JP6463234B2 - 原油油槽鋼の2電極水平すみ肉ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ - Google Patents

原油油槽鋼の2電極水平すみ肉ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ Download PDF

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本発明は、ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤに関し、特に原油タンカーの油槽や、地上又は地下原油タンクなどの原油を輸送又は貯蔵する原油油槽を構成する鋼板を溶接する上で好適な原油油槽鋼の2電極水平すみ肉ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤに関する。
原油を輸送する原油タンカーの油槽、原油を貯蔵する地上又は地下原油タンク等、原油を輸送又は貯蔵する鋼製油槽は、原油中に含まれる水分の他、塩分や腐食性ガス成分等により、その油槽を構成する鋼板が腐食環境に晒される。特に、原油タンカーの油槽内面では、原油中の揮発成分や混入海水、油田塩水中の塩分、防爆のために油槽内に送られるイナートガス(船のエンジンの排気ガス)の他、昼夜の温度変動による結露等によって独特の腐食環境になり、腐食減肉が生じやすい。このような鋼板の腐食減肉により、所要の船体強度を維持することが困難になった場合、腐食した部材を切除して新たな部材を溶接して補強することが必要となり、多大なコストがかかる。
また、原油油槽内面の鋼板表面には、大量の固体の硫黄分(以下、固体Sという。)が生成・析出する。この固体Sは、腐食したデッキ裏の表面の鉄さびが触媒になり、気相中のSO2とH2Sが反応して生成されると考えられており、鋼板の腐食による新しい鉄さびの生成と、固体Sの析出とが交互に生じるため、鉄さびと固体Sとの層状腐食生成物が析出する。層状腐食生成物は、固体Sからなる層は脆く、固体Sと鉄さびとからなる生成物は容易に剥離、脱落し、油槽底にスラッジ(腐食生成物)として堆積する。
このような背景から、原油油槽用の鋼板には、優れた耐食性を有し、かつ、固体Sを含むスラッジの生成が少ない耐食鋼板及び溶接継手が使用されており、例えば、特許文献1に示すような原油油槽鋼が提案されている。
ところで、これら原油油槽は一般的な溶接構造物であるので、全面的に塗装やライニングを施さない限り、溶接部も不可避的に原油環境に晒される。通常行われるアーク溶接では、溶接材料を溶解させて溶接金属を形成させるので、溶接金属の組成や組織は、鋼材とは異なることが一般的である。原油環境等の腐食環境中においては、化学組成や組織の大きく異なる金属が隣接している場合、相対的に電気化学的に卑な一方の金属が選択的に腐食され、異種金属腐食が生じやすい。このような選択腐食が生じると、局部的に大きな腐食が生じるようになる。そのため、耐食性に優れた原油油槽鋼の溶接では、溶接方法や溶接材料によって溶接金属の方が卑となり、溶接金属が選択的に腐食され、溶接継手全体として耐食性が損なわれる可能性が生じる。従って、原油環境に晒される原油油槽等の溶接構造物の耐食性を良好にするには、使用鋼板のみならず、溶接部の特性にも配慮する必要がある。
上記の問題に対して、耐候性に優れたガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤが、特許文献2及び特許文献3に提案されている。しかし、特許文献2及び特許文献3に提案されているガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤは、海浜地区、あるいは融雪剤を撒布する地域等、飛来海塩粒子が高濃度で使用される耐候性鋼を溶接するためのCu−Ni系のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤであり、原油を輸送又は貯蔵する鋼製油槽等、原油環境に晒される溶接構造物の高温割れ性や耐食性を良好とすることはできない。
原油環境の耐食性に優れたガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤは、特許文献4、特許文献5に提案されており、これらフラックス入りワイヤを用いて原油油槽鋼を溶接すれば、溶接部の耐食性の劣化を防止することは可能である。
一方、近年では、溶接の高能率化の目的から、溶接速度1.0m/min以上でも溶接可能な2電極1プール方式の水平すみ肉溶接法が採用されているが、船舶の構造強化のためにすみ肉脚長基準が改正され、上述の2電極1プール方式の水平すみ肉溶接法で施工されるロンジ溶接においても、溶接部の上側及び下脚側において4〜7mmの脚長を得ることが要望されている。1.0m/min以上の2電極高速すみ肉溶接で4〜7mmの脚長を得るためには、溶着量の増加が必須であり、溶接速度を下げれば脚長の確保も可能であるものの、現場では溶接速度を下げると溶接効率が下がるため、高速・高電流で溶接可能な溶接用フラックス入りワイヤが要望されている。
このような高速・高電流溶接条件(溶接速度1.0m/min、両極の溶接電流400A以上)での2電極1プール方式の高速すみ肉溶接で4〜7mmの溶接部の脚長を得ようとした場合、2電極間に形成される湯溜りを安定させることが重要である。また、両極同時に溶接するため、特に高電流域での溶接ではスラグが不足しやすく、スラグ被包性が不良となり、ビード形状やスラグ剥離性が不良になると共に、4〜7mmの溶接部の脚長も得られず、ピットも発生しやすくなる。
