JP6497784B2 - 結晶相同定方法、結晶相同定装置、及びx線回折測定システム - Google Patents

結晶相同定方法、結晶相同定装置、及びx線回折測定システム Download PDF

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Description

本発明は、粉末状の結晶又は多結晶体からなる試料のX線回折データから、試料に含まれる結晶相を同定する結晶相同定方法、結晶相同定装置、及びX線回折測定システムに関する。
固体物質のほとんどは結晶状態で存在するが、その多くは微細な結晶粒子が集まってできており、これを多結晶体と呼ぶ。粉末状の結晶又は多結晶体を試料として取り扱うX線回折測定を、粉末X線回折法と言う。X線回折装置を用いた測定で得られる試料のX線回折パターンは、結晶相毎に固有のものであり、X線回折パターンを分析することにより、試料に含まれる結晶相を同定することができる。ここで、結晶相とは、結晶質である物質の化学組成と結晶構造とを表す。特許文献1には、試料の粉末回折パターンから試料に含まれる結晶相を同定する定性分析を、精度良く行う技術が開示されている。
試料中の結晶粒子の数が十分に多く、かつ、格子面の方向がランダムであれば、回折条件を満たす角度を持った格子面は、必ず存在する。そして、格子面により回折角度2θで回折されたX線は、2θ<90°のときは半頂角が2θ、2θ>90°のときは半頂角が180°−2θである、円錐の母線に沿って進む。つまり、粉末状の結晶又は多結晶体からなる試料により回折されたX線は、中心角が異なる多数の円錐を形成する。この様なX線をX線検出器の検出面で受けると、同心円状の回折模様が得られ、これはデバイ・シェラー リング(Debye−Scherrer ring)と呼ばれている。
特開2014−178203号公報
粉末X線回折法によって得られるデバイ・シェラー リングに含まれる、各リング(各回折パターン)の周方向の一様性は、試料に含まれる粒子の状態を反映する。強度が周方向で均一な回折パターンを与える格子面と、強度が周方向で不均一な回折パターンを与える格子面とがある場合、これらの格子面が含まれている粒子の状態は異なる。
結晶相を同定する定性分析では、試料の2次元のX線回折パターンのデータを、回折角度2θ対強度Iのデータ(以下、「2θ−Iデータ」と言う)に変換した上で、回折角度2θ対強度Iのプロファイル(以下、「2θ−Iプロファイル」と言う)におけるピーク位置及びピーク強度を検出する。そして、検出したピーク位置及び複数の回折パターン間のピーク強度の比(以下、「ピーク強度比」と言う)を、既知の複数の結晶相についての、X線回折パターンのピーク位置及びピーク強度比のデータが登録されたデータベースで検索(サーチマッチ)して、結晶相候補を抽出している。その際、従来は、ソフトウェアによる検索条件の設定において、各回折パターンの周方向の一様性が考慮されていなかった。そのため、同じ結晶相に由来しない、周方向の一様性が異なる回折パターンの組に基づいて、結晶相候補が検索結果に挙げられる可能性があった。
本発明の課題は、結晶相の同定において、結晶相候補の検索を精度良く行って、分析精度を向上させることである。
本発明の結晶相同定方法は、複数の結晶相についての、X線回折パターンのピーク位置及びピーク強度比のデータが登録されたデータベースを用いて、複数のリング状の回折パターンのデータが含まれる試料のX線回折データから、試料に含まれる結晶相を同定する結晶相同定方法であって、X線回折データから、複数の回折パターンについて、ピーク位置及びピーク強度を検出し、X線回折データから、複数の回折パターンについて、周方向の角度対強度のデータを作成し、各回折パターンを、作成した周方向の角度対強度のデータに基づいて、複数のクラスタ(cluster)に組分けし、同じクラスタに組分けした回折パターンのピーク位置及びピーク強度比の組に基づいて、データベースから試料に含まれる結晶相候補を検索することを特徴とする。
また、本発明の結晶相同定装置は、複数の結晶相についての、X線回折パターンのピーク位置及びピーク強度比のデータが登録されたデータベースを用いて、複数のリング状の回折パターンのデータが含まれる試料のX線回折データから、試料に含まれる結晶相を同定する結晶相同定装置であって、X線回折データから、複数の回折パターンについて、ピーク位置及びピーク強度を検出し、各回折パターンの周方向の角度対強度のデータを作成する検出手段と、各回折パターンを、検出手段により作成された周方向の角度対強度のデータに基づいて、複数のクラスタに組分けするクラスタリング(clustering)手段と、クラスタリング手段により同じクラスタに組分けされた回折パターンのピーク位置及びピーク強度比の組に基づいて、データベースから試料に含まれる結晶相候補を検索する検索手段とを備えたことを特徴とする。
本発明の特徴は、次の点にある。
(1)X線回折データから、複数の回折パターンについて、ピーク位置及びピーク強度を検出し、各回折パターンの周方向の角度対強度のデータを作成する。ここで、複数の回折パターンとは、同心円状のデバイ・シェラー リングに含まれる各リングを示している。なお、X線回折データは、2次元画像測定により得られた2次元画像データに限らず、回折パターンを検出器で走査して得られる1次元データ等であってもよい。
(2)各回折パターンを、作成した周方向の角度対強度のデータに基づいて、複数のクラスタに組分けする。これにより、各回折パターンが、その周方向の一様性に応じて、複数のクラスタに組分けされる。
