JP6570622B2 - 圧電素子およびそれを用いたデバイス - Google Patents

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Description

本発明は、タッチ式入力装置やポインティングデバイス、表面形状計測などに用いられる繊維状圧電素子に関する。さらに詳しくは、繊維状圧電素子の表面を擦るだけでタッチセンサーなどとして十分な電気出力を発生することができ、また、繊維状圧電素子で被計測物の表面を擦ることによって被計測物の高さ方向の位置情報や形状情報を得ることができるセンサーに関する。
本発明はまた、圧電性繊維を用いた組紐状圧電素子、組紐状圧電素子を用いた布帛状圧電素子およびそれらを用いたデバイスに関する。
本発明はさらに、圧電性繊維を用いた組紐を導電層で被覆した組紐状圧電素子、組紐状圧電素子を用いた布帛状圧電素子およびそれらを用いたデバイスに関する。
本発明はまた、外力による形状変化により電気信号を出力および/または電気信号の入力により形状変化するトランスデューサーに関する。さらに詳しくは、柔軟かつ三次元的に形状変化できることを特徴とする布帛状のトランスデューサーに関する。
近年、いわゆるタッチパネル方式を採用した入力装置、すなわちタッチ式入力装置が大幅に増加している。銀行ATMや駅の券売機のみならず、携帯電話機、携帯ゲーム機、携帯音楽プレーヤなどにおいて、薄型ディスプレイ技術の発展と相まって、入力インターフェースとしてタッチパネル方式が採用される機器が大幅に増加している。
最近の携帯電話やスマートフォンにおいては、液晶や有機エレクトロルミネッセンスなどを用いた表示装置の上にタッチ式入力装置を設置し、画面上に直接的に入力することができる方式が多く採用されている。高度化が進むスマートフォンなどの携帯機器の一層の利便性を向上させるためには、画面上にのみ入力装置を設置しているだけではなく、複数のタッチ式入力手段があることが好ましい。
例えば、スマートフォンにおいて、表示画面に指などで入力しようとした場合、片方の手でスマートフォンを持ち、もう一方の手の指で入力をすることになるため、両手を使用しての操作とならざるを得ない。一方、スマートフォンの筐体にもタッチセンサーなどが組み込まれていれば、片手での操作が可能になるといった利点がある。
その一例として、通常はセンサーとして使用されていない表示画面裏などの非表示画面部分の筐体部分にタッチセンサーなどを組み込み、このセンサーで画面情報の中の項目上又はアンカーポイントを選択する方式が、特許文献1に開示されている。特許文献1のようなタッチセンサーを実現する入力装置としては、静電容量方式、抵抗膜式、光学式、電磁誘導方式、圧電シートを用いる方式などがある。
圧電シートを用いる方式の例としては、特許文献2に開示がある。圧電シート方式は、静電容量方式や抵抗膜方式のタッチセンサーとは異なり、それ単体でセンサーに加えられる圧力と位置情報の両方を同時に検出可能であり、入力情報の多様性に貢献することができる。また、特許文献2においては、圧電シートの部材の具体例として、圧電性高分子であるポリ乳酸を利用した例が開示されている。
特許文献2で開示されているようにポリ乳酸からなる圧電シートは、フレキシブル化が可能であり、また、1つの素子で位置情報と応力を同時に検出できる優れた素子であるが、十分な電気出力を得るためには、入力時に圧電シートをその応力によってある程度撓ませる必要がある。ポリ乳酸からなる圧電シートは、シートに対するせん断応力によって電気出力を発生するが、引張や圧縮では十分な電気出力が得られない。したがって、大きな電気出力を得るには圧電シート平面の垂直方向からの押圧力によってシートを撓ませる必要がある。例えば、この圧電シートをスマートフォンの裏側の筐体に貼合あるいは筐体と一体にして使用することを考えると、シートに垂直方向に加えられる押し圧力によって、シートを撓ませることは空間的に難しく、圧電素子の表面を擦るだけで十分な電気出力を発生させるものが望まれていた。また、スマートフォン等の筐体表面は必ずしも平面とは限らず、意匠性確保などの理由で、その形状には三次元的な凹凸が多く、そこに用いられる圧電素子はフレキシブルであることが望まれていた。
さて、圧電繊維技術として、圧電性高分子にねじりを加えた配向させたものが特許文献3に開示されている。特許文献3に記載の圧電繊維は、繊維を特殊な製造方法であらかじめ捩じらせておくことで、繊維に対する引張や圧縮に対しては電気出力が得られる。しかし特許文献3には、繊維表面を擦ることによるせん断応力に対して十分な電気出力を発生させ、それを取り出すことに対する技術は全く示されていない。したがって、このような圧電繊維素子を、スマートフォンの筐体などに組み込んで、表面を指などで擦るといった比較的小さい印加応力だけで十分な電気出力を取り出すことは、極めて困難である。
一般に、一軸延伸配向したポリ乳酸繊維は、延伸軸及びその垂直方向に対する延伸や圧縮応力に対してほとんど分極が生じず、そのため、このような繊維の表面を指などで擦ることで発生する比較的小さな印加応力では電気出力はほとんど得られないことが知られている。一方、ポリ乳酸圧電繊維の延伸軸に平行でも垂直でもない方向から力を加える、すなわち、せん断応力を与えることで分極が生じ、圧電体としての機能を発現することが知られている。
特許文献4では、表面を指などで擦るといった比較的小さな印加応力によって電気出力を取り出すことができる繊維状の圧電素子が開示されている。特許文献4では、この繊維状圧電素子の構成要素である導電繊維として炭素繊維を用いている。しかし、繰り返し耐久性が要求される用途にこの繊維状圧電素子を適用した場合、炭素繊維は曲げ剛性が弱いため、徐々に繊維が折れて定量的な圧電性が得られず、徐々に圧電性能が落ちていくおそれがある。また、組紐状の圧電素子を接触式プローブとして用い、被計測物の高さや形状情報を得ようとする場合には、炭素繊維が折れて先端が鋭くなり、また炭素繊維固有の剛性ゆえ、被計測物の表面を傷つけるおそれがある。
また近年、いわゆるウェアラブルセンサーが注目を浴びており、眼鏡型や腕時計といった形状の商品が世に出始めた。しかし、これらのデバイスは、装着しているという感覚があり、究極のウェアラブルである、布状、つまり衣類のような形状のものが望まれている。そのようなセンサーとして、圧電性繊維の圧電効果を用いた圧電素子が知られている。例えば、特許文献4には、2本の導電性繊維および1本の圧電性繊維を含み、これらが互いに接点を有しつつ、略同一平面上に配置されている圧電単位を含む圧電素子が開示されている。また、特許文献3には、圧電高分子からなる繊維状物、または成形物であり、これの軸方向に付加される張力によって圧電性を発生させるために、かかる張力の付加方向と異なる方向に捩りを加えて構成したことを特徴とする圧電材が開示されている。
一方、近年、いわゆるタッチパネル方式を採用した入力装置、すなわちタッチ式入力装置が大幅に増加している。銀行ATMや駅の券売機のみならず、スマートフォン、携帯電話機、携帯ゲーム機、携帯音楽プレーヤなどにおいて、薄型ディスプレイ技術の発展と相まって、入力インターフェースとしてタッチパネル方式を採用した機器が大幅に増加している。そのようなタッチパネル方式を実現する手段として、圧電シートや圧電性繊維を用いる方式が知られている。例えば、特許文献2には、所定方向に向く延伸軸を有するL型ポリ乳酸からなる圧電シートを用いるタッチパネルが開示されている。
これらウェアラブルセンサーやタッチパネル方式のセンサーでは、圧電材料に印加される小さな変形により圧電材料内に生じる小さな応力に対しても、大きな電気信号を取り出すことが望まれる。例えば、指の曲げ伸ばし動作や指などで表面を擦る行為により圧電材料に生じる比較的小さな応力によっても大きな電気信号を安定的に取り出すことが望まれる。
特許文献4の圧電性繊維は、様々な用途に適用可能な優れた素材であるが、比較的小さな変形で生じる応力に対して大きい電気信号を出力できるとは必ずしもいえず、大きな電気信号を得る技術についても明示していない。
特許文献3の圧電性繊維は、特殊な製造方法で圧電性繊維をあらかじめ捩じらせておくことにより、圧電性繊維への引張や圧縮に対して電気信号を出力できる。しかし、特許文献3には、圧電性繊維を曲げたり伸ばしたりする屈曲や、圧電性繊維の表面を擦る行為によるせん断応力に対して十分な電気信号を発生させる技術は開示されていない。したがって、このような圧電性繊維を用いた場合、表面を擦るような比較的小さい変形で生じる応力だけで十分な電気信号を取り出すことは困難である。
特許文献2の圧電シートは、圧電シートに対する変形(応力)によって電気信号を出力できる。しかしながら、そもそもシート状であるために柔軟性に乏しく布のように自由に屈曲できるような使い方は不可能である。
また、特許文献4に記載の圧電素子は、信号線となる導電性繊維がむき出しであり、それゆえノイズ信号を抑制するためには、別途ノイズシールド構造を構築する必要がある。したがって、特許文献4に記載の圧電素子では、実用化に対して依然として改善の余地があった。
また、ウェアラブルセンサーとして、布に圧電素子を装着し、そこから信号を取り出すものが開示されている(特許文献5、6)。しかしこれらは織編物の表面上に別の構造体を必要とすることから、自由曲面への適応が困難で触感が悪く、取り扱い性、施工性、加工性にて不具合を生じるなど実用性に欠ける。また、圧電性材料と導電性材料をフィルム状にしたもので布状の構造体を形成するもの(特許文献7)もあるが、これも自由曲面への適応が困難で触感が悪く、取り扱い性、施工性、加工性にて不具合を生じるなど実用性に欠ける。
さらに、繊維のみからなる布帛状センサーとして導電繊維間の抵抗を検出するもの(特許文献8)も提案されているが、布帛上の圧力を検出するものであり直接的に形状変化を検出するものではなかった。
さらに特許文献4には、2本の導電性繊維および1本の圧電性繊維を含み、これらが互いに接点を有しつつ、略同一平面上に配置されている圧電単位を含む圧電素子が開示され、平面上に複数の圧電単位を並列させる技術について開示されている。しかし、特定位置あるいは特定方向の応力に対して選択的に電気信号を応答させること、および素子の厚み方向に圧電単位を複合化させることによる高機能化に関しては、一切示唆がなく、さらなる技術向上が課題であった。
また、人体に直接触れている場合や帯電している物体に接触した場合に、本来目的としていない信号を出力してしまうという課題があった。
特開2001-189792号公報 特開2011−253517号公報 特許第3540208号公報 国際公開第2014/058077号 特表2007−518886号公報 特開平6−323929号公報 特開2002−203996号公報 特開2006−284276号公報
本発明は上記の背景に鑑みなされたものであり、第1の目的は、表面を指などで擦るといった比較的小さな印加応力によって電気出力を取り出すことができる繊維状の圧電素子を提供することにあり、さらには、圧電素子の表面や先端部への繰り返しの摩擦に耐えることができる繊維状圧電素子を提供することにある。
また第2の目的は、比較的小さな変形で生じる応力によっても大きな電気信号を取り出すことが可能な繊維状の圧電素子を提供することにある。
さらに第3の目的は、比較的小さな変形で生じる応力によっても大きな電気信号を取り出すことが可能で、ノイズ信号を抑制可能な繊維状の圧電素子を提供することにある。
また第4の目的は、繊維材料を用いて、かつ従前の織編物構造を作製することで特定位置あるいは特定方向の応力に対して選択的に電気信号を応答させることができる平面状のトランスデューサーを提供することにあり、さらには、そのトランスデューサーからの信号を用いたデバイスおよび/または電気信号を入力することにより機能するデバイスを提供することにある。
さらに第5の目的は、繊維材料を用いて、かつ従前の織編物構造を作製することで誤動作しにくい実用性の高い柔軟性にとんだ布帛状のトランスデューサーを提供することにあり、さらには、そのトランスデューサーからの信号を用いたデバイスおよび/または電気信号を入力することにより機能するデバイスを提供することにある。
本発明者らは上記第1の目的を達成するため鋭意検討した結果、導電性繊維と圧電性高分子との組み合わせとして、芯となる導電性繊維の表面を圧電性高分子で被覆した組紐状圧電素子により効率よく電気を取り出せることを発見し、本発明に到達した。
すなわち本発明によると、上記第1の目的を達成するための手段(第1発明)として、下記1〜13が提供される。
1.導電性繊維および圧電性繊維からなる組物を含み、前記組物は前記導電性繊維が芯であり、前記圧電性繊維が前記導電性繊維の周囲を被覆する被覆繊維である、圧電素子。
2.前記導電性繊維の曲げ剛性が0.05×10−4N・m/m以下である、上記1記載の圧電素子。
3.前記導電性繊維が金属コートされた有機繊維である、上記1記載の圧電素子。
4.前記圧電性繊維が主としてポリ乳酸を含む、上記1〜3のいずれか一項に記載の靴の中敷き。
5.前記圧電性繊維が主として光学純度99%以上のL―ポリ乳酸又はD−ポリ乳酸を含む、上記4に記載の圧電素子。
6.前記圧電性繊維が一軸配向し且つ結晶を含む、上記1〜5のいずれか一項に記載の圧電素子。
7.前記被覆繊維に印加された応力の大きさ及び/又は印加された位置を検出する、上記1〜6のいずれか一項に記載の圧電素子。
8.検出される前記応力が、前記被覆繊維の表面と被接触物の表面との間の摩擦力である、上記7記載の圧電素子。
9.検出される前記応力が、前記被覆繊維の表面または先端部に対する垂直方向の抵抗力である、上記7記載の圧電素子。
10.上記1〜9のいずれか一項に記載の圧電素子を使ったセンサー。
11.上記10に記載の圧電センサーと、
印加された圧力に応じて前記圧電センサーから出力される電気信号を増幅する増幅手段と、
前記増幅手段で増幅された電気信号を出力する出力手段と、
を備えるデバイス。
12.前記デバイスは、前記出力手段から出力された電気信号を外部機器へ送信する送信手段をさらに備える、上記11記載のデバイス。
13.上記10に記載の圧電センサーと、
印加された圧力に応じて前記圧電センサーから電気信号を出力する出力手段と、
前記出力手段から出力された電気信号を外部機器へ送信する送信手段と、
を備えるデバイス。
また、本発明者らは上記第2の目的を達成するため鋭意検討した結果、導電性繊維と圧電性繊維との組み合わせとして、芯となる導電性繊維の表面を組紐状の圧電性繊維で被覆した組紐状圧電素子により効率よく電気を取り出せることを発見し、本発明に到達した。
すなわち、本発明によると、上記第2の目的を達成するための手段(第2発明)として、下記14〜21が提供される。
14.導電性繊維で形成された芯部と、前記芯部を被覆するように組紐状の圧電性繊維で形成された鞘部と、を備え、前記圧電性繊維が主成分としてポリ乳酸を含み、前記導電性繊維に対する前記圧電性繊維の巻きつけ角度は15°以上、75°以下である、組紐状圧電素子。
15.前記圧電性繊維の総繊度は、前記導電性繊維の総繊度の1/2倍以上、20倍以下である、上記14記載の組紐状圧電素子。
16.前記圧電性繊維の一本あたり繊度は、前記導電性繊維の総繊度の1/20倍以上、2倍以下である、上記14記載の組紐状圧電素子。
17.上記14〜16のいずれか一項に記載の組紐状圧電素子を含む布帛を備える、布帛状圧電素子。
18.前記布帛は、前記組紐状圧電素子の少なくとも一部と交差して接触する導電性繊維を更に含む、上記17記載の布帛状圧電素子。
19.前記布帛を形成する繊維であり且つ前記組紐状圧電素子と交差する繊維のうちの30%以上が導電性繊維である、上記18記載の布帛状圧電素子。
20.上記14〜16のいずれか一項に記載の組紐状圧電素子と、印加された圧力に応じて前記組紐状圧電素子から出力される電気信号を増幅する増幅手段と、前記増幅手段で増幅された電気信号を出力する出力手段と、を備えるデバイス。
21.上記17〜19のいずれか一項に記載の布帛状圧電素子と、印加された圧力に応じて前記布帛状圧電素子から出力される電気信号を増幅する増幅手段と、前記増幅手段で増幅された電気信号を出力する出力手段と、を備えるデバイス。
さらに、本発明者らは上記第3の目的を達成するため鋭意検討した結果、導電性繊維と圧電性繊維との組み合わせとして、芯となる導電性繊維の表面を組紐状の圧電性繊維で被覆し、更にその周囲に導電層を設けた組紐状圧電素子により効率よく電気信号を取り出すことが可能で、更にノイズ信号を抑制できることを発見し、本発明に到達した。
すなわち、本発明によると、上記第3の目的を達成するための手段(第3発明)として、下記22〜32が提供される。
22.導電性繊維で形成された芯部と、前記芯部を被覆するように組紐状の圧電性繊維で形成された鞘部と、前記鞘部の周囲に設けられた導電層とを備えた、組紐状圧電素子。
23.前記導電層による前記鞘部の被覆率が25%以上である、上記22記載の組紐状圧電素子。
24.前記導電層が繊維で形成されている、上記22または23記載の組紐状圧電素子。
25.前記圧電性繊維が主成分としてポリ乳酸を含み、前記導電性繊維に対する前記圧電性繊維の巻きつけ角度は15°以上、75°以下である、上記22〜24のいずれか一項に記載の組紐状圧電素子。
26.前記圧電性繊維の総繊度は、前記導電性繊維の総繊度の1倍以上、20倍以下である、上記22〜25のいずれか一項に記載の組紐状圧電素子。
27.前記圧電性繊維の一本あたり繊度は、前記導電性繊維の総繊度の1/20倍以上、2倍以下である、上記22〜25のいずれか一項に記載の組紐状圧電素子。
28.上記22〜27のいずれか一項に記載の組紐状圧電素子を含む布帛を備える、布帛状圧電素子。
29.前記布帛は、前記組紐状圧電素子の少なくとも一部と交差して接触する導電性繊維を更に含む、上記28記載の布帛状圧電素子。
30.前記布帛を形成する繊維であり且つ前記組紐状圧電素子と交差する繊維のうちの30%以上が導電性繊維である、上記29記載の布帛状圧電素子。
31.上記22〜27のいずれか一項に記載の組紐状圧電素子と、印加された圧力に応じて前記組紐状圧電素子から出力される電気信号を増幅する増幅手段と、前記増幅手段で増幅された電気信号を出力する出力手段と、を備えるデバイス。
32.上記28〜30のいずれか一項に記載の布帛状圧電素子と、印加された圧力に応じて前記布帛状圧電素子から出力される電気信号を増幅する増幅手段と、前記増幅手段で増幅された電気信号を出力する出力手段と、を備えるデバイス。
また、本発明者らは上記第4の目的を達成するため鋭意検討した結果、導電性繊維と圧電性繊維との組み合わせ配置により、圧電素子として機能することを見出し、さらにこの圧電素子等からなる平面状のトランスデューサーを積層し複合化することで、特定位置あるいは特定方向の応力に対して選択的に電気信号を応答させることができることを発見し、本発明を完成した。
すなわち、本発明によると、上記第4の目的を達成するための手段(第4発明)として、下記33〜48が提供される。
33.少なくとも2層のシートあるいは布帛から構成されるトランスデューサーであって、該シートあるいは該布帛のうち少なくとも1層が下記のA層からなり、該A層以外の層のうち少なくとも1層が下記のB層からなるトランスデューサー。
A層:導電性繊維および圧電性繊維が電気的接続を提供するように略同一平面上に配置されている圧電単位を含む、電気信号を出力または入力とする平面状のトランスデューサーであって、特定の位置または方向における応力と、選択的な出力または入力としての電気信号とを相互に変換する機能を有するトランスデューサー
B層:電気信号を出力または入力とする平面状のトランスデューサーであって、該A層とは異なる特定の位置または方向における信号と、あるいは該A層と異なる種類の信号と、選択的な出力または入力としての電気信号とを相互に変換する機能を有するトランスデューサー
34.前記A層及び前記B層の間に、下記のC層を少なくとも1層含む、上記33記載のトランスデューサー
C層:前記A層と前記B層との間の電気的干渉によるノイズを低減する機能を有する層
35.前記圧電単位は2本の導電性繊維および1本の圧電性繊維を含み、導電性繊維、圧電性繊維および導電性繊維がこの順序に配置されている、上記33または34に記載のトランスデューサー。
36.前記導電性繊維および前記圧電性繊維が互いに物理的に接する接点を有している、上記33または34に記載のトランスデューサー。
37.前記圧電単位中の前記導電性繊維が他の圧電単位中の導電性繊維および/または圧電性繊維に対して電気的接続しないように、絶縁性繊維が配置されている、上記33または34に記載のトランスデューサー。
38.前記圧電性繊維が主としてポリ乳酸を含む、上記33または34に記載のトランスデューサー。
39.前記圧電性繊維が主として光学純度99%以上のポリ−L−乳酸またはポリ−D−乳酸を含む、上記33または34に記載のトランスデューサー。
40.前記圧電性繊維が一軸配向し且つ結晶を含む、上記33または34に記載のトランスデューサー。
41.前記導電性繊維が金属メッキ繊維である、上記33または34に記載のトランスデューサー。
42.複数の前記圧電単位を含有する織編物である、上記33または34に記載のトランスデューサー。
43.複数の前記圧電単位を含有する織物であって、その織組織が平織、綾織、サテン織およびそれらの複合組織である、上記42記載のトランスデューサー。
44.複数の前記織編物を組み合わせて用いる、上記43記載のトランスデューサー。
45.上記33〜44のいずれか一項に記載のトランスデューサーと、印加された圧力に応じて前記トランスデューサーから出力される電気信号を増幅する増幅手段と、前記増幅手段で増幅された電気信号を出力する出力手段と、を備えるデバイス。
46.前記出力手段から出力された電気信号を外部機器へ送信する送信手段をさらに備える、上記45に記載のデバイス。
47.上記33〜44のいずれか一項に記載のトランスデューサーと、印加された圧力に応じて前記トランスデューサーから電気信号を出力する出力手段と、前記出力手段から出力された電気信号を外部機器へ送信する送信手段と、を備えるデバイス。
48.電気信号を受信する受信手段と、前記受信手段により受信した電気信号が印加される、上記33〜44のいずれか一項に記載のトランスデューサーと、を備えるデバイス。
さらに、本発明者らは上記第5の目的を達成するため鋭意検討した結果、導電性繊維と圧電性繊維の組み合わせ配置により、圧電素子として機能することを見出し、さらにこの圧電素子に導電性シートまたは導電性布帛を積層することで、誤動作しにくい実用性の高いトランスデューサーを提供できることを発見し、本発明を完成した。
すなわち、本発明によると、上記第5の目的を達成するための手段(第5発明)として、下記49〜64が提供される。
49.少なくとも2層のシートまたは布帛からなる積層トランスデューサーであって、該シートまたは該布帛のうち少なくとも1層が下記のA層からなり、該A層以外の層のうち少なくとも1層が下記のB層からなるトランスデューサー。
A層:導電性繊維および圧電性繊維が電気的接続を提供するように略同一平面上に配置されている圧電単位を含む、電気信号を出力または入力とするトランスデューサー
B層:シート抵抗が10Ω/□(Ω/sq.)以下である導電性シートまたは導電性布帛
50.前記A層と前記B層の間に下記のC層がさらに積層されてなる、上記49記載のトランスデューサー。
C層:シート抵抗が10Ω/□(Ω/sq.)以上である絶縁性シートまたは絶縁性布帛
51.前記圧電単位は2本の導電性繊維および1本の圧電性繊維を含み、前記導電性繊維、前記圧電性繊維および前記導電性繊維が、この順序に配置されている、上記49または50記載のトランスデューサー。
52.前記導電性繊維および前記圧電性繊維が互いに物理的に接する接点を有している、上記49または50記載のトランスデューサー。
53.前記圧電単位中の前記導電性繊維が他の圧電単位中の導電性繊維および/または圧電性繊維に対して電気的接続しないように、絶縁性繊維が配置されている、上記49または50記載のトランスデューサー。
54.前記圧電性繊維が主としてポリ乳酸を含む、上記49または50記載のトランスデューサー。
55.前記圧電性繊維が主として光学純度99%以上のポリ−L−乳酸またはポリ−D−乳酸を含む、上記49または50記載のトランスデューサー。
56.前記圧電性繊維が一軸配向し且つ結晶を含む、上記49または50記載のトランスデューサー。
57.前記導電性繊維が金属メッキ繊維である、上記49または50記載のトランスデューサー。
58.複数の前記圧電単位を含有する織編物である、上記49または50記載のトランスデューサー。
59.複数の前記圧電単位を含有する織物であって、その織組織が平織、綾織、サテン織およびそれらの複合組織である、上記58記載のトランスデューサー。
60.複数の前記織物を組み合わせて用いる、上記59記載のトランスデューサー。
61.上記49〜60のいずれか一項に記載のトランスデューサーと、印加された圧力に応じて前記トランスデューサーから出力される電気信号を増幅する増幅手段と、前記増幅手段で増幅された電気信号を出力する出力手段と、を備えるデバイス。
62.前記出力手段から出力された電気信号を外部機器へ送信する送信手段をさらに備える、上記61記載のデバイス。
63.上記49〜60のいずれか一項に記載のトランスデューサーと、印加された圧力に応じて前記トランスデューサーから電気信号を出力する出力手段と、前記出力手段から出力された電気信号を外部機器へ送信する送信手段と、を備えるデバイス。
64.電気信号を受信する受信手段と、前記受信手段により受信した電気信号が印加される、上記49〜60のいずれか一項に記載のトランスデューサーと、を備えるデバイス。
上記第1発明により、表面を指などで擦るといった比較的小さな印加応力によって電気出力を取り出すことができる繊維状の圧電素子を得ることができる。さらには、圧電素子の表面や先端部への繰り返しの摩擦に耐えることができる繊維状圧電素子を得ることができる。
また上記第2発明により、比較的小さな変形で生じる応力によっても大きな電気信号を取り出すことが可能な繊維状の圧電素子を提供できる。
さらに上記第3発明により、比較的小さな変形で生じる応力によっても大きな電気信号を取り出すことが可能で、更にノイズ信号を抑制できる繊維状の圧電素子を提供できる。
また上記第4発明により、繊維材料を用いて、かつ従前の織編物構造を作製することで柔軟性に富む布帛状のトランスデューサーを得ることができる。本発明のトランスデューサーは、フレキシブルであるため、ハンカチのような折り畳み可能な布帛状、さらには着衣状など布帛で実現できるあらゆる形状の電気信号を入出力とするトランスデューサーを実現することができる。
さらに上記第5発明により、繊維材料を用いて、かつ従前の織編物構造を作製することで柔軟性に富む布帛状のトランスデューサーを得ることができる。本発明のトランスデューサーは、フレキシブルであるため、ハンカチのような折り畳み可能な布帛状、さらには着衣状など布帛で実現できるあらゆる形状の電気信号を入出力とするトランスデューサーを実現することができる。
導電性繊維と圧電性繊維との組合せにおける電気信号の発生原理を説明する模式的な断面図である。 第1発明の圧電素子の構成の一例であって、実施例1に記載の圧電素子の模式図である。 実施例1の圧電素子の評価システムの概略図である。 第1発明の圧電素子を備えるセンサーを示すブロック図である。 第1発明に係る圧電素子を備えるセンサーにおける圧電素子と増幅手段とのの接続例を示す模式図である。 第2発明に係る組紐状圧電素子の構成例を示す模式図である。 第2発明に係る布帛状圧電素子の構成例を示す模式図である。 第2発明に係る圧電素子を備えるデバイスを示すブロック図である。 第2発明に係る布帛状圧電素子を備えるデバイスの構成例を示す模式図である。 第2発明に係る布帛状圧電素子を備えるデバイスの他の構成例を示す模式図である。 比較例1に係る圧電繊維を含む織物の構成例を示す模式図である。 第3発明に係る組紐状圧電素子の構成例を示す模式図である。 第3発明に係る布帛状圧電素子の構成例を示す模式図である。 第3発明に係る圧電素子を備えるデバイスを示すブロック図である。 第3発明に係る組紐状圧電素子を備えるデバイスの構成例を示す模式図である。 第3発明に係る布帛状圧電素子を備えるデバイスの構成例を示す模式図である。 第3発明に係る布帛状圧電素子を備えるデバイスの他の構成例を示す模式図である。 第3発明に係る布帛状圧電素子を備えるデバイスの他の構成例を示す模式図である。 比較例3に係る圧電繊維を含む織物の構成例を示す模式図である。 A層の織組織で、特定方向の曲げを選択的に検出する構造である。 A層の織組織で、ねじりを選択的に検出する構造である。 A層の織組織で、ずり変形を選択的に検出する構造である。 平織物を積層したセンサーの模式図である。 平織物と朱子織物を積層したセンサーの模式図である。 朱子織物と静電容量方式の伸縮センサーを積層したセンサーの模式図である。 第4発明のトランスデューサーを用いたデバイスの第1の具体例を示すブロック図である。 第4発明のトランスデューサーを用いたデバイスの第2の具体例を示すブロック図である。 第4発明のトランスデューサーを用いたデバイスの第3の具体例を示すブロック図である。 実施例7、および比較例4の平織物の模式図である。 第5発明のトランスデューサーを用いたデバイスの第1の具体例を示すブロック図である。 第5発明のトランスデューサーを用いたデバイスの第2の具体例を示すブロック図である。 第5発明のトランスデューサーを用いたデバイスの第3の具体例を示すブロック図である。 曲げ復元率を測定する装置を示す図である。 布帛状圧電素子の構成例を示す模式図である。 布帛状圧電素子を備えるデバイスの構成例を示す模式図である。 実施形態に係る布帛状素子を備えるデバイスを示すブロック図である。 実施形態に係る平組紐状圧電素子の構成例を示す模式図である。
はじめに、第1発明乃至第5発明に共通する、導電性繊維と圧電性繊維との組合せにおける電気信号の発生原理について説明する。
図1は、導電性繊維と圧電性繊維との組合せにおける電気信号の発生原理を説明する模式的な断面図である。増幅手段12の入力端子には、導電性繊維Bからの引出し線を接続する。図1(A)において、導電性繊維B及び圧電性繊維Aが折り曲げられておらず伸びた状態では、導電性繊維B及び圧電性繊維Aにおいて、正負各電荷は均一に分布している。圧電性繊維Aの折り曲げが始まると、図1(B)に示すように、圧電性繊維Aにおいて分極が発生し、電荷の正負が一方向に配列された状態になる。圧電性繊維Aの分極により発生した正負各電荷の配列につられて、導電性繊維Bから負の電荷が流出する。この負の電荷の移動は微小な電気信号の流れ(すなわち電流)として現れ、増幅手段12はこの電気信号を増幅し、出力手段13は、増幅手段12で増幅された電気信号を出力する。図1(B)に示す分極状態は、圧電性繊維Aの折り曲げが維持(固定)される限り継続する。
圧電性繊維Aの折り曲げ形状が維持(固定)された状態(図1(B))から圧電性繊維Aを伸ばす動作が始まると、図1(C)に示すように圧電性繊維Aにおいて分極は解消し、圧電性繊維Aにおいて正負各電荷が均一に分布した状態になる。圧電性繊維Aにおける正負各電荷の均一分布につられて、導電性繊維Bへ負の電荷が流入する。この負の電荷の移動は微小な電気信号の流れ(すなわち電流)として現れるが、増幅手段12ではこの電気信号を増幅し、増幅された電気信号を出力手段13にて出力する。なお、圧電性繊維Aの折り曲げ動作中の状態(図1(B))と折り曲げ動作から伸ばす動作に遷移している状態(図1(C))とでは、負の電荷の移動の向きは逆向きになるので、折り曲げ動作と伸ばし動作とでは逆極性の電気信号が発生する。例えば、圧電性繊維Aの折り曲げ動作時には正の電気信号が発生し、圧電性繊維Aの伸ばし動作時には負の電気信号が発生する。
本発明では、圧電性繊維Aに対する折り曲げ動作及び伸ばし動作に伴い発生する微小な電気信号を、増幅手段12によって増幅して出力手段12によって出力し、外部機器(図示せず)における演算処理により、増幅電気信号が正か負かを切り分け、圧電性繊維Aの折り曲げの有無及び折り曲げの度合いを検出する。例えば、外部機器(図示せず)において、増幅手段12にて増幅され出力手段13から出力された増幅電気信号を時間積分し、そして、この積分値が、所定の上限値以上になったときは「折り曲げ動作」と判定し、所定の下限値未満となったときは「伸ばし動作」と判定する演算処理を実行することができる。なお、本明細書において、圧電性繊維Aに印加された応力に応じて電気信号が発生するとの記載は、圧電性繊維Aの歪みに応じて電気信号が発生することと同義である。
以下、第1発明について詳細に説明する。
(被覆繊維)
第1発明の圧電素子は、導電性繊維の表面を圧電性高分子の繊維、すなわち圧電性繊維で被覆した被覆繊維を含む。図2は、第1発明の実施の形態に係る圧電素子の構成の一例を表す模式図である。図2に示すように、圧電素子の被覆繊維1003は圧電性繊維100Aが導電性繊維100Bの表面を被覆している。
圧電素子の被覆繊維1003の長さは特に限定はないが、製造において連続的に製造され、その後に好みの長さにカットして利用してもよい。実際の圧電素子としての利用においては、被覆繊維1003の長さは1mm〜10m、好ましくは、5mm〜2m、より好ましくは1cm〜1mである。長さが短いと繊維形状である利便性が失われ、また、長いと導電性繊維100Bの抵抗値の問題等で電気出力が低下する等の問題がある。
(導電性繊維)
導電性繊維としては、導電性を示すものであればよく、公知のあらゆるものが用いられ、例えば、金属繊維、導電性高分子からなる繊維、炭素繊維、繊維状あるいは粒状の導電性フィラーを分散させた高分子からなる繊維、あるいは繊維状物の表面に導電性を有する層を設けた繊維が挙げられる。繊維状物の表面に導電性を有する層を設ける方法としては、金属コート、導電性高分子コート、導電性繊維の巻付けなどが挙げられる。なかでも金属コートが導電性、耐久性、柔軟性などの観点から好ましい。金属をコートする具体的な方法としては、蒸着、スパッタ、電解メッキ、無電解メッキなどが挙げられるが生産性などの観点からメッキが好ましい。このような金属をメッキされた繊維は金属メッキ繊維ということができる。
金属をコートされるベースの繊維として、導電性の有無によらず公知の繊維を用いることができ、例えば、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、塩化ビニル繊維、アラミド繊維、ポリスルホン繊維、ポリエーテル繊維、ポリウレタン繊維等の合成繊維の他、綿、麻、絹等の天然繊維、アセテート等の半合成繊維、レーヨン、キュプラ等の再生繊維を用いることができる。ベースの繊維はこれらに限定されるものではなく、公知の繊維を任意に用いることができ、これらの繊維を組み合わせて用いてもよい。
ベースの繊維にコートされる金属は導電性を示し、本発明の効果を奏する限り、いずれを用いてもよい。例えば、金、銀、白金、銅、ニッケル、スズ、亜鉛、パラジウ、酸化インジウム錫、硫化銅など、およびこれらの混合物や合金などを用いることができる。
導電性繊維に屈曲耐性のある金属コートした有機繊維を使用すると、導電性繊維が折れることが非常に少なく、圧電素子を用いたセンサーとしての耐久性や安全性に優れる。
導電性繊維はフィラメントを複数本束ねたマルチフィラメントを用いても、また、フィラメント一本からなるモノフィラメントを用いてもよい。マルチフィラメントとして用いる方が電気特性の長尺安定性の観点で好ましい。モノフィラメントの径としては1μm〜5000μmであり、好ましくは2μm〜100μmである。さらに好ましくは3μm〜50μmである。フィラメント数としては、1本〜100000本が好ましく、より好ましくは5本〜500本、さらに好ましくは10本〜100本である。
直径が小さいと強度が低下しハンドリングが困難となり、また、直径が大きい場合にはフレキシブル性が犠牲になる。導電性繊維の断面形状としては円または楕円であることが、圧電素子の設計および製造の観点で好ましいが、これに限定されない。
また、圧電性高分子からの電気出力を効率よく取り出すため、電気抵抗は低いことが好ましく、体積抵抗率としては10−1Ω・cm以下であることが好ましく、より好ましくは10−2Ω・cm以下、さらに好ましくは10−3Ω・cm以下である。ただし、信号検出に強度が得られるのであれば導電性繊維の抵抗率はこの限りではない。
導電性繊維は、本発明の用途から、繰り返しの曲げやねじりといった動きに対して耐性がなければならない。その指標としては、曲げ剛性が、より小さいものが好まれる。曲げ剛性は、カトーテック社製KES―FB2純曲げ試験機などの測定装置で測定されるのが一般的である。本発明に適当な曲げ剛性の程度としては、東邦テナックス(株)製の炭素繊維マルチフィラメントである品名『HTS40 3K』よりも小さいほうが好ましい。具体的には、導電性繊維の曲げ剛性が0.05×10−4N・m/m以下であることが好ましく、0.02×10−4N・m/m以下であることがより好ましく、0.01×10−4N・m/m以下であることがさらに好ましい。
(圧電性高分子)
圧電性高分子としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリ乳酸など圧電性を示す高分子であれば利用できるが、主としてポリ乳酸を含むことが好ましい。ポリ乳酸は溶融紡糸後に延伸によって容易に配向して圧電性を示し、ポリフッ化ビニリデンなどで必要となる電界配向処理が不要な点で生産性に優れている。さらに、圧電性繊維は圧電性高分子から形成されるが、ポリ乳酸からなる圧電性繊維はその軸方向への引張や圧縮応力では、分極が小さく、圧電素子として機能させることが困難であるが、せん断応力によっては比較的大きな電気出力が得られ、せん断応力を圧電性高分子に付与しやすい構成体を有する本発明の圧電素子においては好ましい。
圧電性高分子は、主としてポリ乳酸を含むことが好ましい。「主として」とは、好ましくは90モル%以上、より好ましくは95モル%以上、さらに好ましくは98モル%以上のことを言う。
ポリ乳酸としては、その結晶構造によって、L−乳酸、L−ラクチドを重合してなるポリ−L−乳酸、D−乳酸、D−ラクチドを重合してなるポリ−D−乳酸、さらに、それらのハイブリッド構造からなるステレオコンプレックスポリ乳酸などがあるが、圧電性を示すものであればいずれも利用できる。圧電率の高さの観点で好ましくは、ポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸である。ポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸はそれぞれ、同じ応力に対して分極が逆になるために、目的に応じてこれらを組み合わせて使用することも可能である。ポリ乳酸の光学純度は99%以上であることが好ましく、より好ましくは99.3%以上、さらに好ましくは99.5%以上である。光学純度が99%未満であると著しく圧電率が低下する場合があり、圧電性繊維の形状変化よって十分な電気出力を得ることが難しくなる場合がある。圧電性高分子が、主としてポリ−L−乳酸またはポリ−D−乳酸を含み、これらの光学純度は99%以上であることが好ましい。
圧電性高分子から形成される圧電性繊維は被覆繊維の繊維軸方向に一軸配向しかつ結晶を含むものであることが好ましく、より好ましくは結晶を有する一軸配向ポリ乳酸である。なぜなら、ポリ乳酸はその結晶状態および一軸配向において大きな圧電性を示すためである。
ポリ乳酸は加水分解が比較的早いポリエステルであるから、耐湿熱性が問題となる場合においては、公知の、イソシアネート化合物、オキサゾリン化合物、エポキシ化合物、カルボジイミド化合物などの加水分解防止剤を添加してもよい。また、必要に応じてリン酸系化合物などの酸化防止剤、可塑剤、光劣化防止剤などを添加して物性改良してもよい。