先に提案した原油油槽鋼の溶接に対応した特許文献4に記載のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤは、全姿勢溶接用フラックス入りワイヤであるので、2電極水平すみ肉溶接法が用いた場合、十分なビード形状及びスラグ剥離性が得られず、溶接部の4〜7mmの脚長も得られない。
また、特許文献5に記載のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤを使用して、高速・高電流溶接条件(溶接速度1.0m/min以上、両極の溶接電流400A以上)で2電極1プール方式で高速すみ肉溶接を施工した場合、2極間の湯溜りは不安定となり、スラグ量も不足するので、スラグが均一に被包することができず、ビード形状及びスラグ剥離性が不良となるという問題があった。
特開2010−43342号公報 特開2000−102893号公報 特開2000−288781号公報 特開2013−226577号公報 特開2013−226578号公報
そこで本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、原油タンカーの油槽や地上又は地下原油タンク等の原油を輸送又は貯蔵する原油油槽鋼用の2電極水平すみ肉溶接用フラックス入りワイヤに関し、原油腐食環境下で溶接部が原油油槽鋼とほぼ同等の優れた耐食性を示すと共に、ピットが発生せず、スラグ被包性、スラグ剥離性及びビード形状が良好で、高温割れが発生せず、4〜7mmの脚長が得られ、溶接作業性の良好な原油油槽鋼の2電極水平すみ肉ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤを提供することを目的とする。
本発明の要旨は、(1)鋼製外皮にフラックスを充填してなる原油油槽鋼の、先行電極及び後行電極に用いられる2電極水平すみ肉ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤにおいて、鋼製外皮中のCが鋼製外皮全質量に対する質量%で0.02%以下含有し、ワイヤの全質量に対する質量%で、鋼製外皮とフラックスの合計で、C:0.03〜0.10%、Si:0.40〜0.85%、Mn:1.5〜3.8%、Mo:0.03〜0.40%及びW:0.01〜0.40%の1種又は2種、Cu:0.03〜1.00%、Al:0.05〜0.50%を含有し、ワイヤの全質量に対する質量%で、フラックス中に、Mg:0.05〜0.50%、Ti酸化物のTiO2換算値:2.5〜4.5%、Si酸化物のSiO2換算値:0.8〜1.8%、Zr酸化物のZrO2換算値:0.6〜1.5%、Fe酸化物のFeO換算値:0.05〜1.0%、Al酸化物のAl23換算値:0.05〜0.50%、Na化合物及びK化合物のNa2O換算値とK2O換算値の合計:0.05〜0.20%、弗素化合物のF換算値:0.02〜0.20%を含有し、残部は鋼製外皮のFe分、合金鉄中のFe分、鉄粉及び不可避不純物であることを特徴とする原油油槽鋼の2電極水平すみ肉ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤである。
(2)ワイヤ全質量に対する質量%で、フラックス中に、金属BiとBi酸化物のBi換算値の合計:0.005〜0.035%を更に含有することを特徴とする(1)に記載の原油油槽鋼の2電極水平すみ肉ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤである。
(3)ワイヤ全質量に対する質量%で、鋼製外皮とフラックスの合計で、Ti:0.03〜0.30%及びB:0.002〜0.010%の1種又は2種を更に含有することを特徴とする(1)又は(2)に記載の原油油槽鋼の2電極水平すみ肉ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤである。
(4)ワイヤ全質量に対する質量%で、鋼製外皮とフラックスの合計で、Ni:0.05〜2.5%を更に含有することを特徴とする(1)乃至(3)のうち何れかに記載の原油油槽鋼の2電極水平すみ肉ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤである。
(5)ワイヤ全質量に対する質量%で、鋼製外皮とフラックスの合計で、Sn:0.01〜0.30%及びSb:0.01〜0.30%の1種又は2種を更に含有することを特徴とする(1)乃至(4)のうち何れかに記載の原油油槽鋼の2電極水平すみ肉ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤである。
上述した構成からなる本発明の原油油槽用鋼の2電極水平すみ肉ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤによれば、溶接構造によって形成される原油タンカーの油槽や、地上又は地下原油タンク等、原油を輸送又は貯蔵する鋼製油槽の原油腐食環境下及び該環境と腐食環境が類似の環境で使用される場合においても、優れた耐食性及び機械的性能を備えた溶接部が得られ、さらに、優れた耐ピット性が得られると共に、4〜7mmの脚長が得られ、スパッタ発生量が少なく、スラグ被包性、スラグ剥離性及びビード形状が良好で、高温割れ性にも優れるなど溶接作業性が良好で溶接の高能率化及び溶接部の品質向上を図ることができる。
