JP6593487B2 - 周期表第13族金属窒化物結晶およびその製造方法 - Google Patents
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Description
近年は、周期表第13族金属窒化物結晶は、発光デバイス用途に加え、電力用半導体素子(パワーデバイス)にも用いられるようになっている。このため、高電圧、大電流に耐え得る周期表第13族金属窒化物結晶の開発が進められている。
また、これらのデバイスは、同種の材料からなり、かつ結晶欠陥の少ない高品質な半導体基板(自立基板)を用いて製造されることが好ましく、このような半導体基板となり得る周期表第13族金属窒化物結晶の製造技術が盛んに研究されている。
HVPE法は、水素気流中でGaの塩化物と周期表第5族元素の水素化物(NH3)を炉内に導入し熱分解させ、熱分解で発生する結晶を基板上に堆積させる方法である(例えば、特許文献1参照)。
一方、アモノサーマル法は、超臨界状態及び/又は亜臨界状態にあるアンモニアなどの窒素を含有する溶媒と、原材料の溶解−析出反応を利用して所望の結晶材料を製造する方法である。結晶成長へ適用するときは、アンモニアなどの窒素含有溶媒への原料溶解度の温度依存性を利用して温度差により過飽和状態を発生させて結晶を析出させる。具体的には、オートクレーブなどの耐圧性容器内に結晶原料や種結晶を入れて密閉し、ヒーター等で加熱することにより耐圧性容器内に高温域と低温域を形成し、その一方において原料を溶解し、他方において結晶を育成することにより、結晶を製造することができる(例えば、特許文献2参照)。
このように周期表第13族金属窒化物結晶に歪みが生じると、転位等の結晶欠陥が増えたりすることによって結晶全体の品質が劣るだけではなく、結晶自体の安定性も悪化するため問題となる。また、該結晶を半導体基板として用いる場合には、熱処理などによって結晶性が悪化したり、その上に積層するデバイス構造の結晶層の品質が劣ったりするため問題となる。
また、本発明者らは、陽電子消滅法におけるSパラメーターが特定範囲内となるような周期表第13族金属窒化物結晶を作成することに成功し、この窒化物結晶中には点欠陥が特定の割合で導入されることを見出した。そして、驚くべきことに、特定範囲内の点欠陥を有する周期表第13族金属窒化物結晶では、点欠陥をほとんど含有しない結晶に比べて、結晶の歪みが極めて少なく、結晶性が極めて良好であることを見出した。
そしてまた、本発明者らは、種結晶の主面のうち少なくとも一部を成長阻害部材で被覆し、被覆されていない開口部から主面に対して垂直な方向に板状の結晶を液相成長法によって成長させることで結晶欠陥や反りやクラックの発生が少なく、加工処理時の割れの発生を抑制可能な周期表第13族金属窒化物結晶を製造できることを見出した。
[1]結晶中に酸素原子と水素原子とを含み、酸素濃度に対する水素濃度の比が0.5〜4.5である、周期表第13族金属窒化物結晶。
[2]水素濃度が1.0×1017〜1.0×1020atoms/cm3である、前記[1]に記載の周期表第13族金属窒化物結晶。
[3]酸素濃度が1.0×1017〜5.0×1019atoms/cm3である、前記[1]または[2]に記載の周期表第13族金属窒化物結晶。
[4]陽電子消滅法により測定されるSパラメーターが0.448以上である、前記[1]〜[3]のいずれか1つに記載の周期表第13族金属窒化物結晶。
[5]陽電子拡散距離が15〜50nmである、前記[4]に記載の周期表第13族金属窒化物結晶。
[6]転位密度(DSD)が5×105cm-2以下であり、積層欠陥密度(SFD)が8×10cm-1以下である、前記[1]〜[5]のいずれか1つに記載の周期表第13族金属窒化物結晶。
[7]前記[1]〜[6]のいずれか1つに記載の周期表第13族金属窒化物結晶から形成される、周期表第13族金属窒化物基板。
[8]主面の少なくとも一部を成長阻害部材で被覆した種結晶を準備する準備工程と、前記種結晶の主面のうち成長阻害部材で被覆されていないライン状の開口部から、種結晶の主面に対して垂直な方向に板状の周期表第13族金属窒化物結晶を液相成長法によって結晶成長させる成長工程とを有する、周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法。
[9]前記ライン状の開口部の幅W1と、前記板状の結晶における、種結晶の主面に対して平行な方向の最小幅W2とがW2>W1の関係を満たす、前記[8]に記載の周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法。
[10]前記ライン状の開口部の長さL1に対する、前記板状の結晶における、種結晶の主面に対して平行な方向の最小長さL2の比が0.5以上である、前記[8]又は[9]に記載の周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法。
[11]前記ライン状の開口部の長さL1に対する、前記板状の結晶における、種結晶の主面に対して垂直な方向の最大高さHの比が0.1以上である、前記[8]〜[10]のいずれか1つに記載の周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法。
[12]前記種結晶が複数のライン状の開口部を有し、前記成長工程において、複数のライン状の開口部からそれぞれ主面に対して垂直な方向に板状の周期表第13族金属窒化物結晶を結晶成長させる、前記[8]〜[11]のいずれか1つに記載の周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法。
[13]前記成長工程において、複数のライン状の開口部から結晶成長した板状の周期表第13族金属窒化物結晶同士が、その側端面で結合するように結晶成長させる、前記[12]に記載の周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法。
[14]前記種結晶の主面が、窒素面である、前記[8]〜[13]のいずれか1つに記載の周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法。
[15]前記成長工程において得た板状の結晶を種結晶として用いて、その主面上に結晶成長させる再成長工程を有する、前記[8]〜[14]のいずれか1つに記載の周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法。
このように、本発明では、高品質であり、かつ結晶の安定性に優れた周期表第13族金属窒化物結晶を得ることができる。
以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。
本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は「〜」前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。また、本明細書においてwtppmとは重量ppmのことを意味する。
また、本願におけるミラー指数は、指数が負である場合に当該指数の前にマイナス記号をつけて表記している。また、本明細書において<・・・・>との表記は方向の集合表現、[・・・・]との表記は方向の個別表現を表す。それに対して{・・・・}との表記は面の集合表現、(・・・・)との表記は面の個別表現を表す。
本明細書において「オフ角」とは、ある面の指数面からのずれを表す角度である。
本明細書において下地基板、種結晶または第13族窒化物結晶の「主面」とは、当該種結晶または第13族窒化物結晶における最も広い面であって、通常は結晶成長が行われるべき面を指す。
また、本明細書において「M面」とは、{1−100}面として包括的に表される非極性面であり、m軸に直交する面である。具体的には(1−100)面や、(01−10)面、(−1010)面、(−1100)面、(0−110)面、(10−10)面を意味する。[M面]は通常は劈開面である。
また、本明細書において「A面」とは、{2−1−10}面として包括的に表される非極性面であり、a軸に直交する面である。具体的には(11−20)面や、(2−1−10)面、(−12−10)面、(−1−120)面、(−2110)面、(1−210)面を意味する。
また、本明細書においてC面、M面、A面や特定の指数面を称する場合には、±0.01°以内の精度で計測される各結晶軸から10°以内のオフ角を有する範囲内の面を含む。好ましくはオフ角が5°以内であり、より好ましくは3°以内である。
周期表第13族金属窒化物結晶としては、例えば、GaNに代表される第13族窒化物結晶が挙げられる。さらに、周期表第13族金属窒化物としては、GaNの他に、AlN、InN、またはこれらの混晶などを挙げることができる。また、混晶としては、AlGaN、InGaN、AlInN、AlInGaNなどを挙げることができる。中でも、好ましいのはGaNおよびGaを含む混晶であり、より好ましいのはGaNである。
また、第13族窒化物結晶中に所望の濃度となるように水素を導入することにより、上記のようなGa空孔などの点欠陥を電荷的に補償することができると考えられる。水素は、点欠陥(空孔)に安定的に取り込まれ、電荷補償機能を発揮するが、第13族窒化物結晶中の点欠陥(空孔)を塞ぐことはないため、結晶全体の電荷のバランスを取りつつも、結晶に生じる歪みを低減することができると考えられる。このように、本発明の第13族窒化物結晶は、酸素を含む量と水素を含む量との調整することで結晶全体の電荷のバランスが良く、かつ結晶性が良好となるため、優れた半導体特性等を有する。
後述する通り、陽電子消滅法におけるSパラメーターや陽電子拡散距離、陽電子寿命は、空孔型の点欠陥と関連する指標であり、これらが上記範囲にあることにより、空孔型の点欠陥を特定の範囲で含む結晶であるといえる。
