JP6558974B2 - 水性インク、水性インクの製造方法、インクカートリッジ、及びインクジェット記録方法 - Google Patents
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Description
以下、本発明の水性インクを構成する各成分について詳細に説明する。
本発明のインクに含有させる自己分散顔料は、顔料の粒子表面に直接又は他の原子団を介して結合したカルボン酸基と、顔料の粒子表面に結合したラクトン基とを有する。さらに、選択的中和法により求められる、カルボン酸基の導入量が0.60mmol/g以上であり、かつ、ラクトン基の導入量(mmol/g)が、カルボン酸基の導入量(mmol/g)に対する比率で、0.20倍以下である。このような自己分散顔料を用いることにより、顔料をインク中に分散するための分散剤の添加が不要となる、又は分散剤の添加量を少量とすることができる。インク中の自己分散顔料の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.10質量%以上15.00質量%以下であることが好ましく、1.00質量%以上10.00質量%以下であることがさらに好ましい。
自己分散顔料を構成する顔料(顔料種)としては、例えば、カーボンブラック、炭酸カルシウム、酸化チタンなどの無機顔料;アゾ、フタロシアニン、キナクリドンなどの有機顔料などを用いることができる。なかでも、カーボンブラックや有機顔料を用いることが好ましく、特には、他の顔料と比して粒子表面の反応活性点がより多く、官能基の導入量を高めやすいため、顔料としてカーボンブラックを用いることが好ましい。カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラックなどいずれのカーボンブラックも使用することができる。
従来、自己分散顔料の官能基導入量の測定方法としては、アニオン性基のカウンターイオンの濃度を測定し、アニオン性基の導入量に換算する方法や、滴定法により分散状態の顔料の粒子表面のアニオン性基の導入量を測定する方法が利用されてきた。しかし、これらの方法では、顔料の粒子表面に結合したノニオン性の親水性基であるラクトン基の導入量を測定することはできない。
(1)顔料分散液に酸を加えてpHを2以下とし、常温(25℃)で24時間撹拌して顔料を沈殿させる。
(2)遠心分離により上澄みの液体を除去して、顔料(固形分)を採取する。
(3)採取した顔料を十分に乾燥させた後、メノウ乳鉢を用いてすり潰して試料を調製する。
(4)秤量した試料に濃度既知の塩基性化合物の水溶液を所定量添加して24時間撹拌し、測定対象である官能基を中和する(選択的中和)。
(5)遠心分離により上澄みの液体を採取して、中和に使用されなかった塩基性化合物を、濃度既知の酸を用いて中和滴定して定量する。
(6)上記(4)の選択的中和に用いたものと同量の濃度既知の塩基性化合物の水溶液(ブランク)を、濃度既知の酸を用いて中和滴定して定量する。
(7)上記(6)と(5)の定量値の差分を選択的中和で使用した塩基性化合物量(mmol)とし、顔料1gの値に換算して、測定対象である官能基の導入量(mmol/g)を求める。
本発明のインクに含有させる自己分散顔料は、カルボン酸基の導入量が0.60mmol/g以上であり、かつ、ラクトン基の導入量(mmol/g)が、カルボン酸基の導入量(mmol/g)に対する比率で、0.20倍以下であることを要する。これらの条件を満たす自己分散顔料であれば、その製法に限定はなく、どのような方法によって製造された自己分散顔料を用いても構わない。前述の通り、自己分散顔料は、その製法に応じて酸化タイプと表面修飾タイプに大別される。
HN=N−R1 ・・・(1)
(前記一般式(1)中、R1は、脂肪族基及び芳香族基の少なくとも一方を有する基にカルボン酸基が置換した基を表す)
H2N−NH−R1 ・・・(2)
(前記一般式(2)中、R1は、脂肪族基及び芳香族基の少なくとも一方を有する基にカルボン酸基が置換した基を表す)