2電極1プール方式の2電極水平すみ肉ガスシールドアーク溶接の状況を示す模式図である。 2電極水平すみ肉ガスシールドアーク溶接において発生するビード形状の欠陥例を示した模式図である。
本発明者らは、前記課題を解決するために種々のフラックス入りワイヤを試作し、2電極水平すみ肉溶接で詳細に検討した。
図1に2電極1プール方式の2電極水平すみ肉ガスシールドアーク溶接の状況を示す。2電極1プール方式の2電極水平すみ肉ガスシールドアーク溶接では、先行電極ワイヤ1について鉛直方向に対し斜め方向に角度θ1を持たせ、後行電極ワイヤ2について鉛直方向に対し斜め方向に角度θ2を持たせて図中矢印方向に示す溶接方向に向けて溶接する。先行電極ワイヤ1及び後行電極ワイヤ2間に安定した湯溜り3を形成させることにより、良好なビード形状が得ることができる。また、溶接速度1.0m/min以上で溶接の施工をするには400A以上の高電流で溶接する必要があるが、高電流になるとアーク吹き付けが強くなって湯溜り3が不安定になり、ビード形状が悪くなる。さらに、後行電極ワイヤ2後方の溶融プール4の溶融スラグ5の被包状態が不均一であると、図2に示すように、アンダーカット6やオーバーラップ7等の欠陥が発生し、スラグ剥離性も悪くなる。また、溶接する立板8及び下板9を構成する鋼板表面の水分、錆やプライマ塗装10に起因した気孔11が発生しやすくなる。なお、図1中の凝固スラグ12は、溶接ビード13上に形成される。
先ず、原油腐食環境での耐食性について、化学成分の影響を調査した結果、フラックス入りワイヤの組成成分として、Crを実質的に無添加とし、特定量のMo、W、Cu、Ni、さらにはSn、Sbとを複合添加することにより、当該環境での耐食性を向上させることが可能であることを見出した。
さらに、ビード形状は、Ti酸化物、Si酸化物、Zr酸化物、Al、Fe酸化物、Al酸化物及び弗素化合物の各含有量の調整で、スラグ剥離性は、Si酸化物、Zr酸化物、Al、Fe酸化物及びK化合物とNa化合物の各含有量の調整で、アーク安定性、スパッタ発生量及び耐ピット性は、Ti酸化物、Si酸化物、Mgの各含有量の調整で、機械的性能はC、Si、Mn、Ti及びBの各含有量の調整で、それぞれ良好となることを知見した。
また、2電極水平すみ肉溶接でアーク状態を安定化して4〜7mmの脚長を得るためには、鋼製外皮中のC、Ti酸化物、Si酸化物、Zr酸化物の各含有量をさらに調整することで、アーク状態を安定にして2電極間の溶融プールを安定させると共に、溶接ビードを均一に被包するのに十分なスラグが形成されるので、溶接時に溶融スラグが溶融メタルを保持しつつ、ビード全体をスラグが均一に被包するので、4〜7mmの脚長を得ることが可能であることを見出した。
また、2電極水平すみ肉溶接で優れた耐高温割れ性を得るためには、B及びNiを適量添加することが有効であることを知見した。
また、2電極水平すみ肉溶接で4〜7mmの脚長を得るために調整されたスラグに関し、良好なスラグ剥離性を得るには、Biを適量添加することが有効であることを知見した。
以下に本発明に係る、原油油槽鋼の2電極水平すみ肉ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤの成分組成及び含有量の限定理由について説明する。
[鋼製外皮中のC:鋼製外皮全質量に対する質量%で0.02質量%以下]
鋼製外皮中のCは、ガスシールドアーク溶接においてアークを安定にする効果があり、鋼製外皮全質量に対して0.02質量%以下にすることで、2電極1プール方式で高速・高電流の溶接条件で施工した場合、アーク状態を安定にして2電極間に安定した湯溜りを形成し、スパッタ発生量を低減する。従って、鋼製外皮中のCは、鋼製外皮全質量に対する質量%で0.02質量%以下とする。
以下、各成分の含有量は、フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%で表すこととし、その質量%を示すときには単に%と記載して示すこととする。
[鋼製外皮とフラックスの合計でC:0.03〜0.10%]
Cは、鋼製外皮とFe−Si、Fe−Mn及びFe−Si−Mn等の鉄合金が微量含有するCから添加され、溶接構造物に要求される溶接金属の強度及び靭性を得るために添加する。Cが0.03%未満では、溶接金属の強度及び靭性が低下する。一方、Cが0.10%を超えると、溶接金属の強度が過剰に高くなり靭性が低下する。従って、鋼製外皮とフラックスの合計でCの含有量は0.03〜0.10%とする。
[鋼製外皮とフラックスの合計でSi:0.40〜0.85%]
Siは、鋼製外皮、金属Si、Fe-Si及びFe-Si-Mn等から添加され、脱酸剤として作用し、溶接金属の強度及び靭性を確保すると共に、ピットを低減し、ビード形状及びスラグ剥離性を良好にする目的から添加する。Siが0.40%未満では、脱酸不足となって溶接金属の強度及び靭性が低下する。また、ピットが発生しやすくなり、ビード形状及びスラグ剥離性が不良になる。一方、Siが0.85%を超えると、溶接金属の強度が過剰に高くなり靭性が低下する。従って、鋼製外皮とフラックスの合計でSiの含有量は0.40〜0.85%とする。
[鋼製外皮とフラックスの合計でMn:1.5〜3.8%]
Mnは、鋼製外皮、金属Mn、Fe−Mn及びFe−Si−Mn等から添加され、脱酸剤として作用して溶接金属の強度及び靭性を確保すると共に、ピットの発生を抑えるために添加する。Mnが1.5%未満では、溶接金属の強度及び靭性も低下する。また、ピットが発生しやすくなる。一方、Mnが3.8%を超えると、溶接金属の強度が過剰に高くなり靭性が低下する。従って、鋼製外皮とフラックスの合計でMnの含有量は1.5〜3.8%とする。
