以下に図面を参照し、本発明の第1の実施形態について詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図1は本実施形態に係るインクジェット記録装置(以下、プリンタとも称する)の外観を示している。これはいわゆるシリアル走査型のプリンタであり、記録媒体3の搬送方向(Y方向)に対して直交する交差方向(X方向)に記録ヘッドを相対的に走査して画像を記録するものである。
図1を用いてこのインクジェット記録装置の構成および記録時の動作の概略を説明する。まず不図示の搬送モータによりギヤを介して駆動される搬送ローラによって記録媒体3を保持しているスプール6より記録媒体3がY方向に搬送される。一方、所定の搬送位置において不図示のキャリッジモータによりキャリッジユニット2をX方向に延在するガイドシャフト8に沿って走査させる。そして、この走査の過程で、エンコーダ7によって得られる位置信号に基づいたタイミングでキャリッジユニット2に装着可能な記録ヘッド(後述)の吐出口から吐出動作を行わせ、吐出口の配列範囲に対応した一定のバンド幅を記録する。本実施形態においては、走査速度40インチ毎秒で走査し、600dpi(1/600inch)の解像度で吐出動作を行う構成とした。その後、記録媒体3の搬送を行い、さらに次のバンド幅について記録を行う構成となっている。
なお、キャリッジモータからキャリッジユニット2への駆動力の伝達には、キャリッジベルトを用いることができる。しかしキャリッジベルトの代わりに、例えばキャリッジモータにより回転駆動され、X方向に延在するリードスクリュと、キャリッジユニット2に設けられ、リードスクリュの溝に係合する係合部とを具えたものなど、他の駆動方式を用いることも可能である。
送給された記録媒体3は、給紙ローラとピンチローラとに挟持搬送されて、プラテン4上の記録位置(記録ヘッドの主走査領域)に導かれる。通常休止状態では記録ヘッドのフェイス面にはキャッピングが施されているため、記録に先立ってキャップを開放して記録ヘッドないしキャリッジユニット2を走査可能状態にする。その後、1走査分のデータがバッファに蓄積されたらキャッリッジモータによりキャリッジユニット2を走査させ、上述のように記録を行う。
ここで、記録ヘッドに対しては、吐出駆動のための駆動パルスやヘッド温調用信号などを供給するためのフレキシブル配線基板190が取り付けられている。フレキシブル基板の他端は、本プリンタの制御を実行するCPU等の制御回路を備えた制御部(不図示)に接続されている。
図3は本実施形態で使用する記録ヘッドを示す。
記録ヘッド7は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、フォトマゼンタ(Pm)、シアン(C)、フォトシアン(Pc)、ブラック(Bk)、グレイ(Gy)、フォトグレイ(Pgy)、レッド(R)、ブルー(B)、記録面の保護や光沢の均一性向上等の着色以外の目的を有する処理液(P)の各インクをそれぞれ吐出可能な11個の吐出口列22Y、22M、22Pm、22C、22Pc、22Bk、22Gy、22Pgy、22R、22B、22P(以下、これらの吐出口列のうちの1つの吐出口列を吐出口列22とも称する)がこの順にX方向に並んで配置されることにより構成される。これらの吐出口列22は、それぞれのインクを吐出する768個の吐出口(以下、ノズルとも称する)30が1200dpiの密度でY方向(所定方向)に配列されることで構成されている。なお、Y方向に互いに隣接する位置にある吐出口30同士はX方向に互いにずれた位置に配置される。ここで、本実施形態における一つの吐出口30から一度に吐出されるインクの吐出量は約4.5ngである。
なお、以下の説明では簡単のため、各吐出口列22内の768個の吐出口のうちの最もY方向上流側に位置する吐出口30をn1と称する。また、n1とY方向下流側に隣接する吐出口30をn2と称する。更に、n2とY方向下流側に隣接する吐出口をn3と称する。同様にして各吐出口をn4〜n768と称する。各吐出口列22内の768個の吐出口のうちの最もY方向下流側に位置する吐出口30はn768となる。
これらの吐出口列22は、それぞれ対応するインクを貯蔵する不図示のインクタンクに接続され、インクの供給が行われる。なお、本実施形態にて用いる記録ヘッド7とインクタンクは一体的に構成されるものでも良いし、それぞれが分離可能な構成のものでも良い。
図4は、本実施形態における制御系の概略構成を示すブロック図である。主制御部300は、演算、選択、判別、制御などの処理動作を実行するCPU301と、CPU301によって実行すべき制御プログラム等を格納するROM302と、記録データのバッファ等として用いられるRAM303、および入出力ポート304等を備えている。メモリ313には、後述する画像データやマスクパターン、吐出不良ノズルデータ等が格納されている。そして、入出力ポート304には、搬送モータ(LFモータ)309、キャリッジモータ(CRモータ)310、記録ヘッド7及び切断ユニットにおけるアクチュエータなどの各駆動回路305、306、307、308が接続されている。さらに、主制御部300はインターフェイス回路311を介してホストコンピュータであるPC312に接続されている。
(マルチパス記録方式)
本実施形態では、記録媒体上の単位領域に対して記録ヘッドを複数回走査させることで記録を行う、所謂マルチパス記録方式に従って画像を形成する。
図5は本実施形態で実行するマルチパス記録方式について説明するための図である。
インクを吐出する吐出口列22に設けられたそれぞれの吐出口30は、Y方向に沿って4つの吐出口群201、202、203、204に分割される。ここで、吐出口群201、202、203、204それぞれのY方向における長さは、吐出口列22のY方向における長さをLとした場合、L/4となる。
本実施形態で用いる吐出口列22は、図3に示したように768個の吐出口30を有している。したがって、1つの吐出口群には192(=768÷4)個の吐出口が属している。詳細には、吐出口群201にはn1〜n192の吐出口が、吐出口群202にはn193〜n384の吐出口が、吐出口群203にはn385〜n576の吐出口が、吐出口群204にはn577〜n768の吐出口が、それぞれ属している。
1回目の記録走査(1パス)では、記録媒体3上の単位領域211に対して吐出口群201からインクが吐出され、記録媒体上にドットが形成される。
次に、記録媒体3を記録ヘッド7に対してY方向の上流側から下流側に1つの吐出口群のY方向における幅に対応する距離だけ相対的に搬送する。
この後に2回目の記録走査を行う。2回目の記録走査(2パス)では、記録媒体上の単位領域211に対しては吐出口群202から、単位領域212に対しては吐出口群201からインクが吐出される。
以下、記録ヘッド7の記録走査と記録媒体3の相対的な搬送を交互に繰り返す。この結果、4回目の記録走査(4パス)が行われた後には、記録媒体3上の単位領域211では吐出口群201〜204のそれぞれから1回ずつインクが吐出されたことになる。
なお、ここでは4回の走査で記録を行う場合について説明したが、他の回数だけ走査を行って記録する場合であっても同様の過程によって記録を行うことができる。
(データの処理過程)
図6は本実施形態における制御プログラムにしたがってCPUが実行する記録に用いられる記録データ生成処理のフローチャートである。
まず、ステップS401にてインクジェット記録装置1000はホストコンピュータであるPC312から入力されたRGB形式の入力データを取得する。
次に、ステップS402では、RGB形式の入力データを記録に用いるインクの色に対応する多値データに変換する色変換処理を行う。この色変換処理により、複数の画素領域からなる画素領域群それぞれにおける階調を定める8ビット256値の情報によって表される多値データが生成される。
次に、ステップS403では後述する量子化パターンを用いて多値データを量子化する量子化処理を行う。この量子化処理により、各画素領域に対するインクの吐出または非吐出を定める1ビット2値の情報により表される量子化データが生成される。
そして、ステップS404では後述するマスクパターンを用いて量子化データを複数回の走査に分配する分配処理を行う。この分配処理により、複数回の走査それぞれにおける各画素領域に対するインクの吐出または非吐出を定める1ビット2値の情報により表される記録データが生成される。
なお、量子化処理(S405)までをPC312に、分配処理(S404)をインクジェット記録装置1000に行わせるようにしても良い。
(ディザパターン)
図7(a)は本実施形態における量子化処理で用いる量子化パターン80を示す模式図である。また、図7(b)は図7(a)に示す量子化パターンのうちのある領域80aの拡大図である。なお、本実施形態では量子化パターンとして複数の画素領域それぞれに対するインクの吐出または非吐出を決定するための閾値が定められたディザパターンを用いる。
図7(a)に示すように、本実施形態で用いるディザパターン80は、X方向に128画素、Y方向に128画素の大きさを有している。これらの128×128個の画素それぞれに対し、図7(b)の拡大図に示すように、1〜255までの255個のいずれかの値がその画素における閾値として定められている。
本実施形態におけるステップS403における量子化処理では、ある画素における多値データが示す階調値と、対応する画素におけるディザパターン80が示す閾値と、を比較し、階調値が閾値以上である場合にはその画素に対してインクの吐出を定め、階調値が閾値未満である場合にはその画素に対してインクの非吐出を定める量子化データを生成する。
ここで、図7に示すディザパターンは、多値データが示す0〜255の256値の階調値に応じて256段階のインクの吐出量を再現可能なように、128×128個の画素に対する閾値が定められている。例えば、量子化パターン80と対応する128×128個の画素のすべてに対して64(=256÷4)の階調値を有する多値データが入力された場合、約4096(=128×128÷4)個の画素に対してインクの吐出を定めるような量子化データを生成するように、各閾値が定められている。すなわち、図7(a)に示すディザパターン80は64以下の閾値が定められた画素が約4096個となるように定められている。また、例えば量子化パターン80と対応する128×128個の画素のすべてに対して128(=256÷2)の階調値を有する多値データが入力された場合、約8192(=128×128÷2)個の画素に対してインクの吐出を定めるような量子化データを生成するように、各閾値が定められている。すなわち、図7(a)に示すディザパターン80は128以下の閾値が定められた画素が約8192個となるように定められている。これらのことを言い換えると、ディザパターン80内には1〜255それぞれの閾値が定められた画素が互いにほぼ同じ数となるように定められている。
なお、上記のディザパターンは本実施形態を適用できるディザパターンのうちの一例であり、他の要素を鑑みて適宜異なるディザパターンを設定することができる。
(マスクパターン)
図8(a1)は本実施形態における分配処理で用いる単位領域に対する1回目の走査に対応するマスクパターン81を示す模式図である。また、図8(a2)はマスクパターン81のうちのある領域81aの拡大図である。
また、図8(b1)は本実施形態における分配処理で用いる単位領域に対する2回目の走査に対応するマスクパターン82を示す模式図である。また、図8(b2)はマスクパターン82のうちのある領域82aの拡大図である。
また、図8(c1)は本実施形態における分配処理で用いる単位領域に対する3回目の走査に対応するマスクパターン83を示す模式図である。また、図8(c2)はマスクパターン83のうちのある領域83aの拡大図である。
また、図8(d1)は本実施形態における分配処理で用いる単位領域に対する4回目の走査に対応するマスクパターン84を示す模式図である。また、図8(d2)はマスクパターン84のうちのある領域84aの拡大図である。
図8(a1)、(b1)、(c1)、(d1)に示すように、本実施形態で用いるマスクパターン81〜84は、それぞれX方向に128画素、Y方向に128画素の大きさを有している。これは、本実施形態で用いるディザパターン80の大きさと同じである。これらの128×128個の画素のそれぞれに対し、図8(a2)、(b2)、(c2)、(d2)の拡大図に示すように、それぞれの画素に対する記録の許容または非許容が定められている。なお、図8(a2)、(b2)、(c2)、(d2)のうち、黒く塗り潰された画素がインクの吐出を許容する記録許容画素を、白抜けで示された画素がインクの吐出を許容しない非記録許容画素をそれぞれ示している。
本実施形態におけるステップS404における分配処理では、ある画素における量子化データが定めるインクの吐出/非吐出と、対応する画素におけるマスクパターン81〜84それぞれが定めるインクの吐出の許容/非許容と、に基づいて記録データを生成する。詳細には、ある画素において量子化データがインクの吐出を定めており、且つ、マスクパターンがインクの吐出の許容を定めている場合にそのマスクパターンに対応する走査においてその画素に対してインクを吐出するような記録データを生成する。一方、ある画素において量子化データがインクの吐出を定めており、且つ、マスクパターンがインクの吐出の非許容を定めている場合には、そのマスクパターンに対応する走査においてその画素に対してインクを吐出しないような記録データを生成する。また、ある画素において量子化データがインクの非吐出を定めている場合、マスクパターンが定めるインクの吐出の許容/非許容に関わらず、インクを吐出しないような記録データを生成する。