(3)同じクラスタに組分けした回折パターンのピーク位置及びピーク強度比の組に基づいて、データベースから試料に含まれる結晶相候補を検索する。これにより、周方向の一様性が近い回折パターンの組に基づいて、結晶相候補の検索が行われる。従って、結晶相の同定において、結晶相候補の検索が精度良く行われ、分析精度が向上する。
さらに、本発明の結晶相同定方法及び結晶相同定装置は、各回折パターンの周方向の角度対強度のデータから、各回折パターンの強度の周方向の均一度を表すリング特徴因子を求め、各回折パターンを、求めたリング特徴因子に応じて、複数のクラスタに組分けすることを特徴とする。「リング特徴因子」は、本発明の造語であり、各回折パターンの強度の周方向の均一度を表す要素を言う。リング特徴因子により、各回折パターンの周方向の一様性が明確化される。従って、各回折パターンを、求めたリング特徴因子に応じて、複数のクラスタに組分けすることにより、周方向の一様性が異なる回折パターンを、複数のクラスタに組分けすることができる。
さらに、本発明の結晶相同定方法及び結晶相同定装置は、各回折パターンの周方向の角度対強度のデータから、リング特徴因子として、強度を変量としたときの、強度範囲、標準分散、標準偏差、又は変動係数を算出することを特徴とする。リング特徴因子として、強度範囲、標準分散、標準偏差、又は変動係数を算出することにより、各回折パターンの周方向の一様性の度合いを、数値化することができる。
さらに、本発明の結晶相同定方法及び結晶相同定装置は、各回折パターンの周方向の角度対強度のデータから、リング特徴因子として、周方向の角度対強度のプロファイルにおけるピーク数及びピーク幅を算出することを特徴とする。リング特徴因子として、周方向の角度対強度のプロファイルにおけるピーク数及びピーク幅を用いることにより、強度範囲、標準分散、標準偏差、又は変動係数が同程度の値である回折パターンを、ピーク数及びピーク幅の違いから、異なるクラスタに組分けすることができる。
さらに、本発明の結晶相同定方法及び結晶相同定装置は、各回折パターンの周方向の角度対強度のデータから、リング特徴因子として、強度のヒストグラムを作成することを特徴とする。リング特徴因子として、強度のヒストグラムを用いることにより、強度範囲、標準分散、標準偏差、又は変動係数が同程度の値である回折パターンを、ヒストグラムの違いから、異なるクラスタに組分けすることができる。また、周方向の角度対強度のプロファイルにおけるピーク数が0と算出される回折パターンも、ヒストグラムの違いから、組分けが可能となる。
さらに、本発明の結晶相同定方法及び結晶相同定装置は、各回折パターンの周方向の角度対強度のデータから、リング特徴因子として、強度分布の歪度、尖度、又は規格化平均を算出することを特徴とする。リング特徴因子として、強度分布の歪度、尖度、又は規格化平均を用いることにより、強度分布の特徴を数値化して、クラスタリングに利用することができる。
本発明のX線回折測定システムは、試料のX線回折データを測定するX線回折装置と、上記のいずれかの結晶相同定装置とを備えたものである。
本発明によれば、結晶相の同定において、結晶相候補の検索を精度良く行って、分析精度を向上させることができる。
図1(a)は本発明の一実施の形態によるX線回折測定システムの概略構成を示すブロック図、図1(b)はX線回折装置の概略構成を示す図である。 図2(a)は本発明の一実施の形態による結晶相同定装置の概略構成を示すブロック図、図2(b)は回折角度2θ及び角度βの方向を示す図である。 本発明の第1の実施の形態における、解析部23の動作を説明するフローチャートである。 本発明の一実施の形態で用いるリング特徴因子を示す図である。 図5(a)は焼結シリコンの回折パターンの一例を示す図、図5(b)は焼結シリコンの回折パターンのβ−Iプロファイルの一例を示す図である。 図6(a)は粉末シリコンの回折パターンの一例を示す図、図6(b)は粉末シリコンの回折パターンのβ−Iプロファイルの一例を示す図である。 焼結シリコンの回折パターン及び粉末シリコンの回折パターンの、強度範囲、標準分散、標準偏差、及び変動係数の一例を示す図である。 鉱物の混合粉末試料の回折パターンの一例を示す図である。 図9(a)は回折パターン1aのβ−Iプロファイルを示す図、図9(b)は回折パターン2aのβ−Iプロファイルを示す図である。 図10(a)は回折パターン3aのβ−Iプロファイルを示す図、図10(b)は回折パターン4aのβ−Iプロファイルを示す図である。 回折パターン1a〜4aの変動係数、並びに、β−Iプロファイルにおけるピーク数及びピーク幅を示す図である。 図12(a)は回折パターン1aのβ−Iデータから作成したヒストグラムを示す図、図12(b)は回折パターン2aのβ−Iデータから作成したヒストグラムを示す図である。 図13(a)は回折パターン3aのβ−Iデータから作成したヒストグラムを示す図、図13(b)は回折パターン4aのβ−Iデータから作成したヒストグラムを示す図である。 回折パターン1a〜4aの変動係数、強度分布の歪度、尖度、及び規格化平均、並びに、ヒストグラムの特徴を示す図である。 図15(a)は無配向のポリプロピレンからなるシート状試料の回折パターンの一例を示す図、図15(b)は配向したポリプロピレンからなるシート状試料の回折パターンの一例を示す図である。 図16(a)は回折パターン5aのβ−Iプロファイルを示す図、図16(b)は回折パターン6aのβ−Iプロファイルを示す図である。 