本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1に示すように汎用コンバインは、走行装置1のトラックフレーム2の上方に機体フレーム3が配置され、機体フレーム3に対して左右の走行装置1は、図示しない姿勢制御用の油圧シリンダによって昇降自在に取り付けている。また、機体フレーム3の進行方向左側には作物の脱穀及び選別処理を行う脱穀部4を設け、右側には操縦部5と穀粒を貯留するグレンタンク6を前後に設けている。
さらに、脱穀部4と操縦部5の前方には作物を刈取って脱穀部4に搬送するヘッダ部(刈取部)7を設けている。なお、操縦部5の下方からグレンタンク6の前方にかけてエンジン、ラジエータ、エアクリーナ等で構成する原動部を設け、この内、原動部のエンジンは、クローラ式走行装置1、脱穀部4、グレンタンク6、ヘッダ部7等を駆動する動力源となる。ヘッダ部7は、機体フレーム3に二重軸からなる回動支点Pにより昇降自在に支持されている。
ここで、各部の構成を詳細に説明すると、機体の前方側に設けるヘッダ部7は、フィーダハウス8とオーガーフレーム9とリールフレーム10を一体的に連結して構成する。この内、オーガーフレーム9には、鉄板を湾曲させて形成するプラットホーム11を設け、プラットホーム11上には、螺旋Sを有するドラムとドラムの外周に突出するフィンガー12aを備える左右方向に延びるオーガ12(プラットホームオーガ)を回転駆動可能に軸架している。なお、大豆を刈り取る際は、プラットホーム11の後方側を目抜き構造にして土やほこりを機外に排出できるようにしている。
また、オーガーフレーム9の前部には、左右のデバイダ13とレシプロ式の刈刃14を設けている。さらに、箱枠状に形成したフィーダハウス8内には、駆動軸15に取り付けた後部の駆動スプロケット16と前部のドラム17間に左右の搬送チェン18を巻回すると共に、左右の搬送チェン18間に所定間隔を有して複数のスラット19を横架したフィーダFを設けている。なお、大豆を刈り取る際は、フィーダハウス8の底板を目抜き構造にして土やほこりを機外に排出できるようにしている。
また、リールフレーム10には、掻込リールRを設けており、掻込リールRはリールフレーム10の左右先端部に回転自在に軸支した駆動軸と、この駆動軸と一体回転する側面視多角形状(実施例では6角形状)の左右の回転支持体20とを備えている。さらに、左右の回転支持体20の頂点部には、左右方向に伸延する複数のタイン取付け杵21を回転自在に架設し、各タイン取付け杵21には所定間隔毎にバネ式のタイン22を垂下状に取り付けている。
そして、上記回転支持体20の一方の横外側には、駆動軸の軸芯とは偏倚した軸芯廻りに回転する姿勢保持用回転体23を設け、姿勢保持用回転体23の各頂点に設けた枢支体24とタイン取付け杵21の一側端とをリンクを介して連結することにより、タイン22が回転支持体20の回転にかかわらず常時下方を向くようにその姿勢を保持する。
なお、リールフレーム10は、オーガーフレーム9の上部に回動自在に枢支した左右の揺動アーム25の先端に後部を回動自在に枢支し、フィーダハウス8に一端を取り付けた前後移動用の電動油圧シリンダ26を伸縮作動させることによって、掻込リールRを揺動アーム25を介してオーガーフレーム9に対して前後に位置調節することができる。また、リールフレーム10の中ほどとオーガーフレーム9との問には、昇降用の油圧シリンダ27を設け、この油圧シリンダ27を伸縮作動させることによって、掻込リールRをオーガーフレーム9に対して上下に高さ調節することができる。
そして、以上のように構成するヘッダ部7は、機体フレーム3の前部に立設した脱穀部4の前部フレーム(機体フレーム3)にホルダを介して回動自在に支承すると共に、フィーダハウス8と機体フレーム3との間に設けた昇降用油圧シリンダ28の伸縮作動によって、ヘッダ部7の前部側を下降させた状態と上昇させた状態に姿勢変更することができる。なお、フィーダFの駆動軸15は、上記ヘッダ部7の回動中心と同芯上に設けてあり、ヘッダ部7の掻込リールR、刈刃14、オーガ12、及びフィーダFは、エンジン動力によって駆動される。