ここで、図8に示すマスクパターン81〜84は、互いに補完的且つ排他的な位置に記録許容画素が配置されている。すなわち、各画素に対し、4つのマスクパターン81〜84のうちのいずれか1つのマスクパターンではインクの吐出の許容が定められ、且つ、他の3つのマスクパターンではインクの吐出の非許容が定められている。これにより、例えばマスクパターン81〜84と対応する128×128個の画素のすべてに対してインクの吐出を定めた量子化データが入力された場合、それぞれの画素領域に対して1〜4回目の走査のうちのいずれか1回の走査においてインクを吐出することが可能となる。
また、図8に示すマスクパターン81〜84は、互いにほぼ同じ数の記録許容画素が定められている。これにより、例えばマスクパターン81〜84と対応する128×128個の画素のすべてに対してインクの吐出を定めた量子化データが入力された場合、1〜4回目の走査それぞれにおけるインクの吐出回数をほぼ同じ回数とすることができる。
以上の構成から、図8に示すマスクパターン81〜84それぞれは、記録許容画素の数と非記録許容画素の数の和に対する記録許容画素の数の比率で定義される記録許容比率はいずれも25%に定められていることがわかる。
なお、上記のマスクパターンは本実施形態を適用できるマスクパターンのうちの一例であり、他の要素を鑑みて適宜異なるマスクパターンを設定することができる。
(ディザパターンとマスクパターンの同期)
本実施形態で使用するディザパターン80とマスクパターン81〜84のそれぞれは、互いに対応付けて定められている。なお、以降の説明ではディザパターンとマスクパターンを互いに対応付けて定めることをディザパターンとマスクパターンの同期とも称する。
詳細には、本実施形態では、25%の階調値である64(=256×0.25)の階調値を定める多値データに対してディザパターン80を用いて量子化し、生成された量子化データをマスクパターン81を用いて1回目の走査に分配した場合、生成された1回目の走査に対応する記録データが示すインクの吐出を定めた画素の分散性がある程度高くなるように、ディザパターン80とマスクパターン81が互いに対応付けられて定められている。すなわち、図1(b−1)に示したようなインクの吐出を定めた画素に空間的な偏りが目立つような画像を示す記録データではなく、図1(c−1)に示したようなインクの吐出を定めた画素が空間的に均等に生じるような画像を示す記録データを生成できるように、ディザパターン80とマスクパターン81が定められている。
更に、本実施形態では、50%の階調値である128(=256×0.5)の階調値を定める多値データ、75%の階調値である192(=256×0.75)の階調値を定める多値データ、100%の階調値である256(=256×1)の階調値を定める多値データのそれぞれが入力された場合においても同様に、生成された1回目の走査に対応する記録データが示すインクの吐出を定めた画素の分散性がある程度高くなるように、ディザパターン80とマスクパターン81が互いに対応付けられて定められている。
ここで、分散の程度としては、記録データに基づくドットの配置がホワイトノイズ特性とならないようにディザパターン80とマスクパターン81が定められていることが好ましい。また、記録データに基づくドットの配置がブルーノイズ特性となるようにディザパターン80とマスクパターン81が定められていることが更に好ましい。
また、ここでは1回目の走査に対応するマスクパターン81とディザパターン80の同期について説明したが、2回目の走査に対応するマスクパターン82、3回目の走査に対応するマスクパターン83、4回目の走査に対応するマスクパターン84のそれぞれについても同様にして、ディザパターン80との同期が行われている。
したがって、本実施形態で用いるディザパターン80と、マスクパターン81〜84のそれぞれと、は、25%、50%、75%、100%の各階調において互いに対応付けて定められていることとなる。
なお、本実施形態における対応付けはマスクパターンのデータの作成時においてなされる。例えば、まず、階調データと比較するための閾値が配置されたディザパターンを用意する。そして、このディザパターンの各画素の閾値を考慮し、各走査で形成される画素が各パス単独で見た場合に上述した分散の状態となるように、マスクパターンを定めるのである。
具体的には、ディザパターンの各画素の閾値を考慮しながら、各走査において、単位領域内の位置への画素形成を許可とする位置を決定する。あるいは各位置へ形成することを許可とするドットの個数を決定するのである。
例えば、あるディザパターンを既定のものとし、ある1回の走査に対応するマスクパターンにおいて所定の位置へのドット形成画素を決定する。そして、次は残りの位置において、さらにドット形成画素を決定するわけであるが、このときは、先に形成した所定の位置のドットにさらにドットが加えられた場合の分散性が最も高くなる位置を、次のドット形成位置とするのである。分散性の評価は所定の条件でおこなえばよい。
また、ここではディザパターンを既定のものとして説明したが、マスクパターンを既定のものとして、ディザパターンの閾値を順次決定していく際に、各階調において形成され得るドットとマスクパターンとの論理積から得られる量子化データを評価し、閾値を決定していってもよい。
(ディザパターンとマスクパターンの適用方法)
図7、図8に示すように、本実施形態におけるディザパターン80とマスクパターン81〜84はそれぞれY方向に128画素の大きさを有している。
一方で、図5に示すように、本実施形態におけるマルチパス記録方式では1回当たりの搬送量が192画素に相当する長さとなるように搬送する。
ここで、搬送量(192画素)はマスクパターン81〜84それぞれのY方向における長さ(128画素)の整数倍となっていないことがわかる。詳細には、搬送量はマスクパターン81〜84それぞれの長さの1.5(=192/128)倍となっている。
ここで、例えば図5に示す1回目の走査において吐出口群201内の128個の吐出口であるn192〜n65に対して図8(a1)に示すマスクパターン81を適用した場合、吐出口群201内の他の吐出口であるn64〜n1に対してはマスクパターン81を適用することができなくなってしまう。すなわち、他の吐出口であるn64〜n1は64画素分しかないため、Y方向に128画素の大きさからなるマスクパターン81を適用することができないためである。
そこで、本実施形態では図8に示したようなディザパターンとマスクパターンの同期を行って設定されたマスクパターン81〜84それぞれをY方向に複数に分割した複数のマスクパターン部分を用いる。
詳細には、本実施形態では、搬送量が複数のマスクパターン部分それぞれのY方向における長さの整数倍となるように、マスクパターン81〜84を分割する。ここでは搬送量が192画素であるため、例として複数のマスクパターン部分それぞれのY方向における長さが64(=192/3)画素となるようにマスクパターン81〜84を分割する。
図9(a)は本実施形態におけるマスクパターン部分を示す図である。なお、以下の説明では簡単のため、マスクパターン81、82、83、84をそれぞれマスクパターンA、B、C、Dとも称する。また、図9(b)は本実施形態におけるディザパターン部分を模式的に示す図である。以下の説明では簡単のため、ディザパターン80をディザパターンQとも称する。
本実施形態では図8に示すマスクパターンA〜DそれぞれをY方向に2分割することによりマスクパターン部分を得る。
例えば、1回目の走査に対応するマスクパターンAはY方向下流側(の画素)に位置し、64画素×128画素の大きさからなるマスクパターン部分A1と、Y方向上流側(の画素)に位置し、64画素×128画素の大きさからなるマスクパターン部分A2とに分割される。
また、2回目の走査に対応するマスクパターンBはY方向下流側に位置し、64画素×128画素の大きさからなるマスクパターン部分B1と、Y方向上流側に位置し、64画素×128画素の大きさからなるマスクパターン部分B2とに分割される。
また、3回目の走査に対応するマスクパターンCはY方向下流側に位置し、64画素×128画素の大きさからなるマスクパターン部分C1と、Y方向上流側に位置し、64画素×128画素の大きさからなるマスクパターン部分C2とに分割される。
また、4回目の走査に対応するマスクパターンDはY方向下流側に位置し、64画素×128画素の大きさからなるマスクパターン部分D1と、Y方向上流側に位置し、64画素×128画素の大きさからなるマスクパターン部分D2とに分割される。
なお、マスクパターン部分A1、B1、C1、D1のそれぞれにおける上述の記録許容比率がいずれも25%となるように、マスクパターンA、B、C、Dが定められている。同様に、マスクパターン部分A2、B2、C2、D2それぞれにおいても記録許容比率がいずれも25%となるように、マスクパターンA、B、C、Dが定められている。
ここで、マスクパターン部分A1、B1、C1、D1はディザパターンQ内のY方向下流側に位置するディザパターン部分Q1と同期されて設定された領域である。したがって、量子化データのうちのディザパターン部分Q1によって量子化された量子化データに対しては、マスクパターン部分A1、B1、C1、D1を用いて分配処理を行うことによりインクの吐出が定められた画素が高分散となるような記録データを生成することができる。
一方、マスクパターン部分A2、B2、C2、D2はディザパターンQ内のY方向上流側に位置するディザパターン部分Q2と同期されて設定された領域である。したがって、量子化データのうちのディザパターン部分Q2によって量子化された量子化データに対しては、マスクパターン部分A2、B2、C2、D2を用いて分配処理を行うことによりインクの吐出が定められた画素が高分散となるような記録データを生成することができる。
つまり、ディザパターンとマスクパターンは1走査相当の領域単位のみならず、Y方向に位置が異なる2つの領域それぞれで1走査領域と同等の対応付けが行われている。
本実施形態では、図5に示すマルチパス記録方式において、図7に示すディザパターン、図8に示すマスクパターン、図9に示すマスクパターン部分を用いて生成された記録データにしたがって記録を行う。
図10は本実施形態におけるCPUが行う記録データの生成過程を示す模式図である。なお、以下の説明では簡単のため、X方向上流側から1画素目〜128画素目に位置する多値データのみについて記載する。
本実施形態における量子化処理S403では、Y方向下流側(画像の上側)およびX方向上流側(画像の左側)から図7に示すディザパターンを順次繰り返して適用することにより量子化を行う。例えば、図10に模式的に示すように、多値データのY方向下流側から1画素目〜128画素目、X方向上流側から1画素目〜128画素目の領域に対して1つのディザパターンQを用いて量子化される。また、Y方向下流側から129画素目〜256画素目、X方向上流側から1画素目〜128画素目の領域に対して1つのディザパターンQを用いて量子化される。また、Y方向下流側から257画素目〜384画素目、X方向上流側から1画素目〜128画素目の領域に対して1つのディザパターンQを用いて量子化される。
このように、本実施形態では単位領域211〜214の大きさに関わらず順次ディザパターンQを使用して量子化を行う。したがって、1つのディザパターンQを用いて量子化が行われた領域が2つの単位領域内にまたがるように記録が行われる場合がある。例えば、Y方向下流側から129画素目〜192画素目の領域と、193画素目〜256画素目の領域と、は同じディザパターンQを用いて量子化が行われた領域であるにも関わらず、互いに異なる単位領域に属している。
次に、分配処理S404では、ディザパターンQ内のすべての領域を用いて量子化された量子化データに対してはマスクパターンA、B、C、Dのいずれかを用いて各走査への分配を行う。一方、ディザパターンQ内の一部の領域(ディザパターン部分Q1、Q2)を用い、他部の領域を用いずに量子化された量子化データに対しては、当該一部の領域に対応するマスクパターン部分A1、A2、B1、B2、C1、C2、D1、D2のいずれかを用いて各走査への分配を行う。
例えば、量子化データのY方向下流側から1画素目〜192画素目の領域は記録媒体上の1つの単位領域211に記録される画像に対応する。なお、図5からわかるように、単位領域211は1パス目(単位領域211に対する1回目の走査)にてn1〜n192からなる吐出口群201に、2パス目(単位領域211に対する2回目の走査)にてn193〜n384からなる吐出口群202に、3パス目(単位領域211に対する3回目の走査)にてn385〜n576からなる吐出口群203に、4パス目(単位領域211に対する4回目の走査)にてn577〜n768からなる吐出口群204によって記録が行われる領域である。
ここで、量子化データのY方向下流側から1画素目〜192画素目に対応する領域のうち、Y方向下流側から1画素目〜128画素目の領域(所定領域)はディザパターンQのすべての領域を用いて量子化が実行された領域である。