HN=N−R1 ・・・(1)
H2N−NH−R1 ・・・(2)
本発明のインクには、水、又は水及び水溶性有機溶剤の混合溶媒である水性媒体を用いることができる。本発明においては、水性媒体として少なくとも水を含有する、水性のインクとすることが好ましい。水は、脱イオン水(イオン交換水)を用いることが好ましい。インク中の水の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、10.00質量%以上90.00質量%以下であることが好ましく、50.00質量%以上90.00質量%以下であることが好ましい。
本発明のインクは、上記した成分以外にも必要に応じて、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタンなどの多価アルコール類;尿素、エチレン尿素、ヒダントイン類などの尿素誘導体;糖類などの、常温で固体の水溶性有機化合物を含有してもよい。さらに、本発明のインクは、必要に応じて、界面活性剤、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、蒸発促進剤、キレート化剤、及び水溶性樹脂など、種々の添加剤を含有してもよい。
本発明のインクをインクジェット方式に適用する場合、その物性値を適切に制御することが好ましい。具体的には、インクの25℃における表面張力は、10mN/m以上60mN/m以下であることが好ましく、20mN/m以上60mN/m以下であることがさらに好ましい。なかでも、30mN/m以上50mN/m以下であることが好ましく、30mN/m以上40mN/m以下であることが特に好ましい。また、25℃におけるインクの粘度は、1.0mPa・s以上10.0mPa・s以下であることが好ましく、1.0mPa・s以上5.0mPa・s以下であることがさらに好ましく、1.0mPa・s以上3.0mPa・s以下であることが特に好ましい。25℃におけるインクのpHは、5.0以上9.0以下であることが好ましい。
本発明のインクカートリッジは、インクと、このインクを収容するインク収容部とを備える。そして、このインク収容部に収容されているインクが、上記で説明した本発明のインクである。図1は、本発明のインクカートリッジの一実施形態を模式的に示す断面図である。図1に示すように、インクカートリッジの底面には、記録ヘッドにインクを供給するためのインク供給口12が設けられている。インクカートリッジの内部はインクを収容するためのインク収容部となっている。インク収容部は、インク収容室14と、吸収体収容室16とで構成されており、これらは連通口18を介して連通している。また、吸収体収容室16はインク供給口12に連通している。インク収容室14には液体のインク20が収容されており、吸収体収容室16には、インクを含浸状態で保持する吸収体22及び24が収容されている。インク収容部は、液体のインクを収容するインク収容室を持たず、収容されるインク全量を吸収体により保持する形態であってもよい。また、インク収容部は、吸収体を持たず、インクの全量を液体の状態で収容する形態であってもよい。さらには、インク収容部と記録ヘッドとを有するように構成された形態のインクカートリッジとしてもよい。
本発明のインクジェット記録方法は、上記で説明した本発明のインクをインクジェット方式の記録ヘッドから吐出して記録媒体に画像を記録する方法である。インクを吐出する方式としては、インクに力学的エネルギーを付与する方式や、インクに熱エネルギーを付与する方式が挙げられる。本発明においては、インクに熱エネルギーを付与してインクを吐出する方式を採用することが特に好ましい。本発明のインクを用いること以外、インクジェット記録方法の工程は公知のものとすればよい。
処理剤としては、以下のものを用いた。
・4−ヒドラジノフタル酸塩酸塩:ケムジェネシス製
・4−ヒドラジノ安息香酸:東京化成工業製
・4−ヒドラジノベンゼンスルホン酸:東京化成工業製
・P,P’−[[(4−ヒドラジノベンジル)アミノ]メチレン]ビスホスホン酸塩酸塩:住化テクノサービス製