一方、点欠陥の含有率が多すぎると、結晶全体のバランスが崩れてしまうため、緩衝作用が得られにくい。このため、本発明では、点欠陥密度を1×1017〜1×1018atoms/cm3の範囲内となるようにコントロールすることがより好ましい。
なお、空孔型点欠陥の密度は、後述する計算式を用いて求めることによって算出することができる。
上述したSパラメーター、陽電子拡散距離および陽電子寿命は、陽電子消滅測定法および陽電子寿命測定法に従って算出した値である。以下において、これらの測定法について説明をする。
結晶中では、陽電子はイオン殻から反発力を受け、格子間位置に存在するが、結晶中に空孔型点欠陥が存在する場合は空孔型点欠陥に捕獲される可能性もある。空孔型点欠陥中の電子の電子運動量分布は格子間位置の電子とは異なるので、空孔型点欠陥に捕獲された場合、ドップラー拡がり(ΔEγ)に変化が現れる。従って、陽電子がバルクで消滅したか空孔で消滅したかをγ線のドップラー拡がりから判断することができる。多くの場合、陽電子が空孔型点欠陥に捕獲されることによりΔEγは小さくなり、ドップラー拡がりは先鋭化する。
ドップラー拡がりの変化は、エネルギー分布の鋭さSパラメーター(Sharpness parameter)で評価される。Sパラメーターはドップラー拡がりスペクトルの中央部分のカウントを全カウントで割ったものである。陽電子が空孔型点欠陥に捕獲され、消滅するとSの値は増大することとなる。つまり、空孔密度が高ければ、Sパラメーターは増加することとなる。なお、Sパラメーターの算出は、表面化学vol.26、No.5、pp268〜273(2005年、特集「ゲート絶縁膜/Si界面の評価」)の記載に準じたものである。
また、空孔型点欠陥を有する物質中の電子密度は、点欠陥を有しない物質中での電子密度よりも低くなる。このため、結晶中に入射した陽電子寿命は長くなる。陽電子寿命は、陽電子が物質に入射した時刻と、結晶中で陽電子と電子とが対消滅したことにより物質中から放出される511keVのγ線が放出された時刻との差を測定することで算出することができる。
なお、22Naがβ+崩壊し、陽電子を放出すると、99%以上が22Naの励起状態に移る。次に、この状態から、3×10-12(s)の寿命で1.28MeVのγ線を出して基底状態に遷移する。この1.28MeVのγ線が、陽電子が物質に入射したことを示すシグナルとなり、陽電子が物質に入射した時刻となる。
陽電子拡散距離は、観測されたSパラメーターの陽電子打込みエネルギー依存性(SEプロット)に対して、陽電子の一次元拡散方程式を解析して求めることが出来る。
22Naのβ+崩壊により放出される陽電子は、減速材を通過することによって熱化する。次いで、陽電子は、ソレノイド磁場をかけた真空中を輸送し、0〜数10keVまで加速電圧を変えながら陽電子ビームを固体中に入射させる。その結果、数μmの深さまでのSパラメーターのエネルギー依存性S(E)が測定される。
固体中での陽電子の拡散に関して、ドップラー拡がりが時間に依存せず、固体中での陽電子ドリフトが無視でき、また陽電子が空孔型点欠陥にトラップされることを考慮すると、次式のように時間に依存しない一次元拡散方程式が得られる。
陽電子が空孔型点欠陥に捕獲されることによりSパラメーターは増大する。一方、式(2)と式(4)から、陽電子が点欠陥に捕獲されれば陽電子拡散距離は短くなる。拡散する陽電子は格子間位置や置換位置に存在する不純物や正の電荷を持つ空孔型点欠陥に散乱される可能性がある。このため、空孔型点欠陥は陽電子拡散距離に影響を与えることとなる。
一方、不純物や正の点欠陥が陽電子を捕獲する可能性は低い。この場合、Sパラメーターにはこれらの欠陥の影響は現れないことが多い。Sパラメーターと陽電子拡散距離の違いを利用して、結晶中の点欠陥についてのより深い情報を得ることができる。
Sパラメーターは、下記の式(7)で示される。
従って、式(7)のSfと、S1とがわかれば、f1を算出することができる。ここで、f1は、下記の式(8)で示される。
Ga原子空孔密度の検出限界は、Siの場合の空孔密度の検出下限から類推することができる。Si中の中性の空孔型点欠陥の検出下限は1016cm-3程度であることが良く知られている。ここで、点欠陥が電荷1だけ負に帯電する(−1)と、正の電荷を持つ陽電子がクーロン引力により点欠陥に引き寄せられるので、検出感度は1桁程度あがる。一方、Ga原子空孔は−3に帯電していることが多いので、検出感度は1桁以上あがることになる。一方、イオン性が強い材料中では、陽電子はフォノン拡散の効果を受けやすいと考えられるので、Siや金属よりは陽電子拡散距離が短い可能性がある。たとえば、Siや金属中での陽電子拡散距離は150〜200nmであり、GaN中での陽電子拡散距離が100〜150nm程度であるとすると、GaN中で陽電子が移動することができる空間の下限はSiに比較して(100/200)3=0.125となる.この数値と、Siから類推した検出感度を考慮すると、Ga原子空孔濃度の検出限界は1016cm-3程度となる。
X線回折計で測定されるX線ロッキングカーブ(XRC)は、一般的には、図4(a)および図4(b)に示すように、X線光源200からCu−Kα線を照射し、入射側には、X線ミラー201と、Ge(220)の2結晶ハイブリッドモノクロメータ203(図4(a))またはGe(440)の4結晶モノクロメータ204(図4(b))を配置し、検出器側はオープンディテクタ205を用いて測定する。このような光学系を用いて、(100)反射または(200)反射についてXRC測定を実施してその半値幅を算出することで、結晶250のチルト方向の結晶方位の分布を評価することができる。一方、(102)反射についてXRC測定を実施してその半値幅を算出することで、結晶250のツイスト方向の結晶方位の分布を評価することができる。ここで、(100)、(200)、(102)はX線の回折面を表す。
一般に、図4(a)の中のGe(220)の2結晶ハイブリッドモノクロメータ203におけるGaN(100)反射の半値幅の分解能は、25arcsec程度である。これに対して、図4(b)の中のGe(440)の4結晶モノクロメータ204では、GaN(200)反射の半値幅において、5.3arcsecの分解能を有している。従って、25arcsec以下の半値幅を有するGaN結晶のX線結晶学的な評価は後者の方法で行うことが好ましい。本明細書においては、Ge(220)の2結晶ハイブリッドモノクロメータ203を用いて測定されるX線ロッキングカーブの半値幅を、「X線ロッキングカーブ(XRC)半値幅」と称し、Ge(440)の4結晶モノクロメータ204を用いて測定されるX線ロッキングカーブの半値幅を、「高分解能X線ロッキングカーブ(XRC)半値幅」と称し、区別して表記することとする。
通常、X線回折計で測定されるX線ロッキングカーブ(XRC)の半値幅は、基板面に垂直方向の結晶方位の分布を表すパラメーターであり、測定する反射面に応じてチルト方向またはツイスト方向の結晶方位の分布を検出することができる。結晶中に含まれる転位や積層欠陥の影響を受けて、結晶の配向性にばらつきが生じている場合には、結晶方位の分布は大きくなるためXRCの半値幅も大きくなる。一方、XRC半値幅が小さいほど、結晶方位の分布が小さく、結晶中に転位が少ないことを示している。これは、本明細書中の高分解能XRC半値幅も同様である。本発明では、XRC半値幅を上記上限値以下とすることにより、転位が少なく結晶の配向性に優れた周期表第13族金属窒化物結晶を得ることができる。これにより、良好な結晶性を有し、かつ優れた半導体特性等を有することができる。
また、積層欠陥密度(stacking fault density;SFD)は、積層構造を呈する面状の欠陥の程度を表したパラメーターである。積層欠陥密度(SFD)の値が大きいほど、積層構造にズレや欠陥があり、結晶全体に歪みが発生していることが原因で積層欠陥が発生していると考えられる。本発明では、積層欠陥密度(SFD)は、1×102cm-1以下であることが好ましく、8×101cm-1以下であることがより好ましく、5×101cm-1以下であることがさらに好ましく、1×101cm-1以下であることが特に好ましく、5×100cm-1以下であることが最も好ましい。特に、同一結晶の面内で、5mm間隔で直線上に4点以上の点での積層欠陥密度を測定し、面内平均の積層欠陥密度を算出した場合には、1×102cm-1以下であることが好ましく、8×101cm-1以下であることがより好ましく、5×101cm-1以下であることがさらに好ましい。
以上のように、転位密度(DSD)または積層欠陥密度(SFD)の上限値を上記範囲とすることにより、結晶欠陥が少なく、かつ結晶構造が極めて良好で結晶性の良い結晶を得ることができる。
R=1/k×180×π/1000
本発明の第13族窒化物結晶は、a軸方向の曲率半径が5m以上であることが好ましく、10m以上であることがより好ましい。また、c軸方向の曲率半径が5m以上であることが好ましく、10m以上であることがより好ましい。
曲率半径が大きいものほど結晶格子が平坦に並んでいることになり、転位等の欠陥や割れ等を含まない良質な結晶であるといえる。また、本発明の第13族窒化物結晶にアニールなどの後処理工程を施した場合にも、その前後で曲率半径が大きく変化しないことが好ましい。
(300)面の格子面間隔d300、(120)面の格子面間隔d120、及び(20−3)面の格子面間隔d20-3を、それぞれa軸又はc軸の一方向に多点測定する。この時、測定範囲は4mm以上が好ましく、測定点の数は10点以上が好ましく、各測定点は一定の間隔であることが好ましい。これらの値から、六方晶系結晶における格子面間隔dと格子定数a及びcとの関係式である次式を用いて、主面に対して垂直方向、水平方向の格子定数を算出することができる。ここで、h、k、lは格子面のミラー指数である。
1/d2=4/3((h2+hk+k2)/a2)+l2/c2
主面の法線方向の格子定数を、仮想のa軸の格子定数a⊥として算出する。さらに、主面に平行方向のa軸の格子定数a//、主面に平行方向のc軸の格子定数c//についてもそれぞれ算出する。
