本発明による圧電センサは、少なくとも一部分が曲がって配置された導電性繊維と、導電性繊維に少なくとも部分的に接触するように配置された圧電性繊維と、導電性繊維に対して間隔を置いて配置される導電体を有する接地部と、圧電性繊維に印加された応力に応じて導電性繊維にて発生する電気信号が出力される出力端子と、を備える。出力端子には、圧電性繊維に印加された応力に応じて導電性繊維から出力される電気信号を検出する電気回路が接続される。
(圧電センサの基本構成)
図1は、実施形態に係る圧電センサの基本構成を示す模式図である。圧電センサ1000は、導電性繊維Bと、圧電性繊維Aと、接地部22と、出力端子21と、増幅部11及び出力部12を有する電気回路と、を備える。
導電性繊維Bは、長手方向に沿った少なくとも一部分が曲がって配置される。図1に示した導電性繊維Bの曲がる形状や曲がり具合は一例であり、導電性繊維Bの長手方向において、少なくとも一部分が曲がっていればよい。図1において、導電性繊維Bの曲がった領域を参照符号100で示す。導電性繊維Bの曲がった領域100を設ける理由については後述する。
圧電性繊維Aは、導電性繊維Bに少なくとも部分的に接触するように配置される。図1では一例として圧電性繊維Aは導電性繊維Bの長手方向に沿って配置された例を示したが、圧電性繊維Aと導電性繊維Bとの接触の仕方はどのようなものであってもよい。なお、信号強度の観点から、圧電性繊維Aと導電性繊維Bとの接触面積は広い方が好ましい。
接地部22は、導電体を有し、導電性繊維Bに対して間隔を置いて配置される。したがって、接地部22と導電性繊維Bとの間でキャパシタンス成分Cが形成される。図1ではキャパシタンス成分Cを点線のキャパシタにて示したが、電子部品としてのキャパシタが接地部22と導電性繊維Bとの間に物理的に配置されるわけではない。なお、図1では一例として、接地部22からの引き出し線によって接地(アース)された例を示したが、例えば、他の電子部品の接地端子に接地部22からの引き出し線を接続することで接地(アース)をとってもよい。また、接地部22は、導電性繊維Bに対して間隔を置いて配置されるのであれば任意の位置に配置してもよい。なお、接地部22からの引き出し線として、導電体をそのまま用いてもよく、またあるいは導電性の配線を別途設けてもよい。
出力端子21は、圧電性繊維Aに印加された応力に応じて導電性繊維Bにて発生する電気信号を出力するために設けられる。出力端子21には、圧電性繊維Aに印加された応力に応じて導電性繊維Bから出力される電気信号を検出する電気回路が接続される。出力端子21に接続される電気回路として、圧電性繊維Aに印加された応力に応じて導電性繊維Bから出力される電気信号を増幅する増幅部11と、増幅部11で増幅された電気信号を出力する出力部12とが設けられる。出力部12から出力された電気信号は、例えば外部機器(図示せず)へ送信され、外部機器(図示せず)における演算処理にて圧電センサ1000の折り曲げの有無及び折り曲げの度合いを検出することができる。なお、外部機器への送信方式を無線によるもの有線によるものにするかは、構成するセンサに応じて適宜決定すればよい。また例えば、圧電センサ1000内に、出力部12から出力された電気信号に基づき圧電センサの折り曲げの有無及び折り曲げの度合いを演算する演算部(図示せず)を設けてもよい。
(圧電センサ1000における電気信号の発生原理)
続いて、本発明による圧電センサ1000における電気信号の発生原理について説明する。
図2は、実施形態に係る圧電センサにおける電気信号の発生原理を説明する模式的な断面図である。
図2(A)において、圧電センサ1000が折り曲げられておらず伸びた状態では、導電性繊維B及び圧電性繊維Aにおいて、正負各電荷は均一に分布している。圧電センサ1000の折り曲げ及び伸ばし動作に応じて、圧電性繊維Aの折り曲げ及び伸ばしが起こる。
圧電センサ1000内の圧電性繊維Aの折り曲げが始まると、図2(B)に示すように、圧電性繊維Aにおいて分極が発生し、電荷の正負が一方向に配列された状態になる。圧電性繊維Aの分極により発生した正負各電荷の配列につられて、出力端子21を介して導電性繊維Bから負の電荷が流出する。出力端子21を介した負の電荷の移動は微小な電気信号(すなわち電流)の流れとして現れ、増幅部11はこの電気信号を増幅し、出力部12は、増幅部11で増幅された電気信号を出力する。図2(B)に示す分極状態は、圧電センサ1000の折り曲げが維持(固定)される限り継続する。
圧電センサ1000内の圧電性繊維Aの折り曲げ形状が維持(固定)された状態(図2(B))から圧電性繊維Aを伸ばす動作が始まると、図2(C)に示すように圧電性繊維Aにおいて分極は解消し、圧電性繊維Aにおいて正負各電荷が均一に分布した状態になる。圧電性繊維Aにおける正負各電荷の均一分布につられて、出力端子21を介して導電性繊維Bへ負の電荷が流入する。出力端子21を介した負の電荷の移動は微小な電気信号(すなわち電流)の流れとして現れるが、増幅部11ではこの電気信号を増幅し、増幅された電気信号を出力部12にて出力する。なお、圧電センサ1000内の圧電性繊維Aの折り曲げ動作中の状態(図2(B))と折り曲げ動作から伸ばす動作に遷移している状態(図2(C))とでは、出力端子21を介した負の電荷の移動の向きは逆向きになるので、折り曲げ動作と伸ばし動作とでは逆極性の電気信号が発生する。例えば、圧電性繊維Aの折り曲げ動作時には正の電気信号が発生し、圧電性繊維Aの伸ばし動作時には負の電気信号が発生する。
本実施形態では、圧電性繊維Aに対する折り曲げ動作及び伸ばし動作に伴い発生する微小な電気信号を、増幅部11によって増幅し、外部機器(図示せず)における演算処理により、増幅電気信号が正か負かを切り分け、圧電性繊維Aの折り曲げの有無及び折り曲げの度合い(換言すれば圧電センサ1000の折り曲げの有無及び折り曲げの度合い)を検出する。例えば、外部機器(図示せず)において、増幅部11にて増幅され出力部12から出力された増幅電気信号を時間積分し、そして、この積分値が、所定の上限値以上になったときは「折り曲げ動作」と判定し、所定の下限値未満となったときは「伸ばし動作」と判定する演算処理を実行することができる。
なお、本明細書においては、圧電性繊維Aに印加された応力に応じて電気信号が発生する、と記載したが、これは圧電性繊維Aの歪みに応じて電気信号が発生する、と同義である。
(LCフィルタ)
本発明では、導電性繊維Bは、長手方向に沿った少なくとも一部分が曲がって配置され、接地部22は、導電性繊維Bに対して間隔を置いて配置されるが、このような配置によっていわゆる「LCフィルタ」が構成される。以下、このLCフィルタについて図1及び図3を参照して説明する。
図3は、実施形態に係る圧電センサの等価回路を示す回路図である。上述のように、導電性繊維Bと接地部22とは間隔を置いて配置される。したがって、導電性繊維Bと接地部22との間にはキャパシタンス成分Cが発生する。キャパシタンス成分Cが発生する条件としては、一例として、導電性繊維Bと接地部22とが線状体である場合には、1cm以内の距離である領域が5mm以上連続していることが好ましく、より好ましくは、1cm以内の距離である領域が1cm以上連続していることであり、さらに好ましくは、0.5cm以内の距離である領域が1cm以上連続していることである。ここで、導電性繊維Bと接地部22との位置関係は、平行である必要はなく、ねじれの位置関係であってもよい。もちろん、接地部22は線状体である必要はなく、平板や櫛形などの複雑な形状をしていてもよい。また、図1に示した領域100内において、導電性繊維Bは長手方向に曲がった形状を有するので、導電性繊維Bが螺旋状(もしくは螺旋の一部)に巻かれた構造となり、一種のソレノイドコイルが形成されているとみなすことができる。また、導電性繊維Bに微小電気信号(電流)が流れることに起因して自己誘導現象が発生する。このような理由で領域100近傍にはインダクタンス成分Lが発生する。インダクタンス成分Lが発生する条件としては、導電性繊維Bはコイル形状であることが好ましいが、後述する濾波(フィルタリング)の効果が得られればよく、一例として、導電性繊維B上の道のりにおいて1cm以上離れたところに位置する2点間の距離が0.5cm以下であるような領域を有する形状が好ましく、配線上の道のりにおいて2cm以上離れたところに位置する2点間の距離が1cm以下であるような領域を有する形状がさらに好ましく、配線上の道のりにおいて3cm以上離れたところに位置する2点間の距離が1cm以下であるような領域を有する形状がさらに好ましい。よって、図1に示す圧電センサの等価回路は図3のように表される。なお、導電性繊維Bには抵抗成分も存在するが図3では図示を省略している。図3に示す等価回路は、圧電性繊維Aに対する折り曲げ動作及び伸ばし動作に伴い導電性繊維Bに発生する微小な電気信号の発生源に対し、LCフィルタが接続されていることを意味している。したがって、圧電センサから出力される電気信号(電流)は、当該LCフィルタにより濾波(フィルタリング)されたものとなる。なお、LCフィルタによる濾波の効果については、後述の組紐状圧電素子1に係る実施形態に関して説明する。
(圧電センサの構成例)
