JP2020064883A - センサシステム、衣類及び衣類システム - Google Patents

センサシステム、衣類及び衣類システム Download PDF

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Yoshiro Tanuki
佳郎 田實
小野 雄平
Yuhei Ono
雄平 小野
俊介 兼松
Shunsuke Kanematsu
俊介 兼松
山本 智義
Tomoyoshi Yamamoto
智義 山本
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Abstract

【課題】装着感を損なわずに生体の動きを正確に検知することができ、なおかつ衣類に容易に組み込むことができる汎用性の高いセンサシステム、衣類及び衣類システムを実現する。【解決手段】センサシステム1000は、被測定体に着用される衣類に配置され、印加された応力に応じて電気信号が発生する線状圧電素子101と、線状圧電素子101で発生した電気信号を検出する信号検出部102と、信号検出部102が検出した電気信号に基づいて、衣類の変形の様態を判別する演算処理部103と、を備える。【選択図】図1

Description

本発明は、被測定体に着用される衣類の変形の様態を判別するセンサシステム、衣類及び衣類システムに関する。
衣類に組み込まれたセンサシステムにより、当該衣類を着用した人間や動物などの生体の様々な動きを検知する用途が近年増えつつある。
例えば、弾性変形可能な基材と、この基材の表面および内部の少なくとも一部に固定された導電性高分子とバインダー樹脂とを含有する混合物とからなる抵抗体と、この抵抗体の導電面の端部に電気的に接続された1対の端子とを備える伸長センサにおいて、この抵抗体が衣類に組み込まれたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
例えば、使用者の身体に着用するべく構成された衣服部材と、第1の場所において前記衣服部材に接続されたセンサであって、第1の分散密度で導電性粒子材料を分散させたポリマー材料で形成され、前記衣服部材を着用中に前記使用者の動きに応じて変形するべく構成されたセンサと、電子モジュールと通信するべく構成されたポートであって、前記第1の場所から離れた第2の場所において前記衣服部材に接続されるポートと、前記第1の衣服部材に接続された導電性リード線であって、前記センサと前記ポートとの間に接続されて前記センサと前記ポートとの間で前記衣服部材に沿って延在しているリード線と、を備え、前記センサは圧力を受けて変形した時に抵抗が増大するべく構成されている衣料品が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
例えば、身体的活動に携わっている被験者の生理学的パラメータをモニターするためのフィットネスモニタリングシステムであって、第1センサー及び第2センサーを備えたセンサーサブシステムを備え、前記第1センサーは、プリント回路基板により形成される導電性の円形コイルを備えた多層プリント回路を備え、各層は、互いに直列に接続されており、前記第1及び第2センサーは、パラメータの変化に応答可能であり、前記センサーサブシステムは、前記パラメータを表す信号を生成し送信するように構成されるフィットネスモニタリングシステムが知られている(例えば、特許文献3参照。)。
特開2014−228507号公報 特表2016−509635号公報 特開2015−62675号公報
衣類に組み込まれるセンサシステムにおいては、衣類を着用する生体の着心地を損なわずに生体の動きを正確に検知できることが求められている。また、衣類は、人間が着用するものや動物が着用するものなど実に多種多様であるが、いずれの衣類に対しても分け隔てなく容易に組み込むことができるセンサシステムの開発が求められている。特に人間が着用する衣類についてはデザイン性を求められることが多い。さらに、様々な物がインターネットを介して相互に情報交換にするIOT(Internet of Things)技術の急速な進展に伴い、人間や動物などの生体に限らず、ロボットや玩具などのような機械にも、センサシステムが組み込まれた衣類が着用される機会も想定され得る。よって、装着感を損なわずに生体の動きを正確に検知することができ、なおかつ衣類に容易に組み込むことができる汎用性の高いセンサシステム、衣類及び衣類システムの開発が望まれている。
本発明者らは、被測定体に着用される衣類に線状圧電素子を配置し、各線状圧電素子で発生した電気信号に基づいて衣類の変形の様態を判別することができることを発見し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は以下の発明を包含する。
1.被測定体に着用される衣類に配置され、印加された応力に応じて電気信号が発生する線状圧電素子と、前記線状圧電素子で発生した電気信号を検出する信号検出部と、
前記信号検出部が検出した電気信号に基づいて、前記衣類の変形の様態を判別する演算処理部と、を備える、センサシステム。
2.前記線状圧電素子は、前記衣類を着用する被測定体の可変部位に対応する前記衣類上の位置近傍に配置される、上記1に記載のセンサシステム。
3.前記衣類に配置された前記線状圧電素子の近傍に配置され、前記衣類を着用した被測定体との間の相互作用により電気信号が発生する導電性繊維をさらに備え、前記演算処理部は、前記信号検出部が検出した電気信号と、前記導電性繊維から発生した電気信号とに基づいて、前記衣類の変形の様態を判別する、上記1または2に記載のセンサシステム。
4、前記線状圧電素子は伸長変形により電気信号を出力する、上記1〜3のいずれか一項に記載のセンサシステム。
5.前記線状圧電素子は、導電性繊維で形成された芯部と、前記芯部を被覆するように組紐状の圧電性繊維で形成された鞘部とを有する組紐状圧電素子である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のセンサシステム。
6.前記圧電性繊維は、配向軸を3軸とした時の圧電定数d14の絶対値が0.1pC/N以上1000pC/N以下の値を有する結晶性高分子を主成分として含む圧電性高分子であり、該圧電性高分子によって被覆された前記芯部の中心軸の方向に対する前記圧電性高分子の配向角度が15°以上75°以下であり、前記圧電性高分子は、圧電定数d14の値が正の結晶性高分子を主成分として含むP体と、負の結晶性高分子を主成分として含むN体とを含み、前記中心軸が1cmの長さを持つ部分について、配向軸がZ撚り方向にらせんを巻いて配置された該P体の質量をZP、配向軸がS撚り方向にらせんを巻いて配置された該P体の質量をSP、配向軸がZ撚り方向にらせんを巻いて配置された該N体の質量をZN、配向軸がS撚り方向にらせんを巻いて配置された該N体の質量をSNとし、(ZP+SN)と(SP+ZN)とのうち小さい方をT1、大きい方をT2としたとき、T1/T2の値が0以上0.8以下である、上記5に記載のセンサシステム。
7.上記1〜6のいずれか一項に記載のセンサシステムを備える衣類。
8.上記1〜6のいずれか一項に記載のセンサシステムを備える衣類システムであって、前記線状圧電素子及び前記信号検出部が、被測定体に着用される衣類に配置され、前記演算処理部が、前記衣類とは別体の計算装置内に設けられる、衣類システム。
本開示の一態様によれば、装着感を損なわずに生体の動きを正確に検知することができ、なおかつ衣類に容易に組み込むことができる汎用性の高いセンサシステム、衣類及び衣類システムを実現することができる。本態様のセンサシステムは、特殊な工程が不要であり簡易な工程にて製造可能であり、生産性がよい。
また、センサシステムのセンサ部分を構成する線状圧電素子は柔軟性に富むので、衣類の形状に合わせて配置することが容易である。人間や動物などの生体及びロボットやマネキン、人形、ぬいぐるみのような玩具などのような機械といった被測定体の可動部分の近傍に位置することになる衣類の部位に線状圧電素子をすることで、衣類を着用した被測定体の動きを正確に検知することができる。また、線状圧電素子は柔軟性に富むことから、被測定体の動きの邪魔にならず、装着感を損なうことはない。線状圧電素子は細く柔軟性に富むことから、衣類に線状圧電素子を組み込んでもデザイン性を損なうことはない。例えば、人間が着用するスポーツウェアに本発明のセンサシステムを組み込むことができる。また、線状圧電素子は水気に何ら影響を受けないので、線状圧電素子と共に衣類に組み込まれる線状圧電素子で発生した電気信号を検出する信号検出部に防水機能を持たせれば、通常の衣類と同様に洗濯可能である。
本態様によるセンサシステムは、様々な被測定体に着用される衣類に組み込むことができる。本態様によるセンサシステムを組み込むことができる衣類の例としては、上着、ズボン、サポータ、手袋、タイツ、靴下、足袋、マフラー、ネックウォーマ、スカーフ、帽子、鉢巻、バンダナ、リストバンドあるいはマスクなどがある。より具体的には、本態様によるセンサシステムはスポーツウェアに組み込むことができる。適用されるスポーツとしては、例えば、ゴルフ、テニス、野球、サッカー、ラグビー、アメリカンフットボール、卓球、バドミントン、クリケット、ゲートボール、陸上競技、体操、ダンス、水泳(水着)、柔道、剣道、空手などがある。また、衣類以外にも、シーツ、タオル、カバー、袋等の雑貨にも、本態様によるセンサシステムを組み込んでもよい。
一実施形態に係るセンサシステムの基本構成を示す模式図である。 本実施形態で用いられる線状圧電素子の変形速度を説明する図である。 図2に示す線状圧電素子の伸長による変形と信号強度との関係を示す図であり、(A)は変形速度と信号強度(電流値)との関係を示し、(B)は変形部分の位置と信号強度(電流値)との関係を示す。 一実施形態によるセンサシステムを組み込んだ上着及びズボンの前面(正面)を模式的に示す図である。 図4の上着及びズボンの背面を模式的に示す図である。 一実施形態によるセンサシステムを組み込んだ上着の背面の実際の写真を示す図である。 上着の肩及び肘の近傍に線状圧電素子を配置した実際の写真を示す図である。 図7に示した上着を着用して肘を曲げた場合に発生する電気信号を示す図であって、(a)は上着の肘に設けられた線状圧電素子で発生する電気信号を示し、(b)は上着の前腕部及び上腕部に設けられた線状圧電素子で発生する電気信号を示す。 図7に示した上着を着用して肘を曲げた状態(図8)から元に戻した場合に発生する電気信号を示す図であって、(a)は上着の肘に設けられた線状圧電素子で発生する電気信号を示し、(b)は上着の前腕部及び上腕部に設けられた線状圧電素子で発生する電気信号を示す。 図7に示した上着を着用して肘をねじった場合に発生する電気信号を示す図であって、(a)は上着の肘に設けられた線状圧電素子で発生する電気信号を示し、(b)は上着の前腕部及び上腕部に設けられた線状圧電素子で発生する電気信号を示す。 図7に示した上着を着用して肘をねじった状態(図10)から元に戻した場合に発生する電気信号を示す図であって、(a)は上着の肘に設けられた線状圧電素子で発生する電気信号を示し、(b)は上着の前腕部及び上腕部に設けられた線状圧電素子で発生する電気信号を示す。 一実施形態によるセンサシステムを組み込んだグローブの実際の写真を示す図であって、(a)はグローブを着用した手の甲を示し、(b)はグローブを着用した手のひらを示し、(c)はグローブを着用した手の一側面を示す。 ロボットコントローラを接続した一実施形態に係るセンサシステムの基本構成を示す模式図である。 実施形態に係る組紐状圧電素子の構成例を示す模式図である。 配向角度θの計算方法を説明する模式図である。 実施形態に係る組紐状圧電素子の断面写真である。
以下図面を参照して、センサシステム及び衣類について説明する。各図面において、同様の部材には同様の参照符号が付けられている。また、異なる図面において同じ参照符号が付されたものは同じ機能を有する構成要素であることを意味するものとする。なお、理解を容易にするために、これらの図面は縮尺を適宜変更している。
