JP6554795B2 - 離型フィルムおよびフレキシブルプリント回路基板の作製方法 - Google Patents
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従来の離型フィルムは、当該離型フィルムの追従性を向上させるため、離型フィルムの貯蔵弾性率または離型フィルム表面の硬度を小さくすることにより、当該離型フィルムの離型性が下がる傾向にあった。一方、従来の離型フィルムは、当該離型フィルムの離型性を向上させるため、離型フィルムの貯蔵弾性率または離型フィルム表面の硬度を大きくすることにより、当該離型フィルムの追従性が下がる傾向にあった。このように、本発明者は、従来の離型フィルムにおいて離型性および追従性の間には、トレードオフの関係があることを知見した。言い換えれば、本発明者は、従来の離型フィルムには、離型フィルムの離型性と追従性の両方をバランスよく向上させるという観点において、改善の余地があることを見出した。なお、離型フィルムについて、離型性の向上に着目した技術や、追従性の向上に着目した技術はあったものの、離型性と追従性の両方をバランスよく向上させる技術は、これまでに報告されていなかった。
離型層、クッション層、および副離型層を有する離型フィルムであって、
前記離型層、前記クッション層および前記副離型層は、この順で積層されており、
前記離型層が、25以上40以下の酸価を有するポリブチレンテレフタレートからなり、
前記クッション層が、α−オレフィン系重合体と、α−オレフィン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体との混合物からなり、
前記副離型層が、25以上40以下の酸価を有するポリブチレンテレフタレートからなり、
当該離型フィルムを用い、加熱速度5℃/分で示差走査熱量測定して得られたDSC曲線C1において、200℃以上230℃以下の温度範囲における前記樹脂材料由来の吸熱ピークをP1とし、前記DSC曲線C1を得た後、当該離型フィルムの温度が25℃となるように50℃/分で冷却し、再度、当該離型フィルムを用い、加熱速度5℃/分で示差走査熱量測定して得られたDSC曲線C2において、200℃以上230℃以下の温度範囲における前記樹脂材料由来の吸熱ピークをP2とした時、前記吸熱ピークP1と前記吸熱ピークP2の値の比、吸熱ピークP1/吸熱ピークP2が、0.61以上0.70以下である離型フィルムが提供される。
本実施形態における離型フィルムは、少なくとも一方の面に、ポリエステル樹脂材料を含む離型層を有する離型フィルムであって、当該離型フィルムを用い、加熱速度5℃/分で示差走査熱量測定して得られたDSC曲線C1において、200℃以上230℃以下の温度範囲におけるポリエステル樹脂材料由来の吸熱ピークをP1とし、上記DSC曲線C1を得た後、当該離型フィルムの温度が25℃となるように50℃/分で冷却し、再度、当該離型フィルムを用い、加熱速度5℃/分で示差走査熱量測定して得られたDSC曲線C2において、200℃以上230℃以下の温度範囲におけるポリエステル樹脂材料由来の吸熱ピークをP2とした時、吸熱ピークP1と吸熱ピークP2の値の比、吸熱ピークP1/吸熱ピークP2が、0.55以上0.7以下であるものである。これにより、離型性と追従性のバランスを向上させるとともに、非汚染性に優れた離型フィルムを実現することができる。
なお、得られた成型品表面に生じる荒れとは、成型品表面の一部が波打つこと、成型品表面の一部が爛れること、成型品表面の形状が滑らかではなく、粗い状態となること等を指す。
ここで、DSC曲線C1における吸熱ピークは、離型フィルムを製膜する際の熱履歴による影響、すなわち、当該離型フィルム自体の有する性能が反映されたものであると考えられる。一方、DSC曲線C2における吸熱ピークは、上記DSC曲線C1を得た後に、離型フィルムの温度が25℃となるように50℃/分で冷却した状態の熱履歴による影響、すなわち、離型フィルムを徐冷することにより結晶化された離型層を形成する樹脂成分の状態が反映されたものであると考えられる。
本実施形態に係る光沢度は、日本工業規格(JIS)Z8741に準拠して設定することができる。この規格は、入射角度20°、60°又は85°の幾何条件の反射率計を用いて塗膜の鏡面光沢度を測定する試験方法について規定し(メタリック塗料の光沢度測定には適さず)、屈折率が1.567である表面において60°の入射角度の場合における反射率10%を光沢度100(グロス(60°)=100%)、20°の入射角度の場合における反射率5%を光沢度100(グロス(20°)=100%)としている。このうち、60°の入射角度における光の反射率をもって、光沢度を定める。