上述のように導電性繊維Bは、長手方向において少なくとも一部分が曲がっていればよく、圧電性繊維Aと導電性繊維Bとの接触の仕方はどのようなものであってもよい。また、接地部22は、導電性繊維Bに対して間隔を置いて配置されて導電性繊維Bとの間でキャパシタンス成分が形成されるのであれば任意の位置に配置してもよい。導電性繊維B、圧電性繊維A及び接地部22の配置例について図4にいくつか例示する。図4は、実施形態に係る圧電センサの構成例を示す模式図である。例えば図4(A)に示すように、導電性繊維Bを、接地部22の一端及びこの一端から延びる長手方向に沿った部分を所定の間隔をもって取り囲むようにU字状に配置してもよい。また例えば図4(B)に示すように、導電性繊維Bを、接地部22の長手方向から離れるようにU字状に配置してもよく、また、圧電性繊維Aを導電性繊維Bと交差して接触するように配置してもよい。また例えば図4(C)に示すように、導電性繊維Bを、J字状に配置してもよく、また、接地部22を導電性繊維Bと間隔を置いて交差するように配置してもよい。なお、図4に示した配置例はあくまでも一例であり、図示された以外の配置を排除することを意図するものではない。例えば、図4(A)、図4(B)及び図4(C)に示された導電性繊維B、圧電性繊維A及び接地部22の配置例を、矛盾しない範囲で適宜組み合わせてもよい。
(組紐状圧電素子を用いた圧電センサ)
続いて、本発明による圧電センサの他の実施形態として、導電性繊維と圧電性繊維とを組紐状圧電素子で構成する場合について説明する。
図5は、実施形態に係る組紐状圧電素子の構成例を示す模式図である。組紐状圧電素子1は、導電性繊維Bで形成された芯部3と、芯部3を被覆するように組紐状の圧電性繊維Aで形成された鞘部2と、を備えている。圧電性繊維Aは主成分としてポリ乳酸を含むことができる。導電性繊維Bに対する圧電性繊維Aの巻きつけ角度αは15°以上、75°以下であることが好ましい。
組紐状圧電素子1では、少なくとも一本の導電性繊維Bの外周面を多数の圧電性繊維Aが緻密に取り巻いている。特定の理論に束縛されるものではないが、組紐状圧電素子1に変形が生じると、多数の圧電性繊維Aそれぞれに変形による応力が生じ、それにより多数の圧電性繊維Aそれぞれに電場が生じ(圧電効果)、その結果、導電性繊維Bを取り巻く多数の圧電性繊維Aの電場を重畳した電圧変化が導電性繊維Bに生じるものと推測される。すなわち圧電性繊維Aの組紐状の鞘部2を用いない場合と比較して導電性繊維Bからの電気信号が増大する。それにより、組紐状圧電素子1では、比較的小さな変形で生じる応力によっても、大きな電気信号を取り出すことが可能となる。なお、導電性繊維Bは複数本であってもよい。
ここで、圧電性繊維Aは主成分としてポリ乳酸を含むことが好ましい。「主成分として」とは、圧電性繊維Aの成分のうち最も多い成分がポリ乳酸であるとの意味である。ポリ乳酸中の乳酸ユニットは90モル%以上であることが好ましく、95モル%以上であることがより好ましく、98モル%以上がさらに好ましい。
また、導電性繊維Bに対する圧電性繊維Aの巻きつけ角度αは15°以上、75°以下であることが好ましい。すなわち、導電性繊維B(芯部3)の中心軸CLの方向に対して、圧電性繊維Aの巻きつけ角度αは15°以上、75°以下である。ただし、本実施形態では、導電性繊維Bの中心軸CLは、圧電性繊維Aの組紐(鞘部2)の中心軸(以下、「組紐軸」ともいう。)と重なることから、圧電性繊維Aの組紐軸の方向に対して、圧電性繊維Aの巻きつけ角度αは15°以上、75°以下である、ということもできる。より大きな電気信号を取り出す観点からは、角度αは25°以上、65°以下であることが好ましく、35°以上、55°以下であることがより好ましく、40°以上、50°以下であることがさらに好ましい。角度αがこの角度範囲を外れると、圧電性繊維Aに生じる電界が著しく低下し、それにより導電性繊維Bで得られる電気信号が著しく低下してしまう場合があるからである。
なお、上記角度αについては、鞘部2を形成する圧電性繊維Aの主方向と導電性繊維Bの中心軸CLとのなす角ともいうことができ、圧電性繊維Aの一部が弛んでいたり、毛羽だっていてもよい。
ここで、圧電性繊維Aに生じる電界が著しく低下する理由は以下のとおりである。圧電性繊維Aはポリ乳酸を主成分とし、圧電性繊維Aの繊維軸の方向に一軸配向している。ここで、ポリ乳酸は、その配向方向(この場合には圧電性繊維Aの繊維軸の方向)に対してせん断応力が生じた場合に電界を生じるが、その配向方向に対して引張応力や圧縮応力が生じた場合に電界をあまり生じない。したがって、組紐軸の方向に平行に変形したときに圧電性繊維Aにせん断応力が生じるようにするためには、圧電性繊維A(ポリ乳酸)の配向方向が組紐軸に対して所定の角度範囲にあることがよいと推測される。
なお、組紐状圧電素子1では、本発明の目的を達成する限り、鞘部2では圧電性繊維A以外の他の繊維と組み合わせて混繊等を行ってもよいし、芯部3では導電性繊維B以外の他の繊維と組み合わせて混繊等を行ってもよい。
導電性繊維Bの芯部3と組紐状の圧電性繊維Aの鞘部2とで構成される組紐状圧電素子の長さは特に限定はない。例えば、その組紐状圧電素子は製造において連続的に製造され、その後に必要な長さに切断して利用してもよい。組紐状圧電素子の長さは1mm〜10m、好ましくは、5mm〜2m、より好ましくは1cm〜1mである。長さが短過ぎると繊維形状である利便性が失われ、また、長さが長過ぎると導電性繊維Bの抵抗値を考慮する必要が出てくるであろう。
以下、本発明の圧電センサにおける導電性繊維及び圧電性繊維等の各構成、さらにはこれらを組紐状圧電素子で構成した場合の各構成について詳細に説明する。
(導電性繊維)
導電性繊維Bとしては、導電性を示すものであればよく、公知のあらゆるものが用いられる。導電性繊維Bとしては、例えば、金属繊維、導電性高分子からなる繊維、炭素繊維、繊維状あるいは粒状の導電性フィラーを分散させた高分子からなる繊維、あるいは繊維状物の表面に導電性を有する層を設けた繊維が挙げられる。繊維状物の表面に導電性を有する層を設ける方法としては、金属コート、導電性高分子コート、導電性繊維の巻付けなどが挙げられる。なかでも金属コートが導電性、耐久性、柔軟性などの観点から好ましい。金属をコートする具体的な方法としては、蒸着、スパッタ、電解メッキ、無電解メッキなどが挙げられるが生産性などの観点からメッキが好ましい。このような金属をメッキされた繊維は金属メッキ繊維ということができる。
金属をコートされるベースの繊維として、導電性の有無によらず公知の繊維を用いることができ、例えば、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、塩化ビニル繊維、アラミド繊維、ポリスルホン繊維、ポリエーテル繊維、ポリウレタン繊維等の合成繊維の他、綿、麻、絹等の天然繊維、アセテート等の半合成繊維、レーヨン、キュプラ等の再生繊維を用いることができる。ベースの繊維はこれらに限定されるものではなく、公知の繊維を任意に用いることができ、これらの繊維を組み合わせて用いてもよい。
ベースの繊維にコートされる金属は導電性を示し、本発明の効果を奏する限り、いずれを用いてもよい。例えば、金、銀、白金、銅、ニッケル、スズ、亜鉛、パラジウム、酸化インジウム錫、硫化銅など、及びこれらの混合物や合金などを用いることができる。
導電性繊維Bに屈曲耐性のある金属コートした有機繊維を使用すると、導電性繊維が折れることが非常に少なく、圧電素子を用いたセンサとしての耐久性や安全性に優れる。
導電性繊維Bはフィラメントを複数本束ねたマルチフィラメントであっても、また、フィラメント一本からなるモノフィラメントであってもよい。マルチフィラメントの方が電気特性の長尺安定性の観点で好ましい。モノフィラメント(紡績糸を含む)の場合、その単糸径は1μm〜5000μmであり、好ましくは2μm〜100μmである。さらに好ましくは3μm〜50μmである。マルチフィラメントの場合、フィラメント数としては、1本〜100000本が好ましく、より好ましくは5本〜500本、さらに好ましくは10本〜100本である。ただし、導電性繊維Bの繊度・本数とは、組紐を作製する際に用いる芯部3の繊度・本数であり、複数本の単糸(モノフィラメント)で形成されるマルチフィラメントも一本の導電性繊維Bと数えるものとする。ここで芯部3とは、導電性繊維以外の繊維を用いた場合であっても、それを含めた全体の量とする。
繊維の直径が小さいと強度が低下しハンドリングが困難となり、また、直径が大きい場合にはフレキシブル性が犠牲になる。導電性繊維Bの断面形状としては円または楕円であることが、圧電素子の設計及び製造の観点で好ましいが、これに限定されない。
また、圧電性高分子からの電気出力を効率よく取り出すため、電気抵抗は低いことが好ましく、体積抵抗率としては10-1Ω・cm以下であることが好ましく、より好ましくは10-2Ω・cm以下、さらに好ましくは10-3Ω・cm以下である。ただし、電気信号の検出で十分な強度が得られるのであれば導電性繊維Bの抵抗率はこの限りではない。
