JP6785618B2 - 圧電素子に用いる構造体およびそれを用いたデバイス - Google Patents
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Description
特許文献3の圧電シートは、圧電シートに対するねじり変形(応力)によって電気信号を出力できる。しかしながら、そもそもシート状であるために柔軟性に乏しく、繊維や布のように自由に屈曲できるような使い方は不可能である。
本発明の目的は、ねじり変形(応力)に対して選択的に応答し、効率的に利用可能な電気分極を生じさせることが可能な円筒形または円柱形の圧電性構造体を提供することになる。
(1)配向した圧電性高分子を円筒形または円柱形に配置した構造体であり、圧電性高分子が配置された円筒形または円柱形の中心軸の方向に対する圧電性高分子の配向角度が0°以上40°以下または50°以上90°以下であり、圧電性高分子は配向軸を3軸とした時の圧電定数d14の絶対値が0.1pC/N以上1000pC/N以下の値を有する結晶性高分子を主成分として含む、構造体。
(2)前記圧電性高分子はポリ−L−乳酸またはポリ−D−乳酸を主成分として含む、(1)に記載の構造体。
(3)前記圧電性高分子が配置された円筒形または円柱形の中心軸を軸としてねじり変形が与えられた時、該円筒形または円柱形の中心軸側と外側とに逆極性の電荷が発生する、(1)または(2)に記載の構造体。
(4)前記圧電性高分子は繊維状、フィラメント状またはテープ状のものが、組紐状、撚り紐状、カバリング糸状または引き揃え糸状にされて構成されている、(1)〜(3)のいずれか1項に記載の構造体。
(5)前記圧電性高分子は円筒形または円柱形の中心軸に垂直な断面において1つの閉領域のみを構成している、(1)〜(3)のいずれか1項に記載の構造体。
(6)(1)〜(5)のいずれか1項に記載の構造体と、前記構造体に隣接して配置された導電体と、を備える素子。
(7)前記圧電性高分子が円筒形に配置されており、該円筒形の中心軸の位置に前記導電体を配置した、(6)に記載の素子。
(8)前記導電体が導電性繊維からなり、前記圧電性高分子は圧電性繊維として前記導電性繊維の周りに組紐状に組まれて配置される、(7)に記載の素子。
(9)前記圧電性高分子が配置された円筒形の外側に前記導電体を配置した、(6)〜(8)のいずれか1項に記載の素子。
(10)前記導電体は導電性繊維からなり、前記圧電性高分子が配置された円筒形の周りに前記導電性繊維が組紐状に組まれて配置される、(9)に記載の素子。
(11)(6)〜(10)いずれか1項に記載の素子と、
圧電性高分子が配置された円筒形の中心軸の方向にねじり変形が与えられた時に発生する電荷に応じて、前記導電体にて発生する電気信号が出力される出力端子と、
前記出力端子を介して出力される電気信号を検出する電気回路と、
を備えるセンサー。
本発明の構造体(圧電性構造体)は配向した圧電性高分子を含み、配向した圧電性高分子は円筒形または円柱形に配置されている。図1Aは実施形態に係る円筒形の圧電性構造体1−1を示す模式図であり、図1Bは実施形態に係る円柱形の圧電性構造体1−2を示す模式図である。圧電性高分子が配置された円筒形または円柱形の底面の外縁および内縁の形状は真円が最も好ましいが、楕円形でもよいし、扁平な円形でもよい。
本発明の圧電性構造体に含まれる圧電性高分子は、一軸配向した高分子の成型体であり、配向軸を3軸とした時の圧電定数d14の絶対値が0.1pC/N以上1000pC/N以下の値を有する結晶性高分子を主成分として含む。本発明において「主成分として含む」とは、構成成分の50質量%以上を占めること指す。また、本発明において結晶性高分子とは、1質量%以上の結晶部と、結晶部以外の非晶部とからなる高分子であり、結晶性高分子の質量とは結晶部と非晶部とを合計した質量である。
本実施形態の圧電性高分子に含まれる結晶性高分子として好適に使用できる、配向軸を3軸とした時の圧電定数d14の絶対値が0.1pC/N以上1000pC/N以下の値を有する結晶性高分子としては、例えば「Piezoelectricity of biopolymers」(深田栄一、Biorheology, Vol.3,No.6, pp.593)に示されるように、セルロース、コラーゲン、ケラチン、フィブリン、ポリ−L−アラニン、ポリ−γ−メチル−L−グルタメート、ポリ−γ−ベンジル−L−グルタメート、ポリ−L−乳酸を挙げることができる。また、これらの高分子の光学異性体であるポリ−D−アラニン、ポリ−γ−メチル−D−グルタメート、ポリ−γ−ベンジル−D−グルタメート、ポリ−D−乳酸もd14の符号が逆となるが、d14の絶対値としては同等の値を取ると推定される。d14の値は成型条件や純度および測定雰囲気によって異なる値を示すが、本発明の目的を達成するには、実際に使用される圧電性高分子中の結晶性高分子の結晶化度および結晶配向度を測定し、それと同等の結晶化度および結晶配向度を有する1軸延伸フィルムを当該結晶性高分子を用いて作成し、そのフィルムのd14の絶対値が、実際に使用される温度において0.1pC/N以上1000pC/N以下の値を示せばよく、本実施形態の圧電性高分子に含まれる結晶性高分子としては、上に挙げた特定の結晶性高分子に限定されない。フィルムサンプルのd14の測定は公知の様々な方法を取ることができるが、例えばフィルムサンプルの両面に金属を蒸着して電極としたサンプルを、延伸方向から45度傾いた方向に4辺を有する長方形に切り出し、その長尺方向に引張荷重をかけた時に両面の電極に発生する電荷を測定することで、d14の値を測定することができる。
