JP6579240B2 - 発光装置 - Google Patents
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Description
しかしながら、従来のMn4+で付活されたフッ化物蛍光体は、その粒子表面において、フッ化物蛍光体を構成する4価のマンガンイオンが空気中の水分と反応して二酸化マンガンが生成され、粒子表面が黒く着色された結果、色度のずれが生じたり、発光出力が経時的に低下したりすると考えられている。そのため、従来のMn4+で付活されたフッ化物蛍光体は、信頼性を重視する液晶用バックライト用途に適用することが難しいという課題がある。
本開示の第一の態様は、凹部を形成する側壁を有するパッケージと、前記凹部に配置された発光素子と、前記発光素子を被覆する封止部材を備えており、前記封止部材が、前記発光素子を被覆し蛍光体を含む第一の部位と、その第一の部位上に配置され、蛍光体を実質的に含まない第二の部位とを有しており、前記蛍光体が、4価のマンガンイオンで付活された、下記一般式(I)で示される化学組成を有し、蛍光体粒子の内部領域の4価のマンガンイオン濃度よりも、4価のマンガンイオン濃度が低い表面領域を有するフッ化物蛍光体粒子を含む、発光装置である。
A2[M1−bMn4+ bF6] (I)
式中、Aは少なくともK+を含み、Li+、Na+、Rb+、Cs+及びNH4 +からなる群から選ばれる少なくとも1種をさらに含んでいてもよいカチオンであり、Mは、第4族元素及び第14族元素からなる群より選択される少なくとも1種であり、bは0<b<0.2を満たす。
A2[M1−bMn4+ bF6] (I)
式中、Aは少なくともK+を含み、Li+、Na+、Rb+、Cs+及びNH4 +からなる群から選ばれる少なくとも1種をさらに含んでいてもよいカチオンであり、Mは、第4族元素及び第14族元素からなる群より選択される少なくとも1種であり、bは0<b<0.2を満たす。
なお、色名と色度座標との関係、光の波長範囲と単色光の色名との関係等は、JIS Z8110に従う。具体的には、380nm〜410nmが紫色、410nm〜455nmが青紫色、455nm〜485nmが青色、485nm〜495nmが青緑色、495nm〜548nmが緑色、548nm〜573nmが黄緑色、573nm〜584nmが黄色、584nm〜610nmが黄赤色、610nm〜780nmが赤色である。
図1は、第一の実施形態に係る発光装置の概略構成を説明する図である。図1を参照に本開示の第一の実施形態に係る発光装置1について説明する。
発光装置1は、凹部2を形成する側壁を有するパッケージ3と、凹部2の底面に配置された発光素子4と、発光素子4を被覆する封止部材9、10を備えており、封止部材9、10が、発光素子4を被覆し、フッ化物蛍光体粒子7及びフッ化物蛍光体粒子以外の蛍光体粒子(以下、「他の蛍光体粒子」ともいう)8を含む第一の部位9と、その第一の部位9上に配置され、フッ化物蛍光体粒子7及びフッ化物蛍光体粒子以外の蛍光体粒子8を実質的に含まない第二の部位10とを有しており、フッ化物蛍光体粒子7が、4価のマンガンイオンで付活された、下記一般式(I)で示される化学組成を有し、蛍光体粒子の内部領域の4価のマンガンイオン濃度よりも、4価のマンガンイオン濃度が低い表面領域を有するフッ化物蛍光体粒子を含む。また、他の蛍光体粒子8は、上記フッ化物蛍光体粒子以外の蛍光体粒子である。
A2[M1−bMn4+ bF6] (I)
式中、Aは少なくともK+を含み、Li+、Na+、Rb+、Cs+及びNH4 +からなる群から選ばれる少なくとも1種をさらに含んでいてもよいカチオンであり、Mは、第4族元素及び第14族元素からなる群より選択される少なくとも1種であり、bは0<b<0.2を満たす。
第一の部位9及び第二の部位10は、後述するように、少なくとも結着剤と蛍光体とを含む封止材料を硬化させて形成することができる。
凹部を形成する側壁を有するパッケージの材料については、特に限定されず、耐光性、耐熱性に優れた電気絶縁性のものが好適に用いられる。パッケージの材料としては、樹脂、セラミックス等を用いることができる。パッケージの材料の樹脂には、例えばポリフタルアミドなどの熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂、ガラスエポキシ樹脂等が挙げられる。
発光素子は、可視光の短波長領域の光を発するものを使用することができる。例えば、青色、緑色の発光素子としては、窒化物系半導体(InXAlYGa1−X−YN、0≦X、0≦Y、X+Y≦1)を用いたものを用いることができる。
発光素子は、光源(以下、「励起光源」ともいう)として、可視光の短波長領域である380nm〜485nmの波長範囲の光を発するものを使用することが好ましい。光源として好ましくは420nm〜485nmの波長範囲、より好ましくは440nm〜480nmの波長範囲に発光ピーク波長(極大発光波長)を有するものである。これにより、蛍光体を効率よく励起し、可視光を有効活用することができる。また当該波長範囲の励起光源を用いることにより、発光強度が高い発光装置を提供することができる。
励起光源に半導体発光素子を用いることによって、高効率で入力に対する出力のリニアリティが高く、機械的衝撃にも強い安定した発光装置を得ることができる。
パッケージ3の凹部2の底部には、第一のリード5、第二のリード6が配置され、第一のリード5及び第二のリード6がパッケージ3の凹部2の底面を構成する。第一のリード5及び第二のリード6をそれぞれ導電部材ともいう。第一のリード5及び第二のリード6は、導電性を備える母材のみからなるものでもよく、母材と、反射膜を含むものであってもよい。第一のリード5及び第二のリード6は、導電性を有する反射膜のみからなるものであってもよい。第一のリード5及び第二のリード6は、母材と反射膜の間に他の部材が介在するものであってもよい。導電部材が、母材と反射膜を備えるものである場合には、反射膜は、発光素子4が載置される側に配置される。
第一のリード及び第二のリードの母材が、導電性を備えるものである場合には、例えば銅又は銅合金が挙げられる。その他、第一のリード及び第二のリードの母材に好適な材料としては、セラミックス、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等が挙げられる。第一のリード及び第二のリードは、パッケージ3の凹部2の底面を構成し、発光素子4等が載置可能な略板状部材である。
セラミックスは、アルミナ、窒化アルミニウム、ムライト、炭化ケイ素、窒化ケイ素等を用いることができる。また、セラミックスの粉体と、樹脂とを混合して得られる材料をシート状に成型して得られるセラミックスグリーンシートを積層させて焼成させたものを用いることができる。
