JP6597634B2 - 非水系二次電池用バインダー、非水系二次電池機能層用組成物、非水系二次電池用機能層および非水系二次電池 - Google Patents
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Description
しかしながら、上記従来技術のバインダーを用いると、スラリー組成物が過度に増粘し、基材上への塗布が困難となる場合があった。
また、非水系二次電池用バインダーには、結着性のみならず、長期の輸送や保管の際における凝集などの劣化を十分に抑制可能な保存安定性が求められる。このような結着性および保存安定性の観点からも、上記従来のバインダーには、更なる改善の余地があった。
また、本発明は、基材との密着性に優れる機能層を形成可能であり、且つ粘度上昇が抑制された非水系二次電池機能層用組成物を提供することを目的とする。
そして、本発明は、基材との密着性に優れる非水系二次電池用機能層、および当該非水系二次電池用機能層を備える非水系二次電池を提供することを目的とする。
また、本発明によれば、基材との密着性に優れる機能層を形成可能であり、且つ粘度上昇が抑制された非水系二次電池機能層用組成物を提供することができる。
そして、本発明によれば、基材との密着性に優れる非水系二次電池用機能層、および当該非水系二次電池用機能層を備える非水系二次電池を提供することができる。
ここで、本発明の非水系二次電池用バインダーは、特に限定されず、電極における集電体上に配置される電極合材層の調製や、当該電極合材層の更に上(すなわち電極基材の上)やセパレータ基材の上に配置される非水系二次電池用機能層の調製に用いられるが、好適には、非水系二次電池用機能層の調製に用いられる。そして、本発明の非水系二次電池機能層用組成物は、本発明の非水系二次電池用機能層を調製する際の材料として用いられる。また、本発明の非水系二次電池用機能層は、本発明の非水系二次電池機能層用組成物を用いて調製され、例えばセパレータや電極の一部を構成する。そして、本発明の非水系二次電池は、少なくとも本発明の非水系二次電池用機能層を備えるものである。
本発明の非水系二次電池用バインダーは、粒子状重合体が分散媒としての水中に分散した組成物であり、当該粒子状重合体のpH5における水系媒体に対する膨潤度が2倍未満であり、且つpH8における水系媒体に対する膨潤度が2倍以上7倍以下であることを特徴とする。
なお、上述のように、本発明の非水系二次電池用バインダーは、機能層および電極合材層の何れにも用いることができるが、以下、主として非水系二次電池用バインダーを機能層に用いた場合を例に挙げて説明する。
まず、粒子状重合体は、pH5の酸性条件下における水系媒体中での膨潤度が2倍未満であり、当該粒子状重合体は、酸性を呈する非水系二次電池用バインダー中において低膨潤性である。よって、通常酸性条件下で行われる長期の保管や輸送の際の粒子状重合体の凝集が抑制され、バインダーの保存安定性が向上するものと推察される。
また、粒子状重合体は、pH8のアルカリ性条件下における水系媒体中での膨潤度が2倍以上であるため、通常アルカリ性を呈する非水系二次電池機能層用組成物などのスラリー組成物中において適度に膨潤し、当該粒子状重合体の表面積が増大することでバインダーの結着性が向上するものと推察される。一方、pH8のアルカリ性条件下における水系媒体中での膨潤度が7倍以下であることにより、粒子状重合体はスラリー組成物中において過度に膨潤することはない。そのため、スラリー組成物の粘度上昇が抑制され、基材への塗布に適した良好な粘度を有するスラリー組成物を調製することができると推察される。
そして、上述のようにしてバインダーの結着性が向上することで、例えばバインダーを用いて機能層を形成した場合、機能層製造後の巻き取りの際や、二次電池製造時に裁断および湾曲させる際に生じる粉落ち(機能層からの微小な粉体の脱落)が十分に抑制可能となる。あわせて電解液中での機能層の強度が高まり、二次電池の連続運転時における機能層の欠陥およびそれに伴うリチウムデンドライドの発生が抑制されて、二次電池の高温サイクル特性などの電気的特性の確保が可能となると推察される。
粒子状重合体は、得られる機能層の強度を確保すると共に、機能層に含まれる成分が機能層から脱離しないように保持する。ここで、通常、粒子状重合体は水溶性の重合体ではなく、水系媒体中において粒子状で存在している。
−水系媒体に対する膨潤度−
本発明において、粒子状重合体の「pH5における水系媒体に対する膨潤度」、「pH8における水系媒体に対する膨潤度」は、粒子状重合体を成形してなるフィルム(バインダーフィルム)を、それぞれpH5の塩化水素水溶液(塩酸)、pH8の水酸化ナトリウム水溶液に所定条件で浸漬した場合の浸漬後の重量を浸漬前の重量で除した値(倍)として求めることができ、具体的には、それぞれ本明細書の実施例に記載の方法を用いてバインダーフィルムを成形し、同実施例に記載の測定方法を用いて測定する。
また、粒子状重合体のpH8における水系媒体に対する膨潤度は、2倍以上7倍以下であることが必要であり、好ましくは2.1倍以上、より好ましくは2.5倍以上、更に好ましくは2.7倍以上であり、また好ましくは6.5倍以下、より好ましくは6.2倍以下、更に好ましくは6.0倍以下である。粒子状重合体のpH8における水系媒体に対する膨潤度が2倍未満であると、機能層用組成物などのスラリー組成物中において十分に膨潤せず、粒子状重合体の表面積が確保できないためバインダーの結着性が低下する。一方、粒子状重合体のpH8における水系媒体に対する膨潤度が7倍超であると、粒子状重合体が機能層用組成物などのスラリー組成物中において過度に膨潤することでスラリー組成物の粘度が上昇し、スラリー組成物の塗布性を確保することができない。加えて、粒子状重合体が過度に広がり(膨潤し)、バインダーの結着性を効果的に高めることができない。