なお、本実施形態に係る離型層の光沢度は、離型フィルムが対象物に配置された際に、離型フィルムにおいて対象物側にあたる面(離型面)にかかる数値を指す。
本実施形態における離型フィルムの製造方法は、従来の製造方法とは異なるものであって、離型層の製造条件を高度に制御する必要がある。すなわち、以下の2つの条件に係る各種因子を高度に制御する製造方法によって初めて、特定の条件で示差走査熱量測定して得られたDSC曲線C1における、200℃以上230℃以下の温度範囲でのポリエステル樹脂材料由来の吸熱ピークP1と、上記DSC曲線C1を得た後に、同じ条件で再度示差走査熱量測定して得られたDSC曲線C2の200℃以上230℃以下の温度範囲でのポリエステル樹脂材料由来の吸熱ピークP2との比、吸熱ピークP1/吸熱ピークP2の値が、が、上述した特定の条件を満たす離型フィルムを得ることができる。
(1)離型層を形成する樹脂材料の選択
(2)アニール処理条件・方法
まず、(1)離型層を形成する樹脂材料の選択について説明する。
離型層を形成するポリエステル樹脂として、結晶性のポリエステル樹脂を選択した場合には、離型層の配向度を制御することができる。しかしながら、本実施形態における離型層は、単に、結晶性のポリエステル樹脂を用いて離型層を形成しただけで実現できるものではない。この理由として、結晶性のポリエステル樹脂には、カルボキシル基のような極性基が存在していることが挙げられる。そのため、結晶性のポリエステル樹脂を用いて離型層を形成した場合には、当該離型層の表面(離型面)を形成する材料中のカルボキシル基等の極性基量についても高度に制御する必要がある。こうすることで、加熱プレスする際に、離型フィルムを配する対象物表面を形成する材料中の未反応の官能基と、離型層を形成する樹脂中の極性基との間で相互作用することを初めて抑制することが可能となる。
本実施形態における離型フィルムを得るためには、上記(1)で説明したようにして選択された離型層を形成する樹脂材料に適したアニール条件を採用する必要がある。具体的には、処理温度、処理時間、アニール処理に使用する装置の素材、アニール処理に使用する装置の表面温度等の各因子を高度に制御して組み合わせることが特に重要となる。本実施形態における離型フィルムを製造するためには、たとえば、処理温度190℃、処理時間5分、10MPaとなるようにアニール処理条件を設定することが望ましい。
次に、本実施形態の離型フィルムの使用方法について説明する。
まず、表面が熱硬化性樹脂を含む材料によって形成された成型物の上記表面に対して、上記本実施形態に係る離型フィルムの離型層表面を配置する。そして、離型フィルムを配置した対象物に対し、金型内でプレス処理を行う。ここで、上述した熱硬化性樹脂は、半硬化状態であっても、硬化状態であってもよいが、半硬化状態であると、当該離型フィルムの作用効果が一層顕著なものとなる。特に、熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂を含む樹脂組成物である場合には、当該エポキシ樹脂が、硬化反応の中間の段階にあること、すなわち、Bステージ状態にあることが好ましい。
具体的には、離型フィルムは、例えば、フレキシブルプリント配線基板の製造工程の一つであるカバーレイプレスラミネート工程において用いられる。より詳細には、離型フィルムは、回路露出フィルムへのカバーレイフィルム接着時にカバーレイフィルムを回路パターンの凹凸部に密着させるためにカバーレイフィルムを包むように配置され、回路露出フィルム及びカバーレイフィルムと共にプレス成型機により加熱加圧される。
以下、参考形態の例を付記する。
1.少なくとも一方の面に、ポリエステル樹脂材料を含む離型層を有する離型フィルムであって、
当該離型フィルムを用い、加熱速度5℃/分で示差走査熱量測定して得られたDSC曲線C1において、200℃以上230℃以下の温度範囲における前記ポリエステル樹脂材料由来の吸熱ピークをP1とし、前記DSC曲線C1を得た後、当該離型フィルムの温度が25℃となるように50℃/分で冷却し、再度、当該離型フィルムを用い、加熱速度5℃/分で示差走査熱量測定して得られたDSC曲線C2において、200℃以上230℃以下の温度範囲における前記ポリエステル樹脂材料由来の吸熱ピークをP2とした時、前記吸熱ピークP1と前記吸熱ピークP2の値の比、吸熱ピークP1/吸熱ピークP2が、0.55以上0.7以下である離型フィルム。
