JP6635788B2 - 組紐状圧電素子、組紐状圧電素子を用いた布帛状圧電素子およびそれらを用いたデバイス - Google Patents
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また、絶縁被覆導線に端子を付ける技術は種々開示されているが、圧電性繊維により組紐状に被覆された導電性繊維に端子を接続する場合、従来の技術をそのまま適用すると被覆除去の困難さ、鞘部の繊維に由来する特性および圧電性由来のノイズの点から適用困難であることが判明した。そこで接続部の鞘部の繊維を固定しながら芯部と端子の電気的接続を確保できるような特定の構造とすることでこの問題を解決できることを突き止めた。
さらにウェアラブルデバイスに適用する際に、組紐状素子の端子部と布帛などの柔軟性基材への固定部との距離を縮めることで、組紐の不安定さに由来するノイズを低減できることを突き止めた。
さらに高機能なウェアラブルデバイスとするため、組紐を複数備えたデバイスを効率的に作成でき、かつ容易に回路と接続・切り離し可能とできる方法を発明し、本発明を完成させた。
1.導電性繊維で形成された芯部と、
前記芯部を被覆するように組紐状の圧電性繊維で形成された鞘部と、
を備えた組紐状圧電素子であって、該組紐状圧電素子の芯部に、次のA、Bいずれかの様態で接続固定された金属製端子をさらに備え、かつ、該金属製端子または該金属製端子に固定された部品により固定された該組紐状圧電素子の部分の端部において、該鞘部の組織が解けて該芯部から離れた圧電性繊維が、該鞘部の圧電性繊維全体の20%未満である部分を有する、組紐状圧電素子。
A)該組紐状圧電素子の末端部分を構成する繊維の長さ0.5mm以上の部分を、該金属製端子の一部が把持し、該把持部分または該把持部分から1mm以内の場所において、該組紐状圧電素子の芯部と該金属製端子とが直接あるいは導電性材料を介して間接的に電気接続され固定された様態
B)該金属製端子の一部がフォーク状あるいは針状であり、このフォーク状部分または針状部分が該組紐状圧電素子の該鞘部に接触しながら該芯部の導電性繊維と直接または導電性材料を介して間接的に接続され、この接続箇所から10mm以内の場所において、該金属製端子の別の部位または該金属製端子に固定された部品により該組紐状圧電素子が該金属製端子に固定された様態
2.該芯部と該金属製端子との接続部分から5mm以内にある該鞘部の圧電性繊維の一部または全部が繊維形状を失い融着した、上記1記載の組紐状圧電素子。
3.該鞘部の表面にはんだまたは導電ペーストからなる、該芯部と電気的に接続された導電性材料を備えており、該鞘部の表面に備えられた該導電性材料と該金属製端子とが接触することで該芯部と該金属製端子とが間接的に電気接続されている、上記1または2に記載の組紐状圧電素子。
4.上記1〜3のいずれか一項に記載の組紐状圧電素子を含む布帛を備える布帛状圧電素子において、該金属製端子が該組紐状圧電素子に固定された部分から長さ10mm以内の範囲において、該組紐状圧電素子の少なくとも一部が布帛状基材に固定された、布帛状圧電素子。
5.上記1〜3のいずれか一項に記載の組紐状圧電素子が、2本以上、略平行に配置され、それぞれの組紐状圧電素子に接続された2つ以上の金属製端子が1つのコネクタハウジングにまとめられ、一括して別のコネクタと接続可能にされている、上記1〜4のいずれか一項に記載の組紐状または布帛状圧電素子。
6.織布あるいは編地を構成する糸の一部に、上記5に記載の組紐状圧電素子を2本以上略平行に配置した布帛状圧電素子。
7.圧電性繊維が主成分としてポリ乳酸を含み、前記導電性繊維に対する前記圧電性繊維の巻きつけ角度は15°以上、75°以下である、上記1〜6のいずれか一項に記載の組紐状または布帛状圧電素子。
8.前記圧電性繊維の総繊度は、前記導電性繊維の総繊度の1倍以上、20倍以下である、上記1〜7のいずれか一項に記載の組紐状または布帛状圧電素子。