粒子状重合体の体積平均粒子径D50は、好ましくは50nm以上、より好ましくは70nm以上、更に好ましくは90nm以上、特に好ましくは100nm以上であり、また好ましくは700nm以下、より好ましくは500nm以下、更に好ましくは400nm以下、特に好ましくは200nm以下である。粒子状重合体の体積平均粒子径D50が50nm以上であると、機能層用組成物を乾燥して機能層を得る際の粒子状重合体のマイグレーションが抑制され、当該粒子状重合体がセパレータ基材の細孔を塞ぐことを防止できる。そのため、リチウムイオンなどの電荷担体の透過性が確保され、ガーレー値の上昇を抑制することができる。一方、粒子状重合体の体積平均粒子径D50が700nm以下であると、非導電性粒子などとの接着面積が十分に確保され、機能層の基材との密着性を確保することができる。
なお、粒子状重合体の「体積平均粒子径D50」は、レーザー回折法で測定された粒度分布(体積基準)において小径側から計算した累積体積が50%となる粒子径を表す。
粒子状重合体の組成は特に限定されないが、粒子状重合体は、例えば、酸基含有単量体単位、脂肪族共役ジエン単量体単位、芳香族ビニル単量体単位を含み得り、これら以外のその他の単量体単位を含んでいてもよい。
なお、本発明において「単量体単位を含む」とは、「その単量体を用いて得た重合体中に単量体由来の構造単位が含まれている」ことを意味する。
酸基含有単量体単位を形成し得る酸基含有単量体としては、例えば、カルボン酸基を有する単量体、スルホン酸基を有する単量体、リン酸基を有する単量体、および、水酸基を有する単量体が挙げられる。
また、スルホン酸基を有する単量体としては、例えば、ビニルスルホン酸、メチルビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、(メタ)アクリル酸−2−スルホン酸エチル、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸などが挙げられる。なお、本明細書において、「(メタ)アリル」とは、アリルおよび/またはメタリルを意味し、(メタ)アクリルとは、アクリルおよび/またはメタクリルを意味する。
更に、リン酸基を有する単量体としては、例えば、リン酸−2−(メタ)アクリロイルオキシエチル、リン酸メチル−2−(メタ)アクリロイルオキシエチル、リン酸エチル−(メタ)アクリロイルオキシエチルなどが挙げられる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリロイル」とは、アクリロイルおよび/またはメタクリロイルを意味する。
また、水酸基を有する単量体としては、例えば、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシプロピルなどが挙げられる。
また、酸基含有単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
脂肪族共役ジエン単量体単位を形成し得る脂肪族共役ジエン単量体としては、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−クロロ−1,3−ブタジエン(クロロプレン)、置換直鎖共役ペンタジエン類、置換および側鎖共役ヘキサジエン類などが挙げられる。このような脂肪族共役ジエン単量体単位を粒子状重合体に含めることで、粒子状重合体に遷移金属捕捉能を発揮させることができる。そのため、非水系二次電池の正極に遷移金属を含有する正極活物質(例えば、LiCoO2等)を用いた場合に電解液中に溶出する遷移金属イオン(例えば、コバルト等)を捕捉し、二次電池に優れた電気的特性(高温サイクル特性など)を発揮させることができる。そして、上述した中でも、粒子状重合体を含む機能層の遷移金属イオン捕捉力を効果的に高める観点からは、脂肪族共役ジエン単量体としては、1,3−ブタジエンが好ましい。
なお、これらの脂肪族共役ジエン単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
芳香族ビニル単量体単位を形成し得る芳香族ビニル単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼンなどが挙げられる。これらの中でも、芳香族ビニル単量体としては、スチレンが好ましい。なお、これらの芳香族ビニル単量体は、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
さらに、粒子状重合体は、上述した酸基含有単量体単位、脂肪族共役ジエン単量体単位、および芳香族ビニル単量体単位以外のその他の単量体単位を含んでいてもよい。その他の単量体単位としては、特に限定されないが、ニトリル基含有単量体単位、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位が挙げられる。
ここで、エチルアクリレートやブチルアクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来する(メタ)アクリル酸エステル単量体単位は、粒子状重合体に柔軟性を付与する。一方で、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を多く含むと、アルカリ環境下における粒子状重合体の分解が容易となり、機能層用組成物などのスラリー組成物の安定性が損なわれる虞がある。かかる観点から、粒子状重合体における(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の含有割合は、好ましくは80質量%未満、より好ましくは50質量%未満、更に好ましくは30質量%未満、特に好ましくは10質量%未満、最も好ましくは0質量%(すなわち、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を含まない)である。
粒子状重合体は、上述した単量体を含む単量体組成物を重合することにより調製される。ここで、単量体組成物中の各単量体の割合は、通常、所望の粒子状重合体における各単量体単位の割合と同様とする。
粒子状重合体の重合様式は、特に限定はされず、例えば、溶液重合法、懸濁重合法、塊状重合法、乳化重合法などのいずれの方法を用いてもよい。重合反応としては、イオン重合、ラジカル重合、リビングラジカル重合などの付加重合を用いることができる。
