以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
(第1の実施形態)
<ラインプリンタの概要>
図2は、本発明の第1の実施形態の記録装置A1の概略構成を示す説明図である。記録装置A1は、インクジェット式のラインプリンタであり、図示するように制御ユニットA2、インクカートリッジA61〜A64、記録ヘッドA7、記録媒体搬送機構A8などを備えている。インクカートリッジA61〜A64は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の色を表す各インクに対応している。
記録ヘッドA7は、ラインヘッドタイプのサーマル方式の記録ヘッドであり、記録媒体と対向する面において記録媒体の搬送方向と直交する方向に配列された複数のノズルを備えている。インクカートリッジA61〜A64内の各インクは、インク導入管A61a〜A64aを通じて記録ヘッドA7の記録媒体A100と対向する面に開口部が設けられたノズルに供給され、該ノズル開口部からインクが吐出されて、記録媒体A100に記録が行われる。記録ヘッドA7の詳細については、図3を用いて後で説明する。
記録媒体搬送機構A8は、紙送りモーターA81と紙送りローラーA82とを備えている。紙送りモーターA81は、紙送りローラーA82を回転させることで、紙送りローラーA82上の記録媒体A100を紙送りローラーA82の回転軸と直交する方向に搬送し、これによって、記録媒体100は記録ヘッドA7によって記録が可能な位置に運ばれる。
制御ユニットA2は、CPU(A3)とRAM(A41)とROM(A42)とによって構成されており、上述した記録ヘッドA7や紙送りローラーA82の動作を制御する。CPU(A3)はROM(A42)内に記憶された制御プログラムをRAM(A41)に展開して実行することで、後述する画像に対するさまざまな処理を行い、記録ヘッドA7で記録する画像データの生成や、記録媒体搬送機構A8の制御などを行う。
図3(a)は、記録ヘッドA7の詳細構成を示す説明図である。図3(a)に示すように、本実施形態の記録ヘッドA7は、インクを吐出する複数のノズルからなる複数のノズル列を有する複数の記録チップA71〜A74をノズル列方向に並べて構成される。これらの記録チップから吐出されるインク滴は、紙送り(記録媒体の搬送)とインクの吐出タイミングとを調整することにより、記録媒体において記録媒体搬送方向に延びる同一のカラム上に記録ドットを形成する。
なお、記録ヘッドにおける記録チップの数は、本例では4つとしたが、本発明においては、これに限定されない。また、本例では、複数の記録チップは、千鳥状に配列されているが、本発明においてはこれに限定されず、一直線上に形成されていてもよい。
図3(b)は、記録ヘッドA7を構成する複数の記録チップのうち、記録チップA71を示す説明図である。記録チップA71は、少なくとも2種類の径のインクドットを記録できるように、記録特性の異なる複数のノズルを有して形成される。本実施形態では、複数のノズルは4つのノズル列A71a〜A71dを構成している。本実施形態では、記録特性を表す値として、各ノズルから吐出されるインク量(以下、単に「吐出量」ともいう)を用いる。本実施形態では、1つの記録チップ内のノズルの吐出量を大小2種類に設定し、吐出量が相対的に大きいノズルの並ぶノズル列(以下、「大ノズル列」ともいう)と、吐出量が相対的に小さいノズルの並ぶノズル列(以下、「小ノズル列」ともいう)とを設ける。以下、大ノズル列および小ノズル列を総括して「大小ノズル列」ともいう。ノズル列A71aおよびA71cは大ノズル列に相当し、ノズル列A71bおよびA71dは小ノズル列に相当する。ここでは、ノズル列A71aおよびA71cとノズル列A71bおよびA71dとで、ノズルの口径を異ならせることによって、吐出されるインク量を異ならせている。この構成により、記録チップA71において、ノズル列A71aおよびA71cのノズルは相対的に径の大きいドット(大ドット)を記録する。また、ノズル列A71bおよびA71dのノズルは相対的に径の小さいドット(小ドット)を記録する。記録チップA72〜A74も、記録チップA71と同様に構成されている。
なお、本実施形態の記録チップは、記録特性の異なる2種類のノズル列を1列ずつ交互に計4列配置する構成を有するが、本発明に適用可能な記録チップの構成はこれに限定されるものではない。上記構成の他、記録特性の異なるノズル列を2列ずつ交互に計4列配置する構成、1列ずつ計2列配置する構成、または3種類以上の記録特性のノズル列を配置する構成としたり、記録特性の異なるノズル群を千鳥状配置などの2次元的な配置としたりしてもよい。また、本実施形態の記録装置A1が搭載する記録ヘッドはサーマル式の記録ヘッドとしたが、これに限定されるものでない。複数の記録チップを記録媒体の搬送方向に直交する方向に配列し、複数の記録特性を持つドットを記録媒体において記録媒体搬送方向に直交する方向に延びる同一のラスターに形成して画像データの記録を行うことのできるラインヘッドであればよい。例えばピエゾ式など、他のインク吐出方式のインクジェット記録ヘッドであってもよい。また、1つのノズルから複数の記録特性を持つドットが記録可能な記録ヘッドであってもよい。例えば、1つのノズルから吐出されるインク量を制御可能で複数の大きさのドットを記録することができる記録ヘッドであってもよい。さらに、インク色も、前述したC、M、Y、K以外であってもよい。
<画像処理部の概要>
図1は、本発明の第1の実施形態の画像処理の概要図である。また、図4(a)および(b)は、本発明の第1の実施形態の処理フローを説明するフロー図である。図1および図4(a)、(b)を用いて、本発明の動作フローを説明する。
まず図4(a)のフローに基づいて説明を行う。ステップD01において、記録装置A1は、図1に示す記録特性取得部A51を用いて、記録チップA71〜A74それぞれについての記録特性の情報を得る。本実施形態では、記録チップの記録特性として、1ノズル当たりの吐出量の平均値(以下、「ノズル平均吐出量」ともいう)の情報をノズル列毎に得る。次にステップD02において、図1に示す補正目標値設定部A52を用いて、各記録チップA71〜A74で記録したい吐出量を1ノズル当たりの目標吐出量(以下、「補正目標吐出量」ともいう)として設定する。次にステップD03において、大小ドット分配率決定部A53を用いて、ステップD01において記録チップ毎に読み取ったノズル列毎のノズル平均吐出量とステップD02において設定した補正目標吐出量とから、大小ドットを記録する分配率を決定する。
ここで、本明細書において、「大ドット」とは、記録媒体上に形成された径が相対的に大きいドットをいい、「小ドット」とは、記録媒体上に形成された径が相対的に小さいドットをいう。「大ドット」は、吐出量が相対的に大きい大ノズルからのインクの吐出により形成することができ、「小ドット」は、吐出量が相対的に小さい小ノズルからのインクの吐出により形成することができる。これら大ドットおよび小ドットを総括して「大小ドット」ともいう。
また、本明細書において、「大小ドット分配率」とは、記録する全ドットのうち、大ドットおよび小ドットをそれぞれどのような数の割合で記録するかを示す。
本例では、ステップD01のノズル列毎のノズル平均吐出量の情報取得において、大ノズル列A71aおよびA71cそれぞれについてのノズル平均吐出量は3ngであり、大ノズル列全体としてのノズル平均吐出量も3ngであったとする。また、小ノズル列A71bおよびA71dそれぞれについてのノズル平均吐出量は2ngであり、小ノズル列全体としてのノズル平均吐出量も2ngであったとする。次いで、ステップD02において、補正目標吐出量として、2.5ngを設定したものとする。すると、ステップD03において、補正目標吐出量2.5ngを達成するための記録チップA71における大小ドット分配率は、大ドット(3ng):小ドット(2ng)=1:1に決定される。
次に図4(b)のフローについて説明を行う。図4(b)は、記録装置A1がメモリーカードA91(図2)に保存された画像データに所定の画像処理を加えることにより、画像データをドットの有無によって表現されたドットデータに変換して記録を行う処理の流れを示すフロー図である。図4(b)の画像記録処理が開始されると、ステップD11において、制御ユニットA2(図2)は、図1の画像入力部A31を用いてメモリーカードA91より記録すべき画像データを読み込む。ここでは、画像データは解像度600dpi、RGB各8bit、256階調のカラー画像であるものとして説明する。しかし、本発明は、カラー画像によらずモノクロ画像でも同様に適用することができる。