9.前記圧電性繊維の一本あたり繊度は、前記導電性繊維の総繊度の1/20倍以上、2倍以下である、上記1〜8のいずれか一項に記載の組紐状または布帛状圧電素子。
10.上記組紐状圧電素子の少なくとも一部と交差して接触する導電性繊維を更に含む、上記4〜6のいずれか一項に記載の布帛状圧電素子。
11.前記導電性繊維が、前記組紐状圧電素子と交差する繊維のうちの30%以上を構成する、上記10に記載の布帛状圧電素子。
12.上記1〜11のいずれか一項に記載の組紐状または布帛状圧電素子と、
印加された圧力に応じて前記組紐状または布帛状圧電素子から出力される電気信号を増幅する増幅手段と、
前記増幅手段で増幅された電気信号を出力する出力手段と、
を備えるデバイス。
図1は実施形態に係る組紐状圧電素子の構成例を示す模式図である。
組紐状圧電素子1は、導電性繊維Bで形成された芯部3と、芯部3を被覆するように組紐状の圧電性繊維Aで形成された鞘部2と、を備えている。圧電性繊維Aは主成分としてポリ乳酸を含むことができる。導電性繊維Bに対する圧電性繊維Aの巻きつけ角度αは15°以上、75°以下であることが好ましい。
なお、上記角度αについては、鞘部2を形成する圧電性繊維Aの主方向と導電性繊維Bの中心軸CLとのなす角ともいうことができ、圧電性繊維Aの一部が弛んでいたり、毛羽だっていてもよい。
導電性繊維Bとしては、導電性を示すものであればよく、公知のあらゆるものが用いられる。導電性繊維Bとしては、例えば、金属繊維、導電性高分子からなる繊維、炭素繊維、繊維状あるいは粒状の導電性フィラーを分散させた高分子からなる繊維、あるいは繊維状物の表面に導電性を有する層を設けた繊維が挙げられる。繊維状物の表面に導電性を有する層を設ける方法としては、金属コート、導電性高分子コート、導電性繊維の巻付けなどが挙げられる。なかでも金属コートが導電性、耐久性、柔軟性などの観点から好ましい。金属をコートする具体的な方法としては、蒸着、スパッタ、電解メッキ、無電解メッキなどが挙げられるが生産性などの観点からメッキが好ましい。このような金属をメッキされた繊維は金属メッキ繊維ということができる。
圧電性繊維Aの材料である圧電性高分子としてはポリフッ化ビニリデンやポリ乳酸のような圧電性を示す高分子を利用できるが、本実施形態では上記のように圧電性繊維Aは主成分としてポリ乳酸を含むことが好適である。ポリ乳酸は、例えば溶融紡糸後に延伸によって容易に配向して圧電性を示し、ポリフッ化ビニリデンなどで必要となる電界配向処理が不要な点で生産性に優れている。しかしこのことは、本発明を実施するに際してポリフッ化ビニリデンその他の圧電性材料の使用を排除することを意図するものではない。
Xhomo×Ao×Ao÷106≧0.26 (1)
上記式(1)を満たさない場合、結晶性および/または一軸配向性が十分でなく、動作に対する電気信号の出力値が低下したり、特定方向の動作に対する信号の感度が低下したりするおそれがある。上記式(1)の左辺の値は、0.28以上がより好ましく、0.3以上がさらに好ましい。ここで、各々の値は下記に従って求める。
ホモポリ乳酸結晶化度Xhomoについては、広角X線回折分析(WAXD)による結晶構造解析から求める。広角X線回折分析(WAXD)では、リガク製ultrax18型X線回折装置を用いて透過法により、以下条件でサンプルのX線回折図形をイメージングプレートに記録する。
X線源: Cu−Kα線(コンフォーカル ミラー)
出力: 45kV×60mA
スリット: 1st:1mmΦ,2nd:0.8mmΦ
カメラ長: 120mm
積算時間: 10分
サンプル: 35mgのポリ乳酸繊維を引き揃え3cmの繊維束とする。
得られるX線回折図形において方位角にわたって全散乱強度Itotalを求め、ここで2θ=16.5°,18.5°,24.3°付近に現れるホモポリ乳酸結晶に由来する各回折ピークの積分強度の総和ΣIHMiを求める。これらの値から下式(2)に従い、ホモポリ乳酸結晶化度Xhomoを求める。