また、エポキシ樹脂を用いた母材としては、例えば、硝子クロス入りのエポキシ樹脂やエポキシ樹脂を半硬化させたプリプレグに銅板を貼り付けて熱硬化させたもの等を用いることができる。
反射膜は、例えば、銀又はアルミニウムを含む材料を用いることができ、特に反射率の高い銀を含む材料を用いることが好ましい。反射膜には、銅、アルミニウム、金、白銀、タングステン、鉄、ニッケル等の金属、鉄−ニッケル合金、リン青銅、鉄入り銅等を含む材料を用いることができる。
発光素子4、第一のリード5、第二のリード6、及びワイヤ11、12は、絶縁部材(図示略)で覆われていることが好ましい。絶縁部材は、発光素子4、第一のリード5、第二のリード6、及びワイヤ11、12の上に連続するように設けられていることが好ましい。ここで、「連続するように設けられる」とは、発光素子4、第一のリード5、第二のリード6、及びワイヤ11、12からなる対象物に対して、層状(膜状)に設けられる状態、或いは、粉末状若しくは針状の絶縁部材が部分的に空隙を有しつつも、発光素子4、第一のリード5、第二のリード6、及びワイヤ11、12に略全体に設けられている状態を含む。絶縁部材によって、発光素子4、第一のリード5、第二のリード6、及びワイヤ11、12を構成する金属、特に第一のリード5及び第二のリード6を構成する銀に対して変質作用を有するガス、水分、蛍光体に含まれるフッ素(F)等を遮断することができる。蛍光体に含まれるフッ素が導電部材等に含まれる銀と反応するとフッ化銀を形成するため、黒色のフッ化銀が発光素子から発生した光を吸収して光出力が低下する場合がある。絶縁部材によって、第一のリード5及び第二のリード6等に含まれる銀の劣化を効率よく抑制することができ、光の出力効率を高めることができる。また、絶縁部材が、パッシベーション膜のように機能し、硫黄(S)や酸素(O)等のガス、水分、蛍光体に含まれるフッ素(F)等を遮断して、第一のリード5及び第二のリード6等に含まれる銀のマイグレーションを抑制することができる。
絶縁部材の材料は、透光性のものであることが好ましく、無機化合物を用いることが好ましい。絶縁部材の材料は、具体的には、SiO2、Al2O3、TiO2、ZrO2、ZnO2、Nb2O3、MgO、SrO、In2O3、TaO2、HfO、SeO、Y2O3等の酸化物や、SiN、AlN、AlON等の窒化物、MgF2等のフッ化物が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。あるいは、1種又は2種以上の材料を含む絶縁部材を、2層以上積層してもよい。
まず、対象物である導電部材、ワイヤ11、12及び発光素子4の表面に、トリメチルアルミニウム(以下、「TMA」ともいう)ガスが導入され、導電部材、ワイヤ11、12及び発光素子4に存在するOH基とTMAガスとを反応させる(第一反応)。次に、余剰ガスを排気する。次に、対象物にH2Oガスが導入され、第一反応でOH基と反応したTMAとH2Oとを反応させる(第二反応)。次に、余剰ガスを排気する。その後、第一反応、排気、第二反応、排気を1つのサイクルとして、このサイクルを複数回繰り返すことによって、所望の厚さの酸化アルミニウム(Al2O3)膜が、導電部材、ワイヤ11、12及び発光素子4の表面に形成される。
第一の部位9と第二の部位10は、発光素子4を封止する封止部材を構成する。第一の部位9及び第二の部位10は、少なくとも結着剤と、蛍光体とを含む封止材料を用いて形成される。第一の部位9及び第二の部位10は、発光素子4が配置されたパッケージ3の凹部2に、封止材料を注入した後、フッ化物蛍光体粒子7及び他の蛍光体粒子8を発光素子4側に遠心沈降させた後、結着剤を硬化させて、発光素子4を被覆しフッ化物蛍光体粒子7及び他の蛍光体粒子8を含む第一の部位9と、その第一の部位9上に配置され、フッ化物蛍光体粒子7及び他の蛍光体粒子8を実質的に含まない第二の部位10を形成する。
本形態の発光装置は、第二の部位10によって形成された発光面とパッケージ3の界面等から侵入する空気中の水分が、第二の部位10によって阻まれる。第二の部位10によって阻まれるため、空気中の水分は、第一の部位9に含まれるフッ化物蛍光体粒子7及び他の蛍光体粒子8まで到達しにくく、第一の部位9に含まれるMn4+で付活されたフッ化物蛍光体に含まれる4価のマンガンイオンと水分との反応を抑制することができ、二酸化マンガンの生成によって、粒子表面が黒く着色することを抑制することができる。そのため、本形態の発光装置は、発光出力の低下と色度ずれを抑制することができ、長期の信頼性試験において十分な耐久性を達成することができる。
また、本形態の発光装置は、第二の部位10によって、空気中の水分が第一の部位9に含まれるフッ化物蛍光体まで到達するのを抑制することができ、フッ化物蛍光体の劣化を抑制することができる。フッ化物蛍光体が劣化すると、フッ化物蛍光体中に含まれるMn4+やF-が溶出し、第一の部位9及び第二の部位10を構成する結着剤が劣化する場合があるが、フッ化物蛍光体の劣化を抑制することができるため、第一の部位9及び第二の部位10の劣化も抑制することができる。
第一の部位及び第二の部位を含む封止部材は、硬化によって封止部材を構成する、少なくとも結着剤と、蛍光体とを含む封止材料によって形成される。硬化によって封止部材を構成する封止材料は、体積平均粒径が1μm〜20μmのフィラーをさらに含んでいてもよい。また、封止材料は、一次粒子の平均粒径が5nm〜20nmであるナノフィラーを含んでいてもよい。
封止部材を形成する封止材料に含まれる結着剤としては、発光素子からの光を透過可能な透光性のものであることが好ましい。結着剤には、例えば、ガラス、樹脂等を挙げることができる。結着剤は、樹脂であることが好ましい。樹脂の具体的な例としては、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、アクリル樹脂等を挙げることができる。樹脂は、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂及びアクリル樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂であることが好ましい。また、樹脂は、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ユリア樹脂、フッ素樹脂及びこれらの組合せの樹脂であってもよい。中でも、樹脂としては、変性シリコーン樹脂を用いることが好ましく、ポリシロキサンの側鎖の一部にフェニル基を導入したフェニルシリコーン樹脂を用いることが好ましい。
蛍光体は、4価のマンガンイオンで付活された、下記一般式(I)で示される化学組成を有し、内部領域の4価のマンガンイオン濃度よりも、4価のマンガンイオン濃度が低い表面領域を有するフッ化物蛍光体粒子を含む。
A2[M1−bMn4+ bF6] (I)