(センサシステムの基本構成)
図1は、一実施形態に係るセンサシステムの基本構成を示す模式図である。ここでは、センサシステム1000が組み込まれる衣類として、図1では上着500−1及びズボン500−2を一例として示したが、図1は衣類として上着500−1及びズボン500−2の両方を常に備えるべきことを意味するものではなく、あくまでも例示である。上着500−1及びズボン500−2以外の衣類として、例えば、サポータ、手袋、タイツ、靴下、足袋、マフラー、ネックウォーマ、スカーフ、帽子、鉢巻、バンダナ、リストバンドあるいはマスクなどがある。また、衣類以外にも、シーツ、タオル、カバー、袋等の雑貨にも、本態様によるセンサシステムを組み込んでもよい。
センサシステム1000が組み込まれた衣類を着用し当該センサシステム1000によりその動きが検知される対象を、本明細書では「被測定体」と称する。被測定体の例としては、人間及び動物などの生体、並びに、ロボット及び玩具(人形、ぬいぐるみなど)などのような機械がある。
センサシステム1000は、線状圧電素子101と、信号検出部102と、演算処理部103と、を備える。また、オプションとして、センサシステム1000は、衣類に配置された線状圧電素子101の近傍に配置され、衣類を着用した被測定体との間の相互作用により電気信号が発生する導電性繊維104を備える。
線状圧電素子101は、印加された応力に応じて電気信号が発生するものである。線状圧電素子101としては、伸長変形により電気信号が発生するものが好ましいが、伸長以外の応力に対して信号を発生する線状圧電素子を用いてもよい。線状圧電素子101を構成する素材の具体例については後述する。被測定体が動くと(線状圧電素子101に応力が直接に印加される場合も含む)と、線状圧電素子101に伸長による変形が生じる。この伸長変形により、線状圧電素子101に電気信号が発生する。線状圧電素子101は、被測定体に着用される衣類(図1に示す例では上着500−1及びズボン500−2)に配置される。線状圧電素子101は、衣類上においてどのように配置してもよいが、その配置は、衣類を着用する被測定体の、検知したい動きの内容にほぼ依存する。なお、本明細書では、「線状圧電素子101が衣類上(もしくは単に「衣類」)に配置される」との表現は、「線状圧電素子101が衣類の生地の表面上もしくは裏面上に配置される」及び「線状圧電素子101が衣類の生地の中に埋め込まれる」の各概念を含むものである。
線状圧電素子101を衣類上に配置する方法としては、被測定体が動いたときに当該被測定体が着用した衣類が変形することにより印加された応力により線状圧電素子に変形が生じれば特に限定されるものではない。例えば、衣類の生地への縫込みや刺繍、衣類の生地の表面上もしくは裏面上への接着剤を介した貼り付け、かがりつけ、などがある。また、また、線状圧電素子を組み込んだ織物や編物を作成し、これを衣類に仕立ててもよい。また、変形が生じやすくなるように部分的に生地を薄くしたり折り目を付けたりなどの工夫をしてもよい。いずれの場合も、線状圧電素子101の長さは適宜決められる。
例えば、衣類を着用する被測定体の可変部位に対応する衣類上の位置近傍に、線状圧電素子101が配置される。以下、本明細書では、衣類を着用する被測定体の可変部位に対応する衣類上の位置を特定するために、単に被測定体の部位の名称を用いることがある。例えば、「上着の肘」とは「被測定体(人間など)が上着を着用したときに、肘に相当する部分に位置することになる上着上の位置」を意味し、「グローブの手の甲」とは「被測定体(人間など)がグローブを着用したときに、手の甲に相当する部分に位置することになるグローブ上の位置」を意味する。衣類上の他の位置の名称も同様である。被測定体の可変部位の例としては、人間や動物などの生体における、例えば肩、肘、手首、足首、膝、股関節、指、首、口、瞼、頬、おでこ、鼻、耳、腹部、胸部、太もも、ふくらはぎ、二の腕、背部、臀部、手の平、手の甲、足の土踏まず、足の甲などがある。ロボットや玩具などの機械における可動部位も、被測定体の可変部位の例として挙げられる。あるいは、衣類を着用する被測定体の可変部位に対応する衣類上の位置近傍でなくても(すなわち可変部位から離れていても)、可変部位の動きに伴って着用した衣類が変形するような位置に、線状圧電素子101が配置される。例えば、衣類を着用した際に、首と肩との間、肩と肘との間、肘と手首との間、指の各関節の間、首と胸部との間、胸部と腹部との間、腹部と股関節との間、股関節と臀部との間、首と背部との間、背部と臀部との間、臀部と股関節との間、股関節と膝との間、あるいは、膝と足首との間などに位置することになる衣類上の位置に配置される。線状圧電素子101の配置の具体例については後述する。センサシステムのセンサ部分を構成する線状圧電素子101は柔軟性に富むので、被測定体の形状に合わせて設置することが容易である。
ここで、本実施形態によるセンサシステムで用いられる、伸長により電気信号が発生する線状圧電素子101の電気的特性について図2及び図3を参照して説明する。図2は、本実施形態で用いられる線状圧電素子の変形速度を説明する図である。本実施形態では、線状圧電素子101として、その長さや伸長が発生する位置にかかわらず、伸長による変形速度が一定のものを用いる。図2に示すように、本実施形態で用いられる線状圧電素子101を長短2本用意し、それぞれについて、一定距離間をチャックにて把持し、コネクタ121を介して信号検出部102に接続し、被測定体を線方向に伸長を加えてそのときに発生する信号強度(電流値)を測定する実験を行った。図3は、図2に示す線状圧電素子の伸長による変形と信号強度との関係を示す図であり、(A)は変形速度と信号強度(電流値)との関係を示し、(B)は変形部分の位置と信号強度(電流値)との関係を示す。本実施形態で用いられる線状圧電素子101は、図3(A)に示すように線状圧電素子101の伸び変形速度と信号強度(電流値)とは比例し、図3(B)に示すように伸長変形が発生する位置(コネクタ21からの距離で表す)に関わらず信号強度(電流値)はほぼ一定である。このように、本実施形態では、線状圧電素子101として、その長さや伸長が発生する位置にかかわらず、伸長による変形速度に対する信号強度が一定のものを用いるのが好ましい。なお、線状圧電素子101を、伸長による変形速度に対する信号強度が一定のものではないもので実現してもよく、この場合は、当該線状圧電素子についての伸長に応じた変形速度と信号強度との関係を予め測定しておき、この測定結果に基づき各位置における伸長の具合に応じた変形速度を一定の信号強度に換算して出力する事前補正演算部を、演算処理部103の前段に設ければよい。
説明を図1に戻すと、信号検出部102は、各線状圧電素子101で発生した電気信号を検出するものである。図1では、説明を簡明にするために、信号検出部102を上着500−1及びズボン500−2から離れた位置に記載したが、好ましくは、衣類ごとに(図1に示す例では、上着500−1及びズボン500−2のそれぞれに)、当該衣類上の任意の位置に設けられる。線状圧電素子101と信号検出部102とは直接に接続してもよいが、信号強度を増幅するアンプやフィルタなど(図示せず)を介して接続してもよい。なお、線状圧電素子101として、後述するように電磁波シールドを有する組紐状圧電素子を用いれば、ノイズ除去のためのフィルタは省略できる。信号検出部102として防水機能を有するものを用いれば、線状圧電素子101及び信号検出部102が組み込まれた衣類は洗濯可能となる。
信号検出部102は、線状圧電素子101から引き出された導線を接続するコネクタ(図示せず)と、線状圧電素子101で発生したアナログ電気信号をディジタル電気信号に変換するAD変換部(図示せず)と、AD変換部から出力されたディジタル電気信号を次段の演算処理部103へ送信する送信部(図示せず)と、を含む。信号検出部102(の送信部)と演算処理部103との間の通信は無線でも有線でもよい。信号検出部102と演算処理部103との間を無線通信により実現する場合は、信号検出部102の送信部は、AD変換部から出力されたディジタル電気信号に、対応する線状圧電素子101の識別情報を付加して、演算処理部103へ無線送信する。無線送信の方法自体は本発明を限定するものではなく、公知の方法を用いればよい。信号検出部102と演算処理部103との間を有線通信により実現する場合は、対応する線状圧電素子101ごとの信号線を、演算処理部103の各入力端子に接続する。
信号検出部102は、各線状圧電素子で発生した電気信号の大きさとして、例えば電流値や電圧値などを検出する。また例えば、各線状圧電素子で発生した電気信号の大きさとして、電流値や電圧値などのような信号強度そのものでなく、これらの値の微分値やその他演算値を用いてもよい。例えば微分値であれば急激な電気信号の変化を精度よく取得することができたり、積分値であれば変形の大きさに基づく解析ができる。
演算処理部103は、信号検出部102が検出した電気信号に基づいて、衣類501−1及び500−2の変形の様態を判別する。衣類を着用した被測定体が動くことにより衣類が変形すると線状圧電素子101において電気信号が発生するが、演算処理部103によりこの電気信号を解析することにより衣類の変形の様態を判別することで、当該衣類を着用した被測定体の動きの内容が判明する。
演算処理部103は、例えば、衣類から離れたコンピュータ等の計算装置にて実現される。この場合、線状圧電素子101及び信号検出部102は、被測定体に着用される衣類に配置され、演算処理部103は、この衣類とは別体の計算装置内に設けられるが、信号検出部102と演算処理部103との間は無線通信により接続されるのが好ましい。またあるいは、演算処理部103は、例えば、衣類上の任意の位置に配置される集積回路(IC)チップにて実現される。この場合、線状圧電素子101、信号検出部102及び演算処理部103は、被測定体に着用される衣類に配置されるが、信号検出部102と演算処理部103との間は無線通信でも有線通信でもよく、また、センサシステム1000が組み込まれた衣類を選択可能なものとするために、演算処理部103についても防水機能を有するものが好ましい。
演算処理部103による衣類の変形の様態の判別結果は、様々な用途に利用することができる。以下、具体例をいくつか列挙する。
例えば、演算処理部103に、パソコン、携帯端末、もしくはタッチパネルなどの表示装置(図示せず)に接続することで、被測定体の動きの内容を単に数値やグラフチャートで表すことはもちろん、コンピュータグラフィックやアニメーションにて表示装置に表示することができる。例えば、ゴルフプレーヤーやテニスプレーヤーが、センサシステム1000が組み込まれたスポーツウェアを着用すれば、自身のプレー内容を表示装置にて確認することができる。例えば、アマチュアとプロの各プレーヤーにセンサシステム1000が組み込まれたスポーツウェアを着用させ、それぞれのプレー内容を比較できるように表示装置に表示させるといった、練習態様を実現することができる。特に、複数の部位にセンサを設けている場合には、非測定体の動きの順番やタイミングに基づく解析結果を表示させることができる。例えば、センサシステム1000が組み込まれた衣類を着用した役者が行った演技をコンピュータグラフィックやアニメーションに変換するモーションキャプチャ装置として利用することもできる。
例えば、入力された電気信号を振動に変換する振動発生装置(図示せず)や微小な電気ショックに発生する電気発生装置(図示せず)を、センサシステム1000が組み込まれた衣類にさらに組み込み、これら振動発生装置や電気発生装置に演算処理部103を接続すれば、被測定体の動きの内容を、衣類を着用した人間や動物に対して振動や電気ショックの形でフィードバックすることができる。例えば、ゴルフプレーヤーやテニスプレーヤーが、センサシステム1000及び振動発生装置もしくは電気発生装置が組み込まれたスポーツウェアを着用すれば、自身のプレー内容を振動や電気ショックの形で感知することができる。例えば、プロのプレーヤーにこのスポーツウェアを着用させ、演算処理部103により得られた判別結果を記憶装置に予め保持しておき、次いで、アマチュアのプレーヤーにこのスポーツウェアを着用させ、プレー内容がプロプレーヤーと相違する場合は、振動や電気ショックにてスポーツウェアを着用したアマチュアのプレーヤーにフィードバックする、といった練習態様を実現することができる。例えば、センサシステム1000及び振動発生装置もしくは電気発生装置が組み込まれた衣類を、ペットや家畜に着用させ、振動や電気ショックにてしつけを行うといった用途も可能である。