ホモポリ乳酸結晶化度Xhomo(%)=ΣIHMi/Itotal×100 (2)
なお、ΣIHMiは、全散乱強度においてバックグランドや非晶による散漫散乱を差し引くことによって算出する。
結晶配向度Aoについては、上記の広角X線回折分析(WAXD)により得られるX線回折図形において、動径方向の2θ=16.5°付近に現れるホモポリ乳酸結晶に由来する回折ピークについて、方位角(°)に対する強度分布をとり、得られた分布プロファイルの半値幅の総計ΣWi(°)から次式(3)より算出する。
結晶配向度Ao(%)=(360−ΣWi)÷360×100 (3)
|S(p)−S(c)|≦10 (4)
上記式(4)の左辺は5以下であることがより好ましく、3以下であればさらに好ましい。
|S(p)−S(i)|≦10 (5)
上記式(5)の左辺は5以下であることがより好ましく、3以下であればさらに好ましい。
沸水収縮率=(L0−L)/L0×100(%) (6)
導電性繊維B、すなわち芯部3は、圧電性繊維A、すなわち組紐状の鞘部2で表面が被覆されている。導電性繊維Bを被覆する鞘部2の厚みは1μm〜10mmであることが好ましく、5μm〜5mmであることがより好ましく、10μm〜3mmであることがさらに好ましい、20μm〜1mmであることが最も好ましい。薄すぎると強度の点で問題となる場合があり、また、厚すぎると組紐状圧電素子1が硬くなり変形し難くなる場合がある。なお、ここで言う鞘部2とは芯部3に隣接する層のことを指す。
ここでいう総繊度とは、鞘部2を構成する圧電性繊維A全ての繊度の和であり、例えば、一般的な8打組紐の場合には、8本の繊維の繊度の総和となる。
本発明の組紐状圧電素子1は、その芯部に、次のA、Bいずれかの様態で接続固定された金属製端子をさらに備えている。
A)組紐状圧電素子の末端部分を構成する繊維の長さ0.5mm以上の部分を、金属製端子の一部が把持し、該把持部分または該把持部分から1mm以内の場所において、該組紐状圧電素子の芯部と金属製端子とが直接あるいは導電性材料を介して間接的に接続固定された様態。
B)金属製端子の一部がフォーク状あるいは針状であり、このフォーク状部分あるいは針状部分が組紐状圧電素子の鞘部に接触しながら芯部の導電性繊維と直接あるいは導電性材料を介して間接的に接続され、この接続箇所から10mm以内の場所において、金属製端子の別の部位あるいは金属製端子に固定された部品により該組紐状圧電素子が金属製端子に固定された様態。
図2(様態A)は実施形態にかかる前記Aの接続様態の構成例を示す模式図である。
組紐状圧電素子の末端を構成する圧電性繊維および導電性繊維は、金属製端子の一部である把持部分によって把持されている。把持された状態とは、金属製端子の把持部分によって組紐状圧電素子が挟み込まれあるいは巻き込まれて互いに固定されている状態を指す。爪状に成形された金属製端子が工具により塑性変形させられて前記の把持された状態となる構造が好ましく採用される。金属製端子は図2の右側部分に別の端子と接続できる形状を有している。
図3(様態Bフォーク状)は実施形態にかかる前記様態Bのフォーク状の部分を備える金属製端子による接続様態の構成例を示す模式図である。図4(様態B針状)は実施形態にかかる前記様態Bの針状の部分を備える金属製端子による接続様態の構成例を示す模式図である。
図3(様態Bフォーク状)および図4(様態B針状)においては、それぞれの断面図に示す通り、金属製端子の一部であるフォーク状部分あるいは針状部分が、組紐状圧電素子の鞘部に接触しながら芯部の導電性繊維と直接あるいは導電性材料を介して間接的に接続されている。金属製端子は各図の右側部分に別の端子と接続できる形状を有している。
図3(様態Bフォーク状)および図4(様態B針状)においては、コネクタハウジングの右側の開口部から別の端子がコネクタハウジング内部の金属製端子に接続できる状態となっている。