式中、Aは少なくともK+を含み、Li+、Na+、Rb+、Cs+及びNH4 +からなる群から選ばれる少なくとも1種をさらに含んでもよいカチオンであり、Mは第4族元素及び第14族元素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、bは0<b<0.2を満たす。
一般に、一般式(I)で表されるフッ化物蛍光体においては、その粒子の表面領域において、フッ化物を構成する4価のマンガンイオンが水と反応することで二酸化マンガンが生成して、粒子表面が黒く着色される結果、発光出力が低下したり、色度ずれが生じたりすると考えられている。このため、長期の信頼性試験において充分な耐久性を達成することができず、信頼性を重視する用途に適用することが難しいという課題があった。
しかし、本形態に用いるフッ化物蛍光体は、その粒子の表面領域における4価のマンガンイオンの濃度が、内部領域における濃度よりも低く抑えられている。そのため粒子表面における二酸化マンガンの生成が抑制されて、長期間に渡って発光出力の低下と色度ずれが抑制されると考えられる。これにより優れた長期信頼性を達成することができると考えられる。
Mがケイ素(Si)、又はケイ素(Si)及びゲルマニウム(Ge)を含む場合、Si及びGeの少なくとも一方の一部が、Ti、Zr及びHfを含む第4族元素、並びにC及びSnを含む第14族元素からなる群より選択される少なくとも1種で置換されていてもよい。その場合、MにおけるSi及びGeの総含有率は特に制限されず、例えば、50モル%以上であることが好ましく、80モル%以上であることがより好ましい。
後述する製造方法で得られるフッ化物蛍光体粒子は、粒子全体が4価のマンガンイオンで付活された従来のフッ化物蛍光体を用いた発光装置よりも、画像表示装置の色再現範囲が広いという特性を維持しつつも、フッ化物蛍光体粒子の表面が湿度で溶出した場合であっても、表面領域に4価のマンガンイオンが存在しない、または少ないことから、4価のマンガンイオンに由来する二酸化マンガンの生成が抑制される。これによりフッ化物蛍光体粒子表面の黒色化が抑えられ、発光強度の低下を抑制できる。
ここで、耐水試験は、具体的にはフッ化物蛍光体を、その質量の1〜5倍(好ましくは3倍)量の水に投入し、25℃で1時間撹拌を行って実施する。
本形態のフッ化物蛍光体は、一般式(I)で示される化学組成を有し、内部領域の4価のマンガンイオン濃度よりも、4価のマンガンイオン濃度が低い表面領域を有するフッ化物蛍光体であり、その製造方法は、内部領域(以下、「コア部」ともいう)を形成する第一の工程と、表面領域を形成する第二の工程及び第三の工程を含む。
フッ化物蛍光体の製造方法は、一般式(I)で表される化学組成を有するフッ化物蛍光体を準備する工程を含む。この準備する工程は、一般式(I)で表される化学組成を有するフッ化物蛍光体の製造工程を含むことができる。
一般式(I)で表される化学組成を有するフッ化物蛍光体は、フッ化水素を含む液媒体中で、4価のマンガンイオンを含む第一の錯イオンと、少なくともカリウムイオン(K+)を含み、リチウムイオン(Li+)、ナトリウムイオン(Na+)、ルビジウムイオン(Rb+)、セシウムイオン(Cs+)及びアンモニウムイオン(NH4 +)からなる群より選択される少なくとも1種をさらに含んでもよいカチオンと、第4族元素及び第14族元素からなる群より選択される少なくとも1種を含む第二の錯イオンとを接触させることで製造することができる。
溶液aは、4価のマンガンイオンを含む第一の錯イオンと、第4族元素及び第14族元素からなる群より選択される少なくとも1種並びにフッ素イオンとを含む第二の錯イオンとを含むフッ化水素酸溶液である。
例えば、第二の錯イオンがケイ素(Si)を含む場合、第二の錯イオン源は、ケイ素とフッ素とを含み、溶液への溶解性に優れる化合物であることが好ましい。第二の錯イオン源として具体的には、H2SiF6、Na2SiF6、(NH4)2SiF6、Rb2SiF6、Cs2SiF6等を挙げることができる。これらの中でも、水への溶解度が高く、不純物としてアルカリ金属元素を含まないことにより、H2SiF6が好ましい。第二の錯イオン源は、1種を単独で用いて2種以上を併用してもよい。
溶液bは、少なくともカリウムイオン(K+)を含み、リチウムイオン(Li+)、ナトリウムイオン(Na+)、ルビジウムイオン(Rb+)、セシウムイオン(Cs+)及びアンモニウムイオン(NH4 +)からなる群より選択される少なくとも1種をさらに含んでもよいカチオンとフッ化水素とを少なくとも含み、必要に応じてその他の成分を含んでいてもよい。溶液bは、例えば、少なくともカリウムイオン(K+)を含み、リチウムイオン(Li+)、ナトリウムイオン(Na+)、ルビジウムイオン(Rb+)、セシウムイオン(Cs+)及びアンモニウムイオン(NH4 +)からなる群より選択される少なくとも1種をさらに含んでもよいカチオンを含むフッ化水素酸の水溶液として得られる。
溶液bを構成可能なカリウムイオン源として、具体的には、KF、KHF2、KOH、KCl、KBr、KI、酢酸カリウム、K2CO3等の水溶性カリウム塩を挙げることができる。中でも溶液中のフッ化水素濃度を下げることなく溶解することができ、また、溶解熱が小さく安全性が高いことから、KHF2が好ましい。
溶液bを構成可能なナトリウムイオン源として、NaF、NaHF2、NaOH、NaCl、NaBr、NaI、酢酸ナトリウム、Na2CO3等水溶性のナトリウム塩を挙げることができる。
溶液bを構成可能なルビジウムイオン源として、具体的には、RbF、酢酸ルビジウム、Rb2CO3等の水溶性ルビジウム塩を挙げることができる。
溶液bを構成可能なセシウムイオン源として、具体的には、CsF、酢酸セシウム、Cs2CO3等の水溶性セシウム塩を挙げることができる。
溶液bを構成可能なアンモニウムイオン源として、NH4F、アンモニア水、NH4Cl、NH4Br、NH4I、酢酸アンモニウム、(NH4)2CO3等水溶性のアンモニウム塩を挙げることができる。溶液bを構成するイオン源は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
また、溶液bにおけるカチオン濃度の下限値は、通常5質量%以上、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上である。また、溶液bにおける少なくともカリウムイオン(K+)を含み、リチウムイオン(Li+)、ナトリウムイオン(Na+)、ルビジウムイオン(Rb+)、セシウムイオン(Cs+)及びアンモニウムイオン(NH4 +)からなる群より選択される少なくとも1種をさらに含んでもよいカチオン濃度の上限値は、通常80質量%以下、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下である。