図17(a)は回折パターン5aのβ−Iデータから作成したヒストグラムを示す図、図17(b)は回折パターン6aのβ−Iデータから作成したヒストグラムを示す図である。 回折パターン5a及び回折パターン6aのピーク数、強度分布の歪度、尖度、及び規格化平均、並びに、ヒストグラムの特徴を示す図である。 鉱物の混合粉末試料の回折パターンの他の例を示す図である。 図19に示した回折パターンの2θ−Iプロファイルを示す図である。 リング特徴因子として規格化平均及び標準偏差を用いた組分けの一例を説明する図である。 図21の組分けに基づいて、自動検索により結晶相の同定を行った結果を示す図である。 本発明の第2の実施の形態における、β−Iプロファイルのピーク数及びピーク幅、並びに、強度分布の相違を用いた組分けの一例を説明するフローチャートである。 本発明の第3の実施の形態における、解析部23の動作を説明するフローチャートである。 本発明の第3の実施の形態における、β−Iプロファイルのピーク数及びピーク幅、並びに、強度分布の相違を用いた組分けの一例を説明するフローチャートである。
[第1の実施の形態]
(X線回折測定システムの構成)
図1(a)は、本発明の一実施の形態によるX線回折測定システムの概略構成を示すブロック図である。X線回折測定システムは、X線回折装置10、結晶相同定装置20、及び表示装置30を含んで構成されている。なお、表示装置30は、例えば、フラットパネルディスプレイ装置等からなり、結晶相同定装置20と一体に構成されていてもよい。
図1(b)は、X線回折装置の概略構成を示す図である。X線回折装置10は、ゴニオメータ12、X線発生装置13、コリメータ14、X線検出器15、制御ユニット16、及び入出力装置17を含んで構成されている。ゴニオメータ12は、測角器であり、その中心部には、試料11を搭載して回転する試料台が設けられている。X線発生装置13から発生したX線は、ピンホールを有するコリメータ14を通過して細いビーム状の線束となり、試料11へ照射される。X線検出器15は、試料11により回折されたX線を検出する。試料11へ照射されるX線の、試料11の格子面からの角度がθであるとき、回折角度は2θとなる。制御ユニット16は、コンピュータ、シーケンサ、専用回路等により構成されており、ゴニオメータ12、X線発生装置13、及びX線検出器15を制御する。入出力装置17は、測定条件等を制御ユニット16へ入力し、またX線検出器15が検出したX線回折データを結晶相同定装置20へ出力する。なお、図1(b)は、反射型のX線回析装置を示しているが、透過型のX線回析装置であってもよい。また、X線検出器は、2次元検出器に限らず、0次元検出器又は1次元検出器を用い、試料又は検出器を移動又は回転させる構成であってもよい。
図2(a)は、本発明の一実施の形態による結晶相同定装置の概略構成を示すブロック図である。結晶相同定装置20は、入力手段21、記憶部22、解析部23、及び出力手段24を含んで構成されている。結晶相同定装置20は、一般的なコンピュータにより実現することができ、その場合、例えば、入力手段21及び出力手段24は入出力インターフェイス等、記憶部22はハードディスクやメモリ等、解析部23はCPU等から構成される。記憶部22には、データベースが記憶されている。データベースには、既知の複数の結晶相のX線回折パターンの、2θ−Iプロファイルにおけるピーク位置及びピーク強度比のデータが、格子面の距離d対強度比Iのデータ(d−Iデータ)として登録されている。記憶部22は、外付けのハードディスク等であってもよい。
解析部23は、検出手段25、クラスタリング手段26、及び検索手段27を含んで構成されている。解析部23は、X線回折装置10から入力手段21を介して入力されたX線回折データを、記憶部22に記憶する。そして、解析部23は、記憶部22に記憶されたX線回折データに対して後述する処理を行って、処理結果を記憶部22に記憶し、また出力手段24を介して、処理結果を表示装置30に表示させる。
(解析部23の動作)
図3は、本発明の第1の実施の形態における、解析部23の動作を説明するフローチャートである。まず、解析部23の検出手段25は、記憶部22に記憶されたX線回折データを読み出し、X線回折データに対して前処理を行った後、X線回折データを、2θ−Iデータに変換する(ステップ101)。ここで、前処理とは、例えば、雑音(ノイズ)を除去するバックグラウンド補正等を言う。一般に、バックグラウンド補正には、一律バックグラウンド補正や、メディアンフィルター(Median filter)補正等がある。以下に説明する具体例においては、特に記載する場合を除いて、一律バックグラウンド補正が行われている。なお、X線回折装置10がデータ処理部を備え、X線回折装置10により既に前処理が行われている場合には、改めて前処理を行う必要はない。
次に、検出手段25は、2θ−Iプロファイルにおけるピーク位置及びピーク強度を検出する(ステップ102)。この処理は、従来、ピークサーチと呼ばれている。続いて、検出手段25は、ステップ102で検出された2θ−Iプロファイルの各ピーク位置における、各回折パターンの周方向の角度β対強度Iのデータ(以下、「β−Iデータ」と言う)を作成する(ステップ103)。図2(b)は、回折角度2θ及び角度βの方向を示す図である。このとき、β−Iデータの強度Iは、例えば、2θ−Iプロファイルのピーク位置におけるピーク幅の半値全幅(FWHM:Full Width at Half Maximum)の範囲の強度を積分したものとする。積分の範囲をより狭くして、FWHM/2の範囲としてもよく、また積分の範囲をより広くして、2FWHMの範囲としてもよい。また、X線回折装置10による測定で得られる角度βの範囲は、X線回折装置10のX線検出器15の面積、試料11とX線検出器15との距離(カメラ長)、及び測定方法が透過法であるか反射法であるかにより異なるが、得られた測定データの中で、できるだけ広い範囲を分析に使用することが望ましい。