格子定数の伸縮は、例えば、主面の法線方向の場合、測定範囲の全ての格子定数a⊥の平均値a⊥aveから、Δa⊥/a⊥ave=|1−a⊥/a⊥ave|で算出する。加えて、Δa///a//ave、Δc///c//aveも同様に計算する。
格子定数の伸縮を小さくすることで、結晶中の残留応力を低減することが可能であり、結晶が有する歪みを小さくすることができる。本発明の第13族窒化物結晶の格子定数の伸縮は、Δa⊥/a⊥ave及びΔa///a//aveは、最大値が、1.5×10-5以下であることが好ましく、標準偏差が6.0×10-6以下であることが好ましい。Δc///c//aveは、最大値が、5.0×10-6以下であることが好ましく、標準偏差が3.0×10-6以下であることが好ましい。
本発明の周期表第13族金属窒化物結晶はアモノサーマル法により形成される。アモノサーマル法とは、超臨界状態および/または亜臨界状態にある溶媒を用いて、原材料の溶解−析出反応を利用して所望の材料を製造する方法である。周期表第13族金属窒化物結晶は下地基板上に、少なくともM面を成長面として結晶成長を行うことで形成されることが好ましい。このため、M面を主面とする下地基板を用いることが好ましいが、この場合の主面はオフ角を有するM面であってもよい。オフ角の範囲としては、好ましくは±15°以内であり、より好ましくは±10°以内であり、さらに好ましくは±5°以内である。
下地基板は、周期表第13族金属窒化物結晶の結晶成長に用いられる公知のものであればその種類は特に限定されず、窒化ガリウム(GaN)、窒化インジウムガリウム(InGaN)、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)等の目的とする周期表第13族金属窒化物結晶と同種のものを用いることができる。また、他にも、サファイア(Al2O3)、酸化亜鉛(ZnO)等の金属酸化物、炭化ケイ素(SiC)、シリコン(Si)等の珪素含有物、又はヒ素ガリウム(GaAs)等を用いることができる。但し、目的の周期表第13族金属窒化物結晶と一致し、若しくは適合した格子定数、結晶格子のサイズパラメータを有する下地基板であるか、またはヘテロエピタキシー(すなわち若干の原子の結晶学的位置の一致)を保証するように配置した単結晶材料片若しくは多結晶材料片から構成されている下地基板を用いることが好ましい。
より具体的には、(i)第13族窒化物結晶の主面と略同じ結晶面を主面とする結晶の側面から横方向成長させる方法としては、複数の成長開始面(側面)を有するシード(種結晶)、例えば、V字型シード、コ字型シード、ロ字型シード、L字型シード、O字型シード、任意の1以上の穴が空いたシードを用いる方法や、結晶成長させたい領域を囲うようにガイドを設ける方法などが挙げられる。また、(ii)第13族窒化物結晶の主面とは異なる結晶面を主面とする種結晶の該主面から成長させる方法としては、主面の一部をマスクで被覆したシード(種結晶)の露出部分から、主面と交差する軸方向に結晶成長させて、種結晶の主面とは異なる結晶面を広げるように結晶成長させる方法;主面の一部に板状部材の側面を密着させたシード(種結晶)から、主面と交差する軸方向に結晶成長させて、種結晶の主面とは異なる結晶面を広げるように結晶成長させる方法、などが挙げられる。さらに、(iii)第13族窒化物結晶の主面とは異なる結晶面を主面とする結晶の側面から成長させる方法としては、国際公開第2008/143166号の図4のように、前記側面から主面の法線方向に伸びるように成長させる方法などが挙げられる。
本発明におけるアモノサーマル法による第13族窒化物結晶の成長に際しては、鉱化剤を用いることが好ましい。アンモニアなどの窒素を含有する溶媒に対する結晶原料の溶解度が高くないために、溶解度を向上させるためにハロゲンやアルカリ金属系の鉱化剤が用いられるが、その種類は特に限定されない。
鉱化剤として、フッ素元素と、塩素、臭素、ヨウ素から構成される他のハロゲン元素から選ばれる少なくとも一つを含む鉱化剤を用いることが好ましい。
例えば、ヨウ素(I)とフッ素(F)を含む鉱化剤の場合、フッ素濃度に対するヨウ素濃度、すなわちI/Fを0.5以上にすることが好ましく、0.7以上にすることがより好ましく、1以上にすることがさらに好ましい。また、I/Fを10以下にすることが好ましく、8以下にすることがより好ましく、5以下にすることがさらに好ましい。
また、成長方向をコントロールすることにより、結晶中に導入される水素および酸素の濃度比率を所望の範囲とすることができ、より結晶性に優れた第13族窒化物結晶を得ることができる。さらに、成長方向をコントロールすることにより、結晶中に導入される点欠陥密度の程度を所望の範囲とすることができ、より結晶性に優れた第13族窒化物結晶を得ることができる。結晶成長面として半極性面が露出している場合には、特に酸素などを結晶中に取り込みやすい傾向があるため、成長方向をコントロールして結晶成長面を制御することが好ましい。
アモノサーマル法に用いられる溶媒には、窒素を含有する溶媒(窒素含有溶媒)を用いる。窒素を含有する溶媒としては、成長させる第13族窒化物単結晶の安定性を損なうことのない溶媒が挙げられる。溶媒としては、例えば、アンモニア、ヒドラジン、尿素、アミン類(例えば、メチルアミンのような第一級アミン、ジメチルアミンのような第二級アミン、トリメチルアミンのような第三級アミン、エチレンジアミンのようなジアミン)、メラミン等を挙げることができる。これらの溶媒は単独で用いてもよいし、混合して用いてもよい。
製造工程においては、下地基板上に成長結晶として成長させようとしている周期表第13族金属窒化物結晶を構成する元素を含む原料を用いる。例えば、周期表第13族金属の窒化物結晶を成長させようとする場合は、周期表第13族金属を含む原料を用いる。
好ましくは周期表第13族金属窒化物結晶の多結晶原料及び/又は周期表第13族金属であり、より好ましくは窒化ガリウム及び/又は金属ガリウムである。多結晶原料は、完全な窒化物である必要はなく、条件によっては周期表第13族元素がメタルの状態(ゼロ価)である金属成分を含有してもよい。例えば、成長させる第13族窒化物結晶が窒化ガリウムである場合には、窒化ガリウムと金属ガリウムの混合物が挙げられる。本発明で得られる周期表第13族金属窒化物結晶の種類としては、GaN、InN、AlN、InGaN、AlGaN、AlInGaNなどを挙げることができる。好ましいのはGaN、AlN、AlGaN、AlInGaNであり、より好ましいのはGaNである。よって、周期表第13族金属窒化物結晶の原料としては、前述の結晶の多結晶原料および/またはこれらのメタルを組合せて用いることができる。
このように、結晶原料に含まれる酸素含有量をコントロールすることで、結晶中に導入される水素および酸素の濃度比率を所望の範囲とすることができ、結晶体に歪みが生じることを抑制することができる。
本発明の周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法に用いることのできる結晶製造装置の具体例を図1および図2に示す。本発明で用いる結晶製造装置は反応容器を含む。
図1は、本発明で用いることができる結晶製造装置の模式図である。図1に示される結晶製造装置では、オートクレーブ(耐圧性容器)1の内部がライニングされており、ライニング3内側を反応容器として結晶成長が行われる。オートクレーブ1の内部は原料を溶解するための原料溶解領域9と結晶を成長させるための結晶成長領域6とから構成されている。その他の部材の設置は、後述する図2の結晶製造装置と同様にすることができる。
さらに、反応容器は耐圧容器であることが好ましい。特に、反応容器の内壁を白金族又は白金族合金とする場合や、反応容器及び設置部材の表面を白金族又は白金族合金でコーティングまたはライニングする場合は、反応容器を形成する他の素材で耐圧性を確保することが好ましい。
白金族以外で耐圧性と耐食性を有する材料としてはTi、W、Ni、Mo、Ru、Nbやその合金を使用することができる。好ましくは、Mo、W、Tiを使用することができる。
白金族としては、Pt、Au、Ir、Ru、Rh、Pd、Agが挙げられる。白金族合金は、これらの貴金属を主成分とする合金のことを言う。白金族合金の中でも優れた耐食性を有するPtまたはPt及びIrを含む合金を用いることが好ましい。
また、反応容器の内壁を白金族又は白金族合金とする場合や、反応容器及び設置部材の表面を白金族又は白金族合金でコーティングする場合は、コーティング材はPt及びGaを含む合金を用いることが好ましく、さらにIrを含む合金を用いることが好ましい。これらの白金族を含有する合金は、コーティングに適しており、優れた耐食性を持たせることができる。
合金中のIr含有率は合金の全体重量の30重量%以下であることが好ましく、25重量%以下であることがより好ましい。Ir含有率を上記上限値以下とすることにより、反応容器に優れた耐食性を持たせることができる。
本発明の周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法に係る結晶成長の一例について説明する。本発明の第13族窒化物結晶の製造方法を実施する際には、まず、反応容器内に、下地基板(または種結晶)、窒素を含有する溶媒、原料、及び鉱化剤を入れて封止する。
また、種結晶としては、その主面の少なくとも一部を成長阻害部材で被覆したものを用いることができる。種結晶としては、その主面の少なくとも一部を成長阻害部材で被覆したものを用いる方法の詳細については後述する。なお、一度、板状の結晶を成長したあと、再度育成をする際には、成長阻害部材は種結晶の主面上に残っていても、剥がれていてもよい。
その後、全体を加熱して反応容器内を超臨界状態及び/又は亜臨界状態とする。超臨界状態では一般的には、物質の粘度が低くなり、液体よりも容易に拡散されるが、液体と同様の溶媒和力を有する。亜臨界状態とは、臨界温度近傍で臨界密度とほぼ等しい密度を有する液体の状態を意味する。例えば、原料充填領域では、超臨界状態として原料を溶解し、結晶成長領域では亜臨界状態となるように温度を変化させて超臨界状態と亜臨界状態の原料の溶解度差を利用した結晶成長も可能である。