本発明の圧電性高分子を円筒形または円柱形に配置した構造体において、圧電性高分子が配置された円筒形または円柱形の中心軸(以下、単に「中心軸」と記載する)の方向に対する圧電性高分子の配向角度θは0°以上40°以下または50°以上90°以下である。この条件を満たす時、圧電性構造体に対し中心軸を軸としたねじり変形(ねじり応力)を与えることで、圧電性高分子に含まれる結晶性高分子の圧電定数d14に対応する圧電効果を効率よく利用し、圧電性構造体の中心軸側と外側とに効率的に逆極性の電荷を発生させることができる。かかる観点から、中心軸の方向に対する圧電性高分子の配向角度θは0°以上35°以下または55°以上90°以下であることが好ましく、0°以上30°以下または60°以上90°以下であることがより好ましく、0°以上25°以下または65°以上90°以下であることがさらに好ましい。中心軸の方向に対する圧電性高分子の配向角度θが0°を超えて90°未満である場合には、圧電性高分子の配向方向はらせんを描くことになる。
中心軸の方向に対する圧電性高分子の配向角度θとは、圧電性高分子が配置された円筒形または円柱形を側面から見た平行投影図において、該中心軸の方向と、中心軸に重なって手前にある部分の圧電性高分子の配向方向とがなす角度である。例えば図2は実施形態に係る円筒形の圧電性構造体1を側面から見た図である。図2の例において、圧電性構造体は長尺方向に配向した圧電性高分子のテープをらせん状に巻いた構造体である。中心軸CLに重なって手前にある部分のテープの配向方向を示す直線はOLであり、CLとOLのなす角θ(0度以上90度以下とする)が、中心軸の方向に対する圧電性高分子の配向角度である。
θ = arctan(2πRm/HP)(0°≦θ≦90°)
ただしRm=2(Ro3−Ri3)/3(Ro2−Ri2)、即ち断面積で加重平均した圧電性構造体の半径である。
また、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸のように、d14の符号が互いに異なる結晶性高分子を含む圧電性高分子を、S撚りまたはZ撚りの一方のらせんに沿って混合して配置すると、伸縮変形に対する発生電荷が互いに打消し合い、ねじり変形のみに選択的に応答するため、好ましい。
前述の通り、本発明の圧電性構造体においては、中心軸の方向に対する圧電性高分子の配向角度θが0°を超えて90°未満である場合には、圧電性高分子の配向方向はらせんを描くことになる。このような配置となる圧電性構造体としては特に、例えば圧電性高分子を長尺方向に配向させた繊維、フィラメントあるいはテープを用いた、撚糸、カバリング糸、組紐などが好ましい様態として挙げることができる。テープを用いる場合は、テープの長尺方向以外の方向に配向させたテープを用い、らせん状に巻いたものや、長尺方向と中心軸方向を平行にして円筒を成型したものも用いることができる。生産性と配向度の向上の観点からは、延伸によって長尺方向に配向させた繊維、フィラメントあるいはテープを用いた撚糸、カバリング糸および組紐がより好ましく、構造の安定性の観点から、組紐がとりわけ好ましい。
中心軸の方向に対する圧電性高分子の配向角度θが90°である場合には、圧電性高分子の配向方向は中心軸に垂直な面上で円形をなす。このような配置となる圧電性構造体としては、例えば長尺方向に垂直に配向させた圧電性高分子のテープを用い、長尺方向と中心軸方向を平行にして円筒を成型したものが好ましい様態として挙げることができる。
生産性、折り曲げ耐久性、構造の安定性の観点から、後述する組紐状の圧電性構造体が最も好ましい。
図4は実施形態に係る組紐状の圧電性構造体(以下、組紐状圧電素子と称する)の構成例を示す模式図である。
組紐状圧電素子11は、導電性繊維Bで形成された芯部13と、芯部13を被覆するように組紐状の圧電性繊維Aで形成された鞘部12と、を備えており、鞘部12は本発明における円筒形の圧電性構造体である。圧電性繊維Aは主成分としてポリ乳酸を含むことができる。
ここで、芯部である導電性繊維Bを経由して検出される信号強度は鞘部である圧電性繊維Aとの接触状態が変化しないことはもちろん、より強く拘束されていることが好ましい。例えば、圧電性繊維を製紐機で組む時のテンションを高くすることにより、より強く拘束された組紐を得ることができる。一方で、ポリ乳酸(PLA)繊維は強度が弱く、しかも摩擦が高いため、製紐機の糸道において繊維が単糸切れをおこし、綺麗な組紐を得ることができない場合がある。すなわち製紐工程において、繊維の巻かれたボビンを保持するキャリアが盤上を移動する経路により繊維がボビンのアキュームにより張ったり弛んだりを瞬間的に繰り返しながら組まれていくため、一般にPLA繊維は高いテンションをかけて製紐することが困難である。しかし、かかる困難は、PLA繊維に撚糸加工を施すことで改善されることがわかった。具体的には、PLA繊維に10〜5000T/mの撚数で撚糸加工を施すことが好ましい。10T/mより小さいと撚糸の効果が得られず、5000T/mより大きいと、繊維が捩じれやすくなり加工時のトラブルが起きやすくなる。また、組紐にした時の組紐の軸方向の変形に対するPLAの配向軸方向の角度が適切でなくなり、信号強度が小さくなるおそれがある。撚数は30T/m以上がより好ましく、さらに好ましくは50T/m以上である。また、撚数の上限としては3000T/m以下がより好ましく、さらに好ましくは1500T/m以下である。撚糸加工の方法は特に限定されるものではなく、公知のあらゆる撚糸加工方法が適用可能である。また、撚糸加工された繊維は、熱処理されることが好ましく、熱処理することにより撚糸状態が固定化され繊維のハンドリングがしやすくなる。熱処理の方法も特に限定されるものではなく、一般的に対象繊維のTg〜Tmの温度が好ましく選択され、湿度下で処理される場合もある。
