JP6344460B2 - フッ化物蛍光体の製造方法 - Google Patents

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本開示は、フッ化物蛍光体の製造方法に関する。
発光ダイオード(Light emitting diode:LED)は、窒化ガリウム(GaN)のような金属化合物から生産される半導体発光素子(以下、「発光素子」ともいう。)である。この半導体発光素子と蛍光体とを組み合わせて白色や電球色、橙色等に発光する発光装置が種々開発されている。これらの白色等に発光する発光装置は、光の混色の原理によって得られる。白色光を放出する方式としては、紫外線を発光する発光素子と、赤色、緑色、青色のそれぞれに発光する3種の蛍光体とを用いる方式と、青色を発光する発光素子及び黄色等を発光する蛍光体を用いる方式とがよく知られている。青色を発光する発光素子と黄色等を発光する蛍光体とを用いる方式の発光装置は、一般照明、液晶用バックライト、車載照明、ディスプレイ等の幅広い分野で求められている。
例えば、青色域に励起帯を有し、発光ピークの半値幅の狭い赤色発光蛍光体として、例えば、KSiF:Mn4+の組成を有するフッ化物蛍光体が知られており、これらの製造方法の改良が種々検討されている(例えば、特許文献1参照)。
特開2012−224536号公報
発光ピークの半値幅が狭い赤色発光のMn4+付活のフッ化物蛍光体の実用化が望まれているが、従来技術ではその耐久性に改善の余地があり、照明用途など過酷な環境での使用には不充分であった。
以上のことから、本開示の一実施形態は、耐久性に優れる赤色発光のフッ化物蛍光体の製造方法を提供することを目的とする。
前記課題を解決するための具体的手段は以下の通りであり、本開示は以下の態様を包含する。
第一の態様は、Mnと、アルカリ金属元素及びNH からなる群から選ばれる少なくとも1種と、第4族元素及び第14族元素からなる群より選ばれる少なくとも1種とを組成に有するフッ化物粒子を、フッ素元素を含む雰囲気下、100℃以上で加熱処理することを含む、フッ化物蛍光体の製造方法である。
前記フッ化物粒子は、式(I)で表される組成を有することが好ましい。
[M1−aMn4+ ] (I)
式中、Aは、アルカリ金属元素及びNH からなる群から選択される少なくとも1種を示し、Mは、第4族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を示し、aは0.01<a<0.20を満たす。
第二の態様は、マンガンを含む第一の溶液、アルカリ金属元素及びNH からなる群から選択される少なくとも1種を含む第二の溶液、並びに第4族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む第三の溶液を準備することと、準備した第一の溶液及び第三の溶液を、準備した液量のそれぞれ0.3体積%以下である1分間当りの滴下量で、準備した第二の溶液にそれぞれ滴下して、Mn、アルカリ金属元素及びNH からなる群から選ばれる少なくとも1種、並びに第4族元素及び第14族元素からなる群より選ばれる少なくとも1種を組成に有するフッ化物粒子を得ることと、を含む、フッ化物蛍光体の製造方法である。
前記フッ化物粒子は、下記式(I)で表される組成を有することが好ましい。
[M1−aMn4+ ] (I)
式中、Aは、アルカリ金属元素及びNH からなる群から選択される少なくとも1種を示し、Mは、第4族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を示し、aは0.01<a<0.20を満たす。
本開示の一実施形態によれば、耐久性に優れる赤色発光のフッ化物蛍光体の製造方法を提供することができる。
本実施形態に係る発光装置の一例を示す概略断面図である。 本実施形態に係るフッ化物蛍光体の赤外吸収スペクトルの一例とそれとの比較のための赤外吸収スペクトルを示す図である。 図2に示される本実施形態に係るフッ化物蛍光体の赤外吸収スペクトルの一部を拡大して示す図である。
以下、本開示に係るフッ化物蛍光体、その製造方法及び発光装置について、実施の形態及び実施例を用いて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための、フッ化物蛍光体、その製造方法及び発光装置を例示するものであって、本発明は、フッ化物蛍光体、その製造方法及び発光装置を以下のものに特定するものではない。
なお、色名と色度座標との関係、光の波長範囲と単色光の色名との関係等は、JIS Z8110に従う。具体的には、380nm〜410nmが紫色、410nm〜455nmが青紫色、455nm〜485nmが青色、485nm〜495nmが青緑色、495nm〜548nmが緑色、548nm〜573nmが黄緑色、573nm〜584nmが黄色、584nm〜610nmが黄赤色、610nm〜780nmが赤色である。また本明細書において、可視光の短波長領域の光は、特に限定されないが400nm〜500nmの領域をいう。
また本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。さらに組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
<フッ化物蛍光体>
本実施形態のフッ化物蛍光体は、下記式(I)で表される組成を有し、赤外吸収スペクトルにおいて下記式(P)で与えられるIRピーク面積比Zが2.5×10−3未満である。
[M1−aMn4+ ] (I)
式中、Aは、K、Li、Na、Rb、Cs及びNH からなる群から選択される少なくとも1種の陽イオンを示し、Mは、第4族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を示し、aは0.01<a<0.20を満たす。