次にステップD12において、図1の色変換処理部A32は色変換処理を行い、解像度600dpi、RGB各8bit、256階調の画像データを、解像度600dpi、CMYK各色8bit、256階調の出力多値画像データへと変換する。
ここで、本明細書において「色変換処理」とは、画像データに対して多値の状態で行われる各種処理の総称であり、例えば色補正、階調補正、色分解処理等を含む。本明細書において「色補正」とは、入力画像の色空間から出力機器で出力可能な色空間への変更をいう。本明細書において「階調補正」とは、画像データの信号値の増減と記録ドットの増減との階調性の違いを、階調補正テーブルを用いて補正するものである。記録ヘッド内の記録チップに応じて適用する階調補正テーブルを切り替える事により、記録ヘッド内における記録チップの記録特性のばらつきに起因する記録濃度のばらつきを補正する事が可能である。また、記録チップ内のノズルの位置に応じて適用する階調補正テーブルを切り替える事により、記録チップ内におけるノズルの記録特性のばらつきに起因する微小な記録濃度のばらつきを補正する事が可能である。本明細書において「色変換処理」とは、R(赤)、G(緑)、B(青)の各階調値の組み合わせによって表現されているRGBカラー画像を、記録のために使用される各色の階調値によって表現されたデータに変換する処理である。
前述したように、記録装置A1はC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)の4色のインクを用いて画像を記録している。そこで本実施形態の色変換処理部A32では、RGBで表された画像データをC、M、Y、Kの各色の階調値によって表現されたデータに変換する処理を行う。
上述のようにステップD11において読み込んだ画像データ(入力画像データ)をステップD12においてC、M、Y、Kの各色の出力多値画像データに色変換処理すると、次はステップD13において、図1の量子化処理部A33を用いて量子化処理を行う。
ここで、本明細書において、「量子化処理」とは、出力多値画像データの高い階調数を、記録装置で記録可能な低い階調数にする処理、すなわち、階調値を適切に低減させる処理である。本例では、8bit、256階調のデータを5値にするものとして説明する。一般的に、量子化処理としては誤差拡散法やディザ法が用いられることが多い。
図5(a)は、一般的な誤差拡散処理フローを示す図であり、図5(b)は、閾値(threshold)と、出力Level(Out)と、評価値(Evaluation)と、の関係を示す説明図である。図5(a)および(b)を用いて、5値の多値誤差拡散処理について説明する。
まず、図5(a)を参照して、画像濃度値(In)と周辺画素からの拡散誤差値(dIn)とを加算して、補正濃度値(In+dIn)を得る。そして、比較器にて、求めた補正濃度値(In+dIn)と閾値(threshold)とを比較し、補正濃度値の値に応じて閾値により定められた出力Level(Out)を出力する。
これを図5(b)の説明図を用いて具体的に説明すると、求めた補正濃度値(In+dIn)が「32以下」であれば、補正濃度値の値に応じて定められた出力Level(Out)は「Level0」であるので、これを出力する。以下同様であり、例えば、補正濃度値(In+dIn)が「32より大きく96以下」であれば、出力Level(Out)として「Level1」を出力する。
再度図5(a)を参照して、次に、補正濃度値(In+dIn)から評価値(Evaluation)を引いた多値化誤差(Error=In+dIn-Evaluation)を算出する。算出した多値化誤差を周辺画素へ拡散させるために、重み付け演算を行って誤差バッファに加算する。
ここで図5(b)を参照して、出力Level(Out)と評価値(Evaluation)との関係を説明する。出力Level(Out)が「Level4」であれば、評価値(Evaluation)は「255」となる。以下同様に、評価値(Evaluation)は、出力Level(Out)が「Level3」なら「192」、「Level2」なら「128」、「Level1」なら「64」、「Level0」なら「0」となる。
再度図5(a)を参照して、注目する画素位置に拡散された誤差値を誤差バッファから取り出し、重み係数の総和で正規化し、次の画素の拡散誤差(dIn)とする。以上の処理を全画素について繰り返し実行する。以上のようにして、8bit、256階調のデータを、記録装置A1で記録可能な5階調へと量子化する。
図4(b)に戻り、フローの続きを説明する。ステップD13において画像データを記録画素単位で低階調に量子化して得た量子化後の画像データから、ステップD14において、図1のドット記録位置決定部A34を用いて、記録画素内の記録ドット配置を決定する。
ここで、図6(a)〜(j)は、記録画素の解像度が600dpi、階調がLevel0〜4の5値の量子化後の画像データを、解像度が1200dpiの記録ドットのドットパターンで表すためのドット記録位置を示したものである。例えばステップD13における量子化後の階調がLevel1の場合、解像度600dpiの記録画素内には1つのドットのみ記録される。このとき、1つのドットの記録位置は、解像度600dpiの1つの記録画素を4分割した解像度1200dpiの領域のいずれか(図6(b)の左上の領域、図6(c)の左下の領域、図6(d)の右下の領域、または図6(e)の右上の領域)に決定される。
次に、図4(b)のステップD15において、図1の記録ドット分配処理部A35は、以下のようにして、記録ドットの位置毎の記録ドットのサイズを決定する。すなわち、まず、記録ドット分配処理部A35は、図1の大小ドット分配率決定部A53に対し、ドットを記録するために使用されるノズルの記録ヘッド内での位置に関する情報(本例ではドットがどの記録チップで記録されるか)を伝達する。記録ドット分配処理部A35は、大小ドット分配率決定部A53から、先に説明したように記録チップの記録特性情報に応じて決定された記録ドットの分配率に関する情報(以下、分配率情報ともいう)を受け取る。記録ドット分配処理部A35は、受け取った分配率情報を、図1の大小ドット分配パターン記憶部A41に伝達し、これにより、大小ドット分配パターン記憶部A41から大小ドット分配パターンを得る。記録ドット分配処理部A35は、得られた大小ドット分配パターンを用いて、前ステップD14で決定された記録ドットの配置を、異なる記録特性(本例では吐出量)を持つノズルに割り振って、各ノズルについての記録データを生成する。本例では、3ngおよび2ngの2種類の吐出量でそれぞれ記録される大小のドットを用いて、大小のドットの数の割合が1:1になるよう分配された解像度1200dpiの2値の記録データを得る。以下、このような、大ドットと小ドットとの数の割合に基づいて得られる記録データを、「大小分配記録データ」ともいう。
次に、ステップD16において、図1の使用ノズル列決定部A36は、大小分配記録データの記録のために使用するノズル列を図1のノズル列分配パターン記憶部A42に伝達する。ノズル列分配パターン記憶部A42は、大小分配記録データの記録のために使用するノズル列の情報を受け取ると、該当ノズル列への分配パターンを使用ノズル列決定部A36に伝達する。使用ノズル列決定部A36は、ノズル列への分配パターンを入手後、該分配パターンと大小分配記録データとにより、異なる記録特性を持つ各ノズル列(ノズル列A71a〜A71d)で記録するノズル列別記録データ(1200dpi、2値)を生成する。
次に、ステップD17において、ステップD16においてノズル列毎に生成されたノズル列別記録データを、各記録チップの各ノズル列に送付し、記録媒体上に異なる記録特性を持つノズルからインクを吐出して複数のドットを形成することで画像を記録する。つまり、図2の紙送りモーターA81を駆動し、この動きに合わせてノズル列別記録データに基づいて、記録ヘッドA7から記録媒体にインク液滴を吐出する。その結果、異なる記録特性(吐出量)を持つノズルから付与されたインクにより形成された異なる記録特性(ドットサイズ)を持つドットが所望の割合で分配されて画像データが記録されることとなる。
<画像データを用いた処理の説明>
次に、本実施形態で行われる画像データを用いた処理について説明する。
図7(a)〜(i)は、図4(b)のフローにおける各ステップの処理前後の画像データと、異なる記録特性(ドットサイズ)への分配結果、各ノズル列への分配結果、および記録媒体上への記録結果について説明する説明図である。
図7(a)は、図4(b)のステップD11で読み込まれた入力画像データを示す。ここでは、入力画像データはR、G、B各色192値のデータであるものとする(図中、{R,G,B}={192,192,192}と表す)。