[鋼製外皮とフラックスの合計でMo:0.03〜0.40%及びW:0.01〜0.40%の1種又は2種]
Moは、鋼製外皮、金属Mo、Fe−Mo等から、Wは金属WやWCから添加され、溶接金属の耐食性の向上及び固体Sの析出を抑制させる作用を有し、0.03%以上のCuと共に含有させる。Moが0.03%未満及びWが0.01%未満の1種又は2種では、耐食性の向上及び固体S析出の抑制の効果が得られない。一方、Moが0.40%超及びWが0.40%超の1種又は2種では、耐食性向上及び固体S析出の抑制効果は飽和し、溶接金属の靭性が低下する。従って、鋼製外皮とフラックスの合計でMo及びWの含有量は、Moが0.03〜0.40%及びWが0.01〜0.40%の1種又は2種とする。
[鋼製外皮とフラックスの合計でCu:0.03〜1.00%]
Cuは、金属Cu及びワイヤ表面のCuめっき等から添加され、耐食性の向上及び固体Sの析出を抑制させる作用を有し、0.03%以上のMoと共に含有させる。Cuが0.03%未満では、耐食性の向上及び固体S析出の抑制の効果がない。一方、Cuが1.00%を超えると、耐食性向上及び固体S析出の抑制効果は飽和し、溶接金属の靭性が低下する。従って、鋼製外皮とフラックスの合計でCuの含有量は0.03〜1.00%とする。なお、好ましくは、Cuの含有量は0.03〜0.70%とする。
[鋼製外皮とフラックスの合計でAl:0.05〜0.50%]
Alは、鋼製外皮、金属Al、Fe−Al及びAl−Mg合金等より添加され、脱酸剤として作用して溶接金属の酸素量を低減して溶接金属の靭性を確保すると共に、溶融中にAl酸化物となってスラグの粘性を高め、2電極1プール方式で高速・高電流の溶接条件で施工した場合に溶融プールの後退を抑制してスラグ被包性を改善する作用を有する。Alが0.05%未満では、溶接金属の靭性が低下する。また、2電極1プール方式で高速・高電流の溶接条件で施工した場合、溶融プールが後退してスラグ被包性が悪くなってビードが凸状になり、上脚部にアンダーカットが発生する。一方、Alが0.50%を超えると、溶接金属の強度が過剰に高くなり靭性が低下する。また、ビード形状に滑らかさがなくなって止端部が膨らみ、ビード形状が不良になる。また、溶融スラグ中に凝固むらが生じてスラグ剥離性が不良となる。従って、鋼製外皮とフラックスの合計でAlの含有量は0.05〜0.50%とする。
[フラックス中に含有するMg:0.05〜0.50%]
Mgは、金属Mg、Al−Mg合金等から添加され、強脱酸剤として作用して溶接金属の酸素量を低減して溶接金属の靭性を確保すると共にピットを防止する。Mgが0.05%未満であると、脱酸剤としての効果が得られず、溶接金属の靭性が低下する。また、ピットが発生しやすくなる。一方、Mgが0.50%を超えると、スラグ被包性が悪くなり、ビード形状が不良になる。また、アークが荒くなってスパッタ発生量が多くなる。従って、フラックス中に含有するMgの含有量は0.05〜0.50%とする。
[フラックス中に含有するTi酸化物のTiO2換算値:2.5〜4.5%]
TiO2は、ルチール、酸化チタン、チタン酸ソーダ、チタンスラグ、イルミナイト等から添加される。これらは、ビード全体を均一にスラグ被包させる作用を有する。また、アークの持続を安定させ、スパッタ発生量を低減させる効果がある。Ti酸化物のTiO2換算値が2.5%未満であると、スラグ生成量が不足し、スラグ被包性が不良になり、スラグがビード表面に焼き付いてスラグ剥離性及びビード形状が不良になる。また、アークが不安定になってスパッタ発生量が増加する。一方、Ti酸化物のTiO2換算値が4.5%を超えると、スラグ量が過剰に多くなって溶接ビードの止端部が膨らんだ形状となり、ビード形状が不良となる。また、ピットが発生しやすくなる。従って、フラックス中に含有するTi酸化物のTiO2換算値は2.5〜4.5%とする。
[フラックス中に含有するSi酸化物のSiO2換算値:0.8〜1.8%]
SiO2は、珪砂、ジルコンサンド、カリ長石、珪酸ソーダ、珪酸カリ等から添加され、溶融スラグの粘性を高め、2電極1プール方式で高速・高電流の溶接条件で施工した場合、2電極間に安定した湯溜りを形成し、スラグ被包性及びビード形状を改善する。Si酸化物のSiO2換算値が0.8%未満では、溶融スラグの粘性が不足して2電極間の湯溜りが不安定になり、スラグ被包性、スラグ剥離性及びビード形状が不良になる。一方、Si酸化物のSiO2換算値が1.8%を超えると、スラグが硬くなって除去しにくくなってスラグ剥離性が不良となり、ピットやガス溝が発生しやすくなる。また、スパッタ発生量が多くなる。従って、フラックス中に含有するSi酸化物のSiO2換算値は0.8〜1.8%とする。
[フラックス中に含有するZr酸化物のZrO2換算値:0.6〜1.5%]
ZrO2は、ジルコンサンド及び酸化ジルコニウム等から添加され、2電極1プール方式で高速・高電流の溶接条件で施工した場合、溶融プールの極端な後退を抑えてスラグ被包性を良好にしてビード形状を平滑にする。Zr酸化物のZrO2換算値が0.6%未満では、溶接ビードの止端部のなじみが悪く、ビード形状が平滑にならずに凸状のビード形状となり、スラグ剥離性も不良となる。一方、Zr酸化物のZrO2換算値が1.5%を超えると、スラグが硬くなってスラグ剥離性が不良になる。また、ビード形状が凸状になる。従って、フラックス中に含有するZr酸化物のZrO2換算値は0.6〜1.5%とする。