導電性繊維Bは、本発明の用途から、繰り返しの曲げやねじりといった動きに対して耐性がなければならない。その指標としては、結節強さが、より大きいものが好まれる。結節強さはJIS L1013 8.6の方法で測定することができる。本発明に適当な結節強さの程度としては、0.5cN/dtex以上であることが好ましく、1.0cN/dtex以上であることがより好ましく、1.5cN/dtex以上であることがさらに好ましく、2.0cN/dtex以上であることが最も好ましい。また、別の指標としては、曲げ剛性が、より小さいものが好まれる。曲げ剛性は、カトーテック(株)製KES―FB2純曲げ試験機などの測定装置で測定されるのが一般的である。本発明に適当な曲げ剛性の程度としては、東邦テナックス(株)製の炭素繊維“テナックス”(登録商標)HTS40−3Kよりも小さいほうが好ましい。具体的には、導電性繊維の曲げ剛性が0.05×10-4N・m2/m以下であることが好ましく、0.02×10-4N・m2/m以下であることがより好ましく、0.01×10-4N・m2/m以下であることがさらに好ましい。
(圧電性繊維)
圧電性繊維Aの材料である圧電性高分子としてはポリフッ化ビニリデンやポリ乳酸のような圧電性を示す高分子を利用できるが、本実施形態では上記のように圧電性繊維Aは主成分としてポリ乳酸を含むことが好適である。ポリ乳酸は、例えば溶融紡糸後に延伸によって容易に配向して圧電性を示し、ポリフッ化ビニリデンなどで必要となる電界配向処理が不要な点で生産性に優れている。しかしこのことは、本発明を実施するに際してポリフッ化ビニリデンその他の圧電性材料の使用を排除することを意図するものではない。
ポリ乳酸としては、その結晶構造によって、L−乳酸、L−ラクチドを重合してなるポリ−L−乳酸、D−乳酸、D−ラクチドを重合してなるポリ−D−乳酸、さらに、それらのハイブリッド構造からなるステレオコンプレックスポリ乳酸などがあるが、圧電性を示すものであればいずれも利用できる。圧電率の高さの観点で好ましくは、ポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸である。ポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸はそれぞれ、同じ応力に対して分極が逆になるために、目的に応じてこれらを組み合わせて使用することも可能である。
ポリ乳酸の光学純度は99%以上であることが好ましく、99.3%以上であることがより好ましく、99.5%以上であることがさらに好ましい。光学純度が99%未満であると著しく圧電率が低下する場合があり、圧電性繊維Aの形状変化よって十分な電気信号を得ることが難しくなる場合がある。特に、圧電性繊維Aは、主成分としてポリ−L−乳酸またはポリ−D−乳酸を含み、これらの光学純度が99%以上であることが好ましい。
ポリ乳酸を主成分とする圧電性繊維Aは、製造時に延伸されて、その繊維軸方向に一軸配向している。さらに、圧電性繊維Aは、その繊維軸方向に一軸配向しているだけでなく、ポリ乳酸の結晶を含むものであることが好ましく、一軸配向したポリ乳酸の結晶を含むものであることがより好ましい。なぜなら、ポリ乳酸はその結晶性が高いこと及び一軸配向していることでより大きな圧電性を示すためである。
結晶性及び一軸配向性はホモPLA結晶化度Xhomo(%)及び結晶配向度Ao(%)で求められる。本発明の圧電性繊維Aとしては、ホモPLA結晶化度Xhomo(%)及び結晶配向度Ao(%)が下記式(1)を満たすことが好ましい。
Xhomo×Ao×Ao÷106≧0.26 (1)
上記式(1)を満たさない場合、結晶性及び/または一軸配向性が十分でなく、動作に対する電気信号の出力値が低下したり、特定方向の動作に対する信号の感度が低下したりするおそれがある。上記式(1)の左辺の値は、0.28以上がより好ましく、0.3以上がさらに好ましい。ここで、各々の値は下記に従って求める。
ホモポリ乳酸結晶化度Xhomo:
ホモポリ乳酸結晶化度Xhomoについては、広角X線回折分析(WAXD)による結晶構造解析から求める。広角X線回折分析(WAXD)では、リガク製ultrax18型X線回折装置を用いて透過法により、以下条件でサンプルのX線回折図形をイメージングプレートに記録する。
X線源: Cu−Kα線(コンフォーカル ミラー)
出力: 45kV×60mA
スリット: 1st:1mmΦ,2nd:0.8mmΦ
カメラ長: 120mm
積算時間: 10分
サンプル: 35mgのポリ乳酸繊維を引き揃え3cmの繊維束とする。
得られるX線回折図形において方位角にわたって全散乱強度Itotalを求め、ここで2θ=16.5°,18.5°,24.3°付近に現れるホモポリ乳酸結晶に由来する各回折ピークの積分強度の総和ΣIHMiを求める。これらの値から下記式(2)に従い、ホモポリ乳酸結晶化度Xhomoを求める。
ホモポリ乳酸結晶化度Xhomo(%)=ΣIHMi/Itotal×100 (2)
なお、ΣIHMiは、全散乱強度においてバックグランドや非晶による散漫散乱を差し引くことによって算出する。
(2)結晶配向度Ao:
結晶配向度Aoについては、上記の広角X線回折分析(WAXD)により得られるX線回折図形において、動径方向の2θ=16.5°付近に現れるホモポリ乳酸結晶に由来する回折ピークについて、方位角(°)に対する強度分布をとり、得られた分布プロファイルの半値幅の総計ΣWi(°)から次式(3)より算出する。
結晶配向度Ao(%)=(360−ΣWi)÷360×100 (3)
なお、ポリ乳酸は加水分解が比較的速いポリエステルであるから、耐湿熱性が問題となる場合においては、公知の、イソシアネート化合物、オキサゾリン化合物、エポキシ化合物、カルボジイミド化合物などの加水分解防止剤を添加してもよい。また、必要に応じてリン酸系化合物などの酸化防止剤、可塑剤、光劣化防止剤などを添加して物性改良してもよい。
また、ポリ乳酸は他のポリマーとのアロイとして用いてもよいが、ポリ乳酸を主たる圧電性高分子として用いるならば、アロイの全質量を基準として少なくとも50質量%以上でポリ乳酸を含有していることが好ましく、さらに好ましくは70質量%以上、最も好ましくは90質量%以上である。
アロイとする場合のポリ乳酸以外のポリマーとしては、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート共重合体、ポリメタクリレート等が好適な例として挙げられるが、これらに限定されるものではなく、本発明で目的とする圧電性を奏する限り、どのようなポリマーを用いてもよい。
圧電性繊維Aはフィラメントを複数本束ねたマルチフィラメントであっても、また、フィラメント一本からなるモノフィラメントであってもよい。モノフィラメント(紡績糸を含む)の場合、その単糸径は1μm〜5mmであり、好ましくは5μm〜2mm、さらに好ましくは10μm〜1mmである。マルチフィラメントの場合、その単糸径は0.1μm〜5mmであり、好ましくは2μm〜100μm、さらに好ましくは3μm〜50μmである。マルチフィラメントのフィラメント数としては、1本〜100000本が好ましく、より好ましくは50本〜50000本、さらに好ましくは100本〜20000本である。ただし、圧電性繊維Aの繊度や本数については、組紐を作製する際のキャリア1つあたりの繊度、本数であり、複数本の単糸(モノフィラメント)で形成されるマルチフィラメントも一本の圧電性繊維Aと数えるものとする。ここで、キャリア1つの中に、圧電性繊維以外の繊維を用いた場合であっても、それを含めた全体の量とする。
このような圧電性高分子を圧電性繊維Aとするためには、高分子から繊維化するための公知の手法を、本発明の効果を奏する限りいずれも採用することができる。例えば、圧電性高分子を押し出し成型して繊維化する手法、圧電性高分子を溶融紡糸して繊維化する手法、圧電性高分子を乾式あるいは湿式紡糸により繊維化する手法、圧電性高分子を静電紡糸により繊維化する手法、フィルムを形成した後に細くカットする手法、などを採用することができる。これらの紡糸条件は、採用する圧電性高分子に応じて公知の手法を適用すればよく、通常は工業的に生産の容易な溶融紡糸法を採用すればよい。さらに、繊維を形成後には形成された繊維を延伸する。それにより一軸延伸配向しかつ結晶を含む大きな圧電性を示す圧電性繊維Aが形成される。
また、圧電性繊維Aは、上記のように作製されたものを組紐とする前に、染色、撚糸、合糸、熱処理などの処理をすることができる。
さらに、圧電性繊維Aは、組紐を形成する際に繊維同士が擦れて断糸したり、毛羽が出たりする場合があるため、その強度と耐摩耗性は高い方が好ましく、強度は1.5cN/dtex以上であることが好ましく、2.0cN/dtex以上であることがより好ましく、2.5cN/dtex以上であることがさらに好ましく、3.0cN/dtex以上であることが最も好ましい。耐摩耗性は、JIS L1095 9.10.2 B法などで評価することができ、摩擦回数は100回以上が好ましく、1000回以上であることがより好ましく、5000回以上であることがさらに好ましく、10000回以上であることが最も好ましい。耐摩耗性を向上させるための方法は特に限定されるものではなく、公知のあらゆる方法を用いることができ、例えば、結晶化度を向上させたり、微粒子を添加したり、表面加工したりすることができる。また、組紐に加工する際に、繊維に潤滑剤を塗布して摩擦を低減させることもできる。
また、圧電性繊維の収縮率は、前述した導電性繊維の収縮率との差が小さいことが好ましい。収縮率差が大きいと、組紐作製後や布帛作製後の後処理工程や実使用時に熱がかかった時や経時変化により組紐が曲がったり、布帛の平坦性が悪くなったり、圧電信号が弱くなってしまう場合がある。収縮率を後述の沸水収縮率で定量化した場合、圧電性繊維の沸水収縮率S(p)及び導電性繊維の沸水収縮率S(c)が下記式(4)を満たすことが好適である。