次に、図7(b)は、図4(b)のステップD12において、ステップD11で読み込まれた{R,G,B}の入力画像データを、使用されるインクC、M、Y、Kそれぞれの階調値に変換して、出力多値画像データとしたものを示す。ここでは説明のため、インクCのみを明示し、信号値は64値に変換されたものとする(図中、{C}={64}と表す)。
次に、図7(c)は、図4(b)のステップD13において、8bit、256階調の出力多値画像データの階調値を、画像記録装置A1で記録可能な階調値(本例では5値)に変換した結果を示す。先に説明したように、図5(a)および(b)で説明した誤差拡散処理により、64値の信号値({C}={64})はLevel1に変換されている(図中、{C}={Level1}と表す)。
次に、図7(d)は、図4(b)のステップD14の結果を示す。図6(a)〜(j)で説明した記録ドットパターンを用いて、Level1の階調値を1200dpiの位置毎の記録ドットの有無を示すデータに変換している。
次に、図7(e)は、図4(b)のステップD15の結果を示す。ステップD15は、上述のとおり、記録ドット位置毎の記録ドットサイズ(本例では吐出量:3ngまたは2ng)を決定するステップである。ステップD15では、まず、図7(d)に示されるような画像データを記録するための記録チップの情報から、記録チップ毎にあらかじめ算出されている大小ドット分配率を入手する。次に、当該大小ドット分配率から大小ドット分配パターンを入手して、図7(d)に示される各記録ドットを大ドットおよび小ドットのどちらのドットで記録するかを決定する。
ここで、図8(a−1)〜(c)を用いて、大小ドットのうちどちらのドットで記録するかを決定するための大小ドット分配パターン、およびこれを用いた大小ドットの割り振り(以下、単に大小割り振りともいう)の例を説明する。
図8(a−1)〜(a−4)は、出力多値画像データを5値へ量子化した後の、それぞれ出力Level1からLevel4に相当する記録ドット配置の例を示す。また、図8(b−1)〜(b−4)は、それぞれ図8(a−1)〜(a−4)に対応するものであり、大小ドット分配率が大ドット:小ドット=1:1の場合の大小ドット分配パターンの例を示す。すなわち、図8(b−1)はLevel1、図8(b−2)はLevel2、図8(b−3)はLevel3、図8(b−4)はLevel4の大小ドット分配パターンである。
図8(a−1)および(b−1)に示すLevel1を例に、記録ドットを大小どちらのドットで記録するかの決定方法を説明する。まず、図8(a−1)に示される記録ドット配置が決定されると、記録チップの記録特性情報から、大小ドット分配率(本例では1:1)が算出される。記録ドット配置のデータおよび大小ドット分配率から、図8(b−1)に示される、配置および分配率に応じた大小ドット分配パターンが用意される。大小ドット分配率に応じた大小ドット分配パターンの生成方法(切り替え方法)については、後ほど詳細に説明する。
次に、図8(a−1)に示される各記録ドットは、図8(b−1)に示される大小ドット分配パターンにおける対応する位置を参照し、同位置に記載された記録ドットサイズに置き換えられる。このようにして、記録ドット位置ごとの記録ドットサイズが決定される。
このようにして得られた記録データを表したものが、図7(e)であり、この記録データは、前述の大小分配記録データに相当する。
以上のようにして、図7(d)の記録ドット配置データから、図7(e)の大小分配記録データが生成される。
量子化後の出力Levelが異なるデータがある場合は、それらについてもLevel1の場合と同様に、記録に用いる大小ドットの割り振りを行う。すなわち、Level2については図8(a−2)および(b−2)、Level3については図8(a−3)および(b−3)、ならびにLevel4については図8(a−4)および(b−4)を用いて大小割り振りを行う。
ここで、図8(c)は、量子化後の出力Levelと、600dpi×600dpiあたりの記録ドット数との関係を示すグラフであり、図8(d)は、各出力Levelについての、大ドットと小ドットとのドット数の比を示す表である。図8(b−1)〜(b−4)では、図8(c)および(d)に示すように、量子化後の出力Levelによらず、大小ドット分配率(大ドットと小ドットとのドット数の比)が一定となっている。よって図7(e)の大小分配記録データは、大ドット(3ng)と小ドット(2ng)とが、算出された大小ドット分配率1:1に沿って分配されている。これにより、平均吐出量がそれぞれ3ngおよび2ngのノズル群(ノズル列)を用いて、600dpi平方あたりに平均して2.5ngのインク量での画像記録が可能となっている。
図7(f−1)および(f−2)は、図7(e)の大小分配記録データを記録ドットサイズ毎に抜き出して示したものである。図7(f−1)に大ドットについての記録データ、および図7(f−2)に小ドットについての記録データを抜き出して示している。記録するドットの数は大小ドット共に8ドットずつであり、大小ドット分配率1:1を満たしている。
次に、図7(g−1)および(g−2)、ならびに図7(h−1−1)〜(h−2−2)は、図4(b)のステップD16を説明する図である。ステップD16は、図7(e)に示される大小分配記録データを、どのノズル列で記録するかを決定するステップである。
ここで、図7(e)に示される大小分配記録データは、前述のとおり、図7(f−1)および(f−2)に示されるように大ドットおよび小ドットそれぞれについての記録データに分けることができる。また、本例では、大ドットおよび小ドットを記録する大ノズル列および小ノズル列がそれぞれ2列ずつある。
図7(f−1)に示される大ドットについての記録データ(以下、単に大ドット記録データともいう)を2列の大ノズル列に分配するために、ノズル列分配パターンは2つ用意される。図7(g−1)および(g−2)にその1つの例を示す。本例では、これらのパターンは、それぞれ50%が記録を許可するON領域となった、補完関係を持つマスクを構成する。図7(f−2)に示される小ドットについての記録データ(以下、単に小ドット記録データともいう)を2列の小ノズル列に分配するためにも、同様に、2つのパターンが用意される。本例においては、これらもまた、それぞれ50%が記録を許可するON領域となった補完関係を持つマスクを構成する。このとき、小ドットについてのノズル列分配パターンは、大ドットについてのノズル列分配パターンと、同一であってもよく、または異なっていてもよい。本例では、大小ドットの両方について同一のノズル列分配パターン(図7(g−1)および(g−2)参照)を使用するものとして説明を続ける。
まず、大ドットについてのノズル列別記録データの作成について説明する。大ドットを記録するノズル列A71aのための記録データは、図7(f−1)に示す大ドット記録データと図7(g−1)に示すノズル列分配パターンとのANDを取り、「大ドット:あり」かつ「マスク:ON」の箇所のみデータを生成することにより得られる。図7(h−1−1)に、このようにして得られたノズル列A71a用の大ドット記録データを示す。同様に、図7(f−1)に示す大ドット記録データと今度は図7(g−2)に示すノズル列分配パターンとのANDを取り、図7(h−1−2)に示されるノズル列A71c用の大ドット記録データが得られる。
小ドットについてのノズル列別記録データの作成についても、大ドットの場合と同様である。すなわち、図7(f−2)に示す小ドット記録データと図7(g−1)に示すノズル列分配パターンとのANDを取り、図7(h−2−1)に示されるノズル列A71b用の小ドット記録データが得られる。また、図7(f−2)に示す小ドット記録データと、図7(g−2)に示す使用ノズル分配パターンとのANDを取り、図7(h−2−2)に示されるノズル列A71d用の小ドットデータが得られる。
以上のようにして、大小ドット両方、すなわち全記録ドットについてのノズル列別記録データの生成が完了する。
次に、図7(i)は、図4のステップD17の結果を示す。ステップD17では、図7(h−1−1)〜(h−2−2)に示されるノズル列別記録データを、それぞれ対応するノズル列A71a〜A71dに転送し、このデータに基づき記録媒体上に記録を行う。図7(i)は、記録媒体上に記録された大小記録ドットを示す説明図である。図中、記号「◎」は大ドット、記号「○」は小ドットを示す。図より明らかなように、大ドット(3ng)と小ドット(2ng)との大小ドット分配率は1:1を満たしている。したがって、平均吐出量がそれぞれ3ngおよび2ngのノズル群(ノズル列)を用いて、600dpi平方あたりに平均して2.5ngのインク量での画像記録が可能となっている。
<大小ドット分配率により大小ドット分配パターンを切り替える構成>