図3において、次に、検出手段25は、β−Iデータから、後述するリング特徴因子を算出又は作成する(ステップ104)。続いて、解析部23のクラスタリング手段26は、各回折パターンを、ステップ104で算出又は作成されたリング特徴因子に応じて、複数のクラスタに組分けする(ステップ105)。このクラスタリング処理では、例えば3つのリング特徴因子を用いる場合、各リング特徴因子を変数とする3次元ベクトルを作成して、ベクトル先端間の距離が近いものを同じクラスタに組分けする。続いて、解析部23の検索手段27は、同じクラスタに含まれる回折パターンの全部又は一部が同一の結晶相に由来するものと仮定して、同じクラスタに組分けされた回折パターンのピーク位置及びピーク強度比(ステップ102で検出されたもの)の組と一致度が高いピーク位置及びピーク強度比を示す結晶相を、データベースから検索して(ステップ106)、結晶相候補を抽出する。最後に、検索手段27は、検索を終了するか否かを判断し(ステップ107)、更なる結晶相候補を検索する場合は、ステップ106へ戻る。
(リング特徴因子)
図4は、本発明の一実施の形態で用いるリング特徴因子を示す図である。本実施の形態では、β−Iデータにおける強度Iを変量xとしたとき、リング特徴因子として、図4に示した強度範囲R、標準分散s、標準偏差s、変動係数CV、周方向の角度β対強度Iのプロファイル(以下、「β−Iプロファイル」と言う)におけるピーク数及びピーク幅、強度分布の歪度(ゆがみ)Sk、尖度(とがり)Ku、規格化平均Xnorm、並びに、強度のヒストグラムを用いる。
(リング特徴因子の具体例1)
粒子の状態が異なる試料の測定例として、焼結シリコンと平均粒径5μmの粉末シリコンとを測定し、周方向の一様性が異なる2つのX線回折パターンを得た。図5(a)は焼結シリコンの回折パターンの一例を示す図、図5(b)は焼結シリコンの回折パターンのβ−Iプロファイルの一例を示す図である。また、図6(a)は粉末シリコンの回折パターンの一例を示す図、図6(b)は粉末シリコンの回折パターンのβ−Iプロファイルの一例を示す図である。図5(a)に示す焼結シリコンの回折パターンは、図6(a)に示す粉末シリコンの回折パターンと比較して、周方向の一様性が低かった。これらの回折パターンのβ−Iデータから、β=75〜105°の範囲で、上述した強度範囲R、標準分散s、標準偏差s、及び変動係数CVを算出した。
図7は、焼結シリコンの回折パターン及び粉末シリコンの回折パターンの、β−Iデータにおける強度範囲R、標準分散s、標準偏差s、及び変動係数CVの一例を示す図である。周方向の一様性が低い焼結シリコンでは、粉末シリコンに比べて、強度範囲R、標準分散s、標準偏差s、及び変動係数CVがいずれも大きな値となっており、これらのリング特徴因子の値が大きい程、周方向の一様性が低いことが分かる。この様に、リング特徴因子として、強度範囲R、標準分散s、標準偏差s、又は変動係数CVを用いることにより、回折パターンの周方向の一様性の度合いを、数値化することができる。従って、これらのリング特徴因子を用いることにより、周方向の一様性が異なる回折パターンを、複数のクラスタに組分けすることができる。
(リング特徴因子の具体例2)
鉱物の混合粉末試料を面内方向に回転しながら測定し、周方向の一様性が異なる複数のデバイ・シェラー リングを有するX線回折パターンを得た。図8は、鉱物の混合粉末試料の回折パターンの一例を示す図である。回折パターン1aは、強度が周方向で不規則に変化するリング状であった。回折パターン2aは、強度が周方向で断続的に変化するリング状であった。回折パターン3aは、強度が周方向で一様なリング状であった。回折パターン4aは、独立したスポット状であった。
図9(a)は回折パターン1aのβ−Iプロファイルを示す図、図9(b)は回折パターン2aのβ−Iプロファイルを示す図である。また、図10(a)は回折パターン3aのβ−Iプロファイルを示す図、図10(b)は回折パターン4aのβ−Iプロファイルを示す図である。これらの回折パターンのβ−Iデータから、β=115〜165°の範囲で、β−Iデータにおける変動係数CV、並びに、β−Iプロファイルにおけるピーク数及びピーク幅を算出した。ピーク数及びピーク幅を算出する際は、ノイズのレベルの大きさσに対し、3σ以上のものだけを検出するピークトップ法を用いた。
図11は、回折パターン1a〜4aの変動係数CV、並びに、β−Iプロファイルにおけるピーク数及びピーク幅を示す図である。変動係数CVに関しては、強度が周方向で不規則に変化するリング状の回折パターン1aにおいて、81.9と大きな値であった。これに対し、回折パターン2aでは13.5、回折パターン3aでは15.9、回折パターン4aでは16.7と、回折パターン1aに比べて小さな値であったが、回折パターン2a,3a,4aの間には大きな差がなかった。