以下、各構成について詳細に説明する。
導電性繊維Bとしては、導電性を示すものであればよく、公知のあらゆるものが用いられる。導電性繊維Bとしては、例えば、金属繊維、導電性高分子からなる繊維、炭素繊維、繊維状あるいは粒状の導電性フィラーを分散させた高分子からなる繊維、あるいは繊維状物の表面に導電性を有する層を設けた繊維が挙げられる。繊維状物の表面に導電性を有する層を設ける方法としては、金属コート、導電性高分子コート、導電性繊維の巻付けなどが挙げられる。なかでも金属コートが導電性、耐久性、柔軟性などの観点から好ましい。金属をコートする具体的な方法としては、蒸着、スパッタ、電解メッキ、無電解メッキなどが挙げられるが生産性などの観点からメッキが好ましい。このような金属をメッキされた繊維は金属メッキ繊維ということができる。
Xhomo×Ao×Ao÷106≧0.26 (1)
上記式(1)を満たさない場合、結晶性および/または一軸配向性が十分でなく、動作に対する電気信号の出力値が低下したり、特定方向の動作に対する信号の感度が低下したりするおそれがある。上記式(1)の左辺の値は、0.28以上がより好ましく、0.3以上がさらに好ましい。ここで、各々の値は下記に従って求める。
ホモポリ乳酸結晶化度Xhomoについては、広角X線回折分析(WAXD)による結晶構造解析から求める。広角X線回折分析(WAXD)では、リガク製ultrax18型X線回折装置を用いて透過法により、以下条件でサンプルのX線回折図形をイメージングプレートに記録する。
X線源: Cu−Kα線(コンフォーカル ミラー)
出力: 45kV×60mA
スリット: 1st:1mmΦ,2nd:0.8mmΦ
カメラ長: 120mm
積算時間: 10分
サンプル: 35mgのポリ乳酸繊維を引き揃え3cmの繊維束とする。
得られるX線回折図形において方位角にわたって全散乱強度Itotalを求め、ここで2θ=16.5°,18.5°,24.3°付近に現れるホモポリ乳酸結晶に由来する各回折ピークの積分強度の総和ΣIHMiを求める。これらの値から下式(2)に従い、ホモポリ乳酸結晶化度Xhomoを求める。
ホモポリ乳酸結晶化度Xhomo(%)=ΣIHMi/Itotal×100 (2)
なお、ΣIHMiは、全散乱強度においてバックグランドや非晶による散漫散乱を差し引くことによって算出する。
結晶配向度Aoについては、上記の広角X線回折分析(WAXD)により得られるX線回折図形において、動径方向の2θ=16.5°付近に現れるホモポリ乳酸結晶に由来する回折ピークについて、方位角(°)に対する強度分布をとり、得られた分布プロファイルの半値幅の総計ΣWi(°)から次式(3)より算出する。
結晶配向度Ao(%)=(360−ΣWi)÷360×100 (3)
|S(p)−S(c)|≦10 (4)
上記式(4)の左辺は5以下であることがより好ましく、3以下であればさらに好ましい。
|S(p)−S(i)|≦10 (5)
上記式(5)の左辺は5以下であることがより好ましく、3以下であればさらに好ましい。
沸水収縮率=(L0−L)/L0×100(%) (6)
導電性繊維B、すなわち芯部13は、圧電性繊維A、すなわち組紐状の鞘部12で表面が被覆されている。導電性繊維Bを被覆する鞘部12の厚みは1μm〜10mmであることが好ましく、5μm〜5mmであることがより好ましく、10μm〜3mmであることがさらに好ましい、20μm〜1mmであることが最も好ましい。薄すぎると強度の点で問題となる場合があり、また、厚すぎると組紐状圧電素子11が硬くなり変形し難くなる場合がある。なお、ここで言う鞘部12とは芯部13に隣接する層のことを指す。
ここでいう総繊度とは、鞘部12を構成する圧電性繊維A全ての繊度の和であり、例えば、一般的な8打組紐の場合には、8本の繊維の繊度の総和となる。
本発明の組紐状圧電素子11は少なくとも1本の導電性繊維Bの表面を組紐状の圧電性繊維Aで被覆しているが、その製造方法としては例えば以下の方法が挙げられる。すなわち、導電性繊維Bと圧電性繊維Aを別々の工程で作製し、導電性繊維Bに圧電性繊維Aを組紐状に巻きつけて被覆する方法である。この場合には、できるだけ同心円状に近くなるように被覆することが好ましい。
本発明の組紐状圧電素子11の最表面には保護層を設けてもよい。この保護層は絶縁性であることが好ましく、フレキシブル性などの観点から高分子からなるものがより好ましい。保護層に絶縁性を持たせる場合には、もちろん、この場合には保護層ごと変形させたり、保護層上を擦ったりすることになるが、これらの外力が圧電性繊維Aまで到達し、その分極を誘起できるものであれば特に限定はない。保護層としては、高分子などのコーティングによって形成されるものに限定されず、フィルム、布帛、繊維などを巻付けてもよく、あるいは、それらが組み合わされたものであってもよい。