次に、図9(a)〜(f)を参照して、記録チップ毎に記録特性が異なっていた場合に、それぞれの記録特性に応じて記録チップ毎に異なる記録特性を持つ記録ドットへの分配パターンを切り替える構成について説明する。
記録ヘッドの各記録チップについて、記録チップA71の場合と同様に、記録情報の取得を行うが、ここでは、記録チップA72を例に取って本構成の説明を行う。
まず、記録チップA72について、図4(b)のステップD01において図1の記録特性取得部A51を用いて吐出量情報を得る。本例では、記録チップA72の大小ノズル列についてのノズル平均吐出量が、記録チップA71の場合の83.3%相当であり、すなわち、大ドットについての吐出量が2.5ng、小ドットについての吐出量が1.67ngであったものとする。
次に、図4のステップD02において、図1の補正目標設定部A52により補正目標値として吐出量2.5ngが設定される。さらに、図4のステップD03において、記録チップA72の大小ドット分配率として、大ドット:小ドット=1:0が設定される。以下、図4のステップD11からD14 までは、記録チップA71の場合と同様であるため、説明を省略する。
次に、図4のステップD15において、図1の記録ドット分配処理部A35は、記録チップA72に対応した分配率情報(本例では、1:0)を、大小ドット分配パターン記憶部A41に渡し、分配率に応じた大小ドット分配パターンを得る。
ここで、大小ドット分配率に応じた大小ドット分配パターンの例を示す。図9(a)は、大小ドットを分配する前の記録ドット配置を示す。図9(b)〜(f)は、分配率に応じた大小ドットパターンを示す。図9(b)は大ドット:小ドット=1:0、図9(c)は大ドット:小ドット=3:1、図9(d)は大ドット:小ドット=1:1、図9(e)は大ドット:小ドット=1:3、図9(f)は大ドット:小ドット=0:1の分配率での大小ドット分配パターンである。図から明らかなように、大小ドット分配パターン中の大小ドットの記録を許可する位置の数の比率は、大小ドット分配率と同じになっている。
本例では、記録チップA72の大小ドット分配率は1:0であるので、図1の記録ドット分配処理部A35は、大小ドット分配パターンとして、図9(b)のパターンを得る。以下、図4のステップD16以降の処理は、記録チップA71と同様であるので、説明を省略する。
以上述べたように、本発明では大小ドット分配率に応じて大小ドット分配パターンを選択する。これにより、記録ヘッドの備える複数の記録チップが異なる記録特性を持っていても、これを補正して一定の吐出量で記録を行うことが可能となる。
本例では、記録チップ毎に大小ドット分配率を決定しているが、本発明はこれに限定されない。すなわち、記録チップを複数の区分に分割し、それぞれの区分に対して記録特性を取得して、大小ドット分配率を決定し、適切な大小ドット分配パターンを選択するようにしてもよい。図10は、記録チップを三分割した場合の記録チップ内の補正範囲を説明する図である。ここでは、記録チップ71のノズル列A71a〜A71dを、3つの領域A71−1、A71−2およびA71−3内に分割している。分割して得られた各領域のノズル群(以下、分割ノズル群ともいう)を本発明における異なる記録特性を示す単位として、各分割ノズル群に対して本発明を適用することができる。この形態は、記録チップ内の記録特性のばらつきが大きい場合に有効である。
<大小ドット分配パターンの生成方法>
次に、大小ドット分配パターンの生成方法について述べる。図11(a)および(b)は、大小ドット分配パターン作成フローである。図11(a)は、乱数による簡易的な方法を示し、図11(b)は、斥力ポテンシャルを用いたより高画質な方法を示す。
まず、図11(a)の乱数による簡易的な方法について説明する。図11(a)のステップN01において、大小ドット分配パターンを生成したい量子化後の出力Levelについての記録ドット配置を入力する。次に、ステップN02において、大小ドット分配率から、大ドットの生成確率Pro_Lを算出する。大小ドット分配率が大ドット:小ドット=3:1の場合を例にとると、大ドットの生成確率Pro_Lは75%となり、これはPro_L=75(%)と表される。次に、ステップN03において、ステップN01で入力された記録ドット配置から、大小ドットのいずれを記録するかの配分が成されていない未配分ドットを選択する。次に、ステップN04において、1から100の間の数値を乱数で発生させる。ステップN05において、この乱数を、先に算出された大ドットの生成確率Pro_Lと比較し、乱数が大ドット発生確率より大きい場合はステップN06に進み、一方、大ドット発生確率以下の場合はステップN07に進む。ステップN06では、ステップN03で選択された未配分ドットを小ドットに分配し、一方、ステップN07では、ステップN03で選択された未配分ドットを大ドットに分配する。ステップN06およびN07の後は、いずれも、ステップN08に進む。ステップN08では、大小ドットのいずれを記録するかの配分が成されていない未配分ドットが残っているか否かを確認する。未配分ドットが残っていれば、ステップN03からのステップを繰り返す。未配分ドットが残っていなければ、当該出力Levelについての大小ドット分配パターンの作成を終了する。
以上説明した図11(a)のフローに従う処理を、量子化後の出力Level毎に実施して、量子化後の出力Level毎の大小ドット分配パターンを得る。図11(a)の処理では、選択された未配分ドット毎に、配分する記録ドットサイズを順次決定すればよいため、データ生成に必要なメモリーが少なくてよいという利点がある。
次に、図11(b)の斥力ポテンシャルを用いた大小ドット分配パターン生成方法について説明する。まず、図11(b)のステップN11において、大小ドット分配パターンを生成したい量子化後の出力Levelの記録ドット配置を入力する。本例では、大小ドット分配パターンを生成したい量子化後の出力LevelをLevel1として、図12(a)の記録ドット配置を例に説明する。
ステップN12において、大小ドット分配率と、入力された量子化後の出力Levelについての記録ドット数とから、必要な大ドットの数を計算する。本例では、図12(a)における記録ドット数が16で、大小ドット分配率が1:1であるため、必要な大ドットの数は、式16×0.5=8より、8ドットとなる。
次に、ステップN13において、記録ドット配置のうち「斥力ポテンシャル_積算値」が最小の値を示す位置の記録ドットを選択する。記録ドットの選択が何らなされていない段階では、「斥力ポテンシャル_積算値」はいずれの位置においても0である。そのため、最初の1ドット目の分配については、任意の記録ドットを選択する。本例では、座標(X,Y)=(7,4)の位置の記録ドットが選択されたものとする(図12(b)中、☆印で示す)。次に、ステップN14において、該選択した記録ドットを大ドットに分配する(図12(c−1)中、◎印で示す)。次に、ステップN15において、「斥力ポテンシャル_積算値」に、分配された大ドットの斥力ポテンシャルを加算する。
ここで、斥力ポテンシャルについて、図13(a−1)〜(c−2)を参照して説明する。本例では、配置ドットを中心に、より傾きの大きい斥力ポテンシャルを得るため、配置ドットの中心の斥力ポテンシャルを50000とし、それ以外の点の斥力ポテンシャルを、「10000÷(距離の4乗)」で計算される等方的な斥力ポテンシャルとした。図13(a−1)は、ポテンシャルを立体化したグラフであり、図13(a−2)は、横軸X座標を0〜7とし、縦軸Y座標を0〜7としたときの各座標における斥力ポテンシャルを表した表である。図13(a−1)および(a−2)より明らかなように、座標(4,4)を中心に、急激な傾きをもったポテンシャルが得られている。
この図13(a−1)および(a−2)に示されるポテンシャルの中心を座標(0,0)に移したのが、図13(b−1)および(b−2)である。このとき、単一ドットについての斥力ポテンシャルをPot_aloneと表すとすると、位置(x,y)におけるポテンシャルは、下式で表される。
Pot_alone= 50000 {x=0、y=0},
10000÷(x2+y2)2 {x≠0、y≠0} (式1)
境界条件を満たすために、斜め方向も含む上下左右にも同じパターンが連続するとする。このとき、位置(x,y)における斥力ポテンシャルPot_0(x,y)は、下式で表される
Pot_0(x,y)= Pot_alone(x+array_X , y+array_Y)
+Pot_alone(x , y+array_Y)
+Pot_alone(x−array_X, y+array_Y)
+Pot_alone(x+array_X, y)