したがって、量子化データのうちのY方向下流側から1画素目〜128画素目の領域に対しては、図8に示すマスクパターンA、B、C、Dを用いて分配処理が実行される。
一方、量子化データのY方向下流側から1画素目〜192画素目に対応する領域のうちのY方向下流側から129画素目〜192画素目の領域は、ディザパターンQ内(量子化パターン内)の一部の領域を使用し、且つ、他部の領域は用いずに量子化が行われた領域である。詳細には、図10からわかるように、量子化データのY方向下流側から129画素目〜192画素目の領域はディザパターンQのY方向下流側の半分の領域、すなわち図9(b)に模式的に示すディザパターン部分Q1によって量子化が行われた領域である。
したがって、量子化データのY方向下流側から129画素目〜192画素目の領域に対しては、ディザパターン部分Q1に対応する図9(a)に示すマスクパターン部分A1、B1、C1、D1を用いて分配処理が実行される。
次に、量子化データのY方向下流側から193画素目〜384画素目の領域は、記録媒体上の1つの単位領域212に記録される画像に対応する。なお、図5からわかるように、単位領域212は2パス目(単位領域212に対する1回目の走査)にてn1〜n192からなる吐出口群201に、3パス目(単位領域212に対する2回目の走査)にてn193〜n384からなる吐出口群202に、4パス目(単位領域212に対する3回目の走査)にてn385〜n576からなる吐出口群203に、5パス目(単位領域212に対する4回目の走査)にてn577〜n768からなる吐出口群204によって記録が行われる領域である。
ここで、量子化データのY方向下流側から193画素目〜384画素目の領域のうち、Y方向下流側から193画素目〜256画素目の領域は、ディザパターンQの一部の領域を使用し、且つ、他部の領域は用いずに量子化が行われた領域である。詳細には、図10からわかるように、量子化データのY方向下流側から193画素目〜256画素目の領域はディザパターンQのY方向上流側の半分の領域、すなわち図9(b)に模式的に示すディザパターンQ2によって量子化が行われた領域である。
したがって、量子化データのY方向上流側から193画素目〜256画素目の領域に対しては、ディザパターン部分Q2に対応する図9(a)に示すマスクパターンA2、B2、C2、D2を用いて分配処理が実行される。
一方、量子化データのY方向下流側から193画素目〜384画素目の領域のうち、Y方向下流側から257画素目〜384画素目の領域は、ディザパターンQのすべての領域を用いて量子化が実行された領域である。
したがって、量子化データのうちのY方向下流側から257画素目〜384画素目の領域に対しては、図8に示すマスクパターンA、B、C、Dを用いて分配処理が実行される。
以下、同様にして各単位領域に対する分配処理を実行する。すなわち、ディザパターンQ内のすべての領域を用いて量子化された量子化データに対してはマスクパターンA、B、C、Dの組を用いて各走査への分配を行う。一方、ディザパターンQ内の一部の領域であるディザパターン部分Q1を用い、他部の領域であるディザパターン部分Q2を用いずに量子化された量子化データに対しては、ディザパターンQ1に対応するマスクパターン部分A1、B1、C1、D1の組を用いて各走査への分配を行う。更に、ディザパターンQ内の一部の領域であるディザパターン部分Q2を用い、他部の領域であるディザパターン部分Q1を用いずに量子化された量子化データに対しては、ディザパターンQ2に対応するマスクパターン部分A2、B2、C2、D2の組を用いて各走査への分配を行う。
なお、上記形態ではメモリにマスクパターンA、B、C、Dを格納し、ここからマスクパターン部分A1、A2、B1、B2、C1、C2、D1、D2を生成する形態について記載したが、他の形態による実施も可能である。例えば、マスクパターン部分A1、A2、B1、B2、C1、C2、D1、D2そのものをメモリに予め格納し、これらを用いるような形態であっても良い。
以上の構成によれば、記録媒体の搬送量と相関を持たせることなくディザパターンを設定することができるため、ディザパターンの設定の際の自由度を低下させることがない。更に、ディザパターン内の一部の領域を用い、他部の領域は用いずに量子化された量子化データに対しては、その一部の領域と対応付けられたマスクパターン部分を適用する。したがって、空間的な偏りが小さい、すなわち分散性が高い記録データを生成することが可能となる。
(第2の実施形態)
上述の第1の実施形態では、1枚の記録媒体に対する記録において搬送量が一定である形態について記載した。
これに対し、本実施形態では記録媒体内の記録を行う領域に応じて搬送量を異ならせる形態について記載する。
なお、以下は第1の実施形態と異なる点を記載し、その他の第1の実施形態と同様の部分については説明を省略する。
図11は本実施形態で実行するマルチパス記録方式について説明するための図である。
本実施形態では、記録媒体に対するk(kは自然数)回目の走査までは図5に示した第1の実施形態におけるマルチパス記録方式と同様に、単位領域に対する4回の走査のそれぞれにおいて吐出口群201〜204それぞれからのインクの吐出と、記録媒体のY方向への192画素分の搬送量(第1の搬送量)の搬送と、を繰り返して記録を行う。そして、k+1回目の走査からは第1の搬送量よりも短い96画素分の搬送量(第2の搬送量)の搬送に変更して記録を行う。
以下に本実施形態におけるk+1回目の走査以降におけるマルチパス記録方式について詳細に説明する。
吐出口列22に設けられたそれぞれの吐出口30は、Y方向に沿って8つの吐出口群221、222、223、224、225、226、227、228に分割される。ここで、吐出口群221〜228それぞれのY方向における長さは、吐出口列22のY方向における長さをLとした場合、L/8となる。
本実施形態で用いる吐出口列22は、図3に示したように768個の吐出口30を有している。したがって、1つの吐出口群には96(=768÷8)個の吐出口が属している。詳細には、吐出口群221にはn1〜n96の吐出口が、吐出口群222にはn97〜n192の吐出口が、吐出口群223にはn193〜n288の吐出口が、吐出口群224にはn289〜n384の吐出口が、それぞれ属している。更に、吐出口群225にはn385〜n480の吐出口が、吐出口群226にはn481〜n576の吐出口が、吐出口群227にはn577〜n672の吐出口が、吐出口群228にはn673〜n768の吐出口が、それぞれ属している。
k回目の記録走査(kパス)では、記録媒体3上の単位領域231に対して吐出口群221、222からインクが吐出される。
次に、記録媒体3を記録ヘッド7に対してY方向の上流側から下流側に吐出口群221〜228の1つのY方向における幅に対応する距離(96画素分)だけ相対的に搬送する。
この後にk+2回目の記録走査(k+2パス)を行う。k+2回目の記録走査では、記録媒体上の単位領域231に対しては吐出口群222、223からインクが吐出される。一方、単位領域232に対しては吐出口群221からインクが吐出されることとなる。ここからわかるように、単位領域231は2つの吐出口群のY方向における幅に対応する大きさ(192画素分)を有する一方で、単位領域232は1つの吐出口群のY方向における幅に対応する大きさ(96画素分)を有することとなる。
次に、記録媒体3を記録ヘッド7に対してY方向の上流側から下流側に吐出口群221〜228の1つのY方向における幅に対応する距離(96画素分)だけ相対的に搬送する。
その後、k+3回目の記録走査(k+3パス)において、記録媒体上の単位領域231に対して吐出口群223、224からインクが吐出される。また、単位領域232に対しては吐出口群222から、単位領域233には吐出口群221からそれぞれインクが吐出される。
以下、記録ヘッド7の記録走査と記録媒体3の96画素分の搬送を交互に繰り返す。
この結果、単位領域231には、k+4パス目が終了した段階でk+1パス目における吐出口群221、222からの吐出、k+2パス目における吐出口群222、223からの吐出、k+3パス目における吐出口群223、224からの吐出、k+4パス目における吐出口群224、225からの吐出と、合計で4回インクが吐出され、単位領域231に対する記録が終了する。
また、単位領域232には、k+5パス目が終了した段階でk+2パス目における吐出口群222からの吐出、k+3パス目における吐出口群223からの吐出、k+4パス目における吐出口群224からの吐出、k+5パス目における吐出口群225からの吐出と、合計で4回インクが吐出され、単位領域232に対する記録が終了する。
このように、本実施形態によれば、k+1パス目の走査までに記録が終了する単位領域、すなわち単位領域231よりもY方向下流側に位置する単位領域(不図示)に対しては比較的長い搬送量(192画素分)を伴って記録を行う。一方、単位領域232よりもY方向上流側に位置する単位領域233、234、235に対しては比較的短い搬送量(96画素分)を伴って記録を行う。
このように記録する領域に応じて搬送量を異ならせることにより、種々の効果を得ることができる。
なお、ここでは例として比較的長い搬送量での搬送を伴った記録を行った後、比較的短い搬送量での搬送を伴った記録を行う形態について記載したが、1枚の記録媒体に対する複数通りの搬送量の搬送を伴った記録を行う形態であれば本実施形態を適用することができる。例えば、一般に画像を記録する際に記録媒体上の搬送方向(Y方向)における上流側の端部領域と下流側の端部領域において記録媒体の搬送のずれが生じ易いことが知られている。このような場合、上流側の端部や下流側の端部を記録する際に搬送量を短くすることにより、搬送のずれが生じたとしても搬送量自体が短いため搬送のずれの影響を小さくすることができる。一方で、搬送のずれが生じにくい搬送方向(Y方向)の中央部に記録する際には、搬送量を長くすることにより記録に掛かる時間を短くすることが可能となる。したがって、上述のような場合には記録開始直後の記録媒体のY方向下流側端部を記録する際には搬送量を短く、その後の記録媒体のY方向中央部を記録する際には搬送量を長く、記録終了直前の記録媒体のY方向上流側端部を記録する際には再度搬送量が短くなるように制御すれば良い。このような形態においても、以下に説明する本実施形態を適用することが可能である。
(ディザパターンとマスクパターンの適用方法)
本実施形態では、第1の実施形態と同様に、それぞれY方向に128画素の大きさを有する図7、図8に示すディザパターン80とマスクパターン81〜84を用いて記録データを生成する。
図7、図8に示すように、本実施形態におけるディザパターン80とマスクパターン81〜84はそれぞれY方向に128画素の大きさを有している。
一方で、上述のように、本実施形態では第1の搬送量である192画素分の搬送と、第2の搬送量である96画素分の搬送と、を記録中に切り替えて記録を行う。
ここで、第1の搬送量(192画素)、第2の搬送量(96画素)ともにマスクパターン81〜84それぞれのY方向における長さ(128画素)の整数倍となっていない。そのため、第1の実施形態と同様に、図7、図8に示すディザパターンとマスクパターンを図11に示すマルチパス記録方式に適用することができない。
そこで、第1の実施形態と同様に、本実施形態においても図8に示したようなディザパターンとマスクパターンの同期を行って設定されたマスクパターン81〜84それぞれをY方向に複数に分割した複数のマスクパターン部分を用いる。
但し、本実施形態では搬送量として第1の搬送量(192画素)と第2の搬送量(96画素)の2通りの搬送量が存在する。そこで、本実施形態では、第1の搬送量(192画素)と第2の搬送量(96画素)の両方が複数のマスクパターン部分それぞれのY方向における長さの整数倍となるように、マスクパターン81〜84を分割する。詳細には、本実施形態ではマスクパターン部分のY方向における長さが32画素となるようにマスクパターン81〜84を分割する。第1の搬送量(192画素)は1つのマスクパターン部分のY方向における長さ(32画素)の6倍、第2の搬送量(96画素)は1つのマスクパターン部分のY方向における長さ(32画素)の3倍であるため、上記の条件を満たしていることがわかる。
図12(a)は本実施形態におけるマスクパターン部分を示す図である。また、図9(b)は本実施形態におけるディザパターン部分を模式的に示す図である。
本実施形態では、図8に示すマスクパターンA〜DそれぞれをY方向に4分割することによりマスクパターン部分を得る。
例えば、1回目の走査に対応するマスクパターンAは、Y方向下流側端部に位置し(Y方向下流側のノズルにあてがわれ)、32画素×128画素の大きさからなるマスクパターン部分A1´と、マスクパターン部分A1´に対してY方向上流側に隣接し、32画素×128画素の大きさからなるマスクパターン部分A2´と、マスクパターン部分A4´に対してY方向下流側に隣接し、32画素×128画素の大きさからなるマスクパターン部分A3´と、Y方向上流側端部に位置し、32画素×128画素の大きさからなるマスクパターン部分A4´と、に分割される。