上記のように圧電性構造体の中心軸側および外側に導電体を配置した場合は、中心軸側の導電体と外側の導電体とを2極の電極として圧電性高分子(誘電体)を挟んだコンデンサ状の圧電素子とみなすことができる。変形により圧電性構造体に発生する分極に誘起される電気信号を効果的に取り出すため、これらの電極間の絶縁抵抗の値としては、3Vの直流電圧で測定したとき、1MΩ以上であることが好ましく、10MΩ以上であることがより好ましく、100MΩ以上であることがさらに好ましい。また、これらの電極間に1MHzの交流電圧を与えた時の応答を解析して得られる、等価直列抵抗の値Rsおよび等価直列容量Csの値についても、変形により圧電性構造体に発生する分極に誘起される電気信号を効果的に取り出し、応答性を良くするため、特定の値の範囲内であることが好ましい。即ち、Rsの値は1μΩ以上100kΩ以下が好ましく、1mΩ以上10kΩ以下がより好ましく、1mΩ以上1kΩ以下であることがさらに好ましく、Csの値を圧電性構造体の中心軸方向の長さ(cm)で割った値として、0.1pF以上1000pF以下が好ましく、0.2pF以上100pF以下がより好ましく、0.4pF以上10pF以下がさらに好ましい。
上記の通り、圧電性構造体と電極からなる素子が好ましい状態で動作可能な場合、これらの電極間に1MHzの交流電圧を与えた時の応答を解析して得られる、等価直列抵抗の値Rsおよび等価直列容量Csの値は特定の範囲内の値を取るので、これらの値を圧電性構造体の検査に用いることも好ましい。また、交流電圧による解析で得られるRsおよびCsの値のみならず、その他の電気的刺激に対する過渡応答を解析することで圧電性構造体の検査を行うこともできる。
本発明の組紐状圧電素子11は、特に、鞘部12から形成される円筒形の圧電性構造体の中心軸、即ち導電性繊維Bを軸としたねじり変形(応力)を与えた場合に大きな電気信号を効率的に出力することができる。一方、伸縮変形や曲げ、擦り変形に対しては大きな電気信号を出力しない。
図5は実施形態に係る組紐状圧電素子を用いた布帛状圧電素子の構成例を示す模式図である。
布帛状圧電素子15は、少なくとも1本の組紐状圧電素子11を含む布帛16を備えている。布帛16は、布帛を構成する繊維(組紐を含む)の少なくとも1本が組紐状圧電素子11であり、組紐状圧電素子11が圧電素子としての機能を発揮可能である限り何らの限定は無く、どのような織編物であってもよい。布状にするにあたっては、本発明の目的を達成する限り、他の繊維(組紐を含む)と組み合わせて、交織、交編等を行ってもよい。もちろん、組紐状圧電素子11を、布帛を構成する繊維(例えば、経糸や緯糸)の一部として用いてもよいし、組紐状圧電素子11を布帛に刺繍してもよいし、接着してもよい。図5に示す例では、布帛状圧電素子15は、経糸として、少なくとも1本の組紐状圧電素子11および絶縁性繊維17を配し、緯糸として導電性繊維18および絶縁性繊維17を交互に配した平織物である。導電性繊維18は導電性繊維Bと同一種であっても異種の導電性繊維であってもよく、また絶縁性繊維17については後述される。なお、絶縁性繊維17及び/又は導電性繊維18の全部又は一部が組紐形態であってもよい。
また、布帛状圧電素子15では、組紐状圧電素子11を複数並べて用いることも可能である。並べ方としては、例えば経糸または緯糸としてすべてに組紐状圧電素子11を用いてもよいし、数本ごとや一部分に組紐状圧電素子11を用いてもよい。また、ある部分では経糸として組紐状圧電素子11を用い、他の部分では緯糸として組紐状圧電素子11を用いてもよい。
布帛状圧電素子15では、組紐状圧電素子11(及び導電性繊維18)以外の部分には、絶縁性繊維を使用することができる。この際、絶縁性繊維は布帛状圧電素子15の柔軟性を向上する目的で伸縮性のある素材、形状を有する繊維を用いることができる。
本発明の組紐状圧電素子11や布帛状圧電素子15のような圧電素子はいずれの様態であっても、組紐状圧電素子の中心軸を軸としたねじり変形(応力)を電気信号として出力することができるので、その圧電素子に印加された応力の大きさおよび/又は印加された位置を検出するセンサー(デバイス)として利用することができる。布帛状圧電素子中の組紐状圧電素子の配置方法によっては、布帛状圧電素子が曲げ、伸縮、押圧などの変形や応力を受けた時に組紐状圧電素子がねじり変形するようにできるので、布帛状圧電素子の曲げ、伸縮、押圧などの変形や応力により電気信号を出力することもできる。また、この電気信号を他のデバイスを動かすための電力源あるいは蓄電するなど、発電素子として用いることもできる。具体的には、人、動物、ロボット、機械など自発的に動くものの可動部に用いることによる発電、靴底、敷物、外部から圧力を受ける構造物の表面での発電、流体中での形状変化による発電、などが挙げられる。また、流体中での形状変化により電気信号を発するために、流体中の帯電性物質を吸着させたり付着を抑制させたりすることも可能である。
(ポリ乳酸の製造)
実施例において用いたポリ乳酸は以下の方法で製造した。
L−ラクチド((株)武蔵野化学研究所製、光学純度100%)100質量部に対し、オクチル酸スズを0.005質量部加え、窒素雰囲気下、撹拌翼のついた反応機にて180℃で2時間反応させ、オクチル酸スズに対し1.2倍当量のリン酸を添加しその後、13.3Paで残存するラクチドを減圧除去し、チップ化し、ポリ−L−乳酸(PLLA1)を得た。得られたPLLA1の質量平均分子量は15.2万、ガラス転移点(Tg)は55℃、融点は175℃であった。