+Pot_alone(x , y)
+Pot_alone(x−array_X, y)
+Pot_alone(x+array_X, y−array_Y)
+Pot_alone(x , y−array_Y)
+Pot_alone(x−array_X, y−array_Y) (式2)
(式中、array_Xは、記録ドットパターンのX軸のサイズを示し、および
array_Yは、記録ドットパターンのY軸のサイズを示す。)
本例では、array_Xおよびarray_Yは、いずれも8である。
この時の斥力ポテンシャルの状態を、図13(c−1)および(c−2)に示す。任意の位置(a,b)に大ドットが配置された場合の位置(x,y)における斥力ポテンシャルは、位置(a,b)からの相対位置を前記Pot_0(x,y)に代入すればよい。したがって、このときの斥力ポテンシャルは、下式で表される。
Pot_ab(x,y)=Pot_0(Pos_x, Pos_y)
(式中、Pos_x=x−a {x≧aの場合},a−x{x≦aの場合}、および
Pos_y=y−b {y≧bの場合},b−y{y≦bの場合}
である。)
図11(b)のステップN15で座標(7,4)に斥力ポテンシャルを加算した「斥力ポテンシャル_積算値」の値を図12(c−2)に示す。図12(c−3)は、このときの「斥力ポテンシャル_積算値」の等高線グラフである。図に示すように、大ドットを配置した位置(X,Y)=(7,4)を中心に斥力ポテンシャルの数値が積算されていることがわかる。
次に、図11(b)のステップN16において、大ドットを配置した位置の記録ドットのステータスを未配分から配分済みに変更する。次に、ステップN17において、配置済みの大ドットの数と、先にステップN12で求めた必要な大ドットの数とを比較する。配置済みの大ドットの数が必要な大ドットの数に未達である場合には、ステップN13に戻って繰り返す。
2ドット目の大ドット配置について引き続き説明する。図12(c−2)の表中、網掛けで示されたセル部分(以下、単に網掛け部分ともいう)が、記録ドットが配置されている箇所を示している。ステップN13において、網掛け部分の中から「斥力ポテンシャル_積算値」が最も小さいセルを探し、当該セルに相当する箇所の記録ドットを選択する。図12(c−2)では、位置(2,1)および(2,7)のセル内の「斥力ポテンシャル_積算値」が同じ値169であるため、乱数でどちらを選択するか決定する。本例では位置(2,7)が選択されたものとする。記録ドットが選択されると、1ドット目と同様にステップN14およびN15において、選択された記録ドットを大ドットに分配し、さらに「斥力ポテンシャル_積算値」に新しい大ドットの斥力ポテンシャルを加算する。図12(d−1)は、位置(2,7)に大ドットを配分した様子である。図12(d−2)は、位置(2,7)に配分された大ドットの斥力ポテンシャルを加算したときの「斥力ポテンシャル_積算値」を示す表である。また、図12(d−3)は、「斥力ポテンシャル_積算値」の等高線グラフを示す図である。
以上のように、ステップN17において配置済みの大ドットの数が必要な大ドットの数に達したと判断されるまで、上記ステップN13からN16までの処理は繰り返し実施される。
ステップN17において、配置済みの大ドットの数が必要な大ドットの数に達している場合には、次のステップN18に進む。
図12(e)は、大小ドット分配率が1:1のときに大ドットが全体ドット数の半分の8個配置された状態を示す図である。配置済みの大ドットの数が必要な大ドットの数に達すると、残りの未配分の記録ドットは、図11のステップN18において小ドットに分配される。これにより、記録ドット配置および大小ドット分配率に沿った大小ドット分配パターンを得ることができる。
図12(f)は、本例において斥力ポテンシャルを用いて大小ドット分配パターンを生成した例である。斥力ポテンシャルを用いて大ドットを配置することにより、記録ドット配置の中で大ドットがより分散されて配置される。大ドットが分散配置されると、大小ドット分配率による濃度補正の位置によるばらつきが抑えられるとともに、より視認されやすい大ドットの粗密差がなくなるため、粒状性や一様性についても良好な結果が得られる。
<本発明の効果>
以下に、本発明の効果について説明する。
[第1の効果]
本発明の第1の効果は、記録画素あたりのインク量を一定にすることができる点にある。
図14は、本実施形態において、大ドットと小ドットとの数の比率を変えることによって、記録画素あたりのインク量を調整できることを示したグラフである。上述のように、記録位置が決定された記録ドットは、それぞれ大ドットまたは小ドットのいずれかに分配される。そのため、図14(a)に示すように、全記録ドットにおける大ドットと小ドットとの比率の合計は常に100%となっている。この時の記録画素あたりのインク量を、図14(b)に示す。大小ドット分配率を変更することにより、記録画素あたりのインク量を、記録ドットが小ドットのみである場合の2ngから大ドットのみである場合の3ngまで調整することができる。
次に、図15(a)〜(f)を参照して、本発明を実施することにより、記録チップA71〜A74毎に記録特性としてのインク量(吐出量)に差があった場合にも、記録画素あたりのインク量を一定に保つことができることを説明する。
図15(a)および(b)は、本例の説明に用いる記録チップ毎のインク量(吐出量)のばらつきを説明するグラフおよび表である。従来の記録チップで吐出量の狙い値(目標吐出量)を2.5ngとしたときに、製造ばらつきが±20%あり、記録チップの吐出量が2〜3ngの間でばらつくものとする。このような製造ばらつきが生じた場合、ラインヘッド内の記録チップ毎にインク量(吐出量)が異なってしまうため、記録濃度の差が生じて画像品位を低下させてしまうことがある。本発明では、異なる記録特性(吐出量)を持つ「小ドットノズル」および「大ドットノズル」を各記録チップに準備する。図は、従来と同様に±20%の製造誤差があるとすると、小ドットノズルは2.08ng±20%(1.67〜2.5ng)、大ドットノズルは3.13ng±20%(2.5〜3.75ng)のインク量(吐出量)のばらつきを持っていることを示している。図15(c)および(d)は、本発明を適用した場合の、小ドットノズルと大ドットノズルとの使用比率を示したものである。インク量誤差が−20%の記録チップの場合には大ドットノズルの使用比率を100%とする。インク量誤差が+20%の記録チップの場合には小ドットノズルの使用比率を100%とする。さらに、インク量誤差が−20%より大きく+20%より小さい記録チップの場合には、それぞれの比率の合計が100%で、かつ、記録画素あたりのインク量が一定になるように、大ドットと小ドットとの分配率を順次変更している。図15(e)および(f)は、本例での記録画素あたりのインク量を示すものである。1画素あたりのインク量が、従来の記録方法では記録チップの製造誤差により2〜3ngの間で変動してしまっていたが、本発明を適用することにより製造誤差によらず記録画素あたり2.5ngを実現することが可能であることが示されている。
以上述べたように、本発明を使用すると、製造誤差により記録チップ毎に吐出量が異なるような場合においても、大小ドット分配率を変更することで1ドットあたりのインク量を一定に保つことが可能となる。なお、本例では調整幅を大きく取るために分配率を0〜100%としたが、ノズル列毎の使用頻度差を少なくするために分配率の幅を狭く(例えば25〜75%に)してもよい。
[第2の効果]
図16(a)〜(f)を参照して、本発明の効果をさらに説明する。本発明の第2の効果は、記録濃度補正による記録ドットパターンの違いが視覚的に感知されにくい点にある。
図16(a)、(b)、および(c)は、インク量の誤差を、先行技術で開示されているように記録ドット数によって補正したときの記録ドット配置を示す模式図である。これに対し、図16(d)、(e)、および(f)は、本発明の第1の実施形態を適用して大小ドット分配率を変更して補正したときの記録ドット配置を示す模式図である。