例えば、演算処理部103に、スピーカ、ブザー、チャイムなどのような音を発する音響機器に接続することで、被測定体の動きに応じて警報音を発するといった安全システムを実現することができる。例えば、建設作業員や工場労働者にセンサシステム1000が組み込まれた衣類を着用させ、演算処理部103により得られた判別結果が予め登録しておいた危険動作を示す場合に、警報音を発する、といった安全システムを実現することができる。例えば、自動車の運転者や鉄道の運転士にセンサシステム1000が組み込まれた衣類を着用させ、演算処理部103により得られた判別結果が居眠りに特有の動作を示す場合に、警報音を発する、といった安全システムを実現することができる。
また、例えば、人形、ぬいぐるみなどにセンサシステム1000が組み込まれた衣類を着用させ、演算処理部103により得られた判別結果に応じた音声を発するといった、玩具の提供も実現することができる。
例えば、演算処理部103にロボットコントローラを接続することでセンサシステム1000をロボットに対するインターフェースとして用いることも可能である。例えば、演算処理部103にロボットコントローラを接続し、センサシステム1000が組み込まれた衣類を着用した人間の動きをロボットに再現させることもできる。このロボットが玩具であれば、人間の動きを再現するロボット玩具となる。あるいは、センサシステム1000が組み込まれた衣類をロボットに着用させ、当該ロボットの動きを別のロボットに再現させることもできる。このロボットが産業用ロボットであれば、産業用ロボットに対する教示作業の負担を低減できる。
説明を図1に戻すと、オプションとして設けられる導電性繊維104は、衣類(図1に示す例では上着500−1及びズボン500−2)に配置された線状圧電素子101の近傍に配置される。すなわち、導電性繊維104は線状圧電素子101と組み合わせて設けられるが、全ての線状圧電素子101に対して導電性繊維104を設ける必要はない。導電性繊維104は、衣類を着用した被測定体との間の相互作用により電気信号が発生するものである。すなわち、衣類を着用した被測定体が動くことにより衣類が変形すると、当該衣類に設けられた導電性繊維104と被測定体との間の距離が変化するので、導電性繊維104と被測定体との間の静電容量が変化する。この静電容量の変化により導電性繊維104には微弱な電気信号が発生する。導電性繊維104と信号検出部102とは電気的に接続されており、導電性繊維104で発生した微弱な電気信号は信号検出部102により検出される。信号検出部102は、導電性繊維104から引き出された導線を接続するコネクタ(図示せず)と、導電性繊維104で発生したアナログ電気信号をディジタル電気信号に変換するAD変換部(図示せず)と、AD変換部から出力されたディジタル電気信号を次段の演算処理部103へ送信する送信部(図示せず)と、を含む。また、導電性繊維104で発生した電気信号は微弱であるので、これを増幅するアンプ(図示せず)を信号検出部102は有する。アンプは、アナログアンプでもディジタルアンプでもよいが、アナログアンプで構成する場合はAD変換部の前段に設けられ、ディジタルアンプで構成する場合はAD変換部の後段に設けられる。導電性繊維104を線状圧電素子101と組み合わせて設けた場合、演算処理部103は、信号検出部102が検出した線状圧電素子101で発生した電気信号と導電性繊維104から発生した電気信号とに基づいて、衣類の変形の様態をより正確に判別することができる。すなわち、衣類を着用した被測定体が動くことにより衣類が変形すると、線状圧電素子101及び導電性繊維104の両方にて電気信号が発生し、演算処理部103により電気信号を解析することにより衣類の変形の様態を判別し、当該衣類を着用した被測定体の動きを知ることができる。
続いて、線状圧電素子101の配置例について例示する。
図4は、一実施形態によるセンサシステムを組み込んだ上着及びズボンの前面(正面)を模式的に示す図であり、図5は、図4の上着及びズボンの背面を模式的に示す図である。例えば、線状圧電素子101は、図4に示すように人間の股関節近傍及び膝近傍に位置するズボン500−2上の前面に設けられ、図5に示すように人間の肩近傍及び肘臀近傍に位置する上着500−1上の背面に設けられ、図5に示すように人間の臀部近傍に位置するズボン500−2上の前面に設けられる。例えば、導電性繊維104は、図5に示すように人間の肩近傍及び肘臀近傍に位置する上着500−1上の背面に設けられた線状圧電素子101の近傍に設けられる。図6は、一実施形態によるセンサシステムを組み込んだ上着の背面の実際の写真を示す図であり、図5に模式的に示した線状圧電素子101及び導電性繊維104の配置に対応する。
続いて、本実施形態において、センサシステムが組み込まれた衣類を着用した人間が実際に動いた場合の実験結果について、図7〜図11を参照して説明する。なお、図8〜図11に示された実験結果において、電気信号の極性の正負の取り方は一例であって、グランド(ゼロ電位)の設定の次第で変わることは当業者にとって周知の事項である。
図7は、上着の肩及び肘の近傍に線状圧電素子を配置した実際の写真を示す図である。図7に示すように、線状圧電素子101を、上着500−1の肘、前腕部、及び上腕部のそれぞれに設けた。
図8は、図7に示した上着を着用して肘を曲げた場合に発生する電気信号を示す図であって、(a)は上着の肘に設けられた線状圧電素子で発生する電気信号を示し、(b)は上着の前腕部及び上腕部に設けられた線状圧電素子で発生する電気信号を示す。図9は、図7に示した上着を着用して肘を曲げた状態(図8)から元に戻した場合に発生する電気信号を示す図であって、(a)は上着の肘に設けられた線状圧電素子で発生する電気信号を示し、(b)は上着の前腕部及び上腕部に設けられた線状圧電素子で発生する電気信号を示す。
図8(a)と図9(a)との比較から分かるように、上着500−1の肘に設けられた線状圧電素子101で発生する電気信号については、肘の曲げのときと肘を曲げの状態から元に戻したときに電気信号の変化が現れる。すなわち、肘を曲げたときは、上着500−1の肘に設けられた線状圧電素子101で発生する電気信号の極性は正から負に遷移し、肘を曲げの状態から元に戻したときは、上着500−1の肘に設けられた線状圧電素子101で発生する電気信号の極性は負から正に遷移している。このように、上着500−1の肘に設けられた線状圧電素子101で発生する電気信号については、肘の曲げと戻しの前後で電気信号の極性が反転している。
また、図8(b)と図9(b)との比較から分かるように、上着500−1の上腕部に設けられた線状圧電素子101で発生する電気信号についても、肘の曲げのときと肘を曲げの状態から元に戻したときに電気信号の変化が現れる。すなわち、肘を曲げたときは、上着500−1の上腕部に設けられた線状圧電素子101で発生する電気信号の極性は正から負に遷移し、肘を曲げの状態から元に戻したときは、上着500−1の上腕部に設けられた線状圧電素子101で発生する電気信号の極性は負から正に遷移している。このように、上着500−1の上腕部に設けられた線状圧電素子101で発生する電気信号についても、肘の曲げと戻しの前後で電気信号の極性が反転している。
一方で、図8(b)と図9(b)との比較から分かるように、上着500−1の前腕部に設けられた線状圧電素子101で発生する電気信号については、肘の曲げのときと肘を曲げの状態から元に戻したときに電気信号の変化は現れるが、その変化の大きさは小さく不明確であることが特徴的である。
よって、肘の曲げと戻し(伸ばし)に関しては、「上着500−1の肘及び/または上腕部に設けられた線状圧電素子101で発生する電気信号の極性に明確な反転がありなおかつ前腕部に設けられた線状圧電素子101で発生する電気信号の極性の反転が不明確である」か否かで判別することができることが分かる。例えば、演算処理部103は、上着500−1の肘、前腕部、及び上腕部に設けられた各線状圧電素子101で発生する電気信号の極性を観測し、上着500−1の肘及び/または上腕部に設けられた線状圧電素子101で発生する電気信号の極性に上記のような明確な反転があり、なおかつ上着500−1の前腕部に設けられた線状圧電素子101で発生する電気信号の極性の反転が不明確であった場合は、「肘が曲げられた」もしくは「肘の曲げが元に戻された」と判別する。
図10は、図7に示した上着を着用して肘をねじった場合に発生する電気信号を示す図であって、(a)は上着の肘に設けられた線状圧電素子で発生する電気信号を示し、(b)は上着の前腕部及び上腕部に設けられた線状圧電素子で発生する電気信号を示す。図11は、図7に示した上着を着用して肘をねじった状態(図10)から元に戻した場合に発生する電気信号を示す図であって、(a)は上着の肘に設けられた線状圧電素子で発生する電気信号を示し、(b)は上着の前腕部及び上腕部に設けられた線状圧電素子で発生する電気信号を示す。
図10(a)と図11(a)との比較から分かるように、上着500−1の肘に設けられた線状圧電素子101で発生する電気信号については、肘をねじっているときと肘のねじりを元に戻しているときに電気信号の変化が現れるが、その変化の大きさは小さく不明確である。
また、図10(b)と図11(b)との比較から分かるように、上着500−1の上腕部に設けられた線状圧電素子101で発生する電気信号についても、肘をねじっているときと肘のねじりを元に戻しているときに電気信号の変化が現れるが、その変化の大きさは小さく不明確である。
一方で、図10(b)と図11(b)との比較から分かるように、上着500−1の前腕部に設けられた線状圧電素子101で発生する電気信号については、肘をねじっているときと肘のねじりを元に戻しているときに電気信号の変化が明確に現れる。すなわち、肘をねじっているときは、上着500−1の前腕部に設けられた線状圧電素子101で発生する電気信号の極性は正から負に遷移し、肘のねじりを元に戻しているときは、上着500−1の前腕部に設けられた線状圧電素子101で発生する電気信号の極性は負から正に遷移している。このように、上着500−1の前腕部に設けられた線状圧電素子101で発生する電気信号については、肘をねじっているときと肘のねじりを元に戻しているときとで電気信号の極性が明確に反転している。
よって、肘をねじりと戻し(伸ばし)に関しては、「上着500−1の肘及び/または上腕部に設けられた線状圧電素子101で発生する電気信号の極性の反転が不明確でありなおかつ前腕部に設けられた線状圧電素子101で発生する電気信号の極性が明確に反転している」か否かで判別することができることが分かる。例えば、演算処理部103は、上着500−1の上腕部に設けられた各線状圧電素子101で発生する電気信号の極性を観測し、肘及び/または上腕部に設けられた線状圧電素子101で発生する電気信号の極性の反転が不明確であり、なおかつ前腕部に設けられた線状圧電素子101で発生する電気信号の極性に上記のような明確反転があった場合は、「肘がねじられている」もしくは「肘のねじりが元に戻された」と判別する。
また、図8及び図9に示す実験結果と図10及び図11に示す実験結果とを比較して分かるように、上着500−1の肘、前腕部、及び上腕部に設けられた線状圧電素子101のうち、どの部分に設けられた線状圧電素子101の電気信号の極性が明確に反転したか及びどの部分に設けられた線状圧電素子101の電気信号の極性の反転が不明確であるかを観察すれば、腕の曲げとねじりとを判別することができる。