240℃にて溶融させたPLLA1を24ホールのキャップから20g/minで吐出し、887m/minにて引き取った。この未延伸マルチフィラメント糸を80℃、2.3倍に延伸し、100℃で熱固定処理することにより84dTex/24フィラメントのマルチフィラメント一軸延伸糸PF1を得た。また、240℃にて溶融させたPLLA1を12ホールのキャップから8g/minで吐出し、1050m/minにて引き取った。この未延伸マルチフィラメント糸を80℃、2.3倍に延伸し、150℃で熱固定処理することにより33dtex/12フィラメントのマルチフィラメント一軸延伸糸PF2を得た。これらの圧電性繊維PF1およびPF2を圧電性高分子として用いた。PF1およびPF2のポリ−L−乳酸結晶化度、ポリ−L−乳酸結晶配向度および光学純度は後述の方法で測定し、表1の通りであった。
ミツフジ(株)製の銀メッキナイロン、品名『AGposs』100d34f(CF1)を導電性繊維Bとして使用した。CF1の抵抗率は250Ω/mであった。
また、ミツフジ(株)製の銀メッキナイロン、品名『AGposs』30d10f(CF2)を導電性繊維Bおよび導電性繊維5として使用した。CF2の導電性は950Ω/mであった。
ポリエチレンテレフタレートを溶融紡糸後に延伸することで製造した84dTex/24フィラメントの延伸糸IF1、および33dTex/12フィラメントの延伸糸IF2をそれぞれ絶縁性繊維とした。
ポリ−L−乳酸結晶化度Xhomoについては、広角X線回折分析(WAXD)による結晶構造解析から求めた。広角X線回折分析(WAXD)では、リガク製ultrax18型X線回折装置を用いて透過法により、以下条件でサンプルのX線回折図形をイメージングプレートに記録した。
X線源: Cu−Kα線(コンフォーカル ミラー)
出力: 45kV×60mA
スリット: 1st:1mmΦ,2nd:0.8mmΦ
カメラ長: 120mm
積算時間: 10分
サンプル: 35mgのポリ乳酸繊維を引き揃え3cmの繊維束とする
得られたX線回折図形において方位角にわたって全散乱強度Itotalを求め、ここで2θ=16.5°,18.5°,24.3°付近に現れるポリ−L−乳酸結晶に由来する各回折ピークの積分強度の総和ΣIHMiを求めた。これらの値から下式(1)に従い、ポリ−L−乳酸結晶化度Xhomoを求めた。
[数1]
ポリ−L−乳酸結晶化度Xhomo(%)=ΣIHMi/Itotal×100 (1)
なお、ΣIHMiは、全散乱強度においてバックグランドや非晶による散漫散乱を差し引くことによって算出した。
ポリ−L−乳酸結晶配向度Aについては、上記の広角X線回折分析(WAXD)により得られたX線回折図形において、動径方向の2θ=16.5°付近に現れるポリ−L−乳酸結晶に由来する回折ピークについて、方位角(°)に対する強度分布をとり、得られた分布プロファイルの半値幅の総計ΣWi(°)から次式(2)より算出した。
[数2]
ポリ−L−乳酸結晶配向度A(%)=(360−ΣWi)÷360×100 (2)
布帛を構成する1本(マルチフィラメントの場合は1束)のポリ乳酸繊維0.1gを採取し、5モル/リットル濃度の水酸化ナトリウム水溶液1.0mLとメタノール1.0mLを加え、65℃に設定した水浴振とう器にセットして、ポリ乳酸が均一溶液になるまで30分程度加水分解を行い、さらに加水分解が完了した溶液に0.25モル/リットルの硫酸を加えpH7まで中和し、その分解溶液を0.1mL採取して高速液体クロマトグラフィー(HPLC)移動相溶液3mLにより希釈し、メンブレンフィルター(0.45μm)によりろ過した。この調整溶液のHPLC測定を行い、L−乳酸モノマーとD−乳酸モノマーの比率を定量した。1本のポリ乳酸繊維が0.1gに満たない場合は、採取可能な量に合わせ他の溶液の使用量を調整し、HPLC測定に供するサンプル溶液のポリ乳酸濃度が上記と同等から100分の1の範囲になるようにした。
カラム:住化分析センター社製「スミキラル(登録商標)」OA−5000(4.6mmφ×150mm)、
移動相:1.0ミリモル/リットルの硫酸銅水溶液
移動相流量:1.0ミリリットル/分
検出器:UV検出器(波長254nm)
注入量:100マイクロリットル
L乳酸モノマーに由来するピーク面積をSLLAとし、D−乳酸モノマーに由来するピーク面積をSDLAとすると、SLLAおよびSDLAはL−乳酸モノマーのモル濃度MLLAおよびD−乳酸モノマーのモル濃度MDLAにそれぞれ比例するため、SLLAとSDLAのうち大きい方の値をSMLAとし、光学純度は下記式(3)で計算した。
[数3]
光学純度(%)=SMLA÷(SLLA+SDLA)×100 (3)
中心軸の方向に対する圧電性高分子の配向角度θは、下記式から計算した。
θ = arctan(2πRm/HP) (0°≦θ≦90°)
ただしRm=2(Ro3−Ri3)/3(Ro2−Ri2)、即ち断面積で加重平均した圧電性構造体の半径である。らせんピッチHP、圧電性構造体が占める部分の外側半径Roおよび内側半径Riは以下の通り測定した。
エレクトロメータ(Keysight社 B2987A)を、同軸ケーブル(芯:Hi極、シールド:Lo極)を介して圧電素子の導電体に接続した状態で、圧電素子に対し下記5−1〜5のいずれかの動作試験をしながら50m秒の間隔で電流値を計測した。
株式会社オリエンテック製万能試験機「テンシロンRTC−1225A」を用い、圧電素子の長尺方向に12cmの間隔を空けて圧電素子をチャックで掴み、素子が弛んだ状態を0.0Nとし、0.5Nの張力まで引っ張った状態で変位を0mmとし、100mm/minの動作速度で1.2mmまで引っ張った後、0mmまで−100mm/minの動作速度で戻す動作を10回繰り返した。