なお、粒子状重合体の上記水系媒体に対する膨潤度は、上記連鎖移動剤の使用量の他に、粒子状重合体を構成する単量体単位、例えば、酸基含有単量体単位と脂肪族共役ジエン単量体単位との比率を調整することによっても、所望の範囲内に収めることが可能である。
非水系二次電池用バインダーの調製方法は特に限定されないが、例えば、粒子状重合体の調製を水系媒体中で実施し、粒子状重合体が水分散液として得られる場合には、粒子状重合体の水分散液をそのまま非水系二次電池用バインダーとしてもよいし、粒子状重合体の水分散液に任意のその他の成分を加えて非水系二次電池用バインダーとしてもよい。ここでその他の成分としては、後述する「非水系二次電池機能層用組成物」の項で記載するその他の成分が挙げられる。
なお、バインダーのpHは、酸性分および/またはアルカリ成分の添加など、既知の方法で適宜調整することができる。
非水系二次電池機能層用組成物は、少なくとも、非水系二次電池用バインダーおよび非導電性粒子を含み、任意にその他の成分を含有する、水を分散媒としたスラリー組成物である。
そして、本発明の非水系二次電池機能層用組成物は、上述した粒子状重合体を含んでなるため、過度な粘度上昇が抑制されており、基材上への塗布が容易である上に、当該機能層用組成物を用いて形成される機能層は、基材との密着性に優れる。
なお、非水系二次電池機能層用組成物に含まれる粒子状重合体および非導電性粒子の割合の合計は、非水系二次電池機能層用組成物の質量を100質量%とした場合、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上であり、通常90質量%以下である。
非導電性粒子は、非導電性を有し、機能層用組成物において分散媒として使用される水および二次電池の非水系電解液に溶解せず、それらの中においても、その形状が維持される粒子である。そして非導電性粒子は、電気化学的にも安定であるため二次電池の使用環境下で、機能層中に安定に存在する。機能層用組成物が非導電性粒子を含むことで、得られる機能層の網目状構造が適度に目詰めされ、リチウムデンドライトなどが機能層を貫通するのを防止し、電極の短絡の抑制を確かなものとすることができる。
非導電性粒子の体積平均粒子径D50は、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.2μm以上であり、好ましくは5μm以下、より好ましくは1μm以下である。なお、非導電性粒子の「体積平均粒子径D50」は、レーザー回折法で測定された粒度分布(体積基準)において小径側から計算した累積体積が50%となる粒子径を表す。
非導電性粒子のBET比表面積は、好ましくは0.9m2/g以上、より好ましくは1.5m2/g以上である。また、非導電性粒子の凝集を抑制し、機能層用組成物の流動性を好適化する観点から、BET比表面積は大き過ぎないことが好ましく、例えば150m2/g以下であることが好ましい。
機能層用組成物中における、非導電性粒子と非水系二次電池用バインダーの配合比は特に限定されない。例えば、機能層用組成物は、非導電性粒子100質量部当たり、粒子状重合体の配合量が、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、更に好ましくは3質量部以上、特に好ましくは4質量部以上、そして、好ましくは25質量部以下、より好ましくは15質量部以下、更に好ましくは10質量部以下、特に好ましくは8質量部以下となる量で、非水系二次電池用バインダーを含む。粒子状重合体の配合量が非導電性粒子100質量部当たり0.5質量部以上であると、得られる機能層の基材との密着性が確保され、また、電解液中に溶出する遷移金属イオンを捕捉し、二次電池の高温サイクル特性など電気的特性を向上させることができる。一方、粒子状重合体の配合量が非導電性粒子100質量部当たり25質量部以下であると、粒子状重合体がセパレータ基材の細孔を塞ぐことを防止できるため、リチウムイオンなどの電荷担体の透過性が確保され、ガーレー値の上昇を抑制することができる。また、機能層中の重合体成分の増加に起因する耐熱収縮性の低下を防止することができる。さらに、粒子状重合体に起因する二次電池への水分の持ち込み量を減少させ、二次電池の高温サイクル特性などの電気的特性を向上させることができる。
非水系二次電池機能層用組成物は、上述した成分以外にも、任意にその他の成分を含んでいてもよい。これらのその他の成分としては、例えば、濡れ剤、粘度調整剤、電解液添加剤などの既知の添加剤が挙げられる。また、これらのその他の成分は、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
機能層用組成物の調製方法は、特に限定はされないが、通常は、非水系二次電池用バインダーと、非導電性粒子と、分散媒としての水と、任意にその他の成分とを混合して機能層用組成物を調製する。混合方法は特に制限されないが、各成分を効率よく分散させるため、通常は混合装置として分散機を用いて混合を行う。
分散機は、上記成分を均一に分散および混合できる装置が好ましい。例を挙げると、ボールミル、サンドミル、顔料分散機、擂潰機、超音波分散機、ホモジナイザー、プラネタリーミキサーなどが挙げられる。また、高い分散シェアを加えることができる観点から、ビーズミル、ロールミル、フィルミックス等の高分散装置も挙げられる。
なお、機能層用組成物のpHは、酸性分および/またはアルカリ成分の添加など、既知の方法で適宜調整することができる。
非水系二次電池用機能層は、上述した非水系二次電池機能層用組成物を用い、適切な基材上に形成される。具体的には機能層は、機能層用組成物を基材上で乾燥することにより得ることができる。即ち本発明の機能層は、上記機能層用組成物の乾燥物よりなり、通常、上記粒子状重合体と、上記非導電性粒子とを含有し、任意に、上記その他の成分とを含有する。なお、上述した粒子状重合体が架橋性の単量体単位を含む場合には、粒子状重合体は、機能層用組成物の乾燥時、または、乾燥後に任意に実施される熱処理時に架橋されていてもよい(即ち機能層は、上述した粒子状重合体の架橋物を含んでいてもよい)。なお、機能層中に含まれている各成分の好適な存在比は、機能層用組成物中の各成分の好適な存在比と同じである。