以上説明したように、本実施形態によれば、伸長により電気信号が発生する線状圧電素子101にて、「肘が曲げられた」、「肘の曲げが元に戻された」、「肘がねじられた」及び「肘のねじりが元に戻された」の各動作を判別することができる。なお、上記では人間の肘の動きを例にとり説明したが、人間や動物などの生体における、例えば肩、手首、足首、膝、股関節、指、首、口、瞼、頬、おでこ、鼻、耳、腹部、胸部、太もも、ふくらはぎ、二の腕、背部、臀部、手の平、手の甲、足の土踏まず、足の甲といった各可動部位、並びにロボットや玩具などの機械における可動部位についても、同様の設計思想を適用することができる。なお、被測定体の可動部の動きの検知の正確性を高めるために、センサシステム1000が組み込まれた衣類を被測定体に着用させて実際に被測定体を動かして線状圧電素子101及び導電性繊維で発生する電気信号の波形を観測し、観測結果を被測定体の動きとを照らし合わせて電気信号の波形と被測定体の動きとの関係性を示すテーブルを取得し、このテーブルを演算処理部103に記憶させて、演算処理部103に被測定体の動きの判別を実行させるようにしてもよい。
図12は、一実施形態によるセンサシステムを組み込んだグローブの実際の写真を示す図であって、(a)はグローブを着用した手の甲を示し、(b)はグローブを着用した手のひらを示し、(c)はグローブを着用した手の一側面を示す。図12は、本実施形態によるセンサシステム1000をグローブ500−3に組み込む場合の、線状圧電素子101の配置例を示している。
図13は、ロボットコントローラを接続した一実施形態に係るセンサシステムの基本構成を示す模式図である。例えば、演算処理部103にロボットコントローラ201を接続し、センサシステム1000が組み込まれた衣類を着用した人間の動きをロボット202に再現させることもできる。
以上説明した被測定体に着用される衣類に配置され、印加された応力に応じて電気信号が発生する線状圧電素子を有する本実施形態によるセンサシステム1000は、被測定体の動きを検出する他の手法と組み合わせてもよい。
例えば、本実施形態によるセンサシステム1000と重心移動を検知するためのセンサ(例えば感圧センサ)と併用してシステムを構築してもよい。この態様の場合、例えば、線状圧電素子101で発生した電気信号と重心移動を検知するセンサからの信号とに基づき、被測定体に着用された衣類の変形の様態と被測定体自体の動き(重心移動)とを同時に判別する演算処理部を設けることができる。このセンサシステム1000と重心移動を検知するセンサと組み合わせる態様によれば、例えば、センサシステム1000による被測定体(ここでは人体)の上半身の動きの検知と別センサ(例えば感圧センサ)による体重移動の検知とを同時に実現できるため、例えばゴルフのスイング、テニスのスイング等の動きをより詳細に把握することが可能である。なお、被測定体の重心移動を検知するためのセンサとしては公知のセンサをいずれも用いることができるが、例えばポリ乳酸フィルムなど面方向に圧電性を発現する圧電性高分子フィルム層(例えばポリ−L−乳酸及びポリ−D−乳酸)を、複数層積層した圧電積層体を圧電積層体素子に用い、圧電積層体を円筒状、角丸長、方形などの一部に曲線部を有する形状に捲回したセンサを用いれば、荷重依存的に電圧が発生、減衰し、持続的に荷重がかかっていれば、電圧が一定時間持続して出力も行われるので、より詳細な測定を行うことが可能である。
(線状圧電素子)
本発明における線状圧電素子としては、印加された応力に応じて電気信号が発生する公知のあらゆるものを使用することができる。例えば、線状圧電素子としては、導電性繊維を芯糸としてその周りに圧電性繊維を配置した芯鞘構造を有する圧電素子を使用することができる。より具体的には、線状圧電素子としては、導電性繊維の周りに圧電性フィルムまたは圧電性繊維を単に巻きつけた圧電素子や、あるいは導電性繊維の周りに圧電性繊維を組紐状に巻きつけた組紐状圧電素子を使用することができる。中でも、本発明における線状圧電素子としては、伸長変形に対してより大きな電気信号を出力する圧電素子が好ましく、このような観点から、組紐状圧電素子がより好ましい。そこで、組紐状圧電素子について以下で詳しく説明する。
(組紐状圧電素子)
図14は実施形態に係る組紐状圧電素子の構成例を示す模式図である。
組紐状圧電素子1は、導電性繊維Bで形成された芯部3と、芯部3を被覆するように組紐状の圧電性繊維Aで形成された鞘部2と、を備えている。
組紐状圧電素子1では、少なくとも一本の導電性繊維Bの外周面を多数の圧電性繊維Aが緻密に取り巻いている。組紐状圧電素子1に変形が生じると、多数の圧電性繊維Aそれぞれに変形による応力が生じ、それにより多数の圧電性繊維Aそれぞれに電場が生じ(圧電効果)、その結果、導電性繊維Bを取り巻く多数の圧電性繊維Aの電場を重畳した電圧変化が導電性繊維Bに生じる。すなわち圧電性繊維Aの組紐状の鞘部2を用いない場合と比較して導電性繊維Bからの電気信号が増大する。それにより、組紐状圧電素子1では、比較的小さな変形で生じる応力によっても、大きな電気信号を取り出すことが可能となる。なお、導電性繊維Bは複数本であってもよい。
組紐状圧電素子1は、その中心軸(図14中のCL)方向への伸長変形に対して選択的に大きな電気信号を出力するものが好ましい。
(伸長変形に対して選択的に大きな電気信号を出力する組紐状圧電素子)
中心軸方向への伸長変形に対して選択的に大きな電気信号を出力する組紐状圧電素子1としては、例えば、圧電性繊維Aとして、一軸配向した高分子の成型体であり、配向軸を3軸とした時の圧電定数d14の絶対値が0.1pC/N以上1000pC/N以下の値を有する結晶性高分子を主成分として含む圧電性高分子を使用することができる。本発明において「主成分として含む」とは、構成成分の50質量%以上を占めることを指す。また、本発明において結晶性高分子とは、1質量%以上の結晶部と、結晶部以外の非晶部とからなる高分子であり、結晶性高分子の質量とは結晶部と非晶部とを合計した質量である。なお、d14の値は成型条件や純度および測定雰囲気によって異なる値を示すが、本発明においては、実際に使用される圧電性高分子中の結晶性高分子の結晶化度および結晶配向度を測定し、それと同等の結晶化度および結晶配向度を有する1軸延伸フィルムを当該結晶性高分子を用いて作成し、そのフィルムのd14の絶対値が、実際に使用される温度において0.1pC/N以上1000pC/N以下の値を示せばよく、本実施形態の圧電性高分子に含まれる結晶性高分子としては、後述されるような特定の結晶性高分子には限定されない。フィルムサンプルのd14の測定は公知の様々な方法を取ることができるが、例えばフィルムサンプルの両面に金属を蒸着して電極としたサンプルを、延伸方向から45度傾いた方向に4辺を有する長方形に切り出し、その長尺方向に引張荷重をかけた時に両面の電極に発生する電荷を測定することで、d14の値を測定することができる。
また、中心軸方向への伸長変形に対して選択的に大きな電気信号を出力する組紐状圧電素子1においては、中心軸の方向と圧電性高分子の配向方向とがなす角度(配向角度θ)は15°以上75°以下であることが好ましい。この条件を満たす時、組紐状圧電素子1に対し中心軸方向の伸長変形(引張応力および圧縮応力)を与えることで、圧電性高分子に含まれる結晶性高分子の圧電定数d14に対応する圧電効果を効率よく利用し、組紐状圧電素子1の中心軸側と外側とに効率的に逆極性(逆符号)の電荷を発生させることができる。かかる観点から、配向角度θは25°以上65°以下であることが好ましく、35°以上55°以下であることがより好ましく、40°以上50°以下であることがさらに好ましい。このように圧電性高分子を配置すると、圧電性高分子の配向方向はらせんを描くことになる。
また、このように圧電性高分子を配置することで、組紐状圧電素子1の表面を擦るようなせん断変形や、中心軸を曲げるような曲げ変形や、中心軸を軸としたねじり変形に対しては組紐状圧電素子1の中心軸側と外側とには大きな電荷を発生させないようにする、即ち中心軸方向の伸長に対して選択的に大きな電荷を発生させる組紐状圧電素子1とすることができる。
配向角度θは、可能な限り下記の方法で測定する。組紐状圧電素子1の側面写真を撮影し、圧電性高分子A’のらせんピッチHPを測定する。らせんピッチHPは図15の通り、1本の圧電性高分子A’が表面から裏面を回って再び表面に来るまでに要した、中心軸方向の直線距離である。また、必要に応じて接着剤で構造を固定後に、組紐状圧電素子1の中心軸に垂直な断面を切り出して写真を撮影し、鞘部2が占める部分の外側半径Roおよび内側半径Riを測定する。断面の外縁および内縁が楕円形や扁平な円形の場合は、長径と短径の平均値をRoおよびRiとする。下記式から中心軸の方向に対する圧電性高分子の配向角度θを計算する。
θ = arctan(2πRm/HP) (0°≦θ≦90°)
ただしRm=2(Ro3−Ri3)/3(Ro2−Ri2)、即ち断面積で加重平均した組紐状圧電素子1の半径である。
組紐状圧電素子1の側面写真において圧電性高分子が均一な表面を有しており、圧電性高分子のらせんピッチが判別できない場合は、接着剤等で固定した組紐状圧電素子1を中心軸を通る平面で割断し、割断面に垂直な方向に、中心軸を通るよう十分に狭い範囲でX線を透過するよう広角X線回折分析を行い、配向方向を決定して中心軸との角度をとり、θとする。
本発明に係る組紐状圧電素子1では、圧電性高分子の配向方向に沿って描かれるらせんについて、らせん方向(S撚り方向またはZ撚り方向)やらせんピッチを異にする2つ以上のらせんが同時に存在する場合があるが、それぞれのらせん方向およびらせんピッチの圧電性高分子についてそれぞれ上記測定を行い、いずれか一つのらせん方向およびらせんピッチの圧電性高分子が前述の条件を満たすことが必要である。
中心軸方向の伸長変形に対して中心軸側と外側とに発生する電荷の極性は、圧電性高分子の配向方向をS撚りのらせんに沿って配置した場合と、同じ圧電性高分子の配向方向をZ撚りのらせんに沿って配置した場合とでは、互いに逆の極性になる。このため、圧電性高分子の配向方向をS撚りのらせんに沿って配置すると同時にZ撚りのらせんに沿って配置した場合は、伸長変形に対する発生電荷がS撚り方向とZ撚り方向とで互いに打消し合って効率的に利用できないため、好ましくない。したがって、上記の圧電性高分子は、圧電定数d14の値が正の結晶性高分子を主成分として含むP体と、負の結晶性高分子を主成分として含むN体とを含み、組紐状圧電素子1の中心軸が1cmの長さを持つ部分について、配向軸がZ撚り方向にらせんを巻いて配置されたP体の質量をZP、配向軸がS撚り方向にらせんを巻いて配置されたP体の質量をSP、配向軸がZ撚り方向にらせんを巻いて配置されたN体の質量をZN、配向軸がS撚り方向にらせんを巻いて配置されたN体の質量をSNとし、(ZP+SN)と(SP+ZN)とのうち小さい方をT1、大きい方をT2としたとき、T1/T2の値が0以上0.8以下であることが好ましく、さらに0以上0.5以下であることが好ましい。
本発明の圧電性繊維として主成分としてポリ乳酸が含まれる繊維を用いる場合、ポリ乳酸中の乳酸ユニットは90モル%以上であることが好ましく、95モル%以上であることがより好ましく、98モル%以上がさらに好ましい。
なお、組紐状圧電素子1では、本発明の目的を達成する限り、鞘部2では圧電性繊維A以外の他の繊維と組み合わせて混繊等を行ってもよいし、芯部3では導電性繊維B以外の他の繊維と組み合わせて混繊等を行ってもよい。
導電性繊維Bの芯部3と組紐状の圧電性繊維Aの鞘部2とで構成される組紐状圧電素子の長さは特に限定はなく、被測定体上の測定領域の大きさや形状等に応じて適宜決定すればよい。例えば、組紐状圧電素子は製造において連続的に製造され、その後に必要な長さに切断して利用してもよい。組紐状圧電素子の長さは1mm〜20m、好ましくは、1cm〜10m、より好ましくは10cm〜5mである。長さが短過ぎると従来の点センサと比較した本発明の上記効果、すなわち単位面積当たりのセンサの配置個数を低減でき、応力が印加された位置を少ないセンサの個数で特定できるという効果が十分に達成できない場合があり、また、長さが長過ぎると導電性繊維Bの抵抗値を考慮する必要が出てくるであろう。ただし、例えば、抵抗値については、電流値を計測することで抵抗値を考慮する必要がなくなる場合があり、ノイズについては信号を増幅することでノイズを抑制(もしくは除去)できる場合があり、特に電流増幅タイプのアンプを用いることが好ましい。