圧電素子を掴む2か所のチャックのうち、片方のチャックはねじり動作を行わず圧電素子の長軸方向に自由に動くようなレール上に設置されて圧電素子に0.5Nの張力が常にかかる状態とし、他方のチャックは圧電素子の長軸方向には動かずねじり動作を行うよう設計されたねじり試験装置を用い、圧電素子の長尺方向に72mmの間隔を空けて圧電素子をこれらのチャックで掴み、素子の中央からチャックを見て時計回りにねじるように(即ち圧電素子がZ撚りにねじれるように)100°/sの速度で0°から45°まで回転した後、−100/sの速度で45°から0°まで回転する往復ねじり動作を10回繰り返した。
上部と下部との2つのチャックを備え、下部のチャックは固定され、上部のチャックは下部のチャックの72mm上方に位置し、2つのチャックを結ぶ線分を直径とする仮想の円周上を上部のチャックが移動する試験装置を用い、圧電素子をチャックに把持して固定し、該円周上にて上部のチャックを12時の位置、下部のチャックを6時の位置としたとき、圧電素子を9時方向に凸に僅かに撓ませた状態とした後、上部のチャックを12時の位置から該円周上の1時、2時の位置を経由して3時の位置に一定速度で0.9秒かけて移動させた後、12時の位置まで0.9秒かけて移動させる往復曲げ動作を10回繰り返した。
50番手の綿糸で織られた平織布を表面に貼り付けた2枚の剛直な金属板によって、圧電素子の中央部64mmの長さの部分を上下から水平に挟み(下部の金属板は台に固定されている)、上から3.2Nの垂直荷重をかけ、金属板表面の綿布と圧電素子との間が滑らないようにした状態のまま、上の金属板を0Nから1Nの荷重まで1秒かけて圧電素子の長尺方向に引っ張った後、引張荷重を0Nまで1秒かけて戻すせん断動作を10回繰り返した。
株式会社オリエンテック製万能試験機「テンシロンRTC−1225A」を用い、水平で剛直な金属台上に静置した圧電素子の中央部64mmの長さの部分を、上部のクロスヘッドに設置された剛直な金属板により水平に圧電素子を挟み、圧電素子から上部の金属板への反力が0.01Nから20Nとなるまで0.6秒かけて上部のクロスヘッドを下げて押圧し、反力が0.01Nとなるまで0.6秒かけて除圧する動作を10回繰り返した。
実施例1の試料として、図3に示すように、導電性繊維CF1を芯糸とし、8打ち丸組紐製紐機の8本のキャリアのうち、Z撚り方向に組まれる4本のキャリアおよびS撚り方向に組まれる4本のキャリア全てに上記の圧電性繊維PF1をセットして組むことで、芯糸の周りにZ撚り方向およびS撚り方向ともに圧電性繊維PF1がらせん状に巻かれた組紐状圧電素子1を作成した。組紐状圧電素子のRi、Ro、HPを測定し、計算された中心軸の方向に対する圧電性高分子の配向角度θの値、およびT1/T2の値を表2に示す。
組紐状圧電素子1を15cmの長さに切断し、芯の導電性繊維をHi極とし、周辺をシールドする金網をLo極としてエレクトロメータ(Keysight社 B2987A)に接続し、電流値をモニタした。引張試験、ねじり試験、曲げ試験、せん断試験および押圧試験時の電流値を表2に示す。
組紐状圧電素子1を芯糸とし、製紐機の8本のキャリアのうち、Z撚り方向に組まれる4本のキャリアおよびS撚り方向に組まれる4本のキャリア全てに上記の導電性繊維CF2をセットして組むことで、組紐状圧電素子1の周りを導電性繊維で覆ったものを作製し、組紐状圧電素子2とした。組紐状圧電素子のRi、Ro、HPを測定し、計算された中心軸の方向に対する圧電性高分子の配向角度θの値、およびT1/T2の値を表2に示す。
組紐状圧電素子2を15cmの長さに切断し、芯の導電性繊維をHi極とし、鞘の導電性繊維をLo極としてエレクトロメータ(Keysight社 B2987A)に接続し、電流値をモニタした。引張試験時、ねじり試験、曲げ試験、せん断試験および押圧試験の電流値を表2に示す。
PF1の代わりにPF2を使用し、巻付け速度を調整した以外は組紐状圧電素子1と同様にして組紐状圧電素子を作成し、この組紐状圧電素子1を芯糸とし、組紐状圧電素子2と同様に導電性繊維で覆ったものを作製し、組紐状圧電素子3とした。組紐状圧電素子3のRi、Ro、HPを測定し、計算された中心軸の方向に対する圧電性高分子の配向角度θの値、およびT1/T2の値を表2に示す。
組紐状圧電素子3を15cmの長さに切断し、芯の導電性繊維をHi極とし、鞘の導電性繊維をLo極としてエレクトロメータ(Keysight社 B2987A)に接続し、電流値をモニタした。引張試験時、ねじり試験、曲げ試験、せん断試験および押圧試験の電流値を表2に示す。
CF1の代わりにCF2を使用し、巻付け速度を調整した以外は組紐状圧電素子1と同様にして組紐状圧電素子を作成し、この組紐状圧電素子1を芯糸とし、組紐状圧電素子2と同様に導電性繊維で覆ったものを作製し、組紐状圧電素子4とした。組紐状圧電素子4のRi、Ro、HPを測定し、計算された中心軸の方向に対する圧電性高分子の配向角度θの値、およびT1/T2の値を表2に示す。
組紐状圧電素子4を15cmの長さに切断し、芯の導電性繊維をHi極とし、鞘の導電性繊維をLo極としてエレクトロメータ(Keysight社 B2987A)に接続し、電流値をモニタした。引張試験時、ねじり試験、曲げ試験、せん断試験および押圧試験の電流値を表2に示す。