自己分散顔料のラクトン基及びカルボン酸基の導入量は、顔料分散液を用いて、以下の手順にしたがって測定した。先ず、カルボン酸基の導入量の測定方法について説明する。顔料分散液に1.0mol/L塩酸を加えてpHを2以下とし、25℃で24時間撹拌して顔料を沈殿させた。5,000rpmで30分間遠心分離を行った後、上澄みの液体を除去して顔料を採取した。採取した顔料を60℃のオーブンに入れて24時間乾燥させた後、メノウ乳鉢を用いてすり潰して試料を調製した。調製した試料(顔料)0.5gに0.1mol/L炭酸水素ナトリウム水溶液30.0gを添加して24時間撹拌し、カルボン酸基の選択的中和を行った。80,000rpmで60分間遠心分離を行った後、上澄みの液体を採取した。採取した液体中に含まれる炭酸水素ナトリウム(中和に使用されなかったもの)を、0.1mol/L塩酸を用いて中和滴定して定量した(Aモルとする)。ブランクとして0.1mol/L炭酸水素ナトリウム水溶液30.0gを用意し、このブランク中の炭酸水素ナトリウムを、0.1mol/Lの塩酸を用いて中和滴定して定量した(Bモルとする)。得られた上記の定量値A及びBの差分(A−B)を選択的中和で使用した炭酸水素ナトリウムの量とし、顔料1gの値に換算して、カルボン酸基の導入量C(mmol/g)を求めた。
(顔料分散液1)
カーボンブラック100.0g、イオン交換水800.0g、4−ヒドラジノフタル酸塩酸塩20.0g(顔料1g当たり0.86mmol)、フェロシアン化カリウム(K6[Fe(CN)4]・3H2O)4.0gを用意した。これらを2Lのポリ容器に入れて10分間撹拌し、混合物を得た。カーボンブラックとしては、比表面積が200m2/g及びDBP吸油量が135mL/100gであるもの(商品名「NIPEX170IQ」、オリオンエンジニアドカーボンズ製)を用いた。8mol/Lの水酸化カリウム水溶液を用いて、混合物のpHを8に調整した。次いで、ホモジナイザー(商品名「クレアミックス W−モーション」、エムテクニック製)を使用し、ローター回転数15,000rpm、スクリーン回転数13,000rpm、温度25℃の条件でこの混合物を4時間撹拌して分散液を得た。得られた分散液800.0gをイオン交換水4,000.0gで希釈し、限外ろ過膜を用いて分散液が800.0gになるまで濃縮して不純物を除去して精製する、という操作を、ろ液の電気伝導度が50μS/cm以下となるまで繰り返して分散液を精製した。限外ろ過膜としては、商品名「OS300C11」(分画分子量300K、日本ポール製)を用いた。精製した分散液を、遠心分離機(商品名:CR−21G、日立工機製)を使用して回転数5,000rpmで15分間遠心分離して粗大粒子を除去した後、イオン交換水で希釈して、顔料の含有量が10.0%である顔料分散液1を得た。得られた顔料分散液1中の自己分散顔料は、ラクトン基の導入量Lが0.13mmol/g、カルボン酸基の導入量Cが0.75mmol/g、L/Cが0.17であった。
フェロシアン化カリウムを用いなかったこと以外は、前述の顔料分散液1を調製した場合と同様にして、顔料の含有量が10.0%である顔料分散液2を得た。得られた顔料分散液2中の自己分散顔料は、ラクトン基の導入量Lが0.12mmol/g、カルボン酸基の導入量Cが0.78mmol/g、L/Cが0.15であった。
4−ヒドラジノフタル酸塩酸塩に代えて、4−ヒドラジノ安息香酸35.6g(顔料1g当たり2.34mmol)を用いたこと以外は、前述の顔料分散液1を調製した場合と同様にして、顔料の含有量が10.0%である顔料分散液3を得た。得られた顔料分散液3中の自己分散顔料は、ラクトン基の導入量Lが0.10mmol/g、カルボン酸基の導入量Cが0.66mmol/g、L/Cが0.15であった。
4−ヒドラジノフタル酸塩酸塩の量を15.5g(顔料1g当たり0.67mmol)としたこと以外は、前述の顔料分散液1を調製した場合と同様にして、顔料の含有量が10.0%である顔料分散液4を得た。得られた顔料分散液4中の自己分散顔料は、ラクトン基の導入量Lが0.10mmol/g、カルボン酸基の導入量Cが0.60mmol/g、L/Cが0.17であった。