以下、各構成について詳細に説明する。
(導電性繊維)
導電性繊維Bとしては、導電性を示すものであればよく、公知のあらゆるものが用いられる。導電性繊維Bとしては、例えば、金属繊維、導電性高分子からなる繊維、炭素繊維、繊維状あるいは粒状の導電性フィラーを分散させた高分子からなる繊維、あるいは繊維状物の表面に導電性を有する層を設けた繊維が挙げられる。繊維状物の表面に導電性を有する層を設ける方法としては、金属コート、導電性高分子コート、導電性繊維の巻付けなどが挙げられる。なかでも金属コートが導電性、耐久性、柔軟性などの観点から好ましい。金属をコートする具体的な方法としては、蒸着、スパッタ、電解メッキ、無電解メッキなどが挙げられるが生産性などの観点からメッキが好ましい。このような金属をメッキされた繊維は金属メッキ繊維ということができる。
金属をコートされるベースの繊維として、導電性の有無によらず公知の繊維を用いることができ、例えば、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、塩化ビニル繊維、アラミド繊維、ポリスルホン繊維、ポリエーテル繊維、ポリウレタン繊維等の合成繊維の他、綿、麻、絹等の天然繊維、アセテート等の半合成繊維、レーヨン、キュプラ等の再生繊維を用いることができる。ベースの繊維はこれらに限定されるものではなく、公知の繊維を任意に用いることができ、これらの繊維を組み合わせて用いてもよい。
ベースの繊維にコートされる金属は導電性を示し、本発明の効果を奏する限り、いずれを用いてもよい。例えば、金、銀、白金、銅、ニッケル、スズ、亜鉛、パラジウム、酸化インジウム錫、硫化銅など、およびこれらの混合物や合金などを用いることができる。
導電性繊維Bに屈曲耐性のある金属コートした有機繊維を使用すると、導電性繊維が折れることが非常に少なく、圧電素子を用いたセンサとしての耐久性や安全性に優れる。
導電性繊維Bはフィラメントを複数本束ねたマルチフィラメントであっても、また、フィラメント一本からなるモノフィラメントであってもよい。マルチフィラメントの方が電気特性の長尺安定性の観点で好ましい。モノフィラメント(紡績糸を含む)の場合、その単糸径は1μm〜5000μmであり、好ましくは2μm〜100μmである。さらに好ましくは3μm〜50μmである。マルチフィラメントの場合、フィラメント数としては、1本〜100000本が好ましく、より好ましくは5本〜500本、さらに好ましくは10本〜100本である。ただし、導電性繊維Bの繊度・本数とは、組紐を作製する際に用いる芯部3の繊度・本数であり、複数本の単糸(モノフィラメント)で形成されるマルチフィラメントも一本の導電性繊維Bと数えるものとする。ここで芯部3とは、導電性繊維以外の繊維を用いた場合であっても、それを含めた全体の量とする。
繊維の直径が小さいと強度が低下しハンドリングが困難となり、また、直径が大きい場合にはフレキシブル性が犠牲になる。導電性繊維Bの断面形状としては円または楕円であることが、圧電素子の設計および製造の観点で好ましいが、これに限定されない。
また、圧電性高分子からの電気出力を効率よく取り出すため、電気抵抗は低いことが好ましく、体積抵抗率としては10-1Ω・cm以下であることが好ましく、より好ましくは10-2Ω・cm以下、さらに好ましくは10-3Ω・cm以下である。ただし、電気信号の検出で十分な強度が得られるのであれば導電性繊維Bの抵抗率はこの限りではない。
導電性繊維Bは、本発明の用途から、繰り返しの曲げやねじりといった動きに対して耐性がなければならない。その指標としては、結節強さが、より大きいものが好まれる。結節強さはJIS L1013 8.6の方法で測定することができる。本発明に適当な結節強さの程度としては、0.5cN/dtex以上であることが好ましく、1.0cN/dtex以上であることがより好ましく、1.5cN/dtex以上であることがさらに好ましく、2.0cN/dtex以上であることが最も好ましい。また、別の指標としては、曲げ剛性が、より小さいものが好まれる。曲げ剛性は、カトーテック(株)製KES―FB2純曲げ試験機などの測定装置で測定されるのが一般的である。本発明に適当な曲げ剛性の程度としては、東邦テナックス(株)製の炭素繊維“テナックス”(登録商標)HTS40−3Kよりも小さいほうが好ましい。具体的には、導電性繊維の曲げ剛性が0.05×10-4N・m2/m以下であることが好ましく、0.02×10-4N・m2/m以下であることがより好ましく、0.01×10-4N・m2/m以下であることがさらに好ましい。
(圧電性繊維)
圧電性繊維Aの材料である圧電性高分子としてはポリフッ化ビニリデンやポリ乳酸のような圧電性を示す高分子を利用できるが、本実施形態では上記のように圧電性繊維Aは主成分として配向軸を3軸とした時の圧電定数d14の絶対値が高い結晶性高分子、とりわけポリ乳酸を含むことが好適である。ポリ乳酸は、例えば溶融紡糸後に延伸によって容易に配向して圧電性を示し、ポリフッ化ビニリデンなどで必要となる電界配向処理が不要な点で生産性に優れている。しかしこのことは、本発明を実施するに際してポリフッ化ビニリデンその他の圧電性材料の使用を排除することを意図するものではない。
ポリ乳酸としては、その結晶構造によって、L−乳酸、L−ラクチドを重合してなるポリ−L−乳酸、D−乳酸、D−ラクチドを重合してなるポリ−D−乳酸、さらに、それらのハイブリッド構造からなるステレオコンプレックスポリ乳酸などがあるが、圧電性を示すものであればいずれも利用できる。圧電率の高さの観点で好ましくは、ポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸である。ポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸はそれぞれ、同じ応力に対して分極が逆になるために、目的に応じてこれらを組み合わせて使用することも可能である。
ポリ乳酸の光学純度は99%以上であることが好ましく、99.3%以上であることがより好ましく、99.5%以上であることがさらに好ましい。光学純度が99%未満であると著しく圧電率が低下する場合があり、圧電性繊維Aの形状変化よって十分な電気信号を得ることが難しくなる場合がある。特に、圧電性繊維Aは、主成分としてポリ−L−乳酸またはポリ−D−乳酸を含み、これらの光学純度が99%以上であることが好ましい。
ポリ乳酸を主成分とする圧電性繊維Aは、製造時に延伸されて、その繊維軸方向に一軸配向している。さらに、圧電性繊維Aは、その繊維軸方向に一軸配向しているだけでなく、ポリ乳酸の結晶を含むものであることが好ましく、一軸配向したポリ乳酸の結晶を含むものであることがより好ましい。なぜなら、ポリ乳酸はその結晶性が高いことおよび一軸配向していることでより大きな圧電性を示し、d14の絶対値が高くなるためである。
結晶性および一軸配向性はホモPLA結晶化度Xhomo(%)および結晶配向度Ao(%)で求められる。本発明の圧電性繊維Aとしては、ホモPLA結晶化度Xhomo(%)および結晶配向度Ao(%)が下記式(1)を満たすことが好ましい。
homo×Ao×Ao÷106≧0.26 (1)
上記式(1)を満たさない場合、結晶性および/または一軸配向性が十分でなく、動作に対する電気信号の出力値が低下したり、特定方向の動作に対する信号の感度が低下したりするおそれがある。上記式(1)の左辺の値は、0.28以上がより好ましく、0.3以上がさらに好ましい。ここで、各々の値は下記に従って求める。
ホモポリ乳酸結晶化度Xhomo
ホモポリ乳酸結晶化度Xhomoについては、広角X線回折分析(WAXD)による結晶構造解析から求める。広角X線回折分析(WAXD)では、(株)リガク製ultrax18型X線回折装置を用いて透過法により、以下条件でサンプルのX線回折図形をイメージングプレートに記録する。
X線源: Cu−Kα線(コンフォーカル ミラー)
出力: 45kV×60mA
スリット: 1st:1mmΦ,2nd:0.8mmΦ
カメラ長: 120mm
積算時間: 10分
サンプル: 35mgのポリ乳酸繊維を引き揃え3cmの繊維束とする。
得られるX線回折図形において方位角にわたって全散乱強度Itotalを求め、ここで2θ=16.5°,18.5°,24.3°付近に現れるホモポリ乳酸結晶に由来する各回折ピークの積分強度の総和ΣIHMiを求める。これらの値から下式(2)に従い、ホモポリ乳酸結晶化度Xhomoを求める。
ホモポリ乳酸結晶化度Xhomo(%)=ΣIHMi/Itotal×100 (2)
なお、ΣIHMiは、全散乱強度においてバックグランドや非晶による散漫散乱を差し引くことによって算出する。
(2)結晶配向度Ao:
結晶配向度Aoについては、上記の広角X線回折分析(WAXD)により得られるX線回折図形において、動径方向の2θ=16.5°付近に現れるホモポリ乳酸結晶に由来する回折ピークについて、方位角(°)に対する強度分布をとり、得られた分布プロファイルの半値幅の総計ΣWi(°)から次式(3)より算出する。
結晶配向度Ao(%)=(360−ΣWi)÷360×100 (3)
なお、ポリ乳酸は加水分解が比較的速いポリエステルであるから、耐湿熱性が問題となる場合においては、公知の、イソシアネート化合物、オキサゾリン化合物、エポキシ化合物、カルボジイミド化合物などの加水分解防止剤を添加してもよい。また、必要に応じてリン酸系化合物などの酸化防止剤、可塑剤、光劣化防止剤などを添加して物性改良してもよい。
圧電性繊維Aはフィラメントを複数本束ねたマルチフィラメントであっても、また、フィラメント一本からなるモノフィラメントであってもよい。モノフィラメント(紡績糸を含む)の場合、その単糸径は1μm〜5mmであり、好ましくは5μm〜2mm、さらに好ましくは10μm〜1mmである。マルチフィラメントの場合、その単糸径は0.1μm〜5mmであり、好ましくは2μm〜100μm、さらに好ましくは3μm〜50μmである。マルチフィラメントのフィラメント数としては、1本〜100000本が好ましく、より好ましくは50本〜50000本、さらに好ましくは100本〜20000本である。ただし、圧電性繊維Aの繊度や本数については、組紐を作製する際のキャリア1つあたりの繊度、本数であり、複数本の単糸(モノフィラメント)で形成されるマルチフィラメントも一本の圧電性繊維Aと数えるものとする。ここで、キャリア1つの中に、圧電性繊維以外の繊維を用いた場合であっても、それを含めた全体の量とする。
このような圧電性高分子を圧電性繊維Aとするためには、高分子から繊維化するための公知の手法を、本発明の効果を奏する限りいずれも採用することができる。例えば、圧電性高分子を押し出し成型して繊維化する手法、圧電性高分子を溶融紡糸して繊維化する手法、圧電性高分子を乾式あるいは湿式紡糸により繊維化する手法、圧電性高分子を静電紡糸により繊維化する手法、フィルムを形成した後に細くカットする手法、などを採用することができる。これらの紡糸条件は、採用する圧電性高分子に応じて公知の手法を適用すればよく、通常は工業的に生産の容易な溶融紡糸法を採用すればよい。さらに、繊維を形成後には形成された繊維を延伸する。それにより一軸延伸配向しかつ結晶を含む大きな圧電性を示す圧電性繊維Aが形成される。
また、圧電性繊維Aは、上記のように作製されたものを組紐とする前に、染色、撚糸、合糸、熱処理などの処理をすることができる。