2.前記吸熱ピークP1の温度が、210℃以上230℃以下である、1.に記載の離型フィルム。
3.前記離型層が、ポリブチレンテレフタレートを含む、1.または2.に記載の離型フィルム。
4.当該離型フィルムにおける前記離型層の離型面の表面粗さが、表面10点平均粗さRzで1μm以上20μm以下である、1.乃至3.のいずれかに記載の離型フィルム。
5.前記離型層の入射角度60°における光の反射率である光沢度が6以上150以下である、1.乃至4.のいずれかに記載の離型フィルム。
6.前記離型層、クッション層、及び副離型層をこの順に積層した三層構造を有している、1.乃至5.のいずれかに記載の離型フィルム。
7.前記クッション層が、α−オレフィン系重合体と、α−オレフィン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体との混合物を含む、6.に記載の離型フィルム。
8.表面が半硬化状態の熱硬化性樹脂を含む材料によって形成された成型物の前記表面に、前記離型層の前記離型面側が重ねて用いられる、1.乃至7.のいずれかに記載の離型フィルム。
9.前記熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂を含む8.に記載の離型フィルム。
ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)(長春石油化学社製、1100−211M)を用いて、押出Tダイ法にて30μmのPBTフィルムを製膜し、このPBTフィルムに、プレス成型機を用いて、190℃で2MPaの圧力で、2分間の真空プレスアニール処理を行うことにより、PBTからなる離型層を得た。
上記離型層と、ポリプロピレン(住友化学社製、FH1016)、変性ポリエチレン(エチレン−メチルメタクリレート共重合体(住友化学社製、WD106)、酸変性ポリエチレン(三菱化学社製、F515A)及び上記PBTからなるクッション層(配合比率:ポリプロピレン:エチレン−メチルメタクリレート共重合体:酸変性ポリエチレン:PBT=15:30:40:15)と、上記PBTからなる第2の離型層(副離型層)と、をこの順で積層し、加熱プレスすることにより3層からなる離型フィルムを製造した。
また、得られた離型フィルムの各層の厚さは、離型層、第2の離型層(副離型層)はいずれも30μm、クッション層は60μmであった。
PBT(長春石油化学社製、1100−211S)を用いて、190℃で2MPaの圧力で、2分間の真空プレスアニール処理を行い、PBTからなる離型層を得た点以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを得た。なお、離型層の厚みは、30μmであった。
PBT(長春石油化学社製、1100−211H)を用いて、190℃で2MPaの圧力で、2分間の真空プレスアニール処理を行い、PBTからなる離型層を得た点以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを得た。なお、離型層の厚みは、30μmであった。
PBT(長春石油化学社製、1100−211D)を用いて、190℃で2MPaの圧力で、2分間の真空プレスアニール処理を行い、PBTからなる離型層を得た点以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを得た。なお、離型層の厚みは、30μmであった。
PBT(三菱エンジニアリングプラスチックス社製、5020)を用いて、押出Tダイ法にてPBTフィルムを製膜し、離型フィルムの離型面となる側の表面全体に仕事エネルギー400KJとなるようにナイロン繊維で摩擦処理を行い、PBTからなる30μmの離型層を得た点以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを得た。なお、離型層の厚みは、30μmであった。
PBT(長春石油化学社製、1100−211XSS)を用いて、190℃で2MPaの圧力で、2分間の真空プレスアニール処理を行い、PBTからなる離型層を得た点以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを得た。なお、離型層の厚みは、30μmであった。