4−ヒドラジノフタル酸塩酸塩に代えて、4−ヒドラジノ安息香酸30.4g(顔料1g当たり2.00mmol)を用いたこと以外は、前述の顔料分散液1を調製した場合と同様にして、顔料の含有量が10.0%である顔料分散液5を得た。得られた顔料分散液5中の自己分散顔料は、ラクトン基の導入量Lが0.09mmol/g、カルボン酸基の導入量Cが0.60mmol/g、L/Cが0.15であった。
ホモジナイザーを使用した処理時間を2時間としたこと以外は、前述の顔料分散液1を調製した場合と同様にして、顔料の含有量が10.0%である顔料分散液6を得た。得られた顔料分散液6中の自己分散顔料は、ラクトン基の導入量Lが0.13mmol/g、カルボン酸基の導入量Cが0.64mmol/g、L/Cが0.20であった。
顔料分散液1の調製において、4−ヒドラジノフタル酸塩酸塩に代えて4−ヒドラジノ安息香酸35.6g(顔料1g当たり2.34mmol)を用いた。さらに、ホモジナイザーを使用した処理時間を2時間とした。これら以外の条件については前述の顔料分散液1を調製した場合と同様にして、顔料の含有量が10.0%である顔料分散液7を得た。得られた顔料分散液7中の自己分散顔料は、ラクトン基の導入量Lが0.13mmol/g、カルボン酸基の導入量Cが0.64mmol/g、L/Cが0.20であった。
顔料分散液1の調製において、4−ヒドラジノフタル酸塩酸塩の量を20.0g(顔料1g当たり0.86mmol)とした。さらに、カーボンブラックとして、比表面積が265m2/g及びDBP吸油量が120mL/100gであるもの(商品名「プリンテックスL6」、オリオンエンジニアドカーボンズ製)を用いた。これら以外の条件については前述の顔料分散液1を調製した場合と同様にして、顔料の含有量が10.0%である顔料分散液8を得た。得られた顔料分散液8中の自己分散顔料は、ラクトン基の導入量Lが0.13mmol/g、カルボン酸基の導入量Cが0.70mmol/g、L/Cが0.19であった。
顔料分散液1の調製において、4−ヒドラジノフタル酸塩酸塩に代えて、4−ヒドラジノ安息香酸35.6g(顔料1g当たり2.34mmol)を用いた。さらに、カーボンブラックとして、比表面積が265m2/g及びDBP吸油量が120mL/100gであるもの(商品名「プリンテックスL6」、オリオンエンジニアドカーボンズ製)を用いた。これら以外の条件については前述の顔料分散液1を調製した場合と同様にして、顔料の含有量が10.0%である顔料分散液9を得た。得られた顔料分散液9中の自己分散顔料は、ラクトン基の導入量Lが0.10mmol/g、カルボン酸基の導入量Cが0.62mmol/g、L/Cが0.16であった。
顔料分散液1の調製において、カーボンブラックとして、比表面積が220m2/g及びDBP吸油量が105mL/100gであるもの(商品名「ブラックパールズ880」、キャボット製)を用いた。それ以外の条件については前述の顔料分散液1を調製した場合と同様にして、顔料の含有量が10.0%である顔料分散液10を得た。得られた顔料分散液10中の自己分散顔料は、ラクトン基の導入量Lが0.11mmol/g、カルボン酸基の導入量Cが0.61mmol/g、L/Cが0.18であった。
顔料分散液1の調製において、カーボンブラックとして、比表面積が220m2/g及びDBP吸油量が105mL/100gであるもの(商品名「ブラックパールズ880」、キャボット製)を用いた。また、4−ヒドラジノフタル酸塩酸塩の量を24.0g(顔料1g当たり1.03mmol)とした。さらに、ホモジナイザーを使用した処理時間を2時間とした。これら以外の条件については、前述の顔料分散液1を調製した場合と同様にして、顔料の含有量が10.0%である顔料分散液11を得た。得られた顔料分散液11中の自己分散顔料は、ラクトン基の導入量Lが0.18mmol/g、カルボン酸基の導入量Cが0.88mmol/g、L/Cが0.20であった。