また、2回目の走査に対応するマスクパターンBは、Y方向下流側端部に位置し、32画素×128画素の大きさからなるマスクパターン部分B1´と、マスクパターン部分B1´に対してY方向上流側に隣接し、32画素×128画素の大きさからなるマスクパターン部分B2´と、マスクパターン部分B4´に対してY方向下流側に隣接し、32画素×128画素の大きさからなるマスクパターン部分B3´と、Y方向上流側端部に位置し、32画素×128画素の大きさからなるマスクパターン部分B4´と、に分割される。
また、3回目の走査に対応するマスクパターンCは、Y方向下流側端部に位置し、32画素×128画素の大きさからなるマスクパターン部分C1´と、マスクパターン部分C1´に対してY方向上流側に隣接し、32画素×128画素の大きさからなるマスクパターン部分C2´と、マスクパターン部分C4´に対してY方向下流側に隣接し、32画素×128画素の大きさからなるマスクパターン部分C3´と、Y方向上流側端部に位置し、32画素×128画素の大きさからなるマスクパターン部分C4´と、に分割される。
また、4回目の走査に対応するマスクパターンDは、Y方向下流側端部に位置し、32画素×128画素の大きさからなるマスクパターン部分D1´と、マスクパターン部分D1´に対してY方向上流側に隣接し、32画素×128画素の大きさからなるマスクパターン部分D2´と、マスクパターン部分D4´に対してY方向下流側に隣接し、32画素×128画素の大きさからなるマスクパターン部分D3´と、Y方向上流側端部に位置し、32画素×128画素の大きさからなるマスクパターン部分D4´と、に分割される。
なお、マスクパターン部分A1´、B1´、C1´、D1´のそれぞれにおける上述の記録許容比率がいずれも25%となるように、マスクパターンA、B、C、Dが定められている。同様に、マスクパターン部分A2´、B2´、C2´、D2´それぞれにおいても記録許容比率がいずれも25%となるように、マスクパターンA、B、C、Dが定められている。マスクパターン部分A3´、B3´、C3´、D3´の組、およびマスクパターン部分A4´、B4´、C4´、D4´の組についても同様である。
ここで、マスクパターン部分A1´、B1´、C1´、D1´はディザパターンQ内のY方向下流側端部に位置するディザパターン部分Q1´と同期されて設定された領域である。したがって、量子化データのうちのディザパターン部分Q1´によって量子化された量子化データに対しては、マスクパターン部分A1´、B1´、C1´、D1´を用いて分配処理を行うことによりインクの吐出が定められた画素が高分散な配置となるような記録データを生成することができる。
また、マスクパターン部分A2´、B2´、C2´、D2´はディザパターンQ内のディザパターン部分Q1´に対してY方向上流側に隣接するディザパターン部分Q2´と同期をとるように設定された領域である。したがって、量子化データのうちのディザパターン部分Q2´によって量子化された量子化データに対しては、マスクパターン部分A2´、B2´、C2´、D2´を用いて分配処理を行うことによりインクの吐出が定められた画素が高分散な配置となるような記録データを生成することができる。
また、マスクパターン部分A3´、B3´、C3´、D3´はディザパターンQ内のディザパターン部分Q4´に対してY方向下流側に隣接するディザパターン部分Q3´と同期されて設定された領域である。したがって、量子化データのうちのディザパターン部分Q3´によって量子化された量子化データに対しては、マスクパターン部分A3´、B3´、C3´、D3´を用いて分配処理を行うことによりインクの吐出が定められた画素が高分散となるような記録データを生成することができる。
また、マスクパターン部分A4´、B4´、C4´、D4´はディザパターンQ内のY方向上流側端部に位置するディザパターン部分Q4´と同期されて設定された領域である。したがって、量子化データのうちのディザパターン部分Q4´によって量子化された量子化データに対しては、マスクパターン部分A4´、B4´、C4´、D4´を用いて分配処理を行うことによりインクの吐出が定められた画素が高分散となるような記録データを生成することができる。
本実施形態では、図11に示すマルチパス記録方式において、図7に示すディザパターン、図8に示すマスクパターン、図12に示すマスクパターン部分を用いて生成された記録データにしたがって記録を行う。
図13は本実施形態における記録データの生成過程を示す模式図である。なお、以下の説明では簡単のため、X方向上流側から1画素目〜128画素目に位置する多値データのみについて記載する。
本実施形態における量子化処理S403では、Y方向下流側(画像の上側)およびX方向上流側(画像の左側)から図7に示すディザパターンを順次繰り返して適用することにより量子化を行う。例えば、図13に模式的に示すように、多値データのY方向下流側からj+1画素目〜j+128画素目、X方向上流側からj+1画素目〜j+128画素目の領域に対して1つのディザパターンQを用いて量子化される。また、Y方向下流側からj+129画素目〜j+256画素目、X方向上流側からj+1画素目〜j+128画素目の領域に対して1つのディザパターンQを用いて量子化される。また、Y方向下流側からj+257画素目〜j+384画素目、X方向上流側からj+1画素目〜j+128画素目の領域に対して1つのディザパターンQを用いて量子化される。
このように、本実施形態では単位領域の大きさに関わらず順次ディザパターンQを使用して量子化を行う。したがって、1つのディザパターンQを用いて量子化が行われた領域が2つの単位領域内にまたがって形成される場合がある。例えば、Y方向下流側からj+129画素目〜j+192画素目の領域と、j+193画素目〜j+256画素目の領域と、は同じディザパターンQを用いて量子化が行われた領域であるにも関わらず、互いに異なる単位領域231、232に属している。また、Y方向下流側からj+257画素目〜j+288画素目の領域と、j+289画素目〜j+384画素目の領域と、もまた、同じディザパターンQを用いて量子化が行われた領域であるにも関わらず、互いに異なる単位領域232、233に属している。
次に、分配処理S404では、ディザパターンQ内のすべての領域を用いて量子化された量子化データに対してはマスクパターンA、B、C、Dのいずれかを用いて各走査への分配を行う。一方、ディザパターンQ内の一部の領域(ディザパターン部分Q1´、Q2´、Q3´、Q4´)を用い、他部の領域を用いずに量子化された量子化データに対しては、当該一部の領域に対応するマスクパターン部分A1´、A2´、A3´、A4´、B1´、B2´、B3´、B4´、C1´、C2´、C3´、C4´、D1´、D2´、D3´、D4´のいずれかを用いて各走査への分配を行う。
例えば、量子化データにおいてY方向下流側から1画素目〜192画素目の領域は記録媒体上の1つの単位領域211に記録される画像に対応する。なお、図11からわかるように、単位領域231は、k+1パス目(単位領域231に対する1回目の走査)にてn1〜n96からなる吐出口群221およびn97〜n192からなる吐出口群222に、k+2パス目(単位領域231に対する2回目の走査)にてn97〜n192からなる吐出口群222およびn193〜n288からなる吐出口群223に、k+3パス目(単位領域231に対する3回目の走査)にてn193〜n288からなる吐出口群223およびn289〜n384からなる吐出口群224に、k+4パス目(単位領域231に対する4回目の走査)にてn289〜n384からなる吐出口群224およびn385〜n480からなる吐出口群225によって記録が行われる領域である。
ここで、量子化データのY方向下流側からj+1画素目〜j+192画素目に対応する領域のうち、Y方向下流側からj+1画素目〜j+128画素目の領域はディザパターンQのすべての領域を用いて量子化が実行された領域である。
したがって、量子化データのうちのY方向下流側からj+1画素目〜j+128画素目の領域に対しては、図8に示すマスクパターンA、B、C、Dを用いて分配処理が実行される。
一方、量子化データのY方向下流側からj+1画素目〜j+192画素目に対応する領域のうちのY方向下流側からj+129画素目〜j+192画素目の領域は、ディザパターンQの一部の領域を使用し、且つ、他部の領域は用いずに量子化が行われた領域である。
詳細には、図13に模式的に示すように、量子化データのY方向下流側からj+129画素目〜j+160画素目の領域は図12(b)に模式的に示すディザパターン部分Q1´によって行われた領域である。したがって、量子化データのY方向下流側からj+129画素目〜j+160画素目の領域に対しては、ディザパターン部分Q1´に対応する図12(a)に示すマスクパターン部分A1´、B1´、C1´、D1´を用いて分配処理が実行される。
また、量子化データのY方向下流側からj+161画素目〜j+192画素目の領域は図12(b)に模式的に示すディザパターン部分Q2´によって行われた領域である。したがって、量子化データのY方向下流側からj+161画素目〜j+192画素目の領域に対しては、ディザパターン部分Q2´に対応する図12(a)に示すマスクパターン部分A2´、B2´、C2´、D2´を用いて分配処理が実行される。
次に、量子化データのY方向下流側からj+193画素目〜j+288画素目の領域は、記録媒体上の1つの単位領域232に記録される画像に対応する。なお、図11からわかるように、単位領域232はk+2パス目(単位領域232に対する1回目の走査)にてn1〜n96からなる吐出口群221に、k+3パス目(単位領域232に対する2回目の走査)にてn97〜n192からなる吐出口群222に、k+4パス目(単位領域232に対する3回目の走査)にてn193〜n288からなる吐出口群223に、k+5パス目(単位領域232に対する4回目の走査)にてn289〜n384からなる吐出口群224によって記録が行われる領域である。
ここで、量子化データのY方向下流側からj+193画素目〜j+288画素目の領域の中に1つのディザパターンQのすべての領域を用いて量子化された領域は存在しない。
詳細には、量子化データのY方向下流側からj+193画素目〜j+288画素目の領域のうち、j+193〜j+224画素目の領域は、図12(b)に模式的に示すディザパターン部分Q3´によって量子化が行われた領域である。
したがって、量子化データのY方向下流側からj+193画素目〜j+224画素目の領域に対しては、ディザパターン部分Q3´に対応する図12(a)に示すマスクパターン部分A3´、B3´、C3´、D3´を用いて分配処理が実行される。
また、j+225〜j+256画素目の領域は、図12(b)に模式的に示すディザパターン部分Q4´によって量子化が行われた領域である。
したがって、量子化データのY方向下流側からj+225画素目〜j+256画素目の領域に対しては、ディザパターン部分Q4´に対応する図12(a)に示すマスクパターン部分A4´、B4´、C4´、D4´を用いて分配処理が実行される。
また、j+257〜j+288画素目の領域は、図12(b)に模式的に示すディザパターン部分Q1´によって量子化が行われた領域である。
したがって、量子化データのY方向下流側からj+257画素目〜j+288画素目の領域に対しては、ディザパターン部分Q1´に対応する図12(a)に示すマスクパターン部分A1´、B1´、C1´、D1´を用いて分配処理が実行される。
以下、同様にして各単位領域に対する分配処理を実行する。すなわち、ディザパターンQ内のすべての領域を用いて量子化された量子化データに対してはマスクパターンA、B、C、Dの組を用いて各走査への分配を行う。
一方、ディザパターンQ内の一部の領域であるディザパターン部分Q1´を用い、他部の領域であるディザパターン部分Q2´、Q3´、Q4´を用いずに量子化された量子化データに対しては、ディザパターン部分Q1´に対応するマスクパターン部分A1´、B1´、C1´、D1´の組を用いて各走査への分配を行う。また、ディザパターンQ内の一部の領域であるディザパターン部分Q2´を用い、他部の領域であるディザパターン部分Q1´、Q3´、Q4´を用いずに量子化された量子化データに対しては、ディザパターン部分Q2´に対応するマスクパターン部分A2´、B2´、C2´、D2´の組を用いて各走査への分配を行う。また、ディザパターンQ内の一部の領域であるディザパターン部分Q3´を用い、他部の領域であるディザパターン部分Q1´、Q2´、Q4´を用いずに量子化された量子化データに対しては、ディザパターン部分Q3´に対応するマスクパターン部分A3´、B3´、C3´、D3´の組を用いて各走査への分配を行う。また、ディザパターンQ内の一部の領域であるディザパターン部分Q4´を用い、他部の領域であるディザパターン部分Q1´、Q2´、Q3´を用いずに量子化された量子化データに対しては、ディザパターン部分Q4´に対応するマスクパターン部分A4´、B4´、C4´、D4´の組を用いて各走査への分配を行う。
以上の構成によれば、複数通りの搬送量を介在させて記録を行う場合であっても、ディザパターン設定時の自由度を低下させず、且つ、分散性の高い記録データを生成することが可能となる。
なお、本実施形態では長い搬送量で記録を行う領域、短い搬送量で記録を行う領域の順に記録を行う形態について記載したが、短い搬送量で記録を行う領域、長い搬送量で記録を行う領域の順に記録を行う形態であっても本実施形態を適用できることは言うまでもない。
(第3の実施形態)