さらに、圧電性繊維Aは、組紐を形成する際に繊維同士が擦れて断糸したり、毛羽が出たりする場合があるため、その強度と耐摩耗性は高い方が好ましく、強度は1.5cN/dtex以上であることが好ましく、2.0cN/dtex以上であることがより好ましく、2.5cN/dtex以上であることがさらに好ましく、3.0cN/dtex以上であることが最も好ましい。耐摩耗性は、JIS L1095 9.10.2 B法などで評価することができ、摩擦回数は100回以上が好ましく、1000回以上であることがより好ましく、5000回以上であることがさらに好ましく、10000回以上であることが最も好ましい。耐摩耗性を向上させるための方法は特に限定されるものではなく、公知のあらゆる方法を用いることができ、例えば、結晶化度を向上させたり、微粒子を添加したり、表面加工したりすることができる。また、組紐に加工する際に、繊維に潤滑剤を塗布して摩擦を低減させることもできる。
また、圧電性繊維の収縮率は、前述した導電性繊維の収縮率との差が小さいことが好ましい。収縮率差が大きいと、組紐作製後の後処理工程や実使用時に熱がかかった時や経時変化により組紐が曲がったり、圧電信号が弱くなってしまう場合がある。収縮率を後述の沸水収縮率で定量化した場合、圧電性繊維の沸水収縮率S(p)および導電性繊維の沸水収縮率S(c)が下記式(4)を満たすことが好適である。
|S(p)−S(c)|≦10 (4)
上記式(4)の左辺は5以下であることがより好ましく、3以下であればさらに好ましい。
また、圧電性繊維の収縮率は、導電性繊維以外の繊維、例えば絶縁性繊維の収縮率との差も小さいことが好ましい。収縮率差が大きいと、組紐作製後の後処理工程や実使用時に熱がかかった時や経時変化により組紐が曲がったり、圧電信号が弱くなってしまう場合がある。収縮率を沸水収縮率で定量化した場合、圧電性繊維の沸水収縮率S(p)および絶縁性繊維の沸水収縮率S(i)が下記式(5)を満たすことが好適である。
|S(p)−S(i)|≦10 (5)
上記式(5)の左辺は5以下であることがより好ましく、3以下であればさらに好ましい。
また、圧電性繊維の収縮率は小さい方が好ましい。例えば収縮率を沸水収縮率で定量化した場合、圧電性繊維の収縮率は15%以下であることが好ましく、より好ましくは10%以下、さらに好ましくは5%以下、最も好ましくは3%以下である。収縮率を下げる手段としては、公知のあらゆる方法を適用することができ、例えば、熱処理により非晶部の配向緩和や結晶化度を上げることにより収縮率を低減することができ、熱処理を実施するタイミングは特に限定されず、延伸後、撚糸後、組紐化後などが挙げられる。なお、上述の沸水収縮率は以下の方法で測定するものとする。枠周1.125mの検尺機で捲数20回のカセを作り、0.022cN/dtexの荷重を掛けて、スケール板に吊るして初期のカセ長L0を測定した。その後、このカセを100℃の沸騰水浴中で30分間処理後、放冷し再び上記荷重を掛けてスケール板に吊るし収縮後のカセ長Lを測定した。測定されたL0およびLを用いて下記式(6)により沸水収縮率を計算する。
沸水収縮率=(L0−L)/L0×100(%) (6)
(被覆)
導電性繊維B、すなわち芯部3は、圧電性繊維A、すなわち組紐状の鞘部2で表面が被覆されている。導電性繊維Bを被覆する鞘部2の厚みは1μm〜10mmであることが好ましく、5μm〜5mmであることがより好ましく、10μm〜3mmであることがさらに好ましい、20μm〜1mmであることが最も好ましい。薄すぎると強度の点で問題となる場合があり、また、厚すぎると組紐状圧電素子1が硬くなり変形し難くなる場合がある。なお、ここで言う鞘部2とは芯部3に隣接する層のことを指す。
組紐状圧電素子1において、鞘部2の圧電性繊維Aの総繊度は、芯部3の導電性繊維Bの総繊度の1/2倍以上、20倍以下であることが好ましく、1倍以上、15倍以下であることがより好ましく、2倍以上、10倍以下であることがさらに好ましい。圧電性繊維Aの総繊度が導電性繊維Bの総繊度に対して小さ過ぎると、導電性繊維Bを囲む圧電性繊維Aが少な過ぎて導電性繊維Bが十分な電気信号を出力できず、さらに導電性繊維Bが近接する他の導電性繊維に接触するおそれがある。圧電性繊維Aの総繊度が導電性繊維Bの総繊度に対して大き過ぎると、導電性繊維Bを囲む圧電性繊維Aが多過ぎて組紐状圧電素子1が硬くなり変形し難くなる。すなわち、いずれの場合にも組紐状圧電素子1がセンサとして十分に機能しなくなる。
ここでいう総繊度とは、鞘部2を構成する圧電性繊維A全ての繊度の和であり、例えば、一般的な8打組紐の場合には、8本の繊維の繊度の総和となる。
また、組紐状圧電素子1において、鞘部2の圧電性繊維Aの一本あたりの繊度は、導電性繊維Bの総繊度の1/20倍以上、2倍以下であることが好ましく、1/15倍以上、1.5倍以下であることがより好ましく、1/10倍以上、1倍以下であることがさらに好ましい。圧電性繊維A一本あたりの繊度が導電性繊維Bの総繊度に対して小さ過ぎると、圧電性繊維Aが少な過ぎて導電性繊維Bが十分な電気信号を出力できず、さらに圧電性繊維Aが切断するおそれがある。圧電性繊維A一本あたりの繊度が導電性繊維Bの総繊度に対して大き過ぎると、圧電性繊維Aが太過ぎて組紐状圧電素子1が硬くなり変形し難くなる。すなわち、いずれの場合にも組紐状圧電素子1がセンサとして十分に機能しなくなる。
なお、導電性繊維Bに金属繊維を用いた場合や、金属繊維を導電性繊維Bあるいは圧電性繊維Aに混繊した場合は、繊度の比率は上記の限りではない。本発明において、上記比率は、接触面積や被覆率、すなわち、面積および体積の観点で重要であるからである。例えば、それぞれの繊維の比重が2を超えるような場合には、繊維の平均断面積の比率が上記繊度の比率であることが好ましい。
圧電性繊維Aと導電性繊維Bとはできるだけ密着していることが好ましいが、密着性を改良するために、導電性繊維Bと圧電性繊維Aとの間にアンカー層や接着層などを設けてもよい。
被覆の方法は導電性繊維Bを芯糸として、その周りに圧電性繊維Aを組紐状に巻きつける方法が取られる。一方、圧電性繊維Aの組紐の形状は、印加された荷重で生じる応力に対して電気信号を出力することが出来れば特に限定されるものではないが、芯部3を有する8打組紐や16打組紐が好ましい。
導電性繊維Bと圧電性繊維Aの形状としては特に限定されるものではないが、できるだけ同心円状に近いことが好ましい。なお、導電性繊維Bとしてマルチフィラメントを用いる場合、圧電性繊維Aは、導電性繊維Bのマルチフィラメントの表面(繊維周面)の少なくとも一部が接触しているように被覆していればよく、マルチフィラメントを構成するすべてのフィラメント表面(繊維周面)に圧電性繊維Aが被覆していてもよいし、被覆していなくともよい。導電性繊維Bのマルチフィラメントを構成する内部の各フィラメントへの圧電性繊維Aの被覆状態は、圧電性素子としての性能、取扱い性等を考慮して、適宜設定すればよい。
本発明における組紐状圧電素子1は、その表面に電極を存在させる必要が無いため、組紐状圧電素子1自体をさらに被覆する必要がなく、また、誤動作しにくいという利点がある。
(絶縁性繊維)
組紐状圧電素子1では、鞘部2は圧電性繊維Aのみによって形成してもよいし、または圧電性繊維Aと絶縁性繊維の組み合わせによって形成してもよい。
このような絶縁性繊維としては、例えば、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、塩化ビニル繊維、アラミド繊維、ポリスルホン繊維、ポリエーテル繊維、ポリウレタン繊維等の合成繊維他、綿、麻、絹等の天然繊維、アセテート等の半合成繊維、レーヨン、キュプラ等の再生繊維を用いることができる。これらに限定されるものではなく、公知の絶縁性繊維を任意に用いることができる。さらに、これらの絶縁性繊維を組み合わせて用いてもよく、絶縁性を有しない繊維と組み合わせ、全体として絶縁性を有する繊維としてもよい。
また、公知のあらゆる断面形状の繊維も用いることができる。
(製造方法)
本発明における組紐状圧電素子1は少なくとも1本の導電性繊維Bの表面を組紐状の圧電性繊維Aで被覆しているが、その製造方法としては例えば以下の方法が挙げられる。すなわち、導電性繊維Bと圧電性繊維Aを別々の工程で作製し、導電性繊維Bに圧電性繊維Aを組紐状に巻きつけて被覆する方法である。この場合には、できるだけ同心円状に近くなるように被覆することが好ましい。
この場合、圧電性繊維Aを形成する圧電性高分子としてポリ乳酸を用いる場合の好ましい紡糸、延伸条件として、溶融紡糸温度は150℃〜250℃が好ましく、延伸温度は40℃〜150℃が好ましく、延伸倍率は1.1倍から5.0倍が好ましく、結晶化温度は80℃〜170℃が好ましい。
導電性繊維Bに巻きつける圧電性繊維Aとしては、複数のフィラメントを束ねたマルチフィラメントを用いてもよく、また、モノフィラメント(紡績糸を含む)を用いても良い。また、圧電性繊維Aを巻きつけられる導電性繊維Bとしては、複数のフィラメントを束ねたマルチフィラメントを用いてもよく、また、モノフィラメント(紡績糸を含む)を用いても良い。
被覆の好ましい形態としては、導電性繊維Bを芯糸とし、その周囲に圧電性繊維Aを組紐状に製紐して、丸打組物(Tubular Braid)を作製することで被覆することができる。より具体的には芯部3を有する8打組紐や16打組紐が挙げられる。ただし、例えば、圧電性繊維Aを編組チューブのような形態とし、導電性繊維Bを芯として当該編組チューブに挿入することで被覆してもよい。
以上のような製造方法により、導電性繊維Bの表面を組紐状の圧電性繊維Aで被覆した組紐状圧電素子1を得ることができる。
本発明における組紐状圧電素子1は、表面に電気信号を検出するための電極の形成を必要としないため、比較的簡単に製造することができる。
(保護層)
本発明における組紐状圧電素子1の最表面には保護層を設けてもよい。この保護層は絶縁性であることが好ましく、フレキシブル性などの観点から高分子からなるものがより好ましい。保護層に絶縁性を持たせる場合には、もちろん、この場合には保護層ごと変形させたり、保護層上を擦ったりすることになるが、これらの外力が圧電性繊維Aまで到達し、その分極を誘起できるものであれば特に限定はない。保護層としては、高分子などのコーティングによって形成されるものに限定されず、フィルム、布帛、繊維などを巻付けてもよく、あるいは、それらが組み合わされたものであってもよい。
保護層の厚みとしては出来るだけ薄い方が、せん断応力を圧電性繊維Aに伝えやすいが、薄すぎると保護層自体が破壊される等の問題が発生しやすくなるため、好ましくは10nm〜200μm、より好ましくは50nm〜50μm、さらに好ましくは70nm〜30μm、最も好ましくは100nm〜10μmである。この保護層により圧電素子の形状を形成することもできる。
また、ノイズ低減を目的として電磁波シールド層を組紐構造に取り入れることも可能である。電磁波シールド層は特に限定されるものではないが、導電性の物質をコーティングしてもよいし、導電性を有するフィルム、布帛、繊維などを巻付けてもよい。電磁波シールド層の体積抵抗率としては10-1Ω・cm以下であることが好ましく、より好ましくは10-2Ω・cm以下、さらに好ましくは10-3Ω・cm以下である。ただし、電磁波シールド層の効果が得られるのであれば抵抗率はこの限りではない。この電磁波シールド層は、鞘の圧電性繊維Aの表面に設けてもよく、前述の保護層の外側に設けてもよい。もちろん、電磁波シールド層と保護層が複数層積層されていてもよく、その順番も目的に応じて適宜決められる。
さらには、圧電性繊維からなる層を複数層設けたり、信号を取り出すための導電性繊維からなる層を複数層設けたりすることもできる。もちろん、これらの保護層、電磁波シールド層、圧電性繊維からなる層、導電性繊維からなる層は、その目的に応じて、その順番および層数は適宜決められる。なお、巻付ける方法としては、鞘部2のさらに外層に組紐構造を形成したり、カバリングしたりする方法が挙げられる。
組紐状圧電素子1に変形が生じると、圧電性繊維Aは変形して分極が発生する。圧電性繊維Aの分極により発生した正負各電荷の配列につられて、組紐状圧電素子1の芯部3を形成する導電性繊維Bの出力端子からの引出し線上において電荷の移動が発生する。導電性繊維Bからの引出し線上における電荷の移動は微小な電気信号(すなわち電流または電位差)として現れる。つまり、組紐状圧電素子1に変形が与えられた時に発生する電荷に応じて、出力端子から電気信号が出力されることになる。したがって、組紐状圧電素子1は、本発明に係るセンサシステムにおいて有効に機能させることができる。