また、周期表第13族金属窒化物結晶の成長速度を一定速度以上とすることにより、より大面積の主面を有する板状結晶が得られる傾向がある。
反応中、反応温度は一定にしてもよいし、徐々に昇温又は降温させることもできる。所望の結晶を生成させるための反応時間を経た後、反応温度を降温させる。降温方法は特に限定されないが、ヒーターの加熱を停止してそのまま炉内に反応容器を設置したまま放冷してもかまわないし、反応容器を電気炉から取り外して空冷してもかまわない。必要であれば、冷媒を用いて急冷することも好適に用いられる。
成長面として多くのファセット面が出ないように制御するためには、結晶中に取り込まれる酸素濃度を一定値以下にすることが好ましい。そのためには原料として用いる多結晶窒化ガリウム中に含まれる酸素濃度が1×1019atoms/cm3以下であることが好ましく、8×1018atoms/cm3以下であることがより好ましく、5×1018atoms/cm3以下であることが特に好ましい。
また、結晶成長を一定の成長方向とするためには、例えば、鉱化剤の種類や量を調整したり、下地基板の表面状態をコントロールすることもできる。
なお、上述の結晶成長を実施した後に、再度反応容器内に窒素を含有する溶媒、原料及び鉱化剤を入れて封止して、種結晶の主面に対して垂直な方向に複数回繰り返し結晶成長させてもよい。この場合、種結晶と板状結晶とが一体となった結晶体を、種結晶として用いてもよい。
アニール処理の時間は特に限定されないが、5.5時間以上であることが好ましく、8時間以上であることがより好ましく、10時間以上であることがさらに好ましく、12時間以上であることが特に好ましい。また、300時間以内であることが好ましく、150時間以内であることがより好ましく、120時間以内であることがさらに好ましく、100時間以内であることが特に好ましい。
前述した第13族窒化物結晶の種々の特性は、アニール処理の前後で大きく変化しないことが好ましい。
前述した本発明の製造方法によって、1つの種結晶から複数の板状結晶を簡便に得ることができる。板状結晶の形状は特に限定されないが、主面の面積が0.5cm2以上であることが好ましく、1cm2以上であることがより好ましく、1.5mm2以上であることがさらに好ましく、また、通常80cm2以下である。また、板状結晶の厚みが50μm以上であることが好ましく、100μm以上であることがより好ましく、200μm以上であることがさらに好ましく、500μm以上であることがさらに好ましい。前記下限値以上とすることで板状結晶を切出す際に割れにくくなる傾向がある。
周期表第13族金属窒化物結晶のキャリア濃度は、GaN結晶の場合、通常1.0×1017cm-3以上、好ましくは5.0×1017cm-3以上であり、通常1×1019cm-3以下、好ましくは8.0×1018cm-3以下である。
周期表第13族金属窒化物結晶のX線回折の(100)回折ピークのロッキングカーブの半値幅は、通常50arcsec以下、好ましくは40arcsec以下、より好ましくは30arcsec以下、さらに好ましくは25arcsec以下である。
周期表第13族金属窒化物結晶の曲率半径は、通常5m以上、好ましくは10m以上、より好ましくは20m以上であり、さらに好ましくは50m以上である。
周期表第13族金属窒化物結晶の積層欠陥密度は、通常100cm-1以下、好ましくは50cm-1以下、より好ましく20cm-1以下である。
なお、積層欠陥密度は、カソードルミネッセンス法(SEM−CL法)によって測定できるほか、低温PL測定によって見積もることができる。
以下、発明の周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法について具体的に説明する。
本発明の周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法は、「主面の少なくとも一部を成長阻害部材で被覆した種結晶を準備する準備工程」及び「種結晶の主面のうち成長阻害部材で被覆されていないライン状の開口部から、種結晶の主面に対して垂直な方向に板状の周期表第13族金属窒化物結晶を液相成長法によって結晶成長させる成長工程」を有することを特徴とする。
なお、本発明において板状結晶とは、ライン状の開口部から成長した結晶であって、種結晶の主面に対して垂直な方向の最大高さHと、種結晶の主面に対して平行な方向の最小幅W2とがH>W2の条件を満足する形状の結晶を意味する。
本発明の周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法に係る準備工程は、「主面の少なくとも一部を成長阻害部材で被覆した種結晶を準備する」工程である。準備工程は、種結晶の主面の少なくとも一部を成長阻害部材で被覆する工程であってもよく、既に主面の少なくとも一部が成長阻害部材で被覆された種結晶を入手する工程であってもよい。
本発明の製造方法における種結晶は、例えば、GaNに代表される周期表第13族金属窒化物、または、サファイア、Si、SiC、Ga2O3、GaAs、ZnO(酸化亜鉛)などの基板が挙げられ、周期表第13族金属窒化物、サファイア、GaAs、酸化亜鉛、SiおよびSiCからなる群から選ばれる少なくとも1種の結晶であることが好ましい。また、周期表第13族金属窒化物の中でも、その上に成長させる周期表第13族金属窒化物結晶と同種の結晶であることが好ましい。例えば、GaN結晶を成長させようとしている場合は、種結晶もGaN基板であることが好ましい。周期表第13族金属窒化物結晶としては、GaNの他に、AlN、InN、またはこれらの混晶などを挙げることができる。混晶としては、AlGaN、InGaN、AlInN、AlInGaNなどを挙げることができる。好ましいのはGaNおよびGaを含む混晶であり、より好ましいのはGaNである。なお、種結晶として、その上に成長させる周期表第13族金属窒化物結晶と異種の結晶を含む基板を用いる場合には、異種の結晶上にその上に成長させる周期表第13族金属窒化物結晶と同種の結晶からなる結晶層を形成したもの(テンプレート基板)を用いることが好ましい。
種結晶の主面の最大径は10mm以上であることが好ましく、15mm以上であることがより好ましく、20mm以上であることがさらに好ましく、通常、150mm以下である。前記下限値以上とすることで、得られる板状結晶の主面の大きさをより大きなものとすることができる傾向がある。なお、主面の最大径とは、主面の形状が円形の場合にはその直径を、円形以外の形状の場合には主面における最大長さを意味する。
種結晶の結晶成長方法については何ら限定されないが、種結晶としてGaN等の周期表第13族金属窒化物結晶を用いる場合には、ハイドライド気相成長法(HVPE法)、有機金属化学蒸着法(MOCVD法)、有機金属塩化物気相成長法(MOC法)、分子線エピタキシー法(MBE法)等の気相成長法で成長させた結晶であってもよく、液相エピタキシー法(LPE法)、フラックス法、アモノサーマル法(本明細書において、アモノサーマル法を液相成長法に分類して取り扱うものとする。)等の液相成長法で成長させた結晶であってもよい。この中でも、主面面積が大面積の種結晶を用いるとの観点からはHVPE法で得た結晶が好ましく、また、得られる板状結晶の結晶品質を向上するとの観点からはアモノサーマル法で得た結晶であることが好ましい。
本発明の製造方法における成長阻害部材はマスクとして機能する部材であり、種結晶の主面上の周期表第13族金属窒化物結晶の成長を抑制するために設けられる。成長阻害部材は、種結晶の主面表面が露出しているライン状の開口部が残るように種結晶主面表面上に部分的に形成される。前記成長阻害部材の材料としては、反応中に溶解したり、分解しなければ特に限定されるものではないが、例えば、Ca、Mg、Si、Al、W、Mo、Ti、Pt、Ir、Ag、Au、Ta、Ru、Nb、Pd、やそれらの合金、あるいは酸化物や窒化物、フッ化物などが挙げられる。
また、ライン状の開口部の長手方向については何ら限定されないが、例えば{0001}面を主面とする種結晶を用いた場合、{10−10}面を主面とする板状結晶を得るためには、開口部の長手方向を<11−20>方向とすればよく、{11−20}面を主面とする板状結晶を得るためには、開口部の長手方向を<10−10>方向とすればよい。
同様に、{10−10}面を主面とする種結晶を用いた場合、{0001}面を主面とする板状結晶を得るためには、開口部の長手方向を<11−20>方向とすればよい。また、{11−20}面を主面とする種結晶を用いた場合、{0001}面を主面とする板状結晶を得るためには、開口部の長手方向を<10−10>方向とすればよい。
また、ライン状の開口部を複数設ける場合、その数や配置については何ら限定されないが、ライン状の開口部同士が略平行になるように複数本形成してもよい。この場合、複数本形成された開口部のピッチについては何ら限定されないが、500μm以上であることが好ましく、1mm以上であることがより好ましく、2mm以上であることがさらに好ましく、4mm以上であることが特に好ましい。前記下限値以上とすることで結晶成長中の板状結晶同士の接触や会合を防止できる傾向がある。
また、板状結晶の収率はピッチが狭い方が高く、50mm以下であることが好ましく、20mm以下であることが特に好ましい。
また、種結晶の主面のうち、成長阻害部材で被覆されている割合については特に限定されないが、90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましく、また、通常99.99%以下である。前記下限値以上とすることで、種結晶から成長した板状結晶への反りや結晶欠陥の伝播を抑制できる傾向がある。