従って、ヘッダ部7を下降させた状態として機体を走行させると、圃場の植立穀稈(作物)が左右のデバイダ13によって刈取対象と非刈取対象とに分草され、その内、刈取対象の植立穀稈が掻込リールRによってプラットホーム11内に掻き込まれながら刈刃14で刈取られる。また、プラットホーム11内に掻き込まれた穀稈は、プラットホームオーガ12によってフィーダハウス8の前方に横送りされ、さらに、フィーダハウス8の前方に横送りされた穀稈は、フィーダFによってフィーダハウス8に掻き上げられて、搬送チェン18に取り付けたスラット19に係止されながらフィーダハウス8の下部を通過して、刈取られた穀稈の全体が脱穀部4に投入される。
なお、ヘッダ部7には、リールフレーム10の前端に前照灯29が取り付けられていると共に、方向指示器30とバックミラー31がオーガーフレーム9から立設したステー32に取り付けられている。また、33はプラットホーム11の側方を覆うカバー、34は掻込リールRの伝動部を覆うカバーである。
次に、脱穀部4について説明すると、脱穀部4はヒンジを介して上方に開閉自在なロータカバー35と、側方に開閉自在なロータサイドカバー36と、着脱自在な脱穀カバー(前カバー37、後カバー38)によって上方及び左側方を覆い、後方は前後に開閉自在な排塵カバー39で覆っている。また、脱穀部4はフィーダFによって搬送されてきた穀稈が投入される扱室40と、扱室40の下側に形成された選別室41とを備える。
この内、扱室40内には機体の前後方向軸芯周りに回転する扱胴42を軸架しており、扱胴42の下方には、フィーダFによって搬送されてきた穀稈を受け入れる入口受板に引き続いて、扱胴42の下部周辺を覆うように円弧状の受網を周設している。そして、扱室40に投入された穀稈は扱胴42によって機体後方側に揉み解されながら搬送され、また、扱胴42の外周上を周回する間に受網に擦り付けられて脱粒処理が行われる。
一方、扱室40の下側に形成した選別室41には揺動選別体43を設け、この揺動選別体43は、その前後をリンクと駆動リンク等で構成する揺動機構によって前後揺動自在に支持し、揺動選別体43が前後に揺動することで処理物を比重選別する。また、揺動選別体43の下方には、揺動選別体43に向かう選別風を発生させる唐箕ファン44とターボファン45を設け、これらのファン44、45によって生成された選別風によって処理物を揺動選別体43において風選する。そして、揺動選別体43から滴下した穀粒は一番螺旋46上に落下する。また、二番物は二番螺旋47上に落下する。
さらに、揺動選別体43の終端まで移送された藁屑等の塵挨は、受網の後端部まで搬送された排藁等と共に、機体後部に設けた排出口48から機外に排出される。なお、一番螺旋46によって横送りされた穀粒は、図示しないバケットコンベアと上方横螺旋によってグレンタンク6内に揚送されると共に、二番螺旋47によって横送りされた二番物は、図示しないスラットコンベアと還元横螺旋によって扱室40の前部に還元して、再度脱粒処理を行うか、又は還元横螺旋筒の中途に設けた蓋を開いて、二番物を揺動選別体43上に再び落下させて、再選別処理を行うことができる。なお、グレンタンク6は、機体の後端部に設けた排出オーガ49によって軽トラック等に積載したコンテナ内に穀粒を排出することができる。
次に、汎用コンバインの動力伝達系統について説明する。図2に示すように動力源となるエンジン50で発生した動力は、その出力プーリ50a〜50eからベルトを介して走行系と作業系とに分岐して伝達される。また、走行系動力は、走行用静油圧式無段変速装置(走行用HST)51に伝達され、静油圧式無段変速装置(走行用HST)51は前後進及び無段変速を行った後、走行トランスミッションケース52に伝動する。そして、走行トランスミッションケース52には、副変速装置53、左右のサイドクラッチ54、減速ターンクラッチ・ブレーキ55、乃至駆動クラッチ56等を設け、左右のクローラ式走行装置1を駆動する。
一方、作業系動力は、図3に示すようにベルトテンションクラッチから構成する作業機クラッチ(脱穀クラッチ)57を介してカウンター軸58に伝達し、カウンター軸58から脱穀部4とヘッダ部7に分岐して伝達する。なお、グレンタンク6の図示しない横螺旋等は出力プーリ50aからベルトを介して駆動する。また、脱穀部4の扱胴42、及び揺動選別体43等は、カウンター軸58に設けたプーリ58a〜58fの内、プーリ58c、58d、58e、58fを介して駆動するが詳細な説明は省略し、以下、プーリ58aを介して駆動するヘッダ部7の動力伝達系統について説明する。