=(3500cm−1以上3800cm−1以下のピーク面積)/(1050cm−1以上1350cm−1以下のピーク面積) (P)
図2は、本実施形態に係るフッ化物蛍光体の赤外吸収スペクトルの一例とそれとの比較のための赤外吸収スペクトルを示す図である。図3は、図2に示される赤外吸収スペクトルのうち、波数が3000cm−1から3900cm−1の部分を拡大して示す拡大図である。フッ化物蛍光体の赤外吸収スペクトルにおける、3500cm−1以上3800cm−1以下の波数範囲のピーク面積の、1050cm−1以上1350cm−1以下の波数範囲のピーク面積に対する面積比であるIRピーク面積比Zは、2.5×10−3より小さい。これによって、優れた耐久性を有するフッ化物蛍光体を得ることができる。また、このフッ化物蛍光体を用いて構成される発光装置は優れた長期信頼性を示すことができる。ここで1050cm−1以上1350cm−1以下の吸収はフッ化物蛍光体自体に由来する吸収であり、3000cm−1以上3800cm−1以下の吸収は、例えば、水(HO)に由来する吸収であり、3500cm−1以上3800cm−1以下の吸収は、例えば、シラノール残基(Si−OH)に由来する吸収である。すなわち、IRピーク面積比Zが2.5×10−3以下であるとは、フッ化物蛍光体に含まれるOHに起因する成分量が少ないことを意味する。このようなフッ化物蛍光体は、特にその表面における結晶欠陥等が低減されていると考えられ、これにより耐久性に優れると考えられる。
フッ化物蛍光体において、耐久性の観点から、IRピーク面積比Zは1.0×10−3以下が好ましい。
また、IRピーク面積比Zの下限は特に限定されず、目的等に応じて適宜選択することができ、例えば、IRピーク面積比Zは0より大きく、1.0×10−5以上が好ましい。Zが、0より大きいと、例えばフッ化物蛍光体粒子の表面に親水性が付与され、樹脂への分散性がより向上する傾向があり、フッ化物蛍光体を含む未硬化樹脂組成物の流動性がより向上する傾向がある。
フッ化物蛍光体の赤外吸収スペクトルは、臭化カリウム(KBr)バックグラウンドで拡散反射法により測定される。3500cm−1以上3800cm−1以下の波数範囲のピーク面積は、3000cm−1における吸収強度と3800cm−1における吸収強度とを結んだ直線をバックグラウンドとしてそれぞれ算出される。また1050cm−1〜1350cm−1の波数範囲のピーク面積は、積分範囲の両端における吸収強度を結んだ直線をバックグラウンドとして算出される。具体的な面積の算出は例えば、赤外分光装置に付属のソフトウェアで行うことができる。
フッ化物蛍光体は、式(I)で表される組成を有する粒子を含む。式(I)におけるAは、リチウムイオン(Li)、ナトリウムイオン(Na)、カリウムイオン(K)、ルビジウムイオン(Rb)、セシウムイオン(Cs)及びアンモニウムイオン(NH )からなる群から選択される少なくとも1種の陽イオンである。中でもAは、Li、Na、K、Rb、Cs及びNH からなる群から選択され、Kを含む少なくとも1種の陽イオンであることが好ましく、Kを主成分とするアルカリ金属等の陽イオンであることがより好ましい。ここで「Kを主成分とする」とは、式(I)のAにおけるKの含有率が80モル%以上であることを意味し、90モル%以上であることが好ましく、95モル%以上であることがより好ましい。
式(I)におけるMは、第4族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種であり、Mは、発光特性の観点から、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)及びスズ(Sn)からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、ケイ素(Si)、又はケイ素(Si)及びゲルマニウム(Ge)を含むことがより好ましく、ケイ素(Si)、又はケイ素(Si)及びゲルマニウム(Ge)であることが更に好ましい。
Mがケイ素(Si)、又はケイ素(Si)及びゲルマニウム(Ge)を含む場合、Si及びGeの少なくとも一方の一部が、Ti、Zr及びHfを含む第4族元素、並びにC及びSnを含む第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい。その場合、MにおけるSi及びGeの総含有率は特に制限されず、例えば、90モル%以上であることが好ましく、95モル%以上であることがより好ましい。
式(I)におけるaは0.01以上0.20以下であり、発光効率と発光強度の観点から0.015以上0.15以下が好ましく、0.02以上0.10以下がより好ましく、0.03以上0.10以下が更に好ましい。
フッ化物蛍光体の粒径及び粒度分布は特に制限されず、発光強度と耐久性の観点から、単一ピークの粒度分布を示すことが好ましく、分布幅の狭い単一ピークの粒度分布であることがより好ましい。フッ化物粒子の粒径は例えば、体積平均粒径として1μm以上100μm以下であり、5μm以上70μm以下が好ましく、20μm以上70μm以下がより好ましい。また、フッ化物蛍光体の表面積及び嵩密度は特に制限されない。フッ化物粒子の体積平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(MALVERN社製MASTER SIZER 2000)により測定される粒径(メジアン径)である。