顔料分散液1の調製において、カーボンブラックとして、比表面積が343m2/g及びDBP吸油量が105mL/100gであるもの(商品名「ブラックパールズ1000」、キャボット製)を用いた。さらに、4−ヒドラジノフタル酸塩酸塩に代えて、4−ヒドラジノ安息香酸35.6g(顔料1g当たり2.34mmol)を用いた。これら以外の条件については前述の顔料分散液1を調製した場合と同様にして、顔料の含有量が10.0%である顔料分散液12を得た。得られた顔料分散液12中の自己分散顔料は、ラクトン基の導入量Lが0.13mmol/g、カルボン酸基の導入量Cが0.67mmol/g、L/Cが0.19であった。
顔料分散液1の調製において、カーボンブラックとして、比表面積が220m2/g及びDBP吸油量が105mL/100gのもの(商品名「ブラックパールズ880」、キャボット製)を用いた。さらに、4−ヒドラジノフタル酸塩酸塩に代えて、4−ヒドラジノ安息香酸35.6g(顔料1g当たり2.34mmol)を用いた。これら以外の条件については前述の顔料分散液1を調製した場合と同様にして、顔料の含有量が10.0%である顔料分散液13を得た。得られた顔料分散液13中の自己分散顔料は、ラクトン基の導入量Lが0.09mmol/g、カルボン酸基の導入量Cが0.50mmol/g、L/Cが0.18であった。
4−ヒドラジノフタル酸塩酸塩の量を15.8g(顔料1g当たり0.68mmol)とし、ホモジナイザーを使用した処理時間を2時間とした。これら以外の条件については前述の顔料分散液1を調製した場合と同様にして、顔料の含有量が10.0%である顔料分散液14を得た。得られた顔料分散液14中の自己分散顔料は、ラクトン基の導入量Lが0.11mmol/g、カルボン酸基の導入量Cが0.58mmol/g、L/Cが0.19であった。
4−ヒドラジノフタル酸塩酸塩に代えて、4−ヒドラジノ安息香酸30.4g(顔料1g当たり2.00mmol)を用いたこと以外は、前述の顔料分散液1を調製した場合と同様にして、顔料の含有量が10.0%である顔料分散液15を得た。得られた顔料分散液15中の自己分散顔料は、ラクトン基の導入量Lが0.10mmol/g、カルボン酸基の導入量Cが0.58mmol/g、L/Cが0.17であった。
水5.5gに濃塩酸5.0gを溶かした溶液を5℃に冷却し、4−アミノフタル酸1.5gを加えた。この溶液が入った容器をアイスバスに入れて溶液を撹拌し、液温を10℃以下に保った状態で、5℃の水9.0gに亜硝酸ナトリウム1.8gを溶かして得た亜硝酸ナトリウム水溶液を加えた。さらに15分撹拌後、比表面積が220m2/g及びDBP吸油量が105mL/100gであるカーボンブラック(商品名「ブラックパールズ880、キャボット製)6.0gを撹拌下で加えた。さらに15分撹拌して得たスラリーをろ紙(商品名「標準用ろ紙No.2」、アドバンテック製)でろ過して粒子を得た。得られた粒子を十分に水洗した後、110℃のオーブンで乾燥させて自己分散型のカーボンブラックを得た。得られた自己分散型のカーボンブラックをイオン交換水で希釈して、顔料の含有量が10.0%である顔料分散液16を得た。得られた顔料分散液16中の自己分散顔料は、ラクトン基の導入量Lが0.26mmol/g、カルボン酸基の導入量Cが0.71mmol/g、L/Cが0.37であった。
カーボンブラック100.0g、p−アミノ安息香酸34.1g、及び水720.0gを混合した後、硝酸16.2gを滴下し、70℃で10分間撹拌した。カーボンブラックとしては、比表面積が220m2/g及びDBP吸油量が105mL/100gであるもの(商品名「ブラックパールズ880」、キャボット製)を用いた。その後、水50.0gに亜硝酸ナトリウム10.7gを溶かして得た亜硝酸ナトリウム水溶液を加え、さらに1時間撹拌して得られたスラリーをろ紙(商品名「標準用ろ紙No.2」、アドバンテック製)でろ過しして粒子を得た。得られた粒子を十分に水洗した後、90℃のオーブンで乾燥させた。乾燥させた粒子をイオン交換水で希釈した後、アンモニア水でpHを7.5に調整し、さらにプレフィルタ及びポアサイズ1μmのフィルタを併用してろ過し、顔料の含有量が10.0%である顔料分散液17を得た。得られた顔料分散液17中の自己分散顔料は、ラクトン基の導入量Lが0.10mmol/g、カルボン酸基の導入量Cが0.34mmol/g、L/Cが0.29であった。