[フラックス中に含有するFe酸化物のFeO換算値:0.05〜1.0%]
FeO、Fe23等のFe酸化物は、溶融スラグの粘性及び凝固温度を調整し、溶接ビードの止端部の膨らみをなくし、下板側とのなじみ性を良好にする。Fe酸化物のFeO換算値が0.05%未満であると、溶接ビードの止端部の形状が悪くなり、ビード形状が不良になる。一方、Fe酸化物のFeO換算値が1.0%を超えると、2電極1プール方式で高速・高電流の溶接条件で施工した場合、2極間の湯溜りが不安定になり、スラグ被包状態が悪くなってスラグ剥離性が不良となり、溶接ビードの止端部が膨らんでビード形状が不良となる。従って、フラックス中に含有するFe酸化物のFeO換算値は0.05〜1.0%とする。
[フラックス中に含有するAl酸化物のAl23換算値:0.05〜0.50%]
アルミナ、カリ長石、曹長石等のAl酸化物は、溶融スラグ成分としてスラグ被包性を良好にして溶接部の上脚側のアンダーカットを防止する。Al酸化物のAl23換算値が0.05%未満では、スラグ被包性が悪くなって溶接部の上脚側にアンダーカットが生じやすくなる。一方、Al酸化物のAl23換算値が0.50%を超えると、下脚側のビード止端部が膨らみ、ビード形状が不良になる。従って、フラックス中に含有するAl酸化物のAl23換算値は0.05〜0.50%とする。
[フラックス中に含有するNa化合物及びK化合物のNa2O換算値とK2O換算値の合計:0.05〜0.20%]
Na化合物及びK化合物は、珪酸ソーダや珪酸カリからなる水ガラスの固質成分、弗化ソーダや珪弗化カリ等の弗素化合物より添加され、アーク安定剤としての作用だけではなく、スラグ形成剤として溶融スラグの凝固過程の急激な粘性増加を抑えて耐ピット性を高め、ビード形状を平滑にする。Na化合物及びK化合物のNa2O換算値とK2O換算値の合計が0.05%未満では、大粒のスパッタが多発し、ピットやガス溝等も発生しやすくなる。また、溶接ビードはごつごつした表面となってビード形状が不良になる。一方、Na化合物及びK化合物のNa2O換算値とK2O換算値の合計が0.20%を超えると、スラグ剥離性及びビード形状が不良となり、スパッタ発生量も多くなる。従って、フラックス中に含有するNa化合物及びK化合物のNa2O換算値とK2O換算値の合計は0.05〜0.20%とする。
[フラックス中に含有する弗素化合物のF換算値:0.02〜0.20%]
Fは、弗化ソーダ、珪弗化カリ及び蛍石等の弗素化合物より添加され、アークの指向性を高めてアークを安定すると共に、耐ピット性を改善する。また、スラグの粘性を調整してビードを平滑にしてビード形状を良好にする。弗素化合物のF換算値が0.02%未満では、アークが不安定になり、下板側下脚部のなじみ性が悪くなってビード形状が不良になる。また、ピットが発生しやすくなる。一方、弗素化合物のF換算値が0.20%を超えると、スラグの粘性が過剰に低下し、2電極1プール方式で高速・高電流の溶接条件で施工した場合、2電極間に安定した湯溜りが形成されず、ビード形状が不良になる。従って、フラックス中に含有する弗素化合物のF換算値は0.02〜0.20%とする。
[フラックス中に含有する金属BiとBi酸化物のBi換算値の合計:0.005〜0.035%]
Biは、金属Biや酸化Bi等より添加され、スラグ剥離性を向上する効果を有する。金属BiとBi酸化物のBi換算値の合計が0.005%未満では、その効果が得られず、スラグ剥離性が不良になる。一方、金属BiとBi酸化物のBi換算値の合計が0.035%を超えると、溶接金属の靭性が低下する。従って、フラックス中に含有する金属BiとBi酸化物のBi換算値の一方又は両方の合計は0.005〜0.035%とする。
[鋼製外皮とフラックスの合計でTi:0.03〜0.30%及びB:0.002〜0.010%の1種又は2種]
Tiは金属TiやFe−Tiから、BはFe−BやFe−Mn−B等から添加され、溶接金属の靭性を確保するために添加する。Tiが0.03%未満及びBが0.002%未満の1種又は2種では、溶接金属の靭性の向上効果は得られず、必要な溶接金属の靭性が得られない。一方、Tiが0.30%を超えると、スラグがビード表面に焼き付いてスラグ剥離性及びビード形状が不良になり、スパッタ発生量も多くなる。さらに、溶接金属の靭性も低下する。また、Bが0.010%を超えると、高温割れが生じやすくなる。従って、鋼製外皮とフラックスの合計でTiは0.03〜0.30%及びBは0.002〜0.010%の1種又は2種とする。
[鋼製外皮とフラックスの合計でNi:0.05〜2.5%]
Niは、金属NiやFe−Ni等から添加され、前記MoとCuとの共存において溶接金属の耐食性の向上及び固体Sの析出を抑制させる作用を有する。Niが0.05%未満であると、耐食性の向上及び固体S析出の抑制の効果が得られない。一方、Niが2.5%を超えると、高温割れが生じやすくなる。従って、鋼製外皮とフラックスの合計でNiの含有量は0.05〜2.5%とする。
[鋼製外皮とフラックスの合計でSn:0.01〜0.30%及びSb:0.01〜0.30%の1種又は2種]
Snは金属Snから、Sbは金属Sb、Fe−Sb、アンチモン化マンガン及びFe−Si−Sbより添加され、前記Mo及びWの1種又は2種とCuとの共存において溶接金属の耐食性の向上及び固体Sの析出を抑制する作用を有する。Snが0.01%未満及びSbが0.01%未満の1種又は2種では、溶接金属の耐食性の向上及び固体Sの析出を抑制する作用が得られない。一方、Snが0.30%超及びSbが0.30%超の1種又は2種では、高温割れが発生しやすくなる。従って、鋼製外皮とフラックスの合計でSnは0.01〜0.30%及びSbは0.01〜0.30%の1種又は2種とする。なお、Snの上限を0.10%、Sbの上限を0.10%とすることが好ましい。