本発明の組紐状圧電素子は、金属製端子あるいは金属製端子に固定された部品により固定された部分の端において、鞘部の組織が解けて芯部から離れた圧電性繊維が、鞘部の圧電性繊維全体の20%未満である部分を有する。20%を超える場合、芯部から離れた圧電性繊維がセンサーへの衝撃等により不安定に動くことで圧電性信号をランダムに発生し、ノイズの原因となる。組紐状圧電素子が金属製端子あるいは金属製端子に固定された部品により固定された部分とは、様態Aにおいて金属製端子により把持された部分や、様態Bにおいて金属製端子のフォーク状部分および針状部分が組紐状圧電素子の鞘部に接している部分や、様態Aおよび様態Bにおいて金属製端子に固定された樹脂ハウジング等の部品によって組紐状圧電素子が挟み込み把持された部分や、接着剤によって金属製端子や金属製端子に固定された部品に組紐状圧電素子が固定された部分を指す。その端とは、固定された部分と固定されていない部分の境界部から1mm以内の領域を指す。鞘部の組織が解けて芯部から離れるとは、芯部表面から、組紐状圧電素子の鞘部の平均厚みの1.5倍以上の距離となる場所に鞘部の圧電性繊維が届いている状態を指し、圧電性繊維1本(すなわち組紐を作成する際にキャリア1つから供給される繊維)ごとに判定する。鞘部の圧電性繊維がマルチフィラメントの場合、圧電性繊維1本を構成するフィラメントのうち50%以上が、芯部表面から組紐状圧電素子の鞘部の平均厚みの1.5倍以上の距離に届いている場合、その圧電性繊維1本は鞘部の組織が解けて芯部から離れていると判定する。判定は組紐状圧電素子の側面から観察してもよいし、断面を観察してもよい。断面を観察する場合は、切断時に鞘部が過度に解けないよう、エポキシ樹脂等で固定してから切断して観察する。
本発明の組紐状圧電素子は、金属製端子が組紐状圧電素子に固定された部分から長さ10mm以内の範囲において、該組紐状圧電素子の少なくとも一部が布帛状基材に固定されていることが好ましい。10mm以内に布帛状基材に固定されている場所がない場合、固定されていない組紐状圧電素子が布帛状基材および金属製端子への衝撃等により不安定に動き、ノイズの原因となる。布帛状基材への固定は接着、縫い付けなどの後加工によって行ってもよいし、布帛組織を構成する糸として織り込むまたは編み込むことによって固定されていてもよい。
本発明の組紐状圧電素子1は少なくとも1本の導電性繊維Bの表面を組紐状の圧電性繊維Aで被覆しているが、その製造方法としては例えば以下の方法が挙げられる。すなわち、導電性繊維Bと圧電性繊維Aを別々の工程で作製し、導電性繊維Bに圧電性繊維Aを組紐状に巻きつけて被覆する方法である。この場合には、できるだけ同心円状に近くなるように被覆することが好ましい。
本発明の組紐状圧電素子1の最表面には保護層を設けてもよい。この保護層は絶縁性であることが好ましく、フレキシブル性などの観点から高分子からなるものがより好ましい。保護層に絶縁性を持たせる場合には、もちろん、この場合には保護層ごと変形させたり、保護層上を擦ったりすることになるが、これらの外力が圧電性繊維Aまで到達し、その分極を誘起できるものであれば特に限定はない。保護層としては、高分子などのコーティングによって形成されるものに限定されず、フィルム、布帛、繊維などを巻付けてもよく、あるいは、それらが組み合わされたものであってもよい。
本発明の組紐状圧電素子1は、例えば組紐状圧電素子1の表面を擦るなどで、組紐状圧電素子1に荷重が印加されて生じる応力、すなわち組紐状圧電素子1に印加される応力について、その大きさおよび/又は印加位置を検出するセンサーとして利用することができる。また、本発明の組紐状圧電素子1は、擦る以外の押圧力や曲げ変形などによっても圧電性繊維Aにせん断応力が与えられるならば、電気信号を取り出すことはもちろん可能である。例えば、組紐状圧電素子1に「印加される応力」としては、圧電素子の表面、すなわち圧電性繊維Aの表面と指のような被接触物の表面との間の摩擦力や、圧電性繊維Aの表面または先端部に対する垂直方向の抵抗力、圧電性繊維Aの曲げ変形に対する抵抗力などが挙げられる。特に、本発明の組紐状圧電素子1は、導電性繊維Bに対して平行方向に屈曲させた場合や擦った場合に大きな電気信号を効率的に出力することができる。