そして本発明の機能層用組成物を用いて得られる機能層は、基材との密着性に優れる。具体的には、機能層が基材との密着性に優れているため、機能層の基材上への形成後の巻き取りの際や、二次電池製造時に裁断および湾曲させる際に生じる粉落ちが十分に抑制可能となる。その上、電解液中での機能層の強度が高まり、二次電池の高温サイクル特性が向上する。ここで、機能層は基材の片面に設けてもよいし、基材の両面に設けてもよい。
また、機能層は、基材から剥離し、自立膜の状態でそのままセパレータとして使用することもできる。
なお、非水系二次電池用機能層に含まれる粒子状重合体および非導電性粒子の割合の合計は、非水系二次電池用機能層の質量を100質量%とした場合、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上であり、通常100質量%以下である。
機能層を形成する基材としては、特に限定されず、例えばセパレータの一部を構成する部材として機能層を使用する場合には、基材としてはセパレータ基材を用いることができ、また、電極の一部を構成する部材として機能層を使用する場合には、基材としては集電体上に電極合材層を形成してなる電極基材を用いることができる。また、基材上に形成した機能層の用法に特に制限は無く、例えばセパレータ基材等の上に機能層を形成してそのままセパレータ等の電池部材として使用してもよいし、電極基材上に機能層を形成して電極として使用してもよいし、離型基材上に形成した機能層を基材から一度剥離し、他の基材に貼り付けて電池部材として使用してもよい。
しかし、機能層から離型基材を剥がす工程を省略して電池部材の製造効率を高める観点からは、基材としてセパレータ基材又は電極基材を用いることが好ましい。セパレータ基材又は電極基材に設けられた機能層は、セパレータ又は電極の耐熱性や強度を高める多孔膜層としての機能と、特に電解液中においてセパレータと電極とを強固に接着させる接着層としての機能とを同時に発現させる単一の層として、好適に使用することができる。
なお、機能層が主として接着層として機能するものである場合には、表面に多孔膜層を設けたセパレータ基材または電極基材の上に機能層を形成してもよい。
機能層を形成するセパレータ基材としては、特に限定されることなく、例えば特開2012−204303号公報に記載のものを用いることができる。これらの中でも、セパレータ全体の膜厚を薄くすることができ、これにより、二次電池内の電極活物質の比率を高くして体積あたりの容量を高くすることができるという点より、ポリオレフィン系(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ塩化ビニル)の樹脂からなる微多孔膜が好ましい。
機能層を形成する電極基材(正極基材および負極基材)としては、特に限定されないが、集電体上に電極合材層が形成された電極基材が挙げられる。
ここで、集電体、電極合材層中の成分(例えば、電極活物質(正極活物質、負極活物質)および電極合材層用結着材(正極合材層用結着材、負極合材層用結着材)など)、並びに、集電体上への電極合材層の形成方法は、既知のものを用いることができ、例えば特開2013−145763号公報に記載のものを用いることができる。
機能層を形成する離型基材としては、特に限定されず、既知の離型基材を用いることができる。
上述したセパレータ基材、電極基材などの基材上に機能層を形成する方法としては、以下の方法が挙げられる。
1)機能層用組成物をセパレータ基材又は電極基材の表面に塗布し、次いで乾燥する方法;
2)機能層用組成物にセパレータ基材又は電極基材を浸漬後、これを乾燥する方法;
3)機能層用組成物を、離型基材上に塗布、乾燥して機能層を製造し、得られた機能層をセパレータ基材又は電極基材の表面に転写する方法;
これらの中でも、前記1)の方法が、機能層の膜厚制御をしやすいことから特に好ましい。該1)の方法は、詳細には、機能層用組成物をセパレータ基材又は電極基材上に塗布する工程(塗布工程)、セパレータ基材又は電極基材上に塗布された機能層用組成物を乾燥させて機能層を形成する工程(機能層形成工程)を備える。
また機能層形成工程において、基材上の機能層用組成物を乾燥する方法としては、特に限定されず公知の方法を用いることができ、例えば温風、熱風、低湿風による乾燥、真空乾燥、赤外線や電子線などの照射による乾燥法が挙げられる。乾燥条件は特に限定されないが、乾燥温度は好ましくは30〜80℃で、乾燥時間は好ましくは30秒〜10分である。
なお、基材上に形成された機能層の厚みは、適宜調整することができる。
本発明の非水系二次電池は、上述した本発明の非水系二次電池用機能層を備えるものである。より具体的には、本発明の非水系二次電池は、正極、負極、セパレータ、および電解液を備え、上述した非水系二次電池用機能層が、電池部材である正極、負極およびセパレータの少なくとも1つに含まれる。
本発明の非水系二次電池は、本発明の非水系二次電池用機能層を備えているので、高温サイクル特性などの電気的特性に優れ、高性能である。
本発明の二次電池に用いる正極、負極およびセパレータは、少なくとも一つが機能層を有している。具体的には、機能層を有する正極および負極としては、集電体上に電極合材層を形成してなる電極基材の上に機能層を設けてなる電極を用いることができる。また、機能層を有するセパレータとしては、セパレータ基材の上に機能層を設けてなるセパレータや、機能層よりなるセパレータを用いることができる。なお、電極基材およびセパレータ基材としては、「基材」の項で挙げたものと同様のものを用いることができる。
また、機能層を有さない正極、負極およびセパレータとしては、特に限定されることなく、上述した電極基材よりなる電極および上述したセパレータ基材よりなるセパレータを用いることができる。