第1、第2の実施形態では記録許容比率が互いにほぼ等しいマスクパターンA〜Dを用いる場合について記載した。
これに対し、本実施形態では、記録許容比率が互いに異なるマスクパターンの組を複数有し、対応する吐出口群の位置に応じて適用するマスクパターンの組を異ならせる形態について記載する。
なお、上述した第1、第2の実施形態と同様の部分については説明を省略する。
(マスクパターン)
本実施形態では、単位領域に対する1、2、3、4回目の走査に対応するマスクパターンA1、B1、C1、D1から構成される第1のマスクパターン群、単位領域に対する1、2、3、4回目の走査に対応するマスクパターンA2、B2、C2、D2から構成される第2のマスクパターン群、単位領域に対する1、2、3、4回目の走査に対応するマスクパターンA3、B3、C3、D3から構成される第3のマスクパターン群の3つのマスクパターン群を用いる。なお、それぞれのマスクパターンA1〜D1、A2〜D2、A3〜D3は第1、第2の実施形態におけるマスクパターンと同様に128画素×128画素の大きさを有する。
ここで、第1のマスクパターン群に属するマスクパターンA1の記録許容比率は5%に、マスクパターンB1の記録許容比率は30%に、マスクパターンC1の記録許容比率は40%に、マスクパターンD1の記録許容比率は25%に、それぞれ定められている。したがって、マスクパターンA1〜D1の記録許容比率の合計は100%となる。
また、第2のマスクパターン群に属するマスクパターンA2の記録許容比率は15%に、マスクパターンB2の記録許容比率は35%に、マスクパターンC2の記録許容比率は35%に、マスクパターンD1の記録許容比率は15%に、それぞれ定められている。したがって、マスクパターンA2〜D2の記録許容比率の合計は100%となる。
ここで、第3のマスクパターン群に属するマスクパターンA3の記録許容比率は25%に、マスクパターンB3の記録許容比率は40%に、マスクパターンC3の記録許容比率は30%に、マスクパターンD3の記録許容比率は5%に、それぞれ定められている。したがって、マスクパターンA3〜D3の記録許容比率の合計は100%となる。
また、本実施形態で用いるディザパターン80と、マスクパターンA1〜D1、A2〜D2、A3〜D3のそれぞれと、は、量子化データの階調が25%、50%、75%、100%のそれぞれである場合において互いに対応付けて定められている。
(ディザパターンとマスクパターンの適用方法)
本実施形態では、第1の実施形態と同様に、図5に示すマルチパス記録方式にしたがって記録を行う。その上で、本実施形態では図7に示すディザパターンと上述した第1、第2、第3のマスクパターン群を用いて記録データを生成する。
図7に示すように、本実施形態におけるディザパターン80はY方向に128画素の大きさを有している。また、上述のように、マスクパターンA1〜D1、A2〜D2、A3〜D3のそれぞれもY方向に128画素の大きさを有している。
一方で、図5に示すように、本実施形態におけるマルチパス記録方式では1回当たりの搬送量が192画素に相当する長さとなるように搬送する。したがって、第1の実施形態と同様に、搬送量(192画素)はマスクパターンA1〜D1、A2〜D2、A3〜D3それぞれのY方向における長さ(128画素)の整数倍となっていない。
そこで、本実施形態においても、搬送量が複数のマスクパターン部分それぞれのY方向における長さの整数倍となるように、マスクパターンA1〜D1、A2〜D2、A3〜D3を分割する。ここでは搬送量が192画素であるため、例として複数のマスクパターン部分それぞれのY方向における長さが64(=192/3)画素となるようにマスクパターンA1〜D1、A2〜D2、A3〜D3を分割する。
図14(a)は本実施形態における第1のマスクパターン群に属するマスクパターンA1〜D1を分割することにより得られるマスクパターン部分を模式的に示す図である。また、図14(b)は本実施形態における第2のマスクパターン群に属するマスクパターンA2〜D2を分割することにより得られるマスクパターン部分を模式的に示す図である。また、図14(c)は本実施形態における第3のマスクパターン群に属するマスクパターンA3〜D3を分割することにより得られるマスクパターン部分を模式的に示す図である。
本実施形態では図14に示すように、マスクパターンA1〜D1、A2〜D2、A3〜D3それぞれをY方向に2分割することによりマスクパターン部分を得る。
例えば、第1のマスクパターン群に属し、1回目の走査に対応するマスクパターンA1は、Y方向下流側に位置し(Y方向下流側の画像に対応し)、64画素×128画素の大きさからなるマスクパターン部分A1_1と、Y方向上流側に位置し、64画素×128画素の大きさからなるマスクパターン部分A1_2とに分割される。ここで、マスクパターンA1は、マスクパターン部分A1_1、A1_2それぞれの記録許容比率が5%となるように定められている。
また、第1のマスクパターン群に属し、2回目の走査に対応するマスクパターンB1は、Y方向下流側に位置し、64画素×128画素の大きさからなるマスクパターン部分B1_1と、Y方向上流側に位置し、64画素×128画素の大きさからなるマスクパターン部分B1_2とに分割される。ここで、マスクパターンB1は、マスクパターン部分B1_1、B1_2それぞれの記録許容比率が30%となるように定められている。
また、第1のマスクパターン群に属し、3回目の走査に対応するマスクパターンC1は、Y方向下流側に位置し、64画素×128画素の大きさからなるマスクパターン部分C1_1と、Y方向上流側に位置し、64画素×128画素の大きさからなるマスクパターン部分C1_2とに分割される。ここで、マスクパターンC1は、マスクパターン部分C1_1、C1_2それぞれの記録許容比率が40%となるように定められている。
また、第1のマスクパターン群に属し、4回目の走査に対応するマスクパターンD1は、Y方向下流側に位置し、64画素×128画素の大きさからなるマスクパターン部分D1_1と、Y方向上流側に位置し、64画素×128画素の大きさからなるマスクパターン部分D1_2とに分割される。ここで、マスクパターンD1は、マスクパターン部分D1_1、D1_2それぞれの記録許容比率が25%となるように定められている。
また、第2のマスクパターン群に属し、1回目の走査に対応するマスクパターンA2は、Y方向下流側に位置し、64画素×128画素の大きさからなるマスクパターン部分A2_1と、Y方向上流側に位置し、64画素×128画素の大きさからなるマスクパターン部分A2_2とに分割される。ここで、マスクパターンA2は、マスクパターン部分A2_1、A2_2それぞれの記録許容比率が15%となるように定められている。
また、第2のマスクパターン群に属し、2回目の走査に対応するマスクパターンB2は、Y方向下流側に位置し、64画素×128画素の大きさからなるマスクパターン部分B2_1と、Y方向上流側に位置し、64画素×128画素の大きさからなるマスクパターン部分B2_2とに分割される。ここで、マスクパターンB2は、マスクパターン部分B2_1、B2_2それぞれの記録許容比率が35%となるように定められている。
また、第2のマスクパターン群に属し、3回目の走査に対応するマスクパターンC2は、Y方向下流側に位置し、64画素×128画素の大きさからなるマスクパターン部分C2_1と、Y方向上流側に位置し、64画素×128画素の大きさからなるマスクパターン部分C2_2とに分割される。ここで、マスクパターンC2は、マスクパターン部分C2_1、C2_2それぞれの記録許容比率が35%となるように定められている。
また、第2のマスクパターン群に属し、4回目の走査に対応するマスクパターンD2は、Y方向下流側に位置し、64画素×128画素の大きさからなるマスクパターン部分D2_1と、Y方向上流側に位置し、64画素×128画素の大きさからなるマスクパターン部分D2_2とに分割される。ここで、マスクパターンD2は、マスクパターン部分D2_1、D2_2それぞれの記録許容比率が15%となるように定められている。
また、第3のマスクパターン群に属し、1回目の走査に対応するマスクパターンA3は、Y方向下流側に位置し、64画素×128画素の大きさからなるマスクパターン部分A3_1と、Y方向上流側に位置し、64画素×128画素の大きさからなるマスクパターン部分A3_2とに分割される。ここで、マスクパターンA3は、マスクパターン部分A3_1、A3_2それぞれの記録許容比率が25%となるように定められている。
また、第3のマスクパターン群に属し、2回目の走査に対応するマスクパターンB3は、Y方向下流側に位置し、64画素×128画素の大きさからなるマスクパターン部分B3_1と、Y方向上流側に位置し、64画素×128画素の大きさからなるマスクパターン部分B3_2とに分割される。ここで、マスクパターンB3は、マスクパターン部分B3_1、B3_2それぞれの記録許容比率が40%となるように定められている。
また、第3のマスクパターン群に属し、3回目の走査に対応するマスクパターンC3は、Y方向下流側に位置し、64画素×128画素の大きさからなるマスクパターン部分C3_1と、Y方向上流側に位置し、64画素×128画素の大きさからなるマスクパターン部分C3_2とに分割される。ここで、マスクパターンC3は、マスクパターン部分C3_1、C3_2それぞれの記録許容比率が30%となるように定められている。
また、第3のマスクパターン群に属し、4回目の走査に対応するマスクパターンD3は、Y方向下流側に位置し、64画素×128画素の大きさからなるマスクパターン部分D3_1と、Y方向上流側に位置し、64画素×128画素の大きさからなるマスクパターン部分D3_2とに分割される。ここで、マスクパターンD3は、マスクパターン部分D3_1、D3_2それぞれの記録許容比率が5%となるように定められている。
ここで、マスクパターン部分A1_1、B1_1、C1_1、D1_1、A2_1、B2_1、C2_1、D2_1、A3_1、B3_1、C3_1、D3_1はディザパターンQ内のY方向下流側に位置するディザパターン部分Q1と同期されて設定された領域である。したがって、量子化データのうちのディザパターン部分Q1によって量子化された量子化データに対しては、マスクパターン部分A1_1、B1_1、C1_1、D1_1、A2_1、B2_1、C2_1、D2_1、A3_1、B3_1、C3_1、D3_1を用いて分配処理を行うことによりインクの吐出が定められた画素が高分散となるような記録データを生成することができる。
一方、マスクパターン部分A1_2、B1_2、C1_2、D1_2、A2_2、B2_2、C2_2、D2_2、A3_2、B3_2、C3_2、D3_2はディザパターンQ内のY方向上流側に位置するディザパターン部分Q2と同期されて設定された領域である。したがって、量子化データのうちのディザパターン部分Q2によって量子化された量子化データに対しては、マスクパターン部分A1_2、B1_2、C1_2、D1_2、A2_2、B2_2、C2_2、D2_2、A3_2、B3_2、C3_2、D3_2を用いて分配処理を行うことによりインクの吐出が定められた画素が高分散となるような記録データを生成することができる。
本実施形態では、図5に示すマルチパス記録方式において、図7に示すディザパターン、図14に示すマスクパターンおよびマスクパターン部分を用いて生成された記録データにしたがって記録を行う。
図15は本実施形態における記録データの生成過程を示す模式図である。なお、以下の説明では簡単のため、X方向上流側から1画素目〜128画素目に位置する多値データのみについて記載する。
本実施形態における量子化処理は、第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
本実施形態における分配処理S404では、図5に示す吐出口群のそれぞれをY方向に沿って更に3分割し、各吐出口群におけるY方向上流側端部の領域には第1のマスクパターン群を、Y方向中央部の領域には第2のマスクパターン群を、Y方向下流側端部の領域には第3のマスクパターン群をそれぞれ適用する。
例えば、n1〜n192からなる吐出口群201は、n1〜n64の吐出口からなるY方向上流側端部の領域と、n65〜n128の吐出口からなるY方向中央部の領域と、n129〜n192の吐出口からなるY方向下流側端部の領域と、の3つの領域に分割される。そして、n1〜n64の吐出口に対応する量子化データを分配する場合には第1のマスクパターン群に属するマスクパターンA1〜D1およびマスクパターン部分A1_2、B1_2、C1_2、D1_2、A1_2、B1_2、C1_2、D1_2を適用して分配処理を行う。また、n65〜n128の吐出口に対応する量子化データを分配する場合には第2のマスクパターン群に属するマスクパターンA2〜D2およびマスクパターン部分A2_2、B2_2、C2_2、D2_2、A2_2、B2_2、C2_2、D2_2を適用して分配処理を行う。n129〜n192の吐出口に対応する量子化データを分配する場合には第3のマスクパターン群に属するマスクパターンA3〜D3およびマスクパターン部分A3_2、B3_2、C3_2、D3_2、A3_2、B3_2、C3_2、D3_2を適用して分配処理を行う。