フッ化物蛍光体は、Mn4+で付活された蛍光体であり、可視光の短波長領域の光を吸収して赤色に発光可能である。可視光の短波長領域の光である励起光は、主に青色領域の光であることが好ましい。励起光は、具体的には、強度スペクトルの主ピーク波長が380nm以上500nm以下の範囲に存在することが好ましく、380nm以上485nm以下の範囲に存在することがより好ましく、400nm以上485nm以下の範囲に存在することが更に好ましく、440nm以上480nm以下の範囲に存在することが特に好ましい。
またフッ化物の発光波長は、励起光よりも長波長であって、赤色であれば特に制限されない。フッ化物の発光スペクトルは、ピーク波長が610nm以上650nm以下の範囲に存在することが好ましい。また発光スペクトルの半値幅は、小さいことが好ましく、具体的には10nm以下であることが好ましい。
<フッ化物蛍光体の製造方法>
本実施形態のフッ化物蛍光体の製造方法は、式(I)で表される組成を有する粒子(以下、「フッ化物粒子」ともいう)を、フッ素元素を含む雰囲気下、100℃以上で加熱処理することを含む。フッ化物粒子は、通常用いられる方法で製造することができる。また、後述する製造方法で製造することもできる。
フッ化物粒子を、フッ素原子を含む雰囲気下、100℃以上で加熱処理することで、例えば、フッ化物粒子の表面に存在する水酸基、シラノール残基等の含有量が減少し、これにより耐久性が向上すると考えられる。
フッ素元素含む雰囲気は、液体であっても気体であってもよく、液体であることが好ましい。フッ素元素を含む雰囲気が液体の場合、例えば、フッ化水素等のフッ素化合物を含む液媒体とすることができる。また、フッ素元素を含む雰囲気が気体の場合、例えば、フッ化水素等のフッ素化合物、フッ素ガス等を含む気体とすることができる。
フッ素元素を含む雰囲気が液体の場合、液媒体としては、例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール溶剤、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン溶剤、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等のエーテル溶剤等の有機溶剤を挙げることができる。また、フッ素化合物としては、例えば、フッ化水素(HF)、ヘキサフルオロケイ酸(HSiF)、フッ化水素カリウム(KHF)、フッ化カリウム(KF)等の無機酸塩を挙げることができる。液媒体に含まれるフッ素化合物は1種単独でも2種以上の組合せであってもよい。
フッ素元素を含む雰囲気は、フッ素化合物以外の成分を更に含んでいてもよい。フッ素化合物以外の成分としては、硝酸(HNO)等の無機酸;過酸化水素等の過酸化物;硝酸カリウム(KNO)等のカリウムイオンを含む無機酸塩を挙げることできる。中でもフッ素化合物以外の成分は、少なくともカリウムイオンを含むことが好ましく、カリウムイオンを含む無機酸塩を少なくとも含むことがより好ましい。フッ素化合物以外の成分は1種単独でも2種以上の組合せであってもよい。
フッ素化合物を含む液媒体におけるフッ素化合物の濃度は特に制限されず、目的等に応じて適宜選択すればよい。例えば、液媒体がフッ化水素を含む場合、フッ化水素の濃度は30〜60質量%とすることができ、45〜60質量%が好ましい。また、液媒体がフッ化水素カリウム等のフッ化物塩を含む場合、その濃度は10〜25質量%とすることができ、15〜20質量%が好ましい。
フッ素元素を含む雰囲気が気体の場合、フッ素ガス又はフッ素化合物以外のガス媒体を含んでいてもよい。ガス媒体としては窒素(N)、アルゴン(Ar)、酸素(O)などを挙げることができる。中でも、フッ化物蛍光体の酸化を抑制する観点から、窒素などの不活性雰囲気が好ましい。ガス媒体の成分は1種単独でも、2種以上を組合せて用いてもよい。
フッ素元素を含む雰囲気が気体の場合、フッ素ガス又はフッ素化合物の濃度は例えば、10体積%以上とすることができ、15体積%以上が好ましい。
加熱処理の温度は100℃以上であり、110℃以上が好ましく、120℃以上であることがより好ましく、150℃以上であることが更に好ましい。温度の上限は特に制限されず、耐久性と製造効率の観点から、600℃以下であることが好ましく、550℃以下であることがより好ましい。
また、耐久性向上と分散性向上の観点から、加熱処理は液媒体中で行われることが好ましい。
加熱処理は、加圧条件下で行ってもよい。加圧する場合の圧力条件は特に制限されず目的等に応じて適宜選択することができる。液体での加熱処理時は、気化が生じるため、密閉雰囲気での加熱処理とすることもできる。その場合の圧力は、耐久性向上の観点から、計算上、1.5MPa以上であることが好ましく、2.5MPa以上であることがより好ましい。圧力の上限は特に制限されず、耐久性と製造効率の観点から、30MPa以下であることが好ましく、15MPa以下であることがより好ましい。また、ガス媒体での加熱処理においては、大気圧から1MPa以下であることが好ましい。
加熱処理の時間は、処理量、温度等の条件に応じて適宜選択すればよい。処理時間は例えば、耐久性向上の観点から、1時間以上であることが好ましく、2時間以上であることがより好ましい。処理時間の上限は特に制限されず、耐久性と製造効率の観点から、48時間以下であることが好ましく、24時間以下であることがより好まし
フッ化物粒子は、例えば、マンガンを含む第一の溶液、K、Li、Na、Rb、Cs及びNH からなる群から選択される少なくとも1種の陽イオンを含む第二の溶液、並びに第4族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む第三の溶液を準備することと、準備した第一の溶液及び第三の溶液を、準備した液量のそれぞれ0.3体積%以下である1分間当りの滴下量で、準備した第二の溶液にそれぞれ滴下して、フッ化物粒子を得ることと、を含む製造方法で製造されることが好ましい。