まず、先行技術による補正方法では、インク量が少ない記録チップではドット数を増やし、インク量が多い記録チップではドット数を減らして補正を行う。図16(b)は、インク量の狙い値(目標吐出量)である2.5ngの吐出量で記録する記録ドットパターンを示し、ここでは16個のドットを記録する。図16(a)は、インク量を−20%とした2ngの吐出量で記録する場合の図16(a)の記録ドットパターンに対応する記録ドットパターンであり、濃度補正のために16×0.8≒13個のドットを記録する。さらに、図16(c)は、インク量を+20%とした3ngの吐出量で記録する場合の図16(a)の記録ドットパターンに対応する記録ドットパターンであり、濃度補正のために16×1.2≒19個のドットを記録する。従来の補正方法では、このようにドット数の調整によって記録画素あたりのインク量を一定に保ち、記録濃度の補正を行っている。この方法によると、図16(a)、(b)、および(c)の間で、記録ドットパターンに違いが生じる。そのため、記録濃度は同じでも、記録チップ毎の記録ドットパターンの違いが視認されて、画像ムラとして認識されてしまうという問題が生じる。また特許文献1で開示されている方法を適用したとしても、複数の吐出量の異なるノズル列が異なる位置に配置されているため、ドット数を変えずに平均の液滴量を等しくできたとしても、ドット位置の違いにより記録ドットパターンが異なってしまう。
一方、本発明の第1の実施形態を適応すると、インク量が目標吐出量である図16(e)、−20%である図16(d)、および+20%である図16(f)のいずれにおいても、記録ドットパターンが同一となる。したがって、本発明の第1の実施形態によれば、記録画素あたりのインク量を一定にして濃度を補正しつつ、記録ドットパターンを変えることがないことがわかる。
以上のように、本発明を適用することにより、記録濃度を補正すること、および記録ドットパターンを変化させないこと、の両方を達成することが可能となり、画像品位の劣化を抑制することができる。
以上説明した第1の実施形態では、記録装置A1内で画像データから記録ドット配置までの一連の処理を実施したが、本発明はこれに限定されない。本発明のフローをホスト側で処理し、記録装置A1ではホストから送られてきた画像データをそのまま記録する形態であってもよく、また、記録装置A1とホストとで処理を分担する形態であってもよい。
本実施形態例では、大小ドットの吐出量誤差を、大ドットと小ドットとで同一の値をとるものとして説明した。これは大小それぞれのドットを記録するノズルA71aおよびA71bが同一記録チップA71内にあり、吐出ノズル口径の誤差傾向が同一であるためである。しかし、大小ドットをそれぞれ別の記録チップで記録するなど、誤差傾向が大小ドットでそれぞれ異なるような場合にも、本発明を適用できることは理解されよう。その場合は、異なる記録特性をもつ複数の記録ドットのそれぞれの記録特性の組み合わせによって適当な分配率を設定すればよい。
また、本実施形態では、記録ドット位置について、記録ドットの記録解像度が1200×1200dpiの格子内で変更しない場合を例に説明した。ここで、量子化処理を行う記録画素単位で階調を表現しているため、該記録画素単位毎の記録ドット数・記録濃度は一定である必要がある。これに対し、目視距離からの観察においては量子化処理を行う記録画素単位内のさらに細かい記録ドットの位置変化の影響が感知されにくい。したがって、図4(b)のステップD13において、量子化処理部A33を用いて量子化処理を行う記録画素単位(本例では600×600dpi)の範囲内で、記録ドット位置を変更してもよい。
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、記録特性としての吐出量と、補正目標値と、を用いて、大小ドット分配率を求めた。また、量子化された画像データからドット記録位置を決定して、前記分配率に応じて前記ドット記録位置の各記録ドットを異なる記録特性をもつ大小ドットに配分し、さらに各ノズル列に分配して記録した。
これに対し、第2の実施形態では、記録特性として明度を用い、さらに、量子化された画像データを直接的に各ノズル列データへと分配する例を示す。
図17は、本発明の第2の実施形態の記録特性取得手段を説明するための説明図である。制御ユニットA2などは第1の実施形態と同様であるため図示していない。第2の実施形態では、記録ヘッドA7により記録特性取得用パターンJ100を記録し、記録されたパターンを記録パターン読み取り部J1によって読み取って、制御ユニットの記録特性取得部A51(図1)へと送付する。記録パターン読み取り部J1としては、画像の濃淡を読み取るCCDなどで構成されている。
図18は、本発明の第2実施形態の画像処理の概要図であり、図19(a)および(b)は、処理フローを説明するフロー図である。まず、図19(a)のステップS01で、先に図17の説明で述べたように、記録チップ毎に記録特性取得用パターンを記録し、記録されたパターンの明度を読み取ることにより、記録チップ毎の記録特性を取得する。以下、第1の実施形態と重複する部分については説明を省略する。
図18の概要図で第2の実施形態が第1の実施形態と異なる部分は、図18の「ドット記録位置・記録ドット分配・使用ノズル列決定部」A341である。この部分は、図1に示す第1の実施形態のドット記録位置決定部A34、記録ドット分配処理部A35、および使用ノズル列決定部A36が一体になったものであり、量子化された画像データを得て各ノズル列で記録するノズル列毎の記録ドットデータを出力する。
図19(a)および(b)のフロー図で第1の実施形態のフローと異なる部分は、図19(b)のステップS14である。第2の実施形態では、図4(b)に示す第1の実施形態のフロー図のステップD14〜D16に相当する処理を一括して実施する。
図20(a)〜(d−2−2)に、本実施形態で使用する大小ドット分配パターンを示す。量子化後の出力LevelがLevel1である場合を例に、本実施形態で使用する大小ドット分配パターンを詳細に説明する。図19(b)のステップS13において、図18の量子化処理部A33は量子化された画像データ(以下、単に量子化データともいう)をドット記録位置・記録ドット分配・使用ノズル列決定部A341に渡す。図20(a)は、量子化後の出力LevelがLevel1である8×8のサイズの画像データの例である。ステップS14で、ドット記録位置・記録ドット分配・使用ノズル列決定部A341は、入力された量子化データに応じて大小ドット分配パターンを参照して、大小の各ノズル列A71a、A71b、A71c、A71dに対応する記録ドットデータを生成する。図20(a−1−1)〜(a−2−2)は、大小ドット分配率が1:1のときの記録ドットパターンである。図20(a−1−1)はノズル列A71a用の、図20(a−1−2)はノズル列A71c用の、図20(a−2−1)はノズル列A71b用の、図20(a−2−2)はノズル列A71d用の、記録データを示す。入力された量子化後の出力Levelと、画像上の位置情報と、によりどのノズル列で記録されるかが決定される。図20(b)〜(d−2−2)に、量子化後の出力Level2〜4の、本実施形態における大小ドット分配パターンの例を記載する。
なお、図20(a−1−1)〜(a−2−2)に示す出力Level1についての4つの記録ドットパターンを重ねると、第1の実施形態で説明した図8(b−1)となる。同様に、図20(b−1−1)〜(b−2−2)に示す出力Level2についての4つの記録ドットパターンを重ねると、第1の実施形態で説明した図8(b−2)となる。図20(c−1−1)〜(c−2−2)に示す出力Level3についての4つの記録ドットパターンを重ねると、第1の実施形態で説明した図8(b−3)となる。さらに、図20(d−1−1)〜(d−2−2)に示す出力Level4についての4つの記録ドットパターンを重ねると、第1の実施形態で説明した図8(b−4)となる。
本実施形態の大小ドット分配パターンは、第1の実施形態の大小ドット分配パターンをマスクで各ノズル列に分配して得たものであってもよい。また、第1の実施形態で説明した「乱数により記録ドットサイズを決定」や「斥力ポテンシャルを用いて記録ドットサイズの配置を決定」などの方法を拡張して大小ドット分配パターンを生成してもよい。その場合は、第1の実施形態における「大ドットおよび小ドットの位置決定」の部分を「使用ノズル列の決定」に置き換えて、さらに、大小2Plane(2種類のノズル列群)の出力をノズル列数分(本例では4Plane)に増やせばよい。特に「斥力ポテンシャル」を用いて記録ドットサイズ・使用ノズル列を決定すると、各ノズル列で記録されるドット数を均等に配置し、かつ、大ドットの分散性および各ノズル列で記録される大(小)ドットの分散性を高めることができる。
ここで、使用ノズル列の使用頻度の偏りは、よく使用されるノズル列が早く寿命に達して記録ヘッドとしての耐久性を低下させてしまう。また大ドットが適度に分散していないと記録媒体上に画像を形成した際の粒状性に好ましくない影響がある。さらに、ノズル列毎の記録ドットが適度に分散していないと、ノズル列間で記録位置にずれが生じた場合に、よりずれが目立ちやすい。
これらの問題に対し、「斥力ポテンシャル」を用いて記録ドットサイズ・使用ノズル列を決定した大小ドット分配パターンは、記録ヘッドの耐久性や画像の粒状性を向上し、ノズル列間の記録位置ずれによる画像影響を軽減することができる。