同様にして、n193〜n256の吐出口、n385〜n448の吐出口、n577〜n640の吐出口に対応する量子化データを分配する場合には第1のマスクパターン群に属するマスクパターンA1〜D1およびマスクパターン部分A1_2、B1_2、C1_2、D1_2、A1_2、B1_2、C1_2、D1_2を適用して分配処理を行う。また、n257〜n320の吐出口、n449〜n512の吐出口、n641〜n704の吐出口に対応する量子化データを分配する場合には第2のマスクパターン群に属するマスクパターンA2〜D2およびマスクパターン部分A2_2、B2_2、C2_2、D2_2、A2_2、B2_2、C2_2、D2_2を適用して分配処理を行う。そして、n321〜n384の吐出口、n513〜576の吐出口、n705〜n768の吐出口に対応する量子化データを分配する場合には第3のマスクパターン群に属するマスクパターンA3〜D3およびマスクパターン部分A3_2、B3_2、C3_2、D3_2、A3_2、B3_2、C3_2、D3_2を適用して分配処理を行う。
その上で、本実施形態における分配処理S404では、ディザパターンQ内の一部の領域(ディザパターン部分Q1、Q2)を用い、他部の領域を用いずに量子化された量子化データに対し、対応するマスクパターン群に属し、且つ、当該一部の領域に対応するマスクパターン部分A1_1、B1_1、C1_1、D1_1、A2_1、B2_1、C2_1、D2_1、A3_1、B3_1、C3_1、D3_1、A1_2、B1_2、C1_2、D1_2、A2_2、B2_2、C2_2、D2_2、A3_2、B3_2、C3_2、D3_2のいずれかを用いて各走査への分配を行う。
例えば、量子化データのY方向下流側から1画素目〜192画素目の領域は記録媒体上の1つの単位領域211に記録される画像に対応する。なお、図5からわかるように、単位領域211は1パス目(単位領域211に対する1回目の走査)にてn1〜n192からなる吐出口群201に、2パス目(単位領域211に対する2回目の走査)にてn193〜n384からなる吐出口群202に、3パス目(単位領域211に対する3回目の走査)にてn385〜n576からなる吐出口群203に、4パス目(単位領域211に対する4回目の走査)にてn577〜n768からなる吐出口群204によって記録が行われる領域である。
ここで、量子化データのY方向下流側から1画素目〜192画素目に対応する領域のうち、Y方向下流側から129画素目〜192画素目の領域は、1つの吐出口群内のY方向上流側端部の領域であるn1〜n64、n193〜n256の吐出口、n385〜n448の吐出口、n577〜n640の吐出口に対応する領域である。更に、量子化データのY方向下流側から129画素目〜192画素目の領域は、ディザパターン部分Q1によって量子化が行われた領域である。
したがって、量子化データのY方向下流側から129画素目〜192画素目の領域に対しては、第1のマスクパターン群に属し、且つ、ディザパターン部分Q1に対応する図14(a)に示すマスクパターン部分A1_1、B1_1、C1_1、D1_1を用いて分配処理が実行される。
次に、量子化データのY方向下流側から1画素目〜192画素目に対応する領域のうち、Y方向下流側から65画素目〜128画素目の領域は、1つの吐出口群内のY方向中央部の領域であるn65〜n128、n257〜n320の吐出口、n449〜n512の吐出口、n641〜n704の吐出口に対応する領域である。更に、量子化データのY方向下流側から65画素目〜128画素目の領域は、ディザパターン部分Q2によって量子化が行われた領域である。
したがって、量子化データのY方向下流側から65画素目〜128画素目の領域に対しては、第2のマスクパターン群に属し、且つ、ディザパターン部分Q2に対応する図14(b)に示すマスクパターン部分A2_2、B2_2、C2_2、D2_2を用いて分配処理が実行される。
次に、量子化データのY方向下流側から1画素目〜192画素目に対応する領域のうち、Y方向下流側から1画素目〜64画素目の領域は、1つの吐出口群内のY方向下流側端部の領域であるn129〜n192、n321〜n384の吐出口、n513〜576の吐出口、n705〜n768の吐出口に対応する領域である。更に、量子化データのY方向下流側から1画素目〜64画素目の領域は、ディザパターン部分Q1によって量子化が行われた領域である。
したがって、量子化データのY方向下流側から1画素目〜64画素目の領域に対しては、第3のマスクパターン群に属し、且つ、ディザパターン部分Q1に対応する図14(c)に示すマスクパターン部分A3_1、B3_1、C3_1、D3_1を用いて分配処理が実行される。
また、例えば、量子化データのY方向下流側から193画素目〜384画素目の領域は記録媒体上の1つの単位領域212に記録される画像に対応する。なお、図5からわかるように、単位領域212は2パス目(単位領域212に対する1回目(最初)の走査)にてn1〜n192からなる吐出口群201に、3パス目(単位領域212に対する2回目の走査)にてn193〜n384からなる吐出口群202に、4パス目(単位領域212に対する3回目の走査)にてn385〜n576からなる吐出口群203に、5パス目(単位領域212に対する4回目(最後)の走査)にてn577〜n768からなる吐出口群204によって記録が行われる領域である。
ここで、量子化データのY方向下流側から193画素目〜384画素目に対応する領域のうち、Y方向下流側から321画素目〜384画素目の領域は、1つの吐出口群内のY方向上流側端部の領域であるn1〜n64、n193〜n256の吐出口、n385〜n448の吐出口、n577〜n640の吐出口に対応する領域である。更に、量子化データのY方向下流側から321画素目〜384画素目の領域は、ディザパターン部分Q2によって量子化が行われた領域である。
したがって、量子化データのY方向下流側から321画素目〜384画素目の領域に対しては、第1のマスクパターン群に属し、且つ、ディザパターン部分Q2に対応する図14(a)に示すマスクパターン部分A1_2、B1_2、C1_2、D1_2を用いて分配処理が実行される。
次に、量子化データのY方向下流側から193画素目〜384画素目に対応する領域のうち、Y方向下流側から257画素目〜320画素目の領域は、1つの吐出口群内のY方向中央部の領域であるn65〜n128、n257〜n320の吐出口、n449〜n512の吐出口、n641〜n704の吐出口に対応する領域である。更に、量子化データのY方向下流側から257画素目〜320画素目の領域は、ディザパターン部分Q1によって量子化が行われた領域である。
したがって、量子化データのY方向下流側から257画素目〜320画素目の領域に対しては、第2のマスクパターン群に属し、且つ、ディザパターン部分Q1に対応する図14(b)に示すマスクパターン部分A2_1、B2_1、C2_1、D2_1を用いて分配処理が実行される。
次に、量子化データのY方向下流側から193画素目〜384画素目に対応する領域のうち、Y方向下流側から193画素目〜256画素目の領域は、1つの吐出口群内のY方向下流側端部の領域であるn129〜n192、n321〜n384の吐出口、n513〜576の吐出口、n705〜n768の吐出口に対応する領域である。更に、量子化データのY方向下流側から193画素目〜256画素目の領域は、ディザパターン部分Q2によって量子化が行われた領域である。
したがって、量子化データのY方向下流側から193画素目〜256画素目の領域に対しては、第3のマスクパターン群に属し、且つ、ディザパターン部分Q2に対応する図14(c)に示すマスクパターン部分A3_2、B3_2、C3_2、D3_2を用いて分配処理が実行される。
以下、同様にして各単位領域に対する分配処理を実行する。
ここで、本実施形態によれば、4パス目以降の記録において吐出口列の端部に近い位置ほど記録許容比率を低く定めたマスクパターン部分を用いて記録データを生成することが可能となる。これにより、端部からのインクの吐出量が中央部のインクの吐出量よりも低くなり易くなるため、一般に知られている吐出口列の端部から吐出されたインクの着弾ずれ等を抑制した記録を行うことが可能となる。
図16は本実施形態における4パス目以降の記録における各吐出口群の各領域に対応するマスクパターン部分の記録許容比率を模式的に示す図である。
図16からわかるように。吐出口列のn1からn768に向かって、64個の吐出口幅毎に間引きパターンによる記録量が5%のA1、15%のA2、25%のA3、30%のB1、35%のB2、40%のB3、40%のC1、35%のC2、30%のC3、25%のD1、15%のD2、5%のD3となっており、吐出口の中央部から両端部に向かって記録許容比率が低くなっていることがわかる。
以上の構成によれば、ディザパターンの設定の際の自由度を低下させず、且つ、分散性が高い記録データを生成することが可能となる。更に、吐出口列の端部における記録許容比率を低くすることができるため、端部からの吐出におけるインクの着弾ずれ等を抑制することができる。
(第4の実施形態)
第1から第3の実施形態では、量子化処理にて多値データを1ビット2値の情報で表される2値データに変換し、分配処理にて2値データを複数回の走査に分配することにより、2値の記録データを生成する形態について記載した。
これに対し、本実施形態では、量子化データをn(n≧2)ビットM(M≧3)値の情報で表されるM値データに変換し、分配処理にてM値データを複数回の走査に分配することにより、2値の記録データを生成する形態について記載する。
なお、上述した第1から第3の実施形態と同様の部分については説明を省略する。
本実施形態では、図6に示す量子化処理S403および分配処理S404を第1から第3の実施形態と異ならせる。
なお、ここではnビットM値データの一例として、量子化処理により2ビット4値の情報(「00」、「01」、「10」、「11」)により表される量子化データを生成する。ここで、量子化データの2ビット4値の情報は、画素に対するインクの吐出回数を定めている。詳細には、量子化データの2ビット4値の情報が「00」である場合、画素に対してインクを1回も吐出しない。また、量子化データの2ビット4値の情報が「01」である場合、画素に対してインクを1回吐出する。また、量子化データの2ビット4値の情報が「10」である場合、画素に対してインクを2回吐出する。また、量子化データの2ビット4値の情報が「11」である場合、画素に対してインクを3回吐出する。
なお、以降の説明では簡単のため、インクの吐出回数を示す2ビット4値の情報(「00」、「01」、「10」、「11」)を画素値とも称する。
(量子化処理)
図17は本実施形態における制御プログラムにしたがって量子化処理S403における量子化データ生成のフローチャートである。
本実施形態において量子化処理S403が開始されると、まずステップS501にて、各画素における多値データが示す階調値Inを予め定められた所定閾値Thで除算し、その商Inと余りIn´が算出される。
ここで、量子化処理にてM値の量子化データを生成し、且つ、多値データが表現可能な階調値がL段階である場合、所定閾値Thは下記の(式1)で算出される値であることが好ましい。
(式1)
Th=(L−1)/(M−1)
上述のように本実施形態ではM=4である。また、多値データは0〜255の256段階の階調値を表現可能であるため、L=256である。したがって、本実施形態では所定閾値Th=85(=(256−1)/(4−1))に設定する。
なお、上述の所定閾値Thの算出方法は一例であり、適宜異なる方法を用いて設定しても良い。
図18は多値データの階調値Inが0〜255のそれぞれである場合において取得される商Nと余りIn´を示す表である。
図18に示すように、多値データの階調値Inが0〜84のそれぞれの値の場合、階調値Inを所定閾値Th=85で割った商Nは0、余りIn´はそれぞれ0〜84となる。また、多値データの階調値Inが85〜169のそれぞれの値の場合、階調値Inを所定閾値Th=85で割った商Nは1、余りIn´はそれぞれ0〜84となる。また、多値データの階調値Inが170〜254のそれぞれの値の場合、階調値Inを所定閾値Th=85で割った商Nは2、余りIn´はそれぞれ0〜84となる。また、多値データの階調値Inが255の場合、階調値Inを所定閾値Th=85で割った商は3、余りは0となる。
次に、ステップS502にてディザパターンを参照し、ステップS501において取得された余りIn´とディザパターン内の各画素において定められた閾値Dthとの比較が行われる。
図19(a)は本実施における量子化処理で用いるディザパターン90を示す模式図である。また、図19(b)は図19(a)に示すディザパターンのうちの一部の領域90aの拡大図である。なお、本実施形態ではディザパターンとして複数の画素領域それぞれに対するインクの吐出回数を決定するための閾値が定められたディザパターンを用いる。
図19(a)に示すように、本実施形態で用いるディザパターン90は、X方向に128画素、Y方向に128画素の大きさを有している。これらの128×128個の画素それぞれに対し、図19(b)の拡大図に示すように、1〜84までの84個のいずれかの値がその画素における閾値として定められている。
本実施形態におけるステップS403における量子化処理では、ある画素における多値データが示す階調値Inに基づいて取得された余りIn´と、対応する画素におけるディザパターン90が示す閾値と、を比較し、余りIn´が閾値以上である場合にはステップS503に進む。そして、ステップS503おいてステップS502にて取得された商Nに対して1を加え、その値を量子化データの階調値N´(=N+1)とする。
