以下に図面を参照し、本発明の第1の実施形態について詳細に記載する。
(第1の実施形態)
図1は本発明の第1の実施形態に係る記録装置1000の内部の構成を部分的に示す斜視図である。また、図2は本発明の第1の実施形態に係る記録装置1000の内部の構成を部分的に示す断面図である。
記録装置1000の内部にはプラテン2が配置されており、このプラテン2には記録媒体3を吸着させて浮き上がらないようにするために多数の吸引孔34が形成されている。この吸引孔34はダクトと繋がっており、さらにダクトの下部に吸引ファン36が配置され、この吸引ファン36が動作することでプラテン2に対する記録媒体3の吸着を行っている。
キャリッジ6は、紙幅方向に延伸して設置されたメインレール5に支持され、X方向(交差方向)に沿った往方向および復方向に往復走査(往復移動)することが可能なように構成されている。キャリッジ6は、後述するインクジェット方式の記録ヘッド7を搭載している。なお、記録ヘッド7は、発熱体を用いたサーマルジェット方式、圧電素子を用いたピエゾ方式等、さまざまな記録方式を適用することが可能である。キャリッジモータ8は、キャリッジ6をX方向に移動させるための駆動源であり、その回転駆動力はベルト9でキャリッジ6に伝達される。
記録媒体3は、ロール状に巻かれた媒体23から巻き出すことで給送される。記録媒体3は、プラテン2の上でX方向と交差するY方向(搬送方向)に搬送される。記録媒体3はピンチローラ16と搬送ローラ11によって挟持されており、搬送ローラ11が駆動することによって搬送が行われる。また、記録媒体3はプラテン2よりY方向の下流ではローラ31と排送ローラ32に挟持され、さらにターンローラ33を介して記録媒体3は巻取りローラ24に巻きつけられている。
図3(a)は本実施形態に係る記録ヘッド7を示す斜視図である。また、図3(b)は記録ヘッドのブラックインク用の吐出口列22Kが設けられているチップ25の拡大図である。また、図3(c)は記録ヘッドのシアンインク用の吐出口列22C、マゼンタインク用の吐出口列22M、イエローインク用の吐出口列22Yが設けられているチップ25の拡大図である。
図3(a)からわかるように、本実施形態では、記録ヘッド7内にはブラックインクを吐出するための記録チップ(Bkチップ)25とカラーインクを吐出するための記録チップ(Clチップ)26が別体に設けられている。
そして、図3(b)に示すように、Bkチップ25には2つの列がY方向(所定方向)に1インチ当たり600個の記録解像度(600dpi)だけずれて配列された、ブラックインクを吐出するためのK吐出口列22Kが形成されている。これらの2つの列のそれぞれには、吐出口30aがY方向(所定方向)に1インチ当たり300個の記録解像度(300dpi)で配列されている。ここで、吐出口30aは約25plのインクを吐出可能であり、吐出口30aから記録媒体上にインクを1滴吐出して形成されるドットの径は約60μmとなる。また、図3(b)では簡単のため6つの吐出口30aしか記載していないが、実際には128個の吐出口30aによって吐出口列22Kが形成されている。
また、図3(c)に示すように、Clチップ26には吐出口30bがY方向に1/600インチの密度(600dpi相当)で配列された列と吐出口30cがY方向に1/600インチの密度(600dpi相当)で配列された列からなるシアンインクを吐出するための吐出口列22Cが形成されている。ここで、吐出口30bは約5plのインクを吐出可能であり、吐出口30bからインクを1滴吐出して形成されるドットの径は約50μmとなる。また、吐出口30cは約2plのインクを吐出可能であり、吐出口30cからインクを1滴吐出して形成されるドットの径は約35μmとなる。また、図3(c)では簡単のためそれぞれ3つの吐出口30bと3つの吐出口30cしか記載していないが、実際には128個の吐出口30bと128個の吐出口30cによって吐出口列22Cが形成されている。
更に、同じようにしてClチップ26にはマゼンタインクを吐出するための吐出口列22Mとイエローインクを吐出するための吐出口列22Yが形成されている。
各吐出口30a、30b、30cの直下には記録素子が設置されており(不図示)、記録素子が駆動されることで生成される熱エネルギーによって直上のインクが発泡し、それにより吐出口からインクが吐出される。なお、以降の説明では簡単のため、同じ色、且つ、同じドットサイズのインクを吐出する列を形成する複数の吐出口の直下に形成された複数の記録素子からなる列を記録素子列と称する。
図4は、本実施形態における制御系の概略構成を示すブロック図である。主制御部300は、演算、選択、判別、制御などの処理動作を実行するCPU301と、CPU301によって実行すべき制御プログラム等を格納するROM302と、記録データのバッファ等として用いられるRAM303、および入出力ポート304等を備えている。EEPROM313には、後述する画像データやマスクパターン、吐出不良ノズルデータ等が格納されている。そして、入出力ポート304には、搬送モータ(LFモータ)309、キャリッジモータ(CRモータ)310、記録ヘッド7に対応する各駆動回路305、306、307が接続されている。さらに、主制御部300はインターフェイス回路311を介してホストコンピュータであるPC312に接続されている。
図5は本実施形態にてCPU301が実行するデータの処理過程を示すフローチャートである。
ステップ401においてデジタルカメラやスキャナなどの画像入力機器、あるいはコンピュータ処理などによって得られるRGB各256階調(0〜255)の原画像信号を600dpiの解像度で入力する。
ステップ402の色変換処理Aによって、ステップ401で入力されたRGBの原画像信号をR’G’B’信号へ変換する。
次のステップ403の色変換処理Bおいて、R’G’B’信号が各色インクに対応する信号値に変換される。本実施例の記録モードはC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)の3色で構成するものとする。したがって、変換後の信号はシアン、マゼンタ、イエローのインク色に対応するデータC1、M1、Y1である。データC1、M1、Y1の各階調数は256(0〜255)、解像度は600dpiである。なお具体的な色処理BはR、G、B各入力値とC、M、Y各出力値の関係を示した三次元ルックアップテーブル(不図示)を使用し、テーブル格子点値から外れる入力値については、その周囲のテーブル格子点の出力値から補間により出力値を求める。以下、データC1、M1、Y1のうち、データC1について代表して説明する。
ステップ404において、階調補正テーブルを用いた階調補正によりデータC1の階調補正を行い、階調補正後のデータC2を得る。
ステップ405において、データC2に対して誤差拡散法による量子化処理を行い、5階調(階調レベル0、1、2、3、4)で解像度が600dpi×600dpiの階調データC3を得る。ここでは誤差拡散法を用いたが、ディザ法であっても構わない。
ステップ406において、階調データC3を図6に示す吐出口列展開テーブルに従って、各吐出口列用の画像データC4を得る。本実施形態では、2pl吐出口列用の画像データC4_2と5pl吐出口列用の画像データC4_5はそれぞれ「0」、「1」、「2」の3階調に展開される。
詳細には、階調データC3の階調レベルが0である場合、2pl吐出口列用の画像データC4_2は「0」、5pl吐出口列用の画像データC4_5は「0」となるように展開される。また、階調データC3の階調レベルが1である場合、2pl吐出口列用の画像データC4_2は「1」、5pl吐出口列用の画像データC4_5は「0」となるように展開される。また、階調データC3の階調レベルが2である場合、2pl吐出口列用の画像データC4_2は「1」、5pl吐出口列用の画像データC4_5は「1」となるように展開される。また、階調データC3の階調レベルが3である場合、2pl吐出口列用の画像データC4_2は「2」、5pl吐出口列用の画像データC4_5は「1」となるように展開される。また、階調データC3の階調レベルが4である場合、2pl吐出口列用の画像データC4_2は「2」、5pl吐出口列用の画像データC4_5は「2」となるように展開される。
なお、画像データC4_2、C4_5は600dpi×600dpiの解像度において「00」、「01」、「10」の3通りの2ビットの情報のいずれかとなる。ここで、ある画素において画像データを構成する2ビットの情報が「00」である場合、その情報が示す値(以下、画素値とも称する)は「0」である。また、ある画素において画像データを構成する2ビットの情報が「01」である場合、その情報が示す値(画素値)は「1」である。ある画素において画像データを構成する2ビットの情報が「10」である場合、その情報が示す値(画素値)は「2」である。画像データC4_2、C4_5の詳細については後に説明する。
そして、ステップ407において、シアンインク、2pl用の画像データC4_2およびシアンインク、5pl用の画像データC4_5のそれぞれに対して後述する分配処理を行い、各走査での各画素領域に対するそれぞれ2pl、5plのシアンインクの吐出または非吐出を定める記録データC5_2、C5_5を生成する。
同様にして、マゼンタインク・2pl用の記録データM5_2、マゼンタインク・5pl用の記録データM5_5、イエローインク・2pl用の記録データY5_2、イエローインク・5pl用の記録データY5_5、ブラックインク・25pl用の記録データK5_25も生成される。
そして、ステップ408にて記録ヘッドに記録データC5_2、C5_5、M5_2、M5_5、Y5_2、Y5_5、K5_25が送信され、ステップ409にてそれらの記録データにしたがってインクが吐出される。
なお、ステップ401〜407における処理のすべてをPC312が行っても良いし、ステップ401〜407における処理の一部をPC312が、他部を記録装置1000が行っても良い。
なお、以降の説明では簡単のため、シアンインク・2pl用の記録データC5_2、シアンインク・5pl用の記録データC5_5のみについて記載する。
本実施形態では、時分割駆動方式およびマルチパス記録方式にしたがって記録を行う。以下にそれぞれの制御について詳細に説明する。
(時分割駆動方式)
図3に示したような多数の記録素子が配列された記録ヘッドを用いる場合、全ての記録素子を同時に駆動して同一のタイミングでインクを吐出しようとすると、大容量の電源が必要となってしまう。このような電源の大容量化を抑制するために記録素子を複数の駆動ブロックに分割し、同一行内を記録するために駆動ブロックごとに駆動するタイミングを異ならせる、いわゆる時分割駆動方式を行うことが一般に知られている。この時分割駆動方式によれば、同時に駆動する記録素子の数を減らすことができるため、記録装置に必要な電源の容量を抑えることができる。
図7は本実施形態における時分割駆動方式を説明するための図である。なお、図7(a)は1つの記録素子列を構成する128個の記録素子を、図7(b)は各記録素子に印加される駆動信号を、図7(c)は実際に吐出されるインク滴をそれぞれ模式的に示す図である。なお、以下の説明では図7(a)に示すように128個の記録素子のうちの最もY方向下流側の記録素子を記録素子No.1とし、Y方向上流側に向かうにしたがって記録素子No.2、No.3、・・・No.126、No.127と1つずつ記録素子No.を増加させ、最もY方向上流側の記録素子を記録素子No.128と称して説明する。
本実施形態では、128個の記録素子をY方向に連続する16個の記録素子ずつ、第1セクションから第8セクションまでの8個のセクションに分類される。そして、8個のセクションそれぞれにおいて相対的に同じ位置に位置する記録素子を同じ駆動ブロックとし、合計で駆動ブロックNo.1から駆動ブロックNo.16までの16個の駆動ブロックに分割する。
詳細には、第1セクションから第8セクションまでの8個のセクションそれぞれにおいて最もY方向下流側の記録素子を駆動ブロックNo.1に属する記録素子とする。すなわち、記録素子No.1、No.17、・・・、No.113の記録素子が駆動ブロックNo.1に属する記録素子となる。言い換えると、0〜7の整数をaとした際に、記録素子No.(16×a+1)を満たす記録素子が駆動ブロックNo.1に属する記録素子となる。
また、第1セクションから第8セクションまでの8個のセクションそれぞれにおいてY方向下流側から2つ目の記録素子を駆動ブロックNo.2に属する記録素子とする。すなわち、記録素子No.2、No.18、・・・、No.114の記録素子が駆動ブロックNo.2に属する記録素子となる。言い換えると、0〜7の整数をaとした際に、記録素子No.(16×a+2)を満たす記録素子が駆動ブロックNo.2に属する記録素子となる。
以下、駆動ブロックNo.3〜No.16についても同様である。詳細には、0〜7の整数をaとした際に、記録素子No.(16×a+b)を満たす記録素子が駆動ブロックNo.bに属する記録素子となる。
本実施形態における時分割駆動方式では、予め定められた駆動順序にて異なる駆動ブロックに属する記録素子が互いに異なるタイミングで順次駆動されるように、各記録素子の駆動を制御する。ここで、本実施形態では駆動順序の設定が記録装置1000内のROM302に記憶されており、それを駆動回路307を介して記録ヘッドに送信する。そして記録ヘッドでは所定の間隔でブロック選択信号が送られてきて、そのブロック選択信号と記録データとのANDで駆動信号が記録素子に流れる。図7(b)では、駆動順序として駆動ブロックNo.1、5、9、13、2、6、10、14、3、7、11、15、4、8、12、16の順序で各駆動ブロックに属する記録素子が駆動されるように駆動信号27を印加する。この結果、図7(c)に示すようにインク滴28が吐出される。
(マルチパス記録方式)
本実施形態では、記録媒体上の単位領域に対して複数回の走査で記録を行うマルチパス記録方式にしたがって記録を行う。
図8は4回の走査により単位領域内に記録を行う場合を例として、一般的なマルチパス記録方式について説明するための図である。ここで、本実施形態におけるマルチパス記録方式ではX方向の上流側から下流側への走査(以下、往方向への走査とも称する)とX方向の下流側から上流側への走査(以下、復方向への走査とも称する)とを交互に実行する。
記録素子列22に設けられたそれぞれの記録素子、Y方向に沿って第1、第2、第3、第4の記録素子群に分割される。ここで、第1の記録素子群は記録素子No.97〜128、第2の記録素子群は記録素子No.65〜96、第3の記録素子群は記録素子No.33〜64、第4の記録素子群はNo.1〜32からそれぞれ構成される。また、第1から第4の記録素子群それぞれのY方向における長さは、記録素子列のY方向における長さをLとした場合、L/4となる。
1回目の記録走査(1パス)では、記録媒体3上の単位領域211に対して第1の記録素子群からインクが吐出される。ここで、1パス目はX方向の上流側から下流側に向かって行われる。
次に、記録媒体3を記録ヘッド7に対してY方向の上流側から下流側にL/4の距離だけ相対的に搬送する。なお、ここでは簡単のため、記録ヘッド7を記録媒体3に対してY方向の下流側から上流側に搬送した場合を図示しているが、搬送後の記録媒体3と記録ヘッド7との相対的な位置関係は記録媒体3をY方向下流側へ搬送した場合と同じとなる。
この後に2回目の記録走査を行う。2回目の記録走査(2パス)では、記録媒体上の単位領域211に対しては第2の記録素子群から、単位領域212に対しては第1の記録素子群からインクが吐出される。なお、2パス目はX方向の下流側から上流側に向かって行われる。
以下、記録ヘッド7の往復走査と記録媒体3の相対的な搬送を交互に繰り返す。この結果、4回目の記録走査(4パス)が行われた後には、記録媒体3の単位領域211では第1〜第4の記録素子群のそれぞれから1回ずつインクが吐出されたことになる。
なお、ここでは4回の走査で記録を行う場合について説明したが、他の回数だけ走査を行って記録する場合であっても同様の過程によって記録を行うことができる。
本実施形態では、上述のマルチパス記録方式において、各画素当たりn(n≧2)ビットの情報を有する画像データと、各画素当たりm(m≧2)ビットの情報を有するマスクパターンと、画像データとマスクパターンそれぞれにおける複数ビットの情報が示す値の組み合わせに応じてインクの吐出または非吐出を規定するデコードテーブルと、を用いて、画像データから各走査での記録に用いる1ビットの記録データを生成する。ここで、画像データの各画素当たりnビットの情報は各画素に対するインクの吐出回数に対応している。また、マスクパターンの各画素当たりmビットの情報は各画素に対するインクの吐出の許容回数に対応している。なお、以下の説明では画像データ、マスクパターンともに2ビットの情報から構成される場合について記載する。
図9はそれぞれ複数ビットの情報を有する画像データおよびマスクパターンを用いて記録データを生成する過程を説明するための図である。また、図10は図9に示すような記録データの生成に際して用いるデコードテーブルを示す図である。
図9(a)はある単位領域内の16個の画素700〜715を模式的に示す図である。なお、ここでは簡単のため16個の画素相当の画素領域からなる単位領域を用いて説明するが、図8を用いて説明したように本実施形態における単位領域は32個の記録素子に対応する大きさを有するため、本実施形態における単位領域は実際にはY方向に32個の画素領域からなる。
図9(b)は単位領域に対応する画像データの一例を示す図である。
本実施形態では、ある画素に対応する画像データを構成する2ビットの情報が「00」、すなわち画素値が「0」である場合には、当該画素に対してインクは1回も吐出されない。また、ある画素に対応する画像データを構成する2ビットの情報が「01」、すなわち画素値が「1」である場合には、当該画素に対してインクは1回吐出される。また、ある画素に対応する画像データを構成する2ビットの情報が「10」、すなわち画素値が「2」である場合には、当該画素に対してインクは2回吐出される。
図9(b)に示す画像データに関しては、例えば画素703における画素値は「0」であるため、画素703に対応する画素領域にはインクが1回も吐出されないこととなる。また、例えば画素700における画素値は「2」であるため、画素700に対応する画素領域にはインクが2回吐出されることとなる。
図9(c−1)〜(c−4)はそれぞれ1〜4回目の走査に対応し、図9(b)に示す画像データに適用するためのマスクパターンを示す図である。すなわち、図9(b)に示す画像データに対して図9(c−1)に示す1回目の走査に対応するマスクパターンMP1を適用することにより、1回目の走査で用いる記録データを生成する。同様にして、図9(b)に示す画像データに対して図9(c−2)、(c−3)、(c−4)それぞれに示すマスクパターンMP2、MP3、MP4を適用することにより、それぞれ2、3、4回目の走査で用いる記録データを生成する。