このような製造方法で製造されるフッ化物粒子は、蛍光の内部量子効率が向上する傾向がある。内部量子効率は例えば80%以上であり、85%以上であることが好ましい。
第二の溶液に、第一の溶液及び第三の溶液をそれぞれの初期液量の0.3体積%以下の1分間当たりの滴下量で、滴下することで形成されるフッ化物蛍光体粒子に含まれるマンガン付活量を増加させながら、内部量子効率に優れるフッ化物蛍光体を得ることができる。これは例えば、フッ化物蛍光体の生成反応が充分に制御されて進行することでフッ化物蛍光体粒子中におけるマンガンの分布がより均一になり、フッ化物蛍光体を付活するMn4+近傍の結晶構造が安定化するため、あるいはフッ化物蛍光体中の結晶欠陥が低減されるためと考えることができる。また、得られる蛍光体は、波長530nmにおける反射率が高くなると考えられ、例えば緑色発光の蛍光体とともに照明用途に適用した場合に、緑色領域での輝度の低下を抑制することができる。
滴下工程においては、第一の溶液及び第三の溶液をそれぞれの初期液量の0.3体積%以下ずつの1分間当たりの滴下量で滴下する。すなわち第一の溶液及び第三の溶液をそれぞれ333.3分間(5.6時間)以上の時間をかけて滴下する。それぞれの溶液の1分間当たりの滴下量は、初期液量の0.1体積%以下であることが好ましい。
第一の溶液の滴下時間と第三の溶液の滴下時間は、それぞれ準備した液量等に応じて適宜選択され、同一であっても異なっていてもよく、同一であることが好ましい。
滴下工程においては、第二の溶液を撹拌しながら、第一の溶液及び第三の溶液を滴下することが好ましい。撹拌方法は特に制限されず、製造規模、反応釜等に応じて、通常用いられる撹拌方法から適宜選択することができる。
また滴下工程における温度は特に制限されない。例えば、第二の溶液の温度が40℃以下になるように制御すればよく、15〜30℃になるように制御することが好ましい。
第一の溶液は、4価のマンガンを含む第一の錯イオンと、フッ化水素とを少なくとも含み、必要に応じてその他の成分を含んでいてもよい。第一の溶液は、例えば、マンガン源を含むフッ化水素酸の水溶液として得られる。マンガン源は、マンガンを含む化合物であれば特に制限はされない。第一の溶液を構成可能なマンガン源として、具体的には、KMnF、KMnO、KMnCl等を挙げることができる。中でも、付活することのできる酸化数(4価)を維持しながら、MnF錯イオンとしてフッ化水素酸中に安定して存在することができること等から、KMnFが好ましい。なお、マンガン源のうち、カリウム等のアルカリ金属等を含むものは、第二の溶液に含まれるアルカリ金属等の陽イオン源の一部を兼ねることができる。第一の溶液を構成するマンガン源は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
第一の溶液におけるフッ化水素濃度の下限値は、通常20質量%以上、好ましくは25質量%以上、より好ましくは30質量%以上である。また、第一の溶液におけるフッ化水素濃度の上限値は、通常80質量%以下、好ましくは75質量%以下、より好ましくは70質量%以下である。フッ化水素濃度が30質量%以上であると、第一の溶液を構成するマンガン源(例えば、KMnF)の加水分解に対する安定性が向上し、第一の溶液における4価のマンガン濃度の変動が抑制される。これにより得られるフッ化物蛍光体に含まれるマンガン付活量を容易に制御することができ、フッ化物蛍光体における発光効率のバラつき(変動)を抑制することができる傾向がある。またフッ化水素濃度が70質量%以下であると、第一の溶液の沸点の低下が抑制され、フッ化水素ガスの発生が抑制される。これにより、第一の溶液におけるフッ化水素濃度を容易に制御することができ、得られるフッ化物蛍光体の粒子径のバラつき(変動)を効果的に抑制することができる。
第一の溶液におけるマンガン源濃度は特に制限されない。第一の溶液におけるマンガン源濃度の下限値は、通常0.01質量%以上、好ましくは0.03質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上である。また、第一の溶液におけるマンガン源濃度の上限値は、通常50質量%以下、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。
第二の溶液は、少なくともカリウムを含むことが好ましい。第二の溶液は、K、Li、Na、Rb、Cs及びNH からなる群から選択され、Kを含む少なくとも1種の陽イオンと、フッ化水素とを少なくとも含み、必要に応じてその他の成分を含んでいてもよい。第二の溶液は、例えば、カリウムイオン等のアルカリ金属イオン等を含むフッ化水素酸の水溶液として得られる。第二の溶液を構成可能なカリウムイオンを含むカリウム源として、具体的には、KF、KHF、KOH、KCl、KBr、KI、酢酸カリウム、KCO等の水溶性カリウム塩を挙げることができる。中でも溶液中のフッ化水素濃度を下げることなく溶解することができ、また、溶解熱が小さく安全性が高いことから、KHFが好ましい。またカリウム源以外のアルカリ金属等の陽イオン源としては、NaHF、RbCO、CsCO等を挙げることができる。第二の溶液を構成する陽イオン源は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
第二の溶液におけるフッ化水素濃度の下限値は、通常20質量%以上、好ましくは25質量%以上、より好ましくは30質量%以上である。また、第二の溶液におけるフッ化水素濃度の上限値は、通常80質量%以下、好ましくは75質量%以下、より好ましくは70質量%以下である。