4−ヒドラジノフタル酸塩酸塩に代えて、4−ヒドラジノベンゼンスルホン酸22.0g(顔料1g当たり1.17mmol)を用いたこと以外は、前述の顔料分散液1を調製した場合と同様にして、顔料の含有量が10.0%である顔料分散液18を得た。得られた顔料分散液18中の自己分散顔料は、ラクトン基の導入量Lが0.12mmol/gであった。
顔料分散液1の調製において、4−ヒドラジノフタル酸塩酸塩に代えて、P,P’−[[(4−ヒドラジノベンジル)アミノ]メチレン]ビスホスホン酸塩酸塩42.3g(顔料1g当たり1.17mmol)を用いた。それ以外の条件については前述の顔料分散液1を調製した場合と同様にして、顔料の含有量が10.0%である顔料分散液19を得た。得られた顔料分散液19中の自己分散顔料は、ラクトン基の導入量Lが0.16mmol/gであった。
カーボンブラック500.0g及びイオン交換水3,750gを混合し、撹拌下で50℃まで昇温させて混合物を得た。カーボンブラックとしては、比表面積が200m2/g及びDBP吸油量が135mL/100gであるもの(商品名「NIPEX170IQ」、オリオンエンジニアドカーボンズ製)を用いた。0.5mmのジルコニアビーズを用いたビーズミルで混合物にシェアをかけながら50℃に保ち、次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素濃度12%)4,500gを3時間かけて滴下した。さらに30分間シェアをかけて、自己分散型のカーボンブラックを含む分散液を得た。得られた分散液をろ過して分取したカーボンブラックをアンモニア水で中和した後、限外ろ過装置を用いて電導度が1.5mS/cmになるまで脱塩した。顔料の含有量が10.0%となるように調整した後、プレフィルタ及びポアサイズ1μmのフィルタを併用してろ過し、顔料の含有量が10.0%である顔料分散液20を得た。得られた顔料分散液20中の自己分散顔料は、ラクトン基の導入量Lが0.22mmol/g、カルボン酸基の導入量Cが0.62mmol/g、L/Cが0.35であった。
特許文献3の「実施例31」の記載を参照し、使用されている試薬を4−ヒドラジノ安息香酸に代えたこと以外は、特許文献3の「実施例31」に記載された手順にしたがって自己分散顔料を調製した。使用したカーボンブラックは、比表面積が200m2/g及びDBP吸油量が117mL/100gであるもの(商品名「ブラックパールズ880」、キャボット製)である。調製した自己分散顔料をイオン交換水で希釈して、顔料の含有量が10.0%である顔料分散液21を得た。得られた顔料分散液21中の自己分散顔料は、ラクトン基の導入量Lが0.15mmol/g、カルボン酸基の導入量Cが0.48mmol/g、L/Cが0.31であった。
前述の「顔料分散液20」にピリジンを添加して塩基性とした後、自己分散顔料と塩化チオニルとを反応させ、顔料の粒子表面に−C(=O)Cl基を結合させた。その後、−C(=O)Cl基と2,5−ジヒドロキシフェニル酢酸−γ−ラクトンを反応させて、顔料の粒子の表面に−C(=O)O−を介してラクトン基が結合した自己分散顔料を含む分散液を得た。顔料分散液1を調製した場合と同様の手順で得られた分散液を精製した後、顔料の含有量が10.0%となるように調整した。プレフィルタ及びポアサイズ1μmのフィルタを併用してろ過をし、顔料の含有量が10.0%である顔料分散液22を得た。得られた顔料分散液22中の自己分散顔料は、ラクトン基の導入量Lが0.33mmol/g、カルボン酸基の導入量Cが0.51mmol/g、L/Cが0.65であった。