また、ポリ乳酸は他のポリマーとのアロイとして用いてもよいが、ポリ乳酸を主たる圧電性高分子として用いるならば、アロイの全重量を基準として少なくとも50重量%以上でポリ乳酸を含有していることが好ましく、さらに好ましくは70重量%以上、最も好ましくは90重量%以上である。
アロイとする場合のポリ乳酸以外のポリマーとしては、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート共重合体、ポリメタクリレート等が好適な例として挙げられるが、これらに限定されるものではなく、本発明で目的とする圧電性を奏する限り、どのようなポリマーを用いてもよい。
このような圧電性高分子を圧電性繊維とするためには、高分子を繊維化するための公知の手法を、本発明の効果を奏する限りいずれも採用することができ、圧電性高分子を押し出し成型して繊維化する手法、圧電性高分子を溶融紡糸して繊維化する手法、圧電性高分子を乾式あるいは湿式紡糸により繊維化する手法、圧電性高分子を静電紡糸により繊維化する手法等を採用することができる。これらの紡糸条件は、採用する圧電性高分子に応じて公知の手法を適用すればよく、通常は工業的に生産の容易な溶融紡糸法を採用すればよい。
なお、上述の通りに、圧電性高分子がポリ乳酸である場合には、一軸延伸配向し、かつ結晶を含むとより大きな圧電性を示すことから、繊維は延伸することが好ましい。
(被覆)
各導電性繊維は、圧電性高分子から形成される圧電性繊維で表面が被覆されている。導電性繊維を被覆する圧電性繊維層の厚みは1μm〜10mmであることが好ましく、より好ましくは5μm〜5mm、さらに好ましくは10μm〜3mm、最も好ましくは20μm〜1mmである。薄すぎると強度の点で問題となる場合があり、また、厚すぎると電気出力を取り出すことが困難となる場合がある。
圧電性繊維と導電性繊維はできるだけ密着していることが好ましいが、密着性を改良するために、導電性繊維と圧電性繊維の間にアンカー層や接着層などを設けてもよい。
被覆の方法は導電性繊維の周りに圧電性繊維を巻きつける方法が取られる。一方、圧電性繊維層の形状は、印加された応力に対して電気出力を出すことが出来れば特に限定されるものではない。
この圧電性高分子の導電性繊維の被覆状態であるが、導電性繊維と圧電性繊維の形状としては特に限定されるものではないが、できるだけ同心円状に近いことが、好ましい。なお、導電性繊維としてマルチフィラメントを用いる場合、圧電性繊維は、マルチフィラメントの表面(繊維周面)の少なくとも一部が接触しているように被覆していればよく、マルチフィラメントを構成するすべてのフィラメント表面(繊維周面)に圧電性繊維が被覆していても、また、していなくともよい。導電性繊維のマルチフィラメントを構成する内部の各フィラメントへの圧電性繊維の被覆状態は、圧電性素子としての性能、取扱い性等を考慮して、適宜設定すればよい。
本発明の圧電素子は少なくとも1本の導電性繊維を含むが、導電性繊維は1本に限定されず、より多くても良い。
本発明の圧電素子はその表面に電極を存在させる必要が無いため、圧電素子自体をさらに被覆する必要がなく、また、誤動作しにくいという利点がある。
(製造方法)
本発明の圧電素子は、1本の導電性繊維の表面を圧電性繊維で被覆した被覆繊維を含む。この被覆繊維の製造方法として以下の方法が挙げられる。
(i)導電性繊維と延伸した圧電性繊維を別々の工程で作製し、導電性繊維に圧電性繊維を巻き付けるなどして被覆する方法が好ましい。この場合には、できるだけ同心円状に近くなるように被覆することが好ましい。
この場合、圧電性繊維を形成する圧電性高分子としてポリ乳酸を用いる場合の好ましい紡糸、延伸条件として、溶融紡糸温度は150〜250℃が好ましく、延伸温度は40〜150℃が好ましく、延伸倍率は1.1倍から5.0倍が好ましく、結晶化温度は80〜170℃が好ましい。
巻き付ける圧電性繊維としては、複数のフィラメントを束ねたマルチフィラメントを用いてもよく、また、モノフィラメントを用いても良い。
巻き付けて被覆する形態としては、例えば、圧電性繊維を編組チューブのような形態とし、導電性繊維を芯として当該編組チューブに挿入することで被覆してもよい。また、導電性繊維を芯糸とし、その周囲に圧電性繊維を製紐して、丸打組物(Tubular Braid)を作製することで、被覆してもよい。圧電性繊維をモノフィラメントとして用いる場合、その単糸径は1μm〜5mmであり、好ましくは5μm〜2mm、さらに好ましくは10μ〜1mmである。マルチフィラメントとして用いる場合、その単糸径は0.1μm〜5mmであり、好ましくは2μm〜100μm、さらに好ましくは3μm〜50μmである。マルチフィラメントのフィラメント数としては、1本〜100000本が好ましく、より好ましくは50本〜50000本、さらに好ましくは100本〜20000本である。
以上のような方法で製造した、導電性繊維の表面を圧電性繊維で被覆した繊維により本発明の圧電素子を得ることができる。
本発明の圧電素子は、表面に導電層の形成を必要としないため、比較的簡単に製造することができる。
(保護層)
本発明の圧電素子の最表面には保護層を設けてもよい。この保護層は絶縁性であることが好ましく、フレキシブル性などの観点から高分子からなるものがより好ましい。もちろん、この場合には保護層上を擦ることになるが、この擦りによるせん断応力が圧電性繊維まで到達し、その分極を誘起できるものであれば特に限定はない。保護層としては、高分子などのコーティングによって形成されるものに限定されず、フィルムなどあるいは、それらが組み合わされたものであってもよい。保護層としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂などが好適に用いられる。
保護層の厚みとしては出来るだけ薄い方が、せん断応力を圧電性高分子に伝えやすいが、薄すぎると保護層自体が破壊される等の問題が発生しやすくなるため、好ましくは10nm〜200μm、より好ましくは50nm〜50μm、さらに好ましくは70nm〜30μm、最も好ましくは100nm〜10μmである。この保護層により圧電素子の形状を形成することもできる。
(作用)
本発明の圧電素子は、圧電素子の表面を擦るなどして、圧電素子に印加された応力の大きさ及び/又は印加された位置を検出するセンサーとして利用することができる。なお、本発明の圧電素子は、擦る以外の押圧力などによっても圧電性高分子にせん断応力が与えられるならば、電気出力を取り出すことはもちろん可能である。例えば、「印加された応力」としては、圧電素子の表面、すなわち被覆繊維(の圧電性繊維)の表面と指のような被接触物の表面との間の摩擦力や、被覆繊維(の圧電性繊維)の表面または先端部に対する垂直方向の抵抗力が挙げられる。特に、本発明の圧電素子は、導電性繊維に対して平行方向に屈曲させた場合及び擦った場合に大きな電気出力を効率的に取出しやすくなる。
ここで、「印加された応力」とは、表面を指で擦る程度の大きさの応力を意味しており、この、表面を指で擦る程度の大きさの応力の目安としては、おおよそ1〜1000Paである。もちろん、これ以上であっても印加された応力の大きさ及びその印加位置を検出することが可能であることはいうまでもない。指などで入力する場合には、1Pa以上500Pa以下の荷重であっても動作することが好ましく、さらに好ましくは1Pa以上100Pa以下の荷重で動作することが好ましい。もちろん、500Paを超える荷重であっても動作することは、上述の通りである。
(複数の圧電素子)
また、本発明の圧電素子を複数並べて用いることも可能である。並べ方としても一次元的に一段で並べても、二次元的に重ねて並べても良く、さらには布状に編織して用いたり、組み紐に製紐したりしてもよい。それによって布状、紐状の圧電素子を実現することも可能となる。布状、紐状にするにあたっては、本発明の目的を達成する限り、圧電素子以外の他の繊維と組み合わせて、混繊、交織、交編等を行ってもよく、また、スマートフォンの筐体の樹脂などに組み込んで使ってもよい。
このように本発明の圧電素子を複数本並べて使用する際においては、本発明の圧電素子は表面に電極を有さないため、その並べ方、編み方が広範に選択することができるという利点がある。
本発明の圧電素子を複数並べて用いる場合、導電性繊維間の距離が短いため電気出力の取り出しにおいて効率的である。また導電性繊維間の距離を一定に保つことで、電気出力の場所によるばらつきを抑制することができる。
(絶縁性繊維)
本発明では、圧電素子における被覆繊維以外の部分には、例えば絶縁性繊維を使用することもできる。この際、絶縁性繊維は圧電素子の柔軟性を向上する目的で伸縮性のある素材、形状を有する繊維を用いることができる。
被覆繊維部分以外にこのように絶縁性繊維を配置することで、圧電素子の操作性(例えば圧電素子を用いた接触式プローブの動きの補助)としての性能を向上させることが可能である。
このような絶縁性繊維としては、体積抵抗率が10Ω・cm以上であれば用いることができ、より好ましくは10Ω・cm以上、さらに好ましくは1010Ω・cm以上がよい。
絶縁性繊維として、例えば、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、塩化ビニル繊維、アラミド繊維、ポリスルホン繊維、ポリエーテル繊維、ポリウレタン繊維等の合成繊維他、綿、麻、絹等の天然繊維、アセテート等の半合成繊維、レーヨン、キュプラ等の再生繊維を用いることができる。これらに限定されるものではなく、公知の絶縁性繊維を任意に用いることができる。さらに、これらの絶縁性繊維を組み合わせて用いてもよく、絶縁性を有しない繊維と組み合わせ、全体として絶縁性を有する繊維としてもよい。
また、柔軟性を持たせる目的で、公知のあらゆる形状の繊維も用いることができる。
(圧電素子の適用技術)
本発明の圧電素子はいずれの様態であっても、表面への接触、圧力、形状変化を電気信号として出力することができるので、圧電素子に印加された応力の大きさ及び/又は印加された位置を検出するセンサーとして利用することができる。図4は、本発明の圧電素子を備えるセンサーを示すブロック図である。本発明の圧電素子1011と、印加された圧力に応じて圧電素子1011から出力される電気信号を増幅する増幅手段1012と、増幅手段1012で増幅された電気信号を出力する出力手段1013と、出力手段1013から出力された電気信号を外部機器(図示せず)へ送信する送信手段1014とからなるセンサー1101を構成すれば、圧電素子1011の表面への接触、圧力、形状変化により出力された電気信号に基づき、外部機器(図示せず)における演算処理にて、圧電素子1011に印加された応力の大きさおよび/又は印加された位置を検出することができる。あるいは、センサー1101内に、出力手段1013から出力された電気信号に基づき圧電素子1011に印加された応力の大きさおよび/又は印加された位置を演算する演算手段(図示せず)を設けてもよい。
増幅手段1012は、例えば各種電子回路で構築されてもよく、あるいはプロセッサ上で動作するソフトウェアプログラムにより実装される機能モジュールとして構築されてもよく、あるいは各種電子回路とソフトウェアプログラムとの組み合わせで構築されてもよい。プロセッサとしては、例えば、CPU(Central Processing Unit)、DSP(digital signal processor)、LSI(large scale integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programming Gate Array)等がある。また、出力手段1013は、例えば各種コネクタにて単独に構築されてもよく、あるいは送信手段2014と一体化した通信装置として構築されてもよい。またあるいは、増幅手段1012、出力手段1013および送信手段1014の機能をまとめて、ソフトウェアプログラムを書き込んだ集積回路もしくはマイクロプロセッサなどで実現してもよい。なお、送信手段1014による送信方式を無線によるもの有線によるものにするかは、構成するセンサーに応じて適宜決定すればよい。また、接触式プローブを上記センサーと同様の構成で実現することもできる。
また、増幅手段だけではなく、ノイズを除去する手段や他の信号と組み合わせて処理する手段などの公知の信号処理手段を組み合わせて用いることができる。これらの手段の接続の順序は目的に応じて適宜変えることができる。もちろん、圧力素子1011から出力される電気信号をそのまま外部機器へ送信した後で信号処理してもよい。
図5は、第1発明に係る圧電素子を備えるセンサーにおける圧電素子と増幅手段との接続例を示す模式図である。図5の増幅手段1012は、図4を参照して説明したものに相当するが、図4の出力手段1013および送信手段1014については図5では図示を省略している。圧電素子1011を備えるセンサーを構成する場合、例えば、増幅手段1012の入力端子には、圧電素子1011の導電性繊維100Bからの引出し線を接続し、接地(アース)端子には、圧電性繊維100Aを接続する。
以下、第2発明について詳細に説明する。
(組紐状圧電素子)
図6は、第2発明に係る組紐状圧電素子の構成例を示す模式図である。
組紐状圧電素子2001は、導電性繊維200Bで形成された芯部2003と、芯部2003を被覆するように組紐状の圧電性繊維200Aで形成された鞘部2002とを備えている。圧電性繊維200Aは主成分としてポリ乳酸を含むことができる。導電性繊維200Bに対する圧電性繊維200Aの巻きつけ角度αは15°以上、75°以下である。
組紐状圧電素子2001では、少なくとも一本の導電性繊維200Bの外周面を多数の圧電性繊維Aが緻密に取り巻いている。特定の理論に束縛されるものではないが、組紐状圧電素子2001に変形が生じると、多数の圧電性繊維200Aそれぞれに変形による応力が生じ、それにより多数の圧電性繊維200Aそれぞれに電場が生じ(圧電効果)、その結果、導電性繊維200Bを取り巻く多数の圧電性繊維200Aの電場を重畳した電圧変化が導電性繊維200Bに生じるものと推測される。すなわち圧電性繊維200Aの組紐状の鞘部2002を用いない場合と比較して導電性繊維200Bからの電気信号が増大する。それにより、組紐状圧電素子2001では、比較的小さな変形で生じる応力によっても、大きな電気信号を取り出すことが可能となる。なお、導電性繊維200Bは複数本であってもよい。
ここで、圧電性繊維200Aは主成分としてポリ乳酸を含むことが好ましい。「主成分として」とは、圧電性繊維200Aの成分のうち最も多い成分がポリ乳酸であるとの意味である。ポリ乳酸中の乳酸ユニットは90モル%以上であることが好ましく、95モル%以上であることがより好ましく、98モル%以上がさらに好ましい。
また、導電性繊維200Bに対する圧電性繊維200Aの巻きつけ角度αは15°以上、75°以下である。すなわち、導電性繊維200B(芯部2003)の中心軸CLの方向に対して、圧電性繊維200Aの巻きつけ角度αは15°以上、75°以下である。ただし、本実施形態では、導電性繊維200Bの中心軸CLは、圧電性繊維200Aの組紐(鞘部2002)の中心軸(以下、「組紐軸」ともいう。)と重なることから、圧電性繊維200Aの組紐軸の方向に対して、圧電性繊維200Aの巻きつけ角度αは15°以上、75°以下である、ということもできる。より大きな電気信号を取り出す観点からは、角度αは25°以上、65°以下であることが好ましく、35°以上、55°以下であることがより好ましく、40°以上、50°以下であることがさらに好ましい。角度αがこの角度範囲を外れると、圧電性繊維200Aに生じる電界が著しく低下し、それにより導電性繊維200Bで得られる電気信号が著しく低下してしまうからである。
なお、上記角度αについては、鞘部2002を形成する圧電性繊維200Aの主方向と導電性繊維200Bの中心軸CLとのなす角ともいうことができ、圧電性繊維200Aの一部が弛んでいたり、毛羽だっていてもよい。
ここで、圧電性繊維200Aに生じる電界が著しく低下する理由は以下のとおりである。圧電性繊維200Aはポリ乳酸を主成分とし、圧電性繊維200Aの繊維軸の方向に一軸配向している。ここで、ポリ乳酸は、その配向方向(この場合には圧電性繊維200Aの繊維軸の方向)に対してせん断応力が生じた場合に電界を生じるが、その配向方向に対して引張応力や圧縮応力が生じた場合に電界をあまり生じない。したがって、組紐軸の方向に平行に変形したときに圧電性繊維200Aにせん断応力が生じるようにするためには、圧電性繊維200A(ポリ乳酸)の配向方向が組紐軸に対して所定の角度範囲にあることがよいと推測される。
なお、組紐状圧電素子2001では、本発明の目的を達成する限り、鞘部2002では圧電性繊維200A以外の他の繊維と組み合わせて混繊等を行ってもよいし、芯部2003では導電性繊維200B以外の他の繊維と組み合わせて混繊等を行ってもよい。
導電性繊維200Bの芯部2003と組紐状の圧電性繊維200Aの鞘部2002とで構成される組紐状圧電素子の長さは特に限定はない。例えば、その組紐状圧電素子は製造において連続的に製造され、その後に必要な長さに切断して利用してもよい。組紐状圧電素子の長さは1mm〜10m、好ましくは、5mm〜2m、より好ましくは1cm〜1mである。長さが短過ぎると繊維形状である利便性が失われ、また、長さが長過ぎると導電性繊維200Bの抵抗値を考慮する必要が出てくるであろう。
以下、各構成について詳細に説明する。
(導電性繊維)
導電性繊維200Bとしては、導電性を示すものであればよく、公知のあらゆるものが用いられる。導電性繊維200Bとしては、例えば、金属繊維、導電性高分子からなる繊維、炭素繊維、繊維状あるいは粒状の導電性フィラーを分散させた高分子からなる繊維、あるいは繊維状物の表面に導電性を有する層を設けた繊維が挙げられる。繊維状物の表面に導電性を有する層を設ける方法としては、金属コート、導電性高分子コート、導電性繊維の巻付けなどが挙げられる。なかでも金属コートが導電性、耐久性、柔軟性などの観点から好ましい。金属をコートする具体的な方法としては、蒸着、スパッタ、電解メッキ、無電解メッキなどが挙げられるが生産性などの観点からメッキが好ましい。このような金属をメッキされた繊維は金属メッキ繊維ということができる。
金属をコートされるベースの繊維として、導電性の有無によらず公知の繊維を用いることができ、例えば、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、塩化ビニル繊維、アラミド繊維、ポリスルホン繊維、ポリエーテル繊維、ポリウレタン繊維等の合成繊維の他、綿、麻、絹等の天然繊維、アセテート等の半合成繊維、レーヨン、キュプラ等の再生繊維を用いることができる。ベースの繊維はこれらに限定されるものではなく、公知の繊維を任意に用いることができ、これらの繊維を組み合わせて用いてもよい。
ベースの繊維にコートされる金属は導電性を示し、本発明の効果を奏する限り、いずれを用いてもよい。例えば、金、銀、白金、銅、ニッケル、スズ、亜鉛、パラジウム、酸化インジウム錫、硫化銅など、およびこれらの混合物や合金などを用いることができる。
導電性繊維200Bに屈曲耐性のある金属コートした有機繊維を使用すると、導電性繊維が折れることが非常に少なく、圧電素子を用いたセンサーとしての耐久性や安全性に優れる。
導電性繊維200Bはフィラメントを複数本束ねたマルチフィラメントであっても、また、フィラメント一本からなるモノフィラメントであってもよい。マルチフィラメントの方が電気特性の長尺安定性の観点で好ましい。モノフィラメント(紡績糸を含む)の場合、その単糸径は1μm〜5000μmであり、好ましくは2μm〜100μmである。さらに好ましくは3μm〜50μmである。マルチフィラメントの場合、フィラメント数としては、1本〜100000本が好ましく、より好ましくは5本〜500本、さらに好ましくは10本〜100本である。ただし、導電性繊維200Bの繊度・本数とは、組紐を作製する際に用いる芯部2003の繊度・本数であり、複数本の単糸(モノフィラメント)で形成されるマルチフィラメントも一本の導電性繊維200Bと数えるものとする。ここで芯部2003とは、導電性繊維以外の繊維を用いた場合であっても、それを含めた全体の量とする。
繊維の直径が小さいと強度が低下しハンドリングが困難となり、また、直径が大きい場合にはフレキシブル性が犠牲になる。導電性繊維200Bの断面形状としては円または楕円であることが、圧電素子の設計および製造の観点で好ましいが、これに限定されない。
また、圧電性高分子からの電気出力を効率よく取り出すため、電気抵抗は低いことが好ましく、体積抵抗率としては10−1Ω・cm以下であることが好ましく、より好ましくは10−2Ω・cm以下、さらに好ましくは10−3Ω・cm以下である。ただし、電気信号の検出で十分な強度が得られるのであれば導電性繊維200Bの抵抗率はこの限りではない。
導電性繊維200Bは、本発明の用途から、繰り返しの曲げやねじりといった動きに対して耐性がなければならない。その指標としては、結節強さが、より大きいものが好まれる。結節強さはJIS L1013:2010 8.6の方法で測定することができる。本発明に適当な結節強さの程度としては、0.5cN/dtex以上であることが好ましく、1.0cN/dtex以上であることがより好ましく、1.5cN/dtex以上であることがさらに好ましく、2.0cN/dtex以上であることが最も好ましい。また、別の指標としては、曲げ剛性が、より小さいものが好まれる。曲げ剛性は、カトーテック(株)製KES―FB2純曲げ試験機などの測定装置で測定されるのが一般的である。本発明に適当な曲げ剛性の程度としては、東邦テナックス(株)製の炭素繊維“テナックス”(登録商標)HTS40−3Kよりも小さいほうが好ましい。具体的には、導電性繊維の曲げ剛性が0.05×10−4N・m/m以下であることが好ましく、0.02×10−4N・m/m以下であることがより好ましく、0.01×10−4N・m/m以下であることがさらに好ましい。
(圧電性繊維)
圧電性繊維200Aの材料である圧電性高分子としてはポリフッ化ビニリデンやポリ乳酸のような圧電性を示す高分子を利用できるが、本実施形態では上記のように圧電性繊維200Aは主成分としてポリ乳酸を含むことが好適である。ポリ乳酸は、例えば溶融紡糸後に延伸によって容易に配向して圧電性を示し、ポリフッ化ビニリデンなどで必要となる電界配向処理が不要な点で生産性に優れている。しかしこのことは、本発明を実施するに際してポリフッ化ビニリデンその他の圧電性材料の使用を排除することを意図するものではない。
ポリ乳酸としては、その結晶構造によって、L−乳酸、L−ラクチドを重合してなるポリ−L−乳酸、D−乳酸、D−ラクチドを重合してなるポリ−D−乳酸、さらに、それらのハイブリッド構造からなるステレオコンプレックスポリ乳酸などがあるが、圧電性を示すものであればいずれも利用できる。圧電率の高さの観点で好ましくは、ポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸である。ポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸はそれぞれ、同じ応力に対して分極が逆になるために、目的に応じてこれらを組み合わせて使用することも可能である。
ポリ乳酸の光学純度は99%以上であることが好ましく、99.3%以上であることがより好ましく、99.5%以上であることがさらに好ましい。光学純度が99%未満であると著しく圧電率が低下する場合があり、圧電性繊維Aの形状変化よって十分な電気信号を得ることが難しくなる場合がある。特に、圧電性繊維Aは、主成分としてポリ−L−乳酸またはポリ−D−乳酸を含み、これらの光学純度が99%以上であることが好ましい。
ポリ乳酸を主成分とする圧電性繊維200Aは、製造時に延伸されて、その繊維軸方向に一軸配向している。さらに、圧電性繊維200Aは、その繊維軸方向に一軸配向しているだけでなく、ポリ乳酸の結晶を含むものであることが好ましく、一軸配向したポリ乳酸の結晶を含むものであることがより好ましい。なぜなら、ポリ乳酸はその結晶性が高いことおよび一軸配向していることでより大きな圧電性を示すためである。
結晶性および一軸配向性はホモPLA結晶化度Xhomo(%)および結晶配向度Ao(%)で求められる。本発明の圧電性繊維Aとしては、ホモPLA結晶化度Xhomo(%)および結晶配向度Ao(%)が下記式(1)を満たすことが好ましい。
homo×Ao×Ao÷10≧0.26 (1)
上記式(1)を満たさない場合、結晶性および/または一軸配向性が十分でなく、動作に対する電気信号の出力値が低下したり、特定方向の動作に対する信号の感度が低下したりするおそれがある。上記式(1)の左辺の値は、0.28以上がより好ましく、0.3以上がさらに好ましい。ここで、各々の値は下記に従って求める。
ホモポリ乳酸結晶化度Xhomo
ホモポリ乳酸結晶化度Xhomoについては、広角X線回折分析(WAXD)による結晶構造解析から求める。広角X線回折分析(WAXD)では、リガク製ultrax18型X線回折装置を用いて透過法により、以下条件でサンプルのX線回折図形をイメージングプレートに記録する。
X線源: Cu−Kα線(コンフォーカル ミラー)
出力: 45kV×60mA
スリット: 1st:1mmΦ,2nd:0.8mmΦ
カメラ長: 120mm
積算時間: 10分
サンプル: 35mgのポリ乳酸繊維を引き揃え3cmの繊維束とする。
得られるX線回折図形において方位角にわたって全散乱強度Itotalを求め、ここで2θ=16.5°,18.5°,24.3°付近に現れるホモポリ乳酸結晶に由来する各回折ピークの積分強度の総和ΣIHMiを求める。これらの値から下記式(2)に従い、ホモポリ乳酸結晶化度Xhomoを求める。
ホモポリ乳酸結晶化度Xhomo(%)=ΣIHMi/Itotal×100 (2)
なお、ΣIHMiは、全散乱強度においてバックグランドや非晶による散漫散乱を差し引くことによって算出する。
(2)結晶配向度Ao:
結晶配向度Aoについては、上記の広角X線回折分析(WAXD)により得られるX線回折図形において、動径方向の2θ=16.5°付近に現れるホモポリ乳酸結晶に由来する回折ピークについて、方位角(°)に対する強度分布をとり、得られた分布プロファイルの半値幅の総計ΣWi(°)から次式(3)より算出する。
結晶配向度Ao(%)=(360−ΣW)÷360×100 (3)
なお、ポリ乳酸は加水分解が比較的速いポリエステルであるから、耐湿熱性が問題となる場合においては、公知の、イソシアネート化合物、オキサゾリン化合物、エポキシ化合物、カルボジイミド化合物などの加水分解防止剤を添加してもよい。また、必要に応じてリン酸系化合物などの酸化防止剤、可塑剤、光劣化防止剤などを添加して物性改良してもよい。
また、ポリ乳酸は他のポリマーとのアロイとして用いてもよいが、ポリ乳酸を主たる圧電性高分子として用いるならば、アロイの全質量を基準として少なくとも50質量%以上でポリ乳酸を含有していることが好ましく、さらに好ましくは70質量%以上、最も好ましくは90質量%以上である。
アロイとする場合のポリ乳酸以外のポリマーとしては、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート共重合体、ポリメタクリレート等が好適な例として挙げられるが、これらに限定されるものではなく、本発明で目的とする圧電性を奏する限り、どのようなポリマーを用いてもよい。
圧電性繊維200Aはフィラメントを複数本束ねたマルチフィラメントであっても、また、フィラメント一本からなるモノフィラメントであってもよい。モノフィラメント(紡績糸を含む)の場合、その単糸径は1μm〜5mmであり、好ましくは5μm〜2mm、さらに好ましくは10μm〜1mmである。マルチフィラメントの場合、その単糸径は0.1μm〜5mmであり、好ましくは2μm〜100μm、さらに好ましくは3μm〜50μmである。マルチフィラメントのフィラメント数としては、1本〜100000本が好ましく、より好ましくは50本〜50000本、さらに好ましくは100本〜20000本である。ただし、圧電性繊維200Aの繊度や本数については、組紐を作製する際のキャリア1つあたりの繊度、本数であり、複数本の単糸(モノフィラメント)で形成されるマルチフィラメントも一本の圧電性繊維200Aと数えるものとする。ここで、キャリア1つの中に、圧電性繊維以外の繊維を用いた場合であっても、それを含めた全体の量とする。
このような圧電性高分子を圧電性繊維200Aとするためには、高分子から繊維化するための公知の手法を、本発明の効果を奏する限りいずれも採用することができる。例えば、圧電性高分子を押し出し成型して繊維化する手法、圧電性高分子を溶融紡糸して繊維化する手法、圧電性高分子を乾式あるいは湿式紡糸により繊維化する手法、圧電性高分子を静電紡糸により繊維化する手法、フィルムを形成した後に細くカットする手法、などを採用することができる。これらの紡糸条件は、採用する圧電性高分子に応じて公知の手法を適用すればよく、通常は工業的に生産の容易な溶融紡糸法を採用すればよい。さらに、繊維を形成後には形成された繊維を延伸する。それにより一軸延伸配向しかつ結晶を含む大きな圧電性を示す圧電性繊維200Aが形成される。
また、圧電性繊維200Aは、上記のように作製されたものを組紐とする前に、染色、撚糸、合糸、熱処理などの処理をすることができる。
さらに、圧電性繊維200Aは、組紐を形成する際に繊維同士が擦れて断糸したり、毛羽が出たりする場合があるため、その強度と耐摩耗性は高い方が好ましく、強度は1.5cN/dtex以上であることが好ましく、2.0cN/dtex以上であることがより好ましく、2.5cN/dtex以上であることがさらに好ましく、3.0cN/dtex以上であることが最も好ましい。耐摩耗性は、JIS L1095:2010 9.10.2 B法などで評価することができ、摩擦回数は100回以上が好ましく、1000回以上であることがより好ましく、5000回以上であることがさらに好ましく、10000回以上であることが最も好ましい。耐摩耗性を向上させるための方法は特に限定されるものではなく、公知のあらゆる方法を用いることができ、例えば、結晶化度を向上させたり、微粒子を添加したり、表面加工したりすることができる。また、組紐に加工する際に、繊維に潤滑剤を塗布して摩擦を低減させることもできる。
また、圧電性繊維の収縮率は、前述した導電性繊維の収縮率との差が小さいことが好ましい。収縮率差が大きいと、組紐作製後や布帛作製後の後処理工程や実使用時に熱がかかった時や経時変化により組紐が曲がったり、布帛の平坦性が悪くなったり、圧電信号が弱くなってしまう場合がある。収縮率を後述の沸水収縮率で定量化した場合、圧電性繊維の沸水収縮率S(p)および導電性繊維の沸水収縮率S(c)が下記式(4)を満たすことが好適である。
|S(p)−S(c)|≦10 (4)
上記式(4)の左辺は5以下であることがより好ましく、3以下であればさらに好ましい。
また、圧電性繊維の収縮率は、導電性繊維以外の繊維、例えば絶縁性繊維の収縮率との差も小さいことが好ましい。収縮率差が大きいと、組紐作製後や布帛作製後の後処理工程や実使用時に熱がかかった時や経時変化により組紐が曲がったり、布帛の平坦性が悪くなったり、圧電信号が弱くなってしまう場合がある。収縮率を沸水収縮率で定量化した場合、圧電性繊維の沸水収縮率S(p)および絶縁性繊維の沸水収縮率S(i)が下記式(5)を満たすことが好適である。
|S(p)−S(i)|≦10 (5)
上記式(5)の左辺は5以下であることがより好ましく、3以下であればさらに好ましい。
また、圧電性繊維の収縮率は小さい方が好ましい。例えば収縮率を沸水収縮率で定量化した場合、圧電性繊維の収縮率は15%以下であることが好ましく、より好ましくは10%以下、さらに好ましくは5%以下、最も好ましくは3%以下である。収縮率を下げる手段としては、公知のあらゆる方法を適用することができ、例えば、熱処理により非晶部の配向緩和や結晶化度を上げることにより収縮率を低減することができ、熱処理を実施するタイミングは特に限定されず、延伸後、撚糸後、組紐化後、布帛化後などが挙げられる。なお、上述の沸水収縮率は以下の方法で測定するものとする。枠周1.125mの検尺機で捲数20回のカセを作り、0.022cN/dtexの荷重を掛けて、スケール板に吊るして初期のカセ長L0を測定した。その後、このカセを100℃の沸騰水浴中で30分間処理後、放冷し再び上記荷重を掛けてスケール板に吊るし収縮後のカセ長Lを測定した。測定されたL0およびLを用いて下記式(6)により沸水収縮率を計算する。
沸水収縮率=(L0−L)/L0×100(%) (6)
(被覆)
導電性繊維200B、すなわち芯部2003は、圧電性繊維200A、すなわち組紐状の鞘部2002で表面が被覆されている。導電性繊維200Bを被覆する鞘部2002の厚みは1μm〜10mmであることが好ましく、5μm〜5mmであることがより好ましく、10μm〜3mmであることがさらに好ましい、20μm〜1mmであることが最も好ましい。薄すぎると強度の点で問題となる場合があり、また、厚すぎると組紐状圧電素子2001が硬くなり変形し難くなる場合がある。なお、ここで言う鞘部2002とは芯部2003に隣接する層のことを指す。
組紐状圧電素子2001において、鞘部2002の圧電性繊維200Aの総繊度は、芯部2003の導電性繊維200Bの総繊度の1/2倍以上、20倍以下であることが好ましく、1倍以上、15倍以下であることがより好ましく、2倍以上、10倍以下であることがさらに好ましい。圧電性繊維200Aの総繊度が導電性繊維200Bの総繊度に対して小さ過ぎると、導電性繊維200Bを囲む圧電性繊維200Aが少な過ぎて導電性繊維200Bが十分な電気信号を出力できず、さらに導電性繊維200Bが近接する他の導電性繊維に接触するおそれがある。圧電性繊維200Aの総繊度が導電性繊維200Bの総繊度に対して大き過ぎると、導電性繊維200Bを囲む圧電性繊維200Aが多過ぎて組紐状圧電素子2001が硬くなり変形し難くなる。すなわち、いずれの場合にも組紐状圧電素子2001がセンサーとして十分に機能しなくなる。
ここでいう総繊度とは、鞘部2002を構成する圧電性繊維200A全ての繊度の和であり、例えば、一般的な8打組紐の場合には、8本の繊維の繊度の総和となる。
また、組紐状圧電素子2001において、鞘部2002の圧電性繊維200Aの一本あたりの繊度は、導電性繊維200Bの総繊度の1/20倍以上、2倍以下であることが好ましく、1/15倍以上、1.5倍以下であることがより好ましく、1/10倍以上、1倍以下であることがさらに好ましい。圧電性繊維200A一本あたりの繊度が導電性繊維200Bの総繊度に対して小さ過ぎると、圧電性繊維200Aが少な過ぎて導電性繊維200Bが十分な電気信号を出力できず、さらに圧電性繊維200Aが切断するおそれがある。圧電性繊維200A一本あたりの繊度が導電性繊維200Bの総繊度に対して大き過ぎると、圧電性繊維200Aが太過ぎて組紐状圧電素子2001が硬くなり変形し難くなる。すなわち、いずれの場合にも組紐状圧電素子2001がセンサーとして十分に機能しなくなる。
なお、導電性繊維200Bに金属繊維を用いた場合や、金属繊維を導電性繊維200Bあるいは圧電性繊維200Aに混繊した場合は、繊度の比率は上記の限りではない。本発明において、上記比率は、接触面積や被覆率、すなわち、面積および体積の観点で重要であるからである。例えば、それぞれの繊維の比重が2を超えるような場合には、繊維の平均断面積の比率が上記繊度の比率であることが好ましい。
圧電性繊維200Aと導電性繊維200Bとはできるだけ密着していることが好ましいが、密着性を改良するために、導電性繊維200Bと圧電性繊維200Aとの間にアンカー層や接着層などを設けてもよい。
被覆の方法は導電性繊維200Bを芯糸として、その周りに圧電性繊維200Aを組紐状に巻きつける方法が取られる。一方、圧電性繊維200Aの組紐の形状は、印加された荷重で生じる応力に対して電気信号を出力することが出来れば特に限定されるものではないが、芯部2003を有する8打組紐や16打組紐が好ましい。
導電性繊維200Bと圧電性繊維200Aの形状としては特に限定されるものではないが、できるだけ同心円状に近いことが、好ましい。なお、導電性繊維200Bとしてマルチフィラメントを用いる場合、圧電性繊維200Aは、導電性繊維200Bのマルチフィラメントの表面(繊維周面)の少なくとも一部が接触しているように被覆していればよく、マルチフィラメントを構成するすべてのフィラメント表面(繊維周面)に圧電性繊維200Aが被覆していてもよいし、被覆していなくともよい。導電性繊維200Bのマルチフィラメントを構成する内部の各フィラメントへの圧電性繊維200Aの被覆状態は、圧電性素子としての性能、取扱い性等を考慮して、適宜設定すればよい。
本発明の組紐状圧電素子2001は、その表面に電極を存在させる必要が無いため、組紐状圧電素子2001自体をさらに被覆する必要がなく、また、誤動作しにくいという利点がある。
(製造方法)
本発明の組紐状圧電素子2001は少なくとも1本の導電性繊維200Bの表面を組紐状の圧電性繊維200Aで被覆しているが、その製造方法としては例えば以下の方法が挙げられる。すなわち、導電性繊維200Bと圧電性繊維200Aを別々の工程で作製し、導電性繊維200Bに圧電性繊維200Aを組紐状に巻きつけて被覆する方法である。この場合には、できるだけ同心円状に近くなるように被覆することが好ましい。
この場合、圧電性繊維200Aを形成する圧電性高分子としてポリ乳酸を用いる場合の好ましい紡糸、延伸条件として、溶融紡糸温度は150℃〜250℃が好ましく、延伸温度は40℃〜150℃が好ましく、延伸倍率は1.1倍から5.0倍が好ましく、結晶化温度は80℃〜170℃が好ましい。
導電性繊維200Bに巻きつける圧電性繊維200Aとしては、複数のフィラメントを束ねたマルチフィラメントを用いてもよく、また、モノフィラメント(紡績糸を含む)を用いても良い。また、圧電性繊維200Aを巻きつけられる導電性繊維200Bとしては、複数のフィラメントを束ねたマルチフィラメントを用いてもよく、また、モノフィラメント(紡績糸を含む)を用いても良い。
被覆の好ましい形態としては、導電性繊維200Bを芯糸とし、その周囲に圧電性繊維200Aを組紐状に製紐して、丸打組物(Tubular Braid)を作製することで被覆することができる。より具体的には芯部2003を有する8打組紐や16打組紐が挙げられる。ただし、例えば、圧電性繊維200Aを編組チューブのような形態とし、導電性繊維200Bを芯として当該編組チューブに挿入することで被覆してもよい。
以上のような製造方法により、導電性繊維200Bの表面を組紐状の圧電性繊維200Aで被覆した組紐状圧電素子2001を得ることができる。
本発明の組紐状圧電素子2001は、表面に電気信号を検出するための電極の形成を必要としないため、比較的簡単に製造することができる。
(保護層)
本発明の組紐状圧電素子2001の最表面には保護層を設けてもよい。この保護層は絶縁性であることが好ましく、フレキシブル性などの観点から高分子からなるものがより好ましい。保護層に絶縁性を持たせる場合には、もちろん、この場合には保護層ごと変形させたり、保護層上を擦ったりすることになるが、これらの外力が圧電性繊維200Aまで到達し、その分極を誘起できるものであれば特に限定はない。保護層としては、高分子などのコーティングによって形成されるものに限定されず、フィルム、布帛、繊維などを巻付けてもよく、あるいは、それらが組み合わされたものであってもよい。
保護層の厚みとしては出来るだけ薄い方が、せん断応力を圧電性繊維200Aに伝えやすいが、薄すぎると保護層自体が破壊される等の問題が発生しやすくなるため、好ましくは10nm〜200μm、より好ましくは50nm〜50μm、さらに好ましくは70nm〜30μm、最も好ましくは100nm〜10μmである。この保護層により圧電素子の形状を形成することもできる。