PBT(長春石油化学社製、1100−211XS)を用いて、190℃で2MPaの圧力で、2分間の真空プレスアニール処理を行い、PBTからなる離型層を得た点以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを得た。なお、離型層の厚みは、30μmであった。
示差走査熱量測定:実施例および比較例の各離型フィルムについて、それぞれ加熱速度5℃/分で示差走査熱量測定することにより、DSC曲線C1を得た。示差走査熱量測定には、SII社製、DSC6220を用いた。窒素ガスを30ml/minで流し測定を実施した。また、DSC曲線C1を得た後、離型フィルムの温度が25℃となるように冷却速度50℃/分で冷却し、再度、加熱速度5℃/分で示差走査熱量測定することにより、DSC曲線C2を得た。得られたDSC曲線C1およびC2について、200℃以上230℃以下の温度範囲における吸熱ピークを解析した。なお、DSC曲線C1における吸熱ピークをP1とし、DSC曲線C2における吸熱ピークをP2とした。
離型フィルムの離型面に対して、カバーレイフィルム(有沢製作所社製、CMタイプ)の接着剤面を貼り合わせ、プレス成型機を用いて、195℃、6MPaの圧力で、2分間の熱プレスを行い、引っ張り試験機(エーアンドデイ社製Force gauge AD−4932A−50N)を用いて、180°方向に約50mm/秒の速度で、離型面とカバーレイフィルムにおける接着剤間の剥離強度を測定した。測定はプレス直後に実施した。
離型フィルムの離型面に有沢製作所社製のカバーレイフィルム(CMタイプ)のポリイミド面を貼り合わせ、プレス成型機を用いて、195℃、6MPaの圧力で、2分間の熱プレスを行った後、離型フィルムを剥離し、カバーレイフィルムの表面について、JPCA規格の「7.5.7.2項しわ」に準じて測定した。
○:シワ発生率 2.0%未満
×:シワ発生率 2.0%以上
必要メッキ面積の90%以上にメッキが付いているものを良品
○:良品が98%以上
×:良品が98%未満
Claims (5)
- 離型層、クッション層、および副離型層を有する離型フィルムであって、
前記離型層、前記クッション層および前記副離型層は、この順で積層されており、
前記離型層が、25以上40以下の酸価を有するポリブチレンテレフタレートからなり、
前記クッション層が、α−オレフィン系重合体と、α−オレフィン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体との混合物からなり、
前記副離型層が、25以上40以下の酸価を有するポリブチレンテレフタレートからなり、
当該離型フィルムを用い、加熱速度5℃/分で示差走査熱量測定して得られたDSC曲線C1において、200℃以上230℃以下の温度範囲における前記樹脂材料由来の吸熱ピークをP1とし、前記DSC曲線C1を得た後、当該離型フィルムの温度が25℃となるように50℃/分で冷却し、再度、当該離型フィルムを用い、加熱速度5℃/分で示差走査熱量測定して得られたDSC曲線C2において、200℃以上230℃以下の温度範囲における前記樹脂材料由来の吸熱ピークをP2とした時、前記吸熱ピークP1と前記吸熱ピークP2の値の比、吸熱ピークP1/吸熱ピークP2が、0.61以上0.70以下である離型フィルム。 - 前記吸熱ピークP1の温度が、210℃以上230℃以下である、請求項1に記載の離型フィルム。
- 当該離型フィルムにおける前記離型層の離型面の表面粗さが、表面10点平均粗さRzで1μm以上20μm以下である、請求項1または2に記載の離型フィルム。
- 前記離型層の入射角度60°における光の反射率である光沢度が6以上150以下である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の離型フィルム。
- フレキシブルプリント回路基板に、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の離型フィルムを、前記離型フィルムの離型層の離型面側が前記フレキシブルプリント回路基板に接着するように重ね、加熱プレスして前記離型フィルムと前記フレキシブルプリント回路基板を密着させる工程を含む、フレキシブルプリント回路基板の作製方法。
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