以上に述べたように、第2の実施形態では、補正の対象となる記録特性を明度とし、異なる明度を持つ記録ドットの分配率に従って、量子化データから ノズル列毎の記録データを生成および記録する。これによって、第2の実施形態は、画像濃度を補正することと、記録ドットパターンを変化させないこととを両立させ、画像ムラを抑制することを可能とする。
また、「ドット記録位置決定」、「記録ドット分配」、および「使用ノズル列決定」を一度に行うことができるため、第1の実施形態に比べ、より短い時間および軽い負荷で処理を実施することができる。さらに、第2の実施形態では、量子化データから各ノズル列で記録する記録ドットデータを直接生成する。このため、「斥力ポテンシャル」を用いて大小ドット分配パターンを生成するなどして、記録ヘッドの耐久性向上、画像の粒状性向上、およびノズル列間の記録ドットの位置ずれ影響の軽減を得ることができる。
なお、本発明における記録特性として第1の実施形態ではインク量(吐出量)、第2の実施形態では明度を挙げたが、濃度ムラに影響するような記録特性であれば前述の2つに限らないことは理解されよう。
例えば、吐出量そのものではなく、吐出量毎に区分けされた吐出量ランクを用いてもよい。これは、吐出量ランクの方が、より少ない情報量で管理できるため、記録装置や記録ヘッドのメモリー消費量を削減できるためである。
また、明度と同様に、濃度を用いてもよい。また、吐出ノズルのノズル口径(もしくはノズル口径ランク)を記録特性に関する情報としてもよい。これは、吐出量と吐出ノズル口径との関連性が高いことを利用したものである。これによれば、インクを用いる必要がないため記録特性取得の手間を大幅に削減することができる。
また、異なる記録特性を持つ複数の記録ドット全てではなく、一部の記録ドットの記録特性を取得して、分配率を決定してもよい。これは、同一記録チップ内に異なる記録特性を持つ記録ドットを吐出するノズル群を設けた場合に、同一記録チップ内であれば前記異なる複数の記録特性のばらつきの間に関連性があるためである。記録特性の取得を一部の記録特性を持つ記録ドットに限定することで、記録特性取得時間や、記録特性取得に用いられる記録媒体・インクなどを削減することができる。
このような記録特性は、画像記録装置で取得する他に、あらかじめ工場などで出荷前に測定し、記録ヘッドに設けられた記憶部に記憶させておいてもよいことは理解されよう。また、記録特性取得手段の一種として、使用者に記録特性を示す情報を入力させてもよい。記録ヘッドの特性情報や記録媒体から、好ましい補正の程度を使用者に判断させることにより、特別な記録特性取得手段を持たせることなく、適切な濃度補正を行うことができる。
(第3の実施形態)
第3の実施形態では、量子化、ドット記録位置決定、および大小ドットへの記録ドット分配を一括して行う例を示す。
図21は、第3の実施形態の画像処理の概要図であり、図22(a)および(b)は、第3の実施形態の処理フローを説明するフロー図である。第1の実施形態および/または第2の実施形態と重複する部分については、説明を省略する。
図21の概要図で第1の実施形態と異なる部分は、図21に示される「量子化・ドット記録位置・記録ドット分配処理部」A331である。この部分は、図1に示される第1の実施形態の量子化処理部A33、ドット記録位置決定部A34、および記録ドット分配処理部A35が一体となったものである。第3の実施形態では、各色に分解された多階調(本例では256階調)の画像データを得て、大小それぞれの記録ドットデータを出力する。
また、図22(a)および(b)のフロー図で第1の実施形態と異なる部分は、図22(b)のステップV13である。第3の実施形態では、図4(b)に示す第1の実施形態のフロー図のステップD13〜D15に相当する処理を一括して実施する。
図23(a)〜(b−4)は、本実施形態で使用する「量子化・ドット記録位置・記録ドット分離処理部」 A331での処理を説明するための、大小ドット分配率が1:1の場合の大小ドット分配パターンである。図23(a)が大ドット用、(b)が小ドット用の例である。図22(b)のステップV12において、図21の色変換処理部A32は、色毎に分解した出力多値画像データ(本例では0〜255の256階調)を、量子化・ドット記録位置・記録ドット分配処理部A331に渡す。量子化・ドット記録位置・記録ドット分離処理部A331は、渡された出力多値画像データを、大ドット用および小ドット用それぞれの閾値が設定された大ドット分配用パターンおよび小ドット分配用パターンの同一位置の閾値と比較する。画像データの信号値が閾値以上の部分にのみ、大ドットおよび小ドットをそれぞれ配置する。
具体的に説明する。例えば、出力多値画像データが信号値「4」の均一な画像データの場合、大ドット分配用パターンの閾値の最小値は7であり、信号値は閾値未満であるため、大ドットは出力なしとされる((図23(a−1))。また、このとき、小ドット分配用パターンの閾値の最小値は3であり、信号値は閾値以上であるため、小ドットはこの位置に1ドット出力される((図23(b−1))。同様にして、出力多値画像データの信号値が「8」の場合には、大ドットは閾値7が与えられた右下側の位置に1ドット出力され(図23(a−2))、小ドットは、先ほどと同じ、閾値3が与えられた位置に1ドット出力される(図23(b−2))。
さらに、出力多値画像データの信号値が、第1の実施形態における量子化後の出力Level1の代表値「64」である場合の例を、図23(a−3)および(b−3)に示す。図で明らかなように、閾値が64以下の部分のドットがONとなり出力対象となる。図23(a−4)および(b−4)は、出力多値画像データの信号値が「64」のときの、大ドットおよび小ドットそれぞれのドット配置を図示したものである。大ドットと小ドットとが共に8ドットずつ記録されており、分配率1:1を満たすことがわかる。
以上のように、図23(a)〜(b−4)では、大小ドット分配率が1:1の場合について説明した。大小ドット分配率が異なる場合は、当該大小ドット分配率を満たす異なる大小ドット分配パターンを用いればよい。
以上述べたように、大小ドット分配パターンを閾値の集合パターンとして持つことで、出力多値画像データから、大小ドット分配率に応じた、大小ドットそれぞれの記録ドットパターンを生成することが可能となる。
第1の実施形態では、出力多値画像データについて量子化後の出力Level毎に大小ドット配置および大小ドット分配率を規定していた。そのため、場合によっては量子化後の出力Levelと出力Levelとの間の階調において、好ましくない粒状性を引き起こす場合があった。本実施形態の方法によれば、多値の画像データの各信号値に対して大小ドットの配置を決めることができるので、多値の画像データの信号値によらず粒状性を良好に保つことが可能となる。また、「量子化処理」、「ドット記録位置決定」、および「記録ドット分配」を一度に行うことができるため、第1の実施形態に比べ、より短い時間、および軽い負荷で処理を実施することができる。
(第4の実施形態)
第4の実施形態では、出力多値画像データの段階で大小ドット分配率に応じて画像データを分割し、その後、該分割された出力多値画像データをそれぞれ量子化しおよび記録ドット位置の決定を行い、大小それぞれの記録ドットパターンを生成する例を示す。
図24は、第4実施例の画像処理部の概要図であり、図25(a)および(b)は、処理フローを説明するフロー図である。第1から第3の実施形態と重複する部分については説明を省略する。
図24の概要図で第1の実施形態と異なる部分は、図24の「大小分配処理部」A351、および「量子化・ドット記録位置決定部」A342である。大小分配処理部A351は、図25(b)のステップY12において、色変換処理部A32で出力多値画像データを各色に分割する。次に、ステップY13において、各色に分割された出力多値画像データを入手し、これを、画像データを記録するノズル位置に応じた大小ドット分配率に沿って、多値の状態で分割する。次に、ステップY14において、量子化・ドット記録位置決定部A342は、分割された多値の画像データから、大小それぞれの記録ドットパターンを生成する。
図26(a)〜(f)は、上記本実施形態での画像データの分割、および大小それぞれの記録ドットパターンを生成する経過を説明する説明図である。まず、各色に分割された出力多値画像データの例として図26(a)を考える。階調数256(0〜255階調)の画像データで信号値が「64」の場合を例にして説明を行う。