本発明の周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法に係る成長工程は、「種結晶の主面のうち成長阻害部材で被覆されていないライン状の開口部から、種結晶の主面に対して垂直な方向に板状の周期表第13族金属窒化物結晶を液相成長法によって結晶成長させる」工程である。
また、成長させる板状結晶の数については特に限定されないが、前記開口部の数と同数の板状結晶を成長させることができる。例えば、複数の開口部を設けた種結晶を用いた場合には、それぞれの開口部から主面に対して垂直な方向に板状結晶を結晶成長させることができる。
下地基板上に結晶成長した周期表第13族金属窒化物結晶を、スライス、研削、研磨など加工処理を行うことによって、周期表第13族金属窒化物基板とすることができる。
本発明の製造方法により得られた周期表第13族金属窒化物基板は、デバイス、即ち発光素子や電子デバイス、パワーデバイスなどの用途に好適に用いられる。本発明の周期表第13族金属窒化物結晶やウエハが用いられる発光素子としては、発光ダイオード、レーザーダイオード、それらと蛍光体を組み合わせた発光素子などを挙げることができる。また、本発明の周期表第13族金属窒化物結晶や基板(ウエハ)が用いられる電子デバイスとしては、高周波素子、高耐圧高出力素子などを挙げることができる。高周波素子の例としては、トランジスター(HEMT、HBT)があり、高耐圧高出力素子の例としては、サイリスター(SCR、GTO)、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)、ショットキーバリアダイオード(SBD)がある。本発明のエピタキシャルウエハは、耐圧性に優れるという特徴を有することから、上記のいずれの用途にも適している。
[下地基板の準備]
本実施例では、まず、図2に示すような反応装置を用いて下地基板を得るための結晶成長を行った。結晶成長には、ニッケル基合金製のオートクレーブ1を耐圧性容器として用い、Pt−Ir製カプセル20を反応容器として用いた。
原料8として多結晶GaN粒子をカプセル下部領域(原料溶解領域9)内に設置し鉱化剤として高純度のNH4Fをカプセル内に投入した。さらに下部の原料溶解領域9と上部の結晶成長領域6の間には白金製のバッフル板5を設置した。種結晶7として、HVPE法で得られた直径50mmのC面基板を、白金製のワイヤーとシード支持枠を用いて吊るし、カプセル上部の結晶成長領域6に設置した。種結晶7の主面(N面)表面には、長手方向がa軸方向に平行(M面に平行)である100μm幅(W1)の細長いライン状の開口部が1000μmの間隔(ピッチ)で配置されるようにマスクをTiW合金で形成し、細長い開口部から、主面(N面)表面のCMP仕上げされた領域を一部露出させた。次いで、以下に示す手順で、細長い開口部から−c軸方向(<000−1>、N方向)へ成長させることによりM面が広がるように結晶成長させた。
その後、バルブを開けて真空脱気し、真空状態を維持しながらオートクレーブ1をドライアイスエタノール溶媒によって冷却し、導管をNH3ボンベ12に通じて外気に触れることなくNH3をオートクレーブ1に充填した後、再びバルブ10を閉じた。
オートクレーブ1内部の平均温度が600℃、内部の温度差(|ΔT|)が20℃になるようにオートクレーブ1外面温度で制御しながら昇温し、設定温度に達した後、その温度にて20日間保持した。オートクレーブ1内の圧力は215MPaであった。また保持中のオートクレーブ1外面制御温度のバラツキは±0.3℃以下であった。
上記窒化ガリウム結晶より、c軸に沿ってM面を主面とする窒化ガリウムウエハを複数切り出すことができた。このウエハを主面であるM面の表裏と4側面をエッチングしてダメージを除去し、更にM面の表裏をミラー研磨した。得られた両面研磨結晶のX線回折測定を行い、結晶系は六方晶系で立方晶GaNは含まれていないことを確認した。
上述したように作製したM面を主面とする長辺35mm×短辺7mm、厚み330μmのウエハを下地基板として用いて、下地基板上に第13族窒化物結晶の成長を行った。下地基板は、主としてM面を成長面としてホモ成長させるため主面(M面)全面をCMP仕上げしたものを用いた。第13族窒化物結晶の成長は、前述の[下地基板の準備]における結晶成長と同様にしてアモノサーマル法にて行った。各実施例では、原料中の酸素濃度、鉱化剤の種類とアンモニア溶媒に対するハロゲン濃度、成長温度、成長圧力を表1に示す通りとして、結晶成長を行った。
取り出した結晶を観察したところ、M面を主面とする窒化ガリウム結晶が成長しており、そのサイズはc軸10mm×a軸40mm×m軸6mm程度であった。
得られた窒化ガリウム結晶からM面を主面とする板状結晶を複数切り出し、主面であるM面の表裏と4側面をエッチングしてダメージを除去し、更にM面の表裏をミラー研磨して、GaN結晶Aを得た。得られGaN結晶AのX線回折測定を行い、結晶系は六方晶系で立方晶GaNは含まれていないことを確認した。
上記の通り得られた、主面がM面の表面研磨されたGaN結晶Aを、グラファイトを基材とする表面コートされたサセプターに載せてアニール炉の中へ入れた。その後、アニール炉内の雰囲気を空気から窒素へ切り替えた。その後に炉内雰囲気ガスを窒素90%、アンモニア10%とし、ヒーターの電源を入れて温度調節系のプロクラムを起動して1000℃まで昇温した。その時の昇温速度は100〜1000℃/時間の範囲とした。1000℃に到達後に50時間保持し、その後に100〜300℃/時間の冷却速度で冷却した。炉内雰囲気ガスは、昇温開始時から300℃に冷却するまで同じ組成に維持した。アニール炉の温度が300℃を示したときにアンモニアの供給を停止し、炉内温度が室温になったところで、アニール炉を開けて窒化ガリウム結晶を取りだし、GaN結晶Bを得た。
アニール前に目視で黄色に着色していた結晶は、色が薄くなり透明度が増して着色改善効果があることが確認できた。
アニール処理の前後で得られたGaN結晶AおよびGaN結晶Bについては、下記の項目の物性値に関して各々評価を行った。
実施例1−1〜1−8で得られたアニール処理後の窒化ガリウム結晶であるGaN結晶B中のH、Oの濃度をSIMS分析により定量分析を行った。装置は、CAMECA社製の二次イオン質量分析計(SIMS)IMS4fを使用した。分析条件は、一次イオンビームはCs、一次イオンエネルギーは14.5keV、2次イオン極性は負とした。本条件における検出限界は、いずれもHが1×1017〜2×1017atoms/cm3、Oが1×1016〜2×1016atoms/cm3であった。得られた窒化ガリウム結晶の水素濃度と酸素濃度は表1に示した。実施例1−1〜1−8では、酸素濃度に対する水素濃度の比率(H/O)が0.5〜4.5の間であった。
実施例1−1〜1−4、1−6で得られたGaN結晶Bについて、積層欠陥密度(SFD)を以下の方法で測定した。5kV、500pA、200倍視野で低温カソードルミネッセンス(LTCL)観察にて評価した。なお、積層欠陥密度(SFD)は、低温PL測定によって見積もることもできる。
LTCL観察像のC面と平行方向に存在する横線が積層欠陥である。測定は、主面であるM面内で数箇所、場所を変えて測定を行ったが、いずれも、積層欠陥密度は0cm-1であった。
実施例1−2に準ずる方法により作製したGaN結晶A、GaN結晶Bおよび実施例1−6で得られたGaN結晶Aについて、明細書中に詳述した方法により、Sパラメーター、陽電子拡散距離、および陽電子寿命の測定を行った。
実施例1−2に準ずる方法により作製したGaN結晶AのSパラメーターは0.454であり、陽電子拡散距離は30±1nmであった。一方、GaN結晶BのSパラメーターは0.452であり、陽電子拡散距離は32±1nmであり、アニール前とほとんど変わらなかった。
実施例1−6で得られたGaN結晶Aでは、Sパラメーターおよび陽電子拡散距離を結晶中の異なる2点で計測した。それぞれのSパラメーターは0.452または0.453であり、陽電子拡散距離は29±3nmまたは35±4nmであった。また、陽電子寿命はτ1が136.7±6psであり、τ2が214.5±4psであった。
X線ロッキングカーブ(XRC)は、PANalytical社製の高分解能X線回折計で測定した。図4に示すように、X線光源200からCu−Kα線を照射し、入射側には、X線ミラー201と、Ge(220)の2結晶ハイブリッドモノクロメータ203又はGe(440)の4結晶モノクロメータ204を配置し、検出器側はオープンディテクタ205を用いた。このような光学系を用いて、前者分光結晶ではGaN(100)反射とGaN(102)反射、後者分光結晶ではGaN(200)反射とGaN(102)反射についてロッキングカーブ測定を実施し、結晶250のチルト及びツイスト方向の結晶方位分布を評価した。ここで、(100)、(200)、(102)はX線の回折面を表す。
前者の分光結晶で測定したXRCの半値幅を「XRC半値幅」として、後者の分光結晶で測定したXRCの半値幅を「高分解能XRC半値幅」として、実施例1−1〜1−8の結果を表2に示した。
なお、X線ロッキングカーブ(XRC)の半値幅が小さいことは、結晶に転位が少なく、結晶の配向性が良好であることを表している。XRC半値幅が25arcsec以下である結晶は、高分解能XRC半値幅は25arcsec以下であると推定され、15arcsec以下であることが好ましい。
実施例1−3で得られたアニール前後の窒化ガリウム結晶であるGaN結晶AおよびGaN結晶BのXRC半値幅を測定した。GaN結晶AのGaN(100)反射のXRC半値幅は23.8arcsecであり、GaN(102)反射のXRC半値幅は22.3arcsecであって、GaN結晶BのGaN(100)反射のXRC半値幅は28.2arcsecであり、GaN(102)反射のXRC半値幅は20.6arcsecであり、アニール前後で大きな変化はなかった。いずれも装置の分解能程度の良好な値を示したため、高分解XRC半値幅はさらに小さい値を示すと推察される。