また、ノイズ低減を目的として電磁波シールド層を組紐構造に取り入れることも可能である。電磁波シールド層は特に限定されるものではないが、導電性の物質をコーティングしてもよいし、導電性を有するフィルム、布帛、繊維などを巻付けてもよい。電磁波シールド層の体積抵抗率としては10−1Ω・cm以下であることが好ましく、より好ましくは10−2Ω・cm以下、さらに好ましくは10−3Ω・cm以下である。ただし、電磁波シールド層の効果が得られるのであれば抵抗率はこの限りではない。この電磁波シールド層は、鞘の圧電性繊維200Aの表面に設けてもよく、前述の保護層の外側に設けてもよい。もちろん、電磁波シールド層と保護層が複数層積層されていてもよく、その順番も目的に応じて適宜決められる。
さらには、圧電性繊維からなる層を複数層設けたり、信号を取り出すための導電性繊維からなる層を複数層設けたりすることもできる。もちろん、これらの保護層、電磁波シールド層、圧電性繊維からなる層、導電性繊維からなる層は、その目的に応じて、その順番および層数は適宜決められる。なお、巻付ける方法としては、鞘部2002のさらに外層に組紐構造を形成したり、カバーリングしたりする方法が挙げられる。
(作用)
本発明の組紐状圧電素子2001は、例えば組紐状圧電素子2001の表面を擦るなどで、組紐状圧電素子2001に荷重が印加されて生じる応力、すなわち組紐状圧電素子2001に印加される応力について、その大きさおよび/又は印加位置を検出するセンサーとして利用することができる。また、本発明の組紐状圧電素子2001は、擦る以外の押圧力や曲げ変形などによっても圧電性繊維200Aにせん断応力が与えられるならば、電気信号を取り出すことはもちろん可能である。例えば、組紐状圧電素子2001に「印加される応力」としては、圧電素子の表面、すなわち圧電性繊維200Aの表面と指のような被接触物の表面との間の摩擦力や、圧電性繊維200Aの表面または先端部に対する垂直方向の抵抗力、圧電性繊維200Aの曲げ変形に対する抵抗力などが挙げられる。特に、本発明の組紐状圧電素子2001は、導電性繊維200Bに対して平行方向に屈曲させた場合や擦った場合に大きな電気信号を効率的に出力することができる。
ここで、組紐状圧電素子2001に「印加された応力」とは、例えば表面を指で擦る程度の大きさの応力の場合、その目安としては、おおよそ1〜1000Paである。もちろん、これ以上であっても印加された応力の大きさおよびその印加位置を検出することが可能であることはいうまでもない。指などで入力する場合には、1Pa以上500Pa以下の荷重であっても動作することが好ましく、さらに好ましくは1Pa以上100Pa以下の荷重で動作することが好ましい。もちろん、500Paを超える荷重であっても動作することは、上述の通りである。
(布帛状圧電素子)
図7は、第2発明に係る組紐状圧電素子を用いた布帛状圧電素子の構成例を示す模式図である。
布帛状圧電素子2005は、少なくとも1本の組紐状圧電素子2001を含む布帛2006を備えている。布帛2006は、布帛を構成する繊維(組紐を含む)の少なくとも1本が組紐状圧電素子2001であり、組紐状圧電素子2001が圧電素子としての機能を発揮可能である限り何らの限定は無く、どのような織編物であってもよい。布状にするにあたっては、本発明の目的を達成する限り、他の繊維(組紐を含む)と組み合わせて、交織、交編等を行ってもよい。もちろん、組紐状圧電素子2001を、布帛を構成する繊維(例えば、経糸や緯糸)の一部として用いてもよいし、組紐状圧電素子2001を布帛に刺繍してもよいし、接着してもよい。図7に示す例では、布帛状圧電素子2005は、経糸として、少なくとも1本の組紐状圧電素子2001および絶縁性繊維2007を配し、緯糸として導電性繊維2008および絶縁性繊維2007を交互に配した平織物である。導電性繊維2008は導電性繊維200Bと同一種であっても異種の導電性繊維であってもよく、また絶縁性繊維2007については後述される。なお、絶縁性繊維2007及び/又は導電性繊維2008の全部又は一部が組紐形態であってもよい。
この場合、布帛状圧電素子2005が曲げられるなどして変形したとき、その変形に伴い組紐状圧電素子2001も変形するので、組紐状圧電素子2001から出力される電気信号により、布帛状圧電素子2005の変形を検出できる。そして、布帛状圧電素子2005は、布帛(織編物)として用いることができるので、例えば衣類形状のウェアラブルセンサーに適用することができる。
また、図7に示す布帛状圧電素子2005では、組紐状圧電素子2001に導電性繊維2008が交差して接触している。したがって、導電性繊維2008は、組紐状圧電素子2001の少なくとも一部と交差して接触し、それを覆っており、外部から組紐状圧電素子2001へ向かおうとする電磁波の少なくとも一部を遮っている、と見ることができる。このような導電性繊維2008は、接地(アース)されることにより、組紐状圧電素子2001への電磁波の影響を軽減する機能を有している。すなわち導電性繊維2008は組紐状圧電素子2001の電磁波シールドとして機能することができる。それにより、例えば布帛状圧電素子2005の上下に電磁波シールド用の導電性の布帛を重ねなくても、布帛状圧電素子2005のS/N比を著しく向上させることができる。この場合、電磁波シールドの観点から組紐状圧電素子2001と交差する緯糸(図7の場合)における導電性繊維2008の割合が高いほど好ましい。具体的には、布帛2006を形成する繊維であり且つ組紐状圧電素子2001と交差する繊維のうちの30%以上が導電性繊維であることが好ましく、40%以上がより好ましく、50%以上が更に好ましい。このように布帛状圧電素子2005において、布帛を構成する繊維の少なくとも一部として導電性繊維を入れることで、電磁波シールド機能付の布帛状圧電素子2005とすることができる。
織物の織組織としては、平織、綾織、朱子織等の三原組織、変化組織、たて二重織、よこ二重織等の片二重組織、たてビロードなどが例示される。編物の種類は、丸編物(緯編物)であってもよいし経編物であってもよい。丸編物(緯編物)の組織としては、平編、ゴム編、両面編、パール編、タック編、浮き編、片畔編、レース編、添え毛編等が好ましく例示される。経編組織としては、シングルデンビー編、シングルアトラス編、ダブルコード編、ハーフトリコット編、裏毛編、ジャガード編等が例示される。層数も単層でもよいし、2層以上の多層でもよい。更には、カットパイルおよび/またはループパイルからなる立毛部と地組織部とで構成される立毛織物、立毛編み物であってもよい。
(複数の圧電素子)
また、布帛状圧電素子2005では、組紐状圧電素子2001を複数並べて用いることも可能である。並べ方としては、例えば経糸または緯糸としてすべてに組紐状圧電素子2001を用いてもよいし、数本ごとや一部分に組紐状圧電素子2001を用いてもよい。また、ある部分では経糸として組紐状圧電素子2001を用い、他の部分では緯糸として組紐状圧電素子2001を用いてもよい。
このように組紐状圧電素子2001を複数本並べて布帛状圧電素子2005を形成するときには、組紐状圧電素子2001は表面に電極を有さないため、その並べ方、編み方が広範に選択することができるという利点がある。
また、組紐状圧電素子2001を複数並べて用いる場合、導電性繊維B間の距離が短いため電気信号の取り出しにおいて効率的である。
(絶縁性繊維)
布帛状圧電素子2005では、組紐状圧電素子2001(及び導電性繊維2008)以外の部分には、絶縁性繊維を使用することができる。この際、絶縁性繊維は布帛状圧電素子2005の柔軟性を向上する目的で伸縮性のある素材、形状を有する繊維を用いることができる。
このように組紐状圧電素子2001(及び導電性繊維2008)以外にこのように絶縁性繊維を配置することで、布帛状圧電素子2005の操作性(例示:ウェアラブルセンサーとしての動き易さ)を向上させることが可能である。
このような絶縁性繊維としては、体積抵抗率が10Ω・cm以上であれば用いることができ、より好ましくは10Ω・cm以上、さらに好ましくは1010Ω・cm以上がよい。
絶縁性繊維として、例えば、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、塩化ビニル繊維、アラミド繊維、ポリスルホン繊維、ポリエーテル繊維、ポリウレタン繊維等の合成繊維他、綿、麻、絹等の天然繊維、アセテート等の半合成繊維、レーヨン、キュプラ等の再生繊維を用いることができる。これらに限定されるものではなく、公知の絶縁性繊維を任意に用いることができる。さらに、これらの絶縁性繊維を組み合わせて用いてもよく、絶縁性を有しない繊維と組み合わせ、全体として絶縁性を有する繊維としてもよい。
また、公知のあらゆる断面形状の繊維も用いることができる。
(圧電素子の適用技術)
本発明の組紐状圧電素子2001や布帛状圧電素子2005のような圧電素子はいずれの様態であっても、表面への接触、圧力、形状変化を電気信号として出力することができるので、その圧電素子に印加された応力の大きさおよび/又は印加された位置を検出するセンサー(デバイス)として利用することができる。また、この電気信号を他のデバイスを動かすための電力源あるいは蓄電するなど、発電素子として用いることもできる。具体的には、人、動物、ロボット、機械など自発的に動くものの可動部に用いることによる発電、靴底、敷物、外部から圧力を受ける構造物の表面での発電、流体中での形状変化による発電、などが挙げられる。また、流体中での形状変化により電気信号を発するために、流体中の帯電性物質を吸着させたり付着を抑制させたりすることも可能である。
図8は、本発明の圧電素子を備えるデバイスを示すブロック図である。デバイス2010は、圧電素子2011(例示:組紐状圧電素子2001、布帛状圧電素子2005)と、印加された圧力に応じて圧電素子2011から出力される電気信号を増幅する増幅手段2012と、増幅手段2012で増幅された電気信号を出力する出力手段2013と、出力手段2013から出力された電気信号を外部機器(図示せず)へ送信する送信手段2014とを備える。このデバイス2010を用いれば、圧電素子2011の表面への接触、圧力、形状変化により出力された電気信号に基づき、外部機器(図示せず)における演算処理にて、圧電素子に印加された応力の大きさおよび/又は印加された位置を検出することができる。あるいは、デバイス2010内に、出力手段2013から出力された電気信号に基づき圧電素子2011に印加された応力の大きさおよび/又は印加された位置を演算する演算手段(図示せず)を設けてもよい。
増幅手段2012は、例えば各種電子回路で構築されてもよく、あるいはプロセッサ上で動作するソフトウェアプログラムにより実装される機能モジュールとして構築されてもよく、あるいは各種電子回路とソフトウェアプログラムとの組み合わせで構築されてもよい。プロセッサとしては、例えば、CPU(Central Processing Unit)、DSP(digital signal processor)、LSI(large scale integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programming Gate Array)等がある。また、出力手段2013は、例えば各種コネクタにて単独に構築されてもよく、あるいは送信手段2014と一体化した通信装置として構築されてもよい。またあるいは、増幅手段2012、出力手段2013および送信手段2014の機能をまとめて、ソフトウェアプログラムを書き込んだ集積回路もしくはマイクロプロセッサなどで実現してもよい。なお、送信手段2014による送信方式を無線によるもの有線によるものにするかは、構成するセンサーに応じて適宜決定すればよい。
また、増幅手段だけではなく、ノイズを除去する手段や他の信号と組み合わせて処理する手段などの公知の信号処理手段を組み合わせて用いることができる。これらの手段の接続の順序は目的に応じて適宜変えることができる。もちろん、圧電素子2011から出力される電気信号をそのまま外部機器へ送信した後で信号処理してもよい。
図9および図10は、実施の形態に係る組紐布帛状圧電素子を備えるデバイスの構成例を示す模式図である。図9および図10の増幅手段2012は、図8を参照して説明したものに相当するが、図8の出力手段2013および送信手段2014については図9および図10では図示を省略している。布帛状圧電素子2005を備えるデバイスを構成する場合、増幅手段2012の入力端子に組紐状圧電素子2001の芯部2003からの引出し線を接続し、接地(アース)端子には、増幅手段2012の入力端子に接続した組紐状圧電素子2001とは別の組紐状圧電素子または導電性繊維2008を接続する。例えば、図9に示すように、布帛状圧電素子2005において、組紐状圧電素子2001の芯部2003からの引出し線を増幅手段2012の入力端子に接続し、組紐状圧電素子2001に交差して接触した導電性繊維2008を接地(アース)する。また例えば、図10に示すように、布帛状圧電素子2005において組紐状圧電素子2001を複数並べている場合、1本の組紐状圧電素子2001の芯部2003からの引出し線を増幅手段2012の入力端子に接続し、当該組紐状圧電素子2001に並んだ別の組紐状圧電素子2001の芯部2003からの引出し線を、接地(アース)する。
本発明のデバイス2010は柔軟性があり、紐状および布帛状いずれの形態でも使用できるため、非常に広範な用途が考えられる。本発明のデバイス2010の具体的な例としては、帽子や手袋、靴下などを含む着衣、サポーター、ハンカチ状などの形状をした、タッチパネル、人や動物の表面感圧センサー、例えば、手袋やバンド、サポーターなどの形状をした関節部の曲げ、捩じり、伸縮を感知するセンサーが挙げられる。例えば人に用いる場合には、接触や動きを検出し、医療用途などの関節などの動きの情報収集、アミューズメント用途、失われた組織やロボットを動かすためのインターフェースとして用いることができる。他には、動物や人型を模したぬいぐるみやロボットの表面感圧センサー、関節部の曲げ、捩じり、伸縮を感知するセンサーとして用いることができる。他には、シーツや枕などの寝具、靴底、手袋、椅子、敷物、袋、旗などの表面感圧センサーや形状変化センサーとして用いることができる。
さらに、本発明のデバイス2010は組紐状あるいは布帛状であり、柔軟性があるので、あらゆる構造物の全体あるいは一部の表面に貼付あるいは被覆することにより表面感圧センサー、形状変化センサーとして用いることができる。
さらに、本発明のデバイス2010は、組紐状圧電素子2001の表面を擦るだけで十分な電気信号を発生することができるので、タッチセンサーのようなタッチ式入力装置やポインティングデバイスなどに用いることができる。また、組紐状圧電素子2001で被計測物の表面を擦ることによって被計測物の高さ方向の位置情報や形状情報を得ることができるので、表面形状計測などに用いることができる。
以下、第3発明について詳細に説明する。
(組紐状圧電素子)
図12は実施形態に係る組紐状圧電素子の構成例を示す模式図である。
組紐状圧電素子3001は、導電性繊維300Bで形成された芯部3003と、芯部3003を被覆するように組紐状の圧電性繊維300Aで形成された鞘部3002と、鞘部3002を被覆する導電層3004とを備えている。
導電層3004による鞘部3002の被覆率は25%以上が好ましい。ここで被覆率とは、導電層3004を鞘部3002へ投影した際の導電層3004に含まれる導電性物質3005の面積と鞘部3002の表面積の比率であり、その値は25%以上が好ましく、50%以上がより好ましく、75%以上であることがさらに好ましい。導電層3004の被覆率が25%を下回るとノイズ信号の抑制効果が十分に発揮されない場合がある。導電性物質3005が導電層3004の表面へ露出していない場合、例えば導電性物質3005を内包する繊維を導電層3004として使用して鞘部3002を被覆している場合は、その繊維の鞘部3002へ投影した際の面積と鞘部3002の表面積の比率を被覆率とすることができる。
導電性物質3005とは、導電層3004に含まれる導電性物質のことであり、公知のあらゆるものが該当する。
組紐状圧電素子3001では、少なくとも一本の導電性繊維300Bの外周面を多数の圧電性繊維300Aが緻密に取り巻いている。特定の理論に束縛されるものではないが、組紐状圧電素子3001に変形が生じると、多数の圧電性繊維300Aそれぞれに変形による応力が生じ、それにより多数の圧電性繊維300Aそれぞれに電場が生じ(圧電効果)、その結果、導電性繊維300Bを取り巻く多数の圧電性繊維300Aの電場を重畳した電圧変化が導電性繊維300Bに生じるものと推測される。すなわち圧電性繊維300Aの組紐状の鞘部3002を用いない場合と比較して導電性繊維300Bからの電気信号が増大する。それにより、組紐状圧電素子3001では、比較的小さな変形で生じる応力によっても、大きな電気信号を取り出すことが可能となる。なお、導電性繊維300Bは複数本であってもよい。
ここで、圧電性繊維300Aは主成分としてポリ乳酸を含むことが好ましい。「主成分として」とは、圧電性繊維300Aの成分のうち最も多い成分がポリ乳酸であるとの意味である。ポリ乳酸中の乳酸ユニットは90モル%以上であることが好ましく、95モル%以上であることがより好ましく、98モル%以上がさらに好ましい。
また、導電性繊維300Bに対する圧電性繊維300Aの巻きつけ角度αは15°以上、75°以下である。すなわち、導電性繊維300B(芯部3003)の中心軸CLの方向に対して、圧電性繊維300Aの巻きつけ角度αは15°以上、75°以下である。ただし、本実施形態では、導電性繊維300Bの中心軸CLは、圧電性繊維300Aの組紐(鞘部3002)の中心軸(以下、「組紐軸」ともいう。)と重なることから、圧電性繊維300Aの組紐軸の方向に対して、圧電性繊維300Aの巻きつけ角度αは15°以上、75°以下である、ということもできる。より大きな電気信号を取り出す観点からは、角度αは25°以上、65°以下であることが好ましく、35°以上、55°以下であることがより好ましく、40°以上、50°以下であることがさらに好ましい。角度αがこの角度範囲を外れると、圧電性繊維300Aに生じる電界が著しく低下し、それにより導電性繊維300Bで得られる電気信号が著しく低下してしまうからである。
なお、上記角度αについては、鞘部3002を形成する圧電性繊維300Aの主方向と導電性繊維300Bの中心軸CLとのなす角ともいうことができ、圧電性繊維300Aの一部が弛んでいたり、毛羽だっていてもよい。
ここで、圧電性繊維300Aに生じる電界が著しく低下する理由は以下のとおりである。圧電性繊維300Aはポリ乳酸を主成分とし、圧電性繊維300Aの繊維軸の方向に一軸配向している。ここで、ポリ乳酸は、その配向方向(この場合には圧電性繊維300Aの繊維軸の方向)に対してせん断応力が生じた場合に電界を生じるが、その配向方向に対して引張応力や圧縮応力が生じた場合に電界をあまり生じない。したがって、組紐軸の方向に平行に変形したときに圧電性繊維300Aにせん断応力が生じるようにするためには、圧電性繊維300A(ポリ乳酸)の配向方向が組紐軸に対して所定の角度範囲にあることがよいと推測される。
なお、組紐状圧電素子3001では、本発明の目的を達成する限り、鞘部3002では圧電性繊維300A以外の他の繊維と組み合わせて混繊等を行ってもよいし、芯部3003では導電性繊維300B以外の他の繊維と組み合わせて混繊等を行ってもよい。
導電性繊維300Bの芯部3003と、組紐状の圧電性繊維300Aの鞘部3002と、鞘部3002を被覆する導電層3004とで構成される組紐状圧電素子の長さは特に限定はない。例えば、その組紐状圧電素子は製造において連続的に製造され、その後に必要な長さに切断して利用してもよい。組紐状圧電素子の長さは1mm〜10m、好ましくは、5mm〜2m、より好ましくは1cm〜1mである。長さが短過ぎると繊維形状である利便性が失われ、また、長さが長過ぎると導電性繊維300Bの抵抗値を考慮する必要が出てくるであろう。
以下、各構成について詳細に説明する。
(導電性繊維)
導電性繊維300Bとしては、導電性を示すものであればよく、公知のあらゆるものが用いられる。導電性繊維300Bとしては、例えば、金属繊維、導電性高分子からなる繊維、炭素繊維、繊維状あるいは粒状の導電性フィラーを分散させた高分子からなる繊維、あるいは繊維状物の表面に導電性を有する層を設けた繊維が挙げられる。繊維状物の表面に導電性を有する層を設ける方法としては、金属コート、導電性高分子コート、導電性繊維の巻付けなどが挙げられる。なかでも金属コートが導電性、耐久性、柔軟性などの観点から好ましい。金属をコートする具体的な方法としては、蒸着、スパッタ、電解メッキ、無電解メッキなどが挙げられるが生産性などの観点からメッキが好ましい。このような金属をメッキされた繊維は金属メッキ繊維ということができる。
金属をコートされるベースの繊維として、導電性の有無によらず公知の繊維を用いることができ、例えば、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、塩化ビニル繊維、アラミド繊維、ポリスルホン繊維、ポリエーテル繊維、ポリウレタン繊維等の合成繊維の他、綿、麻、絹等の天然繊維、アセテート等の半合成繊維、レーヨン、キュプラ等の再生繊維を用いることができる。ベースの繊維はこれらに限定されるものではなく、公知の繊維を任意に用いることができ、これらの繊維を組み合わせて用いてもよい。
ベースの繊維にコートされる金属は導電性を示し、本発明の効果を奏する限り、いずれを用いてもよい。例えば、金、銀、白金、銅、ニッケル、スズ、亜鉛、パラジウム、酸化インジウム錫、硫化銅など、およびこれらの混合物や合金などを用いることができる。
導電性繊維300Bに屈曲耐性のある金属コートした有機繊維を使用すると、導電性繊維が折れることが非常に少なく、圧電素子を用いたセンサーとしての耐久性や安全性に優れる。
導電性繊維300Bはフィラメントを複数本束ねたマルチフィラメントであっても、また、フィラメント一本からなるモノフィラメントであってもよい。マルチフィラメントの方が電気特性の長尺安定性の観点で好ましい。モノフィラメント(紡績糸を含む)の場合、その単糸径は1μm〜5000μmであり、好ましくは2μm〜100μmである。さらに好ましくは3μm〜50μmである。マルチフィラメントの場合、フィラメント数としては、1本〜100000本が好ましく、より好ましくは5本〜500本、さらに好ましくは10本〜100本である。ただし、導電性繊維300Bの繊度・本数とは、組紐を作製する際に用いる芯部3003の繊度・本数であり、複数本の単糸(モノフィラメント)で形成されるマルチフィラメントも一本の導電性繊維300Bと数えるものとする。ここで芯部3003とは、導電性繊維以外の繊維を用いた場合であっても、それを含めた全体の量とする。
繊維の直径が小さいと強度が低下しハンドリングが困難となり、また、直径が大きい場合にはフレキシブル性が犠牲になる。導電性繊維300Bの断面形状としては円または楕円であることが、圧電素子の設計および製造の観点で好ましいが、これに限定されない。
また、圧電性高分子からの電気出力を効率よく取り出すため、電気抵抗は低いことが好ましく、体積抵抗率としては10-1Ω・cm以下であることが好ましく、より好ましくは10-2Ω・cm以下、さらに好ましくは10-3Ω・cm以下である。ただし、電気信号の検出で十分な強度が得られるのであれば導電性繊維300Bの抵抗率はこの限りではない。
導電性繊維300Bは、本発明の用途から、繰り返しの曲げやねじりといった動きに対して耐性がなければならない。その指標としては、結節強さが、より大きいものが好まれる。結節強さはJIS L1013:2010 8.6の方法で測定することができる。本発明に適当な結節強さの程度としては、0.5cN/dtex以上であることが好ましく、1.0cN/dtex以上であることがより好ましく、1.5cN/dtex以上であることがさらに好ましく、2.0cN/dtex以上であることが最も好ましい。また、別の指標としては、曲げ剛性が、より小さいものが好まれる。曲げ剛性は、カトーテック(株)製KES―FB2純曲げ試験機などの測定装置で測定されるのが一般的である。本発明に適当な曲げ剛性の程度としては、東邦テナックス(株)製の炭素繊維“テナックス”(登録商標)HTS40−3Kよりも小さいほうが好ましい。具体的には、導電性繊維の曲げ剛性が0.05×10-4N・m2/m以下であることが好ましく、0.02×10-4N・m2/m以下であることがより好ましく、0.01×10-4N・m2/m以下であることがさらに好ましい。
(圧電性繊維)
圧電性繊維300Aの材料である圧電性高分子としてはポリフッ化ビニリデンやポリ乳酸のような圧電性を示す高分子を利用できるが、本実施形態では上記のように圧電性繊維300Aは主成分としてポリ乳酸を含むことが好適である。ポリ乳酸は、例えば溶融紡糸後に延伸によって容易に配向して圧電性を示し、ポリフッ化ビニリデンなどで必要となる電界配向処理が不要な点で生産性に優れている。しかしこのことは、本発明を実施するに際してポリフッ化ビニリデンその他の圧電性材料の使用を排除することを意図するものではない。
ポリ乳酸としては、その結晶構造によって、L−乳酸、L−ラクチドを重合してなるポリ−L−乳酸、D−乳酸、D−ラクチドを重合してなるポリ−D−乳酸、さらに、それらのハイブリッド構造からなるステレオコンプレックスポリ乳酸などがあるが、圧電性を示すものであればいずれも利用できる。圧電率の高さの観点で好ましくは、ポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸である。ポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸はそれぞれ、同じ応力に対して分極が逆になるために、目的に応じてこれらを組み合わせて使用することも可能である。
ポリ乳酸の光学純度は99%以上であることが好ましく、99.3%以上であることがより好ましく、99.5%以上であることがさらに好ましい。光学純度が99%未満であると著しく圧電率が低下する場合があり、圧電性繊維300Aの形状変化よって十分な電気信号を得ることが難しくなる場合がある。特に、圧電性繊維300Aは、主成分としてポリ−L−乳酸またはポリ−D−乳酸を含み、これらの光学純度が99%以上であることが好ましい。
ポリ乳酸を主成分とする圧電性繊維300Aは、製造時に延伸されて、その繊維軸方向に一軸配向している。さらに、圧電性繊維300Aは、その繊維軸方向に一軸配向しているだけでなく、ポリ乳酸の結晶を含むものであることが好ましく、一軸配向したポリ乳酸の結晶を含むものであることがより好ましい。なぜなら、ポリ乳酸はその結晶性が高いことおよび一軸配向していることでより大きな圧電性を示すためである。
結晶性および一軸配向性はホモPLA結晶化度Xhomo(%)および結晶配向度Ao(%)で求められる。本発明の圧電性繊維Aとしては、ホモPLA結晶化度Xhomo(%)および結晶配向度Ao(%)が下記式(1)を満たすことが好ましい。
homo×Ao×Ao÷106≧0.26 (1)
上記式(1)を満たさない場合、結晶性および/または一軸配向性が十分でなく、動作に対する電気信号の出力値が低下したり、特定方向の動作に対する信号の感度が低下したりするおそれがある。上記式(1)の左辺の値は、0.28以上がより好ましく、0.3以上がさらに好ましい。ここで、各々の値は下記に従って求める。
ホモポリ乳酸結晶化度Xhomo
ホモポリ乳酸結晶化度Xhomoについては、広角X線回折分析(WAXD)による結晶構造解析から求める。広角X線回折分析(WAXD)では、リガク製ultrax18型X線回折装置を用いて透過法により、以下条件でサンプルのX線回折図形をイメージングプレートに記録する。
X線源: Cu−Kα線(コンフォーカル ミラー)
出力: 45kV×60mA
スリット: 1st:1mmΦ,2nd:0.8mmΦ
カメラ長: 120mm
積算時間: 10分
サンプル: 35mgのポリ乳酸繊維を引き揃え3cmの繊維束とする。
得られるX線回折図形において方位角にわたって全散乱強度Itotalを求め、ここで2θ=16.5°,18.5°,24.3°付近に現れるホモポリ乳酸結晶に由来する各回折ピークの積分強度の総和ΣIHMiを求める。これらの値から下式(2)に従い、ホモポリ乳酸結晶化度Xhomoを求める。
ホモポリ乳酸結晶化度Xhomo(%)=ΣIHMi/Itotal×100 (2)
なお、ΣIHMiは、全散乱強度においてバックグランドや非晶による散漫散乱を差し引くことによって算出する。
(2)結晶配向度Ao:
結晶配向度Aoについては、上記の広角X線回折分析(WAXD)により得られるX線回折図形において、動径方向の2θ=16.5°付近に現れるホモポリ乳酸結晶に由来する回折ピークについて、方位角(°)に対する強度分布をとり、得られた分布プロファイルの半値幅の総計ΣWi(°)から次式(3)より算出する。
結晶配向度Ao(%)=(360−ΣWi)÷360×100 (3)
なお、ポリ乳酸は加水分解が比較的速いポリエステルであるから、耐湿熱性が問題となる場合においては、公知の、イソシアネート化合物、オキサゾリン化合物、エポキシ化合物、カルボジイミド化合物などの加水分解防止剤を添加してもよい。また、必要に応じてリン酸系化合物などの酸化防止剤、可塑剤、光劣化防止剤などを添加して物性改良してもよい。
また、ポリ乳酸は他のポリマーとのアロイとして用いてもよいが、ポリ乳酸を主たる圧電性高分子として用いるならば、アロイの全質量を基準として少なくとも50質量%以上でポリ乳酸を含有していることが好ましく、さらに好ましくは70質量%以上、最も好ましくは90質量%以上である。
アロイとする場合のポリ乳酸以外のポリマーとしては、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート共重合体、ポリメタクリレート等が好適な例として挙げられるが、これらに限定されるものではなく、本発明で目的とする圧電性を奏する限り、どのようなポリマーを用いてもよい。
圧電性繊維300Aはフィラメントを複数本束ねたマルチフィラメントであっても、また、フィラメント一本からなるモノフィラメントであってもよい。モノフィラメント(紡績糸を含む)の場合、その単糸径は1μm〜5mmであり、好ましくは5μm〜2mm、さらに好ましくは10μm〜1mmである。マルチフィラメントの場合、その単糸径は0.1μm〜5mmであり、好ましくは2μm〜100μm、さらに好ましくは3μm〜50μmである。マルチフィラメントのフィラメント数としては、1本〜100000本が好ましく、より好ましくは50本〜50000本、さらに好ましくは100本〜20000本である。ただし、圧電性繊維300Aの繊度や本数については、組紐を作製する際のキャリア1つあたりの繊度、本数であり、複数本の単糸(モノフィラメント)で形成されるマルチフィラメントも一本の圧電性繊維300Aと数えるものとする。ここで、キャリア1つの中に、圧電性繊維以外の繊維を用いた場合であっても、それを含めた全体の量とする。
このような圧電性高分子を圧電性繊維300Aとするためには、高分子から繊維化するための公知の手法を、本発明の効果を奏する限りいずれも採用することができる。例えば、圧電性高分子を押し出し成型して繊維化する手法、圧電性高分子を溶融紡糸して繊維化する手法、圧電性高分子を乾式あるいは湿式紡糸により繊維化する手法、圧電性高分子を静電紡糸により繊維化する手法、フィルムを形成した後に細くカットする手法、などを採用することができる。これらの紡糸条件は、採用する圧電性高分子に応じて公知の手法を適用すればよく、通常は工業的に生産の容易な溶融紡糸法を採用すればよい。さらに、繊維を形成後には形成された繊維を延伸する。それにより一軸延伸配向しかつ結晶を含む大きな圧電性を示す圧電性繊維300Aが形成される。
また、圧電性繊維300Aは、上記のように作製されたものを組紐とする前に、染色、撚糸、合糸、熱処理などの処理をすることができる。
(3)
さらに、圧電性繊維300Aは、組紐を形成する際に繊維同士が擦れて断糸したり、毛羽が出たりする場合があるため、その強度と耐摩耗性は高い方が好ましく、強度は1.5cN/dtex以上であることが好ましく、2.0cN/dtex以上であることがより好ましく、2.5cN/dtex以上であることがさらに好ましく、3.0cN/dtex以上であることが最も好ましい。耐摩耗性は、JIS L1095:2010 9.10.2 B法などで評価することができ、摩擦回数は100回以上が好ましく、1000回以上であることがより好ましく、5000回以上であることがさらに好ましく、10000回以上であることが最も好ましい。耐摩耗性を向上させるための方法は特に限定されるものではなく、公知のあらゆる方法を用いることができ、例えば、結晶化度を向上させたり、微粒子を添加したり、表面加工したりすることができる。また、組紐に加工する際に、繊維に潤滑剤を塗布して摩擦を低減させることもできる。
また、圧電性繊維の収縮率は、前述した導電性繊維の収縮率との差が小さいことが好ましい。収縮率差が大きいと、組紐作製後や布帛作製後の後処理工程や実使用時に熱がかかった時や経時変化により組紐が曲がったり、布帛の平坦性が悪くなったり、圧電信号が弱くなってしまう場合がある。収縮率を後述の沸水収縮率で定量化した場合、圧電性繊維の沸水収縮率S(p)および導電性繊維の沸水収縮率S(c)が下記式(4)を満たすことが好適である。
|S(p)−S(c)|≦10 (4)
上記式(4)の左辺は5以下であることがより好ましく、3以下であればさらに好ましい。
また、圧電性繊維の収縮率は、導電性繊維以外の繊維、例えば絶縁性繊維の収縮率との差も小さいことが好ましい。収縮率差が大きいと、組紐作製後や布帛作製後の後処理工程や実使用時に熱がかかった時や経時変化により組紐が曲がったり、布帛の平坦性が悪くなったり、圧電信号が弱くなってしまう場合がある。収縮率を沸水収縮率で定量化した場合、圧電性繊維の沸水収縮率S(p)および絶縁性繊維の沸水収縮率S(i)が下記式(5)を満たすことが好適である。
|S(p)−S(i)|≦10 (5)
上記式(5)の左辺は5以下であることがより好ましく、3以下であればさらに好ましい。
また、圧電性繊維の収縮率は小さい方が好ましい。例えば収縮率を沸水収縮率で定量化した場合、圧電性繊維の収縮率は15%以下であることが好ましく、より好ましくは10%以下、さらに好ましくは5%以下、最も好ましくは3%以下である。収縮率を下げる手段としては、公知のあらゆる方法を適用することができ、例えば、熱処理により非晶部の配向緩和や結晶化度を上げることにより収縮率を低減することができ、熱処理を実施するタイミングは特に限定されず、延伸後、撚糸後、組紐化後、布帛化後などが挙げられる。なお、上述の沸水収縮率は以下の方法で測定するものとする。枠周1.125mの検尺機で捲数20回のカセを作り、0.022cN/dtexの荷重を掛けて、スケール板に吊るして初期のカセ長L0を測定した。その後、このカセを100℃の沸騰水浴中で30分間処理後、放冷し再び上記荷重を掛けてスケール板に吊るし収縮後のカセ長Lを測定した。測定されたL0およびLを用いて下記式(6)により沸水収縮率を計算する。
沸水収縮率=(L0−L)/L0×100(%) (6)
(被覆)
導電性繊維300B、すなわち芯部3003は、圧電性繊維300A、すなわち組紐状の鞘部3002で表面が被覆されている。導電性繊維300Bを被覆する鞘部3002の厚みは1μm〜10mmであることが好ましく、5μm〜5mmであることがより好ましく、10μm〜3mmであることがさらに好ましい、20μm〜1mmであることが最も好ましい。薄すぎると強度の点で問題となる場合があり、また、厚すぎると組紐状圧電素子3001が硬くなり変形し難くなる場合がある。なお、ここで言う鞘部3002とは芯部3003に隣接する層のことを指す。
組紐状圧電素子3001において、鞘部3002の圧電性繊維300Aの総繊度は、芯部3003の導電性繊維300Bの総繊度の1/2倍以上、20倍以下であることが好ましく、1倍以上、15倍以下であることがより好ましく、2倍以上、10倍以下であることがさらに好ましい。圧電性繊維300Aの総繊度が導電性繊維300Bの総繊度に対して小さ過ぎると、導電性繊維300Bを囲む圧電性繊維300Aが少な過ぎて導電性繊維300Bが十分な電気信号を出力できず、さらに導電性繊維300Bが近接する他の導電性繊維に接触するおそれがある。圧電性繊維300Aの総繊度が導電性繊維300Bの総繊度に対して大き過ぎると、導電性繊維300Bを囲む圧電性繊維300Aが多過ぎて組紐状圧電素子3001が硬くなり変形し難くなる。すなわち、いずれの場合にも組紐状圧電素子3001がセンサーとして十分に機能しなくなる。
ここでいう総繊度とは、鞘部3002を構成する圧電性繊維300A全ての繊度の和であり、例えば、一般的な8打組紐の場合には、8本の繊維の繊度の総和となる。
また、組紐状圧電素子3001において、鞘部3002の圧電性繊維300Aの一本あたりの繊度は、導電性繊維300Bの総繊度の1/20倍以上、2倍以下であることが好ましく、1/15倍以上、1.5倍以下であることがより好ましく、1/10倍以上、1倍以下であることがさらに好ましい。圧電性繊維300A一本あたりの繊度が導電性繊維300Bの総繊度に対して小さ過ぎると、圧電性繊維300Aが少な過ぎて導電性繊維300Bが十分な電気信号を出力できず、さらに圧電性繊維300Aが切断するおそれがある。圧電性繊維300A一本あたりの繊度が導電性繊維300Bの総繊度に対して大き過ぎると、圧電性繊維300Aが太過ぎて組紐状圧電素子3001が硬くなり変形し難くなる。すなわち、いずれの場合にも組紐状圧電素子3001がセンサーとして十分に機能しなくなる。
なお、導電性繊維300Bに金属繊維を用いた場合や、金属繊維を導電性繊維300Bあるいは圧電性繊維300Aに混繊した場合は、繊度の比率は上記の限りではない。本発明において、上記比率は、接触面積や被覆率、すなわち、面積および体積の観点で重要であるからである。例えば、それぞれの繊維の比重が2を超えるような場合には、繊維の平均断面積の比率が上記繊度の比率であることが好ましい。
圧電性繊維300Aと導電性繊維300Bとはできるだけ密着していることが好ましいが、密着性を改良するために、導電性繊維300Bと圧電性繊維300Aとの間にアンカー層や接着層などを設けてもよい。
被覆の方法は導電性繊維300Bを芯糸として、その周りに圧電性繊維300Aを組紐状に巻きつける方法が取られる。一方、圧電性繊維300Aの組紐の形状は、印加された荷重で生じる応力に対して電気信号を出力することが出来れば特に限定されるものではないが、芯部3003を有する8打組紐や16打組紐が好ましい。
導電性繊維300Bと圧電性繊維300Aの形状としては特に限定されるものではないが、できるだけ同心円状に近いことが、好ましい。なお、導電性繊維300Bとしてマルチフィラメントを用いる場合、圧電性繊維300Aは、導電性繊維300Bのマルチフィラメントの表面(繊維周面)の少なくとも一部が接触しているように被覆していればよく、マルチフィラメントを構成するすべてのフィラメント表面(繊維周面)に圧電性繊維300Aが被覆していてもよいし、被覆していなくともよい。導電性繊維300Bのマルチフィラメントを構成する内部の各フィラメントへの圧電性繊維Aの被覆状態は、圧電性素子としての性能、取扱い性等を考慮して、適宜設定すればよい。
本発明の組紐状圧電素子3001は、その表面に電極を存在させる必要が無いため、組紐状圧電素子3001自体をさらに被覆する必要がなく、また、誤動作しにくいという利点がある。
(導電層)
導電層3004の様態としては、コーティングの他、フィルム、布帛、繊維の巻き付けが考えられ、またそれらを組み合わせてもよい。
導電層3004を形成するコーティングには導電性を示す物質を含むものが使用されていればよく、公知のあらゆるものが用いられる。例えば、金属、導電性高分子、導電性フィラーを分散させた高分子が挙げられる。
導電層3004をフィルムの巻き付けにより形成する場合は、導電性高分子、導電性フィラーを分散させた高分子を製膜して得られるフィルムが用いられ、また表面に導電性を有する層を設けたフィルムが用いられてもよい。