ここで、図9(c−1)〜(c−4)それぞれに示すマスクパターン内の各画素には、「00」、「01」、「10」のいずれかの2ビットの情報が定められている。なお、当該2ビットの情報が「10」である場合、その情報が示す値(以下、コード値とも称する)は「2」となる。また、当該2ビットの情報が「01」である場合、その情報が示す値(コード値)は「1」となる。また、当該2ビットの情報が「00」である場合、その情報が示す値(コード値)は「0」となる。
ここで、図10に示すデコードテーブルを参照するとわかるように、コード値が「0」である場合、対応する画素における画素値が「0」、「1」、「2」のいずれであっても、インクを吐出しない。すなわち、マスクパターン内の「0」のコード値はインクの吐出をまったく許容しない(インクの吐出の許容回数が0回)ということに対応する。以下の説明では、「0」のコード値が割り当てられたマスクパターン内の画素を非記録許容画素とも称する。
一方、図10に示すデコードテーブルを参照するとわかるように、コード値が「2」である場合、対応する画素における画素値が「0」、「1」である場合にはインクを吐出しないが、「2」である場合にはインクを吐出する。すなわち、「2」のコード値は3通りの画素値に対して1回インクの吐出を許容する(インクの吐出の許容回数が1回)ということに対応する。
また、コード値が「1」である場合、対応する画素における画素値が「0」である場合にはインクを吐出しないが、「1」、「2」である場合にはインクを吐出する。言い換えると、「1」のコード値は、3通りの画素値(「0」、「1」、「2」)に対して2回だけインクの吐出を許容する(インクの吐出の許容回数が2回)、ということに対応する。すなわち、「1」のコード値は、マスクパターンを構成する2ビットの情報が再現可能な許容回数のうちの最大の許容回数を定めるコード値である。
なお、以下の説明では「1」、「2」のいずれかのコード値が割り当てられたマスクパターン内の画素を記録許容画素とも称する。
ここで、本実施形態にて用いられるmビットの情報を有するマスクパターンは、下記の(条件1)、(条件2)に基づいて設定される。
(条件1)
ここで、図9(c−1)〜(c−4)に示す4つのマスクパターン内の同じ位置にある4つの画素のうちの2つの画素に対しては「1」、「2」のいずれかのコード値が1つずつ割り当てられ(記録許容画素)、残りの2(=4−2)つの画素に対しては「0」のコード値が割り当てられる(非記録許容画素)。
例えば、画素700に対しては、図9(c−1)に示すマスクパターンにて「2」、図9(c−2)に示すマスクパターンにて「1」のコード値が割り当てられている。そして、残りの図9(c−3)、(c−4)に示すマスクパターンにて「0」のコード値が割り当てられている。言い換えると、画素700は、図9(c−1)、(c−2)に示すマスクパターンでは記録許容画素であり、図9(c−3)、(c−4)に示すマスクパターンでは非記録許容画素である。
また、画素701に対しては、図9(c−4)に示すマスクパターンにて「2」、図9(c−1)に示すマスクパターンにて「1」のコード値が割り当てられている。そして、残りの図9(c−2、)(c−3)に示すマスクパターンにて「0」のコード値が割り当てられている。言い換えると、画素701は、図9(c−1)、(c−4)に示すマスクパターンでは記録許容画素であり、図9(c−2)、(c−3)に示すマスクパターンでは非記録許容画素である。
このような構成により、ある画素における画素値が「0」、「1」、「2」のいずれであったとしても、その画素値に対応するインクの吐出回数だけ当該画素に対応する画素領域にインクを吐出するような記録データを生成することができる。
(条件2)
また、図9(c−1)〜(c−4)それぞれに示すマスクパターンには、「1」のコード値に対応する記録許容画素が互いにほぼ同数となるように配置されている。より詳細には、図9(c−1)に示すマスクパターンには画素701、706、711、712の4つの画素に「1」のコード値が割り当てられている。また、図9(c−2)に示すマスクパターンには画素700、705、710、715の4つの画素に「1」のコード値が割り当てられている。また、図9(c−3)に示すマスクパターンには画素703、704、709、714の4つの画素に「1」のコード値が割り当てられている。また、図9(c−4)に示すマスクパターンには画素702、707、708、713の4つの画素に「1」のコード値が割り当てられている。すなわち、図9(c−1)〜(c−4)それぞれに示す4つのマスクパターンには、「01」のコード値に対応する記録許容画素が4つずつ配置されている。
同様に、図9(c−1)〜(c−4)それぞれに示すマスクパターンには、「2」のコード値に対応する記録許容画素も互いに同じ数となるように配置されている。
なお、ここでは各マスクパターンにおける「1」、「2」それぞれにコード値に対応する記録許容画素がそれぞれ互いに同じ数だけ配置されている場合について記載していたが、実際には互いにほぼ同じ数だけ配置されていれば良い。
これにより、図9(c−1)〜(c−4)それぞれに示すマスクパターンを用いて画像データを4回の走査に分配して記録データを生成する際に、4回の走査それぞれにおける記録率を互いにほぼ等しくすることができる。
図9(d−1)〜(d−4)のそれぞれは、図9(b)に示す画像データに対して図9(c−1)〜(c−4)それぞれに示すマスクパターンを適用して生成される記録データを示す図である。
例えば、図9(d−1)に示す1回目の走査に対応する記録データにおける画素700では、画像データの画素値は「2」、マスクパターンのコード値は「2」である。そのため、図10に示すデコードテーブルを参照してわかるように、画素700ではインクの吐出(「1」)が定められる。また、画素701では、画像データの画素値は「1」、マスクパターンのコード値は「1」であるため、インクの吐出(「1」)が定められる。また、画素704では、画像データの画素値は「2」、マスクパターンのコード値は「0」であるため、インクの非吐出(「0」)が定められる。
このようにして生成された図9(d−1)〜(d−4)それぞれに示す記録データにしたがって1〜4回目の走査にてインクが吐出される。例えば、1回目の走査では図9(d−1)に示す記録データからわかるように、画素700、701、712に対応する記録媒体上の画素領域にインクが吐出される。
図9(e)は図9(d−1)〜(d−4)それぞれに示す記録データの論理和を示す図である。図9(d−1)〜(d−4)それぞれに示す記録データにしたがってインクを吐出することにより、各画素に対応する画素領域には図9(e)に示す回数だけインクが吐出されることになる。
例えば、画素700においては、図9(d−1)、(d−2)に示す1、2回目の走査に対応する記録データにおいてインクの吐出が定められている。したがって、図9(e)に示すように、画素700に対応する画素領域に対しては合計で2回インクが吐出されることになる。
また、画素701においては、図9(d−1)に示す1回目の走査に対応する記録データにおいてインクの吐出が定められている。したがって、図9(e)に示すように、画素701に対応する画素領域に対しては合計で1回インクが吐出されることになる。
図9(e)に示す記録データと図9(b)に示す画像データを比較すると、いずれの画素においても画像データの画素値に対応する吐出回数だけインクが吐出されるように記録データが生成されることがわかる。例えば、画素700、704、708、712では図9(b)に示す画像データの画素値は「2」であるが、生成された記録データの論理和により示されるインクの吐出回数も2回となる。
以上の構成によれば、複数ビットの情報を有する画像データおよびマスクパターンに基づいて、複数回の走査それぞれで用いる1ビットの記録データを生成することが可能となる。
(往復走査でのインクの吐出ずれ)
次に、往走査と復走査の間(往復走査間)でのインクの吐出位置ずれについて以下に詳細に説明する。
本実施形態では、時分割駆動制御における駆動ブロックの駆動順序と、マルチパス記録方式にて用いるマスクパターンと、によって、往復走査間のインクの吐出位置ずれを抑制する。
まず、図11を参照しながら時分割駆動制御において駆動ブロックの駆動順序とY方向に延びる同一列内での各駆動ブロックからのインクの着弾位置の相関について説明する。
図11(a)は時分割駆動制御における駆動順序の一例を示す図である。また、図11(b)は図11(a)に示す駆動順序にしたがってX方向の上流側から下流側に向かう方向への走査(往方向への走査)を行いながら記録素子No.1〜No.16を駆動した際に形成されるドットの様子を示す模式図である。また、図11(c)は図11(a)に示す駆動順序にしたがってX方向の下流側から上流側に向かう方向への走査(復方向への走査)を行いながら記録素子No.1〜No.16を駆動した際に形成されるドットの様子を示す模式図である。なお、図7に示すようにY方向上流側に向かうほど記録素子No.は大きくなるため、図11(b)、(c)それぞれにおいて最もY方向下流側に位置するドットが記録素子No.1から形成されたドットであり、そこからY方向上流側に向かうほど大きな記録素子No.から形成されたドットとなり、最もY方向上流側端部に位置するドットが記録素子No.16から形成されたドットとなる。
ここでは一例として、図11(a)に示すように、駆動ブロックNo.1、駆動ブロックNo.2、駆動ブロックNo.3、駆動ブロックNo.4、駆動ブロックNo.5、駆動ブロックNo.6、駆動ブロックNo.7、駆動ブロックNo.8、駆動ブロックNo.9、駆動ブロックNo.10、駆動ブロックNo.11、駆動ブロックNo.12、駆動ブロックNo.13、駆動ブロックNo.14、駆動ブロックNo.15、駆動ブロックNo.16の駆動順序で時分割駆動を行う場合について記載する。
往方向への走査においては、先に駆動される記録素子によって吐出されたインク滴ほどX方向の上流側に吐出される。したがって、図11(a)に示す駆動順序で記録素子No.1〜No.16を時分割駆動した場合、図11(b)に示すように記録素子No.1から形成されるドットが最もX方向上流側に位置し、記録素子No.が大きくなるほど形成されるドットがX方向下流側にずれ、記録素子No.16から形成されるドットが最もX方向下流側に位置することになる。
一方、復方向への走査においては、先に駆動される記録素子によって吐出されたインク滴ほどX方向の下流側に吐出される。したがって、図11(a)に示す駆動順序で記録素子No.1〜No.16を時分割駆動した場合、図11(c)に示すように記録素子No.1から形成されるドットが最もX方向下流側に位置し、記録素子No.が大きくなるほど形成されるドットがX方向上流側にずれ、記録素子No.16から形成されるドットが最もX方向上流側に位置することになる。
このように、往方向への走査においては駆動ブロックの駆動される順番が早いほどX方向の上流側にドットが形成される。また、復方向への走査においては駆動ブロックの駆動される順番が早いほどX方向の下流側にドットが形成されることがわかる。
更に、駆動順序が同じであっても走査方向が異なる場合には時分割駆動制御による各駆動ブロックからのインクの着弾位置は反転したものとなることがわかる。ここから、復方向への走査における駆動ブロックの駆動順序を往方向への走査における駆動ブロックの駆動順序と逆順とした場合、往方向への走査と復方向への走査における時分割駆動制御による各駆動ブロックからのインクの着弾位置を同じとなることがわかる。詳細には、例えば往方向への走査において図11(a)に示す駆動順序で記録素子No.1〜No.16を時分割駆動する場合、復方向への走査において駆動ブロックNo.16、駆動ブロックNo.15、駆動ブロックNo.14、駆動ブロックNo.13、駆動ブロックNo.12、駆動ブロックNo.11、駆動ブロックNo.10、駆動ブロックNo.9、駆動ブロックNo.8、駆動ブロックNo.7、駆動ブロックNo.6、駆動ブロックNo.5、駆動ブロックNo.4、駆動ブロックNo.3、駆動ブロックNo.2、駆動ブロックNo.1の駆動順序で時分割駆動すると、往方向への走査と復方向への走査でインクの着弾位置が同じとなる。
以上の点を踏まえ、記録データと駆動順序の組み合わせを複数通り設定し、各組み合わせにおいて生じる往復走査間での時分割駆動における各駆動ブロックからのインクの着弾位置ずれについて説明する。
図12は記録データと駆動順序の組み合わせを説明するための図である。なお、図12(a1)、(a2)は往走査、復走査それぞれに対応する記録データの一例を、図12(b1)、(b2)は往走査、復走査それぞれに対応する記録データの他の例をそれぞれ示している。なお、図12(a1)、(a2)、(b1)、(b2)それぞれにおける黒く塗りつぶされた画素がインクの吐出が定められる(記録データが「1」である)画素を示している。また、図12(c)は時分割駆動の駆動順序の一例を、図12(d)は時分割駆動の駆動順序の他の例をそれぞれ示している。また、図12(e)は記録データおよび駆動順序を異ならせた4つの組の内容を示している。
図12(e)からわかるように、ここでは第1の組から第4の組までの4通りの記録データおよび駆動順序の組を設定する。
第1の組においては、往走査、復走査それぞれにおける記録データとして図12(b1)、(b2)に示す記録データを用い、往走査における駆動順序を図12(c)に示す駆動順序に、復走査における駆動順序を図12(d)に示す駆動順序にそれぞれ設定する。ここで、図12(b1)、(b2)それぞれに示す記録データは、記録が定められる画素がX方向に連続する(記録が定められる画素のX方向における分散性が低い)データである。また、上述のように往走査での駆動順序(図12(c))と復走査での駆動順序(図12(d))が互いに逆順であるため、往復走査間での時分割駆動制御における各駆動ブロックからのインクの着弾位置は同じとなる。
次に、第2の組においては、往走査、復走査それぞれにおける記録データとして図12(a1)、(a2)に示す記録データを用い、往走査における駆動順序を図12(c)に示す駆動順序に、復走査における駆動順序を図12(d)に示す駆動順序にそれぞれ設定する。ここで、図12(a1)、(a2)それぞれに示す記録データは、記録が定められる画素がX方向に非連続である(記録が定められる画素のX方向における分散性が高い)データである。また、上述のように往走査での駆動順序(図12(c))と復走査での駆動順序(図12(d))が互いに逆順であるため、往復走査間での時分割駆動における各駆動ブロックからのインクの着弾位置は同じとなる。
次に、第3の組においては、往走査、復走査それぞれにおける記録データに図12(b1)、(b2)に示す記録データを用い、往走査、復走査それぞれにおける駆動順序を図12(c)に示す駆動順序に設定する。ここで、図12(b1)、(b2)それぞれに示す記録データは、記録が定められる画素がX方向に連続する(記録が定められる画素のX方向における分散性が低い)データである。また、上述のように往走査、復走査それぞれでの駆動順序(図12(c))が同じであるため、往復走査間での時分割駆動における各駆動ブロックからのインクの着弾位置は反対のものとなる。
次に、第4の組においては、往走査、復走査それぞれにおける記録データに図12(a1)、(a2)に示す記録データを用い、往走査、復走査それぞれにおける駆動順序を図12(c)に示す駆動順序に設定する。ここで、図12(a1)、(a2)それぞれに示す記録データは、記録が定められる画素がX方向に非連続である(記録が定められる画素のX方向における分散性が高い)データである。また、上述のように往走査、復走査それぞれでの駆動順序(図12(c))が同じであるため、往復走査間での時分割駆動における各駆動ブロックからのインクの着弾位置は反対のものとなる。
以上の4通りの記録データおよび駆動順序の組み合わせにおいて往走査と復走査の間にずれが生じた場合において記録される画像を図13から図16を用いて説明する。なお、図13は第1の組を、図14は第2の組を、図15は第3の組を、図15は第4の組をそれぞれ設定した場合に記録される画像を示している。更に、図13から図16のそれぞれにおいて、(a)は往走査と復走査の間にずれが生じなかった際に記録される画像を、(b)は往走査と復走査の間にX方向に約1/2ドット分のずれが生じた際に記録される画像を、(c)は往走査と復走査の間にX方向に約1ドット分のずれが生じた際に記録される画像を、(d)は往走査と復走査の間にX方向に約2ドット分のずれが生じた際に記録される画像をそれぞれ模式的に示している。なお、それぞれの図において内部に縦線が記載された円が往走査で形成されるドットを、内部に横線が記載された円が復走査で形成されるドットをそれぞれ示している。
まず、第1の組について記載する。
図13(a)に示すように、往復走査間で位置ずれが生じなかった場合には第1の組の設定によればドットの抜けも重なりもない理想的な画像を記録することができる。しかしながら、図13(b)、(c)、(d)に示すように往復走査間のX方向のずれが大きくなるにつれてドットの抜けも重なりも大きくなってくる。特にX方向に約2ドット分のずれが生じた場合には、図13(d)に示すように、記録される画像においても約2ドット分のずれがそのまま生じてしまうため、得られる画像の画質は大きく低下してしまう。このように、第1の組の設定では往復走査間のX方向のずれが生じなかった場合には好ましい画像を得ることができるものの、往復走査間のX方向のずれが生じた場合には所望の画質を得ることができない虞がある。
次に、第2の組について記載する。
図14(a)に示すように、往復走査間で位置ずれが生じなかった場合には、図13(a)の第1の組と同様に、第2の組の設定によればドットの抜けも重なりもない理想的な画像を記録することができる。更に、図14(d)に示すように、往復走査間のX方向のずれが2ドット分と大きくずれた場合には、図13(d)に示す第1の組と異なり、ドットの抜けや重なりが比較的小さい画像を記録することができる。これは、往走査、復走査それぞれにおける記録データのX方向における分散性が高いためである。しかしながら、図14(b)、(c)からわかるように、往復走査間のX方向のずれが1/2ドット、1ドット分程度生じた際には図13(b)、(c)に示す第1の組と同様にドットの抜けや重なりの目立つ画像が記録されてしまう。このように、第2の組の設定では、往復走査間のX方向のずれが生じなかった場合には好ましい画像を得ることができ、更に往復走査間のX方向のずれが比較的大きい場合にも第1の組の設定よりも画質の低下を抑制することができる。しかしながら、第2の組の設定においても往復走査間のX方向のずれが比較的小さい場合には画質の低下を抑制することができない。
次に、第3の組について記載する。