溶液a及び溶液bを混合することにより、所定の割合で第一の錯イオンと、少なくともカリウムイオン(K+)を含み、リチウムイオン(Li+)、ナトリウムイオン(Na+)、ルビジウムイオン(Rb+)、セシウムイオン(Cs+)及びアンモニウムイオン(NH4 +)からなる群より選択される少なくとも1種をさらに含んでもよいカチオンと、第二の錯イオンとが反応して目的のフッ化物蛍光体の結晶が析出する。析出した結晶は濾過等により固液分離して回収することができる。またエタノール、イソプロピルアルコール、水、アセトン等の溶媒で洗浄してもよい。さらに乾燥処理を行ってもよく、通常50℃以上、好ましくは55℃以上、より好ましくは60℃以上、また、通常110℃以下、好ましくは100℃以下、より好ましくは90℃以下で乾燥する。乾燥時間としては、フッ化物蛍光体に付着した水分を蒸発することができれば、特に制限はなく、例えば、10時間程度である。
なお、溶液a及び溶液bの混合に際しては、溶液a及び溶液bの仕込み組成と得られるフッ化物蛍光体の組成とのずれを考慮して、生成物としてのフッ化物蛍光体の組成が目的の組成となるように、溶液a及び溶液bの混合割合を適宜調整することが好ましい。
第一の溶液と、第二の溶液と、第三の溶液とを混合することで、所望の組成を有し、所望の重量メジアン径を有するフッ化物蛍光体を、優れた生産性で簡便に製造することができる。
第一の溶液は、4価のマンガンイオンを含む第一の錯イオンと、フッ化水素とを少なくとも含み、必要に応じてその他の成分を含んでいてもよい。第一の溶液は、例えば、4価のマンガン源を含むフッ化水素酸の水溶液として得られる。マンガン源は、マンガンを含む化合物であれば特に制限はされない。第一の溶液を構成可能なマンガン源として、具体的には、K2MnF6、KMnO4、K2MnCl6等を挙げることができる。中でも、付活することのできる酸化数(4価)を維持しながら、MnF6錯イオンとしてフッ化水素酸中に安定して存在することができること等から、K2MnF6が好ましい。なお、マンガン源のうち、少なくともK+を含み、Li+、Na+、Rb+、Cs+及びNH4 +からなる群より選択される少なくとも1種をさらに含んでもよいカチオンを含むものは、第二の溶液に含まれる少なくともK+を含み、Li+、Na+、Rb+、Cs+及びNH4 +からなる群より選択される少なくとも1種をさらに含んでもよいカチオン源を兼ねることができる。第一の溶液を構成するマンガン源は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
第二の溶液は、少なくともK+を含み、Li+、Na+、Rb+、Cs+及びNH4 +からなる群より選択される少なくとも1種をさらに含んでもよいカチオンとフッ化水素とを少なくとも含み、必要に応じてその他の成分を含んでいてもよい。第二の溶液は、例えば、少なくともK+を含み、Li+、Na+、Rb+、Cs+及びNH4 +からなる群より選択される少なくとも1種をさらに含んでもよいカチオンを含むフッ化水素酸の水溶液として得られる。第二の溶液を構成可能なイオンを含むイオン源として、具体的には、KF、KHF2、KOH、KCl、KBr、KI、酢酸カリウム、K2CO3等のカリウムを含む塩に加えて、NaF、NaHF2、NaOH、NaCl、NaBr、NaI、酢酸ナトリウム、Na2CO3、RbF、酢酸ルビジウム、Rb2CO3、CsF、酢酸セシウム、Cs2CO3、NH4F、アンモニア水、NH4Cl、NH4Br、NH4I、酢酸アンモニウム、(NH4)2CO3等の水溶性の塩を挙げることができる。中でも溶液中のフッ化水素濃度を下げることなく溶解することができ、また、溶解熱が小さく安全性が高いことから、少なくともKHF2を用いることが好ましく、カリウム以外のイオン源としてはNaHF2が好ましい。第二の溶液を構成するイオン源は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
また、第二の溶液における少なくともK+を含み、Li+、Na+、Rb+、Cs+及びNH4 +からなる群より選択される少なくとも1種をさらに含んでもよいカチオンのイオン濃度の下限値は、通常5質量%以上、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上である。また、第二の溶液における少なくともK+を含み、Li+、Na+、Rb+、Cs+及びNH4 +からなる群より選択される少なくとも1種をさらに含んでもよいカチオンのイオン濃度の上限値は、通常80質量%以下、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下である。
第三の溶液は、第4族元素及び第14族元素からなる群より選択される少なくとも1種と、フッ素イオンとを含む第二の錯イオンを少なくとも含み、必要に応じてその他の成分を含んでいてもよい。第三の溶液は、例えば、以下の第二の錯イオンを含む水溶液として得られる。
第二の錯イオンは、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)及びスズ(Sn)からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、ケイ素(Si)、又はケイ素(Si)及びゲルマニウム(Ge)を含むことがより好ましく、フッ化ケイ素錯イオンであることがさらに好ましい。
第二の工程では、第一の工程で得られたフッ化物の結晶を含む分散物に還元剤を添加する。還元剤を添加することで、分散物に含まれる第一の錯イオンに含まれる4価のマンガンイオンの少なくとも一部が2価のマンガンイオンに還元されることが好ましい。第二の工程では第一の錯イオンに含まれる4価のマンガンイオンの90モル%以上が還元されることが好ましく、95モル%以上が還元されることがより好ましい。
これらの中でも、フッ化物の結晶を溶解する等のフッ化物の結晶に対する影響が少なく第一の錯イオンを還元することができ、最終的に水と酸素に分解することから、製造工程上利用しやすく、環境負荷が少ない点から、過酸化水素が好ましい。
ここで、1当量とは、1モルの第一の錯イオンに含まれる4価のマンガンイオンを2価のマンガンイオンに還元するのに要する還元剤のモル数を意味する。
第二の工程における温度は特に制限されない。例えば15〜40℃の温度範囲で還元剤の添加を行うことができ、23〜28℃の温度範囲であることが好ましい。
また第二の工程における雰囲気も特に制限されない。通常の大気中で還元剤を添加してもよく、また窒素ガス等の不活性ガス雰囲気中で行ってもよい。
また、第二の工程における反応時間は、特に制限されない。例えば1〜30分、より好ましくは3〜15分である。