電解液としては、通常、有機溶媒に支持電解質を溶解した有機電解液が用いられる。支持電解質としては、例えば、リチウムイオン二次電池においてはリチウム塩が用いられる。リチウム塩としては、例えば、LiPF6、LiAsF6、LiBF4、LiSbF6、LiAlCl4、LiClO4、CF3SO3Li、C4F9SO3Li、CF3COOLi、(CF3CO)2NLi、(CF3SO2)2NLi、(C2F5SO2)NLiなどが挙げられる。なかでも、溶媒に溶けやすく高い解離度を示すので、LiPF6、LiClO4、CF3SO3Liが好ましい。なお、電解質は1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。通常は、解離度の高い支持電解質を用いるほどリチウムイオン伝導度が高くなる傾向があるので、支持電解質の種類によりリチウムイオン伝導度を調節することができる。
なお、電解液中の電解質の濃度は適宜調整することができる。また、電解液には、既知の添加剤を添加してもよい。
非水系二次電池は、例えば、正極と負極とをセパレータを介して重ね合わせ、これを必要に応じて、巻く、折るなどして電池容器に入れ、電池容器に電解液を注入して封口することで製造し得る。なお、正極、負極、セパレータのうち、少なくとも一つの部材を機能層付きの部材とする。ここで、電池容器には、必要に応じてエキスパンドメタルや、ヒューズ、PTC素子などの過電流防止素子、リード板などを入れ、電池内部の圧力上昇、過充放電の防止をしてもよい。電池の形状は、例えば、コイン型、ボタン型、シート型、円筒型、角形、扁平型など、何れであってもよい。
また、複数種類の単量体を共重合して製造される重合体において、ある単量体を重合して形成される構造単位の前記重合体における割合は、別に断らない限り、通常は、その重合体の重合に用いる全単量体に占める当該ある単量体の比率(仕込み比)と一致する。
実施例および比較例において、粒子状重合体のpH5およびpH8それぞれにおける水系媒体に対する膨潤度、機能層用組成物の粘度変化、バインダーの保存安定性、電解液浸漬前および浸漬後それぞれにおける機能層のセパレータ基材との密着性、セパレータの水分量、並びにリチウムイオン二次電池の高温サイクル特性は、下記の方法で測定および評価した。
粒子状重合体の水分散液を、テフロン(登録商標)シャーレに流し込み、25℃で5日間乾燥させて1cm×1cmのバインダーフィルム(厚さ500μm)を作製し、重量M0を測定した。その後、得られたフィルムをpH5の塩化水素水溶液(塩酸)に60℃、72時間浸漬した。浸漬後のフィルムの表面の塩化水素水溶液をふき取り重量M1を測定した。そして、下記式に従って、pH5における水系媒体に対する膨潤度を算出した。
pH5における水系媒体に対する膨潤度=M1/M0
<粒子状重合体の水系媒体に対する膨潤度(pH8)>
粒子状重合体の水分散液を、テフロン(登録商標)シャーレに流し込み、25℃で5日間乾燥させて1cm×1cmのバインダーフィルム(厚さ500μm)を作製し、重量M0を測定した。その後、得られたフィルムをpH8の水酸化ナトリウム水溶液に60℃、72時間浸漬した。浸漬後のフィルムの表面の水酸化ナトリウム水溶液をふき取り重量M2を測定した。そして、下記式に従って、pH8における水系媒体に対する膨潤度を算出した。
pH8における水系媒体に対する膨潤度=M2/M0
<機能層用組成物の粘度変化>
機能層用組成物の調整の際に、pH調整前(アンモニア水添加前)の粘度η0、pH調整後(アンモニア水添加後)の粘度η1を、それぞれ、B型粘度計を使用し、JIS K7117−1に準拠して、温度25℃、回転数60rpmの条件下で測定した。そしてpH調整による粘度変化(η1/η0)を算出し、下記の基準で評価した。η1/η0が小さいほど、機能層用組成物(スラリー組成物)の粘度上昇が抑制されていることを示す。
A:粘度変化が1.5倍未満
B:粘度変化が1.5倍以上2.0倍未満
C:粘度変化が2.0倍以上2.5倍未満
D:粘度変化が2.5倍以上
<バインダーの保存安定性>
得られた非水系二次電池用バインダー(固形分濃度:40質量%)を、温度25℃で3ヶ月間保存した。保存後のバインダーを十分に撹拌した後200gを精秤し、マロン式機械的安定性試験機を用いて温度60℃、荷重30kg/cm2、回転数1,000rpmの条件で30分間処理した。そして635メッシュ金網で濾過した後、金網上に残った凝集物の乾燥重量W1を測定した。使用したバインダーの固形分濃度から算出した、200g中の全固形分量W2に対する乾燥重量W1の割合(W1/W2×100)を算出し、下記の基準で評価した。当該割合が小さいほど、バインダーが優れた保存安定性を有することを示す。
A:W2に対するW1の割合が0.001%未満
B:W2に対するW1の割合が0.001%以上0.01%未満
C:W2に対するW1の割合が0.01%以上
<電解液浸漬前における機能層のセパレータ基材との密着性>
セパレータ(セパレータ基材上に機能層を備える)を、幅10mm×長さ100mmの長方形に切り出し、試験片とした。この試験片を、機能層の表面を下にして、機能層の表面にセロハンテープを貼り付けた。この際、セロハンテープとしてはJIS Z1522に規定されるものを用いた。また、セロハンテープは水平な試験台に固定しておいた。次にセパレータの一端を垂直方向に引張り速度10mm/分で引っ張って剥がしたときの応力を測定した。測定を3回行い、その平均値を求めてこれをピール強度P1とし、下記の基準で評価した。ピール強度P1が大きいほど、電解液浸漬前において、機能層のセパレータ基材との密着性に優れることを示す。
A:ピール強度P1が100N/m以上
B:ピール強度P1が75N/m以上100N/m未満
C:ピール強度P1が75N/m未満
<電解液浸漬後における機能層のセパレータ基材との密着性>