また、第二の溶液における陽イオン源濃度の下限値は、通常5質量%以上、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上である。また、第二の溶液におけるアルカリ金属源濃度の上限値は、通常80質量%以下、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下である。
第三の溶液は、第4族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種と、フッ素イオンとを含む第二の錯イオンを少なくとも含み、必要に応じてその他の成分を含んでいてもよい。第三の溶液は、例えば、第二の錯イオンを含む水溶液として得られる。
第二の錯イオンは、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)及びスズ(Sn)からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、ケイ素(Si)、又はケイ素(Si)及びゲルマニウム(Ge)を含むことがより好ましく、フッ化ケイ素錯イオンであることが更に好ましい。
例えば、第二の錯イオンがケイ素(Si)を含む場合、第二の錯イオン源は、ケイ素とフッ素とを含み、溶液への溶解性に優れる化合物であることが好ましい。第二の錯イオン源として具体的には、HSiF、NaSiF、(NHSiF、RbSiF、CsSiF等を挙げることができる。これらの中でも、水への溶解度が高く、不純物としてアルカリ金属元素を含まないことにより、HSiFが好ましい。第三の溶液を構成する第二の錯イオン源は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
第三の溶液における第二の錯イオン源濃度の下限値は、通常5質量%以上、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上である。また、第三の溶液における第二の錯イオン源濃度の上限値は、通常80質量%以下、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下である。
第二の溶液に、所定の単位時間当たりの滴下量で第一の溶液及び第三の溶液を滴下し、混合することにより、所定の割合で第一の錯イオンと、アルカリ金属イオン等の陽イオンと、第二の錯イオンとが反応して目的の式(I)で表される化学組成を有する結晶であるフッ化物蛍光体が析出する。析出したフッ化物蛍光体は濾過等により固液分離して回収することができる。またエタノール、イソプロピルアルコール、水、アセトン等の溶媒で洗浄してもよい。更に乾燥処理を行ってもよく、通常50℃以上、好ましくは55℃以上、より好ましくは60℃以上、また、通常150℃以下、好ましくは120℃以下、より好ましくは110℃以下で乾燥する。乾燥時間としては、フッ化物蛍光体に付着した水分を蒸発することができれば、特に制限はなく、例えば、10時間程度である。
なお、第一の溶液、第二の溶液及び第三の溶液の混合に際しては、第一から第三の溶液の仕込み組成と得られるフッ化物蛍光体の化学組成とのずれを考慮して、生成物としてのフッ化物蛍光体の化学組成が目的の化学組成となるように、第一の溶液、第二の溶液及び第三の溶液の混合割合を適宜調整することが好ましい。
フッ化物蛍光体の製造方法は、上記に加えてフッ化物蛍光体の分離処理、精製処理、乾燥処理等の後処理工程を更に含んでいてもよい。
<発光装置>
本実施形態の発光装置は、380nm以上485nm以下の波長範囲の光を発する励起光源と、前記フッ化物蛍光体を含む第一の蛍光体と、380nm以上485nm以下の波長範囲の光を吸収し、極大発光波長を495nm以上590nm以下の波長範囲に有する第二の蛍光体と、を含む。発光装置は、必要に応じて、その他の構成部材を更に含んでいてもよい。発光装置が前記フッ化物蛍光体を含むことで、耐久性に優れ、優れた長期信頼性を達成することができる。すなわち、前記フッ化物蛍光体を含む発光装置は、長期間にわたって、出力の低下と色度変化が抑制され、照明用途等の過酷な環境での使用に好適に適用することができる。
(励起光源)
励起光源としては、可視光の短波長領域である380nm以上485nm以下の波長範囲の光を発するものを使用する。励起光源として好ましくは420nm以上485nm以下の波長範囲、より好ましくは440nm以上480nm以下の波長範囲に発光ピーク波長(極大発光波長)を有するものである。これにより、フッ化物蛍光体を効率よく励起し、可視光を有効活用することができる。また当該波長範囲の励起光源を用いることにより、発光強度が高い発光装置を提供することができる。
励起光源には半導体発光素子を用いることが好ましい。励起光源に半導体発光素子を用いることによって、高効率で入力に対する出力のリニアリティが高く、機械的衝撃にも強い安定した発光装置を得ることができる。
発光素子は、可視光の短波長領域の光を発するものを使用することができる。例えば、青色、緑色の発光素子としては、窒化物系半導体(InAlGa1−X−YN、0≦X、0≦Y、X+Y≦1)を用いたものを用いることができる。
(第一の蛍光体)
発光装置に含まれる第一の蛍光体は前述のフッ化物蛍光体を含む。フッ化物蛍光体の詳細については既述の通りである。フッ化物蛍光体は、例えば、励起光源を覆う封止樹脂に含有されることで発光装置を構成することができる。励起光源がフッ化物蛍光体を含有する封止樹脂で覆われた発光装置では、励起光源から出射された光の一部がフッ化物蛍光体に吸収されて、赤色光として放射される。380nm以上485nm以下の波長範囲の光を発する励起光源を用いることで、放射される光をより有効に利用することができる。よって発光装置から出射される光の損失を少なくすることができ、高効率の発光装置を提供することができる。
発光装置に含まれるフッ化物蛍光体の含有量は特に制限されず、励起光源等に応じて適宜選択することができる