第三の工程では、還元剤が添加された分散物中のフッ化物の結晶に、フッ化水素の存在下で、第二の錯イオン及び少なくともカリウムイオン(K+)を含み、リチウムイオン(Li+)、ナトリウムイオン(Na+)、ルビジウムイオン(Rb+)、セシウムイオン(Cs+)及びアンモニウムイオン(NH4 +)からなる群より選択される少なくとも1種をさらに含んでいてもよいカチオンを接触させてフッ化物蛍光体を得る。フッ化水素の存在下で、フッ化物の結晶と第二の錯イオン及び少なくともカリウムイオン(K+)を含み、リチウムイオン(Li+)、ナトリウムイオン(Na+)、ルビジウムイオン(Rb+)、セシウムイオン(Cs+)及びアンモニウムイオン(NH4 +)からなる群より選択される少なくとも1種をさらに含んでいてもよいカチオンとを接触させることで、例えば、フッ化物の結晶の表面上に、第二の錯イオンに含まれる第4族元素及び第14族元素からなる群より選択される少なくとも1種の元素と少なくともカリウムイオン(K+)を含み、リチウムイオン(Li+)、ナトリウムイオン(Na+)、ルビジウムイオン(Rb+)、セシウムイオン(Cs+)及びアンモニウムイオン(NH4 +)からなる群より選択される少なくとも1種をさらに含んでいてもよいカチオンとを含むフッ化物の結晶が析出して、所望のフッ化物蛍光体が得られる。
A2[M1−aMn4+ aF6] (II)
なお、分散物と、少なくともカリウムイオン(K+)を含み、リチウムイオン(Li+)、ナトリウムイオン(Na+)、ルビジウムイオン(Rb+)、セシウムイオン(Cs+)及びアンモニウムイオン(NH4 +)からなる群より選択される少なくとも1種をさらに含んでいてもよいカチオンを含む溶液及び第二の錯イオンを含む溶液の一方とを混合する場合、そのカチオン及び第二の錯イオンのうち混合する溶液に含まれない他方のイオンは、分散物中に第三の工程に必要な含有量で含まれていればよい。
第三の工程における第二の溶液及び第三の溶液は、第一の工程における第二の溶液及び第三の溶液と同じ組成であっても異なる組成であってもよい。
第三の工程における温度は特に制限されない。例えば15〜40℃の温度範囲で行うことができ、23〜28℃の温度範囲であることが好ましい。
また第三の工程における雰囲気も特に制限されない。通常の大気中で行ってもよく、また窒素ガス等の不活性ガス雰囲気中で行ってもよい。
また、第三の工程における反応させる時間は、特に制限されない。例えば1〜60分、より好ましくは5〜30分である。
第二’の工程では、第一の工程で得られたフッ化物の結晶をアルカリ土類金属イオン及び還元剤を含む水溶液に投入する。フッ化物の結晶は、アルカリ土類金属イオンを含む水溶液に投入すると、フッ化物の結晶の溶解反応が起こり、フッ化物の結晶を構成する金属のイオン及びフッ素イオンが生成する。ここで、フッ素イオンは、アルカリ土類金属イオンと反応して、フッ化物の結晶の表面にアルカリ土類金属フッ化物が生成し、内部領域の4価のマンガンイオン濃度よりも、4価のマンガンイオン濃度が低い表面領域を形成することができる。
フッ化物蛍光体粒子の表面領域に含まれるアルカリ土類金属フッ化物は、フッ化物蛍光体のさらなる溶解反応を抑制することができる。また、4価のマンガンイオンは、還元剤の存在により、2価のマンガンイオンに還元されることから、二酸化マンガンの生成が抑制される。
第二’の工程を経て得られたフッ化物蛍光体は、その表面領域にアルカリ土類金属フッ化物が含まれており、かつ還元剤の存在により、表面における二酸化マンガンの生成が抑制されているため、発光強度が高く、長期間に渡って発光出力の低下と色度ずれが抑制されると考えられる。これにより優れた長期信頼性を達成することができると考えられる。
中でも、色度ずれや発光出力の低下の抑制及び耐湿性の観点から、アルカリ土類金属イオンが、カルシウムイオンを含むのが好ましい。
アルカリ土類金属を含む化合物は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
還元剤の存在下で、フッ化物粒子とアルカリ土類金属イオンを含む溶液とを接触させる方法は特に制限されない。例えば、還元剤、フッ化物粒子及びアルカリ土類金属イオンを含む溶液を混合する方法等を挙げることができる。
また、還元剤の存在下で、フッ化物の結晶とアルカリ土類金属イオンを含む溶液との接触時間は、フッ化物の結晶の表面にアルカリ土類金属フッ化物が形成される時間であれば特に限定されない。例えば10分〜10時間とすることができ、30分〜5時間であることが好ましい。
還元剤、フッ化物の結晶及びアルカリ土類金属イオンを含む溶液を混合する際の温度は特に制限されない。例えば15〜40℃の温度範囲で混合を行うことができ、23〜28℃の温度範囲であることが好ましい。
また混合の際の雰囲気も特に制限されない。通常の大気中で混合を行ってもよく、また窒素ガス等の不活性ガス雰囲気中で混合を行ってもよい。
フッ化物蛍光体の製造方法は、必要に応じてその他の工程をさらに含んでいてもよい。例えば、第三の工程で生成したフッ化物蛍光体の結晶を濾過等により固液分離して回収することができる。またフッ化物蛍光体の結晶をエタノール、イソプロピルアルコール、水、アセトン等の溶媒で洗浄してもよい。さらに乾燥処理を行ってもよく、その場合、例えば50℃以上、好ましくは55℃以上、より好ましくは60℃以上、また、例えば110℃以下、好ましくは100℃以下、より好ましくは90℃以下で乾燥する。乾燥時間としては、フッ化物蛍光体の結晶に付着した水分を蒸発することができれば、特に制限はなく、例えば、10時間程度である。
発光装置は、フッ化物蛍光体に加えて、他の蛍光体をさらに含むことが好ましい。他の蛍光体は、光源からの光を吸収し、異なる波長の光に波長変換するものであればよい。他の蛍光体は、例えば、前記フッ化物蛍光体と同様に封止材料に含有させて発光装置を構成することができる。
他の蛍光体としては例えば、Eu、Ce等のランタノイド系元素で主に付活される窒化物系蛍光体、酸窒化物系蛍光体、サイアロン系蛍光体;Eu等のランタノイド系、Mn等の遷移金属系の元素により主に付活されるアルカリ土類ハロゲンアパタイト蛍光体、アルカリ土類金属ホウ酸ハロゲン蛍光体、アルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体、アルカリ土類ケイ酸塩、アルカリ土類硫化物、アルカリ土類チオガレート、アルカリ土類窒化ケイ素、ゲルマン酸塩;Ce等のランタノイド系元素で主に付活される希土類アルミン酸塩、希土類ケイ酸塩;及びEu等のランタノイド系元素で主に付活される有機及び有機錯体等からなる群より選ばれる少なくとも1種以上であることが好ましい。
他の蛍光体として具体的には例えば、(Ca,Sr,Ba)2SiO4:Eu、(Y,Gd)3(Ga,Al)5O12:Ce、(Si,Al)6(O,N)8:Eu(β−サイアロン)、SrGa2S4:Eu、(Ca,Sr)2Si5N8:Eu、CaAlSiN3:Eu、(Ca,Sr)AlSiN3:Eu、Lu3Al5O12:Ce、(Ca,Sr,Ba,Zn)8MgSi4O16(F,Cl,Br,I)2:Eu等が挙げられる。