一方、ピーク数及びピーク幅に関しては、強度が周方向で不規則に変化するリング状の回折パターン1aでは、ピーク数は19と多く、ピーク幅はいずれも1°未満と狭かった。強度が周方向で断続的に変化するリング状の回折パターン2aでは、ピーク数は3であり、ピーク幅は1.0°から3.5°と一様ではなかった。強度が周方向で一様なリング状の回折パターン3aでは、ピーク数は1であり、ピーク幅は8.8と比較的広かった。スポット状の回折パターン4aでは、ピーク数は1であり、ピーク幅は0.4と狭かった。この具体例からは、変動係数CVが同程度の値である回折パターン2a,3a,4aを、β−Iプロファイルにおけるピーク数及びピーク幅の違いから、異なるクラスタに組分けできることが分かる。
(リング特徴因子の具体例3)
デバイ・シェラー リングの周方向のばらつきは、β−Iデータの強度のヒストグラムを作成することによって、解析することができる。図8の回折パターン1a〜4aについて、メディアンフィルター補正を行い、各回折パターンのβ−Iデータの強度の0から最大値の範囲をそれぞれ50分割して、ヒストグラムを作成した。図12(a)は回折パターン1aのβ−Iデータから作成したヒストグラムを示す図、図12(b)は回折パターン2aのβ−Iデータから作成したヒストグラムを示す図である。また、図13(a)は回折パターン3aのβ−Iデータから作成したヒストグラムを示す図、図13(b)は回折パターン4aのβ−Iデータから作成したヒストグラムを示す図である。
(歪度Sk、尖度Ku、及び規格化平均Xnorm
歪度Skは、回折パターンのβ−Iデータの強度分布の左右への偏り具合を示し、Sk>0の場合、β−Iデータは右にすそを引く分布であり、Sk<0の場合、β−Iデータは左にすそを引く分布である。尖度Kuは、回折パターンのβ−Iデータの強度分布の尖り具合を示し、Ku>0の場合、β−Iデータの強度分布は正規分布より尖っており、Ku<0の場合、β−Iデータの強度分布は正規分布より偏平である。規格化平均Xnormは、強度の平均値を強度の最大値で割った値であり、この規格化平均Xnormが0に近い程、β−Iデータの強度分布は左寄りであり、1に近い程、β−Iデータの強度分布は右寄りである。リング特徴因子として、強度分布の歪度Sk、尖度Ku、又は規格化平均Xnormを用いることにより、強度分布の特徴を数値化して、クラスタリングに利用することができる。ここで、強度分布とは、強度の特色や傾向を、度数分布表、グラフ等で表したものを言う。
図14は、回折パターン1a〜4aの変動係数CV、強度分布の歪度Sk、尖度Ku、及び規格化平均Xnorm、並びに、ヒストグラムの特徴を示す図である。強度が周方向で不規則に変化するリング状の回折パターン1aは、歪度Skが3と正の値であることから右にすそを引き、尖度Kuが8と正のやや小さい値であることから正規分布よりやや尖っており、規格化平均Xnormが0.16と小さいことから平均が左寄りにある分布であることが示唆され、実際、ヒストグラムの形状も、左寄りで、先端の幅がやや広く、右にすそを引く分布を示した。強度が周方向で断続的に変化するリング状の回折パターン2aは、歪度Skが6と正の値であることから右にすそを引き、尖度Kuが43と正の大きい値であることから正規分布より尖っており、規格化平均Xnormが0.16と小さいことから平均が左寄りにある分布であることが示唆され、実際、ヒストグラムの形状も、左寄りで、先端の幅が狭く、右にすそを引く分布を示した。強度が周方向で一様なリング状の回折パターン3aは、歪度Skが1と正の小さい値であることから右にすそを引くが左右対称に近く、尖度Kuが0であることから正規分布に近く、規格化平均Xnormが0.75と大きいことから平均が右寄りにある分布であることが示唆され、実際、ヒストグラムの形状も、右寄りで、あまりすそを引かない幅の広い分布であった。スポット状の回折パターン4aは、歪度Skが7と正のやや小さい値であることから右にすそを引き、尖度Kuが50と正の大きい値であることから正規分布より尖っており、規格化平均Xnormが0.01と著しく小さいことから平均が極端に左寄りの分布であることが示唆され、実際、ヒストグラムの形状も、左寄りで、幅の狭い分布であった。この具体例からは、変動係数CVが同程度の値である回折パターン2a,3a,4aを、ヒストグラムの形状の違いと、歪度Sk、尖度Ku、及び規格化平均Xnormから、異なるクラスタに組分けできることが分かる。
(リング特徴因子の具体例4)
配向の状態が異なる試料の測定例として、無配向のポリプロピレンからなるシート状試料と、配向したポリプロピレンからなるシート状試料とを測定し、周方向の一様性が異なる2つのX線回折パターンを得た。図15(a)は無配向のポリプロピレンからなるシート状試料の回折パターンの一例を示す図、図15(b)は配向したポリプロピレンからなるシート状試料の回折パターンの一例を示す図である。同じ2θ位置に得られたパターンを比較すると、無配向のポリプロピレンからなるシート状試料の回折パターン5aは、強度が周方向で一様なリング状であったのに対し、配向したポリプロピレンからなるシート状試料の回折パターン6aは、配向された集合組織によって対称的に描かれる、強度が周方向で周期的に変化するリング状であった。