導電層3004を布帛の巻き付けにより形成する場合は、後述する導電性繊維3006を構成成分とする布帛が用いられる。
導電層3004を繊維の巻き付けにより形成する場合、その手法としては、カバーリング、編物、組物が考えられる。また、使用する繊維は、導電性繊維3006であり、導電性繊維3006は、上記導電性繊維300Bと同一種であっても異種の導電性繊維であってもよい。導電性繊維3006としては、例えば、金属繊維、導電性高分子からなる繊維、炭素繊維、繊維状あるいは粒状の導電性フィラーを分散させた高分子からなる繊維、あるいは繊維状物の表面に導電性を有する層を設けた繊維が挙げられる。繊維状物の表面に導電性を有する層を設ける方法としては、金属コート、導電性高分子コート、導電性繊維の巻付けなどが挙げられる。なかでも金属コートが導電性、耐久性、柔軟性などの観点から好ましい。金属をコートする具体的な方法としては、蒸着、スパッタ、電解メッキ、無電解メッキなどが挙げられるが生産性などの観点からメッキが好ましい。このような金属をメッキされた繊維は金属メッキ繊維ということができる。
金属をコートされるベースの繊維として、導電性の有無によらず公知の繊維を用いることができ、例えば、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、塩化ビニル繊維、アラミド繊維、ポリスルホン繊維、ポリエーテル繊維、ポリウレタン繊維等の合成繊維の他、綿、麻、絹等の天然繊維、アセテート等の半合成繊維、レーヨン、キュプラ等の再生繊維を用いることができる。ベースの繊維はこれらに限定されるものではなく、公知の繊維を任意に用いることができ、これらの繊維を組み合わせて用いてもよい。
ベースの繊維にコートされる金属は導電性を示し、本発明の効果を奏する限り、いずれを用いてもよい。例えば、金、銀、白金、銅、ニッケル、スズ、亜鉛、パラジウム、酸化インジウム錫、硫化銅など、およびこれらの混合物や合金などを用いることができる。
導電性繊維3006に屈曲耐性のある金属コートした有機繊維を使用すると、導電性繊維が折れることが非常に少なく、圧電素子を用いたセンサーとしての耐久性や安全性に優れる。
導電性繊維3006はフィラメントを複数本束ねたマルチフィラメントであっても、また、フィラメント一本からなるモノフィラメントであってもよい。マルチフィラメントの方が電気特性の長尺安定性の観点で好ましい。モノフィラメント(紡績糸を含む)の場合、その単糸径は1μm〜5000μmであり、好ましくは2μm〜100μmである。さらに好ましくは3μm〜50μmである。マルチフィラメントの場合、フィラメント数としては、1本〜100000本が好ましく、より好ましくは5本〜500本、さらに好ましくは10本〜100本である。
繊維の直径が小さいと強度が低下しハンドリングが困難となり、また、直径が大きい場合にはフレキシブル性が犠牲になる。導電性繊維3006の断面形状としては円または楕円であることが、圧電素子の設計および製造の観点で好ましいが、これに限定されない。
また、ノイズ信号の抑制効果を高めるため、電気抵抗は低いことが好ましく、体積抵抗率としては10-1Ω・cm以下であることが好ましく、より好ましくは10-2Ω・cm以下、さらに好ましくは10-3Ω・cm以下である。ただし、ノイズ信号の抑制効果が得られるのであれば抵抗率はこの限りではない。
導電性繊維3006は、本発明の用途から、繰り返しの曲げやねじりといった動きに対して耐性がなければならない。その指標としては、結節強さが、より大きいものが好まれる。結節強さはJIS L1013:2010 8.6の方法で測定することができる。本発明に適当な結節強さの程度としては、0.5cN/dtex以上であることが好ましく、1.0cN/dtex以上であることがより好ましく、1.5cN/dtex以上であることがさらに好ましく、2.0cN/dtex以上であることが最も好ましい。また、別の指標としては、曲げ剛性が、より小さいものが好まれる。曲げ剛性は、カトーテック(株)製KES―FB2純曲げ試験機などの測定装置で測定されるのが一般的である。本発明に適当な曲げ剛性の程度としては、東邦テナックス(株)製の炭素繊維“テナックス”(登録商標)HTS40−3Kよりも小さいほうが好ましい。具体的には、導電性繊維の曲げ剛性が0.05×10-4N・m2/m以下であることが好ましく、0.02×10-4N・m2/m以下であることがより好ましく、0.01×10-4N・m2/m以下であることがさらに好ましい。
(製造方法)
本発明の組紐状圧電素子3001は少なくとも1本の導電性繊維300Bの表面を組紐状の圧電性繊維300Aで被覆しているが、その製造方法としては例えば以下の方法が挙げられる。すなわち、導電性繊維300Bと圧電性繊維300Aを別々の工程で作製し、導電性繊維300Bに圧電性繊維300Aを組紐状に巻きつけて被覆する方法である。この場合には、できるだけ同心円状に近くなるように被覆することが好ましい。
この場合、圧電性繊維300Aを形成する圧電性高分子としてポリ乳酸を用いる場合の好ましい紡糸、延伸条件として、溶融紡糸温度は150℃〜250℃が好ましく、延伸温度は40℃〜150℃が好ましく、延伸倍率は1.1倍から5.0倍が好ましく、結晶化温度は80℃〜170℃が好ましい。
導電性繊維300Bに巻きつける圧電性繊維300Aとしては、複数のフィラメントを束ねたマルチフィラメントを用いてもよく、また、モノフィラメント(紡績糸を含む)を用いても良い。また、圧電性繊維300Aを巻きつけられる導電性繊維300Bとしては、複数のフィラメントを束ねたマルチフィラメントを用いてもよく、また、モノフィラメント(紡績糸を含む)を用いても良い。
被覆の好ましい形態としては、導電性繊維300Bを芯糸とし、その周囲に圧電性繊維300Aを組紐状に製紐して、丸打組物(Tubular Braid)を作製することで被覆することができる。より具体的には芯部3003を有する8打組紐や16打組紐が挙げられる。ただし、例えば、圧電性繊維300Aを編組チューブのような形態とし、導電性繊維300Bを芯として当該編組チューブに挿入することで被覆してもよい。
導電層3004は、コーティングや繊維の巻き付けによって製造されるが、製造の容易さの観点より、繊維の巻き付けが好ましい。繊維の巻き付け方法としてはカバーリング、編物、組物が考えられ、何れの方法により製造してもよい。
以上のような製造方法により、導電性繊維300Bの表面を組紐状の圧電性繊維300Aで被覆し、さらにその周囲に導電層3004を設けた組紐状圧電素子3001を得ることができる。
本発明の組紐状圧電素子3001は、表面に電気信号を検出するための電極の形成を必要としないため、比較的簡単に製造することができる。
(保護層)
本発明の組紐状圧電素子3001の最表面には保護層を設けてもよい。この保護層は絶縁性であることが好ましく、フレキシブル性などの観点から高分子からなるものがより好ましい。保護層に絶縁性を持たせる場合には、もちろん、この場合には保護層ごと変形させたり、保護層上を擦ったりすることになるが、これらの外力が圧電性繊維Aまで到達し、その分極を誘起できるものであれば特に限定はない。保護層としては、高分子などのコーティングによって形成されるものに限定されず、フィルム、布帛、繊維などを巻付けてもよく、あるいは、それらが組み合わされたものであってもよい。
保護層の厚みとしては出来るだけ薄い方が、せん断応力を圧電性繊維300Aに伝えやすいが、薄すぎると保護層自体が破壊される等の問題が発生しやすくなるため、好ましくは10nm〜200μm、より好ましくは50nm〜50μm、さらに好ましくは70nm〜30μm、最も好ましくは100nm〜10μmである。この保護層により圧電素子の形状を形成することもできる。
さらには、圧電性繊維からなる層を複数層設けたり、信号を取り出すための導電性繊維からなる層を複数層設けたりすることもできる。もちろん、これらの保護層、圧電性繊維からなる層、導電性繊維からなる層は、その目的に応じて、その順番および層数は適宜決められる。なお、巻付ける方法としては、鞘部3002のさらに外層に組紐構造を形成したり、カバーリングしたりする方法が挙げられる。
(作用)
本発明の組紐状圧電素子3001は、例えば組紐状圧電素子3001の表面を擦るなどで、組紐状圧電素子3001に荷重が印加されて生じる応力、すなわち組紐状圧電素子3001に印加される応力について、その大きさおよび/又は印加位置を検出するセンサーとして利用することができる。また、本発明の組紐状圧電素子3001は、擦る以外の押圧力や曲げ変形などによっても圧電性繊維300Aにせん断応力が与えられるならば、電気信号を取り出すことはもちろん可能である。例えば、組紐状圧電素子3001に「印加される応力」としては、圧電素子の表面、すなわち圧電性繊維300Aの表面と指のような被接触物の表面との間の摩擦力や、圧電性繊維300Aの表面または先端部に対する垂直方向の抵抗力、圧電性繊維300Aの曲げ変形に対する抵抗力などが挙げられる。特に、本発明の組紐状圧電素子3001は、導電性繊維300Bに対して平行方向に屈曲させた場合や擦った場合に大きな電気信号を効率的に出力することができる。
ここで、組紐状圧電素子3001に「印加された応力」とは、例えば表面を指で擦る程度の大きさの応力の場合、その目安としては、おおよそ1〜1000Paである。もちろん、これ以上であっても印加された応力の大きさおよびその印加位置を検出することが可能であることはいうまでもない。指などで入力する場合には、1Pa以上500Pa以下の荷重であっても動作することが好ましく、さらに好ましくは1Pa以上100Pa以下の荷重で動作することが好ましい。もちろん、500Paを超える荷重であっても動作することは、上述の通りである。
また、組紐状圧電素子3001の芯部の導電性繊維300Bと導電層3004の間の静電容量変化を計測することで、組紐状圧電素子3001へ加えられた圧力による変形を検出することも可能になる。更に、複数本の組紐状圧電素子1を組み合わせて使用する場合、各々の組紐状圧電素子3001の導電層3004間の静電容量変化を計測することで、組紐状圧電素子3001へ加えられた圧力による変形を検出することも可能になる。
(布帛状圧電素子)
図13は、実施形態に係る組紐状圧電素子を用いた布帛状圧電素子の構成例を示す模式図である。
布帛状圧電素子3007は、少なくとも1本の組紐状圧電素子3001を含む布帛3008を備えている。布帛3008は、布帛を構成する繊維(組紐を含む)の少なくとも1本が組紐状圧電素子3001であり、組紐状圧電素子3001が圧電素子としての機能を発揮可能である限り何らの限定は無く、どのような織編物であってもよい。布状にするにあたっては、本発明の目的を達成する限り、他の繊維(組紐を含む)と組み合わせて、交織、交編等を行ってもよい。もちろん、組紐状圧電素子3001を、布帛を構成する繊維(例えば、経糸や緯糸)の一部として用いてもよいし、組紐状圧電素子3001を布帛に刺繍してもよいし、接着してもよい。図13に示す例では、布帛状圧電素子3007は、経糸として、少なくとも1本の組紐状圧電素子3001および絶縁性繊維3009を配し、緯糸として導電性繊維3010および絶縁性繊維3009を交互に配した平織物である。導電性繊維3010は導電性繊維300Bと同一種であっても異種の導電性繊維であってもよく、また絶縁性繊維3009については後述される。なお、絶縁性繊維3009及び/又は導電性繊維3010の全部又は一部が組紐形態であってもよい。
この場合、布帛状圧電素子3007が曲げられるなどして変形したとき、その変形に伴い組紐状圧電素子3001も変形するので、組紐状圧電素子3001から出力される電気信号により、布帛状圧電素子3007の変形を検出できる。そして、布帛状圧電素子3007は、布帛(織編物)として用いることができるので、例えば衣類形状のウェアラブルセンサーに適用することができる。
また、図13に示す布帛状圧電素子3007では、組紐状圧電素子3001に導電性繊維3010が交差して接触している。したがって、導電性繊維3010は、組紐状圧電素子3001の少なくとも一部と交差して接触し、それを覆っており、外部から組紐状圧電素子3001へ向かおうとする電磁波の少なくとも一部を遮っている、と見ることができる。このような導電性繊維3010は、接地(アース)されることにより、組紐状圧電素子3001への電磁波の影響を軽減する機能を有している。すなわち導電性繊維3010は組紐状圧電素子3001の電磁波シールドとして機能することができる。それにより、例えば布帛状圧電素子3007の上下に電磁波シールド用の導電性の布帛を重ねなくても、布帛状圧電素子3007のS/N比(信号対雑音比)を著しく向上させることができる。この場合、電磁波シールドの観点から組紐状圧電素子3001と交差する緯糸(図13の場合)における導電性繊維3010の割合が高いほど好ましい。具体的には、布帛3008を形成する繊維であり且つ組紐状圧電素子3001と交差する繊維のうちの30%以上が導電性繊維であることが好ましく、40%以上がより好ましく、50%以上が更に好ましい。このように布帛状圧電素子3007において、布帛を構成する繊維の少なくとも一部として導電性繊維を入れることで、電磁波シールド機能付の布帛状圧電素子3007とすることができる。
織物の織組織としては、平織、綾織、朱子織等の三原組織、変化組織、たて二重織、よこ二重織等の片二重組織、たてビロードなどが例示される。編物の種類は、丸編物(緯編物)であってもよいし経編物であってもよい。丸編物(緯編物)の組織としては、平編、ゴム編、両面編、パール編、タック編、浮き編、片畔編、レース編、添え毛編等が好ましく例示される。経編組織としては、シングルデンビー編、シングルアトラス編、ダブルコード編、ハーフトリコット編、裏毛編、ジャガード編等が例示される。層数も単層でもよいし、2層以上の多層でもよい。更には、カットパイルおよび/またはループパイルからなる立毛部と地組織部とで構成される立毛織物、立毛編み物であってもよい。
(複数の圧電素子)
また、布帛状圧電素子3007では、組紐状圧電素子3001を複数並べて用いることも可能である。並べ方としては、例えば経糸または緯糸としてすべてに組紐状圧電素子3001を用いてもよいし、数本ごとや一部分に組紐状圧電素子3001を用いてもよい。また、ある部分では経糸として組紐状圧電素子3001を用い、他の部分では緯糸として組紐状圧電素子3001を用いてもよい。
このように組紐状圧電素子3001を複数本並べて布帛状圧電素子3007を形成するときには、組紐状圧電素子3001は表面に電極を有さないため、その並べ方、編み方が広範に選択することができるという利点がある。
また、組紐状圧電素子3001を複数並べて用いる場合、導電性繊維300B間の距離が短いため電気信号の取り出しにおいて効率的である。
(絶縁性繊維)
布帛状圧電素子3007では、組紐状圧電素子3001(及び導電性繊維3010)以外の部分には、絶縁性繊維を使用することができる。この際、絶縁性繊維は布帛状圧電素子3007の柔軟性を向上する目的で伸縮性のある素材、形状を有する繊維を用いることができる。
このように組紐状圧電素子3001(及び導電性繊維3010)以外にこのように絶縁性繊維を配置することで、布帛状圧電素子3007の操作性(例示:ウェアラブルセンサーとしての動き易さ)を向上させることが可能である。
このような絶縁性繊維としては、体積抵抗率が106Ω・cm以上であれば用いることができ、より好ましくは108Ω・cm以上、さらに好ましくは1010Ω・cm以上がよい。
絶縁性繊維として、例えば、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、塩化ビニル繊維、アラミド繊維、ポリスルホン繊維、ポリエーテル繊維、ポリウレタン繊維等の合成繊維他、綿、麻、絹等の天然繊維、アセテート等の半合成繊維、レーヨン、キュプラ等の再生繊維を用いることができる。これらに限定されるものではなく、公知の絶縁性繊維を任意に用いることができる。さらに、これらの絶縁性繊維を組み合わせて用いてもよく、絶縁性を有しない繊維と組み合わせ、全体として絶縁性を有する繊維としてもよい。
また、公知のあらゆる断面形状の繊維も用いることができる。
(圧電素子の適用技術)
本発明の組紐状圧電素子3001や布帛状圧電素子3007のような圧電素子はいずれの様態であっても、表面への接触、圧力、形状変化を電気信号として出力することができるので、その圧電素子に印加された応力の大きさおよび/又は印加された位置を検出するセンサー(デバイス)として利用することができる。また、この電気信号を他のデバイスを動かすための電力源あるいは蓄電するなど、発電素子として用いることもできる。具体的には、人、動物、ロボット、機械など自発的に動くものの可動部に用いることによる発電、靴底、敷物、外部から圧力を受ける構造物の表面での発電、流体中での形状変化による発電、などが挙げられる。また、流体中での形状変化により電気信号を発するために、流体中の帯電性物質を吸着させたり付着を抑制させたりすることも可能である。
図14は、本発明の圧電素子を備えるデバイスを示すブロック図である。デバイス3011は、圧電素子3012(例示:組紐状圧電素子3001、布帛状圧電素子3007)と、印加された圧力に応じて圧電素子3012から出力される電気信号を増幅する増幅手段3013と、増幅手段3013で増幅された電気信号を出力する出力手段3014と、出力手段3014から出力された電気信号を外部機器(図示せず)へ送信する送信手段3015とを備える。このデバイス3011を用いれば、圧電素子3012の表面への接触、圧力、形状変化により出力された電気信号に基づき、外部機器(図示せず)における演算処理にて、圧電素子に印加された応力の大きさおよび/又は印加された位置を検出することができる。あるいは、デバイス3011内に、出力手段3014から出力された電気信号に基づき圧電素子3012に印加された応力の大きさおよび/又は印加された位置を演算する演算手段(図示せず)を設けてもよい。
増幅手段3013は、例えば各種電子回路で構築されてもよく、あるいはプロセッサ上で動作するソフトウェアプログラムにより実装される機能モジュールとして構築されてもよく、あるいは各種電子回路とソフトウェアプログラムとの組み合わせで構築されてもよい。プロセッサとしては、例えば、CPU(Central Processing Unit)、DSP(digital signal processor)、LSI(large scale integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programming Gate Array)等がある。また、出力手段3014は、例えば各種コネクタにて単独に構築されてもよく、あるいは送信手段3015と一体化した通信装置として構築されてもよい。またあるいは、増幅手段3013、出力手段3014および送信手段3015の機能をまとめて、ソフトウェアプログラムを書き込んだ集積回路もしくはマイクロプロセッサなどで実現してもよい。なお、送信手段3015による送信方式を無線によるもの有線によるものにするかは、構成するセンサーに応じて適宜決定すればよい。
また、増幅手段だけではなく、ノイズを除去する手段や他の信号と組み合わせて処理する手段などの公知の信号処理手段を組み合わせて用いることができる。これらの手段の接続の順序は目的に応じて適宜変えることができる。もちろん、圧電素子3012から出力される電気信号をそのまま外部機器へ送信した後で信号処理してもよい。
図15は、実施の形態に係る組紐状圧電素子を備えるデバイスの構成例を示す模式図である。図15の増幅手段3013は、図14を参照して説明したものに相当するが、図14の出力手段3014および送信手段3015については図15では図示を省略している。組紐状圧電素子3001を備えるデバイスを構成する場合、増幅手段3013の入力端子に組紐状圧電素子3001の芯部3003からの引出し線を接続し、接地(アース)端子には、組紐状圧電素子3001の導電層3004を接続する。例えば、図15に示すように、組紐状圧電素子3001において、組紐状圧電素子3001の芯部3003からの引出し線を増幅手段3013の入力端子に接続し、組紐状圧電素子3001の導電層3004を接地(アース)する。
図16〜18は、実施の形態に係る組紐布帛状圧電素子を備えるデバイスの構成例を示す模式図である。図16〜18の増幅手段3013は、図14を参照して説明したものに相当するが、図14の出力手段3014および送信手段3015については図16〜18では図示を省略している。布帛状圧電素子3007を備えるデバイスを構成する場合、増幅手段3013の入力端子に組紐状圧電素子3001の芯部3003からの引出し線を接続し、接地(アース)端子には、組紐状圧電素子3001の導電層3004、または布帛状圧電素子3007の導電性繊維3010、または増幅手段3013の入力端子に接続した組紐状圧電素子1とは別の組紐状圧電素子、を接続する。例えば、図16に示すように、布帛状圧電素子3007において、組紐状圧電素子3001の芯部3003からの引出し線を増幅手段3013の入力端子に接続し、組紐状圧電素子3001の導電層3004を接地(アース)する。また例えば、図17に示すように、布帛状圧電素子3007において、組紐状圧電素子3001の芯部3003からの引出し線を増幅手段3013の入力端子に接続し、組紐状圧電素子3001に交差して接触した導電性繊維3010を接地(アース)する。また例えば、図18に示すように、布帛状圧電素子3007において組紐状圧電素子3001を複数並べている場合、1本の組紐状圧電素子3001の芯部3003からの引出し線を増幅手段3013の入力端子に接続し、当該組紐状圧電素子3001に並んだ別の組紐状圧電素子3001の芯部3003からの引出し線を、接地(アース)する。
本発明のデバイス3011は柔軟性があり、紐状および布帛状いずれの形態でも使用できるため、非常に広範な用途が考えられる。本発明のデバイス3011の具体的な例としては、帽子や手袋、靴下などを含む着衣、サポーター、ハンカチ状などの形状をした、タッチパネル、人や動物の表面感圧センサー、例えば、手袋やバンド、サポーターなどの形状をした関節部の曲げ、捩じり、伸縮を感知するセンサーが挙げられる。例えば人に用いる場合には、接触や動きを検出し、医療用途などの関節などの動きの情報収集、アミューズメント用途、失われた組織やロボットを動かすためのインターフェースとして用いることができる。他には、動物や人型を模したぬいぐるみやロボットの表面感圧センサー、関節部の曲げ、捩じり、伸縮を感知するセンサーとして用いることができる。他には、シーツや枕などの寝具、靴底、手袋、椅子、敷物、袋、旗などの表面感圧センサーや形状変化センサーとして用いることができる。
さらに、本発明のデバイス3011は組紐状あるいは布帛状であり、柔軟性があるので、あらゆる構造物の全体あるいは一部の表面に貼付あるいは被覆することにより表面感圧センサー、形状変化センサーとして用いることができる。
さらに、本発明のデバイス3011は、組紐状圧電素子3001の表面を擦るだけで十分な電気信号を発生することができるので、タッチセンサーのようなタッチ式入力装置やポインティングデバイスなどに用いることができる。また、組紐状圧電素子3001で被計測物の表面を擦ることによって被計測物の高さ方向の位置情報や形状情報を得ることができるので、表面形状計測などに用いることができる。
本発明による別の態様として、導電性繊維で形成された芯部と、該芯部を被覆するように組紐状の圧電性繊維で形成された鞘部とを備え、該導電性繊維の引き抜き強度が0.1N以上である、組紐状圧電素子を提供することにより、比較的小さな変形で生じる応力によっても、大きな電気信号を取り出すことが可能な繊維状の圧電素子を提供でき、さらには、変形に対する信号強度のバラツキが少なく、繰り返し使用しても信号強度の再現性に優れる圧電素子を提供できる。
より具体的には、本態様による組紐状圧電素子において、少なくとも一本の導電性繊維の外周面を多数の圧電性繊維が緻密に取り巻いている。特定の理論に束縛されるものではないが、組紐状圧電素子に変形が生じると、多数の圧電性繊維それぞれに変形による応力が生じ、それにより多数の圧電性繊維それぞれに電場が生じ(圧電効果)、その結果、導電性繊維を取り巻く多数の圧電性繊維の電場を重畳した電圧変化が導電性繊維に生じるものと推測される。この際、芯部である導電性繊維を経由して検出される信号強度は鞘部である圧電性繊維との接触状態が変化しないことが重要である。この接触状態を示す組紐状圧電素子の機械的特性値として芯部の引き抜き強度を0.1N以上であることが重要である。引き抜き強度は、導電性繊維と圧電性繊維の接触面積と垂直抗力に依存するものであり、特にこの垂直抗力は組紐を作製する時の圧電性繊維の巻付け張力に依存するものと考えられる。そして、引き抜き強度が0.1N以上である場合には圧電性繊維が弾性変形した状態で導電性繊維に巻きつけられており十分な接触をしていると考えられる。したがって、変形した際にもその接触状態が変化せず、繰り返し変形させても再現性に優れる素子が得られるものと考えられる。また、組紐状圧電素子では、導電性繊維と圧電性繊維の組紐状の鞘部の接触状態が不十分な場合、すなわち引き抜き強度が低い場合と比較して導電性繊維からの電気信号が増大する場合がある。なお、導電性繊維は複数本であってもよい。
引き抜き強度は、0.1N以上であるが、好ましくは、0.5N以上、より好ましくは1N以上である。なお、引き抜き強度が導電繊維の強度以上であることが最も好ましい。一方、引き抜き強度が0.1N未満である場合には、十分な垂直抗力が発生していない状態、すなわち接触が不十分な状態となっており、変形した際にその接触状態が変化する。その結果として、繰り返し変形させた場合の再現性が得られず、センサーとして使用することが困難になる。
引き抜き強度は、以下の方法によって測定できる。まず、組紐を7cmの長さに切断し、その両端部1cmの長さの鞘部を解して芯部をむき出しにし、一方の端部は芯部のみを切断し、もう一方の端部は鞘部のみを切断する。この状態で、両端部の芯部のみと鞘部のみとを把持し、50cm/minの速度で引っ張った場合の最大強度を測定する。なお、評価部の長さを5cm確保することが困難な場合は、任意の長さの組紐の引き抜き強度を測定して、5cmあたりの強度に換算してもよい。
本発明による別の態様として、導電性繊維で形成された芯部と、該芯部を被覆するように組紐状の圧電性繊維で形成された鞘部とを備え、曲げ復元率が70以上である組紐状圧電素子を提供することにより、比較的小さな変形で生じる応力によっても、大きな電気信号を取り出すことが可能で、電気信号の繰り返し再現性が良好な、繊維状の圧電素子を提供できる。
より具体的には、本態様による組紐状圧電素子において、曲げ復元率は以下の式(10)で定義される値である。
X=L/3×100 (式10)
X:曲げ復元率
L:曲げ復元率測定試験後の組紐突出し距離
試験後の組紐突出し距離Lは、以下の方法で測定される。すなわち、まず、図33に示されるような装置において、組紐状圧電素子6001を、曲率半径1cmの角部を有する台座から3cm突き出す様に固定し、次いで組紐状圧電素子6001を台座に沿って組紐の台座に向いた面が台座に全面接触する様に曲げる。その後、即座に組紐状圧電素子6001に加えていた外力を取り除く。屈曲していた組紐状圧電素子6001が応力で復元した後、その台座から突き出した距離を計測し、この値をLとする。この時、Lの単位はcmである。また、組紐が短く3cm突き出すことが困難な場合は、突き出し部分の長さをL0として下記式(11)で代用することも可能である。
X=L/L0×100 (式11)
芯部および/または鞘部は、組紐状圧電素子6001がセンサーとして十分に機能する範囲で、曲げ復元率が70以上となる様、曲げ復元率を調整するためのフィラメント(以下、「曲げ復元率調整用フィラメント」という)を含むことができる。曲げ復元率調整用フィラメントの断面積は0.001〜1.0平方ミリメートルであり、好ましくは0.005〜0.5平方ミリメートル、より好ましくは0.01〜0.3平方ミリメートルである。曲げ復元率調整用フィラメントが細すぎると曲げ復元率が70以上とならず、また曲げ復元率調整用フィラメントが太すぎると組紐状圧電素子6001の柔軟性が失われてしまう。芯部および/または鞘部に対する曲げ復元率調整用フィラメントの割合は50%以下が好ましく、より好ましくは30%以下、更に好ましくは10%以下である。芯部および/または鞘部に対する曲げ復元率調整用フィラメントの割合が少なすぎると曲げ復元率が70以上とならず、また曲げ復元率調整用フィラメントの割合が多すぎると組紐状圧電素子の柔軟性が失われてしまったり、組紐状圧電素子から得られる電気信号が小さくなってしまったりする場合がある。なお、曲げ復元率調整用フィラメントは単独で用いて組紐構造を作製する際の一つの繊維としてもよいし、芯部および/または鞘部の繊維と混繊してもよい。芯部および/または鞘部に曲げ復元率調整用フィラメントを含むことで、組紐状圧電素子は一度変形した後に元の状態に戻りやすくなるため、電気信号の繰り返し再現性が改善される。
組紐状圧電素子は、組紐状圧電素子6001がセンサーとして十分に機能する範囲で、曲げ復元率が70以上となる様、鞘部の外側に被覆層を含むことができる。被覆層の厚みは、0.05〜2.0mmであり、0.04mm〜1.0mmが好ましく、0.03〜0.5mmがより好ましい。被覆層が薄すぎると曲げ復元率が70以上とならず、また被覆層が厚すぎると組紐状圧電素子の柔軟性が失われてしまったり、組紐状圧電素子から得られる電気信号が小さくなってしまったりする場合がある。鞘部の外側に被覆層を含むことで、組紐状圧電素子は一度変形した後に元の状態に戻りやすくなるため、電気信号の繰り返し再現性が改善される。また、被覆層を含むことで、鞘部の拘束力が大きくなり、それゆえ圧電性繊維に効率的に応力が加わり、信号強度が大きくなる場合がある。
芯部および/または鞘部は、組紐状圧電素子がセンサーとして十分に機能する範囲で、曲げ復元率が70以上となる様、高弾性繊維を含むことができる。高弾性繊維の弾性率は15.0GPaであり、好ましくは30.0GPa以上、より好ましくは0.0GPa以上、更に好ましくは100.0GPa以上である。高弾性繊維の弾性率が低いと曲げ復元率が70以上とならず、また高弾性繊維の弾性率が高すぎると組紐状圧電素子の柔軟性が失われてしまう。芯部および/または鞘部に対する高弾性繊維の割合は50%以下が好ましく、より好ましくは30%以下、更に好ましくは10%以下である。芯部および/または鞘部に対する高弾性繊維の割合が少なすぎると曲げ復元率が70以上とならず、また曲げ復元率調整用フィラメントの割合が多すぎると組紐状圧電素子の柔軟性が失われてしまったり、組紐状圧電素子から得られる電気信号が小さくなってしまったりする場合がある。なお、高弾性繊維は単独で用いて組紐構造を作製する際の一つの繊維としてもよいし、芯部および/または鞘部の繊維と混繊してもよい。芯部および/または鞘部に高弾性繊維を含むことで、組紐状圧電素子は一度変形した後に元の状態に戻りやすくなるため、電気信号の繰り返し再現性が改善される。
曲げ復元率調整用フィラメントは、芯部または/および鞘部へ含まれてもよい。曲げ復元率調整用フィラメントの断面積は0.001〜1.0平方ミリメートルであり、好ましくは0.005〜0.5平方ミリメートル、より好ましくは0.01〜0.3平方ミリメートルである。曲げ復元率調整用フィラメントが細すぎると曲げ復元率が70以上とならず、また曲げ復元率調整用フィラメントが太すぎると組紐状圧電素子の柔軟性が失われてしまう。
曲げ復元率調整用フィラメントには、公知のあらゆるフィラメントを用いることができる。例えば、ポリエステルフィラメント、ナイロンフィラメント、アクリルフィラメント、ポリエチレンフィラメント、ポリプロピレンフィラメント、塩化ビニルフィラメント、アラミドフィラメント、ポリスルホンフィラメント、ポリエーテルフィラメント、ポリウレタンフィラメント等の合成高分子のフィラメントを用いることができる。曲げ復元率調整用フィラメントはこれらに限定されるものではなく、公知のフィラメントを任意に用いることができる。さらに、これらのフィラメントを組み合わせて用いてもよい。また、曲げ復元率調整用フィラメントとしては、公知のあらゆる断面形状の繊維も用いることができる。更に、曲げ復元率調整用フィラメントはモノフィラメントでもマルチフィラメントでもよい。曲げ復元率調整用フィラメントがマルチフィラメントの場合、その単糸断面積の総和を断面積と考える。
高弾性繊維は、芯部または/および鞘部へ含まれてもよい。高弾性繊維の弾性率は15.0GPaであり、好ましくは20.0GPa以上、より好ましくは30.0GPa以上、更に好ましくは50.0GPa以上である。高弾性繊維の弾性率が低いと曲げ復元率が70以上とならず、また高弾性繊維の弾性率が高すぎると組紐状圧電素子の柔軟性が失われてしまう。芯部および/または鞘部に対する高弾性繊維の割合は50%以下が好ましく、より好ましくは30%以下、更に好ましくは10%以下である。芯部および/または鞘部に対する高弾性繊維の割合が少なすぎると曲げ復元率が70以上とならず、また曲げ復元率調整用フィラメントの割合が多すぎると組紐状圧電素子の柔軟性が失われてしまう。芯部および/または鞘部に高弾性繊維を含むことで、組紐状圧電素子は一度変形した後に元の状態に戻りやすくなるため、電気信号の繰り返し再現性が改善される。
高弾性繊維には弾性率が15.0GPa以上である公知のあらゆる繊維を用いることができる。例えば、アラミド繊維、PBO繊維、LCP繊維、超高分子量ポリエチレン繊維、炭素繊維、金属繊維、ガラス繊維、セラミック繊維等が挙げられる。これらを組み合わせて使用してもよい。また、高強度繊維は高弾性であるだけでなく、1%以上の伸度を有することが好ましく、より好ましくは3%以上、更に好ましくは5%以上である。伸度が低いと組紐が変形した際に、繊維が破断してしまい、品質が悪くなるばかりでなく、電気信号の繰り返し再現性が改善されない場合がある。
本発明による別の態様として、少なくとも2本の組紐状圧電素子を含む布帛を備え、前記少なくとも2本の組紐状圧電素子のそれぞれが、導電性繊維で形成された芯部と、前記芯部を被覆するように組紐状の圧電性繊維で形成された鞘部とを有する、布帛状圧電素子を提供することにより、比較的小さな変形で生じる応力によっても、効率よく電気を取り出し、動きの種類、特にねじりに関する動きを検出することが可能な繊維状の圧電素子を提供できる。
図34は実施形態に係る組紐状圧電素子を用いた布帛状圧電素子の構成例を示す模式図である。布帛状圧電素子7005は、少なくとも2本の組紐状圧電素子7001を含む布帛7006を備えており、これらの組紐状圧電素子7001は略平行に配置されている。布帛7006は、布帛を構成する繊維(組紐を含む)の少なくとも2本が組紐状圧電素子7001であり、組紐状圧電素子7001が圧電素子としての機能を発揮可能である限り何らの限定は無く、どのような織編物であってもよい。図34に示す例では、布帛状圧電素子7005は、経糸として、少なくとも2本の組紐状圧電素子7001および絶縁性繊維7007を配し、緯糸として導電性繊維7008および絶縁性繊維7007を交互に配した平織物である。絶縁性繊維7007及び/又は導電性繊維7008の全部又は一部が組紐形態であってもよい。
組紐状圧電素子7001は、変形すると圧電信号を発するが、この信号は変形の様態に応じて大きさや形状が変化する。図34に示す布帛状圧電素子7005の場合、布帛状圧電素子7005が2本の組紐状圧電素子7001に直交する線を屈曲部として曲げ変形したとき、2本の組紐状圧電素子7001は同一の変形をする。したがって、2本の組紐状圧電素子7001からは同一の信号が検出される。一方で、ねじりなどの複雑な変形を与えた場合、2本の組紐状圧電素子7001には別々の変形が誘起されることとなり、それぞれの組紐状圧電素子7001が発生する信号は異なるものになる。この原理により、複数の組紐状圧電素子7001を組み合わせ、それぞれの組紐状圧電素子7001で発生する信号を比較演算することで、組紐状圧電素子7001の複雑な変形の解析が可能になる。例えば、各組紐状圧電素子7001で発生する信号の極性、振幅、位相などを比較して得られる結果に基づき、ねじりなどの複雑な変形を検出することができる。
複数の組紐状圧電素子7001は、略平行に配置され、それぞれ0.5cm以上離れていることが好ましく、1.0cm以上離れていることがより好ましく、3.0cm以上離れていることが更に好ましい。組紐状圧電素子7001間の距離が近すぎると、ねじり変形を与えたときに双方の組紐状圧電素子7001が異なる変形をしにくくなるため好ましくない。なお、曲げ変形の検出に使用する場合はその限りではない。また信号検出に使用しない組紐状圧電素子が布帛中に含まれる場合、その組紐状圧電素子と他の組紐状圧電素子の距離が0.5cm未満であってもよい。
以上の通り、複数の組紐状圧電素子7001を組み合せ、それぞれの組紐状圧電素子7001で発生する信号を比較演算することで、ねじりなどの複雑な変形の解析が可能になるので、例えば衣類形状のウェアラブルセンサーに適用することができる。この場合、布帛状圧電素子7005が曲げられるなどして変形したとき、その変形に伴い組紐状圧電素子7001も変形するので、組紐状圧電素子7001から出力される電気信号に基づいて、布帛状圧電素子7005の変形を検出できる。そして、布帛状圧電素子7005は、布帛(織編物)として用いることができるので、例えば衣類形状のウェアラブルセンサーに適用することができる。
図35は、実施の形態に係る組紐布帛状圧電素子を備えるデバイス7010の構成例を示す模式図である。図35において、出力手段7013の後段に、出力手段7013から出力されたそれぞれの組紐状圧電素子7001の電気信号を比較演算することで圧電素子11の変形を解析する比較演算手段7015が設けられている。布帛状圧電素子7005を備えるデバイスを構成する場合、増幅手段7012の入力端子に組紐状圧電素子7001の芯部7003からの引出し線を接続し、接地(アース)端子には、増幅手段7012の入力端子に接続した組紐状圧電素子7001とは別の組紐状圧電素子または導電性繊維7008を接続する。例えば、図35に示すように、布帛状圧電素子7005において、組紐状圧電素子7001の芯部7003からの引出し線を増幅手段7012の入力端子に接続し、組紐状圧電素子7001に交差して接触した導電性繊維7008を接地(アース)する。なお、図35では、比較演算手段7015をデバイス7010内に設けたが、比較演算手段7015を、外部機器内に設けてもよい。
本発明による別の態様として、導電性繊維で形成された芯部と、該芯部を被覆するように組紐状の圧電性繊維で形成された鞘部とを備えた組紐状圧電素子と、さらに該組紐状圧電素子に近接して配置された別の導電性繊維とを備えた布帛状素子に、
該組紐状圧電素子の芯部に接続され、該組紐状圧電素子の鞘部の圧電性に由来する信号を検出するアルゴリズムを備えた電子回路と、
該組紐状圧電素子の芯部の導電性繊維と、該別の導電性繊維との両方に接続され、これら2本の導電性繊維間の静電容量を検出するアルゴリズムを備えた電子回路と
を接続した布帛状センサーを提供することにより、比較的小さな変形で生じる応力によっても、大きな電気信号を取り出すことが可能な繊維状の圧電素子を提供でき、さらに、静電容量の変化を検出する方式を併用した高機能なセンサーを提供できる。