セパレータ(セパレータ基材上に機能層を備える)を、幅10mm×長さ100mmの長方形に切り出し、試験片とした。この試験片を電解液(溶媒:エチレンカーボネート/ジエチルカーボネート/ビニレンカーボネート(体積混合比)=68.5/30/1.5、電解質:濃度1MのLiPF6)に180分間浸漬した。その後電解液から試験片を取り出し、機能層の表面に付着した電解液を拭き取った。その後、機能層の表面を下にして、機能層の表面にセロハンテープを貼り付けた。この際、セロハンテープとしてはJIS Z1522に規定されるものを用いた。また、セロハンテープは水平な試験台に固定しておいた。その後、セパレータの一端を鉛直上方に引張り速度10mm/分で引っ張って剥がしたときの応力を測定した。測定を3回行い、その平均値を求めてこれをピール強度P2とし、下記の基準で評価した。ピール強度P2が大きいほど、電解液浸漬後において、機能層のセパレータ基材との密着性に優れることを示す。
A:ピール強度P2が30N/m以上
B:ピール強度P2が10N/m以上30N/m未満
C:ピール強度P2が10N/m未満
<セパレータの水分量>
セパレータ(セパレータ基材上に機能層を備える)を、幅10cm×長さ10cmの大きさに切り出して試験片とした。この試験片を、温度25℃、露点温度−60℃(湿度0.0011%)の環境下で24時間放置し、試験片の重量Wを測定した。その後、電量滴定式水分計(三菱化学アナリテック製:CA−200型(電量滴定方式)、VA−236S型(気化装置))を用い、カールフィッシャー法(JIS K−0068(2001)水分気化法、気化温度150℃)により、試験片の水分量Mを測定した。
これらの測定から、セパレータの水分量を下記の式により計算し、下記の基準により評価した。セパレータの水分量の値が少ない程、機能層の水分量が少なく、二次電池への持ち込み水分量を抑えることが可能であることを示す。
セパレータの水分量=(試験片水分量M)/(試験片重量W)
A:セパレータの水分量が200ppm未満
B:セパレータの水分量が200ppm以上250ppm未満
C:セパレータの水分量が250ppm以上300ppm未満
D:セパレータの水分量が300ppm以上
<リチウムイオン二次電池の高温サイクル特性>
製造した放電容量45mAhの5セルのラミネートセルについて、45℃雰囲気下で、0.5Cの定電流法によって、4.35Vに充電して3Vまで放電する充放電を200サイクル繰り返す試験(高温サイクル試験)を行った。その際、上記充放電を3サイクル繰り返した後、放電容量C0を測定し、上記充放電を200サイクル繰り返した後(高温サイクル試験終了後)、放電容量C1を測定した。そして、5セルの平均値を測定値として、3サイクル終了時の放電容量C0に対する200サイクル終了時の放電容量C1の割合(=C1/C0×100%)を放電容量保持率ΔCとして求め、以下の基準で評価した。この放電容量保持率ΔCが高いほど、高温サイクル特性が優れていることを示す。
A:放電容量保持率ΔCが85%以上
B:放電容量保持率ΔCが80%以上85%未満
C:放電容量保持率ΔCが75%以上80%未満
D:放電容量保持率ΔCが75%未満
<非水系二次電池用バインダー(粒子状重合体の水分散液)の調製>
攪拌機付き5MPa耐圧容器に、脂肪族共役ジエン単量体として1,3−ブタジエン46部、酸基含有単量体としてアクリル酸20部、芳香族ビニル単量体としてスチレン34部、連鎖移動剤としてt−ドデシルメルカプタン2.0部、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム5部、イオン交換水150部および重合開始剤として過硫酸カリウム1部を入れ、十分に攪拌した後、55℃に加温して重合を開始した。重合転化率が96%になった時点で冷却し反応を停止して、次いでアンモニア水を添加しpH5に調整し、非水系二次電池用バインダー(粒子状重合体の水分散液)を得た。この非水系二次電池用バインダーを用いて、バインダーの保存安定性を評価した。結果を表1に示す。
<機能層用組成物の調製>
非導電性粒子としての硫酸バリウム(体積平均粒子径D50:0.55μm、比表面積:5.5g/m2)100部、および分散剤としてのポリカルボン酸アンモニウム塩0.5部に対し、固形分濃度が50%となるように水を添加し、メディアレス分散装置を用いて硫酸バリウムを分散させた。その後、さらに、粘度調整剤としてのポリアクリルアミド水溶液(固形分濃度が15%)を、固形分相当で1.5部となるように添加して混合した。次いで、非水系二次電池用バインダーを粒子状重合体の固形分相当で5部、濡れ剤としてのポリオキシレンアルキルエーテルを0.2部それぞれ添加した。その後、アンモニア水を添加しpH8に調整した。このpH調整の際の粘度変化を評価した。結果を表1に示す。そして固形分濃度が40質量%となるように水を添加し、スラリー状の機能層用組成物を調製した。
<機能層および機能層を備えるセパレータの作製>
セパレータ基材として、幅250mm、長さ1000m、厚さ12μmの有機セパレータ(単層のポリエチレン製、湿式法により製造)を用意した。このセパレータ基材上に、上述した機能層用組成物を、ワイヤーバーを用いて塗布し、次いで50℃の乾燥炉で乾燥して、セパレータ基材上に厚さ2μmの機能層を備えてなるセパレータを作製した。このセパレータを用いて、電解液浸漬前および浸漬後それぞれにおける機能層のセパレータ基材への密着性並びにセパレータの水分量を評価した。結果を表1に示す。
攪拌機付き5MPa耐圧容器に、1,3−ブタジエン33.5部、イタコン酸3.5部、スチレン62部、2−ヒドロキシエチルアクリレート1部、乳化剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.4部、イオン交換水150部および重合開始剤としてのペルオキソ二硫酸カリウム0.5部を入れ、十分に攪拌した後、50℃に加温して重合を開始した。重合転化率が96%になった時点で冷却して反応を停止して、負極合材層用の粒子状結着材(SBR)を含む混合物を得た。上記粒子状結着材を含む混合物に、5%水酸化ナトリウム水溶液を添加して、pH8に調整後、加熱減圧蒸留によって未反応単量体の除去を行った。その後、30℃以下まで冷却し、所望の粒子状結着材を含む水分散液を得た。