第3の組の設定では、図15(a)に示すように、往復走査間で位置ずれが生じなかった場合にはドットの抜けや重なりが若干生じてしまう。また、図15(d)に示すように、往復走査間のX方向のずれが比較的大きい場合には、図13(d)に示す第1の組の設定と同様にドットの抜けや重なりの大きな画像が記録されてしまう。一方で、図15(b)、(c)に示すように、往復走査間のX方向のずれが比較的小さい場合、往走査と復走査で形成されるドットの傾きが異なるため、図13(b)、(c)、図14(b)、(c)それぞれに示す場合よりもドットの抜けや重なりをある程度抑制した画像を記録することができる。すなわち、第3の組の設定によれば往復走査間のX方向のずれによる画質低下を抑制することが可能となる。これは、往走査と復走査にてインクの吐出位置が異なるため、往走査、復走査それぞれで形成されたドット間の距離が駆動ブロックに応じて異なるためである。このように、第3の組の設定によれば、X方向のずれが比較的小さい場合であれば画質の低下を好適に抑制することができる。
最後に、第4の組について記載する。
第4の組の設定では、図16(a)に示すように、図15(a)の第3の組と同様に、往復走査間で位置ずれが生じなかった場合にはドットの抜けや重なりが若干生じてしまう。しかし、図16(b)、(c)に示すように、図15(b)、(c)に示す第3の組と同様に往復走査間のX方向のずれが比較的小さい場合にはドットの抜けや重なりをある程度抑制した画像を記録することができる。更に、第4の組の設定では、図16(d)に示すように往復走査間のX方向のずれが比較的大きな場合であってもドットの抜けや重なりが小さい画像を記録することができる。
以上の第1、第2、第3、第4の組の設定により記録される画像から、往復走査間のX方向のずれによる画質低下を抑制するためには第4の組の設定が最も好ましく、第3の組の設定が次に好ましいことがわかる。したがって、本実施形態では、往復走査間で各駆動ブロックから記録されるドットの着弾位置が異なるように時分割駆動を行う。ここで、本実施形態では往方向への走査と復方向への走査を行うため、それぞれの走査における駆動ブロックの駆動順序を互いに逆順ではない順序とする。このようにすることにより、図11を用いて説明したように、往走査、復走査で記録されるドットの吐出位置を異ならせることができる。
(本実施形態で適用するマスクパターン)
本実施形態では、シアンインク・2pl用の画像データC4_2に対して適用するマスクパターンと、シアンインク・5pl用の画像データC4_5に対して適用するマスクパターンと、を互いに異ならせる。この理由については後に詳細に説明する。
まず、シアンインク・2plに対応するマスクパターンMP1_2〜MP4_2について記載する。
図17は本実施形態においてシアンインクの画像データC4_2に対して適用するマスクパターンを示す図である。なお、図17(a)には1回目の走査に対応するシアンインク・2pl用のマスクパターンMP1_2を、図17(b)には2回目の走査に対応するシアンインク・2pl用のマスクパターンMP2_2を、図17(c)には3回目の走査に対応するシアンインク・2pl用のマスクパターンMP3_2、図17(d)には4回目の走査に対応するシアンインク・2pl用のマスクパターンMP4_2をそれぞれ示している。また、図17(e)は図17(a)に示す1回目の走査に対応するマスクパターンMP1_2と図17(c)に示す3回目の走査に対応するマスクパターンMP3_2それぞれにおいて定められたインクの吐出の許容回数の論理和により得られる論理和パターンMP1_2+MP3_2を示している。また、図17(f)は図17(b)に示す2回目の走査に対応するマスクパターンMP2_2と図17(d)に示す4回目の走査に対応するマスクパターンMP4_2それぞれにおいて定められたインクの吐出の許容回数の論理和により得られる論理和パターンMP2_2+MP4_2を示している。なお、図17における白抜けで示された画素が「0」のコード値が割り当てられた画素を、灰色で塗りつぶされた画素が「1」のコード値が割り当てられた画素を、黒く塗りつぶされた画素が「2」のコード値が割り当てられた画素をそれぞれ示している。
また、図17からわかるように、本実施形態ではX方向に32画素、Y方向に32画素の合計1024個の画素それぞれにおいてインクの吐出の許容回数を定めたものを1つのマスクパターンの繰り返し単位とし、これをX方向、Y方向に繰り返し用いることとする。
また、インクの吐出の許容回数の論理和とは、対応する複数のマスクパターン内のコード値が示す許容回数の和を算出した結果を指す。例えば、図17(a)に示すマスクパターンMP1_2の最も左上の画素におけるコード値は「2」(インクの吐出の許容回数が1回)であり、図17(c)に示すマスクパターンMP3_2の最も左上の画素におけるコード値は「0」(インクの吐出の許容回数が0回)であるため、図17(e)に示す論理和パターンMP1_2+MP3_2の最も左上の画素におけるコード値は「2」(インクの吐出の許容回数が1回)となる。また、例えば、図17(b)に示すマスクパターンMP2_2の最も左上の画素におけるコード値は「1」(インクの吐出の許容回数が2回)であり、図17(d)に示すマスクパターンMP4_2の最も左上の画素におけるコード値は「0」(インクの吐出の許容回数が0回)であるため、図17(f)に示す論理和パターンMP2_2+MP4_2の最も左上の画素におけるコード値は「1」(インクの吐出の許容回数が2回)となる。
なお、図17(a)〜(d)それぞれに示すマスクパターンMP1_2〜MP4_2は上述の(条件1)、(条件2)を満たすように設定されている。
すなわち、図17(a)〜(d)に示す4つのマスクパターンMP1_2〜MP4_2内の同じ位置にある4つの画素のうち、2つの画素に対しては「1」、「2」のいずれかのコード値が1つずつ割り当てられ、残りの2(=4−2)つの画素に対しては「0」のコード値が割り当てられるように、各画素に対するコード値が割り当てられている(条件1)。
更に、図17(a)〜(d)に示す4つのマスクパターンMP1_2〜MP4_2それぞれには、「1」のコード値が割り当てられた画素が互いにほぼ同数となり、且つ、「2」のコード値が割り当てられた画素が互いにほぼ同数となるように、各画素に対するコード値が割り当てられている(条件2)。
また、本実施形態では往復走査のインクの吐出位置ずれを抑制するため、高濃度の画像記録時においては往方向への走査(1、3回目の走査)と復方向への走査(2、4回目の走査)で同じ画素領域にインクを吐出するように記録データを生成する。この点を鑑み、本実施形態で用いるマスクパターンMP1_2〜MP4_2は、同じ位置にある4つの画素のうち、往走査に対応するマスクパターンMP1_2、MP3_2のいずれかでコード値「1」が割り当てられている画素には復走査に対応するマスクパターンMP2_2、MP4_2のいずれかでコード値「2」が割り当てられ、往走査に対応するマスクパターンMP1_2、MP3_2のいずれかでコード値「2」が割り当てられている画素には復走査に対応するマスクパターンMP2_2、MP4_2のいずれかでコード値「1」が割り当てられるように、各画素に対するコード値が割り当てられる。これにより、高濃度の画像、例えば画素値が「2」である画像データが入力された際には往走査と復走査で1回ずつ1つの画素領域にインクを吐出するような記録データを生成することができる。
更に、図17(a)〜(d)に示すマスクパターンMP1_2〜MP4_2は、論理和パターンMP1_2+MP3_2において「1」のコード値が割り当てられた画素と論理和パターンMP2_2+MP4_2において「1」のコード値が割り当てられた画素がX方向に交互に生じないように設定されている。より詳細には、論理和パターンMP1_2+MP3_2において「1」のコード値が割り当てられた画素がランダムなホワイトノイズ特性を持つ配置となり、且つ、論理和パターンMP2_2+MP4_2において「1」のコード値が割り当てられた画素がランダムなホワイトノイズ特性を持つ配置となるように、マスクパターンMP1_2〜MP4_2内の各画素にコード値が割り当てられている。
詳細には、本実施形態における論理和パターンMP1_2+MP3_2は、1024個の画素のうち513個の画素でコード値「1」が割り当てられており、そのうちの119個のコード「1」が割り当てられた画素に、論理和パターンMP2_2+MP4_2にてX方向における両側にコード値「1」が割り当てられた画素が隣接している。一方、論理和パターンMP1_2+MP3_2内の513個のコード値「1」が割り当てられた画素のうち、論理和パターンMP2_2+MP4_2にてX方向にコード値「1」が割り当てられた画素が隣接しない画素は119個である。すなわち、本実施形態では、論理和パターンMP1_2+MP3_2内のコード値「1」が割り当てられた画素のうち、論理和パターンMP2_2+MP4_2内でコード値「1」が割り当てられた画素がX方向における両側に隣接する画素の数とX方向に隣接しない画素の数は同じ数となる。
例えば、論理和パターンMP1_2+MP3_2内の最もY方向下流側(図中上側)端部の行では、X方向上流側(図中左側)から3、4、7、11、13、14、16、17、20、21、22、24、26、27、28、32番目の画素においてコード値「1」が割り当てられている。一方、論理和パターンMP2_2+MP4_2内の最もY方向下流側(図中上側)端部の行では、X方向上流側(図中左側)から1,2、5,6,8,9,10、12、15,18,19、23,25、29、30、31番目の画素においてコード値「1」が割り当てられている。
ここで、論理和パターンMP1_2+MP3_2内の最もY方向下流側(図中上側)端部の行のうち、X方向上流側(図中左側)から7、11、24、32番目のコード値「1」が割り当てられた画素には、論理和パターンMP2_2+MP4_2にてコード値「1」が割り当てられた画素とX方向における両側に隣接する。すなわち、論理和パターンMP1_2+MP3_2内の最もY方向下流側(図中上側)端部の行内のコード値「1」が割り当てられた画素のうち、論理和パターンMP2_2+MP4_2内の最もY方向下流側(図中上側)端部の行内のコード値「1」が割り当てられた画素がX方向における両側に隣接する画素の数は4つとなる。
一方で、論理和パターンMP1_2+MP3_2内の最もY方向下流側(図中上側)端部の行のうち、X方向上流側(図中左側)から21、27番目のコード値「1」が割り当てられた画素には、論理和パターンMP2_2+MP4_2にてコード値「1」が割り当てられた画素とX方向において隣接しない。すなわち、論理和パターンMP1_2+MP3_2内の最もY方向下流側(図中上側)端部の行内のコード値「1」が割り当てられた画素のうち、論理和パターンMP2_2+MP4_2内の最もY方向下流側(図中上側)端部の行内のコード値「1」が割り当てられた画素がX方向に隣接しない画素の数は2つとなる。
同様の計算を論理和パターンMP1_2+MP3_2内の各行に対して行うと、論理和パターンMP1_2+MP3_2内のコード値「1」が割り当てられた画素のうち、論理和パターンMP2_2+MP4_2内のコード値「1」が割り当てられた画素がX方向における両側に隣接する画素の数が119個であり、X方向に隣接しない画素の数もまた119個であることがわかる。
同様にして、本実施形態における論理和パターンMP2_2+MP4_2は、1024個の画素のうち511個の画素でコード値「1」が割り当てられており、そのうちの120個のコード「1」が割り当てられた画素に論理和パターンMP1_2+MP3_2にてX方向における両側にコード値「1」が割り当てられた画素が隣接している。一方、論理和パターンMP2_2+MP4_2内の511個のコード値「1」が割り当てられた画素のうち、論理和パターンMP2_2+MP4_2にてX方向にコード値「1」が割り当てられた画素がX方向に隣接しない画素は120個である。すなわち、本実施形態では、論理和パターンMP2_2+MP4_2内のコード値「1」が割り当てられた画素のうち、論理和パターンMP1_2+MP3_2内でコード値「1」が割り当てられた画素がX方向における両側に隣接する画素の数とX方向に隣接しない画素の数は同じ数となる。
次に、シアンインク・5plに対応するマスクパターンMP1_5〜MP4_5について記載する。
図18は本実施形態においてシアンインク・5plの画像データC4_5に対して適用するマスクパターンを示す図である。なお、図18(a)には1回目の走査に対応するシアンインク・5pl用のマスクパターンMP1_5を、図18(b)には2回目の走査に対応するシアンインク・5pl用のマスクパターンMP2_5を、図18(c)には3回目の走査に対応するシアンインク・5pl用のマスクパターンMP3_5を、図18(d)には4回目の走査に対応するシアンインク・5pl用のマスクパターンMP4_5をそれぞれ示している。また、図18(e)は図18(a)に示す1回目の走査に対応するマスクパターンMP1_5と図18(c)に示す3回目の走査に対応するマスクパターンMP3_5それぞれにおいて定められたインクの吐出の許容回数の論理和により得られる論理和パターンMP1_5+MP3_5を示している。また、図18(f)は図18(b)に示す2回目の走査に対応するマスクパターンMP2_5と図18(d)に示す4回目の走査に対応するマスクパターンMP4_5それぞれにおいて定められたインクの吐出の許容回数の論理和により得られる論理和パターンMP2_5+MP4_5を示している。なお、図18における白抜けで示された画素が「0」のコード値が割り当てられた画素を、灰色で塗りつぶされた画素が「1」のコード値が割り当てられた画素を、黒く塗りつぶされた画素が「2」のコード値が割り当てられた画素をそれぞれ示している。
図18(a)〜(d)に示すシアンインク・5pl用のマスクパターンMP1_5〜MP4_5も、上述した図17(a)〜(d)に示すシアンインク・2pl用のマスクパターンMP1_2〜MP4_2と同様の条件にしたがって各画素に対してコード値が割り当てられている。
更に、本実施形態では、シアンインク・2pl、往走査用のマスクパターンMP1_2、MP3_2のいずれかにおいてコード値「1」が割り当てられた画素と、シアンインク・5pl、往走査用のマスクパターンMP1_5、MP3_5のいずれかにおいてコード値「1」が割り当てられた画素と、が互いに異なる配置となるように、コード値が割り当てられている。より詳細には、マスクパターンMP1_2、MP3_2のいずれかにおいてコード値「1」が割り当てられた画素と、マスクパターンMP1_5、MP3_5のいずれかにおいてコード値「1」が割り当てられた画素と、は互いに重畳しない(排他関係にある)ように配置されている。したがって、図17(e)に示す論理和パターンMP1_2+MP3_2と図18(e)に示す論理和パターンMP1_5+MP3_5を比べるとわかるように、論理和パターンMP1_2+MP3_2、MP1_5+MP3_5間で灰色で塗りつぶされた(コード値「1」である)画素は重畳しない。
同じように、シアンインク・2pl、復走査用のマスクパターンMP2_2、MP4_2のいずれかにおいてコード値「1」が割り当てられた画素と、シアンインク・5pl、復走査用のマスクパターンMP2_5、MP4_5のいずれかにおいてコード値「1」が割り当てられた画素と、が互いに異なる配置となるように、コード値が割り当てられている。詳細には、マスクパターンMP2_2、MP4_2のいずれかにおいてコード値「1」が割り当てられた画素と、マスクパターンMP2_5、MP4_5のいずれかにおいてコード値「1」が割り当てられた画素と、は互いに重畳しない(排他関係にある)ように配置されている。したがって、図17(f)に示す論理和パターンMP2_2+MP4_2と図18(f)に示す論理和パターンMP2_5+MP4_5を比べるとわかるように、論理和パターンMP2_2+MP4_2、MP2_5+MP4_5間で灰色で塗りつぶされた(コード値「1」である)画素は重畳しない。
上記の設定により、画素値が「1」である比較的低濃度の画像データが入力された場合、同じ方向への走査では2plのドットサイズに対応するシアンインクと5plのドットサイズに対応するシアンインクを同じ画素領域に吐出しないように記録データを生成することができる。言い換えると、比較的低濃度の画像データが入力された場合には、同じ画素領域に対して2plのドットサイズに対応するシアンインクと5plのドットサイズに対応するシアンインクは異なる方向への走査で付与されることになる。
なお、ここでは図18(a)に示すマスクパターンMP1_5が図17(b)に示すマスクパターンMP2_2と、図18(b)に示すマスクパターンMP2_5が図17(a)に示すマスクパターンMP1_2と、図18(c)に示すマスクパターンMP3_5が図17(d)に示すマスクパターンMP4_2と、図18(d)に示すマスクパターンMP4_5が図17(c)に示すマスクパターンMP3_2と、それぞれ同じ配置となるようなマスクパターンについて記載したが、上記の条件を満たしていれば図17、図18に示すようなマスクパターンでなくとも良い。
以上記載したような条件に基づいて、本実施形態で用いるシアンインク・2pl用のマスクパターンMP1_2〜MP4_2、シアンインク・5pl用のマスクパターンMP1_5〜MP4_5が設定される。
(本実施形態における駆動ブロックの駆動順序)
図19(a)は本実施形態で実行する時分割駆動制御における駆動順序を示す図である。また、図19(b)は図19(a)に示す駆動順序にしたがって往方向への走査を行いながら記録素子No.1〜No.16を駆動した際に形成されるドットの様子を示す模式図である。また、図19(c)は図19(a)に示す駆動順序にしたがって復方向への走査を行いながら記録素子No.1〜No.16を駆動した際に形成されるドットの様子を示す模式図である。
本実施形態では、図19(a)に示すように、往走査、復走査ともに駆動ブロックNo.1、駆動ブロックNo.9、駆動ブロックNo.6、駆動ブロックNo.14、駆動ブロックNo.3、駆動ブロックNo.11、駆動ブロックNo.8、駆動ブロックNo.16、駆動ブロックNo.5、駆動ブロックNo.13、駆動ブロックNo.2、駆動ブロックNo.10、駆動ブロックNo.7、駆動ブロックNo.15、駆動ブロックNo.4、駆動ブロックNo.12の駆動順序で時分割駆動を行う。
上述したように、本実施形態では往走査と復走査で各駆動ブロックからのインクの着弾位置が異なるように時分割駆動を行う。より詳細には、本実施形態では往復走査で記録を行うため、往走査での駆動ブロックの駆動順序と復走査での駆動ブロックの駆動順序を同じ順序とする。なお、必ずしも往復走査での駆動ブロックの駆動順序を同じとする必要はなく、上述のように往復走査で記録を行う場合にインクの吐出位置が異なせるためには復走査における駆動ブロックの駆動順序が往走査における駆動ブロックの駆動順序の逆順と異なるようにすれば良い。
図19(a)に示す駆動順序にしたがって記録素子No.1〜No.16を時分割駆動した場合、往方向への走査では、図19(b)に示すように最初に駆動される記録素子No.1から形成されるドットが最もX方向上流側に位置し、記録素子No.9、6、14、3、11、8、16、5、13、2、10、7、15、4の順に形成されるドットがX方向上流側から下流側にずれるように位置し、最後に駆動される記録素子No.12から形成されるドットが最もX方向下流側に位置することになる。