一方、余りIn´が閾値未満である場合にはステップS504に進み、ステップS502にて取得された商Nを量子化データの階調値N´(=N)とする。
ここで、図18からわかるように、多値データの階調値が0〜84のいずれかである場合、商Nは0であり、余りIn´は0〜84のいずれかになる。したがって、対応する画素に対して定められた閾値に応じて量子化データの階調値N´は1または0となる。余りIn´が大きいほど閾値以上となる画素が多くなるため、階調値N´として1が定められる画素の数が多くなる。
また、多値データの階調値が85〜169のいずれかである場合、商Nは1であり、余りIn´は0〜84のいずれかになる。したがって、対応する画素に対して定められた閾値に応じて量子化データの階調値N´は2または1となる。余りIn´が大きいほど閾値以上となる画素が多くなるため、階調値N´として2が定められる画素の数が多くなる。
また、多値データの階調値が170〜254のいずれかである場合、商Nは2であり、余りIn´は0〜84のいずれかになる。したがって、対応する画素に対して定められた閾値に応じて量子化データの階調値N´は2または3となる。余りIn´が大きいほど閾値以上となる画素が多くなるため、階調値N´として3が定められる画素の数が多くなる。
また、多値データの階調値が255の場合、商Nは3であり、余りIn´は0であるため、量子化データの階調値は対応する画素に対して定められた閾値にかかわらず3となる。
このように、多値データの階調値が大きくなるほど、階調値N´として大きな値が定められる画素の数が多くなることがわかる。
そして、ステップS505にて階調値N´をn(n≧2)ビットの情報へと変換する。本実施形態では、上述のようにn=2であるため、階調値N´を「00」、「01」、「10」、「11」のいずれかの画素値に変換する。詳細には、ある画素において階調値N´=0である場合、当該画素に対するインクの吐出回数が0回であることを示す「00」の情報に変換する。また、ある画素において階調値N´=1である場合、当該画素に対するインクの吐出回数が1回であることを示す「01」の情報に変換する。また、ある画素において階調値N´=2である場合、当該画素に対するインクの吐出回数が2回であることを示す「10」の情報に変換する。また、ある画素において階調値N´=3である場合、当該画素に対するインクの吐出回数が3回であることを示す「11」の情報に変換する。
図20は図19に示すディザパターン90内の領域90aに対し、互いに異なる階調値を有する多値データが入力された場合に生成される量子化データを模式的に示す図である。
ここで、図20(a)は図19(b)に示すディザパターンと同様であり、ディザパターン内の一部の領域90aを示している。また、図20(b)は一部の領域90aに対して各画素の階調値が128である多値データが入力された際に生成される量子化データ90a−128を示している。また、図20(c)は一部の領域90aに対して階調値が129である多値データが一様に入力された際に生成される量子化データ90a−129を示している。また、図20(d)は一部の領域90aに対して階調値が130である多値データが入力された際に生成される量子化データ90a−130を示している。
図20(a)に示すディザパターン内の一部の領域90aに対して階調値Inが128である多値データが一様に入力された場合、ステップS501にて商N=1、余りIn´=43が取得される。したがって、ステップS502〜S504にてディザパターン90内の一部の領域90aのうちの43以上の閾値Dthが定められた画素においては階調値N´=2、42以下の閾値Dthが定められた画素においては階調値N´=1が決定される。そして、ステップS505にて階調値N´=2と決定された画素には「10」の画素値を、階調値N´=1と決定された画素には「01」の画素値を割り当てる。したがって、図20(b)のようなM値データが生成される。
次に、図20(a)に示すディザパターン内の一部の領域90aに対して階調値Inが129である多値データが一様に入力された場合、ステップS501にて商N=1、余りIn´=44が取得される。したがって、ステップS502〜S504にてディザパターン90内の一部の領域90aのうちの44以上の閾値Dthが定められた画素においては階調値N´=2、43以下の閾値Dthが定められた画素においては階調値N´=1が決定される。そして、ステップS505にて階調値N´=2と決定された画素には「10」の画素値を、階調値N´=1と決定された画素には「01」の画素値を割り当てる。したがって、図20(c)のようなM値データが生成される。
ここで、図20(b)、(c)に示すM値データは画素2001以外の画素においては同じ画素値が定められている。しかしながら、図20(b)に示すM値データでは画素2001に対して1回のインクの吐出を示す「01」の画素値が定められている一方で、図20(c)に示すM値データは画素2001に対して2回のインクの吐出を示す「10」の画素値が定められていることがわかる。ここから、階調値が129の多値データが入力された場合、階調値が128の多値データが入力された場合に比べて、ディザパターン90内の一部の領域90aに対応する記録媒体上の領域に対して1回だけインクを多く吐出することが可能となることがわかる。
次に、図20(a)に示すディザパターン内の一部の領域90aに対して階調値Inが130である多値データが入力された場合、ステップS501にて商N=1、余りIn´=45が取得される。したがって、ステップS502〜S504にてディザパターン90内の一部の領域90aのうちの45以上の閾値Dthが定められた画素においては階調値N´=2、44以下の閾値Dthが定められた画素においては階調値N´=1が決定される。そして、ステップS505にて階調値N´=2と決定された画素には「10」の画素値を、階調値N´=1と決定された画素には「01」の画素値を割り当てる。したがって、図20(d)のようなM値データが生成される。
ここで、図20(c)、(d)に示すM値データは画素2002以外の画素においては同じ画素値が定められている。しかしながら、図20(c)に示すM値データでは画素200cに対して1回のインクの吐出を示す「01」の画素値が定められている一方で、図20(d)に示すM値データは画素2002に対して2回のインクの吐出を示す「10」の画素値が定められていることがわかる。ここから、階調値が130の多値データが入力された場合、階調値が129の多値データが入力された場合に比べて、ディザパターン90内の一部の領域90aに対応する記録媒体上の領域に対して1回だけインクを多く吐出することが可能となることがわかる。
このように、本実施形態による量子化処理によれば、多値データが示す階調値が多くなるほどインクの吐出回数が多くなるような量子化データを生成することが可能となる。
(分配処理)
上述の量子化処理により生成されたn(n≧2)ビットM(M≧3)値の量子化データに対し、複数の画素領域それぞれに対するインクの吐出の許容回数を定めた複数のマスクパターンを適用することにより、複数回の走査への量子化データの分配を行う。
図21はそれぞれ2ビットの情報を有する量子化データとインクの吐出の許容回数を定めたマスクパターンを用いて記録データを生成する過程を説明するための図である。また、図22は図21に示すような記録データの生成に際して用いるデコードテーブルを示す図である。
21(a)はある領域内の16個の画素700〜715を模式的に示す図である。なお、ここでは簡単のため16個の画素相当の画素領域からなる領域を用いて説明する。
図21(b)は単位領域に対応する量子化データの一例を示す図である。
ここで、本実施形態では一例としてn=2の場合について記載する。上述のように本実施形態にてある画素に対応する多値データを構成する2ビットの情報(画素値)が「00」である場合には、当該画素に対してインクは1回も吐出されない。また、画素値が「01」である場合には、対応する画素に対してインクは1回吐出される。また、画素値が「10」である場合には、対応する画素に対してインクは2回吐出される。また、画素値が「11」である場合には、対応する画素に対してインクは3回吐出される。
図21(b)に示す多値データに関しては、例えば画素703、707、711、715における画素値は「00」であるため、画素703、707、711、715に対応する画素領域にはインクが1回も吐出されないこととなる。また、例えば画素700、704、708、712における画素値は「11」であるため、画素700、704、708、712に対応する画素領域にはインクが3回吐出されることとなる。
図21(c−1)〜(c−4)はそれぞれ1〜4回目の走査に対応し、図21(b)に示す多値データに適用するためのマスクパターンの一例を示す図である。すなわち、図21(b)に示す多値データに対して図21(c−1)に示す1回目の走査に対応するマスクパターン505を適用することにより、1回目の走査で用いる記録データを生成する。同様にして、図21(b)に示す多値データに対して図21(c−2)、(c−3)、(c−4)それぞれに示すマスクパターン506、507、508を適用することにより、それぞれ2、3、4回目の走査で用いる記録データを生成する。
ここで、図21(c−1)〜(c−4)それぞれに示すマスクパターン内の各画素には、「00」、「01」、「10」、「11」のいずれかが2ビットの情報が示す値(以下、コード値とも称する)として割り当てられている。
ここで、図22に示すデコードテーブルを参照するとわかるように、コード値が「00」である場合、対応する画素における画素値が「00」、「01」、「10」、「11」のいずれであっても、インクを吐出しない。すなわち、マスクパターン内の「00」のコード値はインクの吐出をまったく許容しない(インクの吐出の許容回数が0回)ということに対応する。以下の説明では、「00」のコード値が割り当てられたマスクパターン内の画素を非記録許容画素とも称する。
一方、図22に示すデコードテーブルを参照するとわかるように、コード値が「01」である場合、対応する画素における画素値が「00」、「01」、「10」である場合にはインクを吐出しないが、「11」である場合にはインクを吐出する。言い換えると、「01」のコード値は、4通りの画素値(「00」、「01」、「10」、「11」)に対して1回だけインクの吐出を許容する(インクの吐出の許容回数が1回)、ということに対応する。
また、コード値が「10」である場合、対応する画素における画素値が「00」、「01」である場合にはインクを吐出しないが、「10」、「11」である場合にはインクを吐出する。すなわち、「10」のコード値は4通りの画素値に対して2回インクの吐出を許容する(インクの吐出の許容回数が2回)ということに対応する。
更に、コード値が「11」である場合、対応する画素における画素値が「00」の場合にはインクを吐出しないが、「01」、「10」、「11」である場合にはインクを吐出する。すなわち、「11」のコード値は4通りの画素値に対して3回インクの吐出を許容する(インクの吐出の許容回数が3回)ということに対応する。なお、以下の説明では「01」、「10」、「11」のいずれかのコード値が割り当てられたマスクパターン内の画素を記録許容画素とも称する。
ここで、本実施形態にて用いられるnビットの情報を有するマスクパターンは、下記の(条件1)、(条件2)に基づいて設定される。
(条件1)
ここで、複数のマスクパターン内の同じ位置にある複数の画素には、記録許容画素が(2^m)−1個配置されるように設定される。この(2^m)−1個の記録許容画素は互いに異なる数だけインクの吐出を許容する。詳細には、本実施形態ではm=2であるため、図21(c−1)〜(c−4)に示す4つのマスクパターン内の同じ位置にある4つの画素のうちの3(=2^2−1)つの画素に対しては「01」、「10」、「11」のいずれかのコード値が1つずつ割り当てられ(記録許容画素)、残りの1(=4−3)つの画素に対しては「00」のコード値が割り当てられる(非記録許容画素)。
例えば、画素700に対しては、図21(c−3)に示すマスクパターンにて「01」、図21(c−2)に示すマスクパターンにて「10」、図21(c−1)に示すマスクパターンにて「11」のコード値が割り当てられている。そして、残りの図21(c−4)に示すマスクパターンにて「00」のコード値が割り当てられている。言い換えると、画素700は、図21(c−1)、(c−2)、(c−3)に示すマスクパターンでは記録許容画素であり、図21(c−4)に示すマスクパターンでは非記録許容画素である。
また、画素701に対しては、図21(c−2)に示すマスクパターンにて「01」、図21(c−1)に示すマスクパターンにて「10」、図21(c−4)に示すマスクパターンにて「11」のコード値が割り当てられている。そして、残りの図21(c−3)に示すマスクパターンにて「00」のコード値が割り当てられている。言い換えると、画素701は、図21(c−1)、(c−2)、(c−4)に示すマスクパターンでは記録許容画素であり、図21(c−3)に示すマスクパターンでは非記録許容画素である。