図16(a)は回折パターン5aのβ−Iプロファイルを示す図、図16(b)は回折パターン6aのβ−Iプロファイルを示す図である。これらの回折パターンのβ−Iデータから、3σ以上のものだけを検出するピークトップ法を用いてピーク数を算出したところ、ピーク数はいずれも0であった。そこで、各回折パターン5a,6aのβ−Iデータの強度の0から最大値の範囲をそれぞれ50分割して、ヒストグラムを作成した。図17(a)は回折パターン5aのβ−Iデータから作成したヒストグラムを示す図、図17(b)は回折パターン6aのβ−Iデータから作成したヒストグラムを示す図である。図18は、回折パターン5a及び回折パターン6aのピーク数、強度分布の歪度Sk、尖度Ku、及び規格化平均Xnorm、並びに、ヒストグラムの特徴を示す図である。強度が周方向で一様な回折パターン5aは、歪度Skが4と正の値であることから右にすそを引き、尖度Kuが13と正のやや小さい値であることから正規分布よりやや尖っており、規格化平均Xnormが0.91と非常に大きいことから平均が右寄りにある分布であることが示唆され、実際、ヒストグラムの形状も、右寄りで、やや広い分布であった。強度が周方向で周期的に変化する回折パターン6aは、歪度Skが4と正の値であることから右にすそを引き、尖度Kuが20と正のやや大きい値であることから正規分布よりやや尖っており、規格化平均Xnormが0.23と小さいことから平均が左寄りにある分布であることが示唆され、実際、ヒストグラムの特徴も、左寄りで、やや広い分布であった。この様に、β−Iプロファイルにおけるピーク数が0と算出される回折パターンも、ヒストグラムの形状の違いと、歪度Sk、尖度Ku、及び規格化平均Xnormから、組分けが可能となる。
(規格化平均及び標準偏差を用いた結晶相同定の一例)
鉱物の混合粉末試料を面内方向に回転しながら測定し、周方向の一様性が異なる複数のデバイ・シェラー リングを有するX線回折パターンを得た。図19は、鉱物の混合粉末試料の回折パターンの他の例を示す図である。図19において灰色の枠線で囲んだ2θ=25〜40°、β=115°〜165°の範囲には、番号1〜15を付した15個の回折パターンがあった。図20は、図19に示した回折パターンの2θ−Iプロファイルを示す図である。
図21は、リング特徴因子として規格化平均Xnorm及び標準偏差sを用いた組分けの一例を説明する図である。本例は、番号1〜15の各回折パターンについて、リング特徴因子として規格化平均Xnorm及び標準偏差sを算出し、それらに基づいて回折パターンの組分けを行った例を示している。番号1,2,7,8,9,12,15の各回折パターンは、規格化平均Xnormが0.5以上であったので、同じクラスタAに組分けした。番号3及び番号11の各回折パターンは、規格化平均Xnormが0.5未満で、かつ、標準偏差sが300以上であったので、同じクラスタBに組分けした。番号4及び番号10の各回折パターンは、規格化平均Xnormが0.5未満で、かつ、標準偏差sが100以上300未満であったので、同じクラスタCに組分けした。番号13の回折パターンは、規格化平均Xnormが0.5未満で、かつ、標準偏差sが50以上100未満であったので、クラスタDに組分けした。番号5,6,14の各回折パターンは、規格化平均Xnormが0.5未満で、かつ、標準偏差sが50未満であったので、同じクラスタEに組分けした。この様に、各リング特徴因子にそれぞれ適切なしきい値を設定することにより、周方向の一様性が異なる回折パターンを、複数のクラスタに組分けすることができる。
なお、図21は、規格化平均Xnorm及び標準偏差sが回折パターンの組分けに有用であることを示すための一例であって、クラスタの組分け条件は、個々の分析で得られた数値に応じて、適宜決定することができる。
図22は、図21の組分けに基づいて、自動検索により結晶相の同定を行った結果を示す図である。クラスタAに組分けされた回折パターンのピーク位置及びピーク強度比の組からは、ムライト(Mullite)が同定された。クラスタBに組分けされた回折パターンのピーク位置及びピーク強度比の組からは、石英(Quartz)が同定された。クラスタCに組分けされた回折パターンのピーク位置及びピーク強度比の組からは、金紅石(Rutile)が同定された。クラスタEに組分けされた回折パターンのピーク位置及びピーク強度比の組からは、黄玉(Topaz)が同定された。
[第1の実施の形態の効果]
本発明の第1の形態によれば、次の効果を奏する。
(1)結晶相の同定において、結晶相候補の検索(図3のステップ106)を精度良く行って、分析精度を向上させることができる。
(2)さらに、各回折パターンのβ−Iデータから、各回折パターンの強度の周方向の均一度を表すリング特徴因子を求め、各回折パターンを、求めたリング特徴因子に応じて、複数のクラスタに組分けすることにより、各回折パターンの周方向の一様性を明確化して、周方向の一様性が異なる回折パターンを、複数のクラスタに組分けすることができる。
(3)さらに、リング特徴因子として、強度範囲R、標準分散s、標準偏差s、又は変動係数CVを算出することにより、各回折パターンの周方向の一様性の度合いを、数値化することができる。
(4)さらに、リング特徴因子として、β−Iプロファイルにおけるピーク数及びピーク幅を用いることにより、強度範囲R、標準分散s、標準偏差s、又は変動係数CVが同程度の値である回折パターンを、β−Iプロファイルにおけるピーク数及びピーク幅の違いから、異なるクラスタに組分けすることができる。
(5)さらに、リング特徴因子として、強度のヒストグラムを用いることにより、強度範囲R、標準分散s、標準偏差s、又は変動係数CVが同程度の値である回折パターンを、ヒストグラムの違いから、異なるクラスタに組分けすることができる。また、β−Iプロファイルにおけるピーク数が0と算出される回折パターンも、ヒストグラムの違いから、組分けが可能となる。