実施例1−6で得られたGaN結晶Aの高分解XRC半値幅を測定した。GaN(200)反射の高分解能XRC半値幅は6.9arcsecであり、GaN(102)反射の高分解能XRC半値幅は9.2arcsecであり、極めて結晶性が良好であることが分かった。
また、実施例1−6で得られたアニール後の窒化ガリウム結晶であるGaN結晶BのGaN(100)反射のXRC半値幅は25.4arcsecであり、GaN(102)反射のXRC半値幅は28.4arcsecであり、アニール前後で結晶性は変化せず、また、十分に結晶性は良好であることが分かった。
実施例1−1〜1−8で得られたGaN結晶BのGaN(100)反射、GaN(102)反射のXRC半値幅は、1点を除き30arcsec未満でありきわめて結晶性が良好であることが分かった。
結晶の酸素濃度が他と比較して高かった実施例1−5のGaN結晶BはGaN(100)反射のXRC半値幅は34.2arcsecと若干大きい値を示したが、GaN(102)反射のXRC半値幅は、24.3arcsecとよい値を示しており、半導体基板としては十分な結晶性を備えていること確認した。
曲率半径は1軸ステージ(x軸)又は2軸ステージ(x−y)のある高精度クレードルを有したPANalytical社製の高分解能X線回折計を用いて測定した。試料を一軸方向(x方向)に0.5〜5mm間隔で移動し、各ポイントで測定したX線ロッキングカーブから最大強度を与えるω値を算出し、移動距離xに対するω値をプロットし、最小自乗法でグラフの傾きkを算出した。傾きkから次式にて曲率半径R[m]を算出した。
R=1/k×180×π/1000
実施例1−1〜1−6の窒化ガリウム結晶について、a軸方向およびc軸方向についてそれぞれ測定した曲率半径を表2に示す。曲率半径が大きいものほど結晶格子が平坦に並んでいることになり、転位等の欠陥や割れ等を含まない良質な結晶であるといえる。
吸光係数は、結晶中の不純物濃度や点欠陥密度と関係しており、結晶の透明度を表す指標となる。吸光係数が445nmの波長に対して1以下の範囲内であることは、不純物濃度や点欠陥密度が所望の範囲内にあり、かつ、結晶の透明度が一定以上あることを表す。
実施例1−1〜1−3、1−6〜1−8で得られたアニール前後の窒化ガリウム結晶について、積分球の中に405nm、445nmのレーザー光線をそれぞれ照射した時の吸収特性を評価し、Lambert−Beer則から吸収係数を求めた。積分球内で測定することで吸収以外の損失ファクターを排除することができる。結果を表2に示した。なお、測定に用いた窒化ガリウム結晶の厚みは約275μmである。
CL観察において結晶内の暗点密度を求めることにより、転位密度(DSD)を算出することができる。
実施例1−2に準ずる方法により得られたアニール前後の窒化ガリウム結晶について、転位密度を測定した。転位密度は3kV、100pA、1000倍視野でカソードルミネッセンス(CL)観察にて暗点の数を計測し、密度を算出することで評価した。
暗点密度が小さいことは、結晶中の転位密度が小さいことを表し、結晶に歪みが発生していないことを表している。転位密度(DSD)は、2×105以下であることが好ましい。
実施例1−2に準ずる方法により得られたGaN結晶Aの転位密度は1.9×105cm-2であり、GaN結晶Bの転位密度は1.2×105cm-2であって、アニール前後で大きな変化はなくいずれも転位密度が低く良好な結晶であった。
[下地基板の準備]
サファイア基板上に有機金属化学堆積(MOCVD)法により窒化ガリウム(GaN)を成長させた。ノンドープで主面をC面とするGaNテンプレートを準備し、テンプレート上にSi3N4のマスクを形成し、マスクの開口部を通じるエピタキシャル横方向過度成長でC面−GaN層を成長させて、種基板を準備した。
次いで、図3に示すようなHVPE装置を用い、種基板110のC面−GaN層が上面に露出するようにサセプター107上に配置した。このときのガス導入管104の先端と下地基板の距離は、9cmとした。その後、反応室の温度を1010℃まで上げ、GaN単結晶を成長させた。この成長工程においては成長圧力を1.01×105Paとし、GaClガスの分圧を6.55×102Paとし、NH3ガスの分圧を7.58×103Paとした。成長時間は64時間とした。
成長終了後、室温まで降温し、GaN単結晶を得た。種基板上に厚さが8.3mmであって主面がC面であるGaN単結晶(以下、C面−GaN単結晶と称する)が得られた。C面−GaN単結晶の厚みと成長時間から成長速度を算出したところ、130μm/hであった。
得られた両面研磨結晶のX線回折測定を行い、結晶系は六方晶系で立方晶GaNは含まれていないことを確認した。
上述したように作製した下地基板の中から長辺20mm×短辺10mmの四角形、および330μmの厚さを有する単結晶GaNを下地基板として用いた。図2に示すような反応装置を用いて下地基板上に窒化物結晶の成長を行った。
各比較例では、下地基板を上述のものとし、原料中の酸素濃度、鉱化剤の種類とアンモニア溶媒に対するハロゲン濃度、成長温度、成長圧力を表1に示す通りとした以外は、実施例1−1〜1−8と同様にして結晶成長を行った。
取り出した結晶を観察したところ、M面を主面とする窒化ガリウム結晶が成長しており、そのサイズはc軸11mm×a軸20mm×m軸1.8mm程度であった。
得られた窒化ガリウム結晶からM面を主面とする板状結晶を複数切り出し、主面であるM面の表裏と4側面をエッチングしてダメージを除去し、更にM面の表裏をミラー研磨して、GaN結晶Aを得た。得られたGaN結晶AのX線回折測定を行い、結晶系は六方晶系で立方晶GaNは含まれていないことを確認した。
実施例1−1〜1−8に記載の[アニール処理]と同様にして、得られた主面がM面であり、表面研磨されたGaN結晶Aのアニールを行い、GaN結晶Bを得た。
アニール処理の前後で得られたGaN結晶AおよびGaN結晶Bについては、下記の項目の物性値に関して各々評価を行った。
比較例1−1〜1−5で得られたアニール処理後の窒化ガリウム結晶であるGaN結晶B中のH、Oの濃度をSIMS分析により定量分析を行った。装置は、CAMECA社製の二次イオン質量分析計(SIMS)IMS4fを使用した。分析条件は、一次イオンビームはCs、一次イオンエネルギーは14.5keV、2次イオン極性は負とした。本条件における検出限界は、いずれもHが1×1017〜2×1017atoms/cm3、Oが1×1016〜2×1016atoms/cm3であった。得られた窒化ガリウム結晶の水素濃度と酸素濃度は表1に示した。比較例1−1〜1−5では、酸素濃度に対する水素濃度の比率(H/O)は0.5未満であるか4.5を超える値であった。
比較例1−5に準ずる方法により得られたGaN結晶Bについて5kV、500pA、200倍視野で低温カソードルミネッセンス(LTCL)観察にて評価した。LTCL観察像のC面と平行方向に存在する横線が積層欠陥である。測定は一箇所しか行わなかったが、積層欠陥密度は100cm-1であった。比較例1−1〜1−5で得られたGaN結晶Bについても、同様に積層欠陥密度は100cm-1程度である。
実施例1−1〜1−8に記載した方法と同様にして、比較例1−5に準ずる方法により得られたアニール前後の窒化ガリウム結晶であるGaN結晶AおよびBについて、XRC半値幅の測定を行った。
GaN結晶AのGaN(100)反射のXRC半値幅は22.4arcsec、GaN(102)反射のXRC半値幅は24.1arcsecあり、GaN結晶BのGaN(100)反射のXRC半値幅は85.3arcsec、GaN結晶BのGaN(102)反射のXRC半値幅は105.4arcsecであった。このことより、比較例1−5に準ずる方法により得られたGaN結晶はアニール処理によってチルト方向およびツイスト方向の結晶方位の配向性が悪化したことが分かり、GaN結晶AおよびBは結晶中に残留応力を内包する安定性に劣る結晶であることが分かった。
また、比較例1−1、比較例1−4で得られたGaN結晶Aおよび比較例1−3で得られたGaN結晶Bについて、XRC半値幅の測定を行ったところ、GaN(100)反射およびGaN(102)反射のXRC半値幅は40arcsecを超える値を示し、結晶性が良くないことが確認された。
実施例1−1〜1−8に記載した方法と同様にして、比較例1−3で得られたGaN結晶Bと比較例1−5に準ずる方法により得られたアニール前後の窒化ガリウム結晶であるGaN結晶AおよびGaN結晶Bについて、曲率半径を測定した結果を表2に示す。
実施例1−1〜1−3、1−6〜1−8に記載した方法と同様にして、比較例1−5に準ずる方法により得られたアニール前後の窒化ガリウム結晶であるGaN結晶AおよびGaN結晶Bについて、吸収係数を測定した結果を表2に示す。
比較例1−1〜1−5に記載の[下地基板の準備]と同じ方法で得られた結晶から、主面として、(10−10)面から[0001]方向に0°、[−12−10]方向に0°のオフ角を有する面となる様に、スライスを行い、小片基板を複数枚得た。続いて主面であるM面の表裏と4側面をエッチングしてダメージを除去し、更にM面の表裏をミラー研磨して、GaN結晶Aを得た。得られたGaN結晶AのX線回折測定を行い、結晶系は六方晶系で立方晶GaNは含まれていないことが確認された。比較例1−6については、ホモ成長工程を設けず、物性等について分析評価を行った。
GaN結晶Aについては、下記の項目の物性値に関して各々評価を行った。
比較例1−6、1−7で得られたGaN結晶Aについて5kV、500pA、200倍視野で低温カソードルミネッセンス(LTCL)観察にて評価した。LTCL観察像のC面と平行方向に存在する横線が積層欠陥であり、積層欠陥密度は80〜100cm-1程度であった。
実施例1−1〜1−6に記載した方法と同様にして、比較例1−6により得られたアニール前後の窒化ガリウム結晶であるGaN結晶Aについて、XRC半値幅の測定を行った。