他の蛍光体を含むことにより、種々の色調の発光装置を提供することができる。
発光装置が他の蛍光体をさらに含む場合、その含有量は特に制限されず、所望の発光特性が得られるように適宜調整すればよい。
封止材料の蛍光体の含有量は、結着剤100質量部に対して、10〜200質量部の蛍光体を含むことが好ましい。結着剤100質量部に対して、蛍光体は、より好ましく20〜180質量部であり、さらに好ましくは30〜120質量部であり、特に好ましくは40〜100質量部であり、最も好ましくは40〜80質量部である。封止材料の蛍光体の含有量が上記範囲であると、発光素子を十分に被覆することができ、発光素子から発光した光を蛍光体で効率よく波長変換することができ、効率よく発光することができる。また、封止材料中の蛍光体の含有量が、結着剤100質量部に対して、10〜200質量部であると、均一な厚さで発光素子4を被覆する蛍光体7、8を含む第一の部位9と、発光素子4の直上において封止部材の全体の厚みの10分の1以上の厚みを有する第二の部位10を形成することができる。
第一の部位の蛍光体の含有量は、第一の部位中の結着剤100質量部に対して、好ましくは20〜400質量部、より好ましくは25〜380質量部、さらに好ましくは30〜350質量部、特に好ましくは35〜300質量部である。第一の部位中に含まれる蛍光体の含有量が上記範囲であると、均一な厚さの蛍光体で発光素子を被覆することができ、発光素子からの光を蛍光体で効率よく波長変換することができる。
蛍光体が赤色蛍光体(すなわち、フッ化物蛍光体)と緑色から黄色に発光する蛍光体を含む場合、緑色から黄色に発光する蛍光体と赤色蛍光体の質量比(緑色から黄色に発光する蛍光体:赤色蛍光体)は、好ましくは5:95〜95:5、より好ましくは10:90〜90:10、さらに好ましくは20:80〜80:20、特に好ましくは30:70〜70:30である。蛍光体が赤色蛍光体と緑色から黄色に発光する蛍光体を上記範囲で含む場合には、赤色蛍光体が、一般式(I)で表される化学組成を有するフッ化物を含むため、赤色蛍光体の発光スペクトルの半値幅が狭く、緑色から黄色に発光する発光スペクトルのピークとの隙間が大きく、発光素子からの光を吸収して、色再現範囲が広くかつ輝度の高い光を発することができる。
封止材料は、フィラーを含んでいてもよい。フィラーは、無機フィラーであることが好ましい。無機フィラーは、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタン酸バリウム、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、ホワイトカーボン、タルク、炭酸マグネシウム、窒化ホウ素、グラスファイバー等を挙げることができる。中でも、フィラーは、アルミナ、シリカ、ジルコニアであることが好ましい。フィラーの形状は、球状、鱗片状、塊を粉砕した多形状のものが挙げられるが、球状のものが好ましい。フィラーは、レーザー回折散乱式粒度分布計で測定した体積平均粒径(メジアン径:d50)が1μm〜100μmのものが好ましい。フィラーは、レーザー回折散乱式粒度分布計で測定した体積平均粒径(メジアン径:d50)が、より好ましくは2μm〜80μmであり、さらに好ましくは2μm〜60μmであり、特に好ましくは2〜50μmである。
フィラーは、蛍光体とともに第一の部位に含まれてもよく、第二の部位に含まれていてもよい。
封止部材を構成する硬化前の封止材料は、ナノフィラーを含んでいてもよい。ナノフィラーは、レーザー回折散乱式粒度分布計で測定した二次粒子の体積平均粒径(メジアン径:d50)が、5nm〜1000nm、好ましくは10nm〜200nm、より好ましくは20nm〜180nm、さらに好ましくは30nm〜150nm、特に好ましくは40nm〜120nm、最も好ましくは50nm〜100nmのナノフィラーであることが好ましい。
ナノフィラーの材料としては、例えば無機酸化物、金属窒化物、金属炭化物、炭素化合物及び硫化物の群から選ばれる少なくとも1種類の無機材料を用いることができる。無機酸化物には、酸化チタン、酸化タンタル、酸化ニオブ、酸化タングステン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化スズ、酸化ハフニウム、酸化イットリウム、酸化シリコン、酸化アルミニウム等を挙げることができる。また、これらの複合無機酸化物を用いることができる。金属窒化物には、窒化シリコン等を挙げることができる。金属炭化物には、炭化シリコン等を挙げることができる。炭素化合物には、炭素単体であるが、ダイヤモンド又はダイヤモンド・ライク・カーボン等の透光性を有する無機材料等を挙げることができる。硫化物には、硫化銅又は硫化スズ等が挙げられる。中でも、ナノフィラーの材料は、酸化シリコンであることが好ましい。
ナノフィラーは、蛍光体とともに第一の部位に含まれてもよく、第二の部位に含まれていてもよい。
従来のMn4+で付活されたフッ化物蛍光体は、その粒子表面において、フッ化物蛍光体を構成する4価のマンガンイオンが空気中の水分と反応して二酸化マンガンが生成され、粒子表面が黒く着色された結果、輝度が低下する虞がある。
封止材料がナノフィラーを含む場合には、ナノフィラーがMn4+で付活されたフッ化物蛍光体の周囲に付着し、4価のマンガンイオンと水分との反応をさらに抑制することができ、二酸化マンガンの生成によって、粒子表面が黒く着色することを抑制することができると考えられる。そのため、本形態の発光装置は、発光出力の低下と色度ずれを更に抑制することができ、長期の信頼性試験においてより優れた耐久性を達成することができる。
封止部材を構成する硬化前の封止材料は、少なくとも結着剤と、蛍光体とを含み、必要に応じてフィラー及びナノフィラーの他に、結着剤が樹脂である場合には、樹脂を硬化させる硬化剤等を含んでいてもよい。また、封止材料中には、染料や顔料等を含んでいてもよい。封止部材の信頼性に悪影響を与えない程度に、光を拡散させるための空隙(ボイド)をある程度含んでいてもよい。
封止材料の製造方法は、特に限定されず、材料等の混合順序も特に限定されない。
封止材料の製造方法としては、所定量の各材料を同時に混合する方法が、所定量の各材料を順次混合する方法等を挙げることができる。封止材料は、好ましくは、蛍光体、必要に応じてフィラー、必要に応じてナノフィラー、結着剤、その他の材料をこの順序で容器内に投入し、撹拌して製造することが好ましい。
