JP6500418B2 - 離型フィルム - Google Patents
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従来の離型フィルムは、当該離型フィルムの追従性を向上させるため、離型フィルムの貯蔵弾性率または離型フィルム表面の硬度を小さくすることにより、当該離型フィルムの離型性が下がる傾向にあった。一方、従来の離型フィルムは、当該離型フィルムの離型性を向上させるため、離型フィルムの貯蔵弾性率または離型フィルム表面の硬度を大きくすることにより、当該離型フィルムの追従性が下がる傾向にあった。このように、本発明者は、従来の離型フィルムにおいて離型性および追従性の間には、トレードオフの関係があることを知見した。言い換えれば、本発明者は、従来の離型フィルムには、離型フィルムの離型性と追従性の両方をバランスよく向上させるという観点において、改善の余地があることを見出した。なお、離型フィルムについて、離型性の向上に着目した技術や、追従性の向上に着目した技術はあったものの、離型性と追従性の両方をバランスよく向上させる技術は、これまでに報告されていなかった。
25℃、65RHにおける当該離型フィルムの酸素透過率をOTR1とし、当該離型フィルムの厚みをTとした時、OTR1/Tの値が、5×102cc/m3・day以上9×105cc/m3・day以下であり、
前記クッション層が、α−オレフィン系共重合体とポリブチレンテレフタレートとを含み、
当該離型フィルムにおいて前記離型層の離型面の表面10点平均粗さRzが、0.1μm以上20μm以下である、離型フィルムが提供される。
本実施形態における離型フィルムは、少なくとも一方の面に、ポリエステル樹脂材料を含む離型層を有する離型フィルムであって、25℃、65RHにおける当該離型フィルムの酸素透過率をOTR1とし、当該離型フィルムの厚みをTとした時、OTR1/Tの値が、5×102cc/m3・day以上9×105cc/m3・day以下であるものである。こうすることで、離型性と追従性のバランスを向上させるとともに、非汚染性に優れた離型フィルムを実現することができる。
酸素透過指数=(OTR2/OTR1 )×100 (1)
本実施形態における離型フィルムの製造方法は、従来の製造方法とは異なるものであって、離型層の製造条件を高度に制御する必要がある。すなわち、以下の2つの条件に係る各種因子を高度に制御する製造方法によって初めて、25℃、65RHにおける当該離型フィルムの酸素透過率をOTR1とし、当該離型フィルムの厚みをTとした時、OTR1/Tの値が、上述した特定の条件を満たす離型フィルムを得ることができる。
(1)離型層を形成する樹脂材料の選択
(2)アニール処理条件・方法
まず、(1)離型層を形成する樹脂材料の選択について説明する。
離型層を形成するポリエステル樹脂として、結晶性のポリエステル樹脂を選択した場合には、離型層の配向度を制御することができる。しかしながら、本実施形態における離型層は、単に、結晶性のポリエステル樹脂を用いて離型層を形成しただけで実現できるものではない。この理由として、結晶性のポリエステル樹脂には、カルボキシル基のような極性基が存在していることが挙げられる。そのため、結晶性のポリエステル樹脂を用いて離型層を形成した場合には、当該離型層の表面(離型面)を形成する材料中のカルボキシル基等の極性基量についても高度に制御する必要がある。こうすることで、加熱プレスする際に、離型フィルムを配する対象物表面を形成する材料中の未反応の官能基と、離型層を形成する樹脂中の極性基との間で相互作用することを初めて抑制することが可能となる。
本実施形態における離型フィルムを得るためには、上記(1)で説明したようにして選択された離型層を形成する樹脂材料に適したアニール条件を採用する必要がある。具体的には、処理温度、処理時間、アニール処理に使用する装置の素材、アニール処理に使用する装置の表面温度等の各因子を高度に制御して組み合わせることが特に重要となる。本実施形態における離型フィルムを製造するためには、たとえば、処理温度190℃、処理時間5分、10MPaとなるようにアニール処理条件を設定することが望ましい。
次に、本実施形態の離型フィルムの使用方法について説明する。
本実施形態の離型フィルムは、たとえば、フレキシブルプリント回路基板を作製する際に使用してもよい。この場合、離型フィルムは、フレキシブルフィルム上に形成された回路を保護するため、当該回路に対してカバーレイフィルムを加熱プレスして密着させる際に、カバーレイとプレス機との間に介在させて使用する。
具体的には、離型フィルムは、例えば、フレキシブルプリント配線基板の製造工程の一つであるカバーレイプレスラミネート工程において用いられる。より詳細には、離型フィルムは、回路露出フィルムへのカバーレイフィルム接着時にカバーレイフィルムを回路パターンの凹凸部に密着させるためにカバーレイフィルムを包むように配置され、回路露出フィルム及びカバーレイフィルムと共にプレス機により加熱加圧される。この時、クッション性の向上のために、紙、ゴム、フッ素樹脂シート、ガラスペーパー等、またはこれらを組合せたものを離型フィルムとプレス機の間に挿入した上で加熱加圧することもできる。プレス機は、加圧を開始してから15分で常温から170℃まで昇温した後、35分間その温度に維持し、その後、50分かけて170℃から常温まで冷却する。このときのプレス圧力は、5〜15MPaで適宜調節される。
まず、熱硬化性樹脂を含む材料によって形成されている対象物の表面に対して、上記本実施形態に係る離型フィルムの離型層表面を配置する。そして、離型フィルムを配置した対象物に対し、金型内でプレス処理を行う。ここで、上述した熱硬化性樹脂は、半硬化状態であっても、硬化状態であってもよいが、半硬化状態であると、当該離型フィルムの作用効果が一層顕著なものとなる。特に、熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂を含む樹脂組成物である場合には、当該エポキシ樹脂が、硬化反応の中間の段階にあること、すなわち、Bステージ状態にあることが好ましい。
本発明の参考形態を以下に付記する。
1.