すなわち、ヘッダ部7は、プーリ58aからベルトテンションクラッチから構成する刈取クラッチ59を介してヘッダ部の7のカウンター軸60にエンジン50の動力が伝達される。また、カウンター軸60に伝達された動力は、第1の伝動装置T1を介してオーガ12とフィーダFに伝達する一方、搬送用静油圧式無段変装装置(搬送用HST)61を備える第2の伝動装置T2を介して掻込リールRと刈刃14に伝達する。さらに、第1の伝動装置T1に正逆転切換え機構Gを設け、この正逆転切換え機構Gを逆転状態に切換えた際には、第2の伝動装置T2に備える静油圧式無投変装装置(搬送用HST)61を介してオーガ12とフィーダFを逆回転させる。なお、上記第1の伝動装置T1と第2の伝動装置T2は、搬送用HST61と一体に形成されたミッションケース62に支持又は収納されて、伝動装置Tを構成し、該伝動装置Tは、図1に示すように、機体フレーム3の前部分に配置されている。
より具体的に説明すると、図4に示すように前記カウンター軸60の他端は、搬送ギヤケース62に支承する入力軸63の一端にジョイントJ1を介して連結する。また、搬送ギヤケース62には静油圧式無段変速装置(搬送用HST)61を取り付け、静油圧式無段変速装置(搬送用HST)61のポンプ軸61aを入力軸63の他端にジョイントJ2を介して連結する。そして、静油圧式無投変速装置(搬送用HST)61のモータ軸61bは、搬送ギヤケース62に支承するカウンター軸64の一端にジョイントJ3を介して連結する。
また、カウンター軸64には駆動ギヤ64aを一体に形成し、駆動ギヤ64aは搬送ギヤケース62に支承する第2出力軸65に一体に形成する従動ギヤ65aと噛み合って第2出力軸65を駆動する。さらに、第2出力軸65には駆動スプロケット66を取り付け、フィーダFの駆動軸15と二重軸とする内周側のリール・刈刃駆動軸(軸)67に取り付けた従動スプロケット68をチェン69を介して駆動する。即ち、軸67と該軸を被嵌するスリーブ軸からなる駆動軸15で二重軸を構成し、該二重軸を回動支点P(図1参照)としてヘッダ部7が機体フレーム3に昇降自在に支持される。そして、リール・刈刃駆動軸67に設けたリール・刈刃クラッチ70を介して最終的に掻込リールRと刈刃14をヘッダ部7の右側から駆動する。
従って、説明の都合上、順序が逆になるが、前記第2の伝動装置T2は、搬送ギヤケース62の入力軸63、静油圧式無段変速装置(搬送用HST)61、カウンター軸64及び第2出力軸65から構成され、該第2の伝動装置T2の第2出力軸65からの出力が、リール・刈刃駆動軸67、及びリール・刈刃クラッチ70等を経由して掻込リールRと刈刃14を駆動する。従って、掻込リールRと刈刃14は、エンジン50の動力が第2の伝動装置T2に備える静油圧式無段変速装置(搬送用HST)61により無段変速された後、二重軸の軸67によって駆動される。
一方、搬送ギヤケース62に支承する第1出力軸71には、一対の従動ギヤ72、73をスリーブ74を挟んで回動自在に軸支する。また、搬送ギヤケース62に片持ち支持させたアイドル軸75にアイドルギヤ76を回転自在に軸支する。そして、一方の従動ギヤ72をアイドルギヤ76を介して入力軸63に固定した駆動ギヤ77に噛み合わせ、他方の従動ギヤ73をカウンター軸64の駆動ギヤ64aに噛み合わせ、これらによって常時噛み合い式の正逆転切換え機構Gが構成される。
さらに、第1出力軸71には、駆動スプロケット78を取り付け、フィーダFの駆動軸15に取り付けた従動スプロケット79を、チェン80を介して駆動する。また、フィーダFの駆動軸15に取り付けた駆動スプロケット81を介してオーガ12をヘッダ部7の左側から駆動する。従って、前記第1の伝動装置T1は、搬送ギヤケース62の入力軸63、アイドルギヤ76、従動ギヤ72及びその爪72a、スリーブ74及び第1出力軸71から構成され、該第1の伝動装置T1の第1出力軸71からの出力が、フィーダFの駆動軸15等を経由してフィーダFとオーガ12を駆動する。従って、フィーダFとオーガ12は、エンジン50の動力が第1の伝動装置T1によって無段変速することなく正転状態で二重軸のスリーブ軸15を介して直接、伝達されて駆動される。