(第二の蛍光体)
発光装置は、第一の蛍光体に加えて、380nm以上485nm以下の波長範囲の光を吸収し、極大発光波長を495nm以上590nm以下の波長範囲に有する他の蛍光体を更に含む。発光装置が第二の蛍光体を含むことで、照明装置としてより好適に適用することができる。他の蛍光体は、例えば、前記フッ化物蛍光体と同様に封止樹脂に含有させて発光装置を構成することができる。
第二の蛍光体としては例えば、Eu、Ce等のランタノイド系元素で主に付活される窒化物系蛍光体、酸窒化物系蛍光体、サイアロン系蛍光体;Eu等のランタノイド系、Mn等の遷移金属系の元素により主に付活されるアルカリ土類ハロゲンアパタイト蛍光体、アルカリ土類金属ホウ酸ハロゲン蛍光体、アルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体、アルカリ土類ケイ酸塩、アルカリ土類硫化物、アルカリ土類チオガレート、アルカリ土類窒化ケイ素、ゲルマン酸塩;Ce等のランタノイド系元素で主に付活される希土類アルミン酸塩、希土類ケイ酸塩;及びEu等のランタノイド系元素で主に付活される有機及び有機錯体等からなる群より選ばれる少なくとも1種以上であることが好ましい。
第二の蛍光体は、下記式(IIa)で表される組成を有するβサイアロン蛍光体、下記式(IIb)で表される組成を有するハロシリケート蛍光体、下記式(IIc)で表される組成を有するシリケート蛍光体、下記式(IId)で表される組成を有する希土類アルミン酸塩蛍光体及び下記式(IIe)で表される組成を有する硫化物蛍光体からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
Si6−tAl8−t:Eu (IIa)
(式中、tは、0<t<4.2を満たす。)
(Ca,Sr,Ba)MgSi16(F,Cl,Br):Eu (IIb)
(Ba,Sr,Ca,Mg)SiO:Eu (IIc)
(Y,Lu,Gd,Tb)(Al,Ga)12:Ce (IId)
(Ba,Sr,Ca)Ga:Eu (IIe)
第二の蛍光体は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
発光装置は、第一の蛍光体及び第二の蛍光体に加えて、これら以外のその他の蛍光体をさらに含んでいてもよい。その他の蛍光体としては、例えば、SrAl1425:Eu、(Ba,Sr,Ca)Si:Eu、(La,Y)Si11:Ce、CaScSi12:Ce、CaSc:Ce、BaSi12:Eu、(Sr,Ca)AlSiN:Eu、(Ca,Sr,Ba,)Si:Eu、3.5MgO・0.5MgF・GeO:Mn等を挙げることができる。その他の蛍光体は1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
第一の蛍光体及び第二の蛍光体(以下、併せて単に「蛍光体」ともいう)は、結着剤とともに発光素子を封止する封止材料を構成することが好ましい。封止材料を構成する結着剤としては、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ変性シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂等の熱硬化性樹脂を挙げることができる。
封止材料中の蛍光体の総含有量は特に制限されず、目的等に応じて適宜選択することができる。蛍光体の総含有量は、例えば、結着剤100質量部に対して20〜300質量部とすることができ、25〜200質量部が好ましく、30〜160質量部がより好ましく、35〜130質量部がさらに好ましい。封止材料中の蛍光体の含有量が上記範囲であると、発光素子を充分に被覆することができ、発光素子から発光した光を蛍光体で効率よく波長変換することができ、より効率よく発光することができる。
発光装置における第二の蛍光体の第一の蛍光体に対する質量基準の含有比(第二の蛍光体:第一の蛍光体)は、例えば5:95〜95:5であり、好ましくは10:90〜90:10、より好ましくは15:85〜85:15、さらに好ましくは20:80〜80:20である。発光装置が第一の蛍光体と第二の蛍光体とを上記範囲で含む場合には、より高演色且つより発光強度に優れる発光装置を得ることができる。
封止材料は、結着剤及び蛍光体に加えて、フィラー、拡散材等を更に含んでいてもよい。フィラーとしては例えば、シリカ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、アルミナ等を挙げることができる。
封止材料がフィラーを含む場合、その含有量は目的等に応じて適宜選択することができる。フィラーの含有量は例えば、結着剤100質量部に対して1〜20質量部とすることができる。
発光装置の形式は特に制限されず、通常用いられる形式から適宜選択することができる。発光装置の形式としては、砲弾型、表面実装型等を挙げることができる。一般に砲弾型とは、外面を構成する樹脂の形状を砲弾型に形成したものを指す。また表面実装型とは、凹状の収納部内に励起光源となる発光素子及び樹脂を充填して形成されたものを示す。さらに発光装置の形式としては、平板状の実装基板上に励起光源となる発光素子を実装し、その発光素子を覆うように、蛍光体を含有した封止樹脂をレンズ状等に形成した発光装置等も挙げられる。
以下、本実施形態に係る発光装置の一例を図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態に係る発光装置の一例を示す概略断面図である。この発光装置は、表面実装型発光装置の一例である。