図5は実施形態に係る組紐状圧電素子を用いた布帛状圧電素子の構成例を示す模式図である。
布帛状圧電素子5は、少なくとも1本の組紐状圧電素子1を含む布帛6を備えている。布帛6は、布帛を構成する繊維(組紐を含む)の少なくとも1本が組紐状圧電素子1であり、組紐状圧電素子1が圧電素子としての機能を発揮可能である限り何らの限定は無く、どのような織編物であってもよい。布状にするにあたっては、本発明の目的を達成する限り、他の繊維(組紐を含む)と組み合わせて、交織、交編等を行ってもよい。もちろん、組紐状圧電素子1を、布帛を構成する繊維(例えば、経糸や緯糸)の一部として用いてもよいし、組紐状圧電素子1を布帛に刺繍してもよいし、接着してもよい。図5に示す例では、布帛状圧電素子5は、経糸として、少なくとも1本の組紐状圧電素子1および絶縁性繊維7を配し、緯糸として導電性繊維8および絶縁性繊維7を交互に配した平織物である。導電性繊維8は導電性繊維Bと同一種であっても異種の導電性繊維であってもよく、また絶縁性繊維7については後述される。なお、絶縁性繊維7及び/又は導電性繊維8の全部又は一部が組紐形態であってもよい。
また、布帛状圧電素子5では、組紐状圧電素子1を複数並べて用いることも可能である。並べ方としては、例えば経糸または緯糸としてすべてに組紐状圧電素子1を用いてもよいし、数本ごとや一部分に組紐状圧電素子1を用いてもよい。また、ある部分では経糸として組紐状圧電素子1を用い、他の部分では緯糸として組紐状圧電素子1を用いてもよい。
布帛状圧電素子5では、組紐状圧電素子1(及び導電性繊維8)以外の部分には、絶縁性繊維を使用することができる。この際、絶縁性繊維は布帛状圧電素子5の柔軟性を向上する目的で伸縮性のある素材、形状を有する繊維を用いることができる。
本発明の組紐状圧電素子1や布帛状圧電素子5のような圧電素子はいずれの様態であっても、表面への接触、圧力、形状変化を電気信号として出力することができるので、その圧電素子に印加された応力の大きさおよび/又は印加された位置を検出するセンサー(デバイス)として利用することができる。また、この電気信号を他のデバイスを動かすための電力源あるいは蓄電するなど、発電素子として用いることもできる。具体的には、人、動物、ロボット、機械など自発的に動くものの可動部に用いることによる発電、靴底、敷物、外部から圧力を受ける構造物の表面での発電、流体中での形状変化による発電、などが挙げられる。また、流体中での形状変化により電気信号を発するために、流体中の帯電性物質を吸着させたり付着を抑制させたりすることも可能である。
(ポリ乳酸の製造)
実施例において用いたポリ乳酸は以下の方法で製造した。
L−ラクチド((株)武蔵野化学研究所製、光学純度100%)100質量部に対し、オクチル酸スズを0.005質量部加え、窒素雰囲気下、撹拌翼のついた反応機にて180℃で2時間反応させ、オクチル酸スズに対し1.2倍当量のリン酸を添加しその後、13.3Paで残存するラクチドを減圧除去し、チップ化し、ポリ−L−乳酸(PLLA1)を得た。得られたPLLA1の質量平均分子量は15.2万、ガラス転移点(Tg)は55℃、融点は175℃であった。
240℃にて溶融させたPLLA1を24ホールのキャップから20g/minで吐出し、887m/minにて引き取った。この未延伸マルチフィラメント糸を80℃、2.3倍に延伸し、100℃で熱固定処理することにより84dTex/24フィラメントのマルチフィラメント一軸延伸糸を得た。