|S(p)−S(c)|≦10 (4)
上記式(4)の左辺は5以下であることがより好ましく、3以下であればさらに好ましい。
また、圧電性繊維の収縮率は、導電性繊維以外の繊維、例えば絶縁性繊維の収縮率との差も小さいことが好ましい。収縮率差が大きいと、組紐作製後や布帛作製後の後処理工程や実使用時に熱がかかった時や経時変化により組紐が曲がったり、布帛の平坦性が悪くなったり、圧電信号が弱くなってしまう場合がある。収縮率を沸水収縮率で定量化した場合、圧電性繊維の沸水収縮率S(p)及び絶縁性繊維の沸水収縮率S(i)が下記式(5)を満たすことが好適である。
|S(p)−S(i)|≦10 (5)
上記式(5)の左辺は5以下であることがより好ましく、3以下であればさらに好ましい。
また、圧電性繊維の収縮率は小さい方が好ましい。例えば収縮率を沸水収縮率で定量化した場合、圧電性繊維の収縮率は15%以下であることが好ましく、より好ましくは10%以下、さらに好ましくは5%以下、最も好ましくは3%以下である。収縮率を下げる手段としては、公知のあらゆる方法を適用することができ、例えば、熱処理により非晶部の配向緩和や結晶化度を上げることにより収縮率を低減することができ、熱処理を実施するタイミングは特に限定されず、延伸後、撚糸後、組紐化後、布帛化後などが挙げられる。なお、上述の沸水収縮率は以下の方法で測定するものとする。枠周1.125mの検尺機で捲数20回のカセを作り、0.022cN/dtexの荷重を掛けて、スケール板に吊るして初期のカセ長L0を測定した。その後、このカセを100℃の沸騰水浴中で30分間処理後、放冷し再び上記荷重を掛けてスケール板に吊るし収縮後のカセ長長Lを測定した。測定されたL0及びLを用いて下記式(6)により沸水収縮率を計算する。
沸水収縮率=(L0−L)/L0×100(%) (6)
(被覆)
次に、導電性繊維Bと圧電性繊維Aとを組紐状圧電素子1で構成した場合について説明すると、導電性繊維B、すなわち芯部3は、圧電性繊維A、すなわち組紐状の鞘部2で表面が被覆されている。導電性繊維Bを被覆する鞘部2の厚みは1μm〜10mmであることが好ましく、5μm〜5mmであることがより好ましく、10μm〜3mmであることがさらに好ましい、20μm〜1mmであることが最も好ましい。薄すぎると強度の点で問題となる場合があり、また、厚すぎると組紐状圧電素子1が硬くなり変形し難くなる場合がある。なお、ここで言う鞘部2とは芯部3に隣接する層のことを指す。
組紐状圧電素子1において、鞘部2の圧電性繊維Aの総繊度は、芯部3の導電性繊維Bの総繊度の1/2倍以上、20倍以下であることが好ましく、1倍以上、15倍以下であることがより好ましく、2倍以上、10倍以下であることがさらに好ましい。圧電性繊維Aの総繊度が導電性繊維Bの総繊度に対して小さ過ぎると、導電性繊維Bを囲む圧電性繊維Aが少な過ぎて導電性繊維Bが十分な電気信号を出力できず、さらに導電性繊維Bが近接する他の導電性繊維に接触するおそれがある。圧電性繊維Aの総繊度が導電性繊維Bの総繊度に対して大き過ぎると、導電性繊維Bを囲む圧電性繊維Aが多過ぎて組紐状圧電素子1が硬くなり変形し難くなる。すなわち、いずれの場合にも組紐状圧電素子1がセンサとして十分に機能しなくなる。
ここでいう総繊度とは、鞘部2を構成する圧電性繊維A全ての繊度の和であり、例えば、一般的な8打組紐の場合には、8本の繊維の繊度の総和となる。
また、組紐状圧電素子1において、鞘部2の圧電性繊維Aの一本あたりの繊度は、導電性繊維Bの総繊度の1/20倍以上、2倍以下であることが好ましく、1/15倍以上、1.5倍以下であることがより好ましく、1/10倍以上、1倍以下であることがさらに好ましい。圧電性繊維A一本あたりの繊度が導電性繊維Bの総繊度に対して小さ過ぎると、圧電性繊維Aが少な過ぎて導電性繊維Bが十分な電気信号を出力できず、さらに圧電性繊維Aが切断するおそれがある。圧電性繊維A一本あたりの繊度が導電性繊維Bの総繊度に対して大き過ぎると、圧電性繊維Aが太過ぎて組紐状圧電素子1が硬くなり変形し難くなる。すなわち、いずれの場合にも組紐状圧電素子1がセンサとして十分に機能しなくなる。
なお、導電性繊維Bに金属繊維を用いた場合や、金属繊維を導電性繊維Bあるいは圧電性繊維Aに混繊した場合は、繊度の比率は上記の限りではない。本発明において、上記比率は、接触面積や被覆率、すなわち、面積及び体積の観点で重要であるからである。例えば、それぞれの繊維の比重が2を超えるような場合には、繊維の平均断面積の比率が上記繊度の比率であることが好ましい。
圧電性繊維Aと導電性繊維Bとはできるだけ密着していることが好ましいが、密着性を改良するために、導電性繊維Bと圧電性繊維Aとの間にアンカー層や接着層などを設けてもよい。
被覆の方法は導電性繊維Bを芯糸として、その周りに圧電性繊維Aを組紐状に巻きつける方法が取られる。一方、圧電性繊維Aの組紐の形状は、印加された荷重で生じる応力に対して電気信号を出力することが出来れば特に限定されるものではないが、芯部3を有する8打組紐や16打組紐が好ましい。
導電性繊維Bと圧電性繊維Aの形状としては特に限定されるものではないが、できるだけ同心円状に近いことが、好ましい。なお、導電性繊維Bとしてマルチフィラメントを用いる場合、圧電性繊維Aは、導電性繊維Bのマルチフィラメントの表面(繊維周面)の少なくとも一部が接触しているように被覆していればよく、マルチフィラメントを構成するすべてのフィラメント表面(繊維周面)に圧電性繊維Aが被覆していてもよいし、被覆していなくともよい。導電性繊維Bのマルチフィラメントを構成する内部の各フィラメントへの圧電性繊維Aの被覆状態は、圧電性素子としての性能、取扱い性等を考慮して、適宜設定すればよい。
組紐状圧電素子1は、その表面に電極を存在させる必要が無いため、組紐状圧電素子1自体をさらに被覆する必要がなく、また、誤動作しにくいという利点がある。
(製造方法)
続いて、組紐状圧電素子1の製造方法について説明する。
組紐状圧電素子1は少なくとも1本の導電性繊維Bの表面を組紐状の圧電性繊維Aで被覆しているが、その製造方法としては例えば以下の方法が挙げられる。すなわち、導電性繊維Bと圧電性繊維Aを別々の工程で作製し、導電性繊維Bに圧電性繊維Aを組紐状に巻きつけて被覆する方法である。この場合には、できるだけ同心円状に近くなるように被覆することが好ましい。
この場合、圧電性繊維Aを形成する圧電性高分子としてポリ乳酸を用いる場合の好ましい紡糸、延伸条件として、溶融紡糸温度は150℃〜250℃が好ましく、延伸温度は40℃〜150℃が好ましく、延伸倍率は1.1倍から5.0倍が好ましく、結晶化温度は80℃〜170℃が好ましい。
導電性繊維Bに巻きつける圧電性繊維Aとしては、複数のフィラメントを束ねたマルチフィラメントを用いてもよく、また、モノフィラメント(紡績糸を含む)を用いても良い。また、圧電性繊維Aを巻きつけられる導電性繊維Bとしては、複数のフィラメントを束ねたマルチフィラメントを用いてもよく、また、モノフィラメント(紡績糸を含む)を用いても良い。
被覆の好ましい形態としては、導電性繊維Bを芯糸とし、その周囲に圧電性繊維Aを組紐状に製紐して、丸打組物(Tubular Braid)を作製することで被覆することができる。より具体的には芯部3を有する8打組紐や16打組紐が挙げられる。ただし、例えば、圧電性繊維Aを編組チューブのような形態とし、導電性繊維Bを芯として当該編組チューブに挿入することで被覆してもよい。
以上のような製造方法により、導電性繊維Bの表面を組紐状の圧電性繊維Aで被覆した組紐状圧電素子1を得ることができる。
組紐状圧電素子1は、表面に電気信号を検出するための電極の形成を必要としないため、比較的簡単に製造することができる。
(保護層)
組紐状圧電素子1の最表面には保護層を設けてもよい。この保護層は絶縁性であることが好ましく、フレキシブル性などの観点から高分子からなるものがより好ましい。保護層に絶縁性を持たせる場合には、もちろん、この場合には保護層ごと変形させたり、保護層上を擦ったりすることになるが、これらの外力が圧電性繊維Aまで到達し、その分極を誘起できるものであれば特に限定はない。保護層としては、高分子などのコーティングによって形成されるものに限定されず、フィルム、布帛、繊維などを巻付けてもよく、あるいは、それらが組み合わされたものであってもよい。
保護層の厚みとしては出来るだけ薄い方が、せん断応力を圧電性繊維Aに伝えやすいが、薄すぎると保護層自体が破壊される等の問題が発生しやすくなるため、好ましくは10nm〜200μm、より好ましくは50nm〜50μm、さらに好ましくは70nm〜30μm、最も好ましくは100nm〜10μmである。この保護層により圧電素子の形状を形成することもできる。
また、ノイズ低減を目的として電磁波シールド層を組紐構造に取り入れることも可能である。電磁波シールド層は特に限定されるものではないが、導電性の物質をコーティングしてもよいし、導電性を有するフィルム、布帛、繊維などを巻付けてもよい。電磁波シールド層の体積抵抗率としては10-1Ω・cm以下であることが好ましく、より好ましくは10-2Ω・cm以下、さらに好ましくは10-3Ω・cm以下である。ただし、電磁波シールド層の効果が得られるのであれば抵抗率はこの限りではない。この電磁波シールド層は、鞘の圧電性繊維Aの表面に設けてもよく、前述の保護層の外側に設けてもよい。もちろん、電磁波シールド層と保護層が複数層積層されていてもよく、その順番も目的に応じて適宜決められる。