そして、第1の伝動装置T1は、前述した正逆転切換え機構Gを備え、前記スリーブ74を図示しないシフタによって移動させて、従動ギヤ73の爪73aに噛み合わせると、カウンター軸64の駆動ギヤ64aを介して静油圧式無段変速装置(搬送用HST)61によって無段変速した動力が第1出力軸71に伝達され、フィーダFとオーガ12は、エンジン50の動力を第2の伝動装置T2に備える静油圧式無段変速装置(搬送用HST)61により無段変速した動力によって伝達されて逆転状態で駆動される。
なお、静油圧式無段変速装置(搬送用HST)61は、掻込リールRと刈刃14を駆動するためのものであるため、基本的に逆回転させることは好ましくなく、寧ろ逆回転させると植立穀稈を倒伏させたり、掻込リールRが破損する虞がある。そこで、静油圧式無段変速装置(搬送用HST)61は、図5の油圧回路図に示すように、可変容量型油圧ポンプpと定容量型油圧モータMを接続する閉回路a、bに夫々に、通常、チャージポンプcpによってチャージオイルを補給するチェックバルブcvと高圧リリーフバルブrvを設けるが、これを逆回転側の閉回路bには設けず、代わりにチャージポンプcpによって補給するチャージオイルを直接、迂回路cを介して閉回路bに供給する。
そのため、油圧ポンプpの斜板を誤って逆回転側に操作した際には、油圧ポンプpからの圧油が迂回路c、チェックバルブcvを介して油圧ポンプpに戻され、閉回路a、bは略同圧となって油圧モータMは停止し、静油圧式無段変速装置(搬送用HST)61は逆回転が規制される。従って、静油圧式無段変速装置(搬送用HST)61は、中立状態から正回転方向に向かって変速できたとしても、斜板を逆回転させても停止状態が維持され、実質的に中立状態が広がった状態になり、掻込リールRと刈刃14、又は正逆転切換え機構Gに伝達される回転は常に正回転となり、逆回転することはない。
次に、操縦部5について説明すると、操縦部5は図6に示すように、ステップ82と、エンジンカバー上に取付けた座席83(図1参照)と、座席の側方に立設したサイドパネル84と、座席の前方に立設したフロントパネル85等から構成する。この内、サイドパネル84にはガイド溝から突出する走行変速レバー(主変速レバー)86、副変速レバー87、及びエンジンコントロールレバー88と、サイドパネル84に組み込んだスイッチパネル89等を設けており、走行変速レバー86のグリップには、押しボタンからなる強制掻込スイッチ90と倒伏スイッチ91を一体的に組み込んでいる。なお、走行変速レバー86は、中立位置から前方又は後方に操作することによって静油圧式無段変速装置(走行用HST)51の図示しないトラニオン軸を回動させて、走行の主変速操作を行うものである。
また、フロントパネル85にはマルチステアリングレバー92と、エンジン回転数・燃料計・車速・負荷状態等を表示するモニタ93と、刈高さ設定ダイヤル94等を設けており、マルチステアリングレバー92のグリップの前面側にはトリガースイッチ95を、また、グリップの背面側にはリール昇降スイッチ92aとリール前後スイッチ92bを一体的に組み込んでいる。なお、マルチステアリングレバー92は、その前後括動によって昇降用油圧シリンダ28を伸縮作動させてヘッダ部7の昇降を行い、また、その左右揺動によって走行トランスミッションケース52内に設けた左右のサイドクラッチ54、減速ターンクラッチ・ブレーキ55、乃至駆動クラッチ56等を作動させて機体の操向・旋回操作を行うものである。
さらに、サイドパネル84に組み込んだスイッチパネル89には、図7に詳示するように、走行装置1の旋回モードを減速ターンやブレーキターン等に切り替える旋回切替ダイヤル96、選別風の風量を調節するためフィンの開度を調節する選別ダイヤル97、刈取り対象作物により、稲,麦,大豆等の各作物モード制御に切替えかつ押作動により該作物モード制御を作動する作物切替ダイヤル120、機体フレーム3を水平か対地に対して水平かに切替える水平切替スイッチ121、表示切替スイッチ122、機体フレーム3に対してヘッダ部7が予め定めた所定高さ以上に上昇した場合に、刈取クラッチ59や作業機クラッチ57を切断する制御を選択するリフトシャットスイッチ98、作業機クラッチ57及び刈取クラッチ59の断続状態を表示するパワークラッチインジケータ99、作業機クラッチ57及び刈取クラッチ59を断続するパワークラッチスイッチ100、掻込リールRの回転速度を設定するリール回転ダイヤル101、並びにリール回転ダイヤル101と一体に設けたリール回転自動スイッチ102等を設けている。