一方、復方向への走査では、図19(c)に示すように最初に駆動される記録素子No.1から形成されるドットが最もX方向下流側に位置し、記録素子No.9、6、14、3、11、8、16、5、13、2、10、7、15、4の順に形成されるドットがX方向下流側から上流側にずれるように位置し、最後に駆動される記録素子No.12から形成されるドットが最もX方向上流側に位置することになる。
このように、図19(a)に示す駆動順序で各駆動ブロックに属する記録素子を駆動することにより、Y方向に延びる同一列内でのインクの着弾位置を異ならせることができる。
なお、本実施形態ではシアンインク・2pl用の記録素子列とシアンインク・5pl用の記録素子列との間では駆動順序を変更しない。したがって、シアンインク・2pl用の記録素子列、シアンインク・5pl用の記録素子列ともに、往走査でも復走査でも図19(a)に示す駆動順序で時分割駆動を行う。
(本実施形態による記録画像)
以上記載したように、本実施形態では、図17(a)〜(d)に示すシアンインク・2pl用のマスクパターンMP1_2〜MP4_2と図18(a)〜(d)に示すシアンインク・5pl用のマスクパターンMP1_5〜MP4_5を用い、且つ、往走査、復走査ともに図19(a)に示す駆動順序にしたがって時分割駆動を行う。これにより、高濃度の画像記録時における往復走査間の吐出位置ずれを抑制した記録を行う。更に、複数ドットサイズのインクを使用する場合であっても画質弊害が発生しにくいような記録を行うことが可能となる。
まず、階調データC3としてすべての画素において階調レベルがレベル4である階調データが入力された場合に2plのドットサイズに対応するシアンインクによって形成されるドットの位置について説明する。
図20は階調レベルがレベル4である階調データが入力された場合に2plのドットサイズに対応するシアンインクによって記録される画像を示す図である。
図8の単位領域211内の全ての画素において階調データの階調値がレベル4である場合、図6に示す吐出口列展開テーブルからわかるように、すべての画素に対して画素値が「2」のシアンインク・2pl用画像データが生成される。したがって、図17に示すマスクパターンMP1_2〜MP4_2内のコード値「1」、「2」のいずれかが割り当てられた画素に相当する画素領域に2plのドットサイズに対応するシアンインクが吐出されることになる。すなわち、1回目の走査では図17(a)、2回目の走査では図17(b)、3回目の走査では図17(c)、4回目の走査では図17(d)の灰色で塗りつぶされた画素と黒く塗りつぶされた画素に相当する画素領域に2plのドットサイズに対応するシアンインクが吐出される。
このうち、1回目、3回目の走査は往走査、2回目、4回目の走査は復走査であるため、往走査で2plのドットサイズに対応するシアンインクが吐出される画素は図17(e)の灰色で塗りつぶされた画素と黒く塗りつぶされた画素、復走査で2plのドットサイズに対応するシアンインクが吐出される画素は図17(f)の灰色で塗りつぶされた画素と黒く塗りつぶされた画素となる。すなわち、往走査、復走査ともにすべての画素に2plのドットサイズに対応するシアンインクが吐出されることになる。
この際に往走査、復走査ともに図19(a)に示す駆動順序で時分割駆動を行うと、往復走査間のずれがなければ往走査では図20(a)に示す位置に、復走査では図20(b)に示す位置にそれぞれ2plのドットサイズに対応するシアンインクが吐出されてドットが形成される。
ここで、図20(a)、図20(b)それぞれに示すドットの配置がずれなく重なった場合におけるドット配置を図20(c)に、復走査においてX方向下流側に21.2μm(1200dpi相当)ずれて重なった場合のドット配置を図20(d)に、復走査においてX方向下流側に42.3μm(600dpi相当)ずれて重なった場合のドット配置を図20(e)にそれぞれ示している。
図20(c)からわかるように、X方向に延びる各行に関し、往走査によるドットと復走査によるドットとがほとんど重なって記録されている行、一部が重なっている行、ほとんど重ならずにずれて記録されている行が様々に存在することがわかる。図20(d)では、元々重なっていた行のドットは新たに出現する反面、元々重ならずにずれていた行のドットは新たに重なることで、濃度変動は相殺されている。図20(e)も図20(d)と同じで、元々重なっていた行のドットは新たに出現する反面、元々重ならずにずれていた行のドットは新たに重なることで、濃度変動は相殺されている。
このように画像全体として見たときに、図20(d)に示すX方向上流側への往復走査間のずれ量が21.2μmであっても、あるいは図20(e)に示すX方向上流側への往復走査間のずれ量が42.3μmであっても、図20(c)に示す往復走査間のずれが生じなかった際に比べて濃度変動はほとんど発生しないことがわかる。
図20からわかるように、本実施形態におけるマスクパターンおよび駆動順序によれば、1つの画素領域に2ドットを記録するような比較的高濃度の画像を記録する際、往復走査間の吐出位置ずれを抑制した記録を行うことが可能となる。
次に、上述したような異ならせ方で異ならせたシアンインク・2pl用の画像データに適用するマスクパターンとシアンインク・5pl用の画像データに適用するマスクパターンを用いた場合に形成されるドットの位置について説明する。
図21はシアンインク・2pl用の画像データは図17に示すマスクパターンを、シアンインク・5pl用の画像データは図18に示すマスクパターンをそれぞれ用いて記録データを生成し、2plのシアンインクの記録素子列と5plのシアンインクの記録素子列の両方を往走査、復走査ともに図19に示す駆動順序で時分割駆動した場合に形成されるドットの配置を示す図である。なお、図21(a)は2plのドットサイズに対応するシアンインクのドットの配置を、図21(b)は5plのドットサイズに対応するシアンインクのドットの配置をそれぞれ示している。更に、図21(c)は図22(a)、(b)それぞれに示す2plのドットサイズに対応するシアンインク、5plのドットサイズに対応するシアンインクのドットが重畳した際の様子を示している。ここで、図21に示す内部に横線が引かれた円が2plのドットサイズに対応するシアンインクのドットを、内部に縦線が引かれた円が5plのドットサイズに対応するシアンインクのドットをそれぞれ示している。
なお、図21(a)では階調データC3としてすべての画素において階調レベルがレベル2である階調データが入力された場合に2plのドットサイズに対応するシアンインクによって形成されるドットの位置を模式的に示している。、また、図21(b)では階調データC3としてすべての画素において階調レベルがレベル2である階調データが入力された場合に5plのドットサイズに対応するシアンインクによって形成されるドットの位置を模式的に示している。図6の吐出口列展開テーブルからわかるように、階調データの階調レベルがレベル2である場合、シアンインク・2pl用の画像データ、シアンインク・5pl用の画像データの画素値はどちらも「1」となる。したがって、2plのドットサイズに対応するシアンインク、5plのドットサイズに対応するシアンインクともに各画素領域に対して1回ずつ付与されることになる。
ここで、図17、図18を用いて説明したように、本実施形態では比較的低濃度の画像データが入力された場合、同じ画素領域に対して2plのドットサイズに対応するシアンインクと5plのドットサイズに対応するシアンインクは異なる方向への走査で付与されるようにマスクパターンが設定されている。
一方で、図19を用いて説明したように2plのシアンインクの記録素子列と5plのシアンインクの記録素子列は同じ駆動順序で時分割駆動を行うため、同じ画素領域にインクを吐出する2plのドットサイズに対応するシアンインク、5plのドットサイズに対応するシアンインクの記録素子の駆動順番は同じである。
以上の点を鑑みると、ある画素領域に対して2plのドットサイズに対応するシアンインクを往走査(1、3回目の走査)で付与するように記録データが生成された場合、5plのドットサイズに対応するシアンインクに関してはその画素領域に対して復走査(2、4回目の走査)で付与するように記録データが生成される。そして、その画素領域に対して2plのドットサイズに対応するシアンインク、5plのドットサイズに対応するシアンインクをそれぞれ吐出する記録素子の駆動順番は同じことになる。したがって、同じ画素領域に記録データによって2plのドットサイズに対応するシアンインク、5plのドットサイズに対応するシアンインクの吐出が定められているものの、その画素領域に対して2plのドットサイズに対応するシアンインク、5plのドットサイズに対応するシアンインクを異なる方向への走査、且つ、同じ駆動順序で吐出することになるため、ドットの着弾位置はX方向に異なることになる。
これにより、図21(a)、(b)を比べるとわかるように、本実施形態によれば2plのドットサイズに対応するシアンインクと5plのドットサイズに対応するシアンインクは互いに異なる配置にて単位領域内の各画素領域に付与される。したがって、図21(c)に示すように、2plのドットサイズに対応するシアンインク、5plのドットサイズに対応するシアンインクのドットによって記録媒体の表面を十分に被覆することができる。このように、本実施形態によればすべての2plのドットサイズに対応するシアンインクと5plのドットサイズに対応するシアンインクのドット配置が重畳することを避けることができるため、粒状感を抑制することが可能となる。
以上記載したように、本実施形態によれば各ドットサイズのインクの往復走査間の吐出位置ずれを好適に抑制することができる。更に、2plのシアンインクと5plのシアンインクそれぞれに対応するマスクパターンを異ならせることにより、2plのドットサイズに対応するシアンインクと5plのドットサイズに対応するシアンインクの間でドット配置が重畳することに由来する粒状感を抑制することができる。
(比較例)
この本実施形態に対して比較に用いる形態について詳細に説明する。
比較例では、第1の実施形態でシアンインク用の画像データに対して適用した図17(a)〜(d)に示すマスクパターンMP1_2〜MP4_2をシアンインク・2pl用の画像データ、シアンインク・5pl用の画像データの両方に対して適用し、記録データを生成する。また、時分割駆動における駆動順序に関しては、第1の実施形態と同じく2plのシアンインクの記録素子列、5plのシアンインクの記録素子列の両方を図19(a)に示す駆動順序とする。
図22はシアンインク・2pl用の画像データ、シアンインク・5pl用の画像データともに図17に示すマスクパターンを用いて記録データを生成し、2plのシアンインクの記録素子列と5plのシアンインクの記録素子列の両方を往走査、復走査ともに図19に示す駆動順序で時分割駆動した場合に形成されるドットの配置を示す図である。なお、図22(a)は2plのドットサイズに対応するシアンインクのドットの配置を、図22(b)は5plのドットサイズに対応するインクのドットの配置をそれぞれ示している。更に、図22(c)は図22(a)、(b)それぞれに示す2plのドットサイズに対応するシアンインク、5plのドットサイズに対応するシアンインクのドットが重畳した際の様子を示している。ここで、図22に示す内部に横線が引かれた円が2plのドットサイズに対応するシアンインクのドットを、内部に縦線が引かれた円が5plのドットサイズに対応するシアンインクのドットをそれぞれ示している。
なお、図22(a)では階調データC3としてすべての画素において階調レベルがレベル2である階調データが入力された場合に2plのドットサイズに対応するシアンインクによって形成されるドットの位置を模式的に示している。また、図22(b)では階調データC3としてすべての画素において階調レベルがレベル2である階調データが入力された場合に5plのドットサイズに対応するシアンインクによって形成されるドットの位置を模式的に示している。図6の吐出口列展開テーブルからわかるように、階調データの階調レベルがレベル2である場合、シアンインク・2pl用の画像データ、シアンインク・5pl用の画像データの画素値はどちらも「1」となる。したがって、2plのドットサイズに対応するシアンインク、5plのドットサイズに対応するシアンインクともに各画素領域に対して1回ずつ付与されることになる。
ここで、上述のように、比較例ではシアンインク・2pl用の画像データ、シアンインク・5pl用の画像データともに図17に示すマスクパターンを適用する。したがって、比較的低濃度の画像データが入力された場合、2plのドットサイズに対応するシアンインクと5plのドットサイズに対応するシアンインクは同じ画素領域に対して同じ方向への走査で付与されることになる。
一方で、図19を用いて説明したように2plのシアンインクの記録素子列と5plのシアンインクの記録素子列は同じ駆動順序で時分割駆動を行うため、同じ画素領域にインクを吐出する2plのシアンインク、5plのシアンインクの記録素子の駆動順番は同じである。
以上の点を鑑みると、ある画素領域に対して2plのドットサイズに対応するシアンインクを往走査(1、3回目の走査)で付与するように記録データが生成された場合、5plのドットサイズに対応するシアンインクに関してもその画素領域に対して往走査(1、3回目の走査)で付与するように記録データが生成される。そして、その画素領域に対して2plのドットサイズに対応するシアンインク、5plのドットサイズに対応するインクをそれぞれ吐出する記録素子の駆動順番は同じことになる。このように、同じ画素領域に対して2plのドットサイズに対応するシアンインク、5plのドットサイズに対応するシアンインクを同じ方向への走査、且つ、同じ駆動順序で吐出することになるため、ドットの着弾位置はX方向に同じとなってしまう。
図22(a)、(b)からわかるように、この比較形態によれば2plのドットサイズに対応するシアンインクと5plのドットサイズに対応するシアンインクは互いに同じ配置にて単位領域内の各画素領域に付与される。このため、図22(c)に示すように、記録媒体の表面では2plのドットサイズに対応するシアンインクのドットと5plのドットサイズに対応するシアンインクのドットの間に空きが多く、ドットは点在しがちである。
図21(c)に示す第1の実施形態によって記録された2plのドットサイズに対応するシアンインク、5plのドットサイズに対応するシアンインクのドット配置と図22(c)に示す比較形態によって記録された2plのドットサイズに対応するシアンインク、5plのドットサイズに対応するシアンインクのドット配置を比べると明らかなように、第1の実施形態を適用することにより画像の粒状感が抑制可能であることが理解できる。
(第1の実施形態の変形例)
第1の実施形態では、2plのシアンインクを吐出する記録素子列と5plのシアンインクを吐出する記録素子列に対し、往走査、復走査ともに図19(a)に示す駆動順序、すなわち同じ駆動順序にて時分割駆動を行う形態について記載したが、他の形態による実施も可能である。第1の実施形態における記録素子列の駆動順序は、往復走査で記録を行う場合には、復走査における駆動ブロックの駆動順序が往走査における駆動ブロックの駆動順序の逆順と異なっていれば良い。
なお、第1の実施形態における駆動順序は、往復走査で記録を行う場合には復走査における駆動ブロックの駆動順序が往走査における駆動ブロックの駆動順序をオフセットした順序の逆順と異なることが好ましい。この点について以下に詳細に説明する。
ここで、往走査時の駆動順序が図23(a)に示した順序であり、復走査時の駆動順序が図23(b)に示した順序である場合について説明する。図23(b)に示す駆動順序は、図23(a)に示す駆動順序をオフセットした順序の逆順となっている。
図23(a)に示す駆動順序は、駆動ブロックNo.1,駆動ブロックNo.2,駆動ブロックNo.3,駆動ブロックNo.4,駆動ブロックNo.5,駆動ブロックNo.6,駆動ブロックNo.7,駆動ブロックNo.8,駆動ブロックNo.9,駆動ブロックNo.10,駆動ブロックNo.11,駆動ブロックNo.12,駆動ブロックNo.13,駆動ブロックNo.14,駆動ブロックNo.15,駆動ブロックNo.16という順序である。
したがって、図23(a)の駆動順序をオフセットした順序とは、例えば駆動ブロックNo.2,駆動ブロックNo.3,駆動ブロックNo.4,駆動ブロックNo.5,駆動ブロックNo.6,駆動ブロックNo.7,駆動ブロックNo.8,駆動ブロックNo.9,駆動ブロックNo.10,駆動ブロックNo.11,駆動ブロックNo.12,駆動ブロックNo.13,駆動ブロックNo.14,駆動ブロックNo.15,駆動ブロックNo.16、駆動ブロックNo.1という順序である。この順序は、駆動ブロックNo.2〜駆動ブロックNo.16までの駆動順番を1つずつ前にし、駆動ブロックNo.1を最後の駆動順番としたものである。言い換えると、この順序は、図23(a)の駆動順序を1だけ前にオフセットした順序である。
また、例えば駆動ブロックNo.3,駆動ブロックNo.4,駆動ブロックNo.5,駆動ブロックNo.6,駆動ブロックNo.7,駆動ブロックNo.8,駆動ブロックNo.9,駆動ブロックNo.10,駆動ブロックNo.11,駆動ブロックNo.12,駆動ブロックNo.13,駆動ブロックNo.14,駆動ブロックNo.15,駆動ブロックNo.16、駆動ブロックNo.1,駆動ブロックNo.2という順序もまた図23(a)の駆動順序をオフセットした順序である。この順序は、駆動ブロックNo.3〜No.16までの駆動順番を2つずつ前にし、駆動ブロックNo.1、駆動ブロックNo.2をその順序を保ったまま後ろの駆動順番としたものである。言い換えると、この順序は、図23(a)の駆動順序を2だけ前にオフセットした順序である。
同様に考えると、駆動ブロックNo.9,駆動ブロックNo.10,駆動ブロックNo.11,駆動ブロックNo.12,駆動ブロックNo.13,駆動ブロックNo.14,駆動ブロックNo.15,駆動ブロックNo.16、駆動ブロックNo.1,駆動ブロックNo.2,駆動ブロックNo.3,駆動ブロックNo.4,駆動ブロックNo.5,駆動ブロックNo.6,駆動ブロックNo.7,駆動ブロックNo.8という順序もまた図23(a)に示す駆動順序を8つオフセットした順序である。ここで、図23(b)に示す駆動順序はこの順序の逆順となっていることがわかる。したがって、図23(b)に示す駆動順序が図23(a)に示す駆動順序をオフセットした順序の逆順であることがわかる。
図23(c)は図23(a)に示す駆動順序にしたがって往方向への走査を行いながら記録素子No.1〜No.16を駆動した際に形成されるドットの様子を示す模式図である。また、図23(d)は図23(b)に示す駆動順序にしたがって復方向への走査を行いながら記録素子No.1〜No.16を駆動した際に形成されるドットの様子を示す模式図である。このように、復走査時の駆動順序を往走査時の駆動順序をオフセットした順序の逆順とすると、往走査、復走査それぞれにおける各駆動ブロックからのインクの着弾位置は異なるものの、互いに平行な位置関係となるように吐出されることになる。