以上、本発明を適用した原油油槽鋼の2電極水平すみ肉ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤの構成要件の限定理由を述べたが、その他のワイヤ成分は、鋼製外皮のFe分、Fe−Mn、Fe−Si、Fe−Si−Mn合金等の鉄合金中のFe分、鉄粉及び不可避不純物である。
また、本発明の原油油槽鋼の2電極水平すみ肉ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤは、フラックス充填後の伸線加工性が良好な軟鋼及び低合金鋼の外皮内に、前記限定した成分のフラックスをワイヤ全質量に対して10〜20%程度充填後、孔ダイス伸線やローラダイスにより所定のワイヤ径(1.2〜2.0mm)に縮径して製造する。なお、鋼製外皮に貫通した隙間がないシームレス又は隙間があるシームタイプのいずれのワイヤも適用できる。
以下、実施例により本発明の効果をさらに詳細に説明する。
表1に示すJIS G3141で規定されるSPCCを鋼製外皮に使用してフラックスを充填後、縮径して(外皮の軟化及び脱水素のため中間焼鈍を1回実施)、フラックス充填率10〜20%、ワイヤ径1.6mmのシームレスタイプのフラックス入りワイヤを各種試作した。フラックス入りワイヤ中の各成分を表2に示す。
Figure 0006463234
Figure 0006463234
表2に示す試作ワイヤを各々両極に使用し、T字すみ肉試験体を用い、2電極1プール方式の水平すみ肉溶接試験を行った。また、JIS Z3111に準拠して溶着金属試験を行った。表3にそれら溶接条件を示す。
Figure 0006463234
2電極水平すみ肉溶接試験のT字すみ肉試験体には、鋼種SM490B、板厚12mm、試験体長さ600mmで、ピットの発生を助長するために鋼板表面に無機ジンクプライマを膜厚が20〜25μmになるように塗装した鋼板を使用し、T字に組んだT字すみ肉試験体で表3に示す溶接条件で溶接施工を行い、2電極間の湯溜りの安定性、アーク安定性、スパッタ発生量、溶接ビードの脚長、ビード形状、スラグ被包性、スラグ剥離性、ピット発生数を調査した。各調査の評価は、2電極間の湯溜り、アーク安定性及びスパッタ発生量は目視による良否、溶接ビードの脚長は上板側及び下板側の実測値が6〜7mmを良好とし、ビード形状、スラグ被包性及びスラグ剥離性は目視による良否、ピット発生量は1個/m以下を良好とした。
また、溶着金属の原油環境における耐腐食性、強度及び靭性の評価は、JIS Z 3111に準じ、表3に示した溶接条件で溶着金属試験を行い、X線透過試験を行った後、耐食性試験、引張試験及び衝撃試験を実施した。母材の成分はC:0.10%、Si:0.20%、Mn:1.10%、P:0.010%、S:0.004%、Cu:0.20%、Mo:0.15%等を含有した鋼板を用いた。溶着金属試験の強度は、引張強さが520〜630MPa、衝撃試験は、0℃での吸収エネルギーが50J以上のものを良好とした。
耐食性の評価は、原油油槽環境を模擬した環境での腐食試験を行った。溶着金属試験の鋼材表面1mmの位置から溶接線方向に、長さ80mm、幅30mm、厚さ4mmの試験片を、表面が全て溶接部になるように採取した。次いで、試験片全面を機械研削し、600番の湿式研磨処理の後、80mm×30mmの表面の一面のみを残して端面、裏面を塗料で被覆した。そして、この試験片を、pHが0.2で、20mass%NaClを溶解した1体積%HCl水溶液からなる腐食液中に浸漬した。この際の浸漬条件としては、液温30℃、浸漬時間720時間で実施し、最大腐食深さを測定し、腐食速度に換算(mm/年)して評価し、試験片の最大腐食速度が0.25mm/年以下となるものを良好とした。なお、上述した腐食液の組成は、実際の鋼構造物で局部腐食が発生する際の環境の条件を模擬したものであり、この腐食試験での腐食速度の低減に応じて、実環境で局部腐食の進展速度が低減される。
それらの結果を表4にまとめて示す。
Figure 0006463234
表2及び表4中ワイヤNo.1〜18は本発明例、ワイヤNo.19〜40は比較例である。本発明例であるワイヤNo.1〜18は、鋼製外皮のC、フラックス入りワイヤ中のC、Si、Mn、Mo及びWの1種又は2種、Cu、Al、Mg、TiO2換算値、SiO2換算値、ZrO2換算値、FeO換算値、Al23換算値、Na2O換算値とK2O換算値の合計及びF換算値が本発明において規定した成分含有率の範囲内であるので、2電極1プール方式で高速・高電流の溶接条件での施工において、アークが安定してスパッタ発生量が少なく、2電極間に安定した湯溜りが形成され、スラグ被包性、スラグ剥離性及びビード形状が良好で、溶接ビードの脚長が6〜7mm確保され、ピット及び高温割れも発生せず、溶着金属の最大腐食速度も小さく耐食性も良好で、溶着金属の引張強さ及び吸収エネルギーも良好であった。なお、Biを適量含むワイヤNo.1、3、5、6、8、9、12、13及びワイヤNo.14はスラグ剥離性が非常に良好であり、Ti及びBの1種又は2種を適量含むワイヤNo.1、3、6、7、8、10、12、15及びワイヤNo.16は溶着金属の吸収エネルギーが70J以上と特に良好であった。さらに、Niを適量含むワイヤNo.1、3、6、9、10、11、12、13、15、及びワイヤNo.17とSn及びSbの1種又は2種を適量含むワイヤNo.12、13、14、15、16、17及びNo.18は、最大腐食速度が0.2mm/年未満であった。