そして、操縦部5に設けた各スイッチ、ダイヤル等の指令手段に基づく各部の作動制御は、主にマイクロコンピュータ等からなる電子制御装置(Electronic Control Unit)によって行う。この内、図8に示すブロック図は、作業機クラッチ57と刈取クラッチ59、及び掻込リールRの制御に係わる電子制御装置ECUに対する入出力関係を示すものであり、電子制御装置ECUの入力側には、パワークラッチスイッチ100、正逆転切換え機構Gを逆回転状態に切り換えた際にオンとなる逆転スイッチ103、リール・刈刃クラッチ70を切断して掻込リールRと刈刃14を停止させた際にオンとなるリールクラッチスイッチ104、強制掻込スイッチ90、リール回転自動スイッチ102、パワークラッチポテンショメータ105、走行変速レバー86の操作位置を検出する変速レバーポテンショメータ106、走行速度を検出するミッション回転センサ107、静油圧式無段変速装置(搬送用HST)61のモータ軸61bの回転数を検出する搬送回転センサ108、並びにリール回転ダイヤル(可変抵抗器)101を接続している。
また、電子制御装置ECUの出力側には、パワークラッチインジケータ99の刈取ランプ109、作業機ランプ110、切りランプ111、電子ブザー112、作業機クラッチ57と刈取クラッチ59を断続するパワークラッチモータ113及びそのリレー114、静油圧式無段変速装置(搬送用HST)61のトラニオン軸を操作する搬送用HST駆動モータ115及びそのリレー116を接続している。
次に、電子制御装置ECUが行う制御内容を説明すると、電子制御装置ECUは作業機クラッチ57と刈取クラッチ59の断続を制御するパワークラッチ制御と、掻込リールRの回転速度を制御するリール回転制御とを行う。先ず、パワークラッチ制御は、図9のフローチャートに示すように、ステップS1においてパワークラッチスイッチ100の切りスイッチが押されてオンとなる立ち上がりを検出すると、刈取フラグをリセットする(ステップS2)。
また、刈取クラッチ59が入り(接続)となっているかをパワークラッチポテンショメータ105によって判断し(ステップS3)、入りとなっていれば、パワークラッチモータ113を作動させて、刈取クラッチ59を切り(切断)にして作業機クラッチ57のみが入りとなるように制御する(ステップS4)。なお、作業機クラッチ57が入りに制御されると作業機ランプ110は点灯する。さらに、切となっていれば、パワークラッチモータ113を作動させて、作業機クラッチ57を切り(切断)にして作業機クラッチ57と刈取クラッチ59の両方を切りとなるように制御する(ステップS5)。なお、作業機クラッチ57と刈取クラッチ59の両方を切りに制御すると、切りランプ111が点灯する。
そして、ステップS1においてパワークラッチスイッチ100の切りスイッチが押されていない場合は、入りスイッチが押されてオンとなる立ち上がりを検出し(ステップS6)、これを検出すると作業機クラッチ57が入りとなっているかをパワークラッチポテンショメータ105によって判断し(ステップS7)、作業機クラッチ57が入りとなっていれば、正逆転切換え機構Gが逆回転状態に切り換えられているかを逆転スイッチ103によって検出し(ステップS8)、逆回転状態でなければ、刈取フラグをセットする(ステップS9)。
なお、ステップS7で作業機クラッチ57が切りとなっていれば、パワークラッチモータ113を作動させて、作業機クラッチ57を入りに制御する(ステップS4)。また、ステップS8で逆回転状態であれば、リール・刈刃クラッチ70の状態をリールクラッチスイッチ104によって判断し(ステップS10)、リール・刈刃クラッチ70が切りとなっていれば、刈取フラグをセットする(ステップS9)。
さらに、ステップS11では、刈取フラグの状態を判断し、フラグがセットされていれば、変速レバーポテンショメータ106によって走行変速レバー86が前進側に操作されているかを判断し(ステップS12)、前進側に操作されていれば、パワークラッチモータ113を作動させて、作業機クラッチ57と刈取クラッチ59の両方を入りとなるように制御する(ステップS13)。また、前進側に操作されていなければ、強制掻込スイッチ90が押されているかを判断する(ステップS14)。ここで、強制掻込スイッチ90が押されていれば、作業機クラッチ57と刈取クラッチ59の両方を入りとなるように制御する(ステップS13)。しかし、強制掻込スイッチ90が押されていなければ、作業機クラッチ57のみが入りとなるように保持する(ステップS15)。なお、刈取フラグがセットされていれば、刈取ランプ109が点灯する。