図24は往走査、復走査それぞれにおける記録データに図12(a1)、(a2)に示す記録データを用い、往走査での駆動順序を図23(a)に示す駆動順序に、復走査での駆動順序を図23(b)に示す駆動順序に設定した際に記録される画像を模式的に示す図である。なお、図24(a)は往走査と復走査の間にずれが生じなかった際に記録される画像を、図24(b)は往走査と復走査の間にX方向に約1/2ドット分のずれが生じた際に記録される画像を、図24(c)は往走査と復走査の間にX方向に約1ドット分のずれが生じた際に記録される画像を、図24(d)は往走査と復走査の間にX方向に約2ドット分のずれが生じた際に記録される画像をそれぞれ模式的に示している。また、それぞれの図において内部に縦線が記載された円が往走査で形成されるドットを、内部に横線が記載された円が復走査で形成されるドットをそれぞれ示している。
図24、図14、図16を比較するとわかるように、図16に示す画像ほどではないが、図24に示す画像は図14に示す画像よりはドットの重なりや抜けが目立ちにくくなるように改善されている。ここで、上述したように図14は復走査時の駆動順序を往走査時の駆動順序の逆順とした場合に記録される画像であり、図16は復走査時の駆動順序を往走査時の駆動順序と同じ順序とした場合に記録される画像である。したがって、復走査時の駆動順序が往走査時の駆動順序をオフセットした順序の逆順である場合、復走査時の駆動順序が往走査時の駆動順序の逆順である場合よりは往復走査間の吐出位置ずれは抑制できる。一方、図16に示す復走査時の駆動順序が往走査時の駆動順序と同じ順序である場合の方がより好ましいこともわかる。
以上の点を踏まえると、各記録素子列において、本実施形態における復走査時の駆動順序は往走査時の駆動順序の逆順と異なる必要がある。その上で、往走査時の駆動順序をオフセットした順序の逆順と異なることが好ましい。そして、往走査時の駆動順序と同じ順序であることが更に好ましい。
なお、上述した第1の実施形態では、高濃度の画像記録時の往復走査のインク吐出位置ずれを抑制するため、シアンインク・2plのドットサイズ・往走査に対応するマスクパターンMP1_2、MP3_2のいずれかでコード値「1」が割り当てられた画素と、シアンインク・2plのドットサイズ・復走査に対応するマスクパターンMP2_2、MP4_2のいずれかでコード値「2」が割り当てられた画素と、が互いに同じ配置となる形態について記載した。しかしながら、必ずしもそれらの画素が完全に同じ配置となっていなくとも良い。すなわち、少数であればシアンインク・2plのドットサイズ・往走査に対応するマスクパターンMP1_2、MP3_2のいずれかでコード値「1」が割り当てられた画素と、シアンインク・2plのドットサイズ・復走査に対応するマスクパターンMP2_2、MP4_2のいずれかでコード値「2」が割り当てられた画素と、が異なる配置となっている箇所があっても良い。言い換えると、シアンインク・2plのドットサイズ・往走査に対応するマスクパターンMP1_2、MP3_2のいずれかでコード値「1」が割り当てられた画素と、シアンインク・2plのドットサイズ・復走査に対応するマスクパターンMP2_2、MP4_2のいずれかでコード値「2」が割り当てられた画素と、は互いにほぼ同じ配置となっていれば本実施形態による効果を得ることができる。なお、以降の説明ではある画素と他の画素とが互いに同じ配置となっている場合、およびある画素と他の画素が互いにほぼ同じとなっている場合、それらの画素は互いに対応する配置であると称する。
ここで、シアンインク・2plのドットサイズ・往走査に対応するマスクパターンMP1_C、MP3_Cのいずれかでコード値「1」が割り当てられた画素のうち、シアンインク・2plのドットサイズ・復走査に対応するマスクパターンMP2_C、MP4_Cのいずれかでコード値「2」が割り当てられた画素と同じ配置にある画素の数が約75%以上であることが特に好ましい。
同様に、シアンインク・2plのドットサイズ・往走査に対応するマスクパターンMP1_2、MP3_2のいずれかでコード値「2」が割り当てられた画素と、シアンインク・2plのドットサイズ・復走査に対応するマスクパターンMP2_2、MP4_2のいずれかでコード値「1」が割り当てられた画素と、もまた、互いにほぼ同じ配置となっていれば良い。
また、5plのシアンインクに対応するマスクパターンについても同様であり、シアンインク・5plのドットサイズ・往走査に対応するマスクパターンMP1_5、MP3_5のいずれかでコード値「1」が割り当てられた画素と、シアンインク・5plのドットサイズ・復走査に対応するマスクパターンMP2_5、MP4_5のいずれかでコード値「2」が割り当てられた画素と、が互いにほぼ同じ配置となっていれば良い。更に、シアンインク・5plのドットサイズ・往走査に対応するマスクパターンMP1_5、MP3_5のいずれかでコード値「2」が割り当てられた画素と、シアンインク・5plのドットサイズ・復走査に対応するマスクパターンMP2_5、MP4_5のいずれかでコード値「1」が割り当てられた画素と、もまた、互いにほぼ同じ配置となっていれば良い。
なお、上述した第1の実施形態では、シアンインク・2plのドットサイズ・往走査用のマスクパターンのいずれかにおいてコード値「1」が割り当てられた画素と、シアンインク・5plのドットサイズ・往走査用のマスクパターンのいずれかにおいてコード値「1」が割り当てられた画素と、が互いに重畳しない(排他関係にある)ように配置されている形態について記載したが、他の形態による実施も可能である。
すなわち、シアンインク・2plのドットサイズ・往走査用のマスクパターンのいずれかにおいてコード値「1」が割り当てられた画素と、シアンインク・2plのドットサイズ・往走査用のマスクパターンのいずれかにおいてコード値「1」が割り当てられた画素と、のすべてが同じ配置でなければ良く、それらの画素のうちの一部であれば同じ配置となっていても良い。
ただし、シアンインク・2plのドットサイズ・往走査用のマスクパターンのいずれかにおいてコード値「1」が割り当てられた画素と、シアンインク・5plのドットサイズ・往走査用のマスクパターンのいずれかにおいてコード値「1」が割り当てられた画素と、が同じ配置となっている数が少ないほど好適に記録媒体の表面を被覆することができる。詳細には、シアンインク・2plのドットサイズ・往走査用のマスクパターンのいずれかにおいてコード値「1」が割り当てられた画素の数のうち、シアンインク・5plのドットサイズ・往走査用のマスクパターンのいずれかにおいてコード値「1」が割り当てられた画素と異なる配置にある画素の数が約半数あることが好ましい。シアンインク・2plのドットサイズ・往走査用のマスクパターンのいずれかにおいてコード値「1」が割り当てられた画素とシアンインク・5plのドットサイズ・往走査用のマスクパターンのいずれかにおいてコード値「1」が割り当てられた画素が半分程度が重畳していなければ記録媒体の表面をある程度十分に被覆することができるためである。
なお、シアンインク・2plのドットサイズ・復走査用のマスクパターンのいずれかにおいてコード値「1」が割り当てられた画素とシアンインク・5plのドットサイズ・復走査用のマスクパターンのいずれかにおいてコード値「1」が割り当てられた画素との関係についても同様である。
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、2plのドットサイズに対応するシアンインク、5plのドットサイズに対応するシアンインクそれぞれに用いるマスクパターンとして往走査用の論理和パターンと復走査用の論理和パターンにおいてコード値「1」が割り当てられた画素がランダムなホワイトノイズ特性を持つ配置となるように、各画素に対するコード値が割り当てられたマスクパターンを用いる形態について記載した。そのため、上述したように、第1の実施形態で用いたマスクパターンは、論理和パターンにてコード値「1」が割り当てられた画素のうち、論理和パターンにてコード値「1」が割り当てられた画素がX方向における両側に隣接する画素の数と、論理和パターンにてコード値「1」が割り当てられた画素がX方向において隣接しない画素の数と、が同じ数となるように定められていた。同様に、論理和パターンにてコード値「1」が割り当てられた画素のうち、論理和パターンにてコード値「1」が割り当てられた画素がX方向における両側に隣接する画素の数と、論理和パターンにてコード値「1」が割り当てられた画素がX方向において隣接しない画素の数と、もまた同じ数となっていた。
これに対し、本実施形態では、2plのドットサイズに対応するシアンインク、5plのドットサイズに対応するシアンインクそれぞれに用いるマスクパターンとして、復走査用の論理和パターンにおいてコード値「1」が割り当てられた画素のうち、往走査用の論理和パターンにてコード値「1」が割り当てられた画素がX方向における両側に隣接する画素の数が、往走査用の論理和パターンにてコード値「1」が割り当てられた画素がX方向における両側に隣接しない画素の数よりも多くなるように、各画素に対するコード値が定められたマスクパターンを用いる。同様に、本実施形態で用いるマスクパターンでは、往走査用の論理和パターンにおいてコード値「1」が割り当てられた画素のうち、復走査用の論理和パターンにてコード値「1」が割り当てられた画素がX方向における両側に隣接する画素の数が、復走査用の論理和パターンにてコード値「1」が割り当てられた画素がX方向において隣接しない画素の数よりも多くなるように、各画素に対するコード値が定められている。
なお、上述した第1の実施形態と同様の部分については説明を省略する。
図12から図16を用いて説明したように、第1の実施形態では復走査における駆動順序を往走査における駆動順序の逆順と異なる順序とすることにより、往復走査間のX方向のずれによる画質の低下を抑制した。
しかしながら、図15と図16を比較するとわかるように、各画素に1つずつドットを形成するような比較的低濃度の画像を記録する際には、駆動順序だけではなく記録データによっても往復走査間のX方向のずれによって生じる画質の低下の程度が異なってくる。
図15に示すように往走査で記録されるドットと復走査で記録されるドットがX方向に交互とならないように記録データを生成した場合、往復走査間のX方向のずれが小さい場合には画質の低下を好適に抑制することができる。しかしながら、図15(d)からわかるように、往復走査間のX方向のずれが大きい場合には駆動順序を互いに逆順ではない順序とした場合であってもドットの抜けや重なりが大きくなってしまう虞がある。
これに対し、往走査で記録されるドットと復走査で記録されるドットがX方向に交互となるように記録データを生成すると、図16(d)に示すように、往復走査間のX方向のずれが大きい場合であってもドットの抜けや重なりを小さくすることができる。
以上の点を鑑み、本実施形態では、低濃度の画像を記録する場合における往復走査間のX方向のずれによる画質の低下を抑制するため、低濃度の画像記録時に往走査で記録されるドットと復走査で記録されるドットが交互に生じるように記録データを生成する。ここで低濃度の画像データ、例えば画素値が「1」の画像データに関しては、図10のデコードテーブルに示したようにマスクパターン内の「1」のコード値が定められた画素にのみドットが形成される。これは、コード値「1」がコード値「0」、「1」、「2」の中でインクの吐出の許容回数が最大のコード値であるためである。したがって、低濃度の画像記録時に往走査、復走査それぞれで記録されるドットを交互に生じさせるためには、往走査用の論理和パターンと復走査用の論理和パターンでコード値「1」が定められた画素がX方向に交互に生じるようなマスクパターンを用いれば良い。
往走査用の論理和パターンと復走査用の論理和パターンでコード値「1」が定められた画素がX方向に交互に生じるようなマスクパターンを用いることで、低濃度の画像記録時の往復走査間のX方向へのずれに伴うドットの抜けや重なりを小さくできるメカニズムの詳細について、以下に説明する。
図25は往走査用の論理和パターンと復走査用の論理和パターンでコード値「1」が定められた画素がX方向に交互に生じるように各画素に対してコード値が定められたマスクパターンの一例を示す図である。なお、図25(a)には1回目の走査に対応するマスクパターンMP1´を、図25(b)には2回目の走査に対応するマスクパターンMP2´を、図25(c)には3回目の走査に対応するマスクパターンMP3´を、図25(d)には4回目の走査に対応するマスクパターンMP4´をそれぞれ示している。また、図25(e)は図25(a)に示す1回目の走査に対応するマスクパターンMP1´と図25(c)に示す3回目の走査に対応するマスクパターンMP3´それぞれにおいて定められたインクの吐出の許容回数の論理和により得られる論理和パターンMP1´+MP3´を示している。また、図25(f)は図25(b)に示す2回目の走査に対応するマスクパターンMP2´と図25(d)に示す4回目の走査に対応するマスクパターンMP4´それぞれにおいて定められたインクの吐出の許容回数の論理和により得られる論理和パターンMP2´+MP4´を示している。なお、図25における白抜けで示された画素が「0」のコード値が割り当てられた画素を、灰色で塗りつぶされた画素が「1」のコード値が割り当てられた画素を、黒く塗りつぶされた画素が「2」のコード値が割り当てられた画素をそれぞれ示している。
図25(a)〜(d)に示すマスクパターンMP1´〜MP4´は、図17(a)〜(d)に示すマスクパターンMP1_2〜MP4_2や図18(a)〜(d)に示すマスクパターンMP1_5〜MP4_5と異なり、図25(e)に示す論理和パターンMP1´+MP3´において「1」のコード値が割り当てられた画素と図25(f)に示す論理和パターンMP2´+MP4´において「1」のコード値が割り当てられた画素がX方向に交互に生じるように設定されている。
なお、図25(a)〜(d)に示すマスクパターンMP1´〜MP4´は、上記の設定条件以外に関しては図17(a)〜(d)に示すマスクパターンMP1_2〜MP4_2や図18(a)〜(d)に示すマスクパターンMP1_5〜MP4_5と同様である。
上記の設定について詳細に説明する。
本実施形態における図25(e)に示す論理和パターンMP1´+MP3´は、1024個の画素のうち512個の画素でコード値「1」が割り当てられており、そのうちのすべて、すなわち512個のコード「1」が割り当てられた画素には、図25(f)に示す論理和パターンMP2´+MP4´にてX方向における両側にコード値「1」が割り当てられた画素が隣接している。一方、図25(e)に示す論理和パターンMP1´+MP3´内の512個のコード値「1」が割り当てられた画素のうち、図25(f)に示す論理和パターンMP2´+MP4´にてX方向にコード値「1」が割り当てられた画素が隣接する画素は0個である。
例えば、図25(e)に示す論理和パターンMP1´+MP3´内の最もY方向下流側(図中上側)端部の行では、X方向上流側(図中左側)から1,3,5,7,9、11,13,15,17,19,21,23,25,27,29,31番目の画素(X方向上流側から奇数番目の画素)においてコード値「1」が割り当てられている。一方、図25(f)に示す論理和パターンMP2´+MP4´内の最もY方向下流側(図中上側)端部の行では、X方向上流側(図中左側)から2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32番目の画素(X方向上流側から偶数番目の画素)においてコード値「1」が割り当てられている。
ここで、図25(e)に示す論理和パターンMP1´+MP3´内の最もY方向下流側(図中上側)端部の行の中のX方向上流側(図中左側)から3番目の画素にはコード値「1」が割り当てられているが、それとX方向における両側に隣接するY方向下流側(図中上側)端部の行の中のX方向上流側(図中左側)から2、4番目の画素には図25(f)に示す論理和パターンMP2´+MP4´においてコード値「1」が割り当てられている。すなわち、図25(e)に示す論理和パターンMP1´+MP3´内の最もY方向下流側(図中上側)端部の行の中のX方向上流側(図中左側)から3番目の画素は、コード値「1」が割り当てられ、且つ、図25(f)に示す論理和パターンMP2´+MP4´によってX方向における両側に隣接する画素にコード値「1」が割り当てられた画素が存在する画素である。
なお、ここでは同一行内に位置するX方向上流側(図中左側)端部の画素とX方向下流側(図中右側)端部の画素は互いに隣接するものとして考える。これは図25(a)〜(d)に示すマスクパターンMP1´〜MP4´はそれぞれマスクパターンの繰り返し単位を示しているため、実際にはこれらのマスクパターンがX方向において順次用いられるので、画像データに対して実際に適用する際にあるマスクパターンのX方向下流側(図中右側)端部の画素に相当する量子化データ内の領域の右隣には次のマスクパターンのX方向上流側(図中左側)端部の画素に相当する量子化データがくるためである。
したがって、例えば、図25(e)に示す論理和パターンMP1´+MP3´内の最もY方向下流側(図中上側)端部の行の中のX方向上流側(図中左側)から1番目のコード値「1」が割り当てらた画素は、それとX方向における両側に隣接するY方向下流側(図中上側)端部の行の中のX方向上流側(図中左側)から32、2番目の画素に図25(f)に示す論理和パターンMP2´+MP4´においてコード値「1」が割り当てられていることになる。
また、本実施形態における図25(f)に示す論理和パターンMP2´+MP4´も、1024個の画素のうち512個の画素でコード値「1」が割り当てられており、そのうちのすべて、すなわち512個のコード「1」が割り当てられた画素には、図25(e)に示す論理和パターンMP1´+MP3´にてX方向における両側にコード値「1」が割り当てられた画素が隣接している。一方、図25(f)に示す論理和パターンMP2´+MP4´内の512個のコード値「1」が割り当てられた画素のうち、図25(e)に示す論理和パターンMP1´+MP3´にてX方向にコード値「1」が割り当てられた画素が隣接する画素は0個である。
図26は図25(a)〜(d)に示すマスクパターンMP1´〜MP4´を用い、低濃度の画像を記録した際のドットの配置を説明するための図である。なお、ここでは低濃度の画像に対応する階調データとしてすべての画素に対して階調レベルがレベル2である階調データが入力された場合について記載する。したがって、図6に示す吐出口列展開テーブルからわかるように、各ドットサイズのインクは各画素領域に対して1回ずつ付与されることになる。
図8の単位領域211内の全ての画素において階調データの階調値がレベル1である場合、図6に示す吐出口列展開テーブルからわかるように、すべての画素に対して画素値が「1」の2pl用画像データが生成される。したがって、図10に示すデコードテーブルからわかるように、図25に示すマスクパターンMP1´〜MP4´内のコード値「1」が割り当てられた画素に相当する画素領域にインクが吐出されることになる。すなわち、1回目の走査では図25(a)、2回目の走査では図25(b)、3回目の走査では図25(c)、4回目の走査では図25(d)の灰色で塗りつぶされた画素に相当する画素領域にインクが吐出される。