ミツフジ(株)製の銀メッキナイロン、品名『AGposs』100d34fを導電性繊維Bとして使用した。この繊維の体積抵抗率は1.1×10−3Ω・cmであった。
280℃にて溶融させたポリエチレンテレフタレートを24ホールのキャップから45g/minで吐出し、800m/minにて引き取った。この未延伸糸を80℃、2.5倍に延伸し、180℃で熱固定処理することによりすることにより84dTex/24フィラメントのマルチフィラメント延伸糸を得、これを絶縁性繊維とした。
実施例1の試料として、図1に示すように、上記の導電性繊維Bを芯糸とし、上記の圧電性繊維A8本を芯糸の周りに組紐状に巻きつけて、八打組紐とし、組紐状圧電素子を形成した。この組紐状圧電素子の途中に、日本圧着端子製造(株)製SHコネクタコンタクトを金属製端子として、長さ0.4mmの部分と長さ0.8mmの爪部分を折り曲げ、組紐状圧電素子を把持した後、金属製端子にはんだごてを当てて加熱し、把持部分の鞘部を一部融解させた。組紐状圧電素子の末端の芯部と金属製端子との間の導通を確認し、把持部分から先の余分な組紐状圧電素子をカットした。この端子付き組紐状圧電素子を組紐状圧電素子100とした。
組紐状圧電素子100、200、300、400および500の性能評価及び評価結果は以下のとおりである。
組紐状圧電素子100中の導電性繊維Bを信号線としてオシロスコープ(横河電機(株)製デジタルオシロスコープDL6000シリーズ商品名『DL6000』)に配線を介して1000倍増幅回路を経由して接続した。組紐状圧電素子100を接地(アース)された金属金網で保護された電磁波シールドボックス内で90度折り曲げた。
その結果、組紐状圧電素子100からの出力として、オシロスコープにより約100mVの電位差が検出され、組紐状圧電素子100の変形により十分な大きさの電気信号を検出できることが確認された。把持部分の端において、鞘部の組織が解けて芯部から離れた圧電性繊維は0%であった。
組紐状圧電素子200中の導電性繊維Bを信号線として実施例1と同様に評価した。その結果、組紐状圧電素子200からの出力として、オシロスコープにより約100mVの電位差が検出され、組紐状圧電素子200の変形により十分な大きさの電気信号を検出できることが確認された。把持部分および銀ペーストの固着部分の端 において、鞘部の組織が解けて芯部から離れた圧電性繊維は0%であった。
組紐状圧電素子300および400中の導電性繊維Bを信号線としてオシロスコープ(横河電機(株)製デジタルオシロスコープDL6000シリーズ商品名『DL6000』)に配線を介して1000倍増幅回路を経由して接続した。組紐状圧電素子300および400が織り込まれた布帛を接地(アース)された金属金網で保護された電磁波シールドボックス内で90度折り曲げた。
その結果、組紐状圧電素子300および400からの出力として、オシロスコープにより約100mVの電位差が検出され、組紐状圧電素子300および400の変形により十分な大きさの電気信号を検出できることが確認された。フォーク状の金属部分の端 において、鞘部の組織が解けて芯部から離れた圧電性繊維は2本の組紐状圧電素子とも0%であった。
組紐状圧電素子500中の導電性繊維Bを信号線として実施例1と同様に評価した。その結果、組紐状圧電素子500からの出力として、オシロスコープにより約100mVの電位差が検出されたが、ピーク付近の信号に振幅10mV程度のノイズが重畳されており、曲げ動作によるノイズ発生が確認された。把持部分の端 において、鞘部の組織が解けて芯部から離れた圧電性繊維は75%であった。
B 導電性繊維
1 組紐状圧電素子
2 鞘部
3 芯部
5 布帛状圧電素子
6 布帛
7 絶縁性繊維
8 導電性繊維
10 デバイス
11 圧電素子
12 増幅手段
13 出力手段
14 送信手段
CL 繊維軸
α 巻きつけ角度
Claims (12)
- 導電性繊維で形成された芯部と、