図36は、本態様による布帛状素子8005を備えるデバイス8010を示すブロック図である。デバイス8010は、組紐状圧電素子8001と、変形や印加された圧力に応じて組紐状圧電素子8001から出力される電気信号を増幅する圧電信号解析手段8012と、伸縮や印加された圧力に応じて変化する静電容量の変化量を検出する静電容量解析手段8015と、圧電信号解析8012で増幅された電気信号および静電容量解析手段8015で検出された静電容量の変化量を出力する出力手段8013と、出力手段8013から出力された電気信号を外部機器(図示せず)へ送信する送信手段8014とを備える。このデバイス8010を用いれば、布帛状素子8005の表面への接触、圧力、形状変化により出力された電気信号に基づき、外部機器(図示せず)における演算処理にて、布帛状素子に印加された応力や伸縮量の大きさおよび/又は印加された位置を検出することができる。あるいは、8010内に、出力手段8013から出力された電気信号に基づき布帛状素子8005に印加された応力や伸縮量の大きさおよび/又は印加された位置を演算する演算手段(図示せず)を設けてもよい。また、圧電信号解析手段8012および静電容量解析手段8015の前段に、組紐状圧電素子からの圧電性信号と、組紐状圧電素子および別の導電性繊維間の静電容量検出用信号とを分離する分離手段(図示せず)を設けてもよい。なお、送信手段8014による送信方式を無線によるもの有線によるものにするかは、構成するセンサーに応じて適宜決定すればよい。
本態様による布帛状センサーは、組紐状圧電素子8001の芯部に接続され、組紐状圧電素子8001の鞘部の圧電性に由来する信号を検出するアルゴリズム(圧電信号解析手段8012)を備えた電子回路と、該組紐状圧電素子の芯部の導電性繊維と、該別の導電性繊維との両方に接続され、これら2本の導電性繊維間の静電容量を検出するアルゴリズム(静電容量解析手段8015)を備えた電子回路とが接続されている。
前述の通り、圧電信号解析手段8012および静電容量解析手段8015の前段に、組紐状圧電素子8001からの圧電性信号と、組紐状圧電素子8001および別の導電性繊維8008間の静電容量検出用信号とを分離する分離手段を設けることが好ましい。
この分離手段の好ましい例の1つは、組紐状圧電素子8001の芯部に接続された電子回路により、該組紐状圧電素子の鞘部の圧電性に由来する信号を検出するアルゴリズムを適用する期間と、紐状圧電素子の芯部の導電性繊維と、該別の導電性繊維との両方に接続された電子回路により、これら2本の導電性繊維間の静電容量を検出するアルゴリズムを適用する期間とを、交互に切替えながら圧電性信号と静電容量信号を断続的に測定することである。切替え時間を十分に短く設定することで、人体程度の動作速度であれば同時に両方の信号を測定しているとみなすことができる。
この分離手段の好ましい例のもう1つは、静電容量の検出を比較的高い周波数(好ましくは1kHz以上、さらに好ましくは100kHz以上)の交流電圧印加により行い、さらに人体の動作モニタ時など、圧電信号に由来する信号の周波数が比較的低い(例えば1kHz未満)場合に、フィルタ処理により圧電性信号由来の成分と静電容量検出用交流信号の成分に分離し、圧電性信号を検出するアルゴリズムと静電容量を検出するアルゴリズムとを同時に並行して適用し測定することである。
また、増幅手段だけではなく、ノイズを除去する手段や他の信号と組み合わせて処理する手段などの公知の信号処理手段を組み合わせて用いることができる。これらの手段の接続の順序は目的に応じて適宜変えることができる。もちろん、布帛状素子8005から出力される電気信号をそのまま外部機器へ送信した後で信号処理してもよい。
本態様によるデバイス8010は、組紐状圧電素子8001の表面を擦るだけで十分な電気信号を発生することができるので、タッチセンサーのようなタッチ式入力装置やポインティングデバイスなどに用いることができる。また、組紐状圧電素子8001で被計測物の表面を擦ることによって被計測物の高さ方向の位置情報や形状情報を得ることができるので、表面形状計測などに用いることができる。また、上記の用途に加え、静電容量の解析により布帛への押圧力変化や伸縮性を同時にモニタするセンサーとして、圧電性信号と組み合わせたより高度な入力装置やポインティングデバイスやウェアラブルインターフェースとして用いることができる。
特に、組紐状圧電素子では、圧電性信号により曲げを特異的に検知できるが、曲げの位置に関する情報を単体で検知することが困難であるところ、静電容量による解析を伴うことで、加圧された部位に関する位置情報を検知することができるので、この双方を解析することによって、センサーが受ける形状変化全般、具体的には、曲げ位置、曲げ度合、ねじり位置、ねじり度合、押圧有無、等の違いなど、を容易に、簡便な構成で把握することが可能であり、さまざまな入力刺激に対応したウェアラブルセンサーとして適用範囲を拡大可能である。また、構成部材が簡便になることから、ノイズ信号発生の要因のうちのひとつである構成部材間の擦れに伴う静電気も抑制できるほか、ウェアラブル素材に求められる、着用者の使用感も向上させることができる。
本発明による別の態様として、組紐状圧電素子が繊維状構造体に固定化されたセンサーを提供することにより、動きや風合いを制限せず、後からセンサー機能の追加が可能な繊維状の圧電素子デバイスを提供できる。
より具体的には、本態様による組紐状圧電素子の固定化法としては、対象物やその目的に合わせて任意の方法をとることができる。例えば、糊や接着材などの粘着物を使って貼り付ける方法や、磁石、熱、クリップなどによって固定化する方法、布帛状の対象物に対して、刺繍のように縫い付け又はかがる方法、また、紐状の対象物に対して、表面もしくは内部に組紐状圧電素子が位置するように撚ることで固定化する方法、対象物に組紐を這わせて対象物と組紐を一緒にパッキングする方法などが挙げられるが、この限りではない。また、組紐状圧電素子は直線になるように固定化する必要はなく、対象物や目的に合わせて曲線など任意に固定できる。
本発明による別の態様として、導電性繊維で形成された芯部と、該芯部を被覆するように組紐状の圧電性繊維で形成された鞘部とを備え、該圧電性繊維が主成分としてポリ乳酸を含み、該導電性繊維に対する該圧電性繊維の巻きつけ角度は15°以上、75°以下である組紐状圧電素子を含む布帛を備える、平組紐状圧電素子であって、該布帛は、複数の芯糸を任意の繊維で被覆するように形成された平組紐状の布帛であって、複数の芯糸の少なくとも二本以上に該組紐状圧電素子を用いた平組紐状圧電素子を提供することにより、比較的小さな変形で生じる応力によっても、大きな電気信号を取り出すことが可能で、かつ動きの種類、特にねじりに関する動きを検出することができる平組紐状圧電素子を提供できる。
図37は実施形態に係る平組紐状圧電素子の構成例を示す模式図である。
平組紐状圧電素子9005は、少なくとも2本の組紐状圧電素子9001を含む平組紐9006を備えている。平組紐9006は、一般的な平組紐ではなく、紐の経方向に平行に配置された芯糸9007をおき、その周囲を被覆するように組紐を構成した平組紐である。布帛を構成する繊維(組紐を含む)の少なくとも2本が組紐状圧電素子9001であり、組紐状圧電素子9001が圧電素子としての機能を発揮可能である限り何らの限定は無く、どのような平組紐であってもよい。平組紐は、本発明の目的を達成する限り、他の繊維(組紐を含む)と組み合わせて、交織、交編等を行ってもよい。もちろん、組紐状圧電素子9001を、芯糸9007として用いても、芯糸9007を被覆する組紐の糸の一部として用いてもよいし、組紐状圧電素子9001を布帛に刺繍してもよいし、接着してもよい。図37に示す例では、平組紐状圧電素子9005は、芯糸9007に対して、少なくとも2本の組紐状圧電素子9001および繊維9004を配した平組紐である。芯糸9007および繊維9004は特に限定されることなく任意の繊維を用いることができる。ただし図35に示す平組紐状圧電素子9005では、組紐状圧電素子9001に繊維9004が交差して接触している。繊維9004の少なくとも一部を導電性繊維とし、接地(アース)することにより、組紐状圧電素子9001への電磁波の影響を軽減することができる。すなわち繊維9004に導電性繊維をもちいることで、組紐状圧電素子9001の電磁波シールドとして機能することができる。それにより、例えば平組紐状圧電素子9005の上下に電磁波シールド用の導電性の布帛を重ねなくても、平組紐状圧電素子9005のS/N比を著しく向上させることができる。この場合、電磁波シールドの観点から繊維4の導電性繊維の割合は高いほど好ましく、好ましくは30%以上であることが好ましい。ただし平組紐状圧電素子9005が被覆などによって電磁波シールド能を有している場合はその限りではない。なお、繊維9004、9007が組紐であってもよい。
組紐状圧電素子9001は、変形を受けた場合、圧電信号を発するが、この信号は変形の向きに応じてプラス/マイナスの逆方向の信号が得られる。図37に示す平組紐状圧電素子9005の場合、平組紐状圧電素子9005が曲げ変形したとき、その変形に伴い2本の組紐状圧電素子9001は同じ方向に変形する。したがって一方の組紐状圧電素子9001からプラス信号が出たとすれば、他方の組紐状圧電素子9001からもプラス信号が出る。一方、平組紐状圧電素子9005にねじり変形を与えた場合は、2本の組紐状圧電素子9001は互いに反対方向に変形する。したがって、一方の組紐状圧電素子9001からプラス信号が出たとすれば、他方の組紐状圧電素子9001からはマイナス信号が出ることになる。
組紐状圧電素子9001は、略平行に配置され、互いに1cm以上離れていることが好ましい。2本の組紐状圧電素子9001の離間距離が近すぎると、ねじり変形を与えたときに双方の組紐状圧電素子9001が反対方向に変形しにくくなるため好ましくない。なおねじり検出に使用しない場合はその限りではない。また信号検出に使用しない組紐状圧電素子が平組紐中に含まれる場合、その組紐状圧電素子と他の組紐状圧電素子の距離が1cm未満であってもよい。
平組紐の組織は、右巻きの糸と左巻きの糸の交差のさせかたや、芯糸への絡ませ方、芯糸に対する巻き付け角度など、任意の組織が適用できる。
以上の通り、複数本の組紐状圧電素子9001の信号を組み合せることで、曲げ、ねじりといった動きの種類をとらえることができる。検出される信号強度と組み合わせれば、動きの種類とその変形度をとらえることができるので、例えば衣類形状のウェアラブルセンサーに適用することができる。
組紐状圧電素子9001の一方又は両方を複数本並べて平組紐状圧電素子9005を形成するときには、組紐状圧電素子9001は表面に電極を有さないため、その並べ方、組み方が広範に選択することができるという利点がある。また、組紐状圧電素子9001の一方又は両方を複数並べて用いる場合、導電性繊維間の距離が短いため電気信号の取り出しにおいて効率的である。
以下、第4発明について詳細に説明する。
第4発明の目的は、少なくとも2層のシートあるいは布帛から構成されるトランスデューサーであって、該シートあるいは該布帛のうち少なくとも1層が下記のA層からなり、該A層以外の層のうち少なくとも1層が下記のB層からなるトランスデューサーによって達成される。
A層:導電性繊維および圧電性繊維が電気的接続を提供するように略同一平面上に配置されている圧電単位を含む、電気信号を出力または入力とする平面状のトランスデューサーであって、特定の位置または方向における応力と、選択的な出力または入力としての電気信号とを相互に変換する機能を有するトランスデューサー
B層:電気信号を出力または入力とする平面状のトランスデューサーであって、該A層とは異なる特定の位置または方向における信号と、あるいは該A層と異なる種類の信号と、選択的な出力または入力としての電気信号とを相互に変換する機能を有するトランスデューサー
さらに、必要に応じてA層及びB層の間に、次のC層を配することによって、より本願の目的が達成しやすくなる。
C層:A層とB層間の電気的干渉によるノイズを低減する機能を有する層
以下に各構成について説明する。
(A層)
A層は後述する導電性繊維および圧電性繊維が電気的接続を提供するように略同一平面上に配置されている圧電単位を含む、電気信号を出力または入力とするシートまたは布帛状のトランスデューサーであって、特定の位置または方向における応力と、選択的な出力または入力としての電気信号とを相互に変換する機能を有するトランスデューサーである。
(導電性繊維)
導電性繊維としては、導電性を示すものであればよく、公知のあらゆるものが用いられ、例えば、金属繊維、導電性高分子からなる繊維、炭素繊維、繊維状あるいは粒状の導電性フィラーを分散させた高分子からなる繊維、あるいは繊維状物の表面に導電性を有する層を設けた繊維が挙げられる。繊維状物の表面に導電性を有する層を設ける方法としては、金属コート、導電性高分子コート、導電性繊維の巻付けなどが挙げられる。なかでも金属コートが導電性、耐久性、柔軟性などの観点から好ましい。金属をコートする具体的な方法としては、蒸着、スパッタ、電解メッキ、無電解メッキなどが挙げられるが生産性などの観点からメッキが好ましい。
金属をコートされるベースの繊維として、導電性の有無によらず公知の繊維を用いることができ、例えば、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、塩化ビニル繊維、アラミド繊維、ポリスルホン繊維、ポリエーテル繊維、ポリウレタン繊維等の他、綿、麻、絹等の天然繊維、アセテート等の半合成繊維、レーヨン、キュプラ等の再生繊維を用いることができる。ベースの繊維はこれらに限定されるものではなく、公知の繊維を任意に用いることができ、これらの繊維を組み合わせて用いてもよい。
ベースの繊維にコートされる金属は導電性を示し、本発明の効果を奏する限り、いずれを用いてもよい。
例えば、金、銀、白金、銅、ニッケル、スズ、亜鉛、パラジウ、酸化インジウム錫、硫化銅など、およびこれらの混合物や合金などを用いることができる。
導電性繊維は、フィラメントを複数本束ねたマルチフィラメントを用いても、また、フィラメント一本からなるモノフィラメントを用いてもよい。マルチフィラメントとして用いる方が電気特性の長尺安定性の観点で好ましい。モノフィラメントの径としては1μm〜5000μmであり、好ましくは2μm〜100μmである。さらに好ましくは3μm〜50μmである。フィラメント数としては、1本〜100000本が好ましく、より好ましくは5本〜500本、さらに好ましくは10本〜100本である。直径が小さいと強度が低下しハンドリングが困難となり、また、直径が大きい場合にはフレキシブル性が犠牲になる。導電性繊維の断面形状としては円または楕円であることが、圧電素子の設計および製造の観点で好ましいが、これに限定されない。
また、圧電性高分子からの電気出力を効率よく取り出すため、電気抵抗は低いことが好ましく、体積抵抗率としては10−1Ω・cm以下であることが好ましく、より好ましくは10−2Ω・cm以下、さらに好ましくは10−3Ω・cm以下である。ただし、信号検出に強度が得られるのであれば導電性繊維の抵抗率はこの限りではない。
(圧電性繊維)
圧電性繊維は圧電性を有する繊維である。圧電性繊維は圧電性高分子からなることが好ましい。圧電性高分子としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリ乳酸など圧電性を示す高分子であれば利用できるが、主としてポリ乳酸を含むことが好ましい。ポリ乳酸は溶融紡糸後に延伸によって容易に配向して圧電性を示し、ポリフッ化ビニリデンなどで必要となる電界配向処理が不要な点で生産性に優れている。さらに、ポリ乳酸からなる圧電性繊維はその軸方向への引張や圧縮応力では、分極が小さく、圧電素子として機能させることが困難であるが、せん断応力によっては比較的大きな電気出力が得られ、せん断応力を圧電性高分子に付与しやすい構成体を有する本発明の圧電素子においては好ましい。
圧電性高分子は、主としてポリ乳酸を含むことが好ましい。「主として」とは、好ましくは90モル%以上、より好ましくは95モル%以上、さらに好ましくは98モル%以上のことを言う。
ポリ乳酸としては、その結晶構造によって、L−乳酸、L−ラクチドを重合してなるポリ−L−乳酸、D−乳酸、D−ラクチドを重合してなるポリ−D−乳酸、さらに、それらのハイブリッド構造からなるステレオコンプレックスポリ乳酸などがあるが、圧電性を示すものであればいずれも利用できる。圧電率の高さの観点で好ましくは、ポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸である。ポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸はそれぞれ、同じ応力に対して分極が逆になるために、目的に応じてこれらを組み合わせて使用することも可能である。ポリ乳酸の光学純度は99%以上であることが好ましく、より好ましくは99.3%以上、さらに好ましくは99.5%以上である。光学純度が99%未満であると著しく圧電率が低下する場合があり、圧電性繊維の形状変化によって十分な電気出力を得ることが難しくなる場合がある。圧電性高分子が、主としてポリ−L−乳酸またはポリ−D−乳酸を含み、これらの光学純度は99%以上であることが好ましい。
圧電性繊維は繊維の繊維軸方向に一軸配向しかつ結晶を含むものであることが好ましく、より好ましくは結晶を有する一軸配向ポリ乳酸である。なぜなら、ポリ乳酸はその結晶状態および一軸配向において大きな圧電性を示すためである。
ポリ乳酸は加水分解が比較的速いポリエステルであるから、耐湿熱性が問題となる場合においては、公知の、イソシアネート化合物、オキサゾリン化合物、エポキシ化合物、カルボジイミド化合物などの加水分解防止剤を添加してもよい。また、必要に応じてリン酸系化合物などの酸化防止剤、可塑剤、光劣化防止剤などを添加して物性改良してもよい。
また、ポリ乳酸は他のポリマーとのアロイとして用いてもよいが、ポリ乳酸を主たる圧電性高分子として用いるならば、アロイの全重量を基準として少なくとも50重量%以上でポリ乳酸を含有していることが好ましく、さらに好ましくは70重量%以上、最も好ましくは90重量%以上である。
アロイとする場合のポリ乳酸以外のポリマーとしては、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート共重合体、ポリメタクリレート等が好適な例として挙げられるが、これらに限定されるものではなく、本発明で目的とする圧電性を奏する限り、どのようなポリマーを用いてもよい。
圧電性繊維は、フィラメントを複数本束ねたマルチフィラメントを用いても、また、フィラメント一本からなるモノフィラメントを用いてもよい。マルチフィラメントとして用いる方が電気特性の長尺安定性の観点で好ましい。モノフィラメントの径としては1μm〜5000μmであり、好ましくは2μm〜100μmである。さらに好ましくは3μm〜50μmである。フィラメント数としては、1本〜100000本が好ましく、より好ましくは5本〜500本、さらに好ましくは10本〜100本である。
このような圧電性高分子を圧電性繊維とするためには、高分子を繊維化するための公知の手法を、本発明の効果を奏する限りいずれも採用することができ、圧電性高分子を押し出し成型して繊維化する手法、圧電性高分子を溶融紡糸して繊維化する手法、圧電性高分子を乾式あるいは湿式紡糸により繊維化する手法、圧電性高分子を静電紡糸により繊維化する手法等を採用することができる。これらの紡糸条件は、採用する圧電性高分子に応じて公知の手法を適用すればよく、通常は工業的に生産の容易な溶融紡糸法を採用すればよい。
なお、上述の通りに、圧電性高分子がポリ乳酸である場合には、一軸延伸配向し、かつ結晶を含むとより大きな圧電性を示すことから、繊維は延伸することが好ましい。
(略同一平面上)
本発明の圧電素子において、導電性繊維と圧電性繊維は、略同一平面上に配置される。ここで略同一平面上とは、繊維の繊維軸が略平面上に配置されることを意味し、「略」とは、繊維同士の交差点で厚みが生じることが含まれることを意味するものである。
例えば、2本の平行な導電性繊維の間に、1本の圧電性繊維が更に平行に引き揃えられた形態は、略同一平面上にある形態である。また、当該1本の圧電性繊維の繊維軸を、当該2本の平行な導電性繊維とは平行でない状態に傾けていても、略同一平面上にある。さらに、1本の導電性繊維と1本の圧電性繊維とを平行に引き揃え、もう1本の導電性繊維を、この引き揃えられた導電性繊維と圧電性繊維とに、交差させたとしても略同一平面上にある。
略平面上に配置されることで、当該圧電単位を組み合わせて、布帛状の圧電素子を形成しやすく、布帛状の形態の圧電素子を利用すれば、トランスデューサーの形状設計に自由度を増すことができる。本発明における布帛の種類としては、織物、編物、不織布などが例示される。
これらの、圧電繊維と導電繊維の関係は検出したい形状変化により適宜選択される。
(配置順序)
圧電単位における繊維の配置は、導電性繊維および圧電性繊維が電気的接続を提供するように配置されている限り特に限定されるものではない。例えば、圧電単位が2本の導電性繊維と1本の圧電性繊維からなる場合には、導電性繊維、圧電性繊維、導電性繊維が、この順に配置されていることが好ましい。このように配置することで、圧電単位の2本の導電性繊維同士が接触することがなくなり、導電性繊維に他の手段、例えば絶縁性物質を被覆するなどの技術を適用しなくても圧電単位として有効に機能させることができる。
この際、導電性繊維と圧電性繊維とが互いに物理的に接する接点を有していることが望ましいが、導電性繊維と圧電性繊維との間隔が4mm以内の範囲であれば、物理的に接していなくても電気的接続を提供することができる。導電性繊維と圧電性繊維との間隔は、好ましくは3mm以下、より好ましくは2mm以下、さらに好ましくは1mm以下、最も好ましくは0.5mm以下である。この間隔が4mm超であると圧電性繊維の形状変化に伴う電気出力が小さくなり、トランスデューサーとして用いることが困難となる。
形態としては、例えば、2本の導電性繊維が平行に配置され、1本の圧電性繊維が、これら2本の導電性繊維に交わるように配置された形態などを挙げることができる。さらには、2本の導電性繊維を経糸(または緯糸)として配し、1本の圧電性繊維を緯糸(または経糸)として配してもよい。この場合は2本の導電性繊維同士は接触していないことが好ましく、2本の導電性繊維の間には好ましくは絶縁性物質、例えば絶縁性繊維を介在させる形態の他、導電性繊維が接触しやすい表面にのみ絶縁性物質を被覆し、圧電性繊維とは直接導電性繊維が接触するようにする形態も採用することができる。
(絶縁性繊維)
本発明の圧電単位は、絶縁性繊維を含み、該絶縁性繊維は、圧電単位中の導電性繊維が、他の導電性繊維並びに圧電性繊維に接しないように導電性繊維と圧電性繊維の間に配されることがある。この際、絶縁性繊維は布帛の柔軟性を向上する目的で伸縮性のある素材、形状を有する繊維を用いることができる。また、圧電単位中の導電性繊維が、他の圧電単位中の導電性繊維並びに圧電性繊維に接しないように配されることもある。
圧電単位にこのように絶縁性繊維を配置することで、圧電単位を複数組み合わせた場合でも導電性繊維が接触することがなく、トランスデューサーとしての性能を向上させることが可能である。
このような絶縁性繊維としては、体積抵抗率が10Ω・cm以上であれば用いることができ、より好ましくは10Ω・cm以上、さらに好ましくは1010Ω・cm以上がよい。
絶縁性繊維として、例えば、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、塩化ビニル繊維、アラミド繊維、ポリスルホン繊維、ポリエーテル繊維、ポリウレタン繊維等の他、綿、麻、絹等の天然繊維、アセテート等の半合成繊維、レーヨン、キュプラ等の再生繊維を用いることができる。これらに限定されるものではなく、公知の絶縁性繊維を任意に用いることができる。さらに、これらの絶縁性繊維を組み合わせて用いてもよく、絶縁性を有しない繊維と組み合わせ、全体として絶縁性を有する繊維としてもよい。
絶縁性繊維は、フィラメントを複数本束ねたマルチフィラメントを用いても、また、フィラメント一本からなるモノフィラメントを用いてもよい。マルチフィラメントとして用いる方が絶縁特性の長尺安定性の観点で好ましい。モノフィラメントとして用いる場合、その糸径は1μm〜5000μmであり、好ましくは50μm〜1000μmである。マルチフィラメントとして用いる場合は、その単糸径は0.1μm〜5000μmであり、好ましくは2μm〜100μmである。さらに好ましくは3μm〜50μmである。マルチフィラメントのフィラメント数としては、1本〜100000本が好ましく、より好ましくは5本〜500本、さらに好ましくは10本〜100本である。
また、布帛に柔軟性を持たせる目的で、公知のあらゆる形状の繊維も用いることができる。
(圧電単位の組み合わせ形態)
本発明において、複数の並列した圧電単位を含有する織編物であることが好ましい。このような形態であることで、圧電素子として、形状の変形自由度(フレキシブルさ)を向上させることが可能である。
このような織編物形状は複数の圧電単位を含み、圧電素子としての機能を発揮する限り何らの限定は無い。織物形状または編物形状を得るには、通常の織機または編機により製編織すればよい。一枚の布帛に複数の圧電単位を導入する場合は、製織もしくは製編の際に連続して作製しても、別々に作成した複数の布帛を接合することで作製してもよい。
織物の織組織としては、平織、綾織、朱子織等の三原組織、変化組織、たて二重織、よこ二重織等の片二重組織、たてビロードなどが例示される。
編物の種類は、丸編物(緯編物)であってもよいし経編物であってもよい。丸編物(緯編物)の組織としては、平編、ゴム編、両面編、パール編、タック編、浮き編、片畔編、レース編、添え毛編等が好ましく例示される。経編組織としては、シングルデンビー編、シングルアトラス編、ダブルコード編、ハーフトリコット編、裏毛編、ジャガード編等が例示される。層数も単層でもよいし、2層以上の多層でもよい。更には、カットパイルおよび/またはループパイルからなる立毛部と地組織部とで構成される立毛織物、立毛編み物であってもよい。
なお、圧電単位が織り組織ないし編み組織に組み込まれて存在する場合、圧電性繊維そのものに屈曲部分が存在するが、圧電素子としての圧電性能を効率よく発現させるためには、圧電性繊維の屈曲部分が小さい方が好ましい。従って、織物と編み物とでは織物の方が好ましい。
この場合でも、上述の通り、圧電性繊維の屈曲部分が小さい方が、圧電性能が効率よく発現することから、織組織としては平織よりは綾織りが好ましく、綾織よりもサテン織(朱子織)が好ましい。特にサテン織(朱子織)のなかでも、飛び数が3〜7の範囲にあると、織組織の保持と圧電性性能とを高い水準で発揮することから好ましい。
また、圧電性繊維であるポリ乳酸は帯電しやすいため、誤作動しやすくなる場合がある。このような場合には、信号を取り出そうとする圧電繊維を接地(アース)して使用することもできる。接地(アース)する方法としては信号を取り出す導電性繊維とは別に、導電性繊維を配置することが好ましい。この場合、導電性繊維の体積抵抗率としては10−1Ω・cm以下であることが好ましく、より好ましくは10−2Ω・cm以下、さらに好ましくは10−3Ω・cm以下である。
(位置または方向の選択性)
A層のトランスデューサーは、特定の位置または方向における応力を、選択的に電気信号に出力または入力として変換する機能を有することを特徴とする。特定の位置における応力を選択的に電気信号に変換する機能とは、応力が加えられた位置に応じて電気信号の強度やや符合が変化する機能であり、例えばA層がなす平面上に直線状あるいは点状に圧電単位を有し、その圧電単位にかかる応力のみを検出するトランスデューサーが挙げられる。さらに、A層がなす平面上に複数の直線状あるいは点状の圧電単位を有し、それぞれの圧電単位にかかる応力を、別のチャンネルの電気信号として検出するトランスデューサーも好ましい例として挙げられる。また、特定の方向における応力を選択的に電気信号に変換する機能とは、加えられた応力の方向すなわち応力テンソルの各成分比に応じて電気信号の強度や符合が変化する機能であり、例えばA層の圧電単位を構成する圧電性繊維の繊維軸をx軸とし、A層がなす平面をx−y平面とした場合、せん断応力σxzに対して特に強度の強い電気信号を出力し、σxz以外の応力成分に対しては電気信号を出力しないトランスデューサーが挙げられる。A層のトランスデューサーは、特定の位置における応力を、選択的に電気信号に出力または入力として変換する機能と、特定の方向における応力を、選択的に電気信号に出力または入力として変換する機能とを、両方有することが好ましい。
A層の織組織、または必要に応じてB層に配される織組織は、検出したい位置および形状変化により適宜選択される。例えば特定方向の曲げを検出したい場合には、平織構造で、圧電性繊維と導電性繊維が平行関係であることが好ましく、この場合、図20に示すように圧電性繊維Aと導電性繊維Bの曲率が大きくなる方向の曲げを選択的に検出することが可能である。図21に示すような捩じり、または図22に示すようなずり変形を検出したい場合には、朱子織構造で、圧電性繊維Aと導電性繊維Bが直行関係であることが好ましい。また、特定位置の変形を検出したい場合は、圧電性繊維Aと導電性繊維Bからなる圧電単位を特定の位置に存在させ、この圧電単位を構成する導電性繊維Bからの信号を解析することで、特定位置の変形を検出することが出来る。圧電性繊維Aと導電性繊維Bが平行関係である織組織の場合は、線状の位置の変形を検出することができ、圧電性繊維Aと導電性繊維Bが直行関係である織組織の場合は、点状の位置の変形を検出することができる。
(複数の圧電素子)
また、圧電素子を複数並べて用いることも可能である。並べ方としても一次元的に一段で並べても、二次元的に重ねて並べても良く、さらには布状に編織して用いたり、組み紐に製紐したりしてもよい。それによって布状、紐状の圧電素子を実現することも可能となる。布状、紐状にするにあたっては、本発明の目的を達成する限り、圧電素子以外の他の繊維と組み合わせて、混繊、交織、交編等を行ってもよく、また、樹脂などに組み込んで使ってもよい。
(B層)
B層は電気信号を出力または入力とする平面状のトランスデューサーであり、A層とは異なる特定の位置または方向における信号と、あるいはA層と異なる種類の信号と、選択的な出力または入力としての電気信号とを相互に変換する機能を有するトランスデューサーである。A層と同様の作動原理を有した素子でもよいし、作動原理の異なる素子で構成されていてもよいが、検出あるいは出力する信号の種類、あるいは位置や方向の選択性が、A層と異なる。
B層に配される、A層と作動原理の異なる素子の例として、熱電対、測温抵抗体、フォトダイオード、静電容量方式の圧力検出器、膜抵抗方式の圧力検出器、ゴム状抵抗体を用いた伸縮センサー、静電容量方式の伸縮センサー、圧電セラミックを用いた応力検出器、圧電ポリマーフィルムを用いた応力検出器、電極を用いた電位測定器が好ましい例として挙げられる。A層として布帛状の圧電素子を用いた場合は、その柔軟性や通気性を妨げないため、B層にも布帛状の素子が好ましく用いられる。
B層にA層と同じ作動原理の織物状のトランスデューサーを用いる場合、前述した通り織組織により選択的に特定の位置および方向における応力を検出可能である特徴を活用できる。
その1つの例としては、図23に示すようにA層とB層にそれぞれに平織物を用い、圧電性繊維および導電性繊維の方向を90度回転させて重ねて複合化した布帛を使用したセンサーでは、布帛を曲げる方向によりA層とB層の電気信号の出力強度比が変化するため、解析により曲げた方向を詳細に検知できる。さらに、A層とB層それぞれに検出位置が縞状に分布しているため、A層とB層を90度回転させて重ねることによって、格子状に検出位置を備えた素子とすることが可能となる。ここで別の圧電単位ごとに電気信号を入力するチャンネルを設定すれば、それぞれの圧電単位の信号を総合して解析することで、格子状に位置する検出点のどの点でどのような曲げ変形が発生したか解析できるセンサーとなる。この例に、後述するC層をA層とB層の間に挟んだ構成も、さらに好ましい例として挙げられる。
もう1つの例としては、図24に示すようにA層に平織物を用い、B層に朱子織物を用い、これらを重ねて複合化した布帛を用いたセンサーである。A層が布帛の曲げ即ち布帛の平面外(図のz軸方向)への変位速度を検出すると同時に、B層がずり変形即ち布帛の平面内(x−y平面内)での変位速度を検出するため、3次元的な布帛の変位速度を検出することが可能となる。さらに、同様の平織物と朱子織物を、角度を変えて重ねることで、先述の例のように変形方向、変形位置も解析できるセンサーとなる。この例に、後述するC層をA層とB層の間に挟んだ構成も、さらに好ましい例として挙げられる。
B層にA層と異なる作動原理のトランスデューサーを用いる場合、A層のトランスデューサーが検出できない信号を検出可能となる利点があり、好ましい。例えば、A層のトランスデューサーは圧電性を作動原理としており、素子が動いている間しか信号を発生せず、素子が止まった状態ではその形を検知できない。従って、B層に静電容量方式の圧力センサーや伸縮センサー、あるいはゴム状抵抗体を用いた伸縮センサーなど、素子が止まった状態でもその変形状態を検知できるセンサーを重ね合わせる形態が特に好ましい。
そのような形態の1つの例としては、図25に示すようにA層に朱子織物を用い、B層に柔軟な布帛中に2本の導電性繊維を平行に配置した静電容量式の伸縮センサーを用い、これらを重ねて複合化したセンサーである。A層がずり変形動作即ち布帛の平面内(x−y平面内)での変位速度を検出すると同時に、B層が布帛の導電性繊維に垂直な方向(図の(x,y,z)=(1,−1,0)方向)への伸縮状態を検出するため、ずり動作と伸縮状態、すなわち変位速度と変位状態を同時に検出できる。従って、A層が検知できない静止状態の変位(変位が継続しているか否か)をB層が補完的に検知可能であり、一方で人体が近づいた時などにB層に発生するノイズを、実際に伸縮が起こった時のみに発生するA層の信号を用いてカットできる、などの利点がある。この例に、後述するC層をA層とB層の間に挟んだ構成も、さらに好ましい例として挙げられる。
(C層)
C層とは、A層とB層との間の電気的干渉によるノイズを低減する機能を有する層である(図示なし)。電気的干渉によるノイズとは、例えば静電相互作用によるノイズや、電磁誘導作用によるノイズや、短絡、放電によるノイズが挙げられる。A層とB層はいずれも電気信号を入力あるいは出力としているため、それぞれの機能を十分に発揮するため、A層とB層の間にC層を設置することが好ましい。
C層の1つの例としては、A層とB層との間の静電的相互作用をカットする制電層が挙げられ、静電相互作用によるノイズを低減できる。制電層はシートまたは布帛状の制電材料であれば一般的なものを使用することができるが、A層及びB層に布帛状の素子を用いる場合は、その柔軟性や通気性を妨げないため、C層にも布帛状の制電材料が好ましく用いられる。
C層のもう1つの例としては、A層とB層との間の導通を防止する絶縁層が挙げられ、不必要な導通や放電によるノイズを低減できる。絶縁層はシートまたは布帛状の制電材料であれば一般的なものを使用することができるが、A層及びB層に布帛状の素子を用いる場合は、その柔軟性や通気性を妨げないため、C層にも布帛状の絶縁材料が好ましく用いられる。
C層に制電層を使用する場合は、制電層によるA層とB層との間の導通ならびにA層内およびB層内の不必要な導通を防止するため、制電層とA層、および制電層とB層の間にそれぞれ絶縁層を設置することが好ましい。即ちC層として2層の絶縁層と1層の制電層を用い、A層、絶縁層、制電層、絶縁層、B層の順に積層された構造を有することが好ましい。表面が絶縁性材料で被覆された導電性繊維による布帛を用いることも好ましい。
(積層)
本発明のA層、B層およびC層は、その相対位置が大きくずれないように必要に応じて互いに固定されることが好ましい。固定は必要な強度に応じ、縫合、粘着、接着、熱圧着など従来公知の方法で実施することができる。
本発明のA層、B層およびC層は、異なる機能、すなわちトランスデューサーとして特定の位置または方向における信号、あるいは特定の種類の信号を選択的に電気信号に出力または入力として変換する機能、あるいは絶縁機能、制電機能を、それぞれが別個に有していることが重要であり、各層の間は接着剤やホットプレス等によって接着され分割できない状態にされていても、別の層とみなすことができる。
(圧電素子の適用技術)
本発明のトランスデューサーはいずれの様態であっても、表面への接触、圧力、形状変化を電気信号として出力することができる。図26は、本発明のトランスデューサーを用いたデバイスの第1の具体例を示すブロック図である。例えば、本発明のトランスデューサー4011(例示:A層、B層)と、印加された圧力に応じてトランスデューサー4011から出力される電気信号を増幅する増幅手段4012と、増幅手段4012で増幅された電気信号を出力する出力手段4013と、出力手段4013から出力された電気信号を外部機器(図示せず)へ送信する送信手段4014とからなるデバイス4101を構成する。ここでは特に図示しないが、増幅手段4012の入力端子には、トランスデューサー4011の導電性繊維からの引出し線を接続し、接地(アース)端子には、トランスデューサー4011の圧電性繊維を接続する。増幅手段4012、出力手段4013、および送信手段4014は、A層のトランスデューサー4011とB層のトランスデューサー4011とで、それぞれ別々に設けられる。これにより、A層およびB層それぞれについてのトランスデューサー4011の表面への接触、圧力、形状変化により出力された電気信号を容易に取り出すことができるので、様々な用途に適用可能である。例えば、トランスデューサー4011の表面への接触、圧力、形状変化により出力された電気信号に基づき、外部機器(図示せず)における演算処理にて、トランスデューサー4011に印加された応力の大きさおよび/又は印加された位置を検出することができる。あるいは、トランスデューサー4011内に、出力手段4013から出力された電気信号に基づき圧電素子4011に印加された応力の大きさおよび/又は印加された位置を演算する演算手段(図示せず)を設けてもよい。
増幅手段4012は、例えば各種電子回路で構築されてもよく、あるいはプロセッサ上で動作するソフトウェアプログラムにより実装される機能モジュールとして構築されてもよく、あるいは各種電子回路とソフトウェアプログラムとの組み合わせで構築されてもよい。プロセッサとしては、例えば、CPU(Central Processing Unit)、DSP(digital signal processor)、LSI(large scale integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programming Gate Array)等がある。また、出力手段4013は、例えば各種コネクタにて単独に構築されてもよく、あるいは送信手段4014と一体化した通信装置として構築されてもよい。またあるいは、増幅手段4012、出力手段4013および送信手段4014の機能をまとめて、ソフトウェアプログラムを書き込んだ集積回路もしくはマイクロプロセッサなどで実現してもよい。なお、送信手段4014による送信方式を無線によるもの有線によるものにするかは、適用される装置に応じて適宜決定すればよい。
また、増幅手段だけではなく、ノイズを除去する手段や他の信号と組み合わせて処理する手段などの公知の信号処理手段を組み合わせて用いることができる。これらの手段の接続の順序は目的に応じて適宜変えることができる。もちろん、トランスデューサー4011から出力される電気信号をそのまま外部機器へ送信した後で信号処理してもよい。
具体的な例としては、帽子や手袋、靴下などを含む着衣、サポーター、ハンカチ状などの形状をした、タッチパネル、人や動物の表面感圧センサー、関節部の曲げ、捩じり、伸縮を感知するセンサーが挙げられる。例えば人に用いる場合には、接触や動きを検出し、医療用途などの関節などの動きの情報収集、アミューズメント用途、失われた組織やロボットを動かすためのインターフェースとして用いることができる。他には、動物や人型を模したぬいぐるみやロボットの表面感圧センサー、関節部の曲げ、捩じり、伸縮を感知するセンサーとして用いることができる。他には、シーツや枕などの寝具、靴底、手袋、椅子、敷物、袋、旗などの表面感圧センサーや形状変化センサーとして用いることができる。