GaN結晶AのGaN(100)反射のXRC半値幅は42.3arcsec、GaN(102)反射のXRC半値幅は32.5arcsecであった。このことより、比較例1−6により得られたGaN結晶は結晶性が良くないことが確認された。
比較例1−6、1−7で得られたGaN結晶について、明細書中に詳述した方法により、Sパラメーター、陽電子拡散距離、および陽電子寿命の測定を行った。
比較例1−6で得られたGaN結晶AのSパラメーターは0.441〜0.444であり、陽電子拡散距離は99nmであった。また、比較例1−7で得られた別のGaN結晶Aでは、Sパラメーターは0.438であり、陽電子寿命はτ1が147.4psで、τ2で表される陽電子寿命の値は検出されなかった。よって、これらの値から算出される空孔型点欠陥密度は検出限界である1×1016atms/cm3未満であると見積もられた。これは、実質的にはほとんど空孔型点欠陥密度を含まない結晶であると推察される。
[下地基板の準備]
比較例1−1〜1−5に記載の[下地基板の準備]と同じ方法で得られた結晶から、主面として、(10−10)面から[0001]方向に0°、[−12−10]方向に0°のオフ角を有する面となる様に、スライスを行い、小片基板を複数枚得た。続いて主面であるM面の表裏と4側面をエッチングしてダメージを除去し、更にM面の表裏をミラー研磨して、下地基板を得た。得られた下地基板のX線回折測定を行い、結晶系は六方晶系で立方晶GaNは含まれていないことが確認された。
上記のように得られた下地基板を、図3に示すようなHVPE装置のサセプター107上に置き、反応室の温度を850℃まで上げ、15分間保持した。その後、周期表第13族金属原料であるGaClと窒素原料であるNH3を主面方向から供給し、成長温度950℃(昇温速度:21℃/min)まで昇温して、該温度に到達後GaNを30時間成長させた。この成長工程においては成長圧力を1.01×105Paとし、GaClガスの分圧を3.54×102Paとし、NH3ガスの分圧を1.13×104Paとし全体のガス流量中の不活性ガス(N2)の割合を48体積%とした。成長工程が終了後室温まで降温し、窒化ガリウム結晶を得た。
GaN結晶Aについては、下記の項目の物性値に関して各々評価を行った。
比較例1−8の窒化ガリウム結晶中のH、Oの濃度をSIMS分析により定量分析を行った。装置は、CAMECA社製の二次イオン質量分析計(SIMS)IMS4fを使用した。分析条件は、一次イオンビームはCs、一次イオンエネルギーは14.5keV、2次イオン極性は負とした。本条件における検出限界は、いずれもHが1×1017〜2×1017atoms/cm3、Oが1×1016〜2×1016atoms/cm3であった。比較例1−8では、水素濃度と酸素濃度が検出限界以下であり、酸素濃度に対する水素濃度の比率(H/O)を算出することができなかった。
比較例1−8で得られたGaN結晶Aについて5kV、500pA、200倍視野で低温カソードルミネッセンス(LTCL)観察にて評価した。LTCL観察像のC面と平行方向に存在する横線が積層欠陥であり、積層欠陥密度は1.5×102cm-1であった。
比較例1−8で得られたGaN結晶について、明細書中に詳述した方法により、Sパラメーター、陽電子拡散距離、および陽電子寿命の測定を行った。
比較例1−8で得られたGaN結晶AのSパラメーターは0.441〜0.444であり、陽電子拡散距離は86nmであった。ここから算出される空孔型点欠陥密度は1×1016atms/cm3未満であると見積もられた。これは、実質的にはほとんど空孔型点欠陥密度を含まない結晶であると推察される。
比較例1−8で得られたGaN結晶Aについて、実施例1−1〜1−6の記載と同様にして転位密度を測定した。転位密度は3kV、100pA、1000倍視野でカソードルミネッセンス(CL)観察にて暗点の数を計測し、密度を算出することで評価した。
比較例1−8のGaN結晶Aの転位密度は1.5×106cm-2であった。
[下地基板の準備]
サファイア基板上に有機金属化学堆積(MOCVD)法により窒化ガリウム(GaN)を成長させた。ノンドープで主面をC面とするGaNテンプレートを準備し、テンプレート上にSi3N4のマスクを形成し、マスクの開口部を通じるエピタキシャル横方向過度成長でC面−GaN層を成長させて、種基板を準備した。
次いで、図3に示すようなHVPE装置を用い、種基板110のC面−GaN層が上面に露出するようにサセプター107上に配置した。このときのガス導入管104の先端と下地基板の距離は、9cmとした。その後、反応室の温度を1010℃まで上げ、GaN単結晶を成長させた。この成長工程においては成長圧力を1.01×105Paとし、GaClガスの分圧を6.55×102Paとし、NH3ガスの分圧を7.58×103Paとした。成長時間は64時間とした。
成長終了後、室温まで降温し、GaN単結晶を得た。種基板上に厚さが8.3mmであって主面がC面であるGaN単結晶(以下、C面−GaN単結晶と称する)が得られた。C面−GaN単結晶の厚みと成長時間から成長速度を算出したところ、130μm/hであった。
得られた両面研磨結晶のX線回折測定を行い、結晶系は六方晶系で立方晶GaNは含まれていないことを確認した。
図2に示すような反応装置を用いて、上述した主面をC面とする長辺10mm×短辺5mmの四角形、および330μmの厚さを有する単結晶GaNを下地基板として窒化物結晶の成長を行った。
原料中の酸素濃度、鉱化剤の種類とアンモニア溶媒に対するハロゲン濃度、成長温度、成長圧力を表1に示す通りとした以外は、実施例1−1〜1−8と同様にして結晶成長を行った。
取り出した結晶を観察したところ、窒化ガリウム結晶が下地基板のGa面、N面の両方に成長しており、c軸方向の厚みは2mm程度であった。結晶は茶色に着色し、表面にはクレバス状の溝が多数存在していることが目視で確認できた。
得られたGaN結晶AのX線回折測定を行い、結晶系は六方晶系で立方晶GaNは含まれていないことを確認した。
比較例1−9で得られた結晶はアニール処理を行わずに、下記の項目の物性値に関して各々評価を行った。
比較例1−9で得られたGaN結晶中のH、Oの濃度をSIMS分析により定量分析を行った。装置は、CAMECA社製の二次イオン質量分析計(SIMS)IMS4fを使用した。分析条件は、一次イオンビームはCs、一次イオンエネルギーは14.5keV、2次イオン極性は負とした。本条件における検出限界は、いずれもHが1×1017〜2×1017atoms/cm3、Oが1×1016〜2×1016atoms/cm3であった。得られた窒化ガリウム結晶の水素濃度と酸素濃度は表2に示した。比較例1−9で得られた結晶は、酸素濃度に対する水素濃度の比率(H/O)は5.4であり、4.5を超える値であった。
実施例1−1〜1−6に記載した方法と同様にして、比較例1−9により得られたアニール前の窒化ガリウム結晶であるGaN結晶Aについて、XRC半値幅の測定を行った。
GaN結晶AのGaN(002)反射のXRC半値幅は34.9arcsec、GaN(102)反射のXRC半値幅は36.8arcsecであった。このことより、比較例1−9により得られたGaN結晶は結晶性が良くないことが確認された。
また、曲率半径が大きく、結晶体の反りが少ないことがわかる。さらに、転位密度(DSD)および積層結晶欠陥(SFD)の値も小さいため、転位密度が低く、結晶性が良好であることがわかる。特に、実施例1−2および1−6は、高分解能XRC半値幅の値が10arcsec未満であり、非常に結晶性が良好であることがわかる。
実施例では、アニール前後において、Sパラメーターおよび陽電子拡散距離が上記範囲内となる。また、実施例では、アニール前後においても上記のXRC半値幅等の分析値に大きな変化は見られなかった。これらのことから、実施例で得られた結晶は、アニール処理をした後であっても高い結晶性が維持されており、結晶体の安定性が高いことがわかった。
また、比較例の吸光係数は、実施例の吸光係数と比較してその値が増大している。
本実施例では、図2に示すような反応装置を用いて窒化物結晶を成長させた。
(1)ニッケル基合金製のオートクレーブ1を耐圧性容器として用い、Pt−Ir製カプセル20を反応容器として用いて結晶成長を行なった。
原料8として多結晶GaN粒子をカプセル下部領域(原料溶解領域9)内に設置し鉱化剤として高純度のNH4Fをカプセル内に投入した。さらに下部の原料溶解領域9と上部の結晶成長領域6の間に白金製のバッフル板5を設置した。種結晶7として、HVPE法で得られたC面基板を、白金製のワイヤーとシード支持枠を用いて吊るし、カプセル上部の結晶成長領域6に設置した。種結晶7の主面(N面)表面には、長手方向がa軸方向に平行(M面に平行)である100μm幅(W1)の細長いライン状の開口部が1000μmの間隔(ピッチ)で配置されるようにマスクをTiW合金で形成し、細長い開口部から、主面(N面)表面のCMP仕上げされた領域を一部露出させた。次いで、以下に示す手順で、細長い開口部から−c軸方向(<000−1>、N方向)へ成長させることによりM面が広がるように結晶成長させた。
(4)バルブを開けて真空脱気し、真空状態を維持しながらオートクレーブ1をドライアイスメタノール溶媒によって冷却して外気に触れることなくNH3をオートクレーブ1に充填した。NH3をオートクレーブ1の有効容積(オートクレーブ容積−充填物容積)の約56%に相当する液体として充填(−33℃のNH3密度で換算)した後、再びバルブ10を閉じた。
(6)オートクレーブ1を冷却しながら、オートクレーブに付属したバルブ10を開放し、オートクレーブ内のNH3を取り除いた。
これは、マスク材料と結晶の接着が強固ではないため、成長途中で成長結晶とマスクが剥離して応力が緩和されている可能性あることを示唆している。
また、実施例2−1に準じた手法で、複数回、繰り返し成長した結果、a軸方向の長さが52mm、c軸方向の長さが52mmの板状のM面結晶も得られた。
実施例2−1で得られた窒化ガリウムウエハを研磨せずにアズグロウンのM面のX線ロッキングカーブ半値幅と曲率半径の測定を行った。
