質量%で、フラックスに、
Na化合物のNa換算値:0.05〜0.22%、
F化合物のF換算値:0.03〜0.25%
を含有し、Naを前記Na化合物のNa換算値としたとき、
F換算値:(Na−0.1)〜(Na+0.1)%
とし、さらにフラックスに、
Ti酸化物(TiO 2 換算値):2〜4%、
Si酸化物(SiO 2 換算値):0.6〜1.2%
を含有すると共に、フラックスおよび外皮の一方または両方に、
鉄酸化物:0.2〜0.8%
C:0.05〜0.12%、
Si:0.3〜1.2%、
Mn:1.5〜4.0%、
AlおよびAl酸化物の一方または両方のAl 2 O 3 換算値、ならびにMgおよびMg酸化物の一方または両方のMgO換算値の1種または2種の合計:0.2〜1.2%、
ただし、
AlおよびAl酸化物の一方または両方のAl 2 O 3 換算値:1.0%以下でかつ、
MgおよびMg酸化物の一方または両方のMgO換算値:0.8%以下で、
さらに、
ZrおよびZr酸化物の一方または両方のZrO 2 換算値:0.05〜0.2%
を含有することを特徴とするガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。 - 前記Na化合物の少なくとも一部が珪酸ソーダを主成分とする水ガラスであることを特徴とする請求項1記載のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。
- ワイヤの全水素量が50ppm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。
- 鋼製外皮は貫通した隙間がないワイヤ断面形態であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。
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