本形態の発光装置の製造方法は、凹部を形成する側壁を有するパッケージを準備する工程と、前記凹部の底面に発光素子を配置する工程と、下記一般式(I)で示される化学組成を有し、蛍光体粒子の内部領域の4価のマンガンイオン濃度よりも、4価のマンガンイオン濃度が低い表面領域を有するフッ化物蛍光体粒子と、結着剤とを含む封止材料をパッケージの凹部に注入する工程と、前記フッ化物蛍光体粒子を前記凹部の底面側に遠心沈降させた後、前記パッケージの凹部に注入された封止材料によって、前記発光素子を被覆しフッ化物蛍光体粒子を含む第一の部位と、この第一の部位上に配置され、フッ化物蛍光体粒子を実質的に含まない第二の部位とを含む硬化前の封止部材を形成する工程と、前記封止材料を硬化させ封止部材を形成する工程と、を含む発光装置の製造方法である。
A2[M1−bMn4+ bF6] (I)
式中、Aは少なくともK+を含み、Li+、Na+、Rb+、Cs+及びNH4 +からなる群から選ばれる少なくとも1種をさらに含んでいてもよいカチオンであり、Mは、第4族元素及び第14族元素からなる群より選択される少なくとも1種であり、bは0<b<0.2を満たす。
以下、図1を参照に、発光装置の製造方法について説明する。
凹部2を形成する側壁を有するパッケージ3を準備する。パッケージ3は、凹部2の底面に、第一のリード5及び第二のリード6を一体的に成形する。
パッケージ3の凹部の底面を構成する第一のリード5の上に、発光素子4を配置し、ダイボンディングにより接着する。発光素子4の正負の電極(図示せず)は、それぞれワイヤ11、12により第一のリード5及び第二のリード6に接続する。また、本形態の発光装置の製造方法は、必要に応じて、発光素子4、第一のリード5、第二のリード6、及びワイヤ11、12は、絶縁部材(図示略)で覆う工程を含んでいてもよい。絶縁部材は、スパッタや蒸着によって、第一のリード5及び第二のリード6(導電部材)、ワイヤ11、12及び発光素子4上に無機化合物からなる膜(層)を形成することが好ましい。また、絶縁部材は、原子層堆積法(Atomic Layer Deposition)により膜(層)を形成することがより好ましい。
次に、パッケージ3の凹部2に、少なくとも樹脂及び蛍光体7、8を含む封止材料を注入し、凹部2に封止材料を充填する。封止材料は、複数配置されたパッケージ3の複数の凹部2にシリンジ等で注入することが好ましい。封止材料は、必要に応じて、フィラー、ナノフィラー又はその他の材料を含んでいてもよい。
凹部2に封止材料を充填したパッケージ3は、強制的な遠心力を付加し、封止材料中のフッ化物蛍光体粒子7及び他の蛍光体粒子8を、発光素子4を被覆するように遠心沈降させた後、封止材料によって、発光素子を被覆し上記蛍光体粒子を含む第一の部位9と、その第一の部位9上に配置され、蛍光体粒子を実質的に含まない第二の部位10とを含む封止部材を形成する。凹部2に封止材料を充填したパッケージ3は、マガジンに入れて遠心機で十分に沈降するまで回転させ、蛍光体粒子を遠心沈降させることが好ましい。
そして、蛍光体粒子を遠心沈降させた後、結着剤を硬化させ、パッケージ3の凹部2に注入された封止材料によって、蛍光体を含み発光素子を被覆する第一の部位と、この第一の部位上に配置され、蛍光体粒子を実質的に含まない第二の部位とを含む封止部材が形成された発光装置を得ることができる。結着剤の硬化方法は、特に限定されず、結着剤の種類に応じて、硬化方法を適宜選択できる。
画像表示装置は、前記発光装置の少なくとも1つを備える。画像表示装置は、発光装置を備えるものであれば特に制限されず、従来公知の画像表示装置から適宜選択することができる。画像表示装置は例えば、前記発光装置に加えて、カラーフィルター部材、光透過制御部材等を備えて構成される。
表1に示す仕込み組成比となるように、K2MnF6を21.66g秤量し、55質量%のHF水溶液800gに溶解した後、40質量%のH2SiF6水溶液400gを加えて溶液Aを調製した。一方でKHF2を260.14g秤量し、それを55質量%のHF水溶液450gに溶解させて溶液Bを調製した。また、40質量%のH2SiF6水溶液200gを秤量したものを溶液Cとした。
次に室温(23〜28℃)で、溶液Aを撹拌しながら溶液Bと溶液Cとを同時に滴下していくことで蛍光体結晶(フッ化物粒子)を析出させていき、表2に示すように、溶液Bと溶液Cのそれぞれ75重量%の滴下が終了した段階で一旦滴下を停止した(第一の工程)。
還元剤として15gを秤量した30質量%のH2O2水溶液を溶液Aに添加した(第二の工程)後、溶液Bと溶液Cの滴下を再開した(第三の工程)。溶液Bと溶液Cの滴下が終了後、得られた沈殿物を分離、IPA(イソプロピルアルコール)洗浄を行い、70℃で10時間乾燥することで製造例1のフッ化物蛍光体(K2[Si0.97Mn4+ 0.03F6])を作製した。
(封止材料の製造)
赤色蛍光体として、製造例1のフッ化物蛍光体を使用した。緑色から黄色に発光する蛍光体として、(Si,Al)6(O,N)8:Eu(β−sialon)を使用した。緑色から黄色に発光する蛍光体と赤色蛍光体は、緑色から黄色に発光する蛍光体と赤色蛍光体の質量比(緑色から黄色に発光する蛍光体:赤色蛍光体)で、27:73となるように配合した。結着剤は樹脂であり、樹脂は、フェニルシリコーン(Dow Corning(登録商標OE−6630)を使用した。フィラーは、レーザー回折散乱式粒度分布計(MALVERN社製MASTER SIZER 2000)で測定した体積平均粒径(メジアン径:d50)が11μmのシリカを使用した。ナノフィラーは、レーザー回折散乱式粒度分布計(MALVERN社製MASTER、SIZER 2000)で測定した二次粒子の体積平均粒(メジアン径:d50)が12nmである、酸化シリコン(AEROSIL(登録商標))を使用した。各成分の配合は、以下のとおりである。封止材料100質量%中、樹脂の含有量は91.1質量%である。
撹拌容器に、蛍光体(赤色蛍光体及び緑色から黄色に発光する蛍光体)を投入し、次に、フィラー及びナノフィラーを投入し、最後に樹脂及び硬化剤を投入し、5分程度撹拌して、封止材料1を得た。
結着剤(シリコーン樹脂 主剤) 100質量部
赤色蛍光体(製造例1) 31.57質量部(43.25質量部×0.73)
緑色から黄色に発光する蛍光体(β−サイアロン) 11.68質量部(43.25質量
部×0.27)
フィラー(酸化シリコン) 5質量部
ナノフィラー(酸化シリコン:SiO2) 0.4質量部
硬化剤(液状シリコーン樹脂) 400質量部
凹部を形成する側壁を有するパッケージを準備し、凹部に発光素子を配置した後、封止材料1をパッケージの凹部にシリンジを用いて注入した。発光素子は、380nm〜485nmの範囲に発光ピーク波長を有するものを用いた。
次いで、凹部2に封止材料を充填したパッケージ3は、マガジンに入れて遠心機で十分に回転させ、蛍光体を遠心沈降させた後、パッケージの凹部に注入された封止材料によって、蛍光体を含み、発光素子を被覆する第一の部位と、その第一の部位上に配置され、蛍光体を実質的に含まない第二の部位とを形成した。硬化前の第二の部位の厚みが、発光素子の直上において、封止材料の全体の厚みの4分の1以上であった。具体的には、発光素子の直上において、封止部材の厚みが410μmであり、第一の部位の厚みが150μmであり、第二の部位の厚みが260μmであった。