X線ロッキングカーブ(XRC)は、PANalytical社製の高分解能X線回折計で測定した。GaN(100)反射とGaN(102)反射についてロッキングカーブ測定を実施し、結晶のチルト及びツイスト方向の結晶方位分布を評価した。ここで、(100)、(102)はX線の回折面を表す。
実施例2−1で得られた窒化ガリウムウエハを研磨せずにアズグロウンのM面を測定したところGaN(100)反射のXRC半値幅は22.9arcsec、GaN(102)反射のXRC半値幅18.8arcsecであり、結晶性は良好であることが分かった。
曲率半径は1軸ステージ(x軸)又は2軸ステージ(x−y)のある高精度クレードルを有したPANalytical社製の高分解能X線回折計を用いて測定した。試料を一軸方向(x方向)に0.5〜5mm間隔で移動し、各ポイントで測定したX線ロッキングカーブから最大強度を与えるω値を算出し、移動距離xに対するω値をプロットし、最小自乗法でグラフの傾きkを算出した。傾きkから次式にて曲率半径R[m]を算出した。
R=1/k×180×π/1000
このウエハをM面主面の表裏と4側面をエッチングしてダメージを除去し、更にM主面の表裏をミラー研磨した。得られた両面研磨結晶のX線回折測定を行い、結晶系は六方晶系で立方晶GaNは含まれていないことが確認された。
表3に示した種結晶上のマスクパターンの変更、成長条件の変更を行った以外は、実施例2−1と同様に窒化ガリウムの結晶成長を行った。
実施例2−2〜2−19は、実施例2−1と同様に、N方向への成長だけでなく、種結晶の端部からa軸方向にも成長し、N面領域が拡大すると共に、拡大した領域上でのN方向への結晶成長が進行することによってライン状の開口部から成長した板状結晶部分は両端で拡大した領域上でN方向へ成長した結晶(横方向成長結晶)と一体化していた。
更に、実施例2−2〜2−19ではライン方向をM面からA面に徐々に傾けたところ、傾斜角度が大きくA面に近づくにつれN方向だけはなくa軸、m軸方向の成長が促進され得られた板状結晶の種結晶の主面に平行な方向の最小幅が増加する(得られた板状結晶の厚みが増加する)傾向にあった。特にこのような傾向はM面から3°以上傾けたライン方向で顕著であった。
比較例2−1、2−2では、種結晶7としてHVPE法で得られた主面がM面の基板(a軸方向10mm×c軸方向7mm、厚み330μm)にマスクパターンを作製せずに用い、鉱化剤の種類と濃度比、成長時の炉内の平均温度成長圧力を表3に示す通りにした以外は、実施例2−1と同様にして結晶成長を行った。
得られた窒化ガリウム結晶からM面を主面とする板状結晶を複数切り出し、主面であるM面の表裏と4側面をエッチングしてダメージを除去し、更にM面の表裏をミラー研磨して、GaN結晶を得た。得られたGaN結晶のX線回折測定を行い、結晶系は六方晶系で立方晶GaNは含まれていないことを確認した。
実施例2−4と比較例2−1は1つの反応容器内で同時に成長したものであるが、実施例2−4、比較例2−1の−c軸方向への成長速度を比較すると、マスク成長を行った実施例2−4の方が速かった。これは、実施例2−4では種結晶の側面からa軸方向成長して拡大したC面領域上に成長された結晶(横方向成長結晶、ガイド)とライン状の開口部から成長した板状結晶が一体化して結晶成長が進むため、開口部から成長した板状結晶が、N面での成長速度で成長することによると考えられる。一方、比較例2−1のM面を主面とする成長では、N方向にも結晶は拡大するが、N軸方向への成長は半極性面である(10−1−1)面の出現で半極性面成長となり、この半極性面の成長速度となるため、成長速度が遅いと考えられる。
実施例2−1で得られたM面を主面とする窒化ガリウムウエハ(板状結晶)のうちの1枚を、研磨をせずにアズグロウン表面のまま種結晶として用い、表4に示した条件以外は実施例2−1と同様に窒化ガリウムの結晶成長を行った。
取り出した結晶を観察したところ、種結晶の主面上にM面を主面とする窒化ガリウム結晶が成長していた。
実施例2−22、2−23で得られた窒化ガリウム結晶を研磨せずに、アズグロウンのM面のX線ロッキングカーブ半値幅の測定を行ったところ、実施例2−22の結晶は、GaN(100)反射のXRC半値幅は23.1arcsec、GaN(102)反射のXRC半値幅18.8arcsecであった。また、実施例2−23の結晶は、GaN(100)反射のXRC半値幅は23.0arcsec、GaN(102)反射のXRC半値幅18.7arcsecであった。
実施例2−22で得られた結晶を、M面平行にスライシング、研磨を行い、8枚の単結晶ウエハを得た。
8枚全てについてM面の曲率半径の測定を行ったところ、a軸方向では1枚を除いて20m〜120m、c軸方向では20〜220mと反りのない良好な結晶が得られた。そのうちの一枚についてM面のX線ロッキングカーブ半値幅の測定を行った。GaN(100)反射のXRC半値幅は23.8arcsec、GaN(102)反射のXRC半値幅20.7arcsecであり、転位等の欠陥や割れ等を含まない良質な結晶であった。
実施例2−24として、実施例2−22、2−23と同様の方法で結晶成長したM面を主面とするM面の面積が2cm2以上あるGaN単結晶を得た。この単結晶をM面平行にスライシング、研磨を行い、ゴニオメーターの精度が1/10000である高分解能X線測定装置でX線ロッキングカーブを測定したところ、GaN(200)反射のXRC半値幅は6.9arcsec、GaN(102)反射のXRC半値幅9.2arcsecであった。
得られたGaN結晶について5kV、500pA、200倍視野で低温カソードルミネッセンス(LTCL)観察にて評価した。LTCL観察像のC面と平行方向に存在する横線が積層欠陥である。積層欠陥密度は0cm-1であった、このことから、転位等の欠陥や割れ等を含まない良質な結晶であることを確認した。
種結晶7としてHVPE法で得られた主面がM面基板にマスクパターンを作製せずに種結晶として用い、比較例2−1に準じて結晶成長を行った。
成長結晶をM面平行にスライシング、研磨を行い、10枚の単結晶ウエハを得た。
10枚全てについてM面の曲率半径とX線ロッキングカーブ半値幅の測定を行った。
これら10枚のM面のX線ロッキングカーブ半値幅の測定を行った。GaN(100)反射のXRC半値幅は25〜80arcsecであり、GaN(102)反射のXRC半値幅30arcsec以上あり、一部の結晶ではマルチピークを有していた。比較例2−3のウエハは、実施例2−22のウエハに比較して、反りが大きく、クラック、転位等の欠陥が多かった。
種結晶7としてHVPE法で得られた主面がM面基板(a軸長さが50mm、c軸長さが3mm、厚み300μmの短冊状シード)にマスクパターンを作製せずに種結晶として用い、M面の大型化を目指して比較例2−1に準じて結晶成長を行ったが、N方向への成長が進むに従って、c軸に平行に複数のクラックが発生した。これは、マスクを使用しないことで、HVPE製のシード全面が露出しているため、シードの反りの影響等を強く受けてしまったためと考えられる。
また、N方向の成長が進むにつれて、a軸方向の長さが短くなった。
HVPEで作成したC面基板をマスクパターンを作製せずにシードとして結晶成長を実施したが、C面(N面)は平坦に成長せず、表面には複数の溝が発生した。このため大きな面積のM面基板の切出しはできなかった。C面(N面)が平坦に成長しなかったのは、下地結晶の一部に欠陥(転位)密度の高い部分が存在し、その部分上で成長の遅れが生じたことと、下地基板の反り(<10m)の影響と考えられる。
また、本発明によれば、結晶欠陥や反りやクラックの発生が少なく、加工処理時の割れの発生を抑制可能な周期表第13族金属窒化物結晶の製造方法を提供することができる。
2 オートクレーブ内面
3 ライニング
4 ワイヤー
5 バッフル板
6 結晶成長領域
7 下地基板(種結晶)
8 原料
9 原料充填領域
10 バルブ
11 真空ポンプ
12 アンモニア(NH3)ボンベ
13 窒素ボンベ
14 マスフローメーター
20 カプセル(内筒)
100 リアクター
101 H2キャリアガス用配管
102 N2キャリアガス用配管
103 周期表第13族原料用配管
104 窒素原料用配管
105 エッチングガス用配管
106 ヒーター
107 サセプター
108 排気管
110 種基板
113 周期表第13族原料用リザーバー
G1 H2キャリアガス
G2 N2キャリアガス
G3 周期表第13族原料ガス
G4 窒素原料ガス
G5 エッチングガス
200 X線光源
201 X線ミラー
203 Ge(220)の2結晶ハイブリッドモノクロメータ
204 Ge(440)の4結晶モノクロメータ
205 オープンディテクタ
250 結晶(試料)
301 種結晶
302 成長阻害部材
303 開口部
304 板状結晶
305 板状結晶の主成長面
306 板状結晶の側端面
307 横方向成長結晶
Claims (7)
- (200)反射におけるXRC半値幅が10arcsec以下である、窒化ガリウム結晶。
- (102)反射におけるXRC半値幅が15arcsec以下である、請求項1に記載の窒化ガリウム結晶。
- M面を主面とする板状結晶であり、該主面の面積が1cm 2 以上である、請求項1または2に記載の窒化ガリウム結晶。
- 陽電子消滅法により測定されるSパラメーターが0.448以上である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の窒化ガリウム結晶。
- 陽電子拡散距離が15〜50nmである、請求項4に記載の窒化ガリウム結晶。
- 転位密度が5×105cm-2以下である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の窒化ガリウム結晶。
- 請求項1〜6のいずれか一項に記載の窒化ガリウム結晶から形成される、窒化ガリウム基板。
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