(6)さらに、リング特徴因子として、強度分布の歪度Sk、尖度Ku、又は規格化平均Xnormを用いることにより、強度分布の特徴を数値化して、クラスタリングに利用することができる。
[第2の実施の形態]
本発明の第2の実施の形態においても、結晶相同定装置20の構成は、上述した第1の実施の形態と同様である。図23は、本発明の第2の実施の形態における、β−Iプロファイルのピーク数及びピーク幅、並びに、強度分布の相違を用いた組分けの一例を説明するフローチャートである。解析部23のクラスタリング手段26は、まず、図3のステップ104で算出されたβ−Iプロファイルにおけるピーク数が予め定めた所定値以上であるか否かを判断する(ステップ201)。そして、ピーク数が所定値以上である場合、クラスタリング手段26は、その回折パターンを、強度が周方向で不規則に変化するリング状の回折パターンを含むクラスタに組分けする(ステップ202)。
ピーク数が所定値以上でない場合、クラスタリング手段26は、図3のステップ104で算出されたβ−Iプロファイルにおけるピーク幅が予め定めた所定値未満であるか否かを判断する(ステップ203)。そして、ピーク幅が所定値未満である場合、クラスタリング手段26は、その回折パターンを、スポット状の回折パターンを含むクラスタに組分けする(ステップ204)。
ピーク幅が所定値未満でない場合、クラスタリング手段26は、図3のステップ104で作成されたヒストグラム又は算出された強度分布の規格化平均Xnormから、強度分布が右寄りであるか否かを判断する(ステップ205)。そして、強度分布が右寄りである場合、クラスタリング手段26は、その回折パターンを、強度が周方向で一様なリング状の回折パターンを含むクラスタに組分けする(ステップ206)。また、強度分布が右寄りでない場合、クラスタリング手段26は、その回折パターンを、強度が周方向で断続的に変化するリング状の回折パターンを含むクラスタに組分けする(ステップ207)。
[第2の実施の形態の効果]
本発明の第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態の具体例で示した回折パターン1a〜4aを、効率良く組分けすることができる。
なお、ピーク数、ピーク幅、及び強度分布の相違を、常に、図23で示した順序で組分けに使用する必要はない。これらのリング特徴因子は、組分けに使用する優先順位の変更が可能である。
[第3の実施の形態]
本発明の第3の実施の形態においても、結晶相同定装置20の構成は、上述した第1の実施の形態と同様である。図24は、本発明の第3の実施の形態における、解析部23の動作を説明するフローチャートである。ステップ301〜303は、図3のステップ101〜103と同様である。また、ステップ305は、図3のステップ106と同様であり、ステップ306は、図3のステップ107と同様である。ステップ304において、解析部23の検出手段25は、β−Iデータから、リング特徴因子を算出又は作成し、解析部23のクラスタリング手段26は、各回折パターンを、算出又は作成されたリング特徴因子に応じて、複数のクラスタに組分けする。本実施の形態では、第1の実施の形態における、図3のステップ104の処理とステップ105の処理とを、次の様に組み合わせて行う。
図25は、本発明の第3の実施の形態における、β−Iプロファイルのピーク数及びピーク幅、並びに、強度分布の相違を用いた組分けの一例を説明するフローチャートである。検出手段25は、β−Iデータから、β−Iプロファイルにおけるピーク数及びピーク幅を算出する(ステップ401)。クラスタリング手段26は、ステップ401で算出されたβ−Iプロファイルにおけるピーク数が予め定めた所定値以上であるか否かを判断する(ステップ402)。そして、ピーク数が所定値以上である場合、クラスタリング手段26は、その回折パターンを、強度が周方向で不規則に変化するリング状の回折パターンを含むクラスタに組分けする(ステップ403)。
ピーク数が所定値以上でない場合、クラスタリング手段26は、ステップ401で算出されたβ−Iプロファイルにおけるピーク幅が予め定めた所定値未満であるか否かを判断する(ステップ404)。そして、ピーク幅が所定値未満である場合、クラスタリング手段26は、その回折パターンを、スポット状の回折パターンを含むクラスタに組分けする(ステップ405)。
ピーク幅が所定値未満でない場合、検出手段25は、β−Iデータから、強度のヒストグラムを作成し、又は強度分布の規格化平均Xnormを算出する(ステップ406)。クラスタリング手段26は、ステップ406で作成されたヒストグラム又は算出された強度分布の規格化平均Xnormから、強度分布が右寄りであるか否かを判断する(ステップ407)。そして、強度分布が右寄りである場合、クラスタリング手段26は、その回折パターンを、強度が周方向で一様なリング状の回折パターンを含むクラスタに組分けする(ステップ408)。また、強度分布が右寄りでない場合、クラスタリング手段26は、その回折パターンを、強度が周方向で断続的に変化するリング状の回折パターンを含むクラスタに組分けする(ステップ409)。
[第3の実施の形態の効果]
本発明の第3の実施の形態によれば、上述した第2の形態の効果を奏すると共に、リング特徴因子として、ヒストグラム又は強度分布の規格化平均Xnormを用いることなく組分けが可能な回折パターンについては、これらの作成又は算出を行う必要がないので、回折パターンの組分けをより迅速に行うことができる。