さらには、圧電性繊維からなる層を複数層設けたり、信号を取り出すための導電性繊維からなる層を複数層設けたりすることもできる。もちろん、これらの保護層、電磁波シールド層、圧電性繊維からなる層、導電性繊維からなる層は、その目的に応じて、その順番及び層数は適宜決められる。なお、巻付ける方法としては、鞘部2のさらに外層に組紐構造を形成したり、カバーリングしたりする方法が挙げられる。
(作用)
組紐状圧電素子1は、例えば組紐状圧電素子1の表面を擦るなどで、組紐状圧電素子1に荷重が印加されて生じる応力、すなわち組紐状圧電素子1に印加される応力について、その大きさ及び/又は印加位置を検出するセンサとして利用することができる。また、組紐状圧電素子1は、擦る以外の押圧力や曲げ変形などによっても圧電性繊維Aにせん断応力が与えられるならば、電気信号を取り出すことはもちろん可能である。例えば、組紐状圧電素子1に「印加される応力」としては、圧電素子の表面、すなわち圧電性繊維Aの表面と指のような被接触物の表面との間の摩擦力や、圧電性繊維Aの表面または先端部に対する垂直方向の抵抗力、圧電性繊維Aの曲げ変形に対する抵抗力などが挙げられる。特に、組紐状圧電素子1は、導電性繊維Bに対して平行方向に屈曲させた場合や擦った場合に大きな電気信号を効率的に出力することができる。
ここで、組紐状圧電素子1に「印加された応力」とは、例えば表面を指で擦る程度の大きさの応力の場合、その目安としては、おおよそ1〜1000Paである。もちろん、これ以上であっても印加された応力の大きさ及びその印加位置を検出することが可能であることはいうまでもない。指などで入力する場合には、1Pa以上500Pa以下の荷重であっても動作することが好ましく、さらに好ましくは1Pa以上100Pa以下の荷重で動作することが好ましい。もちろん、500Paを超える荷重であっても動作することは、上述の通りである。
(組紐状圧電素子を用いた圧電センサの構成例)
図6は、実施形態に係る組紐状圧電素子を備える圧電センサの構成例を示す模式図である。
長手方向に沿った少なくとも一部分が曲がって配置される導電性繊維として、組紐状圧電素子1−1の芯部3を形成する導電性繊維Bを用いる。ここで、組紐状圧電素子1−1の導電性繊維Bを「第1の導電性繊維」と称する。また、接地部22として、組紐状圧電素子1−2の芯部3を形成する導電性繊維Bを用いる。ここで、組紐状圧電素子1−2の導電性繊維Bを「第2の導電性繊維」と称する。すなわち、第1の導電性繊維である組紐状圧電素子1−1の導電性繊維Bと第2の導電性繊維である組紐状圧電素子1−2の導電性繊維Bとは異なるものであり、互いに電気的に絶縁されている。
第2の導電性繊維である組紐状圧電素子1−2の導電性繊維Bから引き出し線を引いてこれを接地部22とし接地(アース)をとる。なお、導電性繊維Bを用いる組紐状圧電素子1−2は、圧電性繊維Aを含むが、当該圧電性繊維Aは本実施形態においては機能しない。このように第2の導電性繊維として組紐状圧電素子1−2の導電性繊維Bを用いることで、接地部22のための導電性繊維を別途用意する必要が無くなり部品点数を減らすことができるので、圧電センサの製造が容易になる利点がある。もちろん、組紐状圧電素子1−2の代替例として、導電性繊維単体のものを第2の導電性繊維として用いてもよい。
第1の導電性繊維である組紐状圧電素子1−1の導電性繊維Bは、第2の導電性繊維である組紐状圧電素子1−2の導電性繊維Bの一端及びこの一端から延びる長手方向に沿った部分に対して間隔を置いて取り囲むように配置される。図6において、第1の導電性繊維(組紐状圧電素子1−1の導電性繊維B)が第2の導電性繊維(組紐状圧電素子1−2の導電性繊維B)の一端を略ループ状に取り囲む領域を参照符号100で示す。
本実施形態では、第1の導電性繊維(すなわち組紐状圧電素子1−1の導電性繊維B)に少なくとも部分的に接触する圧電性繊維として、組紐状圧電素子1−1の鞘部2を形成する圧電性繊維Aを用いる。組紐状圧電素子1−1において導電性繊維Bの外周面を多数の圧電性繊維Aが緻密に取り巻いているので、同一の組紐状圧電素子1−1でこれら圧電性繊維及び第1の導電性繊維を実現することができ、圧電センサの製造が容易となる利点がある。また、第1の導電性繊維(組紐状圧電素子1−1の導電性繊維B)と、接地部22を構成する第2の導電性繊維(組紐状圧電素子1−2の導電性繊維B)との間の距離が離れすぎるとキャパシタンス成分が形成されにくくなるが、本実施形態において組紐状圧電素子1−1及び組紐状圧電素子1−2を並べて配置することで組紐状圧電素子1−1の導電性繊維Bと組紐状圧電素子1−2の導電性繊維Bとの間の距離が短くなりキャパシタンス成分が確実に形成されるので、電気信号の取り出しにおいてより効率的になる。
圧電性繊維Aに印加された応力に応じて第1の導電性繊維である組紐状圧電素子1−1の導電性繊維Bにて発生する電気信号が出力されるが、この電気信号を出力するための出力端子21が設けられる。
組紐状圧電素子1−1の圧電性繊維Aに印加された応力に応じて第1の導電性繊維としての組紐状圧電素子1−1の導電性繊維Bから出力端子21を介して出力される電気信号を検出する電気回路として、増幅部11及び出力部12が設けられる。増幅部11の入力端子に組紐状圧電素子1−1の芯部3を形成する導電性繊維Bに設けられた出力端子21から引き出された引出し線を接続する。なお、出力端子21から引き出された引き出し線として、組紐状圧電素子1−1の芯部3を形成する導電性繊維Bをそのまま用いてもよく、またあるいは導電性の配線を別途設けてもよい。増幅部11は、印加された圧力に応じて組紐状圧電素子1−1から出力される電気信号を増幅する。出力部12は、増幅部11で増幅された電気信号を出力する。出力部12から出力された電気信号は、例えば外部機器(図示せず)へ送信され、外部機器(図示せず)における演算処理にて圧電センサの折り曲げの有無及び折り曲げの度合いを検出することができる。なお、外部機器への送信方式を無線によるもの有線によるものにするかは、構成するセンサに応じて適宜決定すればよい。また例えば、圧電センサ1000内に、出力部12から出力された電気信号に基づき圧電センサの折り曲げの有無及び折り曲げの度合いを演算する演算部(図示せず)を設けてもよい。
次に、第1の導電性繊維である組紐状圧電素子1−1の導電性繊維Bを、第2の導電性繊維である組紐状圧電素子1−2の導電性繊維Bの一端及びこの一端から延びる長手方向に沿った部分を所定の間隔をもって配置する手法を、以下にいくつか例示する。
第1の手法として、接地部22の機能を有する第2の導電性繊維として1本の組紐状圧電素子1−2を配置するとともに、この組紐状圧電素子1−2の長手方向を挟むようにしてもう1本の組紐状圧電素子(図中参照符号1−1で示される組紐状圧電素子に対応)を配置する手法がある。なお、組紐状圧電素子1−1を配置してから組紐状圧電素子1−2を配置するか、あるいは組紐状圧電素子1−2を配置してから組紐状圧電素子1−1を配置するかといったような配置工程の順番は特に限定されない。また、布本体の製造工程において組紐状圧電素子1−1及び組紐状圧電素子1−2を編み込んでもよく、また例えば既存の布に後付けて組紐状圧電素子1−1及び組紐状圧電素子1−2を刺繍などによって編み込んでもよい。
第2の手法として、まず3本の組紐状圧電素子を並行に配置し、次いで、これら3本のうち外側2本の組紐状圧電素子について、その一端における導電性繊維を互いに結びつける手法がある。第2の手法は布帛を構成する繊維(組紐を含む)の少なくとも3本が組紐状圧電素子である織編物であれば容易に適用することができる。
図7は、図6に示す実施形態に係る組紐状圧電素子を用いた布帛状圧電素子を備える圧電センサの構成例を示す模式図であり、図8は、図7に示す圧電センサの実際の一構成例を示す図である。布帛状圧電素子5は、接地部22の機能を有する第2の導電性繊維として1本の組紐状圧電素子1−2を編み込むとともに、この組紐状圧電素子1−2の長手方向を挟むようにしてもう1本の組紐状圧電素子(図中参照符号1−1で示される組紐状圧電素子に対応)を編み込んだ布帛6を備えている。布帛6は、布帛を構成する繊維(組紐を含む)のうちの2本が組紐状圧電素子(1−1及び1−2)であり、特に図中の組紐状圧電素子1−1が圧電素子としての機能を発揮可能であり、組紐状圧電素子1−2が接地部としての機能を発揮可能である限り何らの限定は無く、どのような織編物であってもよい。布状にするにあたっては、本発明の目的を達成する限り、他の繊維(組紐を含む)と組み合わせて、交織、交編等を行ってもよい。もちろん、組紐状圧電素子1−1及び1−2を、布帛を構成する繊維(例えば、経糸や緯糸)の一部として用いてもよいし、組紐状圧電素子1−1及び1−2を布帛に刺繍してもよいし、接着してもよい。図7に示す例では、布帛状圧電素子5は、経糸として、2本の組紐状圧電素子1及び絶縁性繊維7を配し、緯糸として導電性繊維8及び絶縁性繊維7を交互に配した平織物である。導電性繊維8は導電性繊維Bと同一種であっても異種の導電性繊維であってもよく、また絶縁性繊維7については後述される。なお、絶縁性繊維7及び/又は導電性繊維8の全部又は一部が組紐形態であってもよい。