発光装置100は、可視光の短波長側(例えば380nm〜485nm)の光を発する窒化ガリウム系化合物半導体の発光素子10と、発光素子10を載置する成形体40と、を有する。成形体40は第1のリード20と第2のリード30とを有しており、熱可塑性樹脂若しくは熱硬化性樹脂により一体成形されている。成形体40には底面と側面を持つ凹部が形成されており、凹部の底面に発光素子10が載置されている。発光素子10は一対の正負の電極を有しており、その一対の正負の電極は第1のリード20及び第2のリード30とワイヤ60を介して電気的に接続されている。発光素子10は封止部材50により封止されている。封止部材50はエポキシ樹脂やシリコーン樹脂、エポキシ変性シリコーン樹脂、変成シリコーン樹脂等の熱硬化性樹脂を用いることが好ましい。封止部材50は発光素子10からの光を波長変換する赤色発光の第一の蛍光体71及び緑色発光の第二の蛍光体72と封止樹脂とを含有してなる。
封止部材50は、発光装置100の凹部内に載置された発光素子10を覆うように透光性の樹脂やガラスで充填されて形成される。製造の容易性を考慮すると、封止部材の材料は、透光性樹脂が好ましい。透光性樹脂は、シリコーン樹脂組成物を使用することが好ましいが、エポキシ樹脂組成物、アクリル樹脂組成物等の絶縁樹脂組成物を用いることもできる。また、封止部材50には第一の蛍光体71及び第二の蛍光体72が含有されているが、さらに適宜、その他の材料を添加することもできる。例えば、光拡散材を含むことで、発光素子からの指向性を緩和させ、視野角を増大させることができる。
封止部材50は、発光素子10や第一の蛍光体71及び第二の蛍光体72を外部環境から保護するための部材としてだけではなく、波長変換部材としても機能する。図1では、第一の蛍光体71及び第二の蛍光体72は封止部材50中で部分的に偏在している。このように発光素子10に接近して第一の蛍光体71及び第二の蛍光体72を配置することにより、発光素子10からの光を効率よく波長変換することができ、発光効率の優れた発光装置とできる。なお、第一の蛍光体71及び第二の蛍光体72を含む封止部材50と、発光素子10との配置は、それらを接近して配置させる形態に限定されることなく、第一の蛍光体71及び第二の蛍光体72への熱の影響を考慮して、封止部材50中で発光素子10と、第一の蛍光体71及び第二の蛍光体72との間隔を空けて配置することもできる。また、第一の蛍光体71及び第二の蛍光体72を封止部材50の全体にほぼ均一の割合で混合することによって、色ムラがより抑制された光を得るようにすることもできる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<フッ化物蛍光体の製造例>
(比較例1)
MnFを209.9g秤量し、それを55質量%のHF水溶液3.3Lに溶解させて、第一の溶液を調製した。またKHFを2343g秤量し、それを55質量%のHF水溶液9.9Lに溶解させて第二の溶液を調製した。続いてHSiFを40質量%含む水溶液4.28Lを調整し、第三の溶液とした。
次に第二の溶液を、室温で撹拌しながら、約50分かけて第一の溶液と第三の溶液とをそれぞれ滴下した。得られた沈殿物を固液分離後、エタノール洗浄を行い、90℃で10時間乾燥することで、比較例1のフッ化物蛍光体を作製した。
(実施例1)
MnFを239.9g秤量し、それを55質量%のHF水溶液3.3Lに溶解させて、第一の溶液を調製した。またKHFを2343g秤量し、それを55質量%のHF水溶液9.9Lに溶解させて第二の溶液を調製した。続いてHSiFを40質量%含む水溶液4.28Lを調製し、第三の溶液とした。
次に第二の溶液を、室温で撹拌しながら、約20時間かけて第一の溶液と第三の溶液とをそれぞれ滴下した。得られた沈殿物を固液分離後、エタノール洗浄を行い、90℃で10時間乾燥することで、実施例1のフッ化物蛍光体を作製した。
(実施例2)
7.0gのKHFを55質量%のHF水溶液33gに溶解して液媒体1を調製した。フッ素樹脂コートされたオートクレーブに、液媒体1と実施例1で得られたフッ化物蛍光体50gを入れ、170℃、約2.3MPaで12時間、加熱加圧処理した。固液分離後、エタノール洗浄を行い、90℃で10時間乾燥することで、実施例2のフッ化物蛍光体を作製した。
(実施例3)
第二の溶液のHF水溶液量を10.5Lに変更した以外は実施例1と同様の方法で実施例3のフッ化物蛍光体を作製した。
(実施例4)
実施例3で得られたフッ化物蛍光体に実施例2と同様の条件で処理を行い、実施例4のフッ化物蛍光体を作製した。
(実施例5)
第一の溶液のKMnFを359.9gに変更した以外は実施例1と同様の方法で実施例5のフッ化物蛍光体を作製した。
<評価>
(発光輝度特性)
得られた各フッ化物蛍光体について、通常の発光輝度特性の測定を行った。発光輝度特性は、励起波長460nmの条件で測定した。測定は蛍光分光光度計F−4500(日立ハイテク製)を用いて25℃の条件で測定した。結果を、表1中に比較例を100%とする相対輝度として示す。また併せて、蛍光の色度座標を示す。
(Mn量)
得られた各フッ化物蛍光体について、ICPによる組成分析を行い、分析Mn濃度(Kを基準とした時の組成比、式(I)のaに相当する)としてMn量を算出した。結果を表1に示す。
(赤外分光法:FT−IR評価)
得られた各フッ化物蛍光体について、フーリエ変換型赤外分光装置iS50(サーモフィッシャーサイエンティフィック製)を用いて、KBrバックグラウンドとし、拡散反射法により赤外吸収スペクトルを測定した。4000cm−1での値をベースラインとして補正を行い、Kubelka−Munk変換を用い、最大ピークで規格化して吸収スペクトルを算出した。