さらには、本発明のセンサーは布帛状であるため、伸縮性と柔軟性があるので、あらゆる構造物の全体あるいは一部の表面に貼付あるいは被覆することにより表面感圧センサー、形状変化センサーとして用いることができる。
また、本発明のトランスデューサーは電気信号を出力(電力)として取り出すことができるため、この電気信号(電力)を他のデバイスを動かすための電力源あるいは蓄電するなど、発電素子として用いることもできる。図27は、本発明のトランスデューサーを用いたデバイスの第2の具体例を示すブロック図である。例えば、本発明のトランスデューサー4011(例示:A層、B層)と、印加された圧力に応じてトランスデューサー4011から出力される電気信号を増幅する増幅手段4012と、増幅手段4012で増幅された電気信号を出力する出力手段4013とからなるデバイス4102を構成する。ここでは特に図示しないが、増幅手段4012の入力端子には、トランスデューサー4011の導電性繊維からの引出し線を接続し、接地(アース)端子には、トランスデューサー4011の圧電性繊維を接続する。増幅手段4012および出力手段4013は、A層のトランスデューサー4011とB層のトランスデューサー4011とで、それぞれ別々に設けられる。これにより、A層およびB層それぞれについてのトランスデューサー4011の表面への接触、圧力、形状変化により出力手段4013から出力された電気信号を他のデバイスを動かすための電力源として用いたりあるいは蓄電装置に蓄電したりすることができる。
また、増幅手段だけではなく、ノイズ(リプル)を除去する手段や他の信号と組み合わせて処理する手段などの公知の信号処理手段を組み合わせて用いることができる。これらの手段の接続の順序は目的に応じて適宜変えることができる。もちろん、トランスデューサー4011から出力される電気信号をそのまま外部機器へ送信した後にノイズ(リプル)を除去する信号処理を実行してもよい。
このような具体例としては、人、動物、ロボット、機械など自発的に動くものの可動部に用いることによる発電、靴底、敷物、外部から圧力を受ける構造物の表面での発電、流体中での形状変化による発電、などが挙げられる。流体中での形状変化により電気信号を発するために、流体中の帯電性物質を吸着させたり付着を抑制させたりすることも可能である。
一方、本発明のトランスデューサーはいずれの様態であっても、電気信号が入力されることで、力学的な力を発生させることができる。図28は、本発明のトランスデューサーを用いたデバイスの第3の具体例を示すブロック図である。例えば、外部機器(図示せず)から電気信号を受信する受信手段4015と、受信手段4015により受信した電気信号が印加される本発明のトランスデューサー4011(例示:A層、B層)とからなるデバイス4103を構成する。受信手段4015は、A層のトランスデューサー4011とB層のトランスデューサー4011とで、それぞれ別々に設けられる。これにより、A層およびB層それぞれについての受信手段4015を通じて入力された電気信号に応じた力を、A層のトランスデューサー4011およびB層のトランスデューサー4011それぞれに発生させることができる。なお、受信手段4015による受信方式を無線によるもの有線によるものにするかは、トランスデューサーの用途や使用環境などに応じて適宜決定すればよい。受信手段4015による受信方式を有線とする場合、受信手段5015は、例えば各種コネクタにより実現されてもよい。
電気信号を入力とする用途の具体的な例としては、布帛状とした圧電素子に電気信号を印加して、布帛表面に載置した対象物を移動させたり、対象物を包んだり、圧縮したり、振動させることができる。また布帛を構成する各圧電素子へ印加する電気信号を制御することによりさまざまな形状を表現することが可能である。さらには、布帛自体が振動することによりスピーカーとして機能させることも可能である。
他の例としては、帽子や手袋、靴下などを含む着衣、サポーター、ハンカチ状などの形状をした、人や動物や物の表面に圧力を与えるアクチュエーター、関節部の曲げ、捩じり、伸縮をサポートするアクチュエーターがある。例えば人に用いる場合には、接触や動きや圧力を与えるアミューズメント用途や失われた組織を動かすことができる。他には、動物や人型を模したぬいぐるみやロボットの表面を膨らませたり、伸ばしたりするアクチュエーター、関節部に曲げ、捩じり、伸縮などの動きを与えるアクチュエーターとして用いることができる。他には、シーツや枕などの寝具、靴底、手袋、椅子、敷物、袋、旗などの表面を動かすアクチュエーターや、電気信号で形状変化するハンカチ、風呂敷、袋など布状のあらゆる形状のアクチュエーターとして用いることができる。
さらには、本発明のアクチュエーターは布帛状であるため、伸縮性と柔軟性があるので、あらゆる構造物の全体あるいは一部の表面に貼付あるいは被覆することにより表面形状を変えるアクチュエーターとして用いることができる。
なお、本発明のトランスデューサーは電気信号を入力として動くことができるため、その振動により音を発生させるスピーカーとして用いることもできる。
以下、第5発明について詳細に説明する。
第5発明の目的は、少なくとも2層のシートまたは布帛からなる積層トランスデューサーであって、該シートまたは該布帛のうち少なくとも1層が下記のA層からなり、該A層以外の層のうち少なくとも1層が下記のB層からなるトランスデューサーによって達成される。
A層:導電性繊維および圧電性繊維が電気的接続を提供するように略同一平面上に配置されている圧電単位を含む、電気信号を出力または入力とするトランスデューサー
B層:シート抵抗が10Ω/□(Ω/sq.)以下である導電性シートまたは導電性布帛
以下に各構成について説明する。
(A層)
A層は後述する導電性繊維および圧電性繊維が電気的接続を提供するように略同一平面上に配置されている圧電単位を含む、電気信号を出力または入力とする平面状のトランスデューサーである。
(導電性繊維)
導電性繊維としては、導電性を示すものであればよく、公知のあらゆるものが用いられ、例えば、金属繊維、導電性高分子からなる繊維、炭素繊維、繊維状あるいは粒状の導電性フィラーを分散させた高分子からなる繊維、あるいは繊維状物の表面に導電性を有する層を設けた繊維が挙げられる。繊維状物の表面に導電性を有する層を設ける方法としては、金属コート、導電性高分子コート、導電性繊維の巻付けなどが挙げられる。なかでも金属コートが導電性、耐久性、柔軟性などの観点から好ましい。金属をコートする具体的な方法としては、蒸着、スパッタ、電解メッキ、無電解メッキなどが挙げられるが生産性などの観点からメッキが好ましい。
金属をコートされるベースの繊維として、導電性の有無によらず公知の繊維を用いることができ、例えば、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、塩化ビニル繊維、アラミド繊維、ポリスルホン繊維、ポリエーテル繊維、ポリウレタン繊維等の他、綿、麻、絹等の天然繊維、アセテート等の半合成繊維、レーヨン、キュプラ等の再生繊維を用いることができる。ベースの繊維はこれらに限定されるものではなく、公知の繊維を任意に用いることができ、これらの繊維を組み合わせて用いてもよい。
ベースの繊維にコートされる金属は導電性を示し、本発明の効果を奏する限り、いずれを用いてもよい。
例えば、金、銀、白金、銅、ニッケル、スズ、亜鉛、パラジウ、酸化インジウム錫、硫化銅など、およびこれらの混合物や合金などを用いることができる。
導電性繊維は、フィラメントを複数本束ねたマルチフィラメントを用いても、また、フィラメント一本からなるモノフィラメントを用いてもよい。マルチフィラメントとして用いる方が電気特性の長尺安定性の観点で好ましい。モノフィラメントの径としては1μm〜5000μmであり、好ましくは2μm〜100μmである。さらに好ましくは3μm〜50μmである。フィラメント数としては、1本〜100000本が好ましく、より好ましくは5本〜500本、さらに好ましくは10本〜100本である。直径が小さいと強度が低下しハンドリングが困難となり、また、直径が大きい場合にはフレキシブル性が犠牲になる。導電性繊維の断面形状としては円または楕円であることが、圧電素子の設計および製造の観点で好ましいが、これに限定されない。
また、圧電性高分子からの電気出力を効率よく取り出すため、電気抵抗は低いことが好ましく、体積抵抗率としては10−1Ω・cm以下であることが好ましく、より好ましくは10−2Ω・cm以下、さらに好ましくは10−3Ω・cm以下である。ただし、信号検出に強度が得られるのであれば導電性繊維の抵抗率はこの限りではない。
(圧電性繊維)
圧電性繊維は圧電性を有する繊維である。圧電性繊維は圧電性高分子からなることが好ましい。圧電性高分子としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリ乳酸など圧電性を示す高分子であれば利用できるが、主としてポリ乳酸を含むことが好ましい。ポリ乳酸は溶融紡糸後に延伸によって容易に配向して圧電性を示し、ポリフッ化ビニリデンなどで必要となる電界配向処理が不要な点で生産性に優れている。さらに、ポリ乳酸からなる圧電性繊維はその軸方向への引張や圧縮応力では、分極が小さく、圧電素子として機能させることが困難であるが、せん断応力によっては比較的大きな電気出力が得られ、せん断応力を圧電性高分子に付与しやすい構成体を有する本発明の圧電素子においては好ましい。
圧電性高分子は、主としてポリ乳酸を含むことが好ましい。「主として」とは、好ましくは90モル%以上、より好ましくは95モル%以上、さらに好ましくは98モル%以上のことを言う。
ポリ乳酸としては、その結晶構造によって、L−乳酸、L−ラクチドを重合してなるポリ−L−乳酸、D−乳酸、D−ラクチドを重合してなるポリ−D−乳酸、さらに、それらのハイブリッド構造からなるステレオコンプレックスポリ乳酸などがあるが、圧電性を示すものであればいずれも利用できる。圧電率の高さの観点で好ましくは、ポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸である。ポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸はそれぞれ、同じ応力に対して分極が逆になるために、目的に応じてこれらを組み合わせて使用することも可能である。ポリ乳酸の光学純度は99%以上であることが好ましく、より好ましくは99.3%以上、さらに好ましくは99.5%以上である。光学純度が99%未満であると著しく圧電率が低下する場合があり、圧電性繊維の形状変化によって十分な電気出力を得ることが難しくなる場合がある。圧電性高分子が、主としてポリ−L−乳酸またはポリ−D−乳酸を含み、これらの光学純度は99%以上であることが好ましい。
圧電性繊維は繊維の繊維軸方向に一軸配向しかつ結晶を含むものであることが好ましく、より好ましくは結晶を有する一軸配向ポリ乳酸である。なぜなら、ポリ乳酸はその結晶状態および一軸配向において大きな圧電性を示すためである。
ポリ乳酸は加水分解が比較的速いポリエステルであるから、耐湿熱性が問題となる場合においては、公知の、イソシアネート化合物、オキサゾリン化合物、エポキシ化合物、カルボジイミド化合物などの加水分解防止剤を添加してもよい。また、必要に応じてリン酸系化合物などの酸化防止剤、可塑剤、光劣化防止剤などを添加して物性改良してもよい。
また、ポリ乳酸は他のポリマーとのアロイとして用いてもよいが、ポリ乳酸を主たる圧電性高分子として用いるならば、アロイの全重量を基準として少なくとも50重量%以上でポリ乳酸を含有していることが好ましく、さらに好ましくは70重量%以上、最も好ましくは90重量%以上である。
アロイとする場合のポリ乳酸以外のポリマーとしては、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート共重合体、ポリメタクリレート等が好適な例として挙げられるが、これらに限定されるものではなく、本発明で目的とする圧電性を奏する限り、どのようなポリマーを用いてもよい。
圧電性繊維は、フィラメントを複数本束ねたマルチフィラメントを用いても、また、フィラメント一本からなるモノフィラメントを用いてもよい。マルチフィラメントとして用いる方が電気特性の長尺安定性の観点で好ましい。モノフィラメントの径としては1μm〜5000μmであり、好ましくは2μm〜100μmである。さらに好ましくは3μm〜50μmである。フィラメント数としては、1本〜100000本が好ましく、より好ましくは5本〜500本、さらに好ましくは10本〜100本である。
このような圧電性高分子を圧電性繊維とするためには、高分子を繊維化するための公知の手法を、本発明の効果を奏する限りいずれも採用することができ、圧電性高分子を押し出し成型して繊維化する手法、圧電性高分子を溶融紡糸して繊維化する手法、圧電性高分子を乾式あるいは湿式紡糸により繊維化する手法、圧電性高分子を静電紡糸により繊維化する手法等を採用することができる。これらの紡糸条件は、採用する圧電性高分子に応じて公知の手法を適用すればよく、通常は工業的に生産の容易な溶融紡糸法を採用すればよい。
なお、上述の通りに、圧電性高分子がポリ乳酸である場合には、一軸延伸配向し、かつ結晶を含むとより大きな圧電性を示すことから、繊維は延伸することが好ましい。
(略同一平面上)
本発明の圧電素子において、導電性繊維と圧電性繊維は、略同一平面上に配置される。ここで略同一平面上とは、繊維の繊維軸が略平面上に配置されることを意味し、「略」とは、繊維同士の交差点で厚みが生じることが含まれることを意味するものである。
例えば、2本の平行な導電性繊維の間に、1本の圧電性繊維が更に平行に引き揃えられた形態は、略同一平面上にある形態である。また、当該1本の圧電性繊維の繊維軸を、当該2本の平行な導電性繊維とは平行でない状態に傾けていても、略同一平面上にある。さらに、1本の導電性繊維と1本の圧電性繊維とを平行に引き揃え、もう1本の導電性繊維を、この引き揃えられた導電性繊維と圧電性繊維とに、交差させたとしても略同一平面上にある。
略平面上に配置されることで、当該圧電単位を組み合わせて、布帛状の圧電素子を形成しやすく、布帛状の形態の圧電素子を利用すれば、トランスデューサーの形状設計に自由度を増すことができる。布帛の種類としては、織物、編物、不織布などが例示される。
これらの、圧電繊維と導電繊維の関係は検出したい形状変化により適宜選択される。
(配置順序)
圧電単位における繊維の配置は、導電性繊維および圧電性繊維が電気的接続を提供するように配置されている限り特に限定されるものではない。例えば、圧電単位が2本の導電性繊維と1本の圧電性繊維からなる場合には、導電性繊維、圧電性繊維、導電性繊維が、この順に配置されていることが好ましい。このように配置することで、圧電単位の2本の導電性繊維同士が接触することがなくなり、導電性繊維に他の手段、例えば絶縁性物質を被覆するなどの技術を適用しなくても圧電単位として有効に機能させることができる。
この際、導電性繊維と圧電性繊維とが互いに物理的に接する接点を有していることが望ましいが、導電性繊維と圧電性繊維との間隔が4mm以内の範囲であれば、物理的に接していなくても電気的接続を提供することができる。導電性繊維と圧電性繊維との間隔は、好ましくは3mm以下、より好ましくは2mm以下、さらに好ましくは1mm以下、最も好ましくは0.5mm以下である。この間隔が4mm超であると圧電性繊維の形状変化に伴う電気出力が小さくなり、トランスデューサーとして用いることが困難となる。
形態としては、例えば、2本の導電性繊維が平行に配置され、1本の圧電性繊維が、これら2本の導電性繊維に交わるように配置された形態などを挙げることができる。さらには、2本の導電性繊維を経糸(または緯糸)として配し、1本の圧電性繊維を緯糸(または経糸)として配してもよい。この場合は2本の導電性繊維同士は接触していないことが好ましく、2本の導電性繊維の間には好ましくは絶縁性物質、例えば絶縁性繊維を介在させる形態の他、導電性繊維が接触しやすい表面にのみ絶縁性物質を被覆し、圧電性繊維とは直接導電性繊維が接触するようにする形態も採用することができる。
(絶縁性繊維)
本発明の圧電単位は、絶縁性繊維を含み、該絶縁性繊維は、圧電単位中の導電性繊維が、他の導電性繊維並びに圧電性繊維に接しないように導電性繊維と圧電性繊維の間に配されることがある。この際、絶縁性繊維は布帛の柔軟性を向上する目的で伸縮性のある素材、形状を有する繊維を用いることができる。また、圧電単位中の導電性繊維が、他の圧電単位中の導電性繊維並びに圧電性繊維に接しないように配されることもある。
圧電単位にこのように絶縁性繊維を配置することで、圧電単位を複数組み合わせた場合でも導電性繊維が接触することがなく、トランスデューサーとしての性能を向上させることが可能である。
このような絶縁性繊維としては、体積抵抗率が10Ω・cm以上であれば用いることができ、より好ましくは10Ω・cm以上、さらに好ましくは1010Ω・cm以上がよい。
絶縁性繊維として、例えば、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、塩化ビニル繊維、アラミド繊維、ポリスルホン繊維、ポリエーテル繊維、ポリウレタン繊維等の他、綿、麻、絹等の天然繊維、アセテート等の半合成繊維、レーヨン、キュプラ等の再生繊維を用いることができる。これらに限定されるものではなく、公知の絶縁性繊維を任意に用いることができる。さらに、これらの絶縁性繊維を組み合わせて用いてもよく、絶縁性を有しない繊維と組み合わせ、全体として絶縁性を有する繊維としてもよい。
絶縁性繊維は、フィラメントを複数本束ねたマルチフィラメントを用いても、また、フィラメント一本からなるモノフィラメントを用いてもよい。マルチフィラメントとして用いる方が絶縁特性の長尺安定性の観点で好ましい。モノフィラメントとして用いる場合、その糸径は1μm〜5000μmであり、好ましくは50μm〜1000μmである。マルチフィラメントとして用いる場合は、その単糸径は0.1μm〜5000μmであり、好ましくは2μm〜100μmである。さらに好ましくは3μm〜50μmである。マルチフィラメントのフィラメント数としては、1本〜100000本が好ましく、より好ましくは5本〜500本、さらに好ましくは10本〜100本である。
また、布帛に柔軟性を持たせる目的で、公知のあらゆる形状の繊維も用いることができる。
(圧電単位の組み合わせ形態)
本発明において、複数の並列した圧電単位を含有する織編物であることが好ましい。このような形態であることで、圧電素子として、形状の変形自由度(フレキシブルさ)を向上させることが可能である。
このような織編物形状は複数の圧電単位を含み、圧電素子としての機能を発揮する限り何らの限定は無い。織物形状または編物形状を得るには、通常の織機または編機により製編織すればよい。一枚の布帛に複数の圧電単位を導入する場合は、製織もしくは製編の際に連続して作製しても、別々に作成した複数の布帛を接合することで作製してもよい。
織物の織組織としては、平織、綾織、朱子織等の三原組織、変化組織、たて二重織、よこ二重織等の片二重組織、たてビロードなどが例示される。
編物の種類は、丸編物(緯編物)であってもよいし経編物であってもよい。丸編物(緯編物)の組織としては、平編、ゴム編、両面編、パール編、タック編、浮き編、片畔編、レース編、添え毛編等が好ましく例示される。経編組織としては、シングルデンビー編、シングルアトラス編、ダブルコード編、ハーフトリコット編、裏毛編、ジャガード編等が例示される。層数も単層でもよいし、2層以上の多層でもよい。更には、カットパイルおよび/またはループパイルからなる立毛部と地組織部とで構成される立毛織物、立毛編み物であってもよい。
なお、圧電単位が織り組織ないし編み組織に組み込まれて存在する場合、圧電性繊維そのものに屈曲部分が存在するが、圧電素子としての圧電性能を効率よく発現させるためには、圧電性繊維の屈曲部分が小さい方が好ましい。従って、織物と編み物とでは織物の方が好ましい。
この場合でも、上述の通り、圧電性繊維の屈曲部分が小さい方が、圧電性能が効率よく発現することから、織組織としては平織よりは綾織りが好ましく、綾織よりもサテン織(朱子織)が好ましい。特にサテン織(朱子織)のなかでも、飛び数が3〜7の範囲にあると、織組織の保持と圧電性性能とを高い水準で発揮することから好ましい。
なお、織組織は、検出したい形状変化により適宜選択される。例えば曲げを検出したい場合には、平織構造、圧電性繊維と導電性繊維が平行関係であることが好ましく、捩じりを検出したい場合には、朱子織構造、圧電性繊維と導電性繊維が直行関係であることが好ましい。
また、圧電性繊維であるポリ乳酸は帯電しやすいため、誤作動しやすくなる場合がある。このような場合には、信号を取り出そうとする圧電繊維を接地(アース)して使用することもできる。接地(アース)する方法としては信号を取り出す導電性繊維とは別に、導電性繊維を配置することが好ましい。この場合、導電性繊維の体積抵抗率としては10−1Ω・cm以下であることが好ましく、より好ましくは10−2Ω・cm以下、さらに好ましくは10−3Ω・cm以下である。
(複数の圧電素子)
また、圧電素子を複数並べて用いることも可能である。並べ方としても一次元的に一段で並べても、二次元的に重ねて並べても良く、さらには布状に編織して用いたり、組み紐に製紐したりしてもよい。それによって布状、紐状の圧電素子を実現することも可能となる。布状、紐状にするにあたっては、本発明の目的を達成する限り、圧電素子以外の他の繊維と組み合わせて、混繊、交織、交編等を行ってもよく、また、樹脂などに組み込んで使ってもよい。
(B層)
B層は、A層であるトランスデューサーへの電気的外乱の影響を低減させる機能を有する絶縁性シートまたは絶縁性布帛であり、シート抵抗は10Ω/□(Ω/sq.)以下であることが必要であり、好ましくは10Ω/□(Ω/sq.)以下、さらに好ましくは10Ω/□(Ω/sq.)以下であり、1Ω/□(Ω/sq.)以下であることが最も好ましい。10Ω/□(Ω/sq.)より大きい場合には、例えば人体に直接触れている場合や帯電している物体に接触した場合に、本来目的としていない信号を出力してしまうことがある。なお、導電性シートまたは導電性布帛はその柔軟性から布帛であることが好ましいが、柔軟性を有していればシートあるいはフィルム状であってもよい。導電性シートまたは導電性布帛を形成する材料としては導電性を有していれば特に限定されるものではなく、公知のあらゆる材料が適用しうる。導電性を付与する方法としては、導電性繊維を用いる、シートまたは布帛に導電性のある物質を積層あるいは塗布するなどが挙げられる。
(積層)
本発明のA層およびB層の積層方法は特に限定されないが、縫合、粘着、接着、熱圧着など従来公知の方法で実施することができる。ただし、A層に含まれる導電繊維がB層の導電部分と短絡しないようにA層とB層の間にC層を用いることが好ましい。また、A層の表面を絶縁性の物質で被覆することも短絡を防ぐ方法として有効である。また、その積層枚数についても本発明の目的を失わない範囲であれば何枚積層してもよい。ただし、A層を複数枚積層する場合には、A層に含まれる導電繊維が他のA層の導電繊維と短絡しないように、二つのA層の間にC層を用いることが好ましい。複数のA層を用いる際には、A層の組織は同じである必要はなく、目的や用途により適宜その組織や貼りあわせの角度は変えることができる。また、本発明の目的を失わない範囲であれば、A層およびB層以外の他の層を設けてもよい。例えば、絶縁性を有する層、他のセンシング機能を有する層、耐摩耗性などの耐久性を有する層、粘着層や接着層などの対象物へ固定する層などが挙げられる。
(C層)
C層は、A層であるトランスデューサーとB層の短絡を防ぐ機能を有する機能を有する絶縁性シートまたは絶縁性布帛であり、シート抵抗は10Ω/□(Ω/sq.)以上であることが必要であり、好ましくは10Ω/□(Ω/sq.)以上、さらに好ましくは1010Ω/□(Ω/sq.)以上であり、1012Ω/□(Ω/sq.)以上であることが最も好ましい。10Ω/□(Ω/sq.)未満では、A層の導電繊維とB層が短絡したり、静電容量が変化したりすることにより、本来目的としていない信号を出力してしまうことがある。なお、絶縁性シートまたは絶縁性布帛はその柔軟性から布帛であることが好ましいが、柔軟性を有していればシートあるいはフィルム状であってもよい。絶縁性シートまたは絶縁性布帛を形成する材料としては絶縁性を有していれば特に限定されるものではなく、公知のあらゆる材料が適用しうる。
(圧電素子の適用技術)
本発明のトランスデューサーはいずれの様態であっても、表面への接触、圧力、形状変化を電気信号として出力することができる。図30は、本発明のトランスデューサーを用いたデバイスの第1の具体例を示すブロック図である。例えば、本発明のトランスデューサー5011と、印加された圧力に応じてトランスデューサー5011から出力される電気信号を増幅する増幅手段5012と、増幅手段5012で増幅された電気信号を出力する出力手段5013と、出力手段5013から出力された電気信号を外部機器(図示せず)へ送信する送信手段5014とからなるデバイス5101を構成する。ここでは特に図示しないが、増幅手段5012の入力端子には、トランスデューサー5011の導電性繊維からの引出し線を接続し、接地(アース)端子には、トランスデューサー5011の圧電性繊維を接続する。これにより、トランスデューサー5011の表面への接触、圧力、形状変化により出力された電気信号を容易に取り出すことができるので、様々な用途に適用可能である。例えば、トランスデューサー5011の表面への接触、圧力、形状変化により出力された電気信号に基づき、外部機器(図示せず)における演算処理にて、トランスデューサー5011に印加された応力の大きさおよび/又は印加された位置を検出することができる。あるいは、トランスデューサー5011内に、出力手段5013から出力された電気信号に基づき圧電素子5011に印加された応力の大きさおよび/又は印加された位置を演算する演算手段(図示せず)を設けてもよい。
増幅手段5012は、例えば各種電子回路で構築されてもよく、あるいはプロセッサ上で動作するソフトウェアプログラムにより実装される機能モジュールとして構築されてもよく、あるいは各種電子回路とソフトウェアプログラムとの組み合わせで構築されてもよい。プロセッサとしては、例えば、CPU(Central Processing Unit)、DSP(digital signal processor)、LSI(large scale integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programming Gate Array)等がある。また、出力手段5013は、例えば各種コネクタにて単独に構築されてもよく、あるいは送信手段5014と一体化した通信装置として構築されてもよい。またあるいは、増幅手段5012、出力手段5013および送信手段5014の機能をまとめて、ソフトウェアプログラムを書き込んだ集積回路もしくはマイクロプロセッサなどで実現してもよい。なお、送信手段5014による送信方式を無線によるもの有線によるものにするかは、適用される装置に応じて適宜決定すればよい。
また、増幅手段だけではなく、ノイズを除去する手段や他の信号と組み合わせて処理する手段などの公知の信号処理手段を組み合わせて用いることができる。これらの手段の接続の順序は目的に応じて適宜変えることができる。もちろん、トランスデューサー5011から出力される電気信号をそのまま外部機器へ送信した後で信号処理してもよい。
具体的な例としては、帽子や手袋、靴下などを含む着衣、サポーター、ハンカチ状などの形状をした、タッチパネル、人や動物の表面感圧センサー、関節部の曲げ、捩じり、伸縮を感知するセンサーが挙げられる。例えば人に用いる場合には、接触や動きを検出し、医療用途などの関節などの動きの情報収集、アミューズメント用途、失われた組織やロボットを動かすためのインターフェースとして用いることができる。他には、動物や人型を模したぬいぐるみやロボットの表面感圧センサー、関節部の曲げ、捩じり、伸縮を感知するセンサーとして用いることができる。他には、シーツや枕などの寝具、靴底、手袋、椅子、敷物、袋、旗などの表面感圧センサーや形状変化センサーとして用いることができる。
さらには、本発明のセンサーは布帛状であるため、伸縮性と柔軟性があるので、あらゆる構造物の全体あるいは一部の表面に貼付あるいは被覆することにより表面感圧センサー、形状変化センサーとして用いることができる。
また、本発明のトランスデューサーは電気信号を出力(電力)として取り出すことができるため、この電気信号(電力)を他のデバイスを動かすための電力源あるいは蓄電するなど、発電素子として用いることもできる。図31は、本発明のトランスデューサーを用いたデバイスの第2の具体例を示すブロック図である。例えば、本発明のトランスデューサー5011と、印加された圧力に応じてトランスデューサー5011から出力される電気信号を増幅する増幅手段5012と、増幅手段5012で増幅された電気信号を出力する出力手段5013とからなるデバイス5102を構成する。ここでは特に図示しないが、増幅手段5012の入力端子には、トランスデューサー5011の導電性繊維からの引出し線を接続し、接地(アース)端子には、トランスデューサー5011の圧電性繊維を接続する。これにより、トランスデューサー5011の表面への接触、圧力、形状変化により出力手段5013から出力された電気信号を他のデバイスを動かすための電力源として用いたりあるいは蓄電装置に蓄電したりすることができる。
また、増幅手段だけではなく、ノイズ(リプル)を除去する手段や他の信号と組み合わせて処理する手段などの公知の信号処理手段を組み合わせて用いることができる。これらの手段の接続の順序は目的に応じて適宜変えることができる。もちろん、トランスデューサー5011から出力される電気信号をそのまま外部機器へ送信した後にノイズ(リプル)を除去する信号処理を実行してもよい。
このような具体例としては、人、動物、ロボット、機械など自発的に動くものの可動部に用いることによる発電、靴底、敷物、外部から圧力を受ける構造物の表面での発電、流体中での形状変化による発電、などが挙げられる。流体中での形状変化により電気信号を発するために、流体中の帯電性物質を吸着させたり付着を抑制させたりすることも可能である。
一方、本発明のトランスデューサーはいずれの様態であっても、電気信号が入力されることで、力学的な力を発生させることができる。図32は、本発明のトランスデューサーを用いたデバイスの第3の具体例を示すブロック図である。例えば、外部機器(図示せず)から電気信号を受信する受信手段5015と、受信手段5015により受信した電気信号が印加される本発明のトランスデューサー5011とからなるデバイス5103を構成する。これにより、受信手段5015を通じて入力された電気信号に応じた力をトランスデューサー5011に発生させることができる。なお、受信手段5015による受信方式を無線によるもの有線によるものにするかは、トランスデューサーの用途や使用環境などに応じて適宜決定すればよい。受信手段5015による受信方式を有線とする場合、受信手段5015は、例えば各種コネクタにより実現されてもよい。
電気信号を入力とする用途の具体的な例としては、布帛状とした圧電素子に電気信号を印加して、布帛表面に載置した対象物を移動させたり、対象物を包んだり、圧縮したり、振動させることができる。また布帛を構成する各圧電素子へ印加する電気信号を制御することによりさまざまな形状を表現することが可能である。さらには、布帛自体が振動することによりスピーカーとして機能させることも可能である。
他の例としては、帽子や手袋、靴下などを含む着衣、サポーター、ハンカチ状などの形状をした、人や動物や物の表面に圧力を与えるアクチュエーター、関節部の曲げ、捩じり、伸縮をサポートするアクチュエーターがある。例えば人に用いる場合には、接触や動きや圧力を与えるアミューズメント用途や失われた組織を動かすことができる。他には、動物や人型を模したぬいぐるみやロボットの表面を膨らませたり、伸ばしたりするアクチュエーター、関節部に曲げ、捩じり、伸縮などの動きを与えるアクチュエーターとして用いることができる。他には、シーツや枕などの寝具、靴底、手袋、椅子、敷物、袋、旗などの表面を動かすアクチュエーターや、電気信号で形状変化するハンカチ、風呂敷、袋など布状のあらゆる形状のアクチュエーターとして用いることができる。
さらには、本発明のアクチュエーターは布帛状であるため、伸縮性と柔軟性があるので、あらゆる構造物の全体あるいは一部の表面に貼付あるいは被覆することにより表面形状を変えるアクチュエーターとして用いることができる。
本発明による別の態様として、導電性繊維および圧電性繊維が電気的接続を提供するように略同一平面上に配置され、該導電性繊維および該圧電性繊維の配置の全部もしくは一部が綾織構造であり、該綾織構造の少なくとも一部の斜文の角度が該圧電性繊維の繊維軸方向に対して30度以上60度以下である圧電単位を含む電気信号を出力とするトランスデューサーを提供することにより、柔軟性に富み、より強い電気信号を発生する布帛状のトランスデューサーを得ることができる。本態様によるトランスデューサーは、フレキシブルであるため、ハンカチのような折り畳み可能な布帛状、さらには着衣状など布帛で実現できるあらゆる形状の電気信号を入出力とするトランスデューサーを実現することができる。
より具体的には、本態様によるトランスデューサーは、複数の圧電単位を含有する織物であり、その全部もしくは一部が綾織構造であることが必要である。綾織構造は織構造によっていわゆる斜文織があらわれるため、別名斜文織ともいわれる。綾織はその斜文方向に折れ曲がりやすく、比較的布帛の変形をとらえやすいという特徴がある。またその斜文の角度は圧電性繊維の繊維軸方向に対して30度以上60度以下であることが必要である。圧電性繊維が変形した場合、繊維軸に対し45度の方向に分極が発生するため、斜文が繊維軸に対して45度に近いほど、布帛の変形に対して発生する圧電信号が大きくなる。ゆえに本発明における布帛は、斜文の角度が圧電性繊維の繊維軸方向に対して30度以上60度以下である綾織構造を少なくともその一部に含むことが必要である。斜文の角度は圧電性繊維の繊維軸方向に対して30度以上60度以下であればよいが、好ましくは35度以上55度以下、さらに好ましくは40度以上50度以下である。綾織構造は、上述の斜文の角度を満たせば任意の構造が可能であり、いわゆる三ツ綾の2/1組織、四ツ綾の3/1組織、2/2組織が好ましい構造として例示される。また、このようなトランスデューサーは、複数の並列した圧電単位を含有する織編物であることが好ましい。このような形態であることで、圧電素子として、形状の変形自由度(フレキシブルさ)を向上させることが可能である。
このような織編物形状は複数の圧電単位を含み、圧電素子としての機能を発揮する限り何らの限定は無い。織物形状または編物形状を得るには、通常の織機により製織すればよい。一枚の布帛に複数の圧電単位を導入する場合は、製織もしくは製編の際に連続して作製しても、別々に作成した複数の布帛を接合することで作製してもよい。本態様による布帛は、上述の綾織構造を少なくとも一部に含んでいれば、任意の織組織が可能であり、例えば、平織、綾織、朱子織等の三原組織、変化組織、たて二重織、よこ二重織等の片二重組織、たてビロードなどが例示される。
本発明による別の態様として、導電性繊維、絶縁性繊維および圧電性繊維が互いに物理的に接する接点を有しつつ略同一平面上に配置されてなる圧電単位を含むトランスデューサーであって、該圧電単位を構成する該圧電性繊維の少なくとも一部が、該導電性繊維と直交しており、かつ、4本以上の間隔を置いて他の繊維と交差していることを特徴とするトランスデューサーを提供することにより、柔軟性に富み、より強い電気信号を発生する布帛状のトランスデューサーを得ることができる。本態様によるトランスデューサーは、フレキシブルであるため、ハンカチのような折り畳み可能な布帛状、さらには着衣状など布帛で実現できるあらゆる形状の電気信号を入出力とするトランスデューサーを実現することができる。
より具体的には、本態様によるトランスデューサーは、略同一平面上に配置された導電性繊維、絶縁性繊維および圧電性繊維が互いに物理的に接する接点を有しつつ、下記の織構造を有する必要がある。
1.圧電性繊維の少なくとも一部が導電性繊維と垂直方向に交差(直交)していること
2.圧電性繊維は4本以上の間隔を置いて他の繊維と交差していること
特にねじりの動きを検出する場合、圧電性繊維はいわゆる浮き、と呼ばれる非拘束の状態を作ることが望ましい。すなわち圧電性繊維を経糸として使用した場合、緯糸との交差点を少なくし、よりルーズな構造にしたほうがよいことが見いだされた。その交差点は緯糸を4本以上の間隔で飛ばして交差させることが必要である。なお4本以上の間隔とは、間に4本以上の緯糸を入れるという意味である。この4本以上の繊維は任意の繊維でよい。圧電性繊維を緯糸として用いた場合も同様に4本以上の間隔で経糸と交差させることが必要である。
このような構造で圧電性繊維からの電気信号を効率よく検出するためには、圧電性繊維の4本以上の間隔で交差する繊維を導電性繊維とすることが最も好ましいことも判明した。ゆえに圧電性繊維は導電性繊維と直交に配置することが必要である。とくにねじりの動きを検出するためには、この構造が好ましい。それ以外は任意の構造をとることができるが、導電性繊維同士が接触しないよう導電性繊維はすべて同一方向に配置することが好ましい。また、導電性繊維と圧電性繊維の間には、好ましくは絶縁性物質、例えば絶縁性繊維を介在させる形態の他、導電性繊維が接触しやすい表面にのみ絶縁性物質を被覆し、圧電性繊維とは直接導電性繊維が接触するようにする形態を採用することもできる。該織物形状または編物形状を得るには、通常の織機により製織すればよい。一枚の布帛に複数の圧電単位を導入する場合は、製織もしくは製編の際に連続して作製しても、別々に作成した複数の布帛を接合することで作製してもよい。本態様による布帛は、上述の織構造を少なくとも一部に含んでいれば、任意の織組織が可能であり、例えば、平織、綾織、朱子織等の三原組織、変化組織、たて二重織、よこ二重織等の片二重組織、たてビロードなどが例示される。
本発明による別の態様として、導電性繊維および圧電性繊維が電気的接続を提供するように略同一平面上に配置されている圧電単位を含み、該圧電性繊維が、主としてポリ乳酸を含み、広角X線回折分析(WAXD)により定量される、ホモPLA結晶化度Xhomo(%)および結晶配向度A(%)が下記式(1):
homo×A×A÷10≧0.26 (1)
を満たす、トランスデューサーを提供することにより、柔軟性に富んだ、特定方向の動作に対しより強い電気信号を発生する布帛状のトランスデューサーを得ることができる。本態様によるトランスデューサーは、フレキシブルであるため、ハンカチのような折り畳み可能な布帛状、さらには着衣状など布帛で実現できるあらゆる形状の電気信号を入出力とするトランスデューサーを実現することができる。また、そのトランスデューサーからの信号を用いたデバイスおよび/または電気信号を入力することにより機能するデバイスを実現することができる。ホモPLA結晶化度Xhomo(%)および結晶配向度A(%)の詳細については上述のとおり。
本発明による別の態様として、導電性繊維および圧電性繊維が電気的接続を提供するように略同一平面上に配置されている圧電単位を複数含む織編物からなる、電気信号を出力または入力とするトランスデューサーであって、該圧電性繊維が、圧電性繊維または圧電性繊維以外の繊維のいずれかと交差する交点を有し、該交点の少なくとも一部において、該圧電性繊維と、該圧電性繊維と交差する他の繊維とが、接着されていることを特徴とする、トランスデューサーを提供することにより、柔軟性に富む布帛状のトランスデューサーを得ることができる。本態様によるトランスデューサーは、フレキシブルであるため、ハンカチのような折り畳み可能な布帛状、さらには着衣状など布帛で実現できるあらゆる形状の電気信号を入出力とするトランスデューサーを実現することができる。