なお、上で説明した図9〜11に示す実験では、本発明に係るセンサシステムにおける線状圧電素子として、以下で説明する組紐状圧電素子1−2が使用されており、それは以下の方法で製造した。
組紐状圧電素子において使用された圧電性繊維の特性は、以下の方法によって決定した。
(1)ポリ−L−乳酸結晶化度Xhomo
ポリ−L−乳酸結晶化度Xhomoについては、広角X線回折分析(WAXD)による結晶構造解析から求めた。広角X線回折分析(WAXD)では、(株)リガク製ultrax18型X線回折装置を用いて透過法により、以下条件でサンプルのX線回折図形をイメージングプレートに記録した。
X線源: Cu−Kα線(コンフォーカル ミラー)
出力: 45kV×60mA
スリット: 1st:1mmΦ,2nd:0.8mmΦ
カメラ長: 120mm
積算時間: 10分
サンプル: 35mgのポリ乳酸繊維を引き揃え3cmの繊維束とする
得られたX線回折図形において方位角にわたって全散乱強度Itotalを求め、ここで2θ=16.5°,18.5°,24.3°付近に現れるポリ−L−乳酸結晶に由来する各回折ピークの積分強度の総和ΣIHMiを求めた。これらの値から下式(3)に従い、ポリ−L−乳酸結晶化度Xhomoを求めた。
[数3]
ポリ−L−乳酸結晶化度Xhomo(%)=ΣIHMi/Itotal×100 (3)
なお、ΣIHMiは、全散乱強度においてバックグランドや非晶による散漫散乱を差し引くことによって算出した。
(2)ポリ−L−乳酸結晶配向度A:
ポリ−L−乳酸結晶配向度Aについては、上記の広角X線回折分析(WAXD)により得られたX線回折図形において、動径方向の2θ=16.5°付近に現れるポリ−L−乳酸結晶に由来する回折ピークについて、方位角(°)に対する強度分布をとり、得られた分布プロファイルの半値幅の総計ΣWi(°)から次式(4)より算出した。
[数4]
ポリ−L−乳酸結晶配向度A(%)=(360−ΣWi)÷360×100 (4)
(3)ポリ乳酸の光学純度:
組紐状圧電素子を構成する1本(マルチフィラメントの場合は1束)のポリ乳酸繊維0.1gを採取し、5モル/リットル濃度の水酸化ナトリウム水溶液1.0mLとメタノール1.0mLを加え、65℃に設定した水浴振とう器にセットして、ポリ乳酸が均一溶液になるまで30分程度加水分解を行い、さらに加水分解が完了した溶液に0.25モル/リットルの硫酸を加えpH7まで中和し、その分解溶液を0.1mL採取して高速液体クロマトグラフィー(HPLC)移動相溶液3mLにより希釈し、メンブレンフィルター(0.45μm)によりろ過した。この調整溶液のHPLC測定を行い、L−乳酸モノマーとD−乳酸モノマーの比率を定量した。1本のポリ乳酸繊維が0.1gに満たない場合は、採取可能な量に合わせ他の溶液の使用量を調整し、HPLC測定に供するサンプル溶液のポリ乳酸濃度が上記と同等から100分の1の範囲になるようにした。
<HPLC測定条件>
カラム:(株)住化分析センター社製「スミキラル(登録商標)」OA−5000(4.6mmφ×150mm)、
移動相:1.0ミリモル/リットルの硫酸銅水溶液
移動相流量:1.0ミリリットル/分
検出器:UV検出器(波長254nm)
注入量:100マイクロリットル
L乳酸モノマーに由来するピーク面積をSLLAとし、D−乳酸モノマーに由来するピーク面積をSDLAとすると、SLLAおよびSDLAはL−乳酸モノマーのモル濃度MLLAおよびD−乳酸モノマーのモル濃度MDLAにそれぞれ比例するため、SLLAとSDLAのうち大きい方の値をSMLAとし、光学純度は下記式(5)で計算した。
[数5]
光学純度(%)=SMLA÷(SLLA+SDLA)×100 (5)
(ポリ乳酸の製造)
ポリ乳酸は以下の方法で製造した。
L−ラクチド((株)武蔵野化学研究所製、光学純度100%)100質量部に対し、オクチル酸スズを0.005質量部加え、窒素雰囲気下、撹拌翼のついた反応機にて180℃で2時間反応させ、オクチル酸スズに対し1.2倍当量のリン酸を添加しその後、13.3Paで残存するラクチドを減圧除去し、チップ化し、ポリ−L−乳酸(PLLA1)を得た。得られたPLLA1の質量平均分子量は15.2万、ガラス転移点(Tg)は55℃、融点は175℃であった。
(圧電性繊維)
240℃にて溶融させたPLLA1を24ホールのキャップから20g/minで吐出し、887m/minにて引き取った。この未延伸マルチフィラメント糸を80℃、2.3倍に延伸し、100℃で熱固定処理することにより84dTex/24フィラメントのマルチフィラメント一軸延伸糸PF1を得た。また、240℃にて溶融させたPLLA1を12ホールのキャップから8g/minで吐出し、1050m/minにて引き取った。この未延伸マルチフィラメント糸を80℃、2.3倍に延伸し、150℃で熱固定処理することにより33dtex/12フィラメントのマルチフィラメント一軸延伸糸PF2を得た。これらの圧電性繊維PF1およびPF2を圧電性高分子として用いた。PF1およびPF2のポリ−L−乳酸結晶化度、ポリ−L−乳酸結晶配向度および光学純度は上記の方法で測定し、表1の通りであった。
(導電性繊維)
ミツフジ(株)製の銀メッキナイロン、品名『AGposs』100d34f(CF1)を導電性繊維Bとして使用した。CF1の抵抗率は250Ω/mであった。
また、ミツフジ(株)製の銀メッキナイロン、品名『AGposs』30d10f(CF2)を導電性繊維Bとして使用した。CF2の導電性は950Ω/mであった。
(絶縁性繊維)
ポリエチレンテレフタレートを溶融紡糸後に延伸することで製造した84dTex/24フィラメントの延伸糸IF1、および33dTex/12フィラメントの延伸糸IF2をそれぞれ絶縁性繊維とした。
(組紐状圧電素子)
図14に示すように、導電性繊維CF1を芯糸とし、8打ち丸組紐製紐機の8本のキャリアのうち、Z撚り方向に組まれる4本のキャリアに上記の圧電性繊維PF1をセットし、S撚り方向に組まれる4本のキャリアに上記の絶縁性繊維IF1をセットして組むことで、芯糸の周りにZ撚り方向に圧電性繊維PF1がらせん状に巻かれた組紐状圧電素子1−1を作製した。ここで、導電性繊維の繊維軸CLに対する圧電性繊維の巻きつけ角度(配向角度θ)は45°とした。さらに、組紐状圧電素子1−1を芯糸とし、製紐機の8本のキャリアのうち、Z撚り方向に組まれる4本のキャリアおよびS撚り方向に組まれる4本のキャリア全てに上記の導電性繊維CF2をセットして組むことで、組紐状圧電素子1−1の周りを導電性繊維で覆ったものを作製し、組紐状圧電素子1−2とした。当該組紐状圧電素子1−2を、上記のとおり、図11〜18に示す実験において使用した。
次に、本発明のセンサシステムにおいて用いられる圧電素子に関し、圧電性高分子の配向角度θおよびT1/T2の値が伸長変形に対する電気信号に及ぼす影響について調べた。
圧電素子の特性は、以下の方法によって決定した。
(1)中心軸の方向に対する圧電性高分子の配向角度θ
中心軸の方向に対する圧電性高分子の配向角度θは、下記式から計算した。
θ = arctan(2πRm/HP) (0°≦θ≦90°)
ただしRm=2(Ro3−Ri3)/3(Ro2−Ri2)、即ち断面積で加重平均した組紐状圧電素子(または他の構造体)の半径である。らせんピッチHP、組紐状圧電素子(または他の構造体)が占める部分の外側半径Roおよび内側半径Riは以下の通り測定した。
(1−1)組紐状圧電素子の場合は、(組紐状圧電素子の圧電性高分子以外による被覆がなされている場合は必要に応じて被覆を除去して側面から圧電性高分子が観察できる状態としてから)側面写真を撮影し、任意の5カ所で図15のように圧電性高分子のらせんピッチHP(μm)を測定し、平均値を取った。また、組紐状圧電素子に低粘性の瞬間接着剤「アロンアルファEXTRA2000」(東亞合成(株)製)を染み込ませて固化させた後、組紐の長軸に垂直な断面を切り出して断面写真を撮影し、1枚の断面写真について後述の通り組紐状圧電素子が占める部分の外側半径Ro(μm)および内側半径Ri(μm)を測定し、同様の測定を別の任意の断面5カ所について測定し、平均値を取った。圧電性高分子と絶縁性高分子とが同時に組まれている場合、例えば圧電性繊維と絶縁性繊維を合糸したものを用いている場合や、8打ち組紐の4本の繊維が圧電性高分子であり、残る4本の繊維が絶縁性高分子である場合は、様々な場所で断面を取った時、圧電性高分子が存在する領域と絶縁性高分子が存在する領域とが互いに入れ替わるため、圧電性高分子が存在する領域と絶縁性高分子が存在する領域とを合せて組紐状圧電素子が占める部分とみなす。ただし、絶縁性高分子が圧電性高分子と同時に組まれていない部分については、組紐状圧電素子の一部とはみなさない。
外側半径Roと内側半径Riについては、以下の通り測定した。図16(a)の断面写真の通り、圧電性構造体(圧電性繊維Aで形成された鞘部2)が占める領域(以後PSAと記載する)と、PSAの中央部にありPSAではない領域(以後CAと記載する)を定義する。PSAの外側にあり、PSAに重ならない最小の真円の直径と、PSAの外側を通らない(CAは通ってもよい)最大の真円の直径との平均値をRoとする(図16(b))。また、CAの外側にあり、CAに重ならない最小の真円の直径と、CAの外側を通らない最大の真円の直径との平均値をRiとする(図16(c))。
(1−2)カバリング糸状圧電素子の場合は、圧電性高分子をカバリングする時の巻き速度がT回/m(カバリング糸の長さあたりの圧電性高分子の回転数)のとき、らせんピッチHP(μm)=1000000/Tとした。また、カバリング糸状圧電素子に低粘性の瞬間接着剤「アロンアルファEXTRA2000」(東亞合成(株)製)を染み込ませて固化させた後、組紐の長軸に垂直な断面を切り出して断面写真を撮影し、1枚の断面写真について組紐状圧電素子の場合と同様にカバリング糸状圧電素子が占める部分の外側半径Ro(μm)および内側半径Ri(μm)を測定し、同様の測定を別の任意の断面5カ所について測定し、平均値を取った。圧電性高分子と絶縁性高分子とが同時にカバリングされている場合、例えば圧電性繊維と絶縁性繊維を合糸したものをカバリングしてある場合や、圧電性繊維と絶縁性繊維とが重ならないように同時にカバリングしてある場合は、様々な場所で断面を取った時、圧電性高分子が存在する領域と絶縁性高分子が存在する領域とが互いに入れ替わるため、圧電性高分子が存在する領域と絶縁性高分子が存在する領域とを合せてカバリング糸状圧電素子が占める部分とみなす。ただし、絶縁性高分子が圧電性高分子と同時にカバリングされてない、即ちどの断面を取っても絶縁性高分子が常に圧電性高分子の内側または外側にある部分については、カバリング糸状圧電素子の一部とはみなさない。
(2)電気信号測定
エレクトロメータ(Keysight Technologies Inc.製 B2987A)を、同軸ケーブル(芯:Hi極、シールド:Lo極)を介して圧電素子の導電体に接続した状態で、圧電素子に対し下記2−1〜5のいずれかの動作試験をしながら50m秒の間隔で電流値を計測した。
(2−1)引張試験
(株)オリエンテック製万能試験機「テンシロンRTC−1225A」を用い、圧電素子の長尺方向に12cmの間隔を空けて圧電素子をチャックで掴み、素子が弛んだ状態を0.0Nとし、0.5Nの張力まで引っ張った状態で変位を0mmとし、100mm/minの動作速度で1.2mmまで引っ張った後、0mmまで−100mm/minの動作速度で戻す動作を10回繰り返した。
(2−2)ねじり試験