図2は、各実施例に係るフッ化物蛍光体の赤外吸収スペクトルと、比較例に係るフッ化物蛍光体の赤外吸収スペクトルを示す図である。図3は、図2に示される赤外吸収スペクトルのうち、波数が3000cm−1から3900cm−1の部分を拡大して示す拡大図である。1050cm−1以上1350cm−1以下及び3500cm−1以上3800cm−1以下の波数範囲のピーク成分に注目し、そのピークの積分面積(IRピーク面積)をそれぞれ求めた。更にIRピーク面積比Zは(P)式で示される面積比として求めた。なお、3500cm−1以上3800cm−1cm−1のピーク面積は3000cm−1における強度と3800cm−1における強度とを結ぶ直線をバックグラウンドとして面積を求め、1050cm−1以上1350cm−1以下のピーク面積は1050cm−1における強度と1350cm−1における強度とを結ぶ直線をバックグラウンドとして面積を求めた。ここで、1050cm−1以上1350cm−1以下はフッ化物蛍光体由来、3000cm−1以上3800cm−1以下はHO由来、3500cm−1以上3800cm−1以下はSi−OH由来と考えられる。
=(3500cm−1以上3800cm−1以下のピーク面積)/(1050cm−1以上1350cm−1以下のピーク面積) (P)
<発光装置の製造例>
第一の蛍光体として、実施例1のフッ化物蛍光体を使用した。第二の蛍光体として、Si,Al)(O,N):Euで表される540nm付近に発光ピーク波長を有するβサイアロンを使用した。結着剤は樹脂であり、シリコーン樹脂を使用し、発光装置の色調を色度座標x/y=0.280/0.280になるように調整した。凹部を形成する側壁を有するパッケージを準備し、凹部に発光素子を配置した後、蛍光体と樹脂を混合した封止材料をパッケージの凹部にシリンジを用いて注入し、シリコーン樹脂を硬化させて発光装置を作製した。発光素子には、主波長451nmの半導体発光素子を用いた。
(発光装置の耐久性:LED耐久性)
上記で得られた実施例1、2、比較例1のフッ化物蛍光体を用いた発光装置について、85℃の環境下で150mAの電流値で、連続発光させ、約150時間経過後の色度座標におけるx値を測定した。各発光装置の初期値からのx値の変化量をΔxとして、更に比較例1のΔxのシフト値を基準とし、各実施例のΔxを比較例1のΔxで割った値をΔx変化率とし、相対的な色シフト率で比較評価した。Δx変化率が比較例1を基準の100とし、それに対して、値が小さくなることは、同じ経過時間後の色シフトが少なくなっていることを表し、耐久性が良好になっていることを意味する。
表1に示すように比較例1、実施例1〜5の蛍光体のMn量は前記式(I)におけるaの範囲として、0.034〜0.062であり、蛍光体自体の色度座標は略同じである。赤外分光法測定により求められたIRピーク面積比Zは実施例1〜4が0.2×10−3〜2.0×10−3、と比較例1の3.3×10−3よりも小さいことが分かる。加熱処理した実施例2、実施例4は、それぞれ加熱処理しない実施例1、実施例3と比較して相対輝度がさらに高くなっており、LED耐久性もより向上していることが分かる。なお、実施例1と3及び実施例2と4の主な相違は、それぞれ平均粒径の大きさであり、平均粒径が大きくなるとフッ化物蛍光体の相対輝度が高くなり、高いLED耐久性も維持されていることが分かる。
実施例の中でMn量が最も多い実施例5についても、IRピーク面積比Z1が比較例よりも小さくなっている。すなわち、フッ化物蛍光体中に欠陥が比較的発生し易い傾向にあるMn量の多い実施例5についてもLED耐久性が向上している。
このようにフッ化物蛍光体中の特定のIRピーク成分を低減、主にSi−OH由来の成分を低減させると、フッ化物に結合しているOH、HO等が低減され、フッ化物蛍光体中の欠陥が減少し、そのためにLED耐久性が向上していると考えられる。
本実施形態の発光装置は、照明用光源、液晶のバックライト用光源、各種インジケーター用光源、車載用光源、ディスプレイ用光源、センサー用光源、信号機、車載部品、看板用チャンネルレター等、種々の光源に使用することができる。
10:発光素子、50:封止部材、71:第一の蛍光体、72:第二の蛍光体、100:発光装置

Claims (3)

  1. マンガンを含む第一の溶液、アルカリ金属元素及びNH からなる群から選択される少なくとも1種を含む第二の溶液、並びに第4族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む第三の溶液を準備することと、
    準備した第一の溶液及び第三の溶液を、準備した液量のそれぞれ0.3体積%以下である1分間当りの滴下量で、準備した第二の溶液にそれぞれ滴下して、式(I)で表される組成を有するフッ化物粒子を得ることと、を含
    前記第一の溶液のマンガン源濃度が0.01質量%以上50質量%以下であり、前記第二の溶液の陽イオン源濃度が5質量%以上80質量%以下であり、前記第三の溶液における第4族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素とフッ素イオンとを含む第二の錯イオン源の濃度が5質量%以上80質量%以下である、
    フッ化物蛍光体の製造方法。
    [M 1−a Mn 4+ ] (I)
    (式中、Aは、アルカリ金属元素及びNH からなる群から選択される少なくとも1種を示し、Mは、第4族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を示し、aは0.01<a<0.20を満たす。)
  2. 得られるフッ化物粒子を、フッ素元素を含む雰囲気下、150℃以上で加熱処理することを含む、請求項に記載のフッ化物蛍光体の製造方法。
  3. 第一の溶液及び第三の溶液の1分間当りの滴下量が、準備した液量のそれぞれ0.1体積%以下である請求項1または2に記載の製造方法。
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