比較例中ワイヤNo.19は、鋼製外皮記号S3のCが多いので、2電極間に安定した湯溜りが形成されず、アークが不安定でスパッタ発生量が多かった。また、フラックス入りワイヤ中のCが多いので、溶着金属の引張強さが高く、吸収エネルギーが低かった。さらに、FeO換算値が少ないので、ビード形状が不良であった。なお、Biが適量添加されているので、スラグ剥離性は極めて良好であった。また、Sn及びSbが適量添加されているので、溶着金属の最大腐食速度は非常に小さかった。
ワイヤNo.20は、フラックス入りワイヤ中のCが少ないので、溶着金属の引張強さ及び吸収エネルギーが低かった。また、TiO2換算値が少ないので、アークが不安定でスパッタ発生量が多く、スラグ被包性、スラグ剥離性及びビード形状が不良であった。
ワイヤNo.21は、Siが多いので、溶着金属の引張強さが高く、吸収エネルギーが低かった。また、TiO2換算値が多いので、ピットが発生し、ビード形状も不良であった。なお、Biが適量添加されているので、スラグ剥離性は極めて良好であった。
ワイヤNo.22は、Siが少ないので、溶着金属の引張強さ及び吸収エネルギーが低かった。また、スラグ剥離性及びビード形状が不良で、ピットも発生した。さらに、Cuが少ないので、溶着金属の最大腐食速度が大きかった。なお、スラグ剥離性の改善効果があるBiが添加されているが、含有量が少ないのでその効果が得られなかった。また、溶着金属の耐食性の改善効果のあるSnが添加されているが、含有量が少ないのでその効果が得られなかった。
ワイヤNo.23は、Mnが多いので、溶着金属の引張強さが高く、吸収エネルギーが低かった。また、SiO2換算値が多いので、スパッタ発生量が多く、スラグ剥離性が不良であった。さらに、ピットが発生した。また、Al23換算値が多いので、ビード形状が不良であった。なお、Niが適量添加されているので、溶着金属の最大腐食速度は非常に小さかった。また、溶着金属の靭性改善の効果があるTiが添加されているが、含有量が少ないのでその効果が得られなかった。
ワイヤNo.24は、Mnが少ないので、溶着金属の引張強さ及び吸収エネルギーが低かった。また、ピットが発生した。さらに、SiO2換算値が少ないので、2電極間に安定した湯溜りが形成されず、スラグ被包性、スラグ剥離性及びビード形状が不良であった。なお、Niが適量添加されているので、溶着金属の最大腐食速度は非常に小さかった。
ワイヤNo.25は、Moが多いので、溶着金属の吸収エネルギーが低かった。また、ZrO2換算値が多いので、スラグ剥離性及びビード形状が不良であった。なお、Ni及びSbが適量添加されているので、溶着金属の最大腐食速度は非常に小さかった。
ワイヤNo.26は、Cuが多いので、溶着金属の吸収エネルギーが低かった。また、ZrO2換算値が少ないので、スラグ剥離性及びビード形状が不良であった。なお、溶着金属の靭性改善の効果があるBが添加されているが、含有量が少ないのでその効果が得られなかった。
ワイヤNo.27は、Moが少ないので、溶着金属の最大腐食速度が大きかった。また、Alが多いので、ビード形状が不良で、溶着金属の引張強さが高く、吸収エネルギーが低かった。なお、Biが適量添加されているので、スラグ剥離性は極めて良好であった。また、溶着金属の耐食性の改善効果があるNiが添加されているが、含有量が少ないのでその効果が得られなかった。
ワイヤNo.28は、Alが少ないので、スラグ被包性及びビード形状が不良で、ビード上脚部にはアンダーカットが発生して必要な脚長が得られなかった。また、溶着金属の吸収エネルギーが低かった。なお、Ni及びSbが適量添加されているので、溶着金属の最大腐食速度は非常に小さかったが、Snが多いので、クレータ割れが発生した。
ワイヤNo.29は、Mgが多いので、アークが不安定でスパッタ発生量が多く、スラグ被包性及びビード形状が不良であった。また、Bが多いので、クレータ割れが発生した。なお、Biが適量添加されているので、スラグ剥離性は極めて良好であった。また、Niが適量添加されているので、溶着金属の最大腐食速度は非常に小さかった。
ワイヤNo.30は、Mgが少ないので、ピットが発生し、溶着金属の吸収エネルギーが低かった。また、FeO換算値が多いので、2電極間に安定した湯溜りが形成されず、スラグ被包性、スラグ剥離性及びビード形状が不良であった。Sn及びSbが適量添加されているので、溶着金属の最大腐食速度は非常に小さかった。
ワイヤNo.31は、Al23換算値が少ないので、スラグ被包性及びビード形状が不良で、ビード上脚部にはアンダーカットが発生して必要な脚長が得られなかった。また、Bi換算値が多いので、スラグ剥離性は非常に良好であったが、溶着金属の吸収エネルギーが低かった。なお、Niが適量添加されているので、溶着金属の最大腐食速度は非常に小さかった。
ワイヤNo.32は、Wが少ないので、溶着金属の最大腐食速度が大きかった。また、Na2O換算値及びK2O換算値の合計が多いので、スラグ剥離性及びビード形状が不良であった。
ワイヤNo.33は、Na2O換算値及びK2O換算値の合計が少ないので、スパッタ発生量が多く、ビード形状が不良で、ピットが発生した。なお、Biが適量添加されているので、スラグ剥離性は極めて良好であった。また、Niが適量添加されているので、溶着金属の最大腐食速度は非常に小さかった。