次に、負極活物質としての人造黒鉛(体積平均粒子径D50:15.6μm)100部、粘度調整剤としてのカルボキシメチルセルロースナトリウム塩(日本製紙社製「MAC350HC」)の2%水溶液を固形分相当で1部、および、イオン交換水を混合して固形分濃度が68%となるように調整した後、25℃で60分間混合した。次いで、固形分濃度が62%となるようにイオン交換水で調整し、更に25℃で15分間混合した。その後、得られた混合液に、前述の粒子状結着材を含む水分散液を固形分相当で1.5部、およびイオン交換水を入れ、最終固形分濃度が52%となるように調整し、更に10分間混合した。これを減圧下で脱泡処理し、流動性の良い負極用スラリー組成物を得た。
そして、前述のようにして得られた負極用スラリー組成物を、コンマコーターで、集電体である厚さ20μmの銅箔の上に、乾燥後の膜厚が150μm程度になるように塗布し、乾燥して負極原反を得た。この乾燥は、銅箔を0.5m/分の速度で60℃のオーブン内を2分間かけて搬送することにより行った。その後、負極原反をロールプレスで圧延して、負極合材層の厚さが100μmの負極を得た。
正極活物質としてのLiCoO2(体積平均粒子径D50:12μm)を100部、導電材としてのアセチレンブラック(電気化学工業社製「HS−100」)を2部、正極合材層用の粒子状結着材としてのポリフッ化ビニリデン(クレハ社製、#7208)を固形分相当で2部と、N−メチルピロリドンとを混合し、全固形分濃度を70%とした。これらをプラネタリーミキサーにより混合し、正極用スラリー組成物を調製した。
前述のようにして得られた正極用スラリー組成物を、コンマコーターで、集電体である厚さ20μmのアルミ箔の上に、乾燥後の膜厚が150μm程度になるように塗布し、乾燥して正極原反を得た。この乾燥は、アルミ箔を0.5m/分の速度で60℃のオーブン内を2分間かけて搬送することにより行った。その後、正極原反をロールプレスで圧延して、正極合材層の厚さが95μmの正極を得た。
電池の外装として、アルミニウム包材外装を用意した。上記で得られた正極を、集電体を1.5cm×3.8cm、正極合材層を2.8cm×3.8cmとなるように(正極全体として4.3cm×3.8cm)切り出し、集電体側の表面がアルミニウム包材外装に接するように配置した。そして、正極合材層の面上に、上記で得られた3.5cm×4.5cmに切り出したセパレータを機能層が正極側を向くように配置した。さらに、上記で得られた負極を、集電体を1.5cm×4.0cm、負極合材層を3.0cm×4.0cmとなるように(負極全体として4.5cm×4.0cm)となるよう切り出し、これをセパレータ上に、負極合材層側の表面がセパレータに向かい合うよう配置した。そして、電解液(溶媒:エチレンカーボネート/エチルメチルカーボネート/ビニレンカーボネート(体積混合比)=68.5/30/1.5、支持電解質:濃度1MのLiPF6)を空気が残らないように注入した。さらに、アルミニウム包材の開口を密封するために、150℃のヒートシールをしてアルミニウム包材外装を閉口し、放電容量45mAhのラミネートセルとしてのリチウムイオン二次電池を製造した。このリチウムイオン二次電池を用いて、高温サイクル特性を評価した。結果を表1に示す。
非水系二次電池用バインダー(粒子状重合体の水分散液)の調製時に、連鎖移動剤としてのt−ドデシルメルカプタンの使用量を表1のように変更した以外は、実施例1と同様にして、バインダー、機能層用組成物、機能層、機能層を備えるセパレータ、負極、正極およびリチウムイオン二次電池を製造した。そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。
非水系二次電池用バインダー(粒子状重合体の水分散液)の調製時に、酸基含有単量体としてのアクリル酸および脂肪族共役ジエン単量体としての1,3−ブタジエンの使用量を変更した以外はそれぞれ実施例2、実施例1と同様にして、バインダー、機能層用組成物、機能層、機能層を備えるセパレータ、負極、正極およびリチウムイオン二次電池を製造した。そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。
非水系二次電池用バインダー(粒子状重合体の水分散液)の調製時に、脂肪族共役ジエン単量体としての1,3−ブタジエンおよび芳香族ビニル単量体としてのスチレンの使用量を表1のように変更した以外は、実施例1と同様にして、バインダー、機能層用組成物、機能層、機能層を備えるセパレータ、負極、正極およびリチウムイオン二次電池を製造した。そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。
機能層用組成物の調製時に、アンモニア水の使用量を変更して、機能層用組成物のpHを9.8にした以外は、実施例1と同様にして、バインダー、機能層用組成物、機能層、機能層を備えるセパレータ、負極、正極およびリチウムイオン二次電池を製造した。そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。
非水系二次電池用バインダー(粒子状重合体の水分散液)の調製時に、連鎖移動剤としてのt−ドデシルメルカプタンの使用量を表1のように変更した以外は、実施例1と同様にして、バインダー、機能層用組成物、機能層、機能層を備えるセパレータ、負極、正極およびリチウムイオン二次電池を製造した。そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。
非水系二次電池用バインダー(粒子状重合体の水分散液)の調製時に、脂肪族共役ジエン単量体としての1,3−ブタジエン、酸基含有単量体としてのアクリル酸、および芳香族ビニル単量体としてのスチレンの使用量を表1のように変更した以外は、実施例1と同様にして、バインダー、機能層用組成物、機能層、機能層を備えるセパレータ、負極、正極およびリチウムイオン二次電池を製造した。そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。