導電性繊維CF1を芯糸とし、16打ち丸組紐製紐機の16本のキャリアのうち、Z撚り方向に組まれる8本のキャリアおよびS撚り方向に組まれる8本のキャリア全てに上記の圧電性繊維PF1をセットして組むことで、芯糸の周りにZ撚り方向およびS撚り方向ともに圧電性繊維PF1がらせん状に巻かれた組紐状圧電素子5を作成した。組紐状圧電素子5のRi、Roを測定し、HPは製造時の回転数(100回/m)から求め、計算された中心軸の方向に対する圧電性高分子の配向角度θの値、およびT1/T2の値を表2に示す。
組紐状圧電素子5を15cmの長さに切断し、芯の導電性繊維をHi極とし、周辺をシールドする鞘の導電性繊維をLo極としてエレクトロメータ(Keysight社 B2987A)に接続し、電流値をモニタした。引張試験、ねじり試験、曲げ試験、せん断試験および押圧試験時の電流値を表2に示す。
CF1を芯糸とし、PF1を芯糸の周りにS撚り方向に3000回/mのカバリング回数で巻きつけ、その外側にさらにPF1をZ撚り方向に3000回/mのカバリング回数で巻きつけ、その外側にさらにCF2をS撚り方向に3000回/mのカバリング回数で巻きつけ、その外側にさらにCF2をZ撚り方向に3000回/mのカバリング回数で巻きつけ、芯糸の周りにZ撚り方向およびS撚り方向に圧電性繊維PF1がらせん状に巻かれ、さらに外側を導電性繊維で覆ったカバリング糸状圧電素子1を作成した。カバリング糸状圧電素子1のRi、Roを測定し、HPは製造時の回転数(3000回/m)から求め、計算された中心軸の方向に対する圧電性高分子の配向角度θの値、およびT1/T2の値を表2に示す。RiおよびRoは、断面においてS撚り方向およびZ撚り方向の圧電性繊維が存在する領域を合わせて圧電性構造体の占める領域として測定した。
カバリング糸状圧電素子1を15cmの長さに切断し、芯の導電性繊維をHi極とし、周辺をシールドする鞘の導電性繊維をLo極としてエレクトロメータ(Keysight社 B2987A)に接続し、電流値をモニタした。引張試験、ねじり試験、曲げ試験、せん断試験および押圧試験時の電流値を表2に示す。
CF1を芯糸とし、PF1を芯糸の周りにS撚り方向に6000回/mのカバリング回数で巻きつけ、その外側にさらにPF1をZ撚り方向に6000回/mのカバリング回数で巻きつけ、その外側にさらにCF2をS撚り方向に3000回/mのカバリング回数で巻きつけ、その外側にさらにCF2をZ撚り方向に3000回/mのカバリング回数で巻きつけ、芯糸の周りにZ撚り方向およびS撚り方向に圧電性繊維PF1がらせん状に巻かれ、さらに外側を導電性繊維で覆ったカバリング糸状圧電素子2を作成した。カバリング糸状圧電素子2のRi、Roを測定し、HPは製造時の回転数(6000回/m)から求め、計算された中心軸の方向に対する圧電性高分子の配向角度θの値、およびT1/T2の値を表2に示す。RiおよびRoは、断面においてS撚り方向およびZ撚り方向の圧電性繊維が存在する領域を合わせて圧電性構造体の占める領域として測定した。
カバリング糸状圧電素子2を15cmの長さに切断し、芯の導電性繊維をHi極とし、周辺をシールドする鞘の導電性繊維をLo極としてエレクトロメータ(Keysight社 B2987A)に接続し、電流値をモニタした。引張試験、ねじり試験、曲げ試験、せん断試験および押圧試験時の電流値を表2に示す。
PF1の代わりにIF1を使用した以外は組紐状圧電素子1と同様にして組紐状圧電素子を作成し、この組紐状素子を芯糸とし、組紐状圧電素子2と同様に導電性繊維で覆ったものを作製し、組紐状素子1とした。圧電性高分子を含まないため、θおよびT1/T2の値は測定できない。
組紐状素子1を15cmの長さに切断し、芯の導電性繊維をHi極とし、鞘の導電性繊維をLo極としてエレクトロメータ(Keysight社 B2987A)に接続し、電流値をモニタした。引張試験時、ねじり試験、曲げ試験、せん断試験および押圧試験の電流値を表2に示す。
PF1の代わりにIF1を使用した以外はカバリング糸状圧電素子1と同様にしてカバリング糸状素子を作成し、カバリング糸状素子3とした。圧電性高分子を含まないため、θおよびT1/T2の値は測定できない。
カバリング糸状素子3を15cmの長さに切断し、芯の導電性繊維をHi極とし、鞘の導電性繊維をLo極としてエレクトロメータ(Keysight社 B2987A)に接続し、電流値をモニタした。引張試験時、ねじり試験、曲げ試験、せん断試験および押圧試験の電流値を表2に示す。
PF1またはPF2の巻付け速度を変更した以外は組紐状圧電素子2および3と同様にして、2本の組紐状圧電素子を作成し、組紐状圧電素子6および7とした。組紐状圧電素子3および4のRi、Ro、HPを測定し、計算された中心軸の方向に対する圧電性高分子の配向角度θの値、およびT1/T2の値を表2に示す。
組紐状圧電素子6および7をそれぞれ15cmの長さに切断し、芯の導電性繊維をHi極とし、鞘の導電性繊維をLo極としてエレクトロメータ(Keysight社 B2987A)に接続し、電流値をモニタした。引張試験時、ねじり試験、曲げ試験、せん断試験および押圧試験の電流値を表2に示す。
S撚り方向に巻いたPF1の代わりにIF1を使用した以外は組紐状圧電素子2と同様にして組紐状圧電素子8を作成した。組紐状圧電素子8のRi、Ro、HPを測定し、計算された中心軸の方向に対する圧電性高分子の配向角度θの値、およびT1/T2の値を表2に示す。RiおよびRoは、断面において圧電性繊維と絶縁性繊維が存在する領域を合わせて圧電性構造体の占める領域として測定した。組紐状圧電素子については以下の比較例も同様である。