自己分散顔料(商品名「Cab−O−Jet300」、キャボット製)に適量のイオン交換水を添加して、顔料の含有量が10.0%である顔料分散液23を得た。得られた顔料分散液23中の自己分散顔料は、ラクトン基の導入量Lが0.07mmol/g、カルボン酸基の導入量Cが0.22mmol/g、L/Cが0.32であった。
以下に示す各成分を混合し、十分に撹拌した後、ポアサイズ1.2μmのメンブレンフィルター(商品名「HDCIIフィルタ」、ポール製)にて加圧ろ過して各インクを調製した。「アセチレノールE100」は、川研ファインケミカル製のノニオン性界面活性剤(アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物)である。各インクの調製に用いた顔料分散液の種類、顔料のDBP吸油量(mL/100g)、自己分散顔料のカルボン酸基の導入量C(mmol/g)、ラクトン基の導入量L(mmol/g)、及びL/Cの値を表1に示す。
・表1に示す種類の顔料分散液:40.00%
・グリセリン:7.00%
・2−ピロリドン:7.00%
・トリエチレングリコール:7.00%
・アセチレノールE100:0.12%
・イオン交換水:38.88%
調製したインクをインクカートリッジにそれぞれ充填し、熱エネルギーの作用により記録ヘッドからインクを吐出するインクジェット記録装置(商品名「PIXUS iP3100」、キヤノン製)のブラックインクのポジションに搭載した。また、カラーインクとしては、商品名「BCI−7e」(キヤノン製)のマゼンタインク及びイエローインクを用い、上記記録装置の対応する色のポジションに搭載した。本実施例においては、ブラックインクの場合、1/600インチ×1/600インチの単位領域に1滴当たりの質量が30ng±10%であるインク滴を1滴付与して記録したベタ画像を「記録デューティが100%である」と定義する。また、カラーインクの場合、1/600インチ×1/600インチの単位領域に1滴当たりの質量が5ng±10%であるインク滴を2滴付与して記録したベタ画像を「記録デューティが100%である」と定義する。記録条件は、用紙の種類:普通紙、印刷品質:標準、とした。記録媒体としては、以下商品名で、PB Paper、Canon Office、SW−101(以上、キヤノン製);Classic White(STEINBEIS製)の4種の普通紙を用いた。本発明においては、下記の各項目の評価基準で、「A」及び「B」を許容できるレベルとし、「C」を許容できないレベルとした。評価結果を表2に示す。
カラーインクのベタ画像を背景とし、その中にブラックインクの文字を記録して記録物を作製した。カラーインクのベタ画像は、1次色の場合にはイエローインク、2次色の場合にはイエローインク及びマゼンタインク(1:1の付与量比のレッド画像)でそれぞれ記録した。作製した記録物のパターンを目視で観察して、以下に示す評価基準にしたがって耐ブリーディング性を評価した。
A:4種の記録媒体の全てにおいて、1次色、2次色共にブリーディングが目立っていなかった。
B:4種のうち一部の記録媒体において、2次色でブリーディングが目立っていたが、1次色ではブリーディングが目立っていなかった。
C:4種のうち一部の記録媒体において、1次色、2次色共にブリーディングが目立っていた。
ブラックインクのベタ画像を背景とし、その中にカラーインクでMSゴシック体の24ポイントの文字を記録して記録物を作製した。カラーインクの文字は、1次色の場合にはイエローインク、2次色の場合にはイエローインク及びマゼンタインク(1:1の付与量比のレッド画像)でそれぞれ記録した。作製した記録物のパターンを目視で観察して、以下に示す評価基準にしたがって耐白もや性を評価した。
A:4種の記録媒体の全てにおいて、1次色、2次色共に白もや現象が目立っていなかった。
B:4種のうち一部の記録媒体において、2次色で白もや現象が目立っていたが、1次色では白もや現象が目立っていなかった。
C:4種のうち一部の記録媒体において、1次色、2次色共に白もや現象が目立っていた。