一方、ステップS11で刈取フラグがセットされていなければ、作業機クラッチ57が入りとなっているかを判断し(ステップS16)、作業機クラッチ57が入りとなっていれば、作業機クラッチ57のみが入りとなるように保持する(ステップS17)。また、作業機クラッチ57が切りとなっていれば、作業機クラッチ57と刈取クラッチ59の両方を切りとなるように保持する(ステップS18)。
従って、パワークラッチ制御では、パワークラッチスイッチ100が押されるたびに作業機クラッチ57:入り、刈取クラッチ59:入り、或いは刈取クラッチ59:切り、作業機クラッチ57:切りとなるが、正逆転切換え機構Gが逆回転状態に切り換えられている場合は、リール・刈刃クラッチ70が切られていなければ、刈取クラッチ59が入りとなることはない。また、正逆転切換え機構Gが逆回転状態に切り換えられていない場合でも、機体が前進走行中でなければ刈取クラッチ59が入りとなることはない。しかし、機体が停止又は後進中に強制掻込スイッチ90が押されれば、その間のみ刈取クラッチ59を入りにすることができる。
要するに、パワークラッチスイッチ100をクラッチ入り側に押して作業機クラッチ57を入りとするモードになっている時に、機体が前進中であるか、または機体が停止、又は後進中でも強制掻込みスイッチ90が押された間だけ刈取クラッチ59を実質的に入りにすることができ、それ以外は刈取クラッチ59が入りになることはない。
なお、上述のフローチャートでは、正逆転切換え機構Gが逆回転状態に切り換えられていて、リール・刈刃クラッチ70が切られている際に、機体を前進させると刈取クラッチ59が入りとなり、フィーダFとオーガ12は逆回転することになるが、正逆転切換え機構Gを逆回転状態に切り換えて詰まりの除去作業を行うときは、機体を停止させた状態で行うから、実際には上記状態は発生しない。しかし、上記状態を確実に防ぐために機体が前進中であっても正逆転切換え機構Gが逆回転状態であれば刈取クラッチ59を入りとしない等の牽制をかけてもよい。
次に、掻込リールRの回転速度を制御するリール回転制御について説明すると、リール回転制御は、図10のフローチャートに示すように、刈取クラッチ59が入り(接続)となっているかをパワークラッチポテンショメータ105によって判断し(ステップS21)、入りとなっていれば、正逆転切換え機構Gが逆回転状態に切り換えられているかを逆転スイッチ103によって判断する(ステップS22)。そして、逆回転状態であれば、静油圧式無段変速装置(搬送用HST)61の目標回転数を予め定めた所定の低回転数に設定する(ステップS23)。
また、逆回転状態でなければ、リール回転自動スイッチ102によって自動(車速同調)が選択されているかを判断し(ステップS24)、自動が選択されている場合は、目標回転数を車速に同調する回転数に設定する(ステップS25)。また、自動が選択されていない場合は、目標回転数をリール回転ダイヤル101によって指示される回転数に設定する(ステップS26)。なお、ステップS21で刈取クラッチ59が切り(切断)となっていれば、目標回転数をニュートラル、即ち、ゼロに設定する(ステップS27)。
そして、目標回転数が設定されたら、この目標回転数と静油圧式無段変速装置(搬送用HST)61の現在の回転数を搬送回転センサ108から取得して比較する(ステップS28)。ここで、目標回転数の方が上回る場合は、搬送用HST駆動モータ115を増速側に回転させて、静油圧式無段変速装置(搬送用HST)61の出力回転数を上げる制御を行う(ステップS29)。また、目標回転数と等しい場合は、搬送用HST駆動モータ115を停止させて、静油圧式無段変速装置(搬送用HST)61の現在の出力回転数を維持する(ステップS30)。さらに、目標回転数が下回る場合は、搬送用HST駆動モータ115を減速側に回転させて、静油圧式無段変速装置(搬送用HST)61の出力回転数を下げる制御を行う(ステップS31)。