より具体的には、本態様による布帛のトランスデューサーとしての機能は、布帛の変形が圧電性繊維に伝わり、圧電性繊維の変形が電気的な信号に変換されて取り出されることに由来しているため、圧電性繊維が布帛の構造に固定されていることで効率的に布帛の変形を圧電性繊維に伝え、強い信号を得ることが可能となる。ここで接着されているとは、単に織編物を作成しただけでは生じない、繊維表面の強化された相互作用によって繊維同士が離れにくくなっている状態を指す。接着されている状態の1つの好ましい形態として、圧電性繊維およびこの圧電性繊維に交差する繊維が、その交点において互いの表面に沿って扁平に変形した状態が挙げられる。このような状態は、布帛を織る際に緯糸および経糸の張力を強くして織るか、あるいは布帛に対して強い力によるプレスおよび/または加熱雰囲気中でのプレスを実施することで得られる。この際、圧電性繊維と交差する繊維との接触界面において分子レベルの侵入あるいは化学的結合の形成が生じ粘着した状態が好ましいが、粘着せず、接触面積の増大に伴う表面相互作用の増大のみによって繊維同士が離れにくくなっている状態も、接着した状態とみなすことができる。繊維同士が粘着した場合は、交差部分の圧電性繊維断面を観察したとき、圧電性繊維と交差している繊維との界面が不明瞭になっている状態を指す。また、接触面積が増大している場合は、交差部分の圧電性繊維断面を観察したとき、交差した相手の繊維表面形状に合わせて圧電性繊維が著しく扁平に変形している状態を指す。このように著しく扁平に変形しているかどうかは、以下の方法で評価することができる。布帛をその状態が変化しないよう、接着剤を含浸させたのち固化して薄いシート状に固定する。フェザーカッターにて他の繊維と交差している部分の圧電性繊維の垂直断面を切り出し、断面を顕微鏡で観察する。繊維断面上に、布帛がなす平面に平行なx軸と、このx軸に垂直なy軸を取る。断面を観察する繊維がモノフィラメントの場合、フィラメント1本の繊維断面が全て入る最小の大きさの長方形を、各辺がx軸とy軸に平行になるように描き、この長方形のx軸方向の辺の長さをx、y軸方向の辺の長さをyとする。断面を観察する繊維がマルチフィラメントの場合、1本のマルチフィラメント中の全てのフィラメントの断面が入る最小の大きさの長方形を、各辺がx軸とy軸に平行になるように描き、この長方形のx軸方向の辺の長さをx、y軸方向の辺の長さをyとする。これらの測定結果から下記式(7)より扁平率を計算する。
扁平率 = x÷y (7)
10カ所以上の異なる点について扁平率を計算し、その平均値を採用する。扁平率の平均値が2.0以上である場合、本願では交差部分の圧電性繊維が、交差した相手の繊維表面形状に合わせて著しく扁平に変形している、すなわち圧電性繊維が別の繊維に交差する交点において、圧電性繊維と圧電性繊維に交差する他の繊維とが接着されていると判断する。交差部分の圧電性繊維がより扁平に変形していた方が、交差点での接触面積を増大させ、繊維同士の接着作用が増加し、好ましい。そのため、扁平率は2.3以上がより好ましく、2.5以上がさらに好ましい。
また、マルチフィラメントを用いた布帛の場合、マルチフィラメントを構成するフィラメント間の空隙が圧縮され密集したマルチフィラメントを構成し、フィラメント1本1本の間の接着作用も増大することが、圧電性繊維の構造固定の観点から好ましい。
上記のような扁平率を達成するため、従来公知のプレス方法が好ましく用いられる。特に圧電性繊維としてポリ乳酸繊維を用いる場合は、そのガラス転移点である60℃と融点の間の温度、好ましくは70℃から160℃の間で、10分以内の熱プレスを行うことが好ましい。さらに、圧電性繊維の融解開始温度近傍(ポリ乳酸であれば140℃から160℃の間)で、かつ導電性繊維及び絶縁性繊維の融解が起こらない温度で熱プレスを行うことがさらに好ましい。熱プレスは、連続式に実施可能なロールプレス機で行うことが好ましい。また、圧電性繊維、導電性繊維あるいは絶縁性繊維にマルチフィラメントを用いた場合は、上記のような扁平率を達成するため、マルチフィラメントの撚り数は少ないことが好ましい。撚り数が大きすぎると繊維は扁平に変形しにくくなり、接着効果が小さくなるため、好ましくない。かかる観点から、撚り数は1mあたり1000以下、好ましくは500以下、さらに好ましくは300以下であることが好ましい。
接着されている状態のもう1つの好ましい形態として、接着剤を用いて圧電性繊維が接着された状態が挙げられる。接着剤は圧電性繊維と、圧電性繊維に交差する繊維との間に介在して、それらの動きを互いに拘束する機能を有するものであれば何でも用いることができ、拘束力の大小は問わない。接着剤として水のり、ボンド、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、フェノール系接着剤、粘着性高分子、溶融高分子、高分子溶液も好適に用いることができる。接着剤は繊維表面にあらかじめ塗布あるいは繊維中に含有させた後に、織りあるいは編み工程を経て、布帛の状態で必要な表面析出あるいは硬化工程を実施することもできるし、布帛の状態とした後に接着剤を塗布あるいは含浸することもできる。布帛の状態で接着剤を塗布あるいは含浸する場合は布帛全体に接着剤が分布するため、接着剤としてはノイズの原因となる圧電性および焦電性を有しないもの、および短絡の原因となる導電性を有しないものを用いることが好ましい。本態様の目的の達成のため、上記に挙げた緯糸・経糸を強く張った織り、プレス、および接着剤の適用は、いずれかを用いてもよいし、複数を組み合わせて実施することもできる。
本発明による別の態様として、導電性繊維および圧電性繊維が電気的接続を提供するように略同一平面上に配置されている圧電単位を複数含む織編物からなる、電気信号を出力または入力とするトランスデューサーであって、1つの該圧電単位を構成する該圧電性繊維と該導電性繊維とが、繊維表面同士で直接接し、かつ/または、導電性材料を介して間接的に接続されていることを特徴とするトランスシューサーを提供することにより、柔軟性に富む布帛状のトランスデューサーを得ることができる。本態様によるトランスデューサーは、フレキシブルであるため、ハンカチのような折り畳み可能な布帛状、さらには着衣状など布帛で実現できるあらゆる形状の電気信号を入出力とするトランスデューサーを実現することができる。
より具体的には、本態様による布帛のトランスデューサーとしての機能は、圧電性繊維の変形が圧電性繊維表面に静電分極を生じさせ、この静電分極に由来する電気信号が導電性繊維を通じて取り出されることに由来しているため、圧電性繊維と導電性繊維が十分な接点を有することで両者間の接触抵抗が低減され、強い電気信号を得ることが可能となる。ここで十分な接点を有するとは、単に織編物を作成しただけでは生じない、圧電性繊維と導電性繊維との間の豊富な導通面積を有する状態を指す。
十分な接点を有する状態の1つの好ましい形態として、圧電性繊維および/または導電性繊維が、その交点において互いの表面に沿って扁平に変形した状態が挙げられる。このような状態は、布帛を織る際に緯糸および経糸の張力を強くして織るか、あるいは布帛に対して強い力によるプレスおよび/または加熱雰囲気中でのプレスを実施することで得られる。この場合、圧電性繊維と接触する導電性繊維との接触界面において分子レベルの侵入あるいは化学的結合の形成が生じ粘着した状態が好ましいが、粘着せず、それぞれの繊維表面の変形によって接触面積が増大している状態も、十分な接点を有する状態とみなすことができる。繊維同士が粘着した場合は、交差部分の繊維断面を観察したとき、圧電性繊維と導電性繊維との界面が不明瞭になっている状態を指す。また、接触面積が増大している場合は、交差部分の繊維断面を観察したとき、交差した相手の繊維表面形状に合わせて圧電性繊維または導電性繊維が著しく扁平に変形している状態を指す。このように著しく扁平に変形しているかどうかは、以下の方法で評価することができる。
布帛をその状態が変化しないよう、接着剤を含浸させたのち固化して薄いシート状に固定する。フェザーカッターにて導電性繊維と交差している部分の圧電性繊維の垂直断面を切り出し、断面を顕微鏡で観察する。圧電性繊維の断面上に、布帛がなす平面に平行なx軸と、このx軸に垂直なy軸を取る。断面を観察する繊維がモノフィラメントの場合、フィラメント1本の繊維断面が全て入る最小の大きさの長方形を、各辺がx軸とy軸に平行になるように描き、この長方形のx軸方向の辺の長さをx、y軸方向の辺の長さをyとする。断面を観察する繊維がマルチフィラメントの場合、1本のマルチフィラメント中の全てのフィラメントの断面が入る最小の大きさの長方形を、各辺がx軸とy軸に平行になるように描き、この長方形のx軸方向の辺の長さをx、y軸方向の辺の長さをyとする。
これらの測定結果から下記式(8)より扁平率を計算する。
扁平率 = x÷y (8)
10カ所以上の異なる点について扁平率を計算し、その平均値を採用する。扁平率の平均値が2.0以上である場合、本願では交差部分の圧電性繊維が、交差した相手の導電性繊維表面形状に合わせて著しく扁平に変形している、すなわち圧電性繊維が導電性繊維に交差する交点において、十分な接点を有する状態にあると判断する。交差部分の圧電性繊維がより扁平に変形していた方が、交差点での接触面積を増大させ、好ましい。そのため、扁平率は2.3以上がより好ましく、2.5以上がさらに好ましい。
また、圧電性繊維にマルチフィラメントを用いた布帛の場合、マルチフィラメントを構成するフィラメント間の空隙が圧縮されて密集したマルチフィラメントを構成することが、できる限り多くの圧電性フィラメントを導電性フィラメントの近傍に存在せしめ圧電性に由来する電気信号を取り出しやすくする観点から、好ましい。
上記のような扁平率を達成するため、従来公知のプレス方法が好ましく用いられる。特に圧電性繊維としてポリ乳酸繊維を用いる場合は、そのガラス転移点である60℃と融点の間の温度、好ましくは70℃から160℃の間で、10分以内の熱プレスを行うことが好ましい。さらに、圧電性繊維の融解開始温度近傍(ポリ乳酸であれば140℃から160℃の間)で、かつ導電性繊維及び絶縁性繊維の融解が起こらない温度で熱プレスを行うことがさらに好ましい。熱プレスは、連続式に実施可能なロールプレス機で行うことが好ましい。
また、圧電性繊維あるいは導電性繊維にマルチフィラメントを用いた場合は、上記のような扁平率を達成するため、マルチフィラメントの撚り数は少ないことが好ましい。撚り数が大きすぎると繊維は扁平に変形しにくくなり、接点を十分に大きくすることができないため、好ましくない。かかる観点から、撚り数は1mあたり1000以下、好ましくは500以下、さらに好ましくは300以下であることが好ましい。
十分な接点を有する状態のもう1つの好ましい形態として、圧電性繊維と導電性繊維との間に導電性材料による間接接点が設けられた状態が挙げられる。間接接点に用いられる導電性材料は圧電性繊維と導電性繊維との間に介在して電気的に導通させる機能を有するものであれば何でも用いることができ、はんだ、金属やカーボンなどの導電性フィラーを含有する導電ペースト、導電性粘着剤あるいは導電性接着剤などが好適に用いられる。特に布帛の変形を効率的に圧電性繊維に伝えて圧電機能を発現させやすくし、間接接点を長期間安定的に保持できるため、接着力を有する導電性接着剤がさらに好ましい。導電性材料は繊維表面にあらかじめ塗布あるいは繊維中に含有させた後に、織りあるいは編み工程を経て、布帛の状態で必要に応じて表面析出あるいは硬化工程を実施することもできるし、布帛の状態とした後に導電性材料を塗布あるいは含浸することもできる。異なる導電性繊維間の短絡防止や、意図しない部分の導通を防止するため、導電性材料は導電性繊維に塗布あるいは導電性繊維中に含有させた後に、織りあるいは編み工程を経て、布帛の状態で必要に応じて表面析出あるいは硬化工程を経る方法を取ることが好ましい。本態様の目的の達成のため、上記に挙げた緯糸・経糸を強く張った織りやプレスによる直接接点面積の増加、および導電性材料による間接接点の設置は、いずれかを用いてもよいし、複数を組み合わせて実施することもできる。
本発明による別の態様として、1本の導電性繊維および1本の圧電性繊維が電気的接続を提供するように略同一平面上に配置されてなる圧電単位を複数含む、電気信号を出力または入力とするトランスデューサーであって、異なる該圧電単位を構成する異なる複数の該導電性繊維が互いに4mm以上の間隔を置いて配置されていることを特徴とするトランスデューサーを提供することにより、柔軟性に富む布帛状のトランスデューサーを得ることができる。本態様によるトランスデューサーは、フレキシブルであるため、ハンカチのような折り畳み可能な布帛状、さらには着衣状など布帛で実現できるあらゆる形状の電気信号を入出力とするトランスデューサーを実現することができる。
より具体的には、本態様によるトランスデューサーにおいて、1つの圧電単位における繊維の配置は、導電性繊維および圧電性繊維が電気的接続を提供するように配置されている限り特に限定されるものではないが、信号強度を強くする観点から、1つの圧電単位内の1本の導電性繊維および1本の圧電性繊維は、より近接して配置されることが好ましい。導電性繊維と圧電性繊維が近接する箇所は、点状でも線状でもよい。この際、導電性繊維と圧電性繊維とが互いに物理的に接する接点を有していることが望ましいが、1つの圧電単位内の導電性繊維と圧電性繊維との間隔が4mm以内の範囲であれば、物理的に接していなくても電気的接続を提供することができる。1つの圧電単位内の導電性繊維と圧電性繊維との間隔は、好ましくは3mm以下、より好ましくは2mm以下、さらに好ましくは1mm以下、最も好ましくは0.5mm以下である。この間隔が4mm超であると圧電性繊維の形状変化に伴う電気出力が小さくなり、トランスデューサーとして用いることが困難となる。
1つの圧電単位の形態としては、例えば、1本の導電性繊維と1本の圧電性繊維が平行に配置された形態を挙げることができる。織物の場合は、経糸(または緯糸)の1本を導電性繊維とし、別の経糸(または緯糸)の1本を圧電性繊維とする形態がこれに含まれる。別の圧電単位の形態としては、例えば、1本の導電性繊維と1本の圧電性繊維が交差して配置された形態を挙げることができる。織物の場合は、緯糸(または経糸)の1本を導電性繊維とし、経糸(または緯糸)の1本を圧電性繊維とする形態がこれに含まれる。
本態様によるトランスデューサーは、複数の圧電単位を略同一平面上に配置することが好ましい。さらに、本態様では、圧電単位を異にする2本の導電性繊維同士の短絡を防止するため、これらの2本の導電性繊維を平行に配置する形態が好ましい。また、2本の導電性繊維同士の短絡をより確実に防止するため、2本の導電性繊維の間に絶縁性物質、例えば少なくとも1本の絶縁性繊維、を介在させる形態が特に好ましい。この時、2本の導電性繊維の間に絶縁性繊維を配置する場合は、この絶縁性繊維を圧電単位の一部として利用しない限り、圧電性に由来するノイズを避けるため、この絶縁性繊維は圧電性を有しないものがとりわけ好ましく用いられる。圧電性を有しない絶縁性繊維としては、結晶中にらせん構造を有しない絶縁性繊維、あるいはポーリング処理による双極子の配列や空間電荷の形成がなされていない絶縁性繊維であれば、原理的に圧電性を有しないため好適に用いることができる。その中でも経済合理性の点で、ポリエチレンテレフタレート糸が特に好ましく用いられる。しかしながら、2本の導電性繊維それぞれから4mmを超える間隔を置いて配置される絶縁性繊維については、圧電性に由来するノイズの影響が小さいため、圧電性を有する絶縁性繊維を用いても問題はない。
さらに本態様では、圧電単位を異にする2本の導電性繊維間の静電的干渉による不具合や、これらの導電性繊維を簡単に分離して入出力機に接続するために十分な空間的余裕を持たせるため、これらの導電性繊維を平行に配置し、かつこれらの導電性繊維同士の間隔が4mm以上であることが好ましく、5mm以上であることがより好ましく、6mm以上であることがさらに好ましい。
本発明による別の態様として、導電性繊維および圧電性繊維が電気的接続を提供するように略同一平面上に配置されている圧電単位を含み、
前記圧電性繊維の沸水収縮率S(p)および前記導電性繊維の沸水収縮率S(c)が下記式(9):
|S(p)−S(c)|≦10 (9)
を満たすトランスデューサーを提供することにより、柔軟性に富んだ、より実用性の高い布帛状のトランスデューサーを得ることができる。本態様によるトランスデューサーは、フレキシブルであるため、ハンカチのような折り畳み可能な布帛状、さらには着衣状など布帛で実現できるあらゆる形状の電気信号を入出力とするトランスデューサーを実現することができる。さらには、そのトランスデューサーからの信号を用いたデバイスおよび/または電気信号を入力することにより機能するデバイスを実現できる。沸水収縮率Sの詳細については上述のとおり。
本発明による別の態様として、少なくとも2層のシートまたは布帛からなる積層トランスデューサーであって、該シートまたは該布帛のうち少なくとも1層が下記のA層からなり、該A層以外の層のうち少なくとも1層が下記のB層からなるトランスデューサーを提供することにより、柔軟性に富む布帛状のトランスデューサーを得ることができる。
A層:導電性繊維および圧電性繊維が電気的接続を提供するように略同一平面上に配置されている圧電単位を含む、電気信号を出力または入力とするトランスデューサー
B層:シート抵抗が10Ω/□(Ω/sq.)以上である絶縁性シートまたは絶縁性布帛
本態様によるトランスデューサーは、フレキシブルであるため、ハンカチのような折り畳み可能な布帛状、さらには着衣状など布帛で実現できるあらゆる形状の電気信号を入出力とするトランスデューサーを実現することができる。
より具体的には、本態様によるトランスデューサーにおいて、A層は上述した導電性繊維および圧電性繊維が電気的接続を提供するように略同一平面上に配置されている圧電単位を含む、電気信号を出力または入力とする平面状のトランスデューサーである。B層は、A層であるトランスデューサーへの電気的外乱の影響を低減させる機能を有する絶縁性シートまたは絶縁性布帛であり、シート抵抗は10Ω/□(Ω/sq.)以上であることが必要であり、好ましくは10Ω/□(Ω/sq.)以上、さらに好ましくは1010Ω/□(Ω/sq.)以上であり、1012Ω/□(Ω/sq.)以上であることが最も好ましい。10Ω/□(Ω/sq.)未満では、例えば人体に直接触れている場合や導電性の物体に接触した場合に、本来目的としていない信号を出力してしまうことがある。なお、絶縁性シートまたは絶縁性布帛はその柔軟性から布帛であることが好ましいが、柔軟性を有していればシートあるいはフィルム状であってもよい。絶縁性シートまたは絶縁性布帛を形成する材料としては絶縁性を有していれば特に限定されるものではなく、公知のあらゆる材料が適用しうる。本態様によるA層およびB層の積層方法は特に限定されないが、縫合、粘着、接着、熱圧着など従来公知の方法で実施することができる。また、その積層枚数についても本態様の目的を失わない範囲であれば何枚積層してもよい。ただし、A層を複数枚積層する場合には、A層に含まれる導電繊維が他のA層の導電繊維と短絡しないように、二つのA層の間にB層が存在することが好ましい。複数のA層を用いる際には、A層の組織は同じである必要はなく、目的や用途により適宜その組織や貼りあわせの角度は変えることができる。また、本態様の目的を失わない範囲であれば、A層およびB層以外の他の層を設けてもよい。例えば、導電性を有する層、他のセンシング機能を有する層、耐摩耗性などの耐久性を有する層、粘着層や接着層などの対象物へ固定する層などが挙げられる。
本発明による別の態様として、導電性繊維および圧電性繊維が電気的接続を提供するように略同一平面上に配置されている圧電単位を含む、電気信号を出力または入力とするトランスデューサーであって、単繊維径10〜2000nmの極細繊維を含むことを特徴とするトランスデューサーを提供することにより、柔軟性に富む布帛状のトランスデューサーを得ることができる。本態様によるトランスデューサーは、フレキシブルであるため、ハンカチのような折り畳み可能な布帛状、さらには着衣状など布帛で実現できるあらゆる形状の電気信号を入出力とするトランスデューサーを実現することができる。
より具体的には、本態様によるトランスデューサーにおいて、極細繊維は、導電性繊維、圧電性繊維、絶縁性繊維のいずれであってもよいが、より材料選択の幅が広いという観点で絶縁性繊維を極細繊維とすることが好ましい。また、2種以上の繊維が極細繊維であってもよく、もちろん圧電単位を構成するすべての繊維が極細繊維であってもよい。極細繊維は単繊維径が10〜2000nmであり、より好ましくは50〜1500nm、さらに好ましくは100〜1000nmである。単繊維径が2000nmより大きい場合には、極細繊維の効果が得られず対象物体との密着性が得られない場合があり、10nmより小さい場合には、生産性が極端に悪くなるという問題がある。また、総繊度(単繊維繊度とフィラメント数との積)としては、5〜150dtexの範囲内であることが好ましい。該総繊度とするために、複数の極細繊維を合糸してもよいし、単繊維径が2000nmより太い繊維と合糸してもよい。
布帛中の極細繊維の量は、本態様の目的である対象物体との密着性を向上するという目的を達成できれば、特に限定されず、例えば、絶縁性繊維を極細繊維とする場合において、絶縁性繊維のすべてを極細繊維にする必要はなく、全布帛中の1重量%以上含まれることが好ましい。極細繊維の量が1重量%より少ないと対象物体との密着性が得られず、好ましくは5重量%以上、さらに好ましくは10重量%以上、最も好ましくは15重量%以上である。また、極細繊維はより太い繊維と合糸したものを用いてもよい。極細繊維の製造方法としては特に限定されず、公知のあらゆる方法が適用されるが、多島構造の海島複合繊維から海成分を除去して製造する方法が最も好ましい。なお、島成分数があまりに多くなりすぎると、紡糸口金の製造コストが高くなるだけでなく、紡糸口金の加工精度自体も低下しやすくなるので、島成分数を1000以下とすることが好ましい。
本発明による別の態様として、導電性繊維および圧電性繊維が電気的接続を提供するように略同一平面上に配置されている圧電単位を含む、電気信号を出力または入力とするトランスデューサーであって、該導電性繊維および該圧電性繊維はいずれも伸度が3%以上であることを特徴とするトランスデューサーを提供することにより、柔軟性に富む布帛状のトランスデューサーを得ることができる。本態様によるトランスデューサーは、フレキシブルであるため、ハンカチのような折り畳み可能な布帛状、さらには着衣状など布帛で実現できるあらゆる形状の電気信号を入出力とするトランスデューサーを実現することができる。
より具体的には、本態様によるトランスデューサーにおいて、伸縮性に優れるトランスデューサー得るためには、導電性繊維の伸度が3%以上であることが重要である。伸度が3%未満である場合には、圧電素子を変形箇所に取り付けた際に、繊維軸と並行方向の動きを抑制してしまい、本来の動き、特に大きな動きを十分に検出できない場合がある。導電性繊維の伸度は、より好ましくは5%以上、さらに好ましくは8%以上、最も好ましくは10%以上である。また、導電性繊維の強度は1〜15cN/dtexであることが好ましい。強度が1cN/dtex未満であると布帛強度が保てない場合があり、より好ましくは2cN/dtex以上、さらに好ましくは3cN/dtex以上である。一方、15cN/dtexより大きいと圧電素子が変形箇所の動きを抑制してしまう場合があり、より好ましくは10cN/dtex以下、さらに好ましくは8cN/dtex以下である。上述した伸度および強度を満足する繊維としては、繊維状物の表面に導電性を有する層を設けた繊維が好ましく、具体的には金属をメッキした高分子繊維が好ましい。
さらに、本態様による伸縮性に優れるトランスデューサー得るためには、圧電性繊維の伸度が3%以上であることが重要である。伸度が3%未満である場合には、圧電素子を変形箇所に取り付けた際に、繊維軸と並行方向の動きを抑制してしまい、本来の動き、特に大きな動きを十分に検出できない場合がある。圧電性繊維の伸度は、より好ましくは5%以上、さらに好ましくは8%以上、最も好ましくは10%以上である。また、圧電性繊維の強度は1〜15cN/dtexであることが好ましい。強度が1cN/dtex未満であると布帛強度が保てない場合があり、より好ましくは2cN/dtex以上、さらに好ましくは3cN/dtex以上である。一方、15cN/dtexより大きいと圧電素子が変形箇所の動きを抑制してしまう場合があり、より好ましくは10cN/dtex以下、さらに好ましくは8cN/dtex以下である。
本発明による別の態様として、導電性繊維および圧電性繊維が電気的接続を提供するように略同一平面上に配置されている圧電単位を含む圧電素子を備え、前記圧電素子の限界酸素指数が24以上であるトランスデューサーを提供することにより、柔軟性かつ難燃性に富んだ布帛状もしくは紐状のトランスデューサーを得ることができる。本態様によるトランスデューサーは、フレキシブルであるため、ハンカチのような折り畳み可能な布帛状、さらには着衣状など布帛で実現できるあらゆる形状の電気信号を入出力とするトランスデューサーを実現することができる。さらには、そのトランスデューサーからの信号を用いたデバイスおよび/または電気信号を入力することにより機能するデバイスを実現することができる。
より具体的には、本態様によるトランスデューサーにおいて、導電性繊維および圧電性繊維の少なくとも1つに難燃性を有する繊維を使うか、もしくは、圧電素子を難燃剤で被覆する。導電性繊維に難燃性を付与する方法としては、例えば、導電性繊維の原料として、難燃剤を添加した導電性高分子を使う、導電性フィラーと難燃剤を分散させた高分子を使う、ベースの繊維状物に例えば、アラミド繊維、ポリベンゾイミダゾール繊維、ポリイミド繊維、ポリアミドイミド繊維、ポリエーテルイミド繊維、ポリアリレート繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、ノボロイド繊維、難燃アクリル繊維、ポリクラール繊維、難燃ポリエステル繊維、難燃綿繊維、難燃ウール繊維等を使う、などの方法や、コート剤に難燃剤を添加しておくなどの方法が挙げられる。圧電性繊維に難燃性を付与する方法としては、例えば、リン系化合物などの有機系難燃剤や、三酸化二アンチモンなどの無機系難燃剤をポリ乳酸に添加する、などの方法が挙げられる。
本態様による圧電単位は、絶縁性繊維を含み、該絶縁性繊維は、圧電単位中の導電性繊維が、他の導電性繊維並びに圧電性繊維に接しないように導電性繊維と圧電性繊維の間に配されることがある。難燃性の絶縁性繊維としては、限界酸素指数が24以上である有機繊維であることが好ましく、アラミド繊維、ポリベンゾイミダゾール繊維、ポリイミド繊維、ポリアミドイミド繊維、ポリエーテルイミド繊維、ポリアリレート繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、ノボロイド繊維などが挙げられ、さらに難燃アクリル繊維、ポリクラール繊維、難燃ポリエステル繊維、難燃綿繊維、難燃ウール繊維等も使用することができる。難燃剤の種類は有機系化合物でも、無機系化合物でも問わない。
布帛状のトランスデューサーの圧電素子に限界酸素指数24以上の難燃性をもたせる方法として、導電性繊維、圧電性繊維および絶縁性繊維の少なくとも一つに難燃性を付与する方法がある。その場合、圧電素子の性能を十分に発揮させるためには、圧電性の特性に直接影響しない絶縁性繊維に難燃性を付与するのが好ましい。繊維の性質の観点からも、導電性繊維や、結晶化度が高い圧電性繊維よりも絶縁性繊維に難燃性を付与するのがもっとも簡便であり、好ましい。
布帛状のトランスデューサーの圧電素子に限界酸素指数24以上の難燃性をもたせる他の方法として、トランスデューサーの圧電素子(圧電単位)の表面に難燃剤被膜を形成する方法がある。即ち、水などの溶媒や樹脂に分散させた難燃剤を、布帛状もしくは紐状の圧電素子に含浸、もしくはコーティングし、難燃剤皮膜を形成する。例えば、難燃剤を含む樹脂にて皮膜する場合が挙げられる。ここでいう樹脂とは、難燃剤を布帛に固着させるためのバインダー作用を呈する樹脂を言う。樹脂の具体例としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミン樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、シリコン樹脂、さらにはこれらの変性樹脂等を挙げることができる。また、これらの樹脂を2種以上複合する事も可能である。好ましい樹脂としては、風合いが軟らかく、コストが安価なアクリル樹脂やウレタン樹脂などが挙げられる。
また、上記の樹脂中に混合する難燃剤としては公知の難燃剤を挙げることができる。例えば、ハロゲン系化合物、リン系化合物、窒素系化合物、アンチモン化合物などを挙げることができ、これらは2種類以上を併用することも可能である。具体的には、デカブロモジフェニルエーテル、三酸化アンチモン、およびハロゲン化リン酸エステルの混合物、あるいはポリリン酸アンモニウム等が挙げられる。
上記難燃剤と樹脂との配合比は、重量基準で樹脂を100部としたとき、難燃剤を20部から300部の間とすることが好ましい。樹脂の比率が少ないと難燃剤の固着が充分でなく、また多すぎると難燃効果の点で劣る場合がある。
樹脂層を形成させる方法としては、従来公知の片面コーティング法や浸漬法を任意に採用することができ、コーティング法としてはナイフコーター、グラビアコーター、コンマコーターなどの方法が採用できる。また、あらかじめ難燃剤を含んだ樹脂シート、あるいは樹脂フィルムを布帛にラミネートすることもできる。樹脂層の厚さは、あまり薄過ぎると、樹脂中に含まれる難燃剤の量が少なくなり、充分な難燃性が得られない場合があるので、0.03μm以上とすることが好ましいが、厚過ぎると柔軟性が損なわれる場合があるので、5μm以下とすることが好ましい。さらに好ましい厚さの範囲は0.1〜3μmである。
本発明による別の態様として、導電性繊維および圧電性繊維が電気的接続を提供するように略同一平面上に配置されている圧電単位を含む圧電素子を備え、前記導電性繊維および前記圧電性繊維の少なくとも1つが原着ポリマーを使った繊維であるトランスデューサーを提供することにより、柔軟性かつデザイン性に富んだ布帛状のトランスデューサーを得ることができる。本態様によるトランスデューサーは、フレキシブルであるため、ハンカチのような折り畳み可能な布帛状、さらには着衣状など布帛で実現できるあらゆる形状の電気信号を入出力とするトランスデューサーを実現することができる。また、このトランスデューサーは繰り返しの折り戻しやねじり戻しに対して、色あせや折り筋などが生じにくく、長期間にわたり均一な色を保つことができる。さらには、そのトランスデューサーからの信号を用いたデバイスおよび/または電気信号を入力することにより機能するデバイスを実現することができる。
より具体的には、本態様によるトランスデューサーにおいて、原着ポリマーとは、導電性繊維、圧電性繊維および絶縁性繊維の原料となるポリマーに各種顔料を添加分散させたものであり、その顔料としては、従来公知のアゾレーキ系、ベンゾイミダゾロン系、ジアソライド系、縮合アゾ系、キナクリドン系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、バット系、フタロシアニン系などからなる各種有機顔料、またはチタンイエロー、酸化鉄、コバルトブルー、酸化クロム、硫化カドミウム、カーボンブラックなどからなる各種無機顔料などが使用でき、その他一般にポリマーの着色に使用しうる公知の色素あるいはそれらの混合物はいずれも使用できる。このなかで、本態様は導電性繊維として炭素繊維を好適に用いることができることから、その色合わせのために、圧電性繊維、絶縁性繊維には例えば、カーボンブラックのような黒色の原着ポリマーを使用することが好ましい。原着ポリマーを原料ポリマーに少量添加することにより、導電性繊維、圧電性繊維および絶縁性繊維を着色することができる。上記方法は一例であり、公知の他の方法を用いることも可能である。例えば、導電性繊維、圧電性繊維および絶縁性繊維を公知の分散染料やカチオン性顔料によって染色する方法や、バインダーを使用したプリント法等の手法を用いて繊維表面を塗装する方法がある。ただし、色の調節が難しかったり、本発明のトランスデューサー使用の過程で折り筋が目立ってきたりする場合がある。
本発明による別の態様として、靴の中敷き本体と、前記中敷き本体に搭載された布帛状または組紐状の圧電センサーとを備える靴の中敷きを提供することにより、柔軟性に富んだ布帛状のトランスデューサーを得ることができ、それを布状圧電センサーとして靴の中敷きに搭載することで、足の動きや足底の荷重移動を取得できる靴の中敷き(センサー)を得ることができる。なお、本態様によるトランスデューサーは電気信号を出力として取り出すことができるため、この電気信号を他のデバイスを動かすための電力源あるいは蓄電するなど、発電素子として用いることもできる。
より具体的には、圧電単位を含む圧電素子(圧電センサ)を靴の中敷きに使用するにあたり、圧電素子の織構造を足や靴下との摩擦から保護するため、センサーの機能の邪魔にならない範囲で、表面を樹脂等でコーティングしたり、樹脂シート/フィルムで被覆したりすることができる。本態様によるトンランスデューサーを備える中敷きにより、例えば、ランニングシューズに使用すれば、走行距離や走行速度のデータ取得と共に、ランニングフォーム改良の援助となるデータをタイムリーに取ることができる。
本発明による別の態様として、導電性繊維および圧電性繊維が電気的接続を提供するように略同一平面上に配置されている圧電単位を複数含む、電気信号を出力または入力とするトランスデューサーであって、該圧電単位は2本の該導電性繊維および1本の該圧電性繊維からなり、該導電性繊維、該圧電性繊維および該導電性繊維が、この順序に配置されており、かつ、該複数の圧電単位は、隣り合う該圧電性繊維同士の間隔が4mm以上になるように配置されていることを特徴とするトランスデューサーを提供することにより、柔軟性に富み、安定的に圧電信号を検出できる布帛状のトランスデューサーを得ることができる。本態様によるトランスデューサーは、フレキシブルであるため、ハンカチのような折り畳み可能な布帛状、さらには着衣状など布帛で実現できるあらゆる形状の電気信号を入出力とするトランスデューサーを実現することができる。
より具体的には、本態様によるトランスデューサーにおいて、圧電単位内の導電性繊維の間にある圧電性繊維同士が少なくとも4mm以上、好ましくは5mm以上、さらに好ましくは7mm以上の間隔をあけて配置されていることが必要である。ここで「圧電性繊維同士の間隔」とは、繊維の「表面間」距離を指す。4mm未満では、それぞれの圧電素子でより得られる信号が安定せず、正確な信号が得られない。4mm以上あれば安定した信号が得られ、センサーとして使用することが可能なデバイスが得られる。4mm未満では正確な信号が得られない原因は明確には不明であるが、おそらくそれぞれの圧電素子間で発生する信号が干渉することが原因ではないかと推察される。
本発明による別の態様として、導電性繊維および圧電性繊維が電気的接続を提供するように略同一平面上に配置されている圧電単位を含む、電気信号を出力または入力とするトランスデューサーであって、該圧電性繊維の撚り数が1mあたり1000回以下であることを特徴とするトランスデューサーを提供することにより、柔軟性に富む布帛状のトランスデューサーを得ることができる。本態様によるトランスデューサーは、フレキシブルであるため、ハンカチのような折り畳み可能な布帛状、さらには着衣状など布帛で実現できるあらゆる形状の電気信号を入出力とするトランスデューサーを実現することができる。
より具体的には、本態様によるトランスデューサーにおいて、圧電性繊維の撚り数は1mあたり1000回以下、好ましくは500回以下、さらに好ましくは300回以下であることが好ましい。圧電性能の向上という観点のみからは、撚りをかけずに(すなわち撚り数0で)製織を行うことが理想的である。特定の理論に束縛されることを意図するものではないが、圧電性繊維の変位による分極は糸の配向方向に対して一定方向に発生するため、撚り数を増大させるほど糸の配向方向がより斜めになり、分極方向が一定でなくなることが圧電性低下の原因であると推察される。一方で、撚り数を増大させることにより糸の強度を高め、製織、製編時の糸切れや毛羽発生を抑制することが一般に行われる。したがって、本態様の具体的適用に際しては、対象物に要求される機械特性と圧電性能とを比較衡量しながら、撚り数の最適化を図ることとなる。
このような圧電性高分子を圧電性繊維とするためには、高分子を繊維化するための公知の手法を、本発明の効果を奏する限りいずれも採用することができ、圧電性高分子を押し出し成型して繊維化する手法、圧電性高分子を溶融紡糸して繊維化する手法、圧電性高分子を乾式あるいは湿式紡糸により繊維化する手法、圧電性高分子を静電紡糸により繊維化する手法等を採用することができる。これらの紡糸条件は、採用する圧電性高分子に応じて公知の手法を適用すればよく、通常は工業的に生産の容易な溶融紡糸法を採用すればよい。なお、圧電性高分子がポリ乳酸である場合には、一軸延伸配向し、かつ結晶を含むとより大きな圧電性を示すことから、繊維は延伸することが好ましい。
本発明による別の態様として、導電性繊維および圧電性繊維が電気的接続を提供するように略同一平面上に配置されている圧電単位を含む、電気信号を出力または入力とする布帛状のトランスデューサーであって、
下記式で算出されるカバーファクターCFが500以上であることを特徴とするトランスデューサー:
CF=(DWp/1.1)1/2×MWp+(DWf/1.1)1/2×MWf
(上式中、DWpは経糸総繊度(dtex)、MWpは経糸織密度(本/2.54cm)、DWfは緯糸総繊度(dtex)、MWfは緯糸織密度(本/2.54cm)である。)、または
下記式で算出される被覆面積率が0.40以上であることを特徴とするトランスデューサー:
被覆面積率=D1×N1+D2×N2−D1×N1×D2×N2
(上式中、D1は経糸の直径(mm)、N1は経糸密度(本/mm)、D2は緯糸の直径(mm)、N2は緯糸密度(本/mm)である。)
を提供することにより、柔軟性に富む布帛状のトランスデューサーを得ることができる。本態様によるトランスデューサーは、フレキシブルであるため、ハンカチのような折り畳み可能な布帛状、さらには着衣状など布帛で実現できるあらゆる形状の電気信号を入出力とするトランスデューサーを実現することができる。
より具体的には、本態様によるトランスデューサーにおいて、カバーファクターを上げることによって、圧電性繊維をより強固に固定化できるため、布帛の変位による圧電信号を安定かつ確実にとらえることができる。一方カバーファクターが500未満であると、圧電性繊維の固定が甘くなり動きやすくなることによって、得られる信号が不安定化する。ゆえにセンサーとして用いた場合安定した信号が得られなくなる。さらにカバーファクターが低くなると布帛の耐久性も低下する。また本態様によるトランスデューサーにおいて、被覆面積率を上げることによって、圧電性繊維をより強固に固定化できるため、布帛の変位による圧電信号を安定かつ確実にとらえることができる。一方被覆面積率が0.40未満であると、圧電性繊維の固定が甘くなり動きやすくなることによって、得られる信号が不安定化する。ゆえにセンサーとして用いた場合安定した信号が得られなくなる。さらに被覆面積率が低くなると布帛の耐久性も低下する。