また、図7に示す布帛状圧電素子5では、組紐状圧電素子1に導電性繊維8が交差して接触している。したがって、導電性繊維8は、組紐状圧電素子1の少なくとも一部と交差して接触し、それを覆っており、外部から組紐状圧電素子1へ向かおうとする電磁波の少なくとも一部を遮っている、と見ることができる。このような導電性繊維8は、接地(アース)されることにより、組紐状圧電素子1への電磁波の影響を軽減する機能を有している。すなわち導電性繊維8は組紐状圧電素子1の電磁波シールドとして機能することができる。それにより、例えば布帛状圧電素子5の上下に電磁波シールド用の導電性の布帛を重ねなくても、布帛状圧電素子5のS/N比を著しく向上させることができる。この場合、電磁波シールドの観点から組紐状圧電素子1と交差する緯糸(図7の場合)における導電性繊維8の割合が高いほど好ましい。具体的には、布帛6を形成する繊維であり且つ組紐状圧電素子1と交差する繊維のうちの30%以上が導電性繊維であることが好ましく、40%以上がより好ましく、50%以上が更に好ましい。このように布帛状圧電素子5において、布帛を構成する繊維の少なくとも一部として導電性繊維を入れることで、電磁波シールド付の布帛状圧電素子5とすることができる。
織物の織組織としては、平織、綾織、朱子織等の三原組織、変化組織、たて二重織、よこ二重織等の片二重組織、たてビロードなどが例示される。編物の種類は、丸編物(緯編物)であってもよいし経編物であってもよい。丸編物(緯編物)の組織としては、平編、ゴム編、両面編、パール編、タック編、浮き編、片畔編、レース編、添え毛編等が好ましく例示される。経編組織としては、シングルデンビー編、シングルアトラス編、ダブルコード編、ハーフトリコット編、裏毛編、ジャガード編等が例示される。層数も単層でもよいし、2層以上の多層でもよい。更には、カットパイル及び/またはループパイルからなる立毛部と地組織部とで構成される立毛織物、立毛編み物であってもよい。
(絶縁性繊維)
布帛状圧電素子5では、組紐状圧電素子1(及び導電性繊維8)以外の部分には、絶縁性繊維を使用することができる。この際、絶縁性繊維は布帛状圧電素子5の柔軟性を向上する目的で伸縮性のある素材、形状を有する繊維を用いることができる。
このように組紐状圧電素子1(及び導電性繊維8)以外にこのように絶縁性繊維を配置することで、布帛状圧電素子5の操作性(例示:ウェアラブルセンサとしての動き易さ)を向上させることが可能である。
このような絶縁性繊維としては、体積抵抗率が106Ω・cm以上であれば用いることができ、より好ましくは108Ω・cm以上、さらに好ましくは1010Ω・cm以上がよい。
絶縁性繊維として例えば、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、塩化ビニル繊維、アラミド繊維、ポリスルホン繊維、ポリエーテル繊維、ポリウレタン繊維等の合成繊維他、綿、麻、絹等の天然繊維、アセテート等の半合成繊維、レーヨン、キュプラ等の再生繊維を用いることができる。これらに限定されるものではなく、公知の絶縁性繊維を任意に用いることができる。さらに、これらの絶縁性繊維を組み合わせて用いてもよく、絶縁性を有しない繊維と組み合わせ、全体として絶縁性を有する繊維としてもよい。
また、公知のあらゆる断面形状の繊維も用いることができる。
(LCフィルタ)
図9は、図6に示す実施形態に係る組紐状圧電素子を備える圧電センサの等価回路を示す回路図である。上述のように、第1の導電性繊維(組紐状圧電素子1−1の導電性繊維B)は、第2の導電性繊維(組紐状圧電素子1−2の導電性繊維B)の一端及びこの一端から延びる長手方向に沿った部分を、所定の間隔をもって取り囲むように配置される。したがって、第1の導電性繊維(組紐状圧電素子1−1の導電性繊維B)と、この第1の導電性繊維の両側に略平行に配置される第2の導電性繊維(組紐状圧電素子1−2の導電性繊維B)との間にはキャパシタンス成分Cが発生する。また、第1の導電性繊維(組紐状圧電素子1−1の導電性繊維B)が第2の導電性繊維(組紐状圧電素子1−2の導電性繊維B)の一端を略ループ状に取り囲む領域100を設けることで、領域100内において、第1の導電性繊維(組紐状圧電素子1−1の導電性繊維B)は長手方向に曲がった形状を有するので、第1の導電性繊維(組紐状圧電素子1−1の導電性繊維B)が螺旋状(もしくは螺旋の一部)に巻かれた構造となるので、一種のソレノイドコイルが形成されているとみなすことができる。また、第1の導電性繊維(組紐状圧電素子1−1の導電性繊維B)に微小電気信号(電流)が流れることに起因して自己誘導現象が発生する。したがって、領域100にインダクタンス成分Lが発生する。よって、組紐状圧電素子1を備える圧電センサの等価回路は図9のように表される。なお、第1の導電性繊維(組紐状圧電素子1−1の導電性繊維B)及び第2の導電性繊維(組紐状圧電素子1−2の導電性繊維B)には抵抗成分も存在するが図9では図示を省略している。図9に示す等価回路は、圧電センサ1000に対する折り曲げ動作及び伸ばし動作に伴い発生する微小な電気信号の発生源に対しLCフィルタが接続されていることを意味している。したがって、本実施形態に係る組紐状圧電素子を備える圧電センサ1000から出力される電気信号(電流)は、当該LCフィルタにより濾波(フィルタ)されたものとなる。
図10は、図6に示す実施形態に係る組紐状圧電素子を用いた布帛状圧電素子を備える圧電センサが有するLCフィルタ機能を説明する実験結果を示す図である。図10において、点線は、略ループ状に取り囲む領域を設けずに単純に第1の導電性繊維と第2の導電性繊維とを長手方向に平行に配置した場合に発生する電気信号を示し、実線は、第1の導電性繊維(組紐状圧電素子1−1の導電性繊維B)が第2の導電性繊維(組紐状圧電素子1−2の導電性繊維B)の一端を略ループ状に取り囲むような領域100を設けた実施形態に係る組紐状圧電素子を用いた布帛状圧電素子を備える圧電センサから出力される電気信号を示す。
なお、上記実験における組紐状圧電素子を用いた布帛状圧電素子を備えた圧電センサは以下の方法で製造した。
(ポリ乳酸の製造)
L−ラクチド((株)武蔵野化学研究所製、光学純度100%)100質量部に対し、オクチル酸スズを0.005質量部加え、窒素雰囲気下、撹拌翼のついた反応機にて180℃で2時間反応させ、オクチル酸スズに対し1.2倍当量のリン酸を添加しその後、13.3Paで残存するラクチドを減圧除去し、チップ化し、ポリ−L−乳酸(PLLA1)を得た。得られたPLLA1の質量平均分子量は15.2万、ガラス転移点(Tg)は55℃、融点は175℃であった。
(圧電性繊維)
240℃にて溶融させたPLLA1を24ホールのキャップから20g/minで吐出し、887m/minにて引き取った。この未延伸マルチフィラメント糸を80℃、2.3倍に延伸し、100℃で熱固定処理することにより84dTex/24フィラメントのマルチフィラメント一軸延伸糸を得た。
(導電性繊維)
ミツフジ(株)製の銀メッキナイロン、品名『AGposs』100d34fを導電性繊維Bとして使用した。この繊維の体積抵抗率は1.1×10-3Ω・cmであった。
(絶縁性繊維)
280℃にて溶融させたポリエチレンテレフタレートを36ホールのキャップから45g/minで吐出し、800m/minにて引き取った。この未延伸糸を80℃、2.5倍に延伸し、180℃で熱固定処理することによりすることにより84dTex/36フィラメントのマルチフィラメント延伸糸を得、これを絶縁性繊維とした。
(組紐状圧電素子)
図5に示したように、上記の導電性繊維Bを芯糸とし、上記の圧電性繊維A8本を芯糸の周りに組紐状に巻きつけて、八打組紐とし、組紐状圧電素子1を形成した。ここで、導電性繊維Bの繊維軸CLに対する圧電性繊維Aの巻きつけ角度αは45°とした。
(図10において実線で示した略ループ状に取り囲む領域を有する圧電センサ)
図7に示すように経糸に絶縁性繊維7ならびに組紐状圧電素子1−1及び1−2を配し、緯糸に絶縁性繊維7及び導電性繊維8を交互に配して平織物を作製し、布帛状圧電素子5を備えた圧電センサを製造した。
(図10において点線で示した略ループ状に取り囲む領域を設けない圧電センサ)
組紐状圧電素子1−2の一端を略ループ状に取り囲む領域を設けなかったこと以外は、図10において実線で示した実験結果に係る圧電センサと同様にして、布帛状圧電素子5を備えた圧電センサを製造した。
図10において点線で示したが、第1の導電性繊維と第2の導電性繊維とを長手方向に平行に配置した構成のみとした場合(すなわち第1の導電性繊維と第2の導電性繊維とが平行に並んでいるだけの場合)、圧電性繊維Aに対する折り曲げ動作により発生する信号は、短時間に突発的に正負が変化するものとなる。この電気信号を時間積分して得られた積分値は、小さな値となり、「折り曲げ動作」の判定基準として用いられる上記上限値及び「伸ばし動作」の判定基準として用いられる上記下限値との比較に適さない。例えば、組紐状圧電素子に対する折り曲げ動作もしくは伸ばし動作の内容如何によっては、正負の電気信号の変化が非常に短時間になり、折り曲げ動作もしくは伸ばし動作したにもかかわらず積分値が上記所定の上限値以上もしくは上記所定の下限値未満とならず、この結果、折り曲げ動作もしくは伸ばし動作を検出できない事態が発生し得る。