組紐状圧電素子8を15cmの長さに切断し、芯の導電性繊維をHi極とし、鞘の導電性繊維をLo極としてエレクトロメータ(Keysight社 B2987A)に接続し、電流値をモニタした。引張試験時、ねじり試験、曲げ試験、せん断試験および押圧試験の電流値を表2に示す。
Z撚り方向に巻いたPF1の代わりにIF1を使用した以外は組紐状圧電素子3と同様にして組紐状圧電素子9を作成した。組紐状圧電素子9のRi、Ro、HPを測定し、計算された中心軸の方向に対する圧電性高分子の配向角度θの値、およびT1/T2の値を表2に示す。
組紐状圧電素子9を15cmの長さに切断し、芯の導電性繊維をHi極とし、鞘の導電性繊維をLo極としてエレクトロメータ(Keysight社 B2987A)に接続し、電流値をモニタした。引張試験時、ねじり試験、曲げ試験、せん断試験および押圧試験の電流値を表2に示す。
Z撚り方向に巻いたPF1の代わりにIF1を使用した以外はカバリング糸状圧電素子1と同様にしてカバリング糸状圧電素子4を作成した。カバリング糸状圧電素子4のRi、Roを測定し、HPは製造時の回転数(3000回/m)から求め、計算された中心軸の方向に対する圧電性高分子の配向角度θの値、およびT1/T2の値を表2に示す。RiおよびRoは、断面において圧電性繊維が存在する領域を圧電性構造体の占める領域として測定した。
カバリング糸状圧電素子4を15cmの長さに切断し、芯の導電性繊維をHi極とし、周辺をシールドする鞘の導電性繊維をLo極としてエレクトロメータ(Keysight社 B2987A)に接続し、電流値をモニタした。引張試験、ねじり試験、曲げ試験、せん断試験および押圧試験時の電流値を表2に示す。
さらに、表には示していないが、実施例1〜10の素子はS撚り方向にねじりを与えた時の信号と、Z撚り方向にねじりを与えた時の信号とを比べると、極性が互いに逆で絶対値が概ね同じ信号を発生したため、これらの素子はねじり荷重や変位の定量に適していることが分かる。一方、比較例3および4の素子はS撚り方向にねじりを与えた時の信号と、Z撚り方向にねじりを与えた時の信号とを比べると、極性が互いに逆である場合も同じである場合もあったため、これらの素子はねじり荷重や変位の定量に適していないことが分かる。
また、表には示していないが、実施例2のねじり試験時のノイズレベルは、実施例1のねじり試験時のノイズレベルより低く、圧電性構造体の外側に導電体を配置してシールドとした素子ではノイズを低減できることが分かる。
1−1 円筒形の圧電性構造体
1−2 円柱形の圧電性構造体
2 圧電性高分子
CL 中心軸
OL 配向方向
HP らせんピッチ
A 圧電性繊維
B 導電性繊維
11 組紐状圧電素子
12 鞘部
13 芯部
15 布帛状圧電素子
16 布帛
17 絶縁性繊維
18 導電性繊維
110 デバイス
111 圧電素子
112 増幅手段
113 出力手段
114 送信手段
CL 繊維軸
α 巻きつけ角度
Claims (11)
- 配向した圧電性高分子を円筒形または円柱形に配置した構造体であり、圧電性高分子が配置された円筒形または円柱形の中心軸の方向に対する圧電性高分子の配向角度が50°以上90°以下であり、圧電性高分子は配向軸を3軸とした時の圧電定数d14の絶対値が0.1pC/N以上1000pC/N以下の値を有する結晶性高分子を主成分として含む、構造体。
- 前記圧電性高分子はポリ−L−乳酸またはポリ−D−乳酸を主成分として含む、請求項1に記載の構造体。
- 前記圧電性高分子が配置された円筒形または円柱形の中心軸を軸としてねじり変形が与えられた時、該円筒形または円柱形の中心軸側と外側とに逆極性の電荷が発生する、請求項1または2に記載の構造体。
- 前記圧電性高分子は繊維状、フィラメント状またはテープ状のものが、組紐状、撚り紐状、カバリング糸状または引き揃え糸状にされて構成されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の構造体。
- 前記圧電性高分子は円筒形または円柱形の中心軸に垂直な断面において1つの閉領域のみを構成している、請求項1〜3のいずれか1項に記載の構造体。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の構造体と、前記構造体に隣接して配置された導電体と、を備える素子。
- 前記圧電性高分子が円筒形に配置されており、該円筒形の中心軸の位置に前記導電体を配置した、請求項6に記載の素子。
- 前記導電体が導電性繊維からなり、前記圧電性高分子は圧電性繊維として前記導電性繊維の周りに組紐状に組まれて配置される、請求項7に記載の素子。
- 前記圧電性高分子が配置された円筒形の外側に前記導電体を配置した、請求項6〜8のいずれか1項に記載の素子。
- 前記導電体は導電性繊維からなり、前記圧電性高分子が配置された円筒形の周りに前記導電性繊維が組紐状に組まれて配置される、請求項9に記載の素子。
- 請求項6〜10のいずれか1項に記載の素子と、
圧電性高分子が配置された円筒形の中心軸の方向にねじり変形が与えられた時に発生する電荷に応じて、前記導電体にて発生する電気信号が出力される出力端子と、
前記出力端子を介して出力される電気信号を検出する電気回路と、
を備えるセンサー。
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