本発明では、以上説明した以外にも、デバイ・シェラー リングの強度の周方向の均一度を表す他の要素を、リング特徴因子として用いることができる。
1a,2a,3a,4a,5a,6a 回折パターン
10 X線回折装置
11 試料
12 ゴニオメータ
13 X線発生装置
14 コリメータ
15 X線検出器
16 制御ユニット
17 入出力装置
20 結晶相同定装置
21 入力手段
22 記憶部
23 解析部
24 出力手段
25 検出手段
26 クラスタリング手段
27 検索手段
30 表示装置

Claims (13)

  1. 複数の結晶相についての、X線回折パターンのピーク位置及びピーク強度比のデータが登録されたデータベースを用いて、複数のリング状の回折パターンのデータが含まれる試料のX線回折データから、前記試料に含まれる結晶相を同定する結晶相同定方法であって、
    前記X線回折データから、複数の前記回折パターンについて、ピーク位置及びピーク強度を検出し、
    前記X線回折データから、複数の前記回折パターンについて、周方向の角度対強度のデータを作成し、
    各回折パターンを、作成した前記周方向の角度対強度のデータに基づいて、複数のクラスタに組分けし、
    同じクラスタに組分けした回折パターンのピーク位置及びピーク強度比の組に基づいて、前記データベースから前記試料に含まれる結晶相候補を検索する
    ことを特徴とする結晶相同定方法。
  2. 各回折パターンの周方向の角度対強度のデータから、各回折パターンの強度の周方向の均一度を表すリング特徴因子を求め、
    各回折パターンを、求めた前記リング特徴因子に応じて、複数のクラスタに組分けする
    ことを特徴とする請求項1に記載の結晶相同定方法。
  3. 各回折パターンの周方向の角度対強度のデータから、前記リング特徴因子として、強度を変量としたときの、強度範囲、標準分散、標準偏差、又は変動係数を算出する
    ことを特徴とする請求項2に記載の結晶相同定方法。
  4. 各回折パターンの周方向の角度対強度のデータから、前記リング特徴因子として、周方向の角度対強度のプロファイルにおけるピーク数及びピーク幅を算出する
    ことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の結晶相同定方法。
  5. 各回折パターンの周方向の角度対強度のデータから、前記リング特徴因子として、強度のヒストグラムを作成する
    ことを特徴とする請求項2から請求項4のいずれか一項に記載の結晶相同定方法。
  6. 各回折パターンの周方向の角度対強度のデータから、前記リング特徴因子として、強度分布の歪度、尖度、又は規格化平均を算出する
    ことを特徴とする請求項2から請求項5のいずれか一項に記載の結晶相同定方法。
  7. 複数の結晶相についての、X線回折パターンのピーク位置及びピーク強度比のデータが登録されたデータベースを用いて、複数のリング状の回折パターンのデータが含まれる試料のX線回折データから、前記試料に含まれる結晶相を同定する結晶相同定装置であって、
    前記X線回折データから、複数の前記回折パターンについて、ピーク位置及びピーク強度を検出し、各回折パターンの周方向の角度対強度のデータを作成する検出手段と、
    各回折パターンを、前記検出手段により作成された前記周方向の角度対強度のデータに基づいて、複数のクラスタに組分けするクラスタリング手段と、
    前記クラスタリング手段により同じクラスタに組分けされた回折パターンのピーク位置及びピーク強度比の組に基づいて、前記データベースから前記試料に含まれる結晶相候補を検索する検索手段と
    を備えたことを特徴とする結晶相同定装置。
  8. 前記検出手段は、各回折パターンの周方向の角度対強度のデータから、各回折パターンの強度の周方向の均一度を表すリング特徴因子を求め、
    前記クラスタリング手段は、各回折パターンを、前記検出手段により求められた前記リング特徴因子に応じて、複数のクラスタに組分けする
    ことを特徴とする請求項7に記載の結晶相同定装置。
  9. 前記検出手段は、各回折パターンの周方向の角度対強度のデータから、前記リング特徴因子として、強度を変量としたときの、強度範囲、標準分散、標準偏差、又は変動係数を算出する
    ことを特徴とする請求項8に記載の結晶相同定装置。
  10. 前記検出手段は、各回折パターンの周方向の角度対強度のデータから、前記リング特徴因子として、周方向の角度対強度のプロファイルにおけるピーク数及びピーク幅を算出する
    ことを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の結晶相同定装置。
  11. 前記検出手段は、各回折パターンの周方向の角度対強度のデータから、前記リング特徴因子として、強度のヒストグラムを作成する
    ことを特徴とする請求項8から請求項10のいずれか一項に記載の結晶相同定装置。
  12. 前記検出手段は、各回折パターンの周方向の角度対強度のデータから、前記リング特徴因子として、強度分布の歪度、尖度、又は規格化平均を算出する
    ことを特徴とする請求項8から請求項11のいずれか一項に記載の結晶相同定装置。
  13. 試料のX線回折データを測定するX線回折装置と、
    請求項7から請求項12のいずれか一項に記載の結晶相同定装置と
    を備えたことを特徴とするX線回折測定システム。
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