少なくとも一方の面に、ポリエステル樹脂材料を含む離型層を有する離型フィルムであって、
25℃、65RHにおける当該離型フィルムの酸素透過率をOTR 1 とし、当該離型フィルムの厚みをTとした時、OTR 1 /Tの値が、5×10 2 cc/m 3 ・day以上9×10 5 cc/m 3 ・day以下である、離型フィルム。
2.
25℃、65RHにおける当該離型フィルムの前記酸素透過率OTR 1 の値が、1cc/m 2 ・day以上100cc/m 2 ・day以下である、1.に記載の離型フィルム。
3.
当該離型フィルムを180℃、60kg/cm 2 で120秒間の熱プレスを行った後に測定した当該離型フィルムの酸素透過率をOTR 2 とした時、
前記熱プレスを行う前に測定した酸素透過率OTR 1 と、
前記熱プレスを行った後に測定した酸素透過率OTR 2 と、
から下記式(1)で算出される酸素透過指数の値が、55以上95以下である、1.または2.に記載の離型フィルム。
酸素透過指数=(OTR 2 /OTR 1 )×100 (1)
4.
当該離型フィルムにおいて前記離型層の離型面の表面10点平均粗さRzが、0.1μm以上20μm以下である、1.乃至3.のいずれか一つに記載の離型フィルム。
5.
前記離型層、クッション層、及び副離型層の順に積層した三層構造を有している、1.乃至4.のいずれか一つに記載の離型フィルム。
6.
前記クッション層が、α−オレフィン系重合体と、α−オレフィン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体と、の混合物を含む、5.に記載の離型フィルム。
7.
当該離型フィルムにおける前記副離型層の離型面の表面10点平均粗さRzが、0.1μm以上20μm以下である、5.または6.に記載の離型フィルム。
8.
前記離型層が、ポリブチレンテレフタレートを含む、1.乃至7.のいずれか一つに記載の離型フィルム。
ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)(三菱エンジニアリングプラスチック社製、ノバデュラン5020)を用いて、押出Tダイ法にて30μmのPBTフィルムを製膜し、このPBTフィルムに、プレス機を用いて、190℃で10MPaの圧力で、5分間のプレスアニール処理を行うことにより、PBTからなる離型層を得た。
上記離型層と、変性ポリエチレン(エチレン−メチルメタクリレート共重合体(住友化学社製、WD206)及び上記PBTを押出Tダイ法により60μmのフィルムに製膜したクッション層(配合比率は、エチレン−メチルメタクリレート共重合体:PBT=80:20である。)と、上記PBTからなる第2の離型層(副離型層)と、をこの順で積層し、加熱プレスすることにより3層からなる離型フィルムを製造した。
また、得られた離型フィルムの各層の厚さは、離型層、第2の離型層(副離型層)はいずれも30μm、クッション層は60μmであった。
ポリメチルペンテン樹脂(TPX(登録商標))(三井化学社製、TPX MX002)を用いて、押出Tダイ法にて30μmのTPXフィルムを製膜し、このTPXフィルムに、プレス機を用いて、190℃で10MPaの圧力で、5分間のプレスアニール処理を行うことにより得られた、TPXからなる離型層を離型フィルムの副離型層とした点以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを得た。
ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)(SKケミカル社製、K2012)を押出Tダイ法により60μmのフィルムに製膜したクッション層を用いたという点以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを得た。
ポリメチルペンテン樹脂(TPX(登録商標))(三井化学社製、TPXMX002)を用いて、押出Tダイ法にて30μmのTPXフィルムを製膜し、このTPXフィルムに、プレス機を用いて、190℃で10MPaの圧力で、5分間のプレスアニール処理を行うことにより得られた、TPXからなる離型層を、離型層および副離型層とした点以外は、実施例2と同様にして離型フィルムを得た。
シンジオタクチックポリスチレン樹脂(SPS)(出光興産社製、ザレックS105)を用いて、押出Tダイ法にて30μmのSPSフィルムを製膜し、このSPSフィルムに、プレス機を用いて、190℃で10MPaの圧力で、5分間のプレスアニール処理を行うことにより得られた、SPSからなる離型層を、離型層および副離型層とした点以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを得た。