このうち、1回目、3回目の走査は往走査、2回目、4回目の走査は復走査であるため、往走査でインクが吐出される画素は図25(e)の灰色で塗りつぶされた画素、復走査でインクが吐出される画素は図25(f)の灰色で塗りつぶされた画素となる。
この際に往走査、復走査ともに図19(a)に示す駆動順序で時分割駆動を行うと、往復走査間のずれがなければ往走査では図26(a)に示す位置に、復走査では図26(b)に示す位置にそれぞれインクが吐出されてドットが形成される。
ここで、図26(a)、図26(b)それぞれに示すドットの配置がずれなく重なった場合におけるドット配置を図26(c)に、復走査においてX方向下流側に21.2μm(1200dpi相当)ずれて重なった場合のドット配置を図26(d)に、復走査においてX方向下流側に42.3μm(600dpi相当)ずれて重なった場合のドット配置を図26(e)にそれぞれ示している。
図26(c)からわかるように、X方向に延びる各行に関し、往走査によるドットと復走査によるドットとがほとんど重なって記録されている行、一部が重なっている行、ほとんど重ならずにずれて記録されている行が様々に存在することがわかる。図26(d)では、元々重なっていた行のドットは新たに出現する反面、元々重ならずにずれていた行のドットは新たに重なることで、濃度変動は相殺されている。図26(e)も図26(d)と同じで、元々重なっていた行のドットは新たに出現する反面、元々重ならずにずれていた行のドットは新たに重なることで、濃度変動は相殺されている。
このように画像全体として見たときに、図26(d)に示すX方向上流側への往復走査間のずれ量が21.2μmであっても、あるいは図26(e)に示すX方向上流側への往復走査間のずれ量が42.3μmであっても、図26(c)に示す往復走査間のずれが生じなかった際に比べて濃度変動はほとんど発生しないことがわかる。
図26からわかるように、往走査用の論理和パターンと復走査用の論理和パターンでコード値「1」が定められた画素がX方向に交互に生じるようなマスクパターンおよび駆動順序によれば、1つの画素領域に1ドットを記録するような比較的低濃度の画像を記録する際であっても、往復走査間の吐出位置ずれを抑制した記録を行うことが可能となる。
比較として、第1の実施形態で用いた図17(a)〜(d)に示すマスクパターンを用い、他の条件は本実施形態と同様にして、階調データとしてすべての画素において階調レベルがレベル2である階調データが入力された場合に形成されるドットの位置について説明する。
図26は図17に示すマスクパターンを用いた際、階調レベルがレベル2である階調データが入力された場合にインクによって記録される画像を示す図である。
図8の単位領域211内の全ての画素において階調データの階調値がレベル2である場合、図6(c)に示す吐出口列展開テーブルからわかるように、各ドットサイズ用の画像データとしてすべての画素に対して画素値が「1」の画像データが生成される。したがって、図10に示すデコードテーブルからわかるように、図17に示すマスクパターン内のコード値「1」が割り当てられた画素に相当する画素領域にインクが吐出されることになる。すなわち、1回目の走査では図17(a)、2回目の走査では図17(b)、3回目の走査では図17(c)、4回目の走査では図17(d)の灰色で塗りつぶされた画素に相当する画素領域にインクが吐出される。
このうち、1回目、3回目の走査は往走査、2回目、4回目の走査は復走査であるため、往走査でインクが吐出される画素は図17(e)の灰色で塗りつぶされた画素、復走査でインクが吐出される画素は図17(f)の灰色で塗りつぶされた画素となる。
この際に往走査、復走査ともに図19(a)に示す駆動順序で時分割駆動を行うと、往復走査間のずれがなければ往走査では図27(a)に示す位置に、復走査では図27(b)に示す位置にそれぞれインクが吐出されてドットが形成される。
ここで、図27(a)、図27(b)それぞれに示すドットの配置がずれなく重なった場合におけるドット配置を図27(c)に、復走査においてX方向下流側に21.2μm(1200dpi相当)ずれて重なった場合のドット配置を図27(d)に、復走査においてX方向下流側に42.3μm(600dpi相当)ずれて重なった場合のドット配置を図27(e)にそれぞれ示している。
図27(c)からわかるように、往走査によるドットと復走査によるドットとがほとんど重なっている箇所や一部が重なっている箇所、ほとんど重なっていない箇所が混在するように記録される。そのため、往復走査間のずれが比較的小さい場合には図27(d)に示すように、ドットの重なりや抜けは図27(c)に示す場合よりは多くなるものの、それ程変わらない画像を記録できる。しかしながら、図27(e)に示すように、往復走査間のずれが比較的大きくなるとドットの重なりや抜けが目立つようになり、画質の低下が視認され易くなってしまう。記録が定められる画素のX方向における分散性が低いため、往復走査間のずれが大きくなった場合において画質の低下を抑制できないのである。
このように、往走査用の論理和パターンと復走査用の論理和パターンでコード値「1」が定められた画素がX方向に交互に生じるように各画素に対してコード値が定められたマスクパターンによれば、往走査用の論理和パターンと復走査用の論理和パターンでコード値「1」が割り当てられた画素がランダムなホワイトノイズ特性を持つ配置となるように各画素に対するコード値が割り当てられたマスクパターンに比べて低濃度の画像を記録する際の往復走査間の1つのドットサイズのインクの吐出位置ずれを抑制できることが実験的に確認できる。
(本実施形態で適用するマスクパターン)
以上の点を鑑み、本実施形態では往走査用の論理和パターンでコード値「1」が定められた画素、すなわち往走査用のマスクパターンのいずれかでコード値「1」が定められた画素と、復走査用の論理和パターンでコード値「1」が定められた画素、すなわち復走査用のマスクパターンのいずれかでコード値「1」が定められた画素と、がX方向に交互に生じるようにコード値が定められたマスクパターンを適用する。
その上で、本実施形態で適用するマスクパターンは、第1の実施形態と同様に、シアンインク・2plのドットサイズ・往走査用のマスクパターンのいずれかでコード値「1」が割り当てられた画素と、シアンインク・5plのドットサイズ・往走査用のマスクパターンのいずれかでコード値「1」が割り当てられた画素と、が互いに異なる配置となるように、各画素に対するコード値が割り当てられている。また、同様にしてシアンインク・2plのドットサイズ・復走査用のマスクパターンのいずれかでコード値「1」が割り当てられた画素と、シアンインク・5plのドットサイズ・復走査用のマスクパターンのいずれかでコード値「1」が割り当てられた画素と、もまた互いに異なる配置となっている。
図28は本実施形態においてシアンインク・2plのドットサイズの画像データC4_2に対して適用するマスクパターンを示す図である。なお、図28(a)には1回目の走査に対応するシアンインク・2pl用のマスクパターンMP1_2´を、図28(b)には2回目の走査に対応するシアンインク・2pl用のマスクパターンMP2_2´を、図28(c)には3回目の走査に対応するシアンインク・2pl用のマスクパターンMP3_2´を、図28(d)には4回目の走査に対応するシアンインク・2pl用のマスクパターンMP4_2´をそれぞれ示している。また、図28(e)は図28(a)に示す1回目の走査に対応するマスクパターンMP1_2´と図28(c)に示す3回目の走査に対応するマスクパターンMP3_2´それぞれにおいて定められたインクの吐出の許容回数の論理和により得られる論理和パターンMP1_2´+MP3_2´を示している。また、図28(f)は図28(b)に示す2回目の走査に対応するマスクパターンMP2_2´と図28(d)に示す4回目の走査に対応するマスクパターンMP4_2´それぞれにおいて定められたインクの吐出の許容回数の論理和により得られる論理和パターンMP2_2´+MP4_2´を示している。
また、図29は本実施形態においてシアンインク・5plのドットサイズの画像データC4_5に対して適用するマスクパターンを示す図である。なお、図29(a)には1回目の走査に対応するシアンインク・5pl用のマスクパターンMP1_5´を、図29(b)には2回目の走査に対応するシアンインク・5pl用のマスクパターンMP2_5´を、図29(c)には3回目の走査に対応するシアンインク・5pl用のマスクパターンMP3_5´を、図29(d)には4回目の走査に対応するシアンインク・5pl用のマスクパターンMP4_5´をそれぞれ示している。また、図29(e)は図29(a)に示す1回目の走査に対応するマスクパターンMP1_5´と図29(c)に示す3回目の走査に対応するマスクパターンMP3_5´それぞれにおいて定められたインクの吐出の許容回数の論理和により得られる論理和パターンMP1_5´+MP3_5´を示している。また、図29(f)は図29(b)に示す2回目の走査に対応するマスクパターンMP2_5´と図29(d)に示す4回目の走査に対応するマスクパターンMP4_5´それぞれにおいて定められたインクの吐出の許容回数の論理和により得られる論理和パターンMP2_5´+MP4_5´を示している。
なお、図28、図29における白抜けで示された画素が「0」のコード値が割り当てられた画素を、灰色で塗りつぶされた画素が「1」のコード値が割り当てられた画素を、黒く塗りつぶされた画素が「2」のコード値が割り当てられた画素をそれぞれ示している。
図28(e)、(f)に示す論理和パターンMP1_2´+MP3_2´、論理和パターンMP2_2´+MP4_2´からわかるように、図28(a)〜(d)に示すシアンインク・2pl用のマスクパターンMP1_2´〜MP4_2´は、往走査用のマスクパターンMP1_2´、MP3_2´のいずれかでコード値「1」が割り当てられた画素と、復走査用のマスクパターンMP2_2´、MP4_2´のいずれかでコード値「1」が割り当てられた画素と、がX方向に交互に生じるように設定されている。
同様に、図29(e)、(f)に示す論理和パターンMP1_5´+MP3_5´、論理和パターンMP2_5´+MP4_5´からわかるように、図29(a)〜(d)に示すシアンインク・5pl用のマスクパターンMP1_5´〜MP4_5´は、往走査用のマスクパターンMP1_5´、MP3_5´のいずれかでコード値「1」が割り当てられた画素と、復走査用のマスクパターンMP2_5´、MP4_5´のいずれかでコード値「1」が割り当てられた画素と、がX方向に交互に生じるように設定されている。
更に、図28(e)と図29(e)を比較するとわかるように、シアンインク・2plのドットサイズ・往走査用のマスクパターンMP1_2´、MP3_2´のいずれかにおいてコード値「1」が割り当てられた画素のうち、半数程度の画素がシアンインク・5plのドットサイズ・往走査用のマスクパターンMP1_5´、MP3_5´のいずれかにおいてコード値「1」が割り当てられた画素と重畳しない配置となっている。そして、残りの半数程度の画素はシアンインク・5plのドットサイズ・往走査用のマスクパターンMP1_5´、MP3_5´のいずれかにおいてコード値「1」が割り当てられた画素と同じ配置となっている。
例えば、図28(e)に示す論理和パターンMP1_2´+MP3_2´内の最もY方向下流側(図中上側)端部の行では、X方向上流側(図中左側)から1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31番目の画素(X方向上流側から奇数番目の画素)においてコード値「1」が割り当てられている。また、図29(e)に示す論理和パターンMP1_5´+MP3_5´内の最もY方向下流側(図中上側)端部の行では、X方向上流側(図中左側)から1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31番目の画素(X方向上流側から奇数番目の画素)においてコード値「1」が割り当てられている。したがって、図28(e)に示す論理和パターンMP1_2´+MP3_2´内の最もY方向下流側(図中上側)端部の行のコード値「1」が割り当てられた画素は、すべて図29(e)に示す論理和パターンMP1_5´+MP3_5´内の最もY方向下流側(図中上側)端部の行のコード値「1」が割り当てられた画素と同じ配置となっていることがわかる。
一方、図28(e)に示す論理和パターンMP1_2´+MP3_2´内の最もY方向下流側(図中上側)端部から2番目の行では、X方向上流側(図中左側)から1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31番目の画素(X方向上流側から奇数番目の画素)においてコード値「1」が割り当てられている。これに対し、図29(e)に示す論理和パターンMP1_5´+MP3_5´内の最もY方向下流側(図中上側)端部から2番目の行では、X方向上流側(図中左側)から2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32番目の画素(X方向上流側から偶数番目の画素)においてコード値「1」が割り当てられている。したがって、図28(e)に示す論理和パターンMP1_2´+MP3_2´内の最もY方向下流側(図中上側)端部から2番目の行のコード値「1」が割り当てられた画素は、すべて図29(e)に示す論理和パターンMP1_5´+MP3_5´内の最もY方向下流側(図中上側)端部から2番目の行のコード値「1」が割り当てられた画素と異なる配置となっていることがわかる。
以下、すべての行において同様に考えると、合計では論理和パターンMP1_2´+MP3_2´内のコード値「1」が割り当てられた画素のうち、半数程度の画素が論理和パターンMP1_5´+MP3_5´内のコード値「1」が割り当てられた画素と同じ配置となっていることがわかる。
また、同じように、図28(f)と図29(f)を比較するとわかるように、シアンインク・2plのドットサイズ・復走査用のマスクパターンMP2_2´、MP4_2´のいずれかにおいてコード値「1」が割り当てられた画素のうち、半数程度の画素がシアンインク・5plのドットサイズ・復走査用のマスクパターンMP2_5´、MP4_5´のいずれかにおいてコード値「1」が割り当てられた画素と重畳しない配置となっている。そして、残りの半数程度の画素はシアンインク・5plのドットサイズ・復走査用のマスクパターンMP2_5´、MP4_5´のいずれかにおいてコード値「1」が割り当てられた画素と同じ配置となっている。
以上記載したような条件に基づいて、本実施形態で用いるシアンインク・2pl用のマスクパターンMP1_2´〜MP4_2´、シアンインク・5pl用のマスクパターンMP1_5´〜MP4_5´が設定される。
(本実施形態による記録画像)
以上記載したように、本実施形態では、図28(a)〜(d)に示すシアンインク・2pl用のマスクパターンMP1_2´〜MP4_2´と図29(a)〜(d)に示すシアンインク・5pl用のマスクパターンMP1_5´〜MP4_5´を用い、且つ、往走査、復走査ともに図19(a)に示す駆動順序にしたがって時分割駆動を行う。これにより、高濃度の画像記録時だけではなく、低濃度の画像記録時における往復走査間の吐出位置ずれも抑制した記録を行う。更に、シアンインク・2pl用のマスクパターンMP1_2´〜MP4_2´とシアンインク・5pl用のマスクパターンMP1_5´〜MP4_5´を異ならせることにより、第1の実施形態と同様に複数ドットサイズのインクを使用する場合であっても画質弊害が発生しにくいような記録を行うことが可能となる。
上述したような異ならせ方で異ならせたシアンインク・2pl用の画像データに適用するマスクパターンとシアンインク・5pl用の画像データに適用するマスクパターンを用いた場合に形成されるドットの位置について説明する。
図30はシアンインク・2pl用の画像データは図28に示すマスクパターンを、シアンインク・5pl用の画像データは図29に示すマスクパターンをそれぞれ用いて記録データを生成し、2plのシアンインクの記録素子列と5plのシアンインクの記録素子列の両方を往走査、復走査ともに図19に示す駆動順序で時分割駆動した場合に形成されるドットの配置を示す図である。なお、図30(a)は2plのドットサイズに対応するシアンインクのドットの配置を、図30(b)は5plのドットサイズに対応するシアンインクのドットの配置をそれぞれ示している。更に、図30(c)は図30(a)、(b)それぞれに示す2plのドットサイズに対応するシアンインク、5plのドットサイズに対応するシアンインクのドットが重畳した際の様子を示している。ここで、図30に示す内部に横線が引かれた円が2plのドットサイズに対応するシアンインクのドットを、内部に縦線が引かれた円が5plのドットサイズに対応するシアンインクのドットをそれぞれ示している。
なお、図30(a)では階調データC3としてすべての画素において階調レベルがレベル2である階調データが入力された場合に2plのドットサイズに対応するシアンインクによって形成されるドットの位置を模式的に示している。また、図30(b)では階調データC3としてすべての画素において階調レベルがレベル2である階調データが入力された場合に5plのドットサイズに対応するシアンインクによって形成されるドットの位置を模式的に示している。図6の吐出口列展開テーブルからわかるように、階調データの階調レベルがレベル2である場合、シアンインク、2pl用の画像データ、シアンインク、5pl用の画像データの画素値はどちらも「1」となる。したがって、2plのドットサイズに対応するシアンインク、5plのドットサイズに対応するシアンインクともに各画素領域に対して1回ずつ付与されることになる。
ここで、図28、図29を用いて説明したように、本実施形態では比較的低濃度の画像データが入力された場合、同じ画素領域に対しては約半数の画素領域では2plのドットサイズに対応するシアンインクと5plのドットサイズに対応するシアンインクが異なる方向への走査で付与され、残りの約半数の画素領域では2plのドットサイズに対応するシアンインクと5plのドットサイズに対応するシアンインクが同じ方向への走査で付与されるようにマスクパターンが設定されている。
一方で、図19を用いて説明したように2plのシアンインクの記録素子列と5plのシアンインクの記録素子列は同じ駆動順序で時分割駆動を行うため、同じ画素領域にインクを吐出する2plのドットサイズに対応するシアンインク、5plのドットサイズに対応するシアンインクの記録素子の駆動順番は同じである。