蛍光体を遠心沈降させる工程において、遠心力と重力との合力の方向を、発光素子を配置するパッケージの底面の垂直方向と一致させて、蛍光体の遠心沈降を行った。
その後、封止材料を硬化し、蛍光体を含み、発光素子を被覆する第一の部位と、その第一の部位上に配置され、蛍光体を実質的に含まない第二の部位を含む封止部材を形成し、実施例1の発光装置を得た。
実施例1において、封止材料中の蛍光体を遠心沈降させることなく、第一の部位及び第二の部位を含む封止部材を形成しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1の発光装置を得た。比較例1の発光装置は、封止部材中に、蛍光体がほぼ均一に分散されていた。
実施例1及び比較例1に係る発光装置について、121℃、湿度100%、2気圧(atm)でプレッシャークッカーテスト(PCT)を行った。結果を図3に示す。
一方、図3(b)に示すように、比較例1は、PCT4時間で、発光装置の表面に変色が確認できた。図3(c)に示すように、比較例1は、PCT100時間で発光装置の表面の変色はさらに進み、図3(d)に示すように、比較例1は、PCT200時間で発光装置の表面の変色がさらに進んでいた。このような変色を起こすことにより、その変色個所に光が吸収され、発光装置の色ずれや光出力の低下が起こると考えられる。
図3に示す結果から、本開示の実施例1の発光装置は、耐久性に優れることが分かる。
表3に示す赤色蛍光体及び緑色から黄色に発光する蛍光体を使用したこと以外は、実施例1と同様にして発光装置を製造した。また、参考例に係るは発光装置として、蛍光体はYAGを使用した。参考例、実施例2〜4及び比較例2〜4の発光装置は、いずれも蛍光体を含み、発光素子を被覆する第一の部位と、その第一の部位上に配置され、蛍光体を実質的に含まない第二の部位を有する封止部材を有する。
参考例、実施例2〜4及び比較例2〜4の発光装置を画像表示装置に組み込んだ。これらの画像表示装置のNTSC比を測定した。
NTSC比とは、アメリカテレビジョン標準化委員会(National Television Standards Committee)によりCIE1931 XYZ表色系の色度(x,y)にて定められた標準方式の3原色、赤(0.670,0.330)、緑(0.210,0.710)、青(0.140,0.080)を結ぶ三角形を基準として、画像表示装置の赤・緑・青単色の色度を結んで得られる三角形を比較した面積比のことである。この面積比が即ち色再現範囲として定義され、その比率が高いほど色再現性が高いと判定される。
画像表示装置は、CIE1931色度図上において、色再現範囲が、NTSC比70%以上であることが好ましい。
参考例、実施例2〜4及び比較例2〜4の発光装置を画像表示装置に組み込んだ。これらの画像表示装置のsRGBを測定した。
sRGB比とは、国際電気標準会議(International Electrotechnical Commission)によりCIE1931 XYZ表色系の色度(x,y)にて定められた標準方式の3原色、赤(0.640,0.330)、緑(0.300,0.600)、青(0.150,0.060)を結ぶ三角形を基準として、画像表示装置の赤・緑・青単色の色度を結んで得られる三角形を比較した面積比のことである。この面積比が即ち色再現範囲として定義され、その比率が高いほど色再現性が高いと判定される。
参考例、実施例2〜4及び比較例2〜4の発光装置について、積分球を用いて光束を測定し、参考例の光束を基準とした相対光束を算出した。
Claims (7)
- パッケージと、
発光素子と、
前記発光素子を被覆する封止部材とを備えており、
前記封止部材が、前記発光素子を被覆し蛍光体を含む第一の部位と、その第一の部位上に配置され、蛍光体を実質的に含まない第二の部位とを有しており、
前記発光素子の直上において、前記第二の部位の厚みが、前記封止部材全体の厚みの4分の1以上であり、
前記封止部材は、樹脂を含み、樹脂100質量部に対する、蛍光体の含有量が30〜120質量部であり、
前記封止部材は、体積平均粒径が1μm〜100μmのフィラーを樹脂100質量部に対して5〜30質量部含み、
前記発光素子は、380nm〜485nmの範囲に発光ピーク波長を有する光を発し、
前記蛍光体が、下記一般式(I)で示される組成を有するフッ化物蛍光体粒子と、380nm〜485nmの範囲にある波長の光を吸収し、495nm〜590nmの範囲に発光ピーク波長を有する緑色から黄色に発光する蛍光体とを含み、
前記緑色から黄色に発光する蛍光体は、組成式が(Si,Al)6(O,N)8:Euで表されるβ-サイアロン、組成式が(Ca,Sr,Ba,Zn)8MgSi4O16(F,Cl,Br,I)2:Euで表されるハロシリケート、または、組成式が(Y,Lu)3(Al,Ga)5O12:Ceで示される希土類アルミン酸塩蛍光体を含む、発光装置。
A2[M1−bMn4+ bF6] (I)
(式中、Aは少なくともK+を含み、Li+、Na+、Rb+、Cs+及びNH4 +からなる群から選ばれる少なくとも1種をさらに含んでいてもよいカチオンであり、Mは、第4族元素及び第14族元素からなる群より選択される少なくとも1種であり、bは0<b<0.2である) - 前記第一の部位における蛍光体の含有量が、第一の部位に含まれる樹脂100質量部に対して20〜400質量部である、請求項1に記載の発光装置。
- 前記一般式(I)中のMが、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)及びスズ(Sn)からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の発光装置。
- 前記緑色から黄色に発光する蛍光体と前記フッ化物蛍光体粒子の質量比が、5:95〜95:5である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の発光装置。
- 前記パッケージは、凹部を形成する側壁を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の発光装置。
- 前記凹部の底部に配置される第一のリード及び第二のリードを更に備え、少なくとも前記第一のリード及び前記第二のリードが、酸化物または窒化物を含む絶縁部材で覆われている、請求項5に記載の発光装置。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の発光装置を少なくとも1つ備える、画像表示装置。
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