図25(b)のステップY13において、大小分配処理部A351は、出力多値画像データを記録するノズル位置に応じた大小ドット分配率を参照して、出力多値画像データを、大小ドット分配率に応じて分配する。本例では、大小ドット分配率を1:1としており、図26(b−1)および(b−2)に示されるような、分割された画像データが得られる。
次に、ステップY14において、量子化・ドット記録位置決定部A342は、該分割された画像データから大小それぞれの記録ドットパターンを生成する。本例では量子化手法としてディザを利用した形態で説明する。
図26(c)は、ディザの閾値マトリクスであり、画像データの値と値とを比較して、閾値以上の値が与えられた部分で出力をONにする。まず、図26(d−1)は、図26(b−1)の分割された画像データと、図26(c)のディザ閾値マトリクスとを比較した結果を示す。画像データの信号値が閾値以上の値を示す部分で大ドットが出力される。出力された大ドットの記録ドットパターンを図26(d−2)に示す。
次に、小ドットの記録ドットパターンを、本実施形態では大ドットと同じ閾値マトリクス(図26(c))を用いて作成する。大ドット信号値+小ドット信号値の値(すなわち分割前の信号値)が閾値以上で、かつ大ドットが出力されていない部分に、小ドットを出力するものとする。図26(e−1)および(e−2)に、小ドットの記録ドットパターンを生成した結果を示す。
図26(f)は、図26(d−2)および(e−2)の大ドットおよび小ドットの記録ドットパターンを重ね合わせたものである。本実施例の処理により、信号値「64」の画像データと、大小ドット分配率1:1とから、大ドットが8個、および小ドットが8個の、大小ドット数が1:1の記録ドットパターンが得られることがわかる。
このように、1つのディザ閾値マトリクスを大小ドットで共有することにより、大ドットと小ドットとを合わせた記録ドットパターンを、大小ドット分配率によらずに、同じにすることができる。
以上述べたように、大小ドット分配率に沿って画像データを分割する手段は、多階調の出力多値画像データを分割することでもよいことがわかる。
(第5の実施形態)
第5の実施形態では、量子化、ドット記録位置決定、大小ドットへの記録ドット分配、および使用ノズル列の決定を一括して行う例を示す。
図27は、第5の実施形態の画像処理の概要図であり、図28(a)および(b)は、処理フローを説明するフロー図である。第1〜第4の実施形態と重複する部分については説明を省略する。
図27の概要図で第1の実施形態と異なる部分は、図27の「量子化・ドット記録位置・記録ドット分配・使用ノズル列決定部」 A332である。この部分は、図1の第1の実施形態の、量子化処理部A33、ドット記録位置決定部A34、記録ドット分配処理部A35、および使用ノズル列決定部A36が一体となったものである。各色に分解された多階調(本例では256階調)の出力多値画像データを得て、異なる記録特性を持つ複数のノズル列で記録するそれぞれのノズル列毎の記録ドットパターンを出力する。
図28(a)および(b)のフロー図で第1の実施形態と異なる部分は、図28(b)のステップZ13である。ステップZ13では、図4に示す第1の実施形態のフローのうち、ステップD13〜D16に相当する処理を一括して実施する。
図29(a−1)〜(d−1)は、本実施形態で使用する「量子化・ドット記録位置・記録ドット分配・使用ノズル列決定部」 A332での処理を説明するための、大小ドット分配率が1:1の場合の、大小ドット分配パターンである。図29(a−1)はノズル列A71a用、図29(b−1)はA71b用、図29(c−1)はA71c用、および図29(d−1)はA71d用の例である。図28(b)のステップZ13において、量子化・ドット記録位置・記録ドット分配・使用ノズル列決定部A332は、次の処理を一括的に行う。すなわち、まず、各色に分解された出力多値画像データ(本例では0〜255の256階調)を入手する、次に、図29(a−1)〜(d−1)に示される、各ノズル列分用意された大小ドット分配パターンの同じ位置の閾値と比較する。そして、画像データの信号値が閾値以上を示す部分にのみ、ノズル列に記録ドットを配置する。
具体的に説明する。例えば、出力多値画像データが信号値「4」の均一な画像データの場合を、図29(a−2)〜(d−2)に示す。この場合、ノズル列A71aについては、図29(a−2)に示されるように閾値の最小値は7であり、信号値は閾値未満であるため、記録ドットは出力されない。ノズル列A71cおよびA71dについても、同様に、記録ドットは出力されない(図29(c−2)および(d−2))。また、ノズル列A71bについては、図29(b−2)に示されるように、出力多値画像データの信号値「4」以下閾値「3」が与えられた部分が左上側に存在するため、該当箇所に1ドット記録される。
ここで、ノズル列A71bは小ドットのノズル列であるので、出力多値画像データの信号値が「4」の場合には、「小ドットが1ドット」記録されることとなる。
次に、出力多値画像データの信号値が「8」の場合について、図29(a−3)〜(d−3)を参照して説明する。先程と同様に、出力多値画像データの信号値が閾値以上の箇所に記録ドットを配置することにより、記録ドットが配置される。図29(a−3)を参照して、ノズル列A71aについてはパターンの右下側に、大ドット1ドットが配置される。また、図29(b−3)を参照して、ノズル列A71bについては、パターンの左上側に小ドット1ドットが配置される。
さらに、出力多値画像データの信号値が「64」の場合について、図29(a−4)〜(d−4)を参照して説明する。各ノズル列用の大小ドット分配パターンで閾値が出力多値画像データの信号値以下の箇所に記録ドットが配置される。図29(a−5)〜(d−5)に、この時の各ノズル列で記録される大小ドットの配置を抜き出して示す。本実施形態によれば、大小ドット分配率が1:1で出力多値画像データの信号値が「64」の場合に、各ノズル列について4ドットずつであり、かつ、大小ドットが8ドットずつのドットが記録されることがわかる。
図29に示す本実施形態の例では、大小ドット分配率が1:1の場合について説明した。大小ドット分配率が異なる場合は、該異なる大小ドット分配率を満たし、かつ記録ドットを記録する記録画素の位置を変えないような、異なる大小ドット分配パターンを用いればよい。
また、本実施形態では、図29(a−1)〜(d−1)の大小ドット分配パターン間で重なりがない閾値パターンを用いたが、本発明はこれに限定されず、各パターン間で重なりがあるような大小ドット分配パターンを用いてもよい。重なりがないパターンを使用すると、各記録画素あたり大小どちらか1ドットまでしか記録されないが、重なりを許容すると、2ドット以上のドットを記録することができ、記録可能なインク量を容易に増やすことができる。
以上述べたように、本実施形態では、大小ドット分配パターンをノズル列毎に閾値の集合パターンとして持つ。これにより、入力された多値の画像データを、多値出力画像生成手段で、色別の出力多値画像データへ生成し、該生成された多値出力画像データから、大小ドット分配率に応じた、ノズル列毎の記録ドットパターンを生成することが可能になる。
第1の実施形態では、多値の画像データについて量子化後の出力Level毎に大小ドット配置および大小ドット分配率を規定していた。そのため、場合によっては量子化後の出力Levelと出力Levelとの間の階調において、好ましくない粒状性を引き起こす場合があった。本実施形態の方法によれば、多値の画像データの各信号値に対して大小ドットの配置を決めることができるので、多値の画像データの信号値によらず、粒状性を良好に保つことが可能となる。
また、本実施形態では、出力多値画像データの信号値に対して各ノズル列で記録されるドットの配置を決めることができるので、各ノズル列の使用頻度の差を減らして記録ヘッドの耐久性を向上させることができる。また、「量子化処理」、「ドット記録位置決定」、「記録ドット分散」、および「使用ノズル列決定」を一度に行うことができるため、第1の実施形態にくらべ、より短い時間、および軽い負荷で処理を実施することができる。
以上、第1から第5の実施形態を用いて述べたように、本発明では、ノズル列の所定部分毎の記録特性のばらつきを原因とする画像品質の低下を防止している。第1から第5実施形態を用いて、さまざまな方法で分配率に対応した記録ドットの分配が可能であることを示した。
本発明における異なる記録特性としては、大小ドットの組み合わせ以外、例えば3種類のドットサイズを用いて大中小ドットなどとしてもよいことは理解されよう。また、ラインプリンタを用いて本発明を説明したが、本発明は、シリアルプリンタに適用してもよい。シリアルプリンタの場合、本発明の異なる記録特性を、例えば記録チップ毎に設定し、吐出量の異なる大ドット記録チップおよび小ドット記録チップとするなど、記録チップ単位で補正を行ってもよい。