以上の点を鑑みると、ある画素領域に対して2plのドットサイズに対応するシアンインクを往走査(1、3回目の走査)で付与するように記録データが生成された場合、5plのドットサイズに対応するシアンインクに関してはそれらの画素領域のうちの約半数の画素領域に対しては復走査(2、4回目の走査)で付与するように記録データが生成される。そして、その画素領域に対して2plのドットサイズに対応するシアンインク、5plのドットサイズに対応するシアンインクをそれぞれ吐出する記録素子の駆動順番は同じことになる。したがって、上述した約半数の画素領域に対しては2plのドットサイズに対応するシアンインク、5plのドットサイズに対応するシアンインクを異なる方向への走査、且つ、同じ駆動順序で吐出することになるため、図30(c)からわかるようにドットの着弾位置はX方向に異なることになる。
なお、記録データによって2plのドットサイズに対応するシアンインクを往走査(1、3回目の走査)で付与するように定められた画素領域のうちの残りの約半数の画素領域に対しては、5plのドットサイズに対応するシアンインクもそれらの画素領域に対して往走査(1、3回目の走査)で付与するように記録データが生成される。したがって、これらの残りの約半数の画素領域に対しては2plのドットサイズに対応するシアンインク、5plのドットサイズに対応するシアンインクを同じ方向への走査、且つ、同じ駆動順序で吐出することになるため、図30(c)からわかるようにドットの着弾位置はX方向に同じとなる。この分、図30(c)に示す画像では記録媒体の表面の被覆面積は多少小さくなるが、半数の画素領域では2plのドットサイズに対応するシアンインク、5plのドットサイズに対応するシアンインクのドットの着弾位置がX方向に異なるため、ドットの重畳をある程度低減することができる。これにより、粒状感を抑制して記録を行うことが可能となる。
以上記載したように、本実施形態によれば高濃度の画像記録時だけではなく、低濃度の画像記録時においても各ドットサイズのインクの往復走査間の吐出位置ずれを好適に抑制することができる。更に、2plのドットサイズに対応するシアンインクと5plのドットサイズに対応するシアンインクそれぞれに対応するマスクパターンを異ならせることにより、2plのドットサイズに対応するシアンインクと5plのドットサイズに対応するシアンインクの間でドット配置が重畳することに由来する粒状感を抑制することができる。
(比較例)
次に、第2の実施形態に対する比較形態について詳細に説明する。
比較例では、第2の実施形態でシアンインク・2pl用の画像データに対して適用した図28(a)〜(d)に示すマスクパターンMP1_2´〜MP4_2´をシアンインク・2pl用の画像データ、シアンインク・5pl用の画像データの両方に対して適用し、記録データを生成する。また、時分割駆動における駆動順序に関しては、第2の実施形態と同じく2plのシアンインクの記録素子列、5plのシアンインクの記録素子列の両方を図19(a)に示す駆動順序とする。
図31はシアンインク・2pl用の画像データ、シアンインク・5pl用の画像データともに図28に示すマスクパターンを用いて記録データを生成し、2plのシアンインクの記録素子列と5plのシアンインクの記録素子列の両方を往走査、復走査ともに図19に示す駆動順序で時分割駆動した場合に形成されるドットの配置を示す図である。なお、図31(a)は2plのドットサイズに対応するシアンインクのドットの配置を、図31(b)は5plのドットサイズに対応するシアンインクのドットの配置をそれぞれ示している。更に、図31(c)は図31(a)、(b)それぞれに示す2plのドットサイズに対応するシアンインク、5plのドットサイズに対応するシアンインクのドットが重畳した際の様子を示している。ここで、図31に示す内部に横線が引かれた円が2plのドットサイズに対応するシアンインクのドットを、内部に縦線が引かれた円が5plのドットサイズに対応するシアンインクのドットをそれぞれ示している。
なお、図31(a)では階調データC3としてすべての画素において階調レベルがレベル2である階調データが入力された場合に2plのドットサイズに対応するシアンインクによって形成されるドットの位置を模式的に示している。、また、図31(b)では階調データC3としてすべての画素において階調レベルがレベル2である階調データが入力された場合に5plのドットサイズに対応するシアンインクによって形成されるドットの位置を模式的に示している。図6の吐出口列展開テーブルからわかるように、階調データの階調レベルがレベル2である場合、シアンインク・2pl用の画像データ、シアンインク・5pl用の画像データの画素値はどちらも「1」となる。したがって、2plのドットサイズに対応するシアンインク、5plのドットサイズに対応するシアンインクともに各画素領域に対して1回ずつ付与されることになる。
ここで、上述のように、シアンインク・2pl用の画像データ、シアンインク・5pl用の画像データともに図28に示すマスクパターンを適用する。したがって、比較的低濃度の画像データが入力された場合、2plのドットサイズに対応するシアンインクと5plのドットサイズに対応するシアンインクは同じ画素領域に対して同じ方向への走査で付与されることになる。
一方で、図19を用いて説明したように2plのシアンインクの記録素子列と5plのシアンインクの記録素子列は同じ駆動順序で時分割駆動を行うため、同じ画素領域にインクを吐出する2plのドットサイズに対応するシアンインク、5plのドットサイズに対応するシアンインクの記録素子の駆動順番は同じである。
以上の点を鑑みると、ある画素領域に対して2plのドットサイズに対応するシアンインクを往走査(1、3回目の走査)で付与するように記録データが生成された場合、5plのドットサイズに対応するシアンインクに関してもその画素領域に対して往走査(1、3回目の走査)で付与するように記録データが生成される。そして、その画素領域に対して2plのドットサイズに対応するシアンインク、5plのドットサイズに対応するシアンインクをそれぞれ吐出する記録素子の駆動順番は同じことになる。このように、同じ画素領域に対して2plのドットサイズに対応するシアンインク、5plのドットサイズに対応するシアンインクを同じ方向への走査、且つ、同じ駆動順序で吐出することになるため、すべての画素領域においてドットの着弾位置はX方向に同じとなってしまう。
したがって、図31(a)、(b)を比べるとわかるように、比較例によれば2plのドットサイズに対応するシアンインクと5plのドットサイズに対応するシアンインクは互いに同じ配置にて単位領域内の各画素領域に付与される。このため、図31(c)に示すように、比較例では記録媒体の表面を2plのドットサイズに対応するシアンインク、5plのドットサイズに対応するシアンインクのドットで十分に被覆することができない。これにより、粒状感の目立つ画像が記録されてしまう虞がある。
図30(c)に示す第1の実施形態によって記録された2plのドットサイズに対応するシアンインク、5plのドットサイズに対応するシアンインクのドット配置と図31(c)に示す比較例によって記録された2plのドットサイズに対応するシアンインク、5plのドットサイズに対応するシアンインクのドット配置を比べると明らかなように、第2の実施形態を適用することによっても、粒状感を抑制した記録を行うことが可能であることを実験的に確認できる。
なお、本実施形態では図28(e)、(f)に一例を示すように一方の論理和パターンにおいてコード値「1」が割り当てられた画素のうち、すべての画素で他方の論理和パターンにおいてコード値「1」が割り当てられた画素とX方向における両側に隣接するようなマスクパターンを用いる形態について記載したが、他の形態による実施も可能である。本実施形態による効果を得るためには、一方の論理和パターンにおいてコード値「1」が割り当てられた画素のうち、他方の論理和パターンにおいてコード値「1」が割り当てられた画素がX方向における両側に隣接する画素の数が、他方の論理和パターンにおいてコード値「1」が割り当てられた画素がX方向に隣接しない画素の数よりも多くなるようなマスクパターンを用いる形態であれば良い。
また、本実施形態ではシアンインク・2plのドットサイズ・往走査用の論理和パターンにおいてコード値「1」が割り当てれた画素のうち、半数程度の画素がシアンインク・5plのドットサイズ・往走査用の論理和パターンにおいてコード値「1」が割り当てられた画素と同じ配置となるように、各画素に対するコード値が定められたマスクパターンを用いる形態について記載したが、他の形態による実施も可能である。
例えば、第1の実施形態と同様にシアンインク・2plのドットサイズ・往走査用の論理和パターンにおいてコード値「1」が割り当てられた画素のすべての画素がシアンインク・5plのドットサイズ・往走査用の論理和パターンにおいてコード値「1」が割り当てられた画素と同じ配置となるように、各画素に対するコード値が定められたマスクパターンを用いても良い。このようなマスクパターンの一例を図32に示す。
図32(a)には1回目の走査に対応するシアンインク・5pl用のマスクパターンMP1_5´´を、図32(b)には2回目の走査に対応するシアンインク・5pl用のマスクパターンMP2_5´´を、図32(c)には3回目の走査に対応するシアンインク・5pl用のマスクパターンMP3_5´´を、図32(d)には4回目の走査に対応するシアンインク・5pl用のマスクパターンMP4_5´´をそれぞれ示している。また、図32(e)は図32(a)に示す1回目の走査に対応するマスクパターンMP1_5´´と図32(c)に示す3回目の走査に対応するマスクパターンMP3_5´´それぞれにおいて定められたインクの吐出の許容回数の論理和により得られる論理和パターンMP1_5´´+MP3_5´´を示している。また、図32(f)は図32(b)に示す2回目の走査に対応するマスクパターンMP2_5´´と図32(d)に示す4回目の走査に対応するマスクパターンMP4_5´´それぞれにおいて定められたインクの吐出の許容回数の論理和により得られる論理和パターンMP2_5´´+MP4_5´´を示している。
図32(a)、(c)に示すマスクパターンMP1_5´´、MP3_5´´のいずれかにおいてコード値「1」が割り当てられた画素と、図28(a)、(c)に示すマスクパターンMP1_2´、MP3_2´のいずれかにおいてコード値「1」が割り当てられた画素と、は互いに重畳しない(排他関係にある)ように配置されている。したがって、図32(e)に示す論理和パターンMP1_5´´+MP3_5と図28(e)に示す論理和パターンMP1_2´+MP3_2´を比べるとわかるように、論理和パターンMP1_5´´+MP3_5´´、MP1_2´+MP3_2´間で灰色で塗りつぶされた(コード値「1」である)画素は重畳しない。
同じように、図32(b)、(d)に示すマスクパターンMP2_5´´、MP4_5´´のいずれかにおいてコード値「1」が割り当てられた画素と、図28(b)、(d)に示すマスクパターンMP2_2´、MP4_2´のいずれかにおいてコード値「1」が割り当てられた画素と、は互いに重畳しない(排他関係にある)ように配置されている。したがって、図32(f)に示す論理和パターンMP2_5´´+MP4_5´´と図28(f)に示す論理和パターンMP2_2´+MP4_2´を比べるとわかるように、論理和パターンMP2_5´´+MP4_5´´、MP2_2´+MP4_2´間で灰色で塗りつぶされた(コード値「1」である)画素は重畳しない。
したがって、シアンインク・2pl用画像データには図28(a)〜(d)に示すマスクパターンを、シアンインク・5pl用画像データには図32(a)〜(d)に示すマスクパターンをそれぞれ適用することにより、例えば画素値が「1」である比較的低濃度の画像データが入力された場合、すべての画素領域において同じ方向への走査では2plのドットサイズに対応するシアンインクと5plのドットサイズに対応するシアンインクを同じ画素領域に吐出しないように記録データを生成することができる。
このため、図28(a)〜(d)に示すマスクパターンMP1_2´〜MP4_2´と図32(a)〜(d)に示すマスクパターンMP1_5´´〜MP4_5´´を用いた場合、図28(a)〜(d)に示すマスクパターンMP1_2´〜MP4_2´と図29(a)〜(d)に示すマスクパターンMP1_5´〜MP4_5´を用いた場合よりも記録媒体の表面の被覆面積を大きくすることができる。したがって、より好適に粒状感を抑制することが可能となる。
(第3の実施形態)
上述した第1、第2の実施形態では、1色当たり2つのドットサイズのインクを吐出する記録ヘッドを用いる場合について記載した。
これに対し、本実施形態では、1色当たり3つ以上のドットサイズのインクを吐出する記録ヘッドを用いる場合について説明する。
なお、上述した第1、第2の実施形態と同様の部分については説明を省略する。
図33(a)は本実施形態に係る記録ヘッド7を示す斜視図である。また、図33(b)は記録ヘッド内のブラックインク用の吐出口列42Kの拡大図である。また、図33(c)は記録ヘッド内のシアンインク用の吐出口列42C1および42C2の拡大図である。
図33(a)からわかるように、本実施形態では、記録ヘッド7内には1つの記録チップ43が設けられている。そして、チップ43にはブラックインクを吐出するための吐出口列42K、シアンインクを吐出するための吐出口列42C1、42C2、マゼンタインクを吐出するための吐出口列42M1、42M2、イエローインクを吐出するための吐出口列42Y、グレーインクを吐出するための吐出口列42G1、42G2の合計8つの吐出口列42が形成されている。
図33(b)に示すように、ブラックインクの吐出口列42Kは、吐出口30bがY方向に1/600インチの密度(600dpi相当)で配列された列がY方向に1/600インチの密度(1200dpi相当)だけずれて配列されることで形成されている。ここで、第1、第2の実施形態と同様に、吐出口30bは約5plのインクを吐出可能であり、吐出口30bから記録媒体上にインクを1滴吐出して形成されるドットの径は約50μmとなる。また、図33(b)では簡単のため6つの吐出口30bしか記載していないが、実際には256個の吐出口30bによって吐出口列42Kが形成されている。イエローインクの吐出口列42Yも図33(b)に示すような構成である。
また、図33(c)に示すように、シアンインクの吐出口列42C1は、吐出口30bが600dpiの密度で配列された列L_Evと、吐出口30cが600dpiの密度で配列された列M_Evと、吐出口30dが600dpiの密度で配列された列S_Odと、の3つの列から形成される。ここで、第1、第2の実施形態と同様に吐出口30cは約2plのインクを吐出可能であり、吐出口30cからインクを1滴吐出して形成されるドットの径は約35μmとなる。また、吐出口30dは約1plのインクを吐出可能であり、吐出口30dからインクを1滴吐出して形成されるドットの径は約28μmとなる。
また、シアンインクの吐出口列42C2は、吐出口30bが600dpiの密度で配列された列L_Odと、吐出口30cが600dpiの密度で配列された列M_Odと、吐出口30dが600dpiの密度で配列された列S_Evと、の3つの列から形成される。
ここで、吐出口列42C1、42C2内の列L_Ev、L_Od、M_Ev、M_Od、S_Ev、S_Odは、次のような配置条件に基づいて配置されている。吐出口列42C2内の列L_Odは、吐出口列42C1内の列L_EvよりもY方向下流側(図中上側)に1200dpiだけずれて配置される。また、吐出口列42C2内の列M_Odは、吐出口列42C1内の列M_EvよりもY方向下流側(図中上側)に1200dpiだけずれて配置される。ここで、吐出口列42C2内の列M_Odは吐出口列42C2内の列L_OdよりもY方向上流側(図中下側)に2400dpiだけずれて配置される。
また、吐出口列42C1内の列S_Odは吐出口列42C2内の列M_Odと、吐出口列42C2内の列S_Evは吐出口列42C1内の列M_Evと、それぞれのY方向の中央位置がほぼ同じ位置となるように配置される。したがって、吐出口列42C1内の列S_Odもまた、吐出口列42C2内の列S_EvよりもY方向下流側(図中上側)に1200dpiだけずれて配置されることになる。
なお、図33(c)では簡単のため列L_Ev、L_Od、M_Ev、M_Od、S_Ev、S_Odを構成する吐出口としてそれぞれ3つの吐出口しか記載していないが、実際にはそれぞれ128個の吐出口によって各列が形成されている。したがって、同じ量のインクを吐出する2列(例えばS_OdとS_Ev)を1列としてみた場合、その列は256個の吐出口から形成されることになる。
また、マゼンタインクの吐出口列42M1、42M2も図33(c)に示すような構成となる。更に、グレーインクの吐出口列42G1、42G2もまた図33(c)に示すような構成となる。
このように、本実施形態では、シアンインク、マゼンタインク、グレーインクに関しては、1plのドットサイズに対応するインクを吐出するための記録素子列、2plのドットサイズに対応するインクを吐出するための記録素子列、5plのドットサイズに対応するインクを吐出するための記録素子列の3通りのドットサイズに対応する記録素子列を有している。
データの処理過程としては、図5のステップ404までは第1、第2の実施形態と同様の処理を行う。
そしてステップ405では、第1、第2の実施形態と異なり、ステップ404で得られたデータC2に対して誤差拡散法による量子化処理を行うことで6階調(階調レベル0、1、2、3、4、5)のデータC3´を得る。また、ここでは誤差拡散法を用いたが、ディザ法であっても構わない。
そして、ステップ406において、階調データC3´を図34に示す吐出口列展開テーブルに従って、各吐出口列用の画像データC4´_1、C4´_2、C4´_5を得る。ここで、本実施形態では、1pl吐出口列用の画像データC4´_1、2pl吐出口列用の画像データC4´_2、5pl吐出口列用の画像データC4´_5はそれぞれ「0」、「1」、「2」の3階調に展開される。
詳細には、階調データC3´の階調レベルがレベル0である場合、1pl吐出口列用の画像データC4´_1は「0」、2pl吐出口列用の画像データC4´_2は「0」、5pl吐出口列用の画像データC4´_5は「0」となるように展開される。また、階調データC3´の階調レベルがレベル1である場合、1pl吐出口列用の画像データC4´_1は「1」、2pl吐出口列用の画像データC4´_2は「0」、5pl吐出口列用の画像データC4´_5は「0」となるように展開される。また、階調データC3´の階調レベルがレベル2である場合、1pl吐出口列用の画像データC4´_1は「1」、2pl吐出口列用の画像データC4´_2は「1」、5pl吐出口列用の画像データC4´_5は「0」となるように展開される。また、階調データC3´の階調レベルがレベル3である場合、1pl吐出口列用の画像データC4´_1は「0」、2pl吐出口列用の画像データC4´_2は「1」、5pl吐出口列用の画像データC4´_5は「1」となるように展開される。また、階調データC3´の階調レベルがレベル4である場合、1pl吐出口列用の画像データC4´_1は「0」、2pl吐出口列用の画像データC4´_2は「2」、5pl吐出口列用の画像データC4´_5は「1」となるように展開される。また、階調データC3´の階調レベルがレベル5である場合、1pl吐出口列用の画像データC4´_1は「0」、2pl吐出口列用の画像データC4´_2は「2」、5pl吐出口列用の画像データC4´_5は「2」となるように展開される。