ワイヤNo.34は、F換算値が多いので、2電極間の湯溜りが安定して形成されず、ビード形状が不良であった。また、Tiが多いので、スパッタ発生量が多く、スラグ剥離性が不良で、溶着金属の吸収エネルギーが低かった。なお、Ni及びSnが適量添加されているので、溶着金属の最大腐食速度は非常に小さかったが、Sbが多いので、クレータ割れが発生した。
ワイヤNo.35は、F換算値が少ないので、アークが不安定でビード形状が不良で、ピットが発生した。また、Niが多いので、溶着金属の最大腐食速度は非常に小さかったが、クレータ割れが発生した。なお、Biが適量添加されているので、スラグ剥離性が極めて良好であった。
ワイヤNo.36は、Al23換算値が多いので、ビード形状が不良であった。なお、Biが適量添加されているので、スラグ剥離性が極めて良好であった。また、Ni、Sn、Sbが適量添加されているので、溶着金属の最大腐食速度は非常に小さかった。
ワイヤNo.37は、Wが多いので、溶着金属の吸収エネルギーが低かった。なお、Biが適量添加されているので、スラグ剥離性が極めて良好であった。また、Ni、Sn、Sbが適量添加されているので、溶着金属の最大腐食速度は非常に小さかった。
ワイヤNo.38は、FeO換算値が少ないので、ビード形状が不良であった。なお、Sn、Sbが適量添加されているので、溶着金属の最大腐食速度は非常に小さかった。
ワイヤNo.39は、TiO2換算値が少ないので、アークが不安定でスパッタ発生量が多く、スラグ被包性、スラグ剥離性及びビード形状が不良であった。なお、Niが適量添加されているので、溶着金属の最大腐食速度は非常に小さかった。
ワイヤNo.40は、SiO2換算値が低いので、2電極間に安定した湯溜りが形成されず、スラグ被包性、スラグ剥離性及びビード形状が不良であった。なお、Ni及びSnが適量添加されているので、溶着金属の最大腐食速度は非常に小さかった。
1 先行電極ワイヤ
2 後行電極ワイヤ
3 湯溜り
4 溶融プール
5 溶融スラグ
6 アンダーカット
7 オーバーラップ
8 立板
9 下板
10 プライマ塗装
11 気孔
12 凝固スラグ
13 溶接ビード

Claims (5)

  1. 鋼製外皮にフラックスを充填してなる原油油槽鋼の、先行電極及び後行電極に用いられる2電極水平すみ肉ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤにおいて、
    鋼製外皮中のCが鋼製外皮全質量に対する質量%で0.02%以下含有し、
    ワイヤの全質量に対する質量%で、鋼製外皮とフラックスの合計で、
    C:0.03〜0.10%、
    Si:0.40〜0.85%、
    Mn:1.5〜3.8%、
    Mo:0.03〜0.40%及びW:0.01〜0.40%の1種又は2種、
    Cu:0.03〜1.00%、
    Al:0.05〜0.50%を含有し、
    さらに、ワイヤの全質量に対する質量%で、フラックス中に、
    Mg:0.05〜0.50%、
    Ti酸化物のTiO2換算値:2.5〜4.5%、
    Si酸化物のSiO2換算値:0.8〜1.8%、
    Zr酸化物のZrO2換算値:0.6〜1.5%、
    Fe酸化物のFeO換算値:0.05〜1.0%、
    Al酸化物のAl23換算値:0.05〜0.50%、
    Na化合物及びK化合物のNa2O換算値とK2O換算値の合計:0.05〜0.20%、
    弗素化合物のF換算値:0.02〜0.20%を含有し、
    残部は鋼製外皮のFe分、合金鉄中のFe分、鉄粉及び不可避不純物であることを特徴とする原油油槽鋼の2電極水平すみ肉ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。
  2. ワイヤ全質量に対する質量%で、フラックス中に、金属BiとBi酸化物のBi換算値の合計:0.005〜0.035%を更に含有することを特徴とする請求項1に記載の原油油槽鋼の2電極水平すみ肉ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。
  3. ワイヤ全質量に対する質量%で、鋼製外皮とフラックスの合計で、Ti:0.03〜0.30%及びB:0.002〜0.010%の1種又は2種を更に含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の原油油槽鋼の2電極水平すみ肉ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。
  4. ワイヤ全質量に対する質量%で、鋼製外皮とフラックスの合計で、Ni:0.05〜2.5%を更に含有することを特徴とする請求項1乃至3のうち何れか1項に記載の原油油槽鋼の2電極水平すみ肉ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。
  5. ワイヤ全質量に対する質量%で、鋼製外皮とフラックスの合計で、Sn:0.01〜0.30%及びSb:0.01〜0.30%の1種又は2種を更に含有することを特徴とする請求項1乃至4のうち何れか1項に記載の原油油槽鋼の2電極水平すみ肉ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。
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