ブラックインクを用いて、10mm×15mmのベタ画像を記録して記録物を作製した。記録の1日後に、ベタ画像の光学濃度を、反射濃度計(商品名:マクベスRD−918:マクベス製)を用いて測定し、以下に示す評価基準にしたがって光学濃度を評価した。
A:4種の記録媒体の全てにおいて、光学濃度が1.5以上であった。
B:4種の記録媒体の全てにおいて、光学濃度が1.4以上1.5未満であった。
C:4種の記録媒体における光学濃度の平均値が1.4未満であった。
Claims (15)
- 顔料の粒子表面に直接又は他の原子団を介して結合したカルボン酸基と、前記顔料の粒子表面に結合したラクトン基とを有する自己分散顔料を含有し、
選択的中和法により求められる、前記カルボン酸基の導入量が0.60mmol/g以上であり、かつ、前記ラクトン基の導入量(mmol/g)が、前記カルボン酸基の導入量(mmol/g)に対する比率で、0.20倍以下であることを特徴とする水性インク。 - 前記顔料のDBP吸油量が、120mL/100g以上である請求項1に記載の水性インク。
- 前記顔料のDBP吸油量が、170mL/100g以下である請求項1又は2に記載の水性インク。
- 前記カルボン酸基の導入量が、1.50mmol/g以下である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の水性インク。
- 前記ラクトン基の導入量が、0.18mmol/g以下である請求項1乃至4のいずれか1項に記載の水性インク。
- 前記自己分散顔料が、前記顔料の粒子表面に他の原子団を介して結合した2以上のカルボン酸基を有する請求項1乃至5のいずれか1項に記載の水性インク。
- 前記他の原子団が、アリーレン基である請求項1乃至6のいずれか1項に記載の水性インク。
- 前記顔料が、カーボンブラックである請求項1乃至7のいずれか1項に記載の水性インク。
- 自己分散顔料を含有する水性インクの製造方法であって、
前記自己分散顔料が、顔料の粒子表面に直接又は他の原子団を介して結合したカルボン酸基と、前記顔料の粒子表面に結合したラクトン基とを有するとともに、選択的中和法により求められる、前記カルボン酸基の導入量が0.60mmol/g以上であり、かつ、前記ラクトン基の導入量(mmol/g)が、前記カルボン酸基の導入量(mmol/g)に対する比率で、0.20倍以下であり、
前記自己分散顔料を、下記一般式(1)で表される化合物からの水素原子の引き抜きによるラジカル付加反応によって、下記一般式(1)中のR1で表される基を顔料の粒子表面に結合させる工程を有する方法によって製造することを特徴とする水性インクの製造方法。
HN=N−R1 ・・・(1)
(前記一般式(1)中、R1は、脂肪族基及び芳香族基の少なくとも一方を有する基にカルボン酸基が置換した基を表す) - 前記工程を、液媒体中で行う請求項9に記載の水性インクの製造方法。
- 前記工程を、pH1以上13以下の条件下で行う請求項9又は10に記載の水性インクの製造方法。
- 前記工程を、酸化剤の存在下で行う請求項9乃至11のいずれか1項に記載の水性インクの製造方法。
- インクと、前記インクを収容するインク収容部とを備えたインクカートリッジであって、
前記インクが、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の水性インクであることを特徴とするインクカートリッジ。 - インクをインクジェット方式の記録ヘッドから吐出して記録媒体に画像を記録するインクジェット記録方法であって、
前記インクが、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の水性インクであることを特徴とするインクジェット記録方法。 - インクをインクジェット方式の記録ヘッドから吐出して記録媒体に画像を記録するインクジェット記録方法であって、
前記インクが、請求項9乃至12のいずれか1項に記載の製造方法によって製造された水性インクであることを特徴とするインクジェット記録方法。
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