被覆面積率の算出は、以下の方法で行うことが出来る。布地を不自然な張力やしわのない自然な状態とし、25.4mmの区間で経糸および緯糸の本数を数え、25.4で割って経糸密度N1(本/mm)および緯糸密度N2(本/mm)を5か所で算出し、平均値を採用する。また、布地を不自然な張力やしわのない自然な状態でカバーガラスに挟んで水平に置き、顕微鏡で上方から縦3mm横3mmの面積を5か所観察する。それぞれの観察箇所で、経糸および緯糸の太さをそれぞれ10か所観察し、経糸および緯糸それぞれ合計50回の測定値を平均し経糸の直径D1(mm)および緯糸の直径D2(mm)とする。経糸に2種類以上の異なる繊維を使用する場合の経糸の直径は、使用する各繊維について5か所×各10回の測定値を平均した値を各繊維の直径とし、各繊維の直径に、完全組織において使用する本数の割合を掛けて合計した加重平均値を経糸の直径とする。緯糸に2種類以上の異なる繊維を使用する場合の緯糸の直径も、同様に加重平均値を算出して緯糸の直径とする。以上で求められた経糸密度N1(本/mm)、緯糸密度N2(本/mm)、経糸の直径D1(mm)および緯糸の直径D2(mm)から、下記式で被覆面積率を算出する。
被覆面積率=D1×N1+D2×N2−D1×N1×D2×N2
本態様による圧電素子は、50回洗濯後に圧電単位から出力される電気信号が洗濯前の70%以上であり、かつマーチンデール法による100回摩擦試験後に圧電単位から出力される電気信号が洗濯前の70%以上である。さらにファブリックの圧電単位上を指で1000回こすり、1回目と1000回目に検出される電位差の低下も抑えることができる。
本発明による別の態様として、導電性繊維および圧電性繊維が電気的接続を提供するように略同一平面上に配置されている圧電単位を含む、電気信号を出力または入力とする布帛状のトランスデューサーであって、下記式で算出されるカバーファクターCFが500以上であり、かつ、撥水処理が施されていることを特徴とするトランスデューサー:
CF=(DWp/1.1)1/2×MWp+(DWf/1.1)1/2×MWf
(上式中、DWpは経糸総繊度(dtex)、MWpは経糸織密度(本/2.54cm)、DWfは緯糸総繊度(dtex)、MWfは緯糸織密度(本/2.54cm)である。)を提供することにより、柔軟性に富む布帛状のトランスデューサーを得ることができる。本態様によるトランスデューサーは、フレキシブルであるため、ハンカチのような折り畳み可能な布帛状、さらには着衣状など布帛で実現できるあらゆる形状の電気信号を入出力とするトランスデューサーを実現することができる。
より具体的には、本態様によるトランスデューサーにおいて、カバーファクターを上げることによって、圧電性繊維をより強固に固定化できるため、布帛の変位による圧電信号を安定かつ確実にとらえることができる。一方カバーファクターが500未満であると、圧電性繊維の固定が甘くなり動きやすくなることによって、得られる信号が不安定化する。ゆえにセンサーとして用いた場合安定した信号が得られなくなる。さらにカバーファクターが低くなると布帛の耐久性も低下する。さらに本態様によるトランスデューサーは、JIS L0844:2011「洗濯に対する染色堅ろう度試験方法A−1法」に準拠する50回洗濯耐久試験後に出力される電気信号強度が、洗濯耐久試験前の70%以上である。また、本発明のトランスデューサーの撥水性はJIS L1092:2009 スプレー法の4級以上である。
本発明による別の態様として、導電性繊維および圧電性繊維が電気的接続を提供するように略同一平面上に配置されている圧電単位を含む、電気信号を出力または入力とするトランスデューサーであって、該圧電単位中の該導電性繊維が他の圧電単位中の導電性繊維および/または圧電性繊維に対して電気的接続しないように配置されており、かつ、静菌活性値が2.2以上であることを特徴とする、抗菌性トランスデューサーを提供することにより、柔軟性に富む布帛状のトランスデューサーを得ることができる。本発明のトランスデューサーは、フレキシブルであるため、ハンカチのような折り畳み可能な布帛状、さらには着衣状など布帛で実現できるあらゆる形状の電気信号を入出力とするトランスデューサーを実現することができる。
より具体的には、本態様によるトランスデューサーにおいて、圧電単位として用いられる導電性繊維とは接触しない繊維が存在する。この繊維には任意の繊維を用いることが可能であるが、その全本数のうち少なくとも50%以上、好ましくは70%以上、さらに好ましくは90%が圧電性繊維である必要がある。これによって、圧電性能のみならず、抗菌性をも付与することができる。なお導電性繊維の一部が圧電単位として用いられない場合もあるが、当然ながらここでいう「圧電単位として用いられる導電性繊維」としては扱われない。
本態様による圧電単位は、絶縁性繊維を含み、該絶縁性繊維は、圧電単位中の導電性繊維が、他の導電性繊維並びに圧電性繊維に接しないように導電性繊維と圧電性繊維の間に配されることがある。この際、絶縁性繊維は布帛の柔軟性を向上する目的で伸縮性のある素材、形状を有する繊維を用いることができる。また、圧電単位中の導電性繊維が、他の圧電単位中の導電性繊維並びに圧電性繊維に接しないように配されることもある。圧電単位にこのように絶縁性繊維を配置することで、圧電単位を複数組み合わせた場合でも導電性繊維が接触することがなく、トランスデューサーとしての性能を向上させることが可能である。
本発明による別の態様として、導電性繊維および圧電性繊維が電気的接続を提供するように略同一平面上に配置されている圧電単位を含むトランスデューサーであって、該圧電単位中の該導電性繊維が他の圧電単位中の導電性繊維および/または圧電性繊維に対して電気的接続しないように配置され、トランスデューサーの静菌活性値が2.2以上の抗菌性を有するトランスデューサーを使用した寝具を提供することにより、柔軟性に富み、かつ抗菌性に優れた布帛状のトランスデューサーを得ることができる。本態様によるトランスデューサーは、フレキシブルであるため、ハンカチのような折り畳み可能な布帛状、さらには着衣状など布帛で実現できるあらゆる形状の電気信号を入出力とするトランスデューサーを実現することができる。さらには、そのトランスデューサーからの信号を用いたデバイスおよび/または電気信号を入力することにより機能するデバイスを実現することができる。
本態様によるトランスデューサーを備えるデバイスをシーツや枕・枕カバーやベッドや布団・布団カバーなどの寝具に組み込むことは非常に有用である。例えば、介護施設においては、患者の徘徊を防止するため、ベッド上の患者の在、不在をセンシングすることが行われており、本態様によるトランスデューサーを使用したシーツや枕などでこれを行うことは非常に有用である。また昨今の健康志向の高まりによって、日々の睡眠の状態を睡眠中の体の動きをセンシングすることでモニタリングする商品も発売されているが、本発明のシーツや枕やベッドはこの用途にも適用できる。ただし、本態様によるトランスデューサーを含むデバイスを備える寝具は、デバイスが寝具である構成を含む。
本態様によるトランスデューサーが優れた抗菌性を有していることも、シーツや枕・枕カバーやベッドや布団・布団カバーなどの寝具に組み込むことに非常に適している。寝具は人体に接触するため使用により黄色ブドウ球菌のようないわゆる悪玉菌が付着し、汗の成分や垢を栄養分として布帛上で増殖していくが、増殖の過程で悪臭を放ちシーツや枕などの悪臭の原因となる。また黄色ブドウ球菌はアトピー性皮膚炎などの炎症の原因としても疑われている。本発明のトランスデューサーは抗菌性に優れているため、黄色ブドウ球菌などの菌の増殖を抑え、それによって悪臭の発生を抑えることができる。
本態様によるトランスデューサー布帛は優れた洗濯耐久性も有している。また本態様によるトランスデューサーは、布帛に抗菌性加工を施すといった表面加工ではなく、トランスデューサーそのものが高い抗菌性を有していることで、洗濯を繰り返してもその抗菌性が低下することはない。
さらには、本態様によるセンサーは布帛状であるため、伸縮性と柔軟性があるので、あらゆる構造物の全体あるいは一部の表面に貼付あるいは被覆することにより表面感圧センサー、形状変化センサーとして用いることができる。また、本態様によるトランスデューサーは電気信号を出力として取り出すことができるため、この電気信号を他のデバイスを動かすための電力源あるいは蓄電するなど、発電素子として用いることもできる。このようなデバイスをシーツや枕などの寝具に組み込むことで、シーツや枕などの寝具に組み込まれた他のデバイスを動かすための電力源とすることができ、あるいはシーツや枕などの寝具に組み込まれた蓄電装置に蓄電することができる。
本発明による別の態様として、導電性繊維および圧電性繊維が電気的接続を提供するように略同一平面上に配置されている圧電単位を含むトランスデューサーであって、該圧電単位中の前記導電性繊維が他の圧電単位中の導電性繊維および/または圧電性繊維に対して電気的接続しないように配置され、該トランスデューサーの静菌活性値が2.2以上の抗菌性を有するトランスデューサーを用いた靴のインソールを提供することにより、柔軟性に富み、かつ抗菌性に優れた布帛状のトランスデューサーを得ることができる。本態様によるトランスデューサーは、フレキシブルであるため、ハンカチのような折り畳み可能な布帛状、さらには着衣状など布帛で実現できるあらゆる形状の電気信号を入出力とするトランスデューサーを実現することができる。さらには、そのトランスデューサーからの信号を用いたデバイスおよび/または電気信号を入力することにより機能するデバイスを実現することができる。
本態様によるトランスデューサーを用いたデバイスを靴のインソールに組み込むことは非常に有用である。例えば、スポーツ用途においてはアスリートの体動を靴底のインソールによって検知し、その動きを解析することが求められている。またリハビリテーション用途においても、靴底のインソールをセンサーとし、患者の回復をモニタリングすることが求められているが、本態様によるトランスデューサーを含むデバイスが組み込まれたインソールはこの用途にも適用できる。ただし、本態様によるトランスデューサーを含むデバイスを備えるインソールは、デバイスがインソールである構成を含む。
本態様によるトランスデューサーが優れた抗菌性を有していることも、インソールに組み込むことに非常に適している。インソールは人体に接触するため使用により黄色ブドウ球菌のようないわゆる悪玉菌が付着し、汗の成分や垢を栄養分として布帛上で増殖していくが、増殖の過程で悪臭を放ち靴の悪臭の原因となる。また黄色ブドウ球菌はアトピー性皮膚炎などの炎症の原因としても疑われている。本発明のトランスデューサーは抗菌性に優れているため、黄色ブドウ球菌などの菌の増殖を抑え、それによって悪臭の発生を抑えることができる。
本態様によるトランスデューサーの布帛は優れた洗濯耐久性も有している。また本態様によるトランスデューサーは、布帛に抗菌性加工を施すといった表面加工ではなく、トランスデューサーそのものが高い抗菌性を有していることで、洗濯を繰り返してもその抗菌性が低下することはない。
さらには、本態様によるセンサーは布帛状であるため、伸縮性と柔軟性があるので、あらゆる構造物の全体あるいは一部の表面に貼付あるいは被覆することにより表面感圧センサー、形状変化センサーとして用いることができる。また、本態様によるトランスデューサーは電気信号を出力として取り出すことができるため、この電気信号を他のデバイスを動かすための電力源あるいは蓄電するなど、発電素子として用いることもできる。このようなデバイスを靴のインソールに組み込むことで、靴のインソールに組み込まれた他のデバイスを動かすための電力源とすることができ、あるいは靴のインソールに組み込まれた蓄電装置に蓄電することができる。
本発明による別の態様として、導電性繊維および圧電性繊維が電気的接続を提供するように略同一平面上に配置されている圧電単位と、互いに離間した複数の導電性繊維からなる静電容量単位とを備えるトランスデューサーを提供することにより、柔軟性に富んだ布帛状のトランスデューサーを得ることができる。本発明のトランスデューサーは、フレキシブルであるため、ハンカチのような折り畳み可能な布帛状、さらには着衣状など布帛で実現できるあらゆる形状の電気信号を入出力とするトランスデューサーを実現することができる。さらには、そのトランスデューサーからの信号を用いたデバイスおよび/または電気信号を入力することにより機能するデバイスを実現することができる。
より具体的には、本態様によるトランスデューサーにおいては、圧電単位のほかに静電容量単位を含む。ここでいう静電容量単位とは、二本の導電性繊維を互いに平行に離間するように配置して、導電性繊維間に電圧をかけた状態にしておき、導電性繊維間の距離が変わり、静電容量が変化することで生じる抵抗値や電気量などを測定することで、布帛にかかる圧力や変位を検出するものである。二本の導電性繊維を互いに平行に離間させる方法としては、例えば、二本の導電性繊維の間に絶縁性繊維を介在させる方法や、二本の導電性繊維の間に誘電体を挟む方法や、織り方や編み方により二本の導電性繊維の間に空間を設ける方法などが挙げられる。また、検出には、一つの静電容量単位からの信号を用いてもよいし、直列および/または並列に接続された複数の静電容量単位からの信号を用いてもよい。
圧電単位からの信号が変位の瞬間のみに発生するのに対し、静電容量単位からの信号は変位している間常時信号が得られ、また静電容量単位からの信号は比較的大きいという特徴がある。一方で静電容量単位は静電気の影響を受けやすく、例えばセンサーとして用いた場合、誤作動を起こす可能性がある。したがって、圧電単位と静電容量単位の双方を有する布帛構造とし、双方からの信号を解析することで、より詳細な動きの解析が可能となる。例えば、圧電単位からは布帛の具体的な動き、すなわち曲げやねじりといった動きの種類とその変位量を検出し、一方で静電容量単位からはその変位が継続しているか否かを検出する、という動きの解析が可能である。または、布帛の変位量を静電容量単位からの信号で測定する際は、得られた信号のうち圧電素子からの信号が同時に検出されたときの信号のみをとりだすことで、静電容量単位からの誤作動を抑制する、などの使い方が考えられる。このとき、布帛の一つの動きに対して圧電単位および静電容量単位の双方からの信号を解析に用いることから、布帛の一つの動きに対して同じような動きになるように圧電単位と静電容量単位とは互い近くに配置されていることが好ましい。
以下、第1発明を実施例によりさらに具体的に記載するが、本発明はこれによって何らの限定を受けるものではない。
圧電素子用の布帛は以下の方法で製造した。
(ポリ乳酸の製造)
実施例において用いたポリ乳酸は以下の方法で製造した。
L−ラクチド((株)武蔵野化学研究所製、光学純度100%)100重量部に対し、オクチル酸スズを0.005重量部加え、窒素雰囲気下、撹拌翼のついた反応機にて180℃で2時間反応させ、オクチル酸スズに対し1.2倍当量のリン酸を添加しその後、13.3Paで残存するラクチドを減圧除去し、チップ化し、ポリ−L−乳酸(PLLA1)を得た。得られたPLLA1の重量平均分子量は15.2万、ガラス転移点(Tg)は55℃、融点は175℃であった。
(圧電性繊維)
PLLA1を240℃にて溶融させ24ホールのキャップから20g/minで吐出し、887m/minにて引き取った。この未延伸マルチフィラメント糸を80℃、2.3倍に延伸し、100℃で熱固定処理することにより84dTex/24filamentのマルチフィラメント一軸延伸糸を得、このマルチフィラメント一軸延伸糸を8束まとめて、圧電性繊維100Aとした。
(導電性繊維)
三ツ冨士繊維工業製の銀メッキナイロン 品名『AGposs』を導電性繊維100Bとして使用した。この繊維の体積抵抗率は1.1×10−3Ω・cmであった。
圧電素子の評価は以下の方法で行った。
(圧電素子の評価)
上記の導電性繊維100Bおよび圧電性繊維100Aで形成した被覆繊維1003を含む組紐状圧電素子の被覆繊維1003を長さ5cmに切り、被覆繊維1003の一端の表面の圧電性繊維100Aを除去して、導電性繊維100Bの端部を露出させた。そして、図3に示すように、露出された導電性繊維100Bの端部を、評価用配線1002を介してオシロスコープ1001に接続し、被覆繊維1003の他端の圧電性繊維100Aを被測定物である測定サンプル1004の表面に接触させつつ表面に平行に走査することにより圧電素子の圧電特性の評価を行った。
ただし、測定サンプル1004は、縦1cm×横5cm×厚さ0.5cmの平坦な板104aの上に、両端を1cmずつ空けた上で、縦1cm×横0.5cm×厚さ0.5cmの板104bを3箇所、等間隔に貼ったものを用意した。
また、圧電特性の評価は、圧電素子の被覆繊維1003の端部が測定サンプル1004の表面から約0.5cmの高さ位置にくるような一定の力で、測定サンプル1004の表面を約0.5m/sの速度で擦ることで行った。電圧評価のオシロスコープ1001としては横河電機(株)製のデジタルオシロスコープDL6000シリーズ商品名『DL6000』を用いた。
また、この圧電素子で測定サンプル1004の表面を2000回擦ったのち、同様の電圧評価をした。
(実施例1)
導電性繊維100Bに、8本の圧電性繊維100Aを巻きながら編んでいくことで、長さ10mの丸打組物の組紐状被覆繊維1003を得た。ここで、被覆繊維1003における導電性繊維100Bである銀メッキナイロン繊維は体積抵抗率は1.1×10−3Ω・cmであった。その後、被覆繊維1003表面の圧電性繊維100Aの一端を除去し、導電性繊維100Bを剥き出しにし、圧電素子を得た。この圧電素子を、図3に示すような構成で圧電特性の評価を行った。
測定サンプル1004上をこの圧電素子でなぞったところ、ベースの板104aの部分と2枚の板104a、104bが重なった部分とで、互いに異なる電圧が確認できた。
また、測定サンプル1004上を2000回擦ったのち、この圧電素子の圧電特性の評価をしたが、その電気信号の大きさは2000回擦る前後でほぼ変わらなかった。
本発明の圧電素子は、フレキシブルでかつ圧電素子の表面を指などで擦るだけで、圧電性高分子から発生する電気出力を十分に取り出すことが可能であり、擦り等で発生する応力やその応力の位置を検出できるフレキシブルなタッチセンサーなどとして機能させることができるため、タッチセンサーとして好適に利用できる。そして、この圧電素子をスマートフォンなどの筐体に組み込むことで、片手で操作が可能なスマートフォンなどを実現することができる。
また、この圧電素子はフレキシブルな繊維状であるので、織りや編みによって布状とすることも可能で、それによりハンカチのような折り畳み可能な布状のタッチパネルも実現することが可能である。
さらに、擦るだけで電気出力を取り出すことが可能であるので、マイクロ発電機などへの適用も可能である。
また、この紐状圧電素子を接触式プローブとして使用すると、接触式でありながら、測定対象の損傷を最小限に抑えながら測定できるため、例えば、人間の顔のような今まで適用が難しかった分野の測定にも使用できる。
以下、第2発明を実施例によりさらに具体的に記載するが、本発明はこれによって何らの限定を受けるものではない。
圧電素子用の布帛は以下の方法で製造した。
(ポリ乳酸の製造)
実施例において用いたポリ乳酸は以下の方法で製造した。
L−ラクチド((株)武蔵野化学研究所製、光学純度100%)100質量部に対し、オクチル酸スズを0.005質量部加え、窒素雰囲気下、撹拌翼のついた反応機にて180℃で2時間反応させ、オクチル酸スズに対し1.2倍当量のリン酸を添加しその後、13.3Paで残存するラクチドを減圧除去し、チップ化し、ポリ−L−乳酸(PLLA1)を得た。得られたPLLA1の質量平均分子量は15.2万、ガラス転移点(Tg)は55℃、融点は175℃であった。
(圧電性繊維)
240℃にて溶融させたPLLA1を24ホールのキャップから20g/minで吐出し、887m/minにて引き取った。この未延伸マルチフィラメント糸を80℃、2.3倍に延伸し、100℃で熱固定処理することにより84dTex/24フィラメントのマルチフィラメント一軸延伸糸を得た。
(導電性繊維)
ミツフジ(株)製の銀メッキナイロン、品名『AGposs』100d34fを導電性繊維200Bとして使用した。この繊維の体積抵抗率は1.1×10−3Ω・cmであった。
(絶縁性繊維)
280℃にて溶融させたポリエチレンテレフタレートを24ホールのキャップから45g/minで吐出し、800m/minにて引き取った。この未延伸糸を80℃、2.5倍に延伸し、180℃で熱固定処理することによりすることにより84dTex/24フィラメントのマルチフィラメント延伸糸を得、これを絶縁性繊維とした。
(組紐状圧電素子)
実施例2の試料として、図6に示すように、上記の導電性繊維200Bを芯糸とし、上記の圧電性繊維200A8本を芯糸の周りに組紐状に巻きつけて、八打組紐とし、組紐状圧電素子2001を形成した。ここで、導電性繊維200Bの繊維軸CLに対する圧電性繊維200Aの巻きつけ角度αは45°とした。
(製織)
実施例3の試料として、図7に示すように経糸に絶縁性繊維2007および一本の組紐状圧電素子2001(実施例2の試料と同じ)を配し、緯糸に絶縁性繊維2007および導電性繊維2008を交互に配して平織物を作製し、布帛状圧電素子2005とした。
比較例1の試料として、図11に示すように絶縁性繊維200Cを経糸に配し、絶縁性繊維200C、圧電性繊維200Aおよび導電性繊維200Bを緯糸に配した平織物2100を作製した。
(性能評価及び評価結果)
組紐状圧電素子2001、布帛状圧電素子2005および平織物2100の性能評価及び評価結果は以下のとおりである。
(実施例2)
組紐状圧電素子2001中の導電性繊維200Bを信号線としてオシロスコープ(横河電機(株)製デジタルオシロスコープDL6000シリーズ商品名『DL6000』)に配線を介して1000倍増幅回路を経由して接続した。組紐状圧電素子2001を接地(アース)された金属金網で保護された電磁波シールドボックス内で90度折り曲げた。
その結果、組紐状圧電素子2001からの出力として、オシロスコープにより約100mVの電位差が検出され、組紐状圧電素子2001の変形により十分な大きさの電気信号を検出できることが確認された。
(実施例3)
布帛状圧電素子2005の組紐状圧電素子2001中の導電性繊維200Bを信号線としてオシロスコープ(横河電機(株)製デジタルオシロスコープDL6000シリーズ商品名『DL6000』)に配線を介して1000倍増幅回路を経由して接続した。また、布帛状圧電素子2005の緯糸の導電性繊維2008を接地(アース)線として接地した。この状態で、組紐状圧電素子2001に対して垂直な方向に布帛状圧電素子2005を90度折り曲げた。
その結果、布帛状圧電素子2005の組紐状圧電素子2001からの出力として、オシロスコープによりノイズのほとんどない電気信号が得られ、約100mVの電位差が検出された。以上の結果から、布帛状圧電素子2005の変形により十分な大きさの電気信号を低ノイズで検出できることが確認された。
(比較例1)
平織物2100中の導電性繊維200Bを信号線としてオシロスコープ(横河電機(株)製デジタルオシロスコープDL6000シリーズ商品名『DL6000』)に配線を介して1000倍増幅回路を経由して接続した。
その結果、導電性繊維200Bからの出力として、約30mVの電位差が検出されたが、S/Nの小さい信号であった。平織物2100に組紐状圧電素子2001が組み込まれていないためと考えられる。
以下、第3発明を実施例によりさらに具体的に記載するが、本発明はこれによって何らの限定を受けるものではない。
圧電素子用の布帛は以下の方法で製造した。
(ポリ乳酸の製造)
実施例において用いたポリ乳酸は以下の方法で製造した。
L−ラクチド((株)武蔵野化学研究所製、光学純度100%)100質量部に対し、オクチル酸スズを0.005質量部加え、窒素雰囲気下、撹拌翼のついた反応機にて180℃で2時間反応させ、オクチル酸スズに対し1.2倍当量のリン酸を添加しその後、13.3Paで残存するラクチドを減圧除去し、チップ化し、ポリ−L−乳酸(PLLA1)を得た。得られたPLLA1の質量平均分子量は15.2万、ガラス転移点(Tg)は55℃、融点は175℃であった。
(圧電性繊維)
240℃にて溶融させたPLLA1を24ホールのキャップから20g/minで吐出し、887m/minにて引き取った。この未延伸マルチフィラメント糸を80℃、2.3倍に延伸し、100℃で熱固定処理することにより84dTex/24フィラメントのマルチフィラメント一軸延伸糸を得た。
(導電性繊維)
ミツフジ(株)製の銀メッキナイロン、品名『AGposs』100d34fを導電性繊維300B、導電性繊維3006および導電性繊維3010として使用した。この繊維の体積抵抗率は1.1×10-3Ω・cmであった。
(絶縁性繊維)
280℃にて溶融させたポリエチレンテレフタレートを24ホールのキャップから45g/minで吐出し、800m/minにて引き取った。この未延伸糸を80℃、2.5倍に延伸し、180℃で熱固定処理することによりすることにより84dTex/24フィラメントのマルチフィラメント延伸糸を得、これを絶縁性繊維300Cおよび絶縁性繊維3009とした。
(組紐状圧電素子)
実施例4の試料として、図12に示すように、上記の導電性繊維300Bを芯糸とし、上記の圧電性繊維300A8本を芯糸の周りに組紐状に巻きつけて、八打組紐とし、更に導電性繊維3006を鞘部の圧電性繊維300Aの周りに組紐状に巻き付けて導電層3004とし、組紐状圧電素子3001を形成した。ここで、導電性繊維300Bの繊維軸CLに対する圧電性繊維300Aの巻きつけ角度αは45°とした。実施例4の試料の導電層3004の被覆率は100%であった。
実施例5の試料として、図12に示すように、上記の導電性繊維300Bを芯糸とし、上記の圧電性繊維300A8本を芯糸の周りに組紐状に巻きつけて、八打組紐とし、更に4本の絶縁性繊維3009を右巻き、1本の導電性繊維3006および3本の絶縁性繊維3009を左巻きに鞘部の圧電性繊維300Aの周りに巻き付けて八打組紐状の導電層3004とし、組紐状圧電素子3001を形成した。ここで、導電性繊維300Bの繊維軸CLに対する圧電性繊維300Aの巻きつけ角度αは45°とした。また、実施例5の試料の導電層3004の被覆率は25%であった。
比較例2の試料として、図12に示すように、上記の導電性繊維300Bを芯糸とし、上記の圧電性繊維300Aを芯糸の周りに組紐状に巻きつけ、組紐状圧電素子3001を形成した。ここで、導電性繊維300Bの繊維軸CLに対する圧電性繊維300Aの巻きつけ角度αは45°とした。
(製織)
実施例6の試料として、図13に示すように経糸に絶縁性繊維3009および一本の組紐状圧電素子3001(実施例4の試料と同じ)を配し、緯糸に絶縁性繊維3009および導電性繊維3010を交互に配して平織物を作製し、布帛状圧電素子3007とした。
比較例3の試料として、図19に示すように絶縁性繊維300Cを経糸に配し、絶縁性繊維300C、圧電性繊維300Aおよび導電性繊維300Bを緯糸に配した平織物3100を作製した。
(性能評価及び評価結果)
組紐状圧電素子3001、布帛状圧電素子3007および平織物3100の性能評価及び評価結果は以下のとおりである。
(実施例4)
組紐状圧電素子3001中の導電性繊維300Bを信号線としてオシロスコープ(横河電機(株)製デジタルオシロスコープDL6000シリーズ商品名『DL6000』)に配線を介して1000倍増幅回路を経由して接続し、組紐状圧電素子3001の導電層3004を接地(アース)した。組紐状圧電素子3001を90度折り曲げた。
その結果、組紐状圧電素子3001からの出力として、オシロスコープにより約100mVの電位差が検出され、組紐状圧電素子3001の変形により十分な大きさの電気信号を検出できることが確認された。また、静置下でのノイズ信号は20mVであり、S/N比は5となり、十分にノイズ信号が抑制されていることがわかった。
(実施例5)
組紐状圧電素子3001中の導電性繊維300Bを信号線としてオシロスコープ(横河電機(株)製デジタルオシロスコープDL6000シリーズ商品名『DL6000』)に配線を介して1000倍増幅回路を経由して接続し、組紐状圧電素子3001の導電層3004を接地(アース)した。組紐状圧電素子3001を90度折り曲げた。
その結果、組紐状圧電素子3001からの出力として、オシロスコープにより約100mVの電位差が検出され、組紐状圧電素子3001の変形により十分な大きさの電気信号を検出できることが確認された。また、静置下でのノイズ信号は20mVであり、S/N比は5となり、十分にノイズ信号が抑制されていることがわかった。
(実施例6)
布帛状圧電素子3007の組紐状圧電素子3001中の導電性繊維3003を信号線としてオシロスコープ(横河電機(株)製デジタルオシロスコープDL6000シリーズ商品名『DL6000』)に配線を介して1000倍増幅回路を経由して接続した。また、布帛状圧電素子3007の組紐状圧電素子3001中の導電層3004を接地(アース)線として接地した。この状態で、組紐状圧電素子3001に対して垂直な方向に布帛状圧電素子3007を90度折り曲げた。
その結果、布帛状圧電素子3007の組紐状圧電素子3001からの出力として、オシロスコープによりノイズのほとんどない電気信号が得られ、約100mVの電位差が検出され、布帛状圧電素子3007の変形により十分な大きさの電気信号を低ノイズで検出できることが確認された。また、静置下でのノイズ信号は20mVであり、S/N比は5となり、十分にノイズ信号が抑制されていることがわかった。
(比較例2)
組紐状圧電素子3001中の導電性繊維300Bを信号線としてオシロスコープ(横河電機(株)製デジタルオシロスコープDL6000シリーズ商品名『DL6000』)に配線を介して1000倍増幅回路を経由して接続したところ、静置下でのノイズ信号は1000mVであった。組紐状圧電素子3001を90度折り曲げたがノイズ信号が大きく、折り曲げに由来する電気信号を判別することができなかった。
(比較例3)
平織物3100中の導電性繊維300Bを信号線としてオシロスコープ(横河電機(株)製デジタルオシロスコープDL6000シリーズ商品名『DL6000』)に配線を介して1000倍増幅回路を経由して接続したところ、静置下でのノイズ信号は1000mVであった。平織物3100を90度折り曲げたがノイズ信号が大きく、折り曲げに由来する電気信号を判別することができなかった。
以下、第5発明を実施例によりさらに具体的に記載するが、本発明はこれによって何らの限定を受けるものではない。
各物性は以下の方法により測定した。
(1)ポリ乳酸の光学純度:
布帛を構成する1本(マルチフィラメントの場合は1束)のポリ乳酸繊維0.1gを採取し、5モル/リットル濃度の水酸化ナトリウム水溶液1.0mL/メタノール1.0mLを加え、65℃に設定した水浴振とう器にセットして、ポリ乳酸が均一溶液になるまで30分程度加水分解を行い、さらに加水分解が完了した溶液に0.25モル/リットルの硫酸を加え中和し、その分解溶液を0.1mL採取して高速液体クロマトグラフィー(HPLC)移動相溶液3mLにより希釈し、メンブレンフィルター(0.45μm)によりろ過した。この調整溶液のHPLC測定を行い、L−乳酸モノマーとD−乳酸モノマーの比率を定量した。1本のポリ乳酸繊維が0.1gに満たない場合は、採取可能な量に合わせ他の溶液の使用量を調整し、HPLC測定に供するサンプル溶液のポリ乳酸濃度が上記と同等から100分の1の範囲になるようにした。
<HPLC測定条件>
カラム:住化分析センター社製「スミキラル(登録商標)」OA−5000(4.6m
mφ×150mm)、
移動相:1.0ミリモル/リットルの硫酸銅水溶液
移動相流量:1.0ミリリットル/分
検出器:UV検出器(波長254nm)
注入量:100マイクロリットル
L乳酸モノマーに由来するピーク面積をSLLAとし、D−乳酸モノマーに由来するピーク面積をSDLAとすると、SLLAおよびSDLAはL−乳酸モノマーのモル濃度MLLAおよびD−乳酸モノマーのモル濃度MDLAにそれぞれ比例するため、SLLAとSDLAのうち大きい方の値をSMLAとし、光学純度は下記式3で計算した。
光学純度(%) = SMLA÷(SLLA+SDLA)×100 (3)
(2)シート抵抗率:
日置電機株式会社製デジタルマルチメータDT4222を用い、クリップ平行電極幅10cm、電極間距離10cmにおける抵抗率を測定しシート抵抗率とした。
(ポリ乳酸の製造)
実施例において用いたポリ乳酸は以下の方法で製造した。
L−ラクチド((株)武蔵野化学研究所製、光学純度100%)100重量部に対し、オクチル酸スズを0.005重量部加え、窒素雰囲気下、撹拌翼のついた反応機にて180℃で2時間反応させ、オクチル酸スズに対し1.2倍当量のリン酸を添加しその後、13.3Paで残存するラクチドを減圧除去し、チップ化し、ポリ−L−乳酸(PLLA1)を得た。得られたPLLA1の重量平均分子量は15.2万、ガラス転移点(Tg)は55℃、融点は175℃であった。
(圧電性繊維)
230℃にて溶融させたPLLA1を24ホールのキャップから16.8g/minで吐出し、1300m/minにて引き取り、引き続き80℃、1.54倍に延伸し、125℃で熱固定処理することにより84dTex/24filamentのマルチフィラメント圧電性繊維5001を得た。
(導電性繊維)
体積抵抗率が1.1×10−3Ω・cmである三ツ冨士繊維工業製の銀メッキナイロン 品名『AGposs』を導電性繊維5002とした。
(絶縁性繊維)
280℃にて溶融させたポリエチレンテレフタレートを24ホールのキャップから22g/minで吐出し、800m/minにて引き取った。この未延伸糸を80℃、2.5倍に延伸し、180℃で熱固定処理することにより84dTex/24フィラメントの絶縁性繊維5003を得た。
実施例7
図29に示すように経糸に絶縁性繊維5003を配し、緯糸に圧電性繊維5001、導電性繊維5002を交互に配した平織物5100を作製した。また、絶縁性繊維5003のみで平織物を作製し、シート抵抗率が60×10Ω/□(Ω/sq.)以上である平織物5200を得た。さらに、平織物5200の経糸および緯糸の10本に1本を導電性繊維5002に変えた平織物5300を得た。この平織物5300のシート抵抗率は3.2Ω/□(Ω/sq.)であった。
平織物5100、平織物5200、平織物5300の順番で積層し、絶縁性繊維5003により縫い合わせ積層布帛を得た。
ポリエステルシャツとナイロンジャンバーを重ね着した肘部に、積層布帛の平織物5100が表面となるよう巻付け固定した。
平織物5100中の圧電性繊維5001を挟む一対の導電性繊維5002を信号線としてオシロスコープ(横河電機(株)製デジタルオシロスコープDL6000シリーズ商品名『DL6000』)に接続し、当該信号線を繋いだ状態で肘を曲げたところ、腕の動きに合わせて電圧信号が得られた。
比較例4
ポリエステルシャツとナイロンジャンバーを重ね着した肘部に平織物5100を巻付け固定した。
平織物5100中の圧電性繊維5001を挟む一対の導電性繊維5002を信号線としてオシロスコープ(横河電機(株)製デジタルオシロスコープDL6000シリーズ商品名『DL6000』)に接続し、当該信号線を繋いだ状態で肘を曲げたところ、ノイズが大きく腕の動きに合わせた電圧信号は得られなかった。
A 圧電性繊維
B 導電性繊維
C 絶縁性繊維
12 増幅手段
13 出力手段
100A 圧電性繊維
100B 導電性繊維
1001 オシロスコープ
1002 評価用配線
1003 被覆繊維
1004 測定サンプル
1011 圧電素子
1012 増幅手段
1013 出力手段
1014 送信手段
1101 センサー
200A 圧電性繊維
200B 導電性繊維
200C 絶縁性繊維
2001 組紐状圧電素子
2002 鞘部
2003 芯部
2005 布帛状圧電素子
2006 布帛
2007 絶縁性繊維
2008 導電性繊維
2010 デバイス
2011 圧電素子
2012 増幅手段
2013 出力手段
2014 送信手段
CL 繊維軸
α 巻きつけ角度
2100 平織物
300A 圧電性繊維
300B 導電性繊維
300C 絶縁性繊維
3001 組紐状圧電素子
3002 鞘部
3003 芯部
3004 導電層
3005 導電性物質
3006 導電性繊維
3007 布帛状圧電素子
3008 布帛
3009 絶縁性繊維
3010 導電性繊維
3011 デバイス
3012 圧電素子
3013 増幅手段
3014 出力手段
3015 送信手段
CL 繊維軸
α 巻きつけ角度
3100 平織物
400A 圧電性繊維
400B 導電性繊維
400C 絶縁性繊維
400D 布帛の変形方向
400E 直交座標軸
4011 トランスデューサー
4012 増幅手段
4013 出力手段
4014 送信手段
4015 受信手段
4101、4102、4103 デバイス
5001 圧電性繊維
5002 導電性繊維
5003 絶縁性繊維
5011 トランスデューサー
5012 増幅手段
5013 出力手段
5014 送信手段
5015 受信手段
5100 平織物
5101、5102、5103 デバイス
6001 組紐状圧電素子
7001 組紐状圧電素子
7002 鞘部
7003 芯部
7005 布帛状圧電素子
7006 布帛
7007 絶縁性繊維
7008 導電性繊維
7010 デバイス
7012 増幅手段
7013 出力手段
7015 比較演算手段
8001 組紐状圧電素子
8005 布帛状素子
8008 別の導電性繊維
8010 デバイス
8012 圧電信号解析手段
8013 出力手段
8014 送信手段
8015 静電容量解析手段
9001 組紐状圧電素子
9004 繊維
9005 平組紐状圧電素子
9006 平組紐
9007 芯糸

Claims (12)

  1. 導電性繊維および圧電性繊維からなる組物を含み、前記組物は前記導電性繊維が芯であり、前記圧電性繊維が前記導電性繊維の周囲を被覆する被覆繊維であり、さらに前記導電性繊維の曲げ剛性が0.05×10 −4 N・m /m以下である、圧電素子。
  2. 前記導電性繊維が金属コートされた有機繊維である、請求項1記載の圧電素子。
  3. 前記圧電性繊維が主としてポリ乳酸を含む、請求項1又は2に記載の圧電素子。
  4. 前記圧電性繊維が主として光学純度99%以上のL―ポリ乳酸又はD−ポリ乳酸を含む、請求項3記載の圧電素子。
  5. 前記圧電性繊維が一軸配向し且つ結晶を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の圧電素子。
  6. 前記被覆繊維に印加された応力の大きさ及び/又は印加された位置を検出する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の圧電素子。
  7. 検出される前記応力が、前記被覆繊維の表面と被接触物の表面との間の摩擦力である、請求項6記載の圧電素子。
  8. 検出される前記応力が、前記被覆繊維の表面または先端部に対する垂直方向の抵抗力である、請求項6記載の圧電素子。
  9. 請求項1〜8のいずれか一項に記載の圧電素子を使った圧電センサー。
  10. 請求項9に記載の圧電センサーと、
    印加された圧力に応じて前記圧電センサーから出力される電気信号を増幅する増幅手段と、
    前記増幅手段で増幅された電気信号を出力する出力手段と、
    を備えるデバイス。
  11. 前記デバイスは、前記出力手段から出力された電気信号を外部機器へ送信する送信手段をさらに備える、請求項10記載のデバイス。
  12. 請求項9に記載の圧電センサーと、
    印加された圧力に応じて前記圧電センサーから電気信号を出力する出力手段と、
    前記出力手段から出力された電気信号を外部機器へ送信する送信手段と、
    を備えるデバイス。
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