このような構成により、ある画素における画素値が「00」、「01」、「10」、「11」のいずれであったとしても、その画素値に対応するインクの吐出回数だけ当該画素に対応する画素領域にインクを吐出するような記録データを生成することができる。
(条件2)
また、図21(c−1)〜(c−4)それぞれに示すマスクパターンには、「01」のコード値に対応する記録許容画素が互いにほぼ同数となるように配置されている。より詳細には、図21(c−1)に示すマスクパターンには画素702、707、708、713の4つの画素に「01」のコード値が割り当てられている。また、図21(c−2)に示すマスクパターンには画素701、706、711、712の4つの画素に「01」のコード値が割り当てられている。また、図21(c−3)に示すマスクパターンには画素700、705、710、715の4つの画素に「01」のコード値が割り当てられている。また、図21(c−4)に示すマスクパターンには画素703、704、709、714の4つの画素に「01」のコード値が割り当てられている。すなわち、図21(c−1)〜(c−4)それぞれに示す4つのマスクパターンには、「01」のコード値に対応する記録許容画素が4つずつ配置されている。
同様に、図21(c−1)〜(c−4)それぞれに示すマスクパターンには、「10」のコード値に対応する記録許容画素も互いに同じ数となるように配置されている。更に、図21(c−1)〜(c−4)それぞれに示すマスクパターンには、「11」のコード値に対応する記録許容画素もまた互いに同じ数となるように配置されている。
なお、ここでは各マスクパターンにおける「01」、「10」、「11」それぞれにコード値に対応する記録許容画素がそれぞれ互いに同じ数だけ配置されている場合について記載していたが、実際には互いにほぼ同じ数だけ配置されていれば良い。
これにより、図21(c−1)〜(c−4)それぞれに示すマスクパターンを用いて多値データを4回の走査に分配して記録データを生成する際に、4回の走査それぞれにおける記録率を互いにほぼ等しくすることができる。
図21(d−1)〜(d−4)のそれぞれは、図21(b)に示す多値データに対して図21(c−1)〜(c−4)それぞれに示すマスクパターンを適用して生成される記録データを示す図である。
例えば、図21(d−1)に示す1回目の走査に対応する記録データにおける画素700では、多値データの画素値は「11」、マスクパターンのコード値は「11」である。そのため、図7に示すデコードテーブルを参照してわかるように、画素700ではインクの吐出(「1」)が定められる。また、画素701では、多値データの画素値は「10」、マスクパターンのコード値は「10」であるため、インクの吐出(「1」)が定められる。また、画素704では、多値データの画素値は「11」、マスクパターンのコード値は「00」であるため、インクの非吐出(「0」)が定められる。
このようにして生成された図21(d−1)〜(d−4)それぞれに示す記録データにしたがって1〜4回目の走査にてインクが吐出される。例えば、1回目の走査では図21(d−1)に示す記録データからわかるように、画素700、701、705、708、710、712に対応する記録媒体上の画素領域にインクが吐出される。
図21(e)は図21(d−1)〜(d−4)それぞれに示す記録データの論理和を示す図である。図21(d−1)〜(d−4)それぞれに示す記録データにしたがってインクを吐出することにより、各画素に対応する画素領域には図21(e)に示す回数だけインクが吐出されることになる。
例えば、画素700においては、図21(d−1)、(d−2)、(d−3)に示す1、2、3回目の走査に対応する記録データにおいてインクの吐出が定められている。したがって、図21(e)に示すように、画素700に対応する画素領域に対しては合計で3回インクが吐出されることになる。
また、画素701においては、図21(d−1)、(d−4)に示す1、4回目の走査に対応する記録データにおいてインクの吐出が定められている。したがって、図21(e)に示すように、画素701に対応する画素領域に対しては合計で2回インクが吐出されることになる。
図21(e)に示す記録データと図21(b)に示す多値データを比較すると、いずれの画素においても多値データの画素値に対応する吐出回数だけインクが吐出されるように記録データが生成されることがわかる。例えば、画素700、705、708、712では図21(b)に示す多値データの画素値は「11」であるが、生成された記録データの論理和により示されるインクの吐出回数も3回となる。
以上の構成によれば、複数ビットの情報を有する多値データおよびマスクパターンに基づいて、複数回の走査それぞれで用いる1ビットの記録データを生成することが可能となる。
本実施形態において実際に用いるマスクパターンを図23を参照しながら詳細に説明する。
図23(a1)は本実施形態における分配処理で用いる単位領域に対する1回目の走査に対応するマスクパターン91を示す模式図である。また、図23(a2)はマスクパターン91のうちの一部の領域91aの拡大図である。
また、図23(b1)は本実施形態における分配処理で用いる単位領域に対する2回目の走査に対応するマスクパターン92を示す模式図である。また、図23(b2)はマスクパターン92のうちの一部の領域92aの拡大図である。
また、図23(c1)は本実施形態における分配処理で用いる単位領域に対する3回目の走査に対応するマスクパターン93を示す模式図である。また、図23(c2)はマスクパターン93のうちの一部の領域93aの拡大図である。
また、図23(d1)は本実施形態における分配処理で用いる単位領域に対する4回目の走査に対応するマスクパターン94を示す模式図である。また、図23(d2)はマスクパターン94のうちの一部の領域94aの拡大図である。
図23(a1)、(b1)、(c1)、(d1)に示すように、本実施形態で用いるマスクパターン91〜94は、それぞれX方向に128画素、Y方向に128画素の大きさを有している。これは、本実施形態で用いる図20に示すディザパターン90の大きさと同じである。これらの128×128個の画素のそれぞれに対し、図23(a2)、(b2)、(c2)、(d2)の拡大図に示すように、それぞれの画素に対する記録の許容回数を示す情報(コード値)が定められている。それぞれの画素に対するコード値(「00」、「01」、「10」、「11」)は、上述と同様の定義であり、図22に示すデコードテーブルに示すようなインクの吐出の許容回数に対応している。
ここで、図23に示すマスクパターン91〜94は、互いに補完的且つ排他的な位置に記録許容画素が配置されている。すなわち、各画素に対し、4つのマスクパターン91〜94のうちのいずれか1つのマスクパターンでは0回のインクの吐出の許容が定められ(「00」)、いずれか1つのマスクパターンでは1回のインクの吐出の許容が定められ(「01」)、いずれか1つのマスクパターンでは2回のインクの吐出の許容が定められ(「10」)、いずれか1つのマスクパターンでは3回のインクの吐出の許容が定められている(「11」)。
これにより、例えばマスクパターン91〜94と対応する128×128個の画素のすべてに対して1回のインクの吐出を定めた量子化データが入力された場合、それぞれの画素領域に対して1〜4回目の走査のうちのいずれか1回の走査においてインクを吐出することが可能となる。また、マスクパターン91〜94と対応する128×128個の画素のすべてに対して2回のインクの吐出を定めた量子化データが入力された場合、それぞれの画素領域に対して1〜4回目の走査のうちのいずれか2回の走査においてインクを吐出することが可能となる。また、マスクパターン91〜94と対応する128×128個の画素のすべてに対して3回のインクの吐出を定めた量子化データが入力された場合、それぞれの画素領域に対して1〜4回目の走査のうちのいずれか3回の走査においてインクを吐出することが可能となる。
また、図23に示すマスクパターン91〜94は、「01」のコード値が定められた画素の数が互いにほぼ同じ数となるように定められている。これにより、例えばマスクパターン81〜84と対応する128×128個の画素のすべてに対して1回のインクの吐出を定めた量子化データ(画素値が「01」)が入力された場合、1〜4回目の走査それぞれにおけるインクの吐出回数をほぼ同じ回数とすることができる。同様にして、「10」のコード値が定められた画素の数も互いにほぼ同じ数となるように定められている。更に、「11」のコード値が定められた画素の数も互いにほぼ同じ数となるように定められている。
なお、上記のマスクパターンは本実施形態を適用できるマスクパターンのうちの一例であり、他の要素を鑑みて適宜異なるマスクパターンを設定することができる。
(ディザパターンとマスクパターンの同期)
本実施形態では、図19に示したディザパターン90と、図23に示したマスクパターン91〜94と、を用いて記録データを生成する。ここで、第1から第3の実施形態と同様に、ディザパターン90とマスクパターン91〜94のそれぞれは、互いに対応付けて定められている。
詳細には、本実施形態では、25%の階調値である64(=256×0.25)の階調値を定める多値データに対してディザパターン90を用いて量子化し、生成された量子化データをマスクパターン91を用いて1回目の走査に分配した場合、生成された1回目の走査に対応する記録データが示すインクの吐出を定めた画素の分散性がある程度高くなるように、ディザパターン90とマスクパターン91が互いに対応付けられて定められている。すなわち、図1(b−1)に示したようなインクの吐出を定めた画素に空間的な偏りが目立つような記録データではなく、図1(c−1)に示したようなインクの吐出を定めた画素が空間的に均等に生じるような記録データを生成できるように、ディザパターン90とマスクパターン91が定められている。
更に、本実施形態では、50%の階調値である128(=256×0.5)の階調値を定める多値データ、75%の階調値である192(=256×0.75)の階調値を定める多値データ、100%の階調値である256(=256×1)の階調値を定める多値データのそれぞれが入力された場合においても同様に、生成された1回目の走査に対応する記録データが示すインクの吐出を定めた画素の分散性がある程度高くなるように、ディザパターン90とマスクパターン91が互いに対応付けられて定められている。
また、ここでは1回目の走査に対応するマスクパターン91とディザパターン90の同期について説明したが、2回目の走査に対応するマスクパターン92、3回目の走査に対応するマスクパターン93、4回目の走査に対応するマスクパターン94のそれぞれについても同様にして、ディザパターン90との同期が行われている。
したがって、本実施形態で用いるディザパターン90と、マスクパターン91〜94のそれぞれと、は、25%、50%、75%、100%の各階調において互いに対応付けて定められていることとなる。
以上記載したようなディザパターン90およびマスクパターン91〜94を用いる場合であっても、第1から第3の実施形態に記載したような効果を得ることができる。すなわち、マスクパターンを分割してマスクパターン部分を生成し、ディザパターン90内の一部の領域を用い、他部の領域を用いずに量子化された量子化データに対して当該一部の領域に対応するマスクパターン部分を適用することにより、ディザパターン設定時の自由度を低下させることなく、分散性の高い記録データを生成することが可能となる。
以上に説明した各実施形態では、ディザパターンのY方向における長さが、128画素×128画素サイズと記録媒体を搬送する搬送量よりも小さい場合について記載したが、他の形態による実施も可能である。例えば、256画素×256画素、512画素×512画素の様に搬送量よりも大きくしても良い。
また、以上に説明した各実施形態のマスクパターンは、ディザパターンと同じ128画素×128画素の大きさを有する形態について記載したが、他の形態による実施も可能である。例えば、マスクパターンの大きさがディザパターンに比べてX方向にp倍、Y方向にq倍(p、qは整数)の大きさを有するものであっても良い。
また、以上に説明した各実施形態では、量子化パターンとして多値データの階調値に応じてインクの吐出/非吐出を定めたディザパターンまたは多値データの階調値に応じてインクの吐出回数を定めたディザパターンを用いる形態について記載したが、他の形態による実施も可能である。例えば、多値データの階調値に応じてインクを吐出する数および位置を定めたドット配置パターンを量子化パターンとして用いるような形態であっても良い。
また、以上に説明した各実施形態では、量子化データのうちのディザパターンのすべての領域を用いて量子化が実行された領域に対してはマスクパターン部分ではなくマスクパターンを用いて分配処理を行う形態について記載したが、他の形態による実施も可能である。例えば、量子化データのうちのディザパターンのすべての領域を用いて量子化が実行された領域であっても、対応するマスクパターン部分を複数適用することにより分配処理を実行するような形態であっても良い。
また、各実施形態には画像記録装置を用いた画像記録方法について記載したが、各実施形態に記載の画像記録方法を行うためのデータを生成する画像処理装置または画像処理方法、プログラムを画像記録装置とは別体に用意する形態にも適用できる。また、画像記録装置の一部に備える形態にも広く適用できることは言うまでもない。