これに対し、本実施形態では、第1の導電性繊維(組紐状圧電素子1−1の導電性繊維B)は、第2の導電性繊維(組紐状圧電素子1−2の導電性繊維B)の一端及びこの一端から延びる長手方向に沿った部分を、所定の間隔をもって取り囲むように配置されることで、図9に示したようなLCフィルタが構成されるので、第1の導電性繊維(組紐状圧電素子1−1の導電性繊維B)から出力される電気信号(電流)は、当該LCフィルタにより濾波(フィルタ)されたものとなり、その波形は、図10において実線で示すように、図10の点線(すなわち略ループ状に取り囲む領域なし)と比較して時間軸方向に伸ばした(すなわち波形をなまらした)ものとなる。また、当該LCフィルタにより、電気信号に重畳されていた高周波ノイズ成分も除去される利点もある。電気信号を時間積分して得られた積分値は、図10の点線で示した「略ループ状に取り囲む領域なし」の場合と比較して大きな値となり、また、組紐状圧電素子1−1の圧電性繊維Aに対する折り曲げ動作もしくは伸ばし動作の内容の影響に左右される可能性は少なくなる。例えば、組紐状圧電素子1−1の圧電性繊維Aを非常に短時間で折り曲げたとしても、組紐状圧電素子1−1から出力される電気信号(電流)は、当該LCフィルタによりなまらされたものとなるので、時間積分して得られた積分値は、上記所定の上限値及び上記所定の下限値と適切に比較できる程度のものとなり、誤検出の可能性が減少する。
(布帛状圧電素子を用いた圧電センサの他の配置例)
続いて、図7に示した布帛状圧電素子の構成をより簡素化して圧電センサを構成する実施形態について、図11及び図12を参照して説明する。図11は、1本の組紐状圧電素子を用いた布帛状圧電素子の構成例を示す模式図であり、図12は、図11に示す組紐状圧電素子を用いた布帛状圧電素子を備える圧電センサの構成例を示す模式図である。
図11に示すように、布帛状圧電素子5は、1本の組紐状圧電素子1を含む布帛6を備えている。布帛6は、布帛を構成する繊維(組紐を含む)のうちの1本が組紐状圧電素子1であり、組紐状圧電素子1が圧電素子としての機能を発揮可能である限り何らの限定は無く、どのような織編物であってもよい。布状にするにあたっては、本発明の目的を達成する限り、他の繊維(組紐を含む)と組み合わせて、交織、交編等を行ってもよい。もちろん、組紐状圧電素子1を、布帛を構成する繊維(例えば、経糸や緯糸)の一部として用いてもよいし、組紐状圧電素子1を布帛に刺繍してもよいし、接着してもよい。図11に示す例では、布帛状圧電素子5は、経糸として、1本の組紐状圧電素子1及び絶縁性繊維7を配し、緯糸として導電性繊維8及び絶縁性繊維7を交互に配した平織物である。導電性繊維8は導電性繊維Bと同一種であっても異種の導電性繊維であってもよく、また絶縁性繊維7については後述される。なお、絶縁性繊維7及び/又は導電性繊維8の全部又は一部が組紐形態であってもよい。
また、図11に示す布帛状圧電素子5では、組紐状圧電素子1に導電性繊維8が交差して接触している。したがって、導電性繊維8は、組紐状圧電素子1の少なくとも一部と交差して接触し、それを覆っており、外部から組紐状圧電素子1へ向かおうとする電磁波の少なくとも一部を遮っている、と見ることができる。このような導電性繊維8は、接地(アース)されることにより、組紐状圧電素子1への電磁波の影響を軽減する機能を有している。すなわち導電性繊維8は組紐状圧電素子1の電磁波シールドとして機能することができる。それにより、例えば布帛状圧電素子5の上下に電磁波シールド用の導電性の布帛を重ねなくても、布帛状圧電素子5のS/N比を著しく向上させることができる。この場合、電磁波シールドの観点から組紐状圧電素子1と交差する緯糸(図11の場合)における導電性繊維8の割合が高いほど好ましい。具体的には、布帛6を形成する繊維であり且つ組紐状圧電素子1と交差する繊維のうちの30%以上が導電性繊維であることが好ましく、40%以上がより好ましく、50%以上が更に好ましい。このように布帛状圧電素子5において、布帛を構成する繊維の少なくとも一部として導電性繊維を入れることで、電磁波シールド付の布帛状圧電素子5とすることができる。
織物の織組織としては、平織、綾織、朱子織等の三原組織、変化組織、たて二重織、よこ二重織等の片二重組織、たてビロードなどが例示される。編物の種類は、丸編物(緯編物)であってもよいし経編物であってもよい。丸編物(緯編物)の組織としては、平編、ゴム編、両面編、パール編、タック編、浮き編、片畔編、レース編、添え毛編等が好ましく例示される。経編組織としては、シングルデンビー編、シングルアトラス編、ダブルコード編、ハーフトリコット編、裏毛編、ジャガード編等が例示される。層数も単層でもよいし、2層以上の多層でもよい。更には、カットパイル及び/またはループパイルからなる立毛部と地組織部とで構成される立毛織物、立毛編み物であってもよい。
(絶縁性繊維)
布帛状圧電素子5では、組紐状圧電素子1(及び導電性繊維8)以外の部分には、絶縁性繊維を使用することができる。この際、絶縁性繊維は布帛状圧電素子5の柔軟性を向上する目的で伸縮性のある素材、形状を有する繊維を用いることができる。
このように組紐状圧電素子1(及び導電性繊維8)以外にこのように絶縁性繊維を配置することで、布帛状圧電素子5の操作性(例示:ウェアラブルセンサとしての動き易さ)を向上させることが可能である。
このような絶縁性繊維としては、体積抵抗率が106Ω・cm以上であれば用いることができ、より好ましくは108Ω・cm以上、さらに好ましくは1010Ω・cm以上がよい。
絶縁性繊維として例えば、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、塩化ビニル繊維、アラミド繊維、ポリスルホン繊維、ポリエーテル繊維、ポリウレタン繊維等の合成繊維他、綿、麻、絹等の天然繊維、アセテート等の半合成繊維、レーヨン、キュプラ等の再生繊維を用いることができる。これらに限定されるものではなく、公知の絶縁性繊維を任意に用いることができる。さらに、これらの絶縁性繊維を組み合わせて用いてもよく、絶縁性を有しない繊維と組み合わせ、全体として絶縁性を有する繊維としてもよい。
本実施形態では、図11に示すように、組紐状圧電素子1の電磁波シールドとして機能する導電性繊維8を接地部22として用いる。すなわち、導電性繊維8から引き出し線を引いてこれを接地部22として用いる。組紐状圧電素子1の電磁波シールドとして機能する導電性繊維8(すなわち接地部22)と組紐状圧電素子1の芯部3を形成する導電性繊維Bとは交差した状態で配置されるので、図4(C)に示したようなキャパシタンス成分Cが発生する。組紐状圧電素子1の圧電性繊維Aに印加された応力に応じて導電性繊維Bにて発生する電気信号を出力するために、出力端子21が設けられる。出力端子21に接続される電気回路として、圧電性繊維Aに印加された応力に応じて導電性繊維Bから出力される電気信号を増幅する増幅部11、及び、増幅部11で増幅された電気信号を出力する出力部12が設けられる。また、組紐状圧電素子1の芯部3を構成する導電性繊維Bは、長手方向に沿った少なくとも一部分を曲げて配置されるが、その配置例については図12に示す。なお、図12においては、接地部22として用いられる導電性繊維8については図示を省略している。例えば、図12(A)に示すように、組紐状圧電素子1をΩ字状に配置してもよい。組紐状圧電素子1についての各部の寸法の例を挙げると、Ω字状においてループ部分の配線長は例えば2cm以上であり、Ω字状においてループの開口部の間隔は1cm以下である。また例えば、図12(B)に示すように、組紐状圧電素子1をU字状に配置してもよい。組紐状圧電素子1についての各部の寸法の例を挙げると、U字状において組紐状圧電素子1が平行になる部分の間隔は例えば1cm以下である。
(導電層がさらに被覆された組紐状圧電素子を用いた圧電センサ)
続いて、導電層が被覆された組紐状圧電素子を用いて圧電センサを構成する実施形態について、図13〜図15を参照して説明する。図13は、実施形態に係る三層構造の組紐状圧電素子の構成例を模式的に示す図であって(A)は側面図、(B)は断面図である。
組紐状圧電素子1’は、導電性繊維Bで形成された芯部3と、芯部3に接触してそれを被覆するように組紐状の圧電性繊維Aで形成された鞘部2と、鞘部2を被覆する導電層4とを備えている。すなわち、組紐状圧電素子1’は、図5に示した組紐状圧電素子1の外側に導電層4をさらに被覆したものであり、導電性繊維Bと圧電性繊維Aと導電層4との3層構造からなる。導電性繊維Bで形成された芯部3及び圧電性繊維Aで形成された鞘部2については既に説明した通りであるので、ここでは主として導電層4について説明する。
導電層4は、例えば導電性物質15を含み、鞘部2の周囲に接触して配置される。なお、導電層4は、芯部3を構成する導電性繊維Bとの間でキャパシタンス成分を形成できるのであれば、必ずしも鞘部2の長手方向全体に設けられる必要はなく、鞘部2の長手方向の一部にのみ設けられてもよい。ただし、後で詳述するが、とりわけ、導電層4を接地部として使用するのではなく、導電層4にて発生する電気信号を出力するよう圧電センサを構成する場合には、信号強度の観点から、導電層4を鞘部2の長手方向全体に設けて導電層4と鞘部2を構成する圧電性繊維Aとの間の接触面積を大きくすることが好ましい。