そして、ステップ407において、画像データC4´_1、C4´_2、C4´_5に対して後述する分配処理を行い、各走査での各画素領域に対する1pl、2pl、5plの各ドットサイズに対応するインクの吐出または非吐出を定める記録データC5´_1、C5´_2、C5´_5を生成する。
その後、ステップ408にて記録ヘッドに記録データC5´_1、C5´_2、C5´_5が送信され、ステップ409にてその記録データC5´_1、C5´_2、C5´_5にしたがってインクが吐出される。
(マスクパターンおよび駆動順序)
本実施形態では、第1、第2の実施形態と同様に、1plのドットサイズのシアンインクを吐出する記録素子列、2plのドットサイズのシアンインクを吐出する記録素子列、5plのドットサイズのシアンインクを吐出する記録素子列のそれぞれにおける各駆動ブロックの駆動順序を互いに同じ順序とする。
そして、本実施形態ではシアンインク・1pl用の画像データC4´_1とシアンインク・5pl用の画像データC4´_5に対して互いに同じマスクパターン、例えば図18(a)〜(d)に示すマスクパターンを適用する。一方で、シアンインク・2pl用の画像データC4´_2に対しては、シアンインク・1pl用の画像データC4´_1およびシアンインク・5pl用の画像データC4´_5に適用するマスクパターンと異なるマスクパターン、例えば図17(a)〜(d)に示すマスクパターンを適用する。
ここで、シアンインク・2pl用の画像データC4´_2に適用するマスクパターンをシアンインク・1pl用の画像データC4´_1およびシアンインク・5pl用の画像データC4´_5と異ならせる理由について以下に詳細に説明する。
図34に示す吐出口列展開テーブルからわかるように、本実施形態では階調データC3´の階調レベルによってはある画素に対して1plのドットサイズに対応するシアンインクと2plのドットサイズに対応するシアンインクを同時に使用する場合がある。また、階調データC3´の階調レベルによってはある画素に対して2plのドットサイズに対応するシアンインクと5plのドットサイズに対応するシアンインクを同時に使用する場合もまたある。しかしながら、階調データC3´の階調レベルがどのような値であってもある画素に対して1plのドットサイズに対応するシアンインクと5plのドットサイズに対応するシアンインクを同時に使用することはない。
この点を鑑み、本実施形態ではシアンインク・1pl用画像データとシアンインク、5pl用画像データに適用するマスクパターンを同じとし、インクが付与される画素の位置を同じとなるようにしている。これは階調データC3´によらず1plのドットサイズに対応するシアンインクと5plのドットサイズに対応するシアンインクは同じ画素領域には吐出されないため、それらのインクが付与される位置を同じとしても粒状感が発生しにくいためである。これにより、1pl用のマスクパターンと5pl用のマスクパターンを個別に持たなくて済むため、ROMのメモリ容量を小さくすることができる。
一方、上述のように、本実施形態ではシアンインク・2pl用画像データに対してシアンインク・1pl用画像データおよびシアンインク・5pl用画像データに適用するマスクパターンと異なるマスクパターンを適用している。
これは、階調データC3´の階調レベルによっては1plのドットサイズに対応するシアンインクまたは5plのドットサイズに対応するシアンインクが吐出される画素領域と同じ画素領域に2plのドットサイズに対応するシアンインクを吐出するように画像データC4´_2が生成される場合があるためである。
そのような場合であっても、本実施形態によれば同じ画素領域に対してシアンインク・2pl用記録データC5´_2にしたがって吐出する走査と、シアンインク・1pl用記録データC5´_1またはシアンインク・5pl用記録データC5´_5にしたがって吐出する走査と、を少なくとも一部の画素領域において異なる方向への走査とすることができる。この一部の画素領域に関しては、2plのドットサイズに対応するシアンインクと、1plのドットサイズに対応するシアンインクまたは5plのドットサイズに対応するシアンインクと、を異なる方向への走査、且つ、同じ駆動順序で吐出することになるため、ドットのX方向における着弾位置を異ならせることができる。
これにより、2plのドットサイズに対応するシアンインクと、1plのドットサイズに対応するシアンインクまたは5plのドットサイズに対応するシアンインクと、によって紙面を効率的に被覆することができるため、粒状性の良化に繋がるのである。
以上記載したように、本実施形態によれば、1色当たり3つ以上のドットサイズのインクを用いる場合であっても、ドットサイズ間でのインクのドット配置が重畳することに湯第する粒状感を抑制することが可能となる。
なお、以上に説明した各実施形態では、単位領域に対して往走査と復走査を行う場合において往走査と復走査の間の吐出位置ずれを抑制する形態について記載した。したがって、復走査時の駆動順序が往走査時の駆動順序の逆順と異なる必要があり、その上で往走査時の駆動順序をオフセットした順序の逆順と異なることが好ましく、更に往走査時の駆動順序と同じ順序であることがより好ましいと記載した。
しかしながら本発明は上記のような形態に限られるものではなく、単位領域に対して片方向への走査のみで複数回記録を行う場合において、第1の種類の走査と第2の種類の走査の間の吐出位置ずれを抑制することも可能である。例えば、第1の種類の走査を複数回の走査のうちの前半の走査、第2の種類の走査を複数回の走査のうちの後半の走査とした場合、前半の走査と後半の走査の間の吐出位置ずれを抑制することができる。この場合、第2の種類の走査時の駆動順序が第1の種類の走査時の駆動順序と異なる必要があり、その上で第1の種類の走査時の駆動順序をオフセットした順序と異なることが好ましく、更に第1の種類の走査時の駆動順序の逆順であることがより好ましい。
これは、図11等を用いて説明したように、同じ駆動順序で往復走査を行った際には時分割駆動制御における各駆動ブロックからのインクの着弾位置は互いに反転した位置となり、同じ駆動順序で片方向走査を行った際には時分割駆動制御における各駆動ブロックからのインクの着弾位置は互いに同じ位置となるためである。ここから、例えば片方向走査を行う場合に第2の種類の走査時の駆動順序を第1の種類の走査時の駆動順序の逆順として時分割駆動を行った際における各駆動ブロックからのインクの着弾位置と、往復走査を行う場合に復走査時の駆動順序を往走査時の駆動順序と同じ順序として時分割駆動した際における各駆動ブロックからのインクの着弾位置と、が互いに同じ位置となることがわかる。
また、以上に説明した各実施形態では、複数色のインクのうちのシアンインクについて、複数ドットサイズのインクを吐出する複数の記録素子列を有し、複数ドットサイズに対応するシアンインクにおけるマスクパターンや時分割駆動の駆動順序について記載しており、シアンインク以外の色のインクについては特に記載していなかった。しかしながら、他の色のインク、例えばマゼンタインクについても、1色当たり複数ドットサイズのインクを吐出する複数の記録素子列を有する場合であれば、言うまでもなく本発明を適用することができる。
また、以上に説明した各実施形態では、各画素に対するインクの吐出の許容回数を示す複数ビットの情報から構成され多値のマスクパターンを用いる形態について記載したが、他の形態による実施も可能である。例えば、各画素に対するインクの吐出の許容または非許容を示す1ビットの情報から構成される2値のマスクパターンを用いても良い。この場合、往走査に対応するマスクパターンから得られる第1の論理和パターンと復走査に対応するマスクパターンから得られる第2の論理和パターンに関し、第2の論理和パターンにて記録の許容が定められた画素のうち、第1の論理和パターンにて記録の許容が定められた画素とX方向における両側に隣接する画素が、第1の論理和パターンにて記録の許容が定められた画素とX方向における両側に隣接しない画素よりも多くなるように、複数のマスクパターンが定められていれば良い。
また、以上に説明した各実施形態では、単位領域に対して往走査と復走査を2回ずつ行う形態、および単位領域に対して往走査と復走査の一方を2回、他方を1回ずつ行う形態について記載したが、他の形態による実施も可能である。すなわち、単位領域に対してK回(K≧1)の往走査とL回(L≧1)の復走査を行う形態であれば本発明を適用することができる。この場合には、往走査用のマスクパターンをK個、復走査用のマスクパターンをL個用いれば良い。
また、以上で説明した各実施形態では、1画素当たり2ビットの情報から構成され、0、1、2回のいずれかの吐出回数を定める画像データと、1画素当たり2ビットの情報から構成され、0、1、2回のいずれかの許容回数を定めるマスクパターンと、を用いて記録データを生成する形態について記載したが、他の形態による実施も可能である。1画素当たり3ビット以上の情報から構成される画像データ、マスクパターンを用いても良い。画像データ、マスクパターンを構成する1画素当たりの情報がnビットである場合、最大で(2^n)通りのインクの吐出回数、許容回数を定めることが可能である。
例えば、1画素当たり3ビット以上の情報から画像データ、マスクパターンが構成される場合について記載する。すなわち、画像データ、マスクパターンを構成する3ビットの情報は「000」、「001」、「010」、「011」、「100」、「101」、「110」、「111」のいずれかとなる。
ここで、ある画素において画像データを構成する3ビットの情報が「000」である場合、画素値は「0」、すなわちその画素に対するインクの吐出回数は0回であるとする。また、ある画素において画像データを構成する3ビットの情報が「001」である場合、画素値は「1」、すなわちその画素に対するインクの吐出回数は1回であるとする。また、ある画素において画像データを構成する3ビットの情報が「010」である場合、画素値は「2」、すなわちその画素に対するインクの吐出回数は2回であるとする。また、ある画素において画像データを構成する3ビットの情報が「011」である場合、画素値は「3」、すなわちその画素に対するインクの吐出回数は3回であるとする。また、ある画素において画像データを構成する3ビットの情報が「100」である場合、画素値は「4」、すなわちその画素に対するインクの吐出回数は4回であるとする。また、ある画素において画像データを構成する3ビットの情報が「101」である場合、画素値は「5」、すなわちその画素に対するインクの吐出回数は5回であるとする。また、ある画素において画像データを構成する3ビットの情報が「110」である場合、画素値は「6」、すなわちその画素に対するインクの吐出回数は6回であるとする。また、ある画素において画像データを構成する3ビットの情報が「111」である場合、画素値は「7」、すなわちその画素に対するインクの吐出回数は7回であるとする。
一方、ある画素においてマスクパターン構成する3ビットの情報が「000」である場合、コード値は「0」、すなわちその画素に対するインクの吐出の許容回数は0回であるとする。また、ある画素においてマスクパターン構成する3ビットの情報が「001」である場合、コード値は「1」、すなわちその画素に対するインクの吐出の許容回数は1回であるとする。また、ある画素においてマスクパターン構成する3ビットの情報が「010」である場合、コード値は「2」、すなわちその画素に対するインクの吐出の許容回数は2回であるとする。また、ある画素においてマスクパターン構成する3ビットの情報が「011」である場合、コード値は「3」、すなわちその画素に対するインクの吐出の許容回数は3回であるとする。また、ある画素においてマスクパターン構成する3ビットの情報が「100」である場合、コード値は「4」、すなわちその画素に対するインクの吐出の許容回数は4回であるとする。また、ある画素においてマスクパターン構成する3ビットの情報が「101」である場合、コード値は「5」、すなわちその画素に対するインクの吐出の許容回数は5回であるとする。また、ある画素においてマスクパターン構成する3ビットの情報が「110」である場合、コード値は「6」、すなわちその画素に対するインクの吐出の許容回数は6回であるとする。また、ある画素においてマスクパターン構成する3ビットの情報が「111」である場合、コード値は「7」、すなわちその画素に対するインクの吐出の許容回数は7回であるとする。
上記記載したようなルールを定めたデコードテーブルを図35に示す。例えば、コード値「1」が割り当てられた画素は画素値が「0」〜「6」の場合にはインクの非吐出を定め、且つ、画素値が「7」の場合にはインクの吐出を定める記録データを生成する。また、例えば、コード値「7」が割り当てられた画素は画素値が「0」の場合にはインクの非吐出を定め、且つ、画素値が「1」〜「7」の場合にはインクの吐出を定める記録データを生成する。
ここで、低濃度の画像、例えば画像データの画素値が「1」である場合であってもインクの吐出を定めるのは、マスクパターン内のインクの吐出の許容回数が最大であるコード値「7」が割り当てられた画素である。したがって、例えば各画素当たり3ビットの情報から構成される画像データ、マスクパターンを用い、図35に示すようなデコードテーブルを用いる場合において本発明の効果を得るためには、マスクパターン内のコード値「7」が割り当てられた画素に着目する。
詳細には、本発明の第1の実施形態による効果を得るためには、下記の(条件A)、(条件B)、(条件C)を満たしていれば良い。
(条件A)
シアンインク・2plのドットサイズ・往走査用のマスクパターンにてコード値「7」が割り当てられた画素のほぼすべてが、シアンインク・2plのドットサイズ・復走査用のマスクパターンにてコード値「7」、「0」以外のコード値が割り当てられた画素と重畳する配置である。
(条件B)
シアンインク・5plのドットサイズ・往走査用のマスクパターンにてコード値「7」が割り当てられた画素のほぼすべてが、シアンインク・5plのドットサイズ・復走査用のマスクパターンにてコード値「7」、「0」以外のコード値が割り当てられた画素と重畳する配置である。
(条件C)
シアンインク・2plのドットサイズ・往走査用のマスクパターンにてコード値「7」が割り当てられた画素と、シアンインク・5plのドットサイズ・往走査用のマスクパターンにてコード値「7」が割り当てられた画素と、が互いに異なる配置である。
また、下記の(条件A´)、(条件B´)、(条件C´)を満たしていることが更に好ましい。
(条件A´)
シアンインク・2plのドットサイズ・復走査用のマスクパターンにてコード値「7」が割り当てられた画素のほぼすべてが、シアンインク・2plのドットサイズ・往走査用のマスクパターンにてコード値「7」、「0」以外のコード値が割り当てられた画素と重畳する配置である。
(条件B´)
シアンインク・5plのドットサイズ・復走査用のマスクパターンにてコード値「7」が割り当てられた画素のほぼすべてが、シアンインク・5plのドットサイズ・往走査用のマスクパターンにてコード値「7」、「0」以外のコード値が割り当てられた画素と重畳する配置である。
(条件C´)
シアンインク・2plのドットサイズ・復走査用のマスクパターンにてコード値「7」が割り当てられた画素と、シアンインク・5plのドットサイズ・復走査用のマスクパターンにてコード値「7」が割り当てられた画素と、が互いに異なる配置である。
更に、本発明の第2の実施形態による効果を得るためには、下記の(条件D)を(条件A)、(条件B)、(条件C)に加えて更に満たしていれば良い。
(条件D)
シアンインク・2plのドットサイズ・往走査用のマスクパターンにてコード値「7」が割り当てられた画素のうち、シアンインク・2plのドットサイズ・復走査用のマスクパターンにてコード値「7」が割り当てられた画素がX方向における両側に隣接する画素が、シアンインク・2plのドットサイズ・復走査用のマスクパターンにてコード値「7」が割り当てられた画素がX方向における両側に隣接しない画素よりも多い。
また、下記の(条件D´)を満たしていることが更に好ましい。
(条件D´)
シアンインク・5plのドットサイズ・往走査用のマスクパターンにてコード値「7」が割り当てられた画素のうち、シアンインク・5plのドットサイズ・復走査用のマスクパターンにてコード値「7」が割り当てられた画素がX方向における両側に隣接する画素が、シアンインク・5plのドットサイズ・復走査用のマスクパターンにてコード値「7」が割り当てられた画素がX方向における両側に隣接しない画素よりも多い。
また、画像データの画素値が「1」である場合にはインクの非吐出が定められるものの「2」である場合にインクの吐出が定められるコード値「6」が割り当てられた画素や、画像データの画素値が「1」、「2」である場合にはインクの非吐出が定められるものの「3」である場合にインクの吐出が定められるコード値「5」が割り当てられた画素も、比較的低濃度の画像記録時にインクの吐出を定める画素である。したがって、第2の実施形態の効果を得るためには、コード値「6」やコード値「5」が割り当てられた画素もまたコード値「7」が割り当てられた画素と同じ条件で配置が定められていることが好ましい。ここで、低濃度の画像記録時における往復走査間での位置ずれを抑制するためには、画像データが表現可能なインクの吐出回数の最大値がR回であるとすると、インクの吐出の許容回数がS(S≧R/2)回であるコード値が割り当てられた画素が上述のコード値「7」が割り当てられた画素と同じ条件で配置されていることが好ましい。
また、以上に説明した各実施形態では、単位領域に対する複数回の走査と走査の間に記録媒体の搬送を介在させながら記録を行う形態について記載したが、他の形態による実施も可能である。すなわち、記録媒体の搬送を行うことなく単位領域に対する複数回の走査を行って記録を行う形態であっても良い。
また、本発明はサーマルジェット型のインクジェット記録装置に限定されるものではない。例えば圧電素子を利用してインクの吐出を行ういわゆるピエゾ型のインクジェット記録装置等、様々な記録装置に対して有効に適用できる。
また、各実施形態には記録装置を用いた記録方法について記載したが、各実施形態に記載の記録方法を行うためのデータを生成する画像処理装置または画像処理方法、プログラムを記録装置とは別体に用意する形態にも適用できる。また、記録装置の一部に備える形態にも広く適用できることは言うまでもない。
また、「記録媒体」とは、一般的な記録装置で用いられる紙のみならず、広く、布、プラスチック・フィルム、金属板、ガラス、セラミックス、木材、皮革等、インクを受容可能なものも含む。
さらに、「インク」とは、記録媒体上に付与されることで、画像、模様、パターン等の形成または記録媒体の加工、或いはインクの処理(例えば記録媒体に付与されるインク中の色剤の凝固または不溶化)に供され得る液体を表すものとする。