シンジオタクチックポリスチレン樹脂(SPS)(出光興産社製、ザレックS105)とPPE樹脂(三菱エンジニアリングプラスチック社製 ユピエースAH80)とを、配合比率が80:20となるように混合し、押出Tダイ法にて60μmのフィルムを製膜しクッション層として得た点以外は、比較例2と同様にして離型フィルムを得た。
・酸素透過率:離型フィルムの酸素透過率は、モコン(MOCON)社製の酸素透過率測定装置(オキシトラン(登録商標)OX−TRAN 2/21)を使用して、JIS K7126−2における付属書Bに準じて測定した。測定条件は、25℃、65%RHに設定した。なお、単位は、cc/m2・dayである。
酸素透過指数=(OTR2/OTR1 )×100 (1)
カバーレイフィルムが接着剤を介して仮止めされた回路露出フィルムを、離型層が回路露出フィルムのカバーレイフィルムの配置面と対向するようにして、上記離型フィルムで両側から包み込み、熱盤プレスにより195℃、6MPaの圧力で、2分間の熱プレスを行った。その直後に、引張試験機を用いて、180°方向に約50mm/秒の速度で応力を加えて両側の離型フィルムを剥離した。このとき、離型時に離型フィルムが容易に剥離できた場合は離型性が良好としてA判定とし、離型時に離型フィルムが、回路露出フィルムにひっかかる場合は離型性が不十分としてB判定とした。
離型フィルムの離型面に有沢製作所社製のCLフィルム(CMタイプ)のポリイミド面を貼り合わせ、プレス機を用いて、195℃、6MPaの圧力で、2分間の熱プレスを行った後、離型フィルムを引張試験機を用いて、180°方向に約50mm/秒の速度で応力を加えて剥離し、CLの表面について、JPCA規格の「7.5.7.2項しわ」に準じて測定した。
○:シワ発生率 2.0%未満
×:シワ発生率 2.0%以上
離型フィルムと回路露出フィルムを重ね、さらに離型フィルムとプレス機の間に紙を挿入した上で、195℃、6MPaの圧力で2時間の熱プレスを行った後、回路露出フィルムの銅回路部分にメッキを行い、メッキ、バリ不良の発生率を測定した。
○:不良発生率 10%未満
×:不良発生率 10%以上
Claims (6)
- 少なくとも一方の面に、ポリエステル樹脂材料を含む離型層を有し、前記離型層、クッション層、及び副離型層の順に積層した三層構造を有している離型フィルムであって、
25℃、65RHにおける当該離型フィルムの酸素透過率をOTR1とし、当該離型フィルムの厚みをTとした時、OTR1/Tの値が、5×102cc/m3・day以上9×105cc/m3・day以下であり、
前記クッション層が、α−オレフィン系共重合体とポリブチレンテレフタレートとを含み、
当該離型フィルムにおいて前記離型層の離型面の表面10点平均粗さRzが、0.1μm以上20μm以下である、離型フィルム。 - 25℃、65RHにおける当該離型フィルムの前記酸素透過率OTR1の値が、1cc/m2・day以上100cc/m2・day以下である、請求項1に記載の離型フィルム。
- 当該離型フィルムを180℃、60kg/cm2で120秒間の熱プレスを行った後に測定した当該離型フィルムの酸素透過率をOTR2とした時、
前記熱プレスを行う前に測定した酸素透過率OTR1と、
前記熱プレスを行った後に測定した酸素透過率OTR2と、
から下記式(1)で算出される酸素透過指数の値が、55以上95以下である、請求項1または2に記載の離型フィルム。
酸素透過指数=(OTR2/OTR1 )×100 (1) - 当該離型フィルムにおける前記副離型層の離型面の表面10点平均粗さRzが、0.1μm以上20μm以下である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の離型フィルム。
- 前記α−オレフィン系共重合体が、エチレン−メチルメタクリレート共重合体である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の離型フィルム。
- 前記離型層が、ポリブチレンテレフタレートを含む、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の離型フィルム。
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