圧電素子を掴む2か所のチャックのうち、片方のチャックはねじり動作を行わず圧電素子の長軸方向に自由に動くようなレール上に設置されて圧電素子に0.5Nの張力が常にかかる状態とし、他方のチャックは圧電素子の長軸方向には動かずねじり動作を行うよう設計されたねじり試験装置を用い、圧電素子の長尺方向に72mmの間隔を空けて圧電素子をこれらのチャックで掴み、素子の中央からチャックを見て時計回りにねじるように100°/sの速度で0°から45°まで回転した後、−100°/sの速度で45°から0°まで回転する往復ねじり動作を10回繰り返した。
(2−3)曲げ試験
上部と下部との2つのチャックを備え、下部のチャックは固定され、上部のチャックは下部のチャックの72mm上方に位置し、2つのチャックを結ぶ線分を直径とする仮想の円周上を上部のチャックが移動する試験装置を用い、圧電素子をチャックに把持して固定し、該円周上にて上部のチャックを12時の位置、下部のチャックを6時の位置としたとき、圧電素子を9時方向に凸に僅かに撓ませた状態とした後、上部のチャックを12時の位置から該円周上の1時、2時の位置を経由して3時の位置に一定速度で0.9秒かけて移動させた後、12時の位置まで0.9秒かけて移動させる往復曲げ動作を10回繰り返した。
(2−4)せん断試験
50番手の綿糸で織られた平織布を表面に貼り付けた2枚の剛直な金属板によって、圧電素子の中央部64mmの長さの部分を上下から水平に挟み(下部の金属板は台に固定されている)、上から3.2Nの垂直荷重をかけ、金属板表面の綿布と圧電素子との間が滑らないようにした状態のまま、上の金属板を0Nから1Nの荷重まで1秒かけて圧電素子の長尺方向に引っ張った後、引張荷重を0Nまで1秒かけて戻すせん断動作を10回繰り返した。
(2−5)押圧試験
(株)オリエンテック製万能試験機「テンシロンRTC−1225A」を用い、水平で剛直な金属台上に静置した圧電素子の中央部64mmの長さの部分を、上部のクロスヘッドに設置された剛直な金属板により水平に圧電素子を挟み、圧電素子から上部の金属板への反力が0.01Nから20Nとなるまで0.6秒かけて上部のクロスヘッドを下げて押圧し、反力が0.01Nとなるまで0.6秒かけて除圧する動作を10回繰り返した。
(例A)
例Aの試料として、図14に示すように、導電性繊維CF1を芯糸とし、8打ち丸組紐製紐機の8本のキャリアのうち、Z撚り方向に組まれる4本のキャリアに上記の圧電性繊維PF1をセットし、S撚り方向に組まれる4本のキャリアに上記の絶縁性繊維IF1をセットして組むことで、芯糸の周りにZ撚り方向に圧電性繊維PF1がらせん状に巻かれた組紐状圧電素子1−Aを作成した。
(例B)
組紐状圧電素子1−Aを芯糸とし、製紐機の8本のキャリアのうち、Z撚り方向に組まれる4本のキャリアおよびS撚り方向に組まれる4本のキャリア全てに上記の導電性繊維CF2をセットして組むことで、組紐状圧電素子1−Aの周りを導電性繊維で覆ったものを作製し、組紐状圧電素子1−Bとした。
(例C、D)
PF1の巻付け速度を変更した以外は組紐状圧電素子1−Aと同様にして、2本の組紐状圧電素子を作成し、これらの組紐状圧電素子を芯糸とし、組紐状圧電素子1−Bと同様に導電性繊維で覆ったものを作製し、組紐状圧電素子1−Cおよび1−Dとした。
(例E〜H)
製紐機の8本のキャリアのうち、表2の通りZ撚り方向およびS撚り方向に組まれるキャリアにそれぞれPF1あるいはIF1をセットして組むことで、芯糸の周りにZ撚り方向およびS撚り方向のそれぞれに所定の割合で圧電性繊維PF1がらせん状に巻かれた組紐状圧電素子を作成し、これらの組紐状圧電素子を芯糸とし、組紐状圧電素子1−Bと同様に導電性繊維で覆ったものを作製し、組紐状圧電素子1−E〜1−Hとした。
(例I)
PF1の代わりにPF2を使用し、IF1の代わりにIF2を使用し、巻付け速度を調整した以外は組紐状圧電素子1−Aと同様にして組紐状圧電素子を作成し、この組紐状圧電素子を芯糸とし、組紐状圧電素子1−Bと同様に導電性繊維で覆ったものを作製し、組紐状圧電素子1−Iとした。
(例J)
PF2の代わりにIF2を使用し、IF2の代わりにPF2を使用した以外は組紐状圧電素子1−Aと同様にして組紐状圧電素子を作成し、この組紐状圧電素子を芯糸とし、組紐状圧電素子1−Bと同様に導電性繊維で覆ったものを作製し、組紐状圧電素子1−Jとした。
(例K)
CF1を芯糸とし、PF1を芯糸の周りにS撚り方向に3000回/mのカバリング回数で巻きつけ、その外側にさらにIF1をZ撚り方向に3000回/mのカバリング回数で巻きつけ、その外側にさらにCF2をS撚り方向に3000回/mのカバリング回数で巻きつけ、その外側にさらにCF2をZ撚り方向に3000回/mのカバリング回数で巻きつけ、芯糸の周りにS撚り方向に圧電性繊維PF1がらせん状に巻かれ、さらに外側を導電性繊維で覆ったカバリング糸状圧電素子1−Kを作成した。
(例L)
PF1の代わりにIF1を使用した以外は組紐状圧電素子1−Aと同様にして組紐状圧電素子を作成し、この組紐状素子を芯糸とし、組紐状圧電素子1−Bと同様に導電性繊維で覆ったものを作製し、組紐状素子1−Lとした。
(例M)
PF1の代わりにIF1を使用した以外はカバリング糸状圧電素子1−Kと同様にしてカバリング糸状素子を作成し、カバリング糸状素子1−Mとした。
(例N)
IF1の代わりにPF1を使用した以外は組紐状圧電素子1−Bと同様にして組紐状圧電素子1−Nを作成した。
(例O)
IF2の代わりにPF2を使用した以外は組紐状圧電素子1−Iと同様にして組紐状圧電素子1−Oを作成した。
(例P)
導電性繊維CF1を芯糸とし、16打ち丸組紐製紐機の16本のキャリアのうち、Z撚り方向に組まれる8本のキャリアに上記の圧電性繊維PF1をセットし、S撚り方向に組まれる8本のキャリアに上記の絶縁性繊維IF1をセットして組むことで、芯糸の周りにZ撚り方向に圧電性繊維PF1がらせん状に巻かれた組紐状圧電素子を作成し、この組紐状圧電素子を芯糸とし、組紐状圧電素子1−Bと同様に導電性繊維で覆ったものを作製し、組紐状圧電素子1−Pとした。
(例Q)
CF1を芯糸とし、PF1を芯糸の周りにS撚り方向に6000回/mのカバリング回数で巻きつけ、その外側にさらにIF1をZ撚り方向に6000回/mのカバリング回数で巻きつけ、その外側にさらにCF2をS撚り方向に3000回/mのカバリング回数で巻きつけ、その外側にさらにCF2をZ撚り方向に3000回/mのカバリング回数で巻きつけ、芯糸の周りにS撚り方向に圧電性繊維PF1がらせん状に巻かれ、さらに外側を導電性繊維で覆ったカバリング糸状圧電素子1−Qを作成した。
各圧電素子のRi、Ro、HPを測定し、計算された中心軸の方向に対する圧電性高分子の配向角度θの値、およびT1/T2の値を表2に示す。組紐状圧電素子については、RiおよびRoは、断面において圧電性繊維と絶縁性繊維が存在する領域を合わせて圧電素子の占める領域として測定した。カバリング糸状圧電素子については、RiおよびRoは、断面において圧電性繊維が存在する領域を圧電素子の占める領域として測定した。また、各圧電素子を15cmの長さに切断し、芯の導電性繊維をHi極とし、周辺をシールドする金網または鞘の導電性繊維をLo極としてエレクトロメータ(Keysight Technologies Inc.製 B2987A)に接続し、電流値をモニタした。引張試験、ねじり試験、曲げ試験、せん断試験および押圧試験時の電流値を表2に示す。なお、例L、Mは圧電性高分子を含まないため、θおよびT1/T2の値は測定できない。
表2の結果から、中心軸の方向に対する圧電性高分子の配向角度θが15°以上75°以下であり、T1/T2の値が0以上0.8以下であるとき、引張動作(伸長変形)に対し大きな信号を発生し、引張以外の動作には大きな信号を発生せず、引張動作に選択的に応答する素子であることが分かる。また例IとJとを比べると、Z撚り方向に多く圧電性繊維を巻いた場合と、S撚り方向に多く圧電性繊維を巻いた場合とを比べると、引張試験時の信号の極性が逆となっており、巻き方向が信号の極性に対応していることが分かる。
さらに、表には示していないが、例A〜Kの素子は引張荷重を与えた時の信号と、引張荷重を除いた時の信号とを比べると、極性が互いに逆で絶対値が概ね同じ信号を発生したため、これらの素子は引張荷重や変位の定量に適していることが分かる。一方、例NおよびOの素子は引張荷重を与えた時の信号と、引張荷重を除いた時の信号とを比べると、極性が互いに逆である場合も同じである場合もあったため、これらの素子は引張荷重や変位の定量に適していないことが分かる。また、表には示していないが、例Bの引張試験時のノイズレベルは、例Aの引張試験時のノイズレベルより低く、組紐状圧電素子の外側に導電性繊維を配置してシールドとした素子ではノイズを低減できることが分かる。
1 組紐状圧電素子
2 鞘部
3 芯部
5 布帛状圧電素子
6 布帛
6a 布帛の中央面
7 絶縁性繊維
8 導電性繊維
10 デバイス
11 圧電素子
12 増幅手段
13 出力手段
14 送信手段
15 比較演算手段
101 線状圧電素子
102 信号検出部
103 演算処理部
104 導電性繊維
201 ロボットコントローラ
202 ロボット
500−1 上着
500−2 ズボン
500−3 グローブ
1000 センサシステム
A 圧電性繊維
A’ 圧電性高分子
B 導電性繊維
CL 繊維軸
α 巻きつけ角度

Claims (8)

  1. 被測定体に着用される衣類に配置され、印加された応力に応じて電気信号が発生する線状圧電素子と、
    前記線状圧電素子で発生した電気信号を検出する信号検出部と、
    前記信号検出部が検出した電気信号に基づいて、前記衣類の変形の様態を判別する演算処理部と、
    を備える、センサシステム。
  2. 前記線状圧電素子は、前記衣類を着用する被測定体の可変部位に対応する前記衣類上の位置近傍に配置される、請求項1に記載のセンサシステム。
  3. 前記衣類に配置された前記線状圧電素子の近傍に配置され、前記衣類を着用した被測定体との間の相互作用により電気信号が発生する導電性繊維をさらに備え、
    前記演算処理部は、前記信号検出部が検出した電気信号と、前記導電性繊維から発生した電気信号とに基づいて、前記衣類の変形の様態を判別する、請求項1または2に記載のセンサシステム。
  4. 前記線状圧電素子は伸長変形により電気信号を出力する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のセンサシステム。
  5. 前記線状圧電素子は、導電性繊維で形成された芯部と、前記芯部を被覆するように組紐状の圧電性繊維で形成された鞘部とを有する組紐状圧電素子である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のセンサシステム。
  6. 前記圧電性繊維は、配向軸を3軸とした時の圧電定数d14の絶対値が0.1pC/N以上1000pC/N以下の値を有する結晶性高分子を主成分として含む圧電性高分子であり、該圧電性高分子によって被覆された前記芯部の中心軸の方向に対する前記圧電性高分子の配向角度が15°以上75°以下であり、前記圧電性高分子は、圧電定数d14の値が正の結晶性高分子を主成分として含むP体と、負の結晶性高分子を主成分として含むN体とを含み、前記中心軸が1cmの長さを持つ部分について、配向軸がZ撚り方向にらせんを巻いて配置された該P体の質量をZP、配向軸がS撚り方向にらせんを巻いて配置された該P体の質量をSP、配向軸がZ撚り方向にらせんを巻いて配置された該N体の質量をZN、配向軸がS撚り方向にらせんを巻いて配置された該N体の質量をSNとし、(ZP+SN)と(SP+ZN)とのうち小さい方をT1、大きい方をT2としたとき、T1/T2の値が0以上0.8以下である、請求項5に記載のセンサシステム。
  7. 請求項1〜6のいずれか一項に記載のセンサシステムを備える衣類。
  8. 請求項1〜6のいずれか一項に記載のセンサシステムを備える衣類システムであって、
    前記線状圧電素子及び前記信号検出部が、被測定体に着用される衣類に配置され、
    前記演算処理部が、前記衣類とは別体の計算装置内に設けられる、
    衣類システム。
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