なお、上記ステップS25における車速に同調する回転数については、図11の速度線図に示すように、例えば、走行トランスミッションケース52の何れかの出力軸に取り付けたミッション回転センサ107から得られる回転数に基づいて車速を算出する。また、作物の種類、或いは作物の状況に応じて掻込リールRの回転速度の増減を任意に調整するリール回転ダイヤル101の指示に従い、車速が速くなるほど掻込リールRの回転速度を速くする同調関係に基づいて、掻込リールRの回転数を決定する。
なお、車速が極めて低速の場合は掻込リールRの回転速度を一定速度として、掻込リールRの回転を安定させる。また、掻込リールRの回転速度に上限を設けて、回転速度がそれを上回る場合には上限で規制し、作物の損傷や掻込リールR自体の損傷を防止する。さらに、詰まりの除去作業時には掻込リールRを回転させないが、その際に静油圧式無段変速装置(搬送用HST)61に与える目標の回転数を掻込リールRの回転速度に換算すると、逆回転時の低速度になる。
ついで、サイドパネル84の作物切替ダイヤル120を切替えた各モード制御について、図12及び図13に沿って説明する。前記電子制御装置ECUには、稲・麦,大豆等の作物に対応した、車速に連動する掻込リールの回転速度を設定した複数の作物の自動制御モードが予め格納されている。図12に示すように、作物切替ダイヤル120の押し操作等により、自動制御モードが選択され(ステップS41)、該ダイヤル120を回し、稲・麦位置に合せられると、稲・麦モード制御が選択され(ステップS42)、大豆位置に合せられると、大豆モード制御が選択される(ステップS43)。各作物の自動モード制御が選択されている場合、図13に示すように、稲・麦モードも大豆モードも、略々車速に応じてリール回転速度が変化するが、稲・麦モードに比して、大豆モードは、リール回転速度が低く設定され、かつリール回転速度がゼロ回転から無段階に変化する。稲・麦モードも大豆モードも共にリール回転速度の高速側が制限され、特に大豆モードのリール回転速度の高速側は、比較的低い速度に制限される。これにより、リール回転速度が速くて、大豆が叩かれて裂莢し、圃場に穀粒が落下することを少なくできる。稲・麦モードは、リール回転速度の最低速も規制されている。これにより、稲・麦モードにあっては、低速刈取走行時において、リール回転速度が不足して、ヘッダ部7に取り込めない不具合が防止される。なお、上記自動制御モードは、稲・麦モード制御と大豆制御モードからなるが、これに限らず、稲と麦とを別の制御モードとしてもよく、更にそば等の他の作物の制御モードを設定してもよい。
そして、以上のように構成する汎用コンバインを用いて刈取り作業を行う場合、パワークラッチスイッチ100を押すと、作業機クラッチ57と刈取クラッチ59のタイトプーリをパワークラッチモータ113によって接続することができ(パワークラッチ制御)、刈取りを開始するため走行変速レバー86を前進側に操作すると、作業機クラッチ57と刈取クラッチ59が入りとなって、ヘッダ部7と脱穀部4は駆動されて作物の収穫を行うことができる。
なお、この際、ヘッダ部7は、正逆転切換え機構Gが正回転状態に切り換えられていると共にリール・刈刃クラッチ70が接続されているから、掻込リールRと刈刃14は、第2の伝動装置T2の静油圧式無段変速装置(搬送用HST)61によって変速比幅を広くして駆動することができ、それにより、掻込リールRの回転数を作物等に応じた適切なリール回転制御に基づいて、適正に変更してヘッダ部7における頭部損失を抑えることができる。また、オーガ12とフィーダFは第1の伝動装置T1により、例えば、最高回転で常に駆動されるから、低速刈り時も詰まりの心配がない。
そして、畦際に達して機体を停止した際や、1行程の刈取りを終えて機体の旋回を行うために後進する際に、ヘッダ部7に作物が残っているとヘッダ部7からこぼれる虞がある。そこで、この場合には、強制掻込スイッチ90を押して刈取クラッチ59を入りにすると、ヘッダ部7は駆動されて、残らず脱穀部4に作物を搬送することができるから、こぼれを防止することができる。なお、この場合の掻込リールRと刈刃14の駆動速度は、図10のフローチャート等に示していないが、比較的高速とすることでこぼれを少なくすることができる。