導電性物質15とは、導電層4に含まれる導電性物質のことであり、公知のあらゆるものが該当する。
導電層4の様態としては、コーティングの他、フィルム、布帛、繊維の巻き付けが考えられ、またそれらを組み合わせてもよい。
導電層4を形成するコーティングには導電性を示す物質を含むものが使用されていればよく、公知のあらゆるものが用いられる。例えば、金属、導電性高分子、導電性フィラーを分散させた高分子が挙げられる。
導電層4をフィルムの巻き付けにより形成する場合は、導電性高分子、導電性フィラーを分散させた高分子を製膜して得られるフィルムが用いられ、また表面に導電性を有する層を設けたフィルムが用いられてもよい。
導電層4を布帛の巻き付けにより形成する場合は、導電性繊維16を構成成分とする布帛が用いられる。
導電層4を繊維の巻き付けにより形成する場合、その手法としては、カバーリング、編物、組物が考えられる。また、使用する繊維は、導電性繊維16であり、導電性繊維16は、上記導電性繊維Bと同一種であっても異種の導電性繊維であってもよい。導電性繊維16としては、例えば、金属繊維、導電性高分子からなる繊維、炭素繊維、繊維状あるいは粒状の導電性フィラーを分散させた高分子からなる繊維、あるいは繊維状物の表面に導電性を有する層を設けた繊維が挙げられる。繊維状物の表面に導電性を有する層を設ける方法としては、金属コート、導電性高分子コート、導電性繊維の巻付けなどが挙げられる。なかでも金属コートが導電性、耐久性、柔軟性などの観点から好ましい。金属をコートする具体的な方法としては、蒸着、スパッタ、電解メッキ、無電解メッキなどが挙げられるが生産性などの観点からメッキが好ましい。このような金属をメッキされた繊維は金属メッキ繊維ということができる。
金属をコートされるベースの繊維として、導電性の有無によらず公知の繊維を用いることができ、例えば、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、塩化ビニル繊維、アラミド繊維、ポリスルホン繊維、ポリエーテル繊維、ポリウレタン繊維等の合成繊維の他、綿、麻、絹等の天然繊維、アセテート等の半合成繊維、レーヨン、キュプラ等の再生繊維を用いることができる。ベースの繊維はこれらに限定されるものではなく、公知の繊維を任意に用いることができ、これらの繊維を組み合わせて用いてもよい。
ベースの繊維にコートされる金属としては、導電性を示す任意の材料を用いることができる。例えば、金、銀、白金、銅、ニッケル、スズ、亜鉛、パラジウム、酸化インジウム錫、硫化銅など、およびこれらの混合物や合金などを用いることができる。
導電性繊維16に屈曲耐性のある金属コートした有機繊維を使用すると、導電性繊維が折れることが非常に少なく、圧電素子を用いたセンサとしての耐久性や安全性に優れる。
導電性繊維16はフィラメントを複数本束ねたマルチフィラメントであっても、また、フィラメント一本からなるモノフィラメントであってもよい。マルチフィラメントの方が電気特性の長尺安定性の観点で好ましい。モノフィラメント(紡績糸を含む)の場合、その単糸径は1μm〜5000μmであり、好ましくは2μm〜100μmである。さらに好ましくは3μm〜50μmである。マルチフィラメントの場合、フィラメント数としては、1本〜100000本が好ましく、より好ましくは5本〜500本、さらに好ましくは10本〜100本である。
繊維の直径が小さいと強度が低下しハンドリングが困難となり、また、直径が大きい場合にはフレキシブル性が犠牲になる。導電性繊維16の断面形状としては円または楕円であることが、圧電素子の設計および製造の観点で好ましいが、これに限定されない。
導電性繊維16は、本発明の用途から、繰り返しの曲げやねじりといった動きに対して耐性がなければならない。その指標としては、結節強さが、より大きいものが好まれる。結節強さはJIS L1013 8.6の方法で測定することができる。本発明に適当な結節強さの程度としては、0.5cN/dtex以上であることが好ましく、1.0cN/dtex以上であることがより好ましく、1.5cN/dtex以上であることがさらに好ましく、2.0cN/dtex以上であることが最も好ましい。また、別の指標としては、曲げ剛性が、より小さいものが好まれる。曲げ剛性は、カトーテック(株)製KES―FB2純曲げ試験機などの測定装置で測定されるのが一般的である。本発明に適当な曲げ剛性の程度としては、東邦テナックス(株)製の炭素繊維“テナックス”(登録商標)HTS40−3Kよりも小さいほうが好ましい。具体的には、導電性繊維の曲げ剛性が0.05×10-4N・m2/m以下であることが好ましく、0.02×10-4N・m2/m以下であることがより好ましく、0.01×10-4N・m2/m以下であることがさらに好ましい。
図13に示す組紐状圧電素子1’の導電層4は、図5に示した組紐状圧電素子1のコーティングや繊維の巻き付けによって製造されるが、製造の容易さの観点より、繊維の巻き付けが好ましい。繊維の巻き付け方法としてはカバーリング、編物、組物が考えられ、何れの方法により製造してもよい。
以上のような製造方法により、導電性繊維Bの表面を組紐状の圧電性繊維Aで被覆し、さらにその周囲に導電層4を設けた組紐状圧電素子1’を得ることができる。すなわち、組紐状圧電素子1’は導電性繊維Bと圧電性繊維Aと導電層4との3層構造からなる。
図14は、図13に示す組紐状圧電素子の導電層を組紐構造にて形成した構成例を示す図である。鞘部2のさらに外側に設けられる導電層4を、導電性繊維Dを組紐状にしたものにて構成してもよい。すなわちこの場合、組紐状圧電素子1’は二重の組紐構造を有する。
図15は、図13に示す組紐状圧電素子を備える圧電センサの構成例を示す模式図である。例えば、図15(A)に示すように、組紐状圧電素子1’をΩ字状に配置してもよい。組紐状圧電素子1’についての各部の寸法の例を挙げると、Ω字状においてループ部分の配線長は例えば2cm以上であり、Ω字状においてループの開口部の間隔は1cm以下である。また例えば、図15(B)に示すように、組紐状圧電素子1’をU字状に配置してもよい。組紐状圧電素子1’についての各部の寸法の例を挙げると、U字状において組紐状圧電素子1’が平行になる部分の平行間隔は例えば1cm以下である。
本実施形態における圧電センサ1000は、圧電性繊維Aに印加された応力に応じて導電性繊維Bまたは導電層4のうちの一方にて発生する電気信号が出力される出力端子21と、導電性繊維Bまたは導電層4のうちの他の一方に接続される、導電体を有する接地部22と、を備える。図15(A)及び図15(B)に示した例では、圧電性繊維Aに印加された応力に応じて出力端子21を介して出力される電気信号を検出する電気回路として増幅部11及び出力部12が設けられ、導電層4によって接地部22が構成される。また、これとは逆に、導電性繊維Bから引き出し線を引いてこれを接地部22とし接地(アース)をとり、導電層4を出力端子21を介して増幅部11の入力端子に接続してもよい。
(圧電素子の適用技術)
本実施形態に係る組紐状圧電素子1を備える圧電センサはいずれの様態であっても、表面への接触、圧力、形状変化を電気信号として出力することができるので、その圧電素子に印加された応力の大きさ及び/又は印加された位置を検出するセンサ(デバイス)として利用することができる。また、この電気信号を他のデバイスを動かすための電力源あるいは蓄電するなど、発電素子として用いることもできる。具体的には、人、動物、ロボット、機械など自発的に動くものの可動部に用いることによる発電、靴底、敷物、外部から圧力を受ける構造物の表面での発電、流体中での形状変化による発電、などが挙げられる。また、流体中での形状変化により電気信号を発するために、流体中の帯電性物質を吸着させたり付着を抑制させたりすることも可能である。
本実施形態に係る組紐状圧電素子1を備える圧電センサは柔軟性があり、紐状及び布帛状いずれの形態でも使用できるため、非常に広範な用途が考えられる。本発明の圧電センサの具体的な例としては、帽子や手袋、靴下などを含む着衣、サポーター、ハンカチ状などの形状をした、タッチパネル、人や動物の表面感圧センサ、例えば、手袋やバンド、サポーターなどの形状をした関節部の曲げ、捩じり、伸縮を感知するセンサが挙げられる。例えば人に用いる場合には、接触や動きを検出し、医療用途などの関節などの動きの情報収集、アミューズメント用途、失われた組織やロボットを動かすためのインターフェースとして用いることができる。他には、動物や人型を模したぬいぐるみやロボットの表面感圧センサ、関節部の曲げ、捩じり、伸縮を感知するセンサとして用いることができる。他には、シーツや枕などの寝具、靴底、手袋、椅子、敷物、袋、旗などの表面感圧センサや形状変化センサとして用いることができる。
さらに、本発明の圧電センサは組紐状あるいは布帛状であり、柔軟性があるので、あらゆる構造物の全体あるいは一部の表面に貼付あるいは被覆することにより表面感圧センサ、形状変化センサとして用いることができる。
さらに、本発明の圧電センサは、組紐状圧電素子1の表面を擦るだけで十分な電気信号を発生することができるので、タッチセンサのようなタッチ式入力装置やポインティングデバイスなどに用いることができる。また、組紐状圧電素子1で被計測物の表面を擦ることによって被計測物の高さ方向の位置情報や形状情報を得ることができるので、表面形状計測などに用いることができる。