非水系二次電池用バインダー(粒子状重合体の水分散液)の調製時に、脂肪族共役ジエン単量体としての1,3−ブタジエン、酸基含有単量体としてのアクリル酸、および芳香族ビニル単量体としてのスチレンの使用量、並びに連鎖移動剤としてのt−ドデシルメルカプタンの使用量を表1のように変更した以外は、実施例1と同様にして、バインダー、機能層用組成物、機能層、機能層を備えるセパレータ、負極、正極およびリチウムイオン二次電池を製造した。そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。
粒子状重合体の水分散液に替えて、以下のようにして調製されたアクリルバインダーの水分散液を使用した以外は、実施例1と同様にして、機能層用組成物、機能層、機能層を備えるセパレータ、負極、正極およびリチウムイオン二次電池を製造した。そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。
<アクリルバインダーの水分散液の調製>
攪拌機付き5MPa耐圧容器に、酸基含有単量体としてメタクリル酸20部、ブチルアクリレート43部、エチルアクリレート36部、エチレングリコールジメタクリレート1部、反応性界面活性剤としてポリオキシアルケニルエーテル硫酸アンモニウム(商品名「ラテムルPD−104」、(花王株式会社製))、連鎖移動剤としてt−ドデシルメルカプタン0.5部、イオン交換水150部及び重合開始剤として過硫酸カリウム0.5部を入れ、十分に攪拌した後、60℃に加温して重合を開始した。重合転化率が96%になった時点で冷却し反応を停止して、次いでアンモニア水を添加しpH5に調整し、アクリルバインダーの水分散液を得た。
「BaSO4」は、硫酸バリウムを示し、
「BD」は、1,3−ブタジエンを示し、
「AA」は、アクリル酸を示し、
「MAA」は、メタクリル酸を示し、
「ST」は、スチレンを示し、
「BA」は、ブチルアクリレートを示し、
「EA」は、エチルアクリレートを示し、
「EDMA」は、エチレングリコールジメタクリレートを示し、
「TDM」は、t−ドデシルメルカプタンを示す。
また、上述の表1の実施例1〜7より、非水系二次電池用バインダー(粒子状重合体の水分散液)の調製時に、脂肪族共役ジエン単量体、酸基含有単量体、および芳香族ビニル単量体の使用量、並びに連鎖移動剤の使用量を変更することで、機能層用組成物の粘度上昇をさらに抑制し、機能層の水分量をさらに低下させ、そして、バインダーの保存安定性、電解液浸漬前後の機能層の基材との密着性(バインダーの結着性)、および二次電池の高温サイクル特性をより向上させ得ることがわかる。
そして、上述の表1の実施例1、8より、機能層用組成物のpHを調整することで、機能層用組成物の粘度上昇をさらに抑制し、そして、電解液浸漬前後の機能層の基材との密着性(バインダーの結着性)、および二次電池の高温サイクル特性をより向上させ得ることがわかる。
また、本発明によれば、基材との密着性に優れる機能層を形成可能であり、且つ粘度上昇が抑制された非水系二次電池機能層用組成物を提供することができる。
そして、本発明によれば、基材との密着性に優れる非水系二次電池用機能層、および当該非水系二次電池用機能層を備える非水系二次電池を提供することができる。
Claims (6)
- 粒子状重合体および水を含む非水系二次電池用バインダーであって、
前記粒子状重合体は、酸基含有単量体単位を20質量%以上30質量%以下含み、
前記粒子状重合体は、脂肪族共役ジエン単量体単位および芳香族ビニル単量体単位の少なくとも一方を含み、前記脂肪族共役ジエン単量体単位の含有割合および前記芳香族ビニル単量体単位の含有割合の合計が10質量%以上80質量%以下であり、
前記酸基含有単量体単位が、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、およびイタコン酸からなる群より選ばれる少なくとも1つに由来する単量体単位であり、
前記粒子状重合体のpH5における水系媒体に対する膨潤度が2倍未満であり、且つ
前記粒子状重合体のpH8における水系媒体に対する膨潤度が2倍以上7倍以下であり、
前記pH5における水系媒体に対する膨潤度は、前記粒子状重合体の水分散液を25℃で5日間乾燥させることにより作製した1cm×1cmのバインダーフィルム(厚さ500μm)の重量M0と、当該バインダーフィルムをpH5の塩化水素水溶液に60℃、72時間浸漬した後の当該バインダーフィルムの重量M1とを用いて、式:pH5における水系媒体に対する膨潤度=M1/M0にて算出されるものであり、
前記pH8における水系媒体に対する膨潤度は、前記粒子状重合体の水分散液を25℃で5日間乾燥させることにより作製した1cm×1cmのバインダーフィルム(厚さ500μm)の重量M0と、当該バインダーフィルムをpH8の水酸化ナトリウム水溶液に60℃、72時間浸漬した後の当該バインダーフィルムの重量M2とを用いて、式:pH8における水系媒体に対する膨潤度=M2/M0にて算出されるものであることを特徴とする、非水系二次電池用バインダー。 - 前記粒子状重合体は、前記脂肪族共役ジエン単量体単位を10質量%以上60質量%以下含む、請求項1に記載の非水系二次電池用バインダー。
- 前記粒子状重合体は、前記芳香族ビニル単量体単位を10質量%以上60質量%以下含む、請求項1に記載の非水系二次電池用バインダー。
- 請求項1〜3の何れかに記載の非水系二次電池用バインダーおよび非導電性粒子を含み、且つpHが7超である、非水系二次電池機能層用組成物であって、前記非水系二次電池機能層用組成物は、電極合材層の上またはセパレータ基材の上に配置される非水系二次電池用機能層の形成に用いられる、非水系二次電池機能層用組成物。
- 請求項4に記載の非水系二次電池機能層用組成物を用いて形成される、非水系二次電池用機能層であって、電極合材層の上またはセパレータ基材の上に配置される層である、非水系二次電池用機能層。
- 請求項5に記載の非水系二次電池用機能層を備える、非水系二次電池。
Applications Claiming Priority (3)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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