前記芯部を被覆するように組紐状の圧電性繊維で形成された鞘部と、
を備えた組紐状圧電素子であって、該組紐状圧電素子の芯部に、次のA、Bいずれかの様態で接続固定された金属製端子をさらに備え、かつ、該金属製端子または該金属製端子に固定された部品により固定された該組紐状圧電素子の部分の端部において、該鞘部の組織が解けて該芯部から離れた圧電性繊維が、該鞘部の圧電性繊維全体の20%未満である部分を有する、組紐状圧電素子。
A)該組紐状圧電素子の末端部分を構成する繊維の長さ0.5mm以上の部分を、該金属製端子の一部が把持し、該把持部分または該把持部分から1mm以内の場所において、該組紐状圧電素子の芯部と該金属製端子とが直接あるいは導電性材料を介して間接的に電気接続され固定された様態
B)該金属製端子の一部がフォーク状あるいは針状であり、このフォーク状部分または針状部分が該組紐状圧電素子の該鞘部に接触しながら該芯部の導電性繊維と直接または導電性材料を介して間接的に接続され、この接続箇所から10mm以内の場所において、該金属製端子の別の部位または該金属製端子に固定された部品により該組紐状圧電素子が該金属製端子に固定された様態 - 該芯部と該金属製端子との接続部分から5mm以内にある該鞘部の圧電性繊維の一部または全部が繊維形状を失い融着した、請求項1記載の組紐状圧電素子。
- 該鞘部の表面にはんだまたは導電ペーストからなる、該芯部と電気的に接続された導電性材料を備えており、該鞘部の表面に備えられた該導電性材料と該金属製端子とが接触することで該芯部と該金属製端子とが間接的に電気接続されている、請求項1または2に記載の組紐状圧電素子。
- 請求項1〜3のいずれか一項に記載の組紐状圧電素子を含む布帛を備える布帛状圧電素子において、該金属製端子が該組紐状圧電素子に固定された部分から長さ10mm以内の範囲において、該組紐状圧電素子の少なくとも一部が布帛状基材に固定された、布帛状圧電素子。
- 請求項1〜3のいずれか一項に記載の組紐状圧電素子が、2本以上、略平行に配置され、それぞれの組紐状圧電素子に接続された2つ以上の金属製端子が1つのコネクタハウジングにまとめられ、一括して別のコネクタと接続可能にされている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組紐状または布帛状圧電素子。
- 織布あるいは編地を構成する糸の一部に、請求項5に記載の組紐状圧電素子を2本以上略平行に配置した布帛状圧電素子。
- 圧電性繊維が主成分としてポリ乳酸を含み、
前記導電性繊維に対する前記圧電性繊維の巻きつけ角度は15°以上、75°以下である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組紐状または布帛状圧電素子。 - 前記圧電性繊維の総繊度は、前記導電性繊維の総繊度の1倍以上、20倍以下である、
請求項1〜7のいずれか一項に記載の組紐状または布帛状圧電素子。 - 前記圧電性繊維の一本あたり繊度は、前記導電性繊維の総繊度の1/20倍以上、2倍以下である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の組紐状または布帛状圧電素子。
- 前記組紐状圧電素子の少なくとも一部と交差して接触する導電性繊維を更に含む、請求項4〜6のいずれか一項に記載の布帛状圧電素子。
- 前記導電性繊維が、前記組紐状圧電素子と交差する繊維のうちの30%以上を構成する、請求項10に記載の布帛状圧電素子。
- 請求項1〜11のいずれか一項に記載の組紐状または布帛状圧電素子と、
印加された圧力に応じて前記組紐状または布帛状圧電素子から出力される電気信号を増幅する増幅手段と、
前記増幅手段で増幅された電気信号を出力する出力手段と、
を備えるデバイス。
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