また、仮にヘッダ部7に詰まりを生じた際には、機体を速やかに停止して詰まった作物を取り除く必要がある。そこで、機体を停止させて正逆転切換え機構Gを逆回転状態に切り換えると共に、リール・刈刃クラッチ70を切断する。そして、パワークラッチスイッチ100を押して作業機クラッチ57と刈取クラッチ59を共に入りとするモードにする。さらに、強制掻込スイッチ90を押すと、刈取クラッチ59が入りとなってフィーダFとオーガ12は所定の低速回転数で駆動される。
従って、強制掻込スイッチ90の押し操作加減で様子をみながら駆動と停止を繰り返すと、フィーダFやオーガ12に詰まった作物を、詰まりを助長させることなくプラットホーム11上、或いは機外に排出することができ、詰まりを比較的簡単に除去することができる。なお、この場合、掻込リールRと刈刃14の駆動は断たれているから、掻込リールRが排出された作物を再びプラットホーム11に戻したり、刈刃14がこれを切断することを防止することができ、その後の排出された作物の回収作業も安全に行うことができる。
なお、前述した伝動装置T(第1の伝動装置T1と第2の伝動装置T2)の搬送ギヤケース62と静油圧式無段変速装置(搬送用HST)61は、ヘッダ部7を支承する機体フレーム3の前部に立設した脱穀部4の前部フレームに取り付けているので、これらの重量がヘッダ部7に付加されることはなく、ヘッダ部7の昇降作動や強度面での不利益を及ぼすことを防止できる。また、オーガ12をヘッダ部7の左側から駆動するので、オーガ12の駆動部品をヘッダ部を支承する機体の左側と同じ側に設けることができ、ヘッダ部7の捩じり変形を幾分でも改善することができる。
さらに、静油圧式無段変速装置(搬送用HST)61を、フィーダFとオーガ12を逆回転で駆動する際も掻込リールRと刈刃14を駆動する場合と同じ回転方向で回転させるため、静油圧式無段変速装置(搬送用HST)61の停止状態を、その油圧回路によって容易に得ることができ、確実に静油圧式無段変速装置(搬送用HST)61を停止させることができる。また、それにより、静油圧式無段変速装置(搬送用HST)61の低速側の変速領域が拡大して安定した作動制御を行うことができる。
以上、本発明の実施形態を説明したが、図11に示す車速に同調させて掻込リールRの回転速度を直線状に増加させる場合もあるが、二次曲線によって増加させる、或いは、大豆等のように掻込リールRの速度が車速に対して遅くても、また速くても損失が多くなる場合は、低速時に掻込リールRの速度を意図的に上げるようにしてもよい。なお、大豆の刈取りで砕粒等の発生が多い場合には、扱ぎ胴の周速度を減速するためエンジンコントロールレバー88を操作してエンジン回転数を下げる。さらに、正逆転切換え機構Gを常時噛み合い式としたが、入力軸63に固定した駆動ギヤ77とカウンター軸64の駆動ギヤ64aの何れかに選択的に噛み合うスライドギヤを設けて、選択摺動式の正逆転切換え機構Gとしてもよく、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、各部の構成を種々変形することができる。
図14は、図3に示すヘッダ部への動力伝達系図を一部変更した実施の形態を示す図である。なお、同一部品については同一符号を付して説明を省略する。図3にあっては、リール・刈刃駆動軸67の回転は、リール・刈刃クラッチ70を介して、更にベルト(チェン)150を介して刈刃14に伝達されると共に、チェン152、第1中間軸153、チェン155、第2中間軸156及びチェン157を介してリールRに伝達されている。
図14に示す実施の形態にあっては、オーガ12の入力側と反対側に刈刃クラッチ70’を設け、ベルト159を介して刈刃14に連動している。従って、刈刃14は、オーガ12と同様に、第1の伝動装置T1からの動力により駆動される。第2の伝動装置T2からの動力が、駆動軸67、チェン152、第1中間軸153、ベルト(チェン)150、第2中間軸156、チェン157を介してリールRに伝達される。
図3に示す第1の実施の形態では、刈刃14は、リールRと共に、搬送用HST61で変速される第2の伝動装置T2を介して駆動されるが、図14に示す第2の実施の形態では、刈刃14は、オーガ12と共に、定速回転である第1の伝動装置T1を介して駆動される。従って、逆転時に掻込リールRと刈刃14の両方を停止させることを考慮すると、第1の実施の形態の方が構造が簡単となる。刈刃14及びリールRを個々に停止したい場合、第2の実施の形態の方が自由度がある。