JP6494248B2 - 静電容量型トランスデューサ及びその製造方法 - Google Patents

静電容量型トランスデューサ及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、超音波変換素子などとして用いられる静電容量型トランスデューサ、その製造方法等に関する。
近年、微細加工技術の発展に伴い、マイクロメータオーダの精度で加工された様々な微小機械素子が実現されている。このような技術を用いて、静電容量型超音波トランスデューサ(CMUT:Capasitive−Micromachined−Ultrasonic−Transducer)の開発が盛んとなっている。CMUTは、軽量の振動膜を振動させて音響波(以下、超音波で代表することもある)を送信、受信する超音波デバイスであり、液中および空気中でも優れた広帯域特性を持つものが容易に得られる。従って、CMUTを医療用途として利用すると、従来から使用されている圧電素子からなる超音波デバイスよりも、高精度な診断が可能となるため、その代替品として注目を集めている。尚、本明細書において、音響波とは、音波、超音波、光音響波と呼ばれるものを含む。例えば、被検体内部に可視光線や赤外線等の光(電磁波)を照射して被検体内部で発生する光音響波を含む。
静電容量型トランスデューサは、複数のセル構造を備える。セル構造は、例えば、Siなどの基板上に配置された第一の電極と、第一の電極と対向して配置された第二の電極と、第一及び第二の電極の間に形成される間隙と、第二の電極を含み間隙上に形成されたメンブレンからなる振動膜と、振動膜支持部とで構成される。メンブレンは間隙を封止する構造を有する。静電容量型トランスデューサは、その作製方法の一つとして、Siなどの基板上に材料を積層させて形成する。ここでは、間隙構造は、予め間隙となる部分に犠牲層材料を堆積させ、この上に設けた振動膜の一部に設けた開口(エッチングホール)から犠牲層をエッチングにより除去することで形成する。静電容量型トランスデューサは、水中や油中などの液体中で使用されることがあり、間隙内にそれらの液体が浸入すると振動膜の振動特性に劣化が生じるため、間隙を形成するために設けたエッチングホールは封止して使用する必要がある。非特許文献1に記載の静電容量型トランスデューサでは、次の様に封止を行っている。即ち、エッチングホールから振動膜下部の間隙に繋がる流路に、Low−Pressure−Chemical−Vapor−Deposition(LP−CVD)で成膜されるシリコン窒化物を堆積させていくことで間隙の封止を行っている。LP−CVDでは、装置の性質上、エッチングホールから流路を通って間隙までほぼ均一な厚さでシリコン窒化膜が堆積され、流路の厚さ分、堆積されることで間隙は封止される。しかし、この方法では、流路を通じて間隙内部まで堆積する可能性があり、振動膜の振動特性に影響を及ぼしてしまうことがある。
一方、特許文献1に記載の静電容量型トランスデューサでは、非特許文献1と同様にエッチングホールから犠牲層を除去することで間隙を形成する。更に、そのエッチングホールにPlasma−Enhanced−Chemical−Vapor−Deposition(PE−CVD)で膜を堆積させることで間隙の封止を行っている。PE−CVDでは、LP−CVDのようには間隙や流路の内部に膜は侵入して行かず、エッチングホール上に堆積されるように封止膜が形成される。従って、間隙を封止するためには、間隙の厚さないし高さに対して十分に厚い封止膜を堆積させる必要がある。
米国特許5982709号
ArifSanli Ergun et al.IEEE Transactions on Ultrasonics,Vol52,No.12,DECEMBER 2005,2242−2257
静電容量型トランスデューサの間隙を封止するための封止膜の厚さは、その間隙の厚さの約3倍程度が必要である。従って、間隙の厚さが大きくなればなるほど、必要な封止膜厚は厚くなる。しかし他方、性能向上のためにメンブレンを薄化する要求があり、封止膜厚を小さくできる構成が求められている。
上記課題に鑑み、第一の電極と、前記第一の電極と間隔を隔てて設けられた第二の電極を含む振動膜と、を含むセルを備えた静電容量型トランスデューサの本発明の製造方法は以下の工程を有する。前記第一の電極上に凸部を形成する工程。前記第一の電極と前記凸部上に前記凸部よりも厚さが厚い犠牲層を形成する工程。前記犠牲層上にメンブレンを形成する工程。前記メンブレンの前記凸部上の位置にエッチングホールを形成する工程。前記エッチングホールを介して前記犠牲層をエッチングする工程。前記エッチングホールを封止する工程。前記第二の電極を形成する工程。或いは、以下の工程を有する。前記第一の電極上に犠牲層を形成する工程。前記犠牲層上にメンブレンを形成する工程。前記メンブレンにエッチングホールを形成する工程。前記エッチングホールを介して前記犠牲層をエッチングする工程。前記エッチングホールの底部に凸部を形成する工程。前記エッチングホールを封止する工程。前記第二の電極を形成する工程。
本発明によれば、犠牲層エッチング後に、エッチングホール底部に凸部を有する構造となるため、凸部とエッチングホール縁部分が近づく。従って、封止膜の成膜において、底面から成長する膜とエッチングホール壁から成長する膜が早く接触し、封止膜の成膜厚さを薄くすることができる。すなわち、従来と同じ間隙厚さを有する構造でも、間隙の封止に必要な封止膜厚は薄くすることができる。よって、従来よりも薄い膜厚で間隙の封止ができ、振動膜の薄化が可能になって広帯域化などの性能向上が可能になる。
本発明の静電容量型トランスデューサの一例を説明する図。 本発明の静電容量型トランスデューサの一例を説明する図。 本発明の原理を説明するための断面図。 本発明の静電容量型トランスデューサの作製方法の例を説明する断面図。 本発明の静電容量型トランスデューサの作製方法の例を説明する断面図。 本発明の静電容量型トランスデューサの作製方法の例を説明する断面図。 本発明の静電容量型トランスデューサの作製方法の例を説明する断面図。 本発明の静電容量型トランスデューサを用いた情報取得装置の例の説明図。
本発明では、間隙は、予め間隙となる部分に設けた犠牲層を、メンブレンに設けたエッチングホールから除去することで形成される。更に、間隙は封止膜によってエッチングホールで封止される。この段階で、エッチングホール底部に凸部が形成されており、犠牲層エッチング後に封止膜を形成する際に、凸部から成長する膜とエッチングホール壁から成長する膜が接触することで封止膜が形成されるので、封止膜の厚さを薄くすることができる。
以下に本発明の実施の形態について、図1を用いて説明する。図1(a)は本実施形態の静電容量型トランスデューサのA−B断面図であり、図1(b)は図1(a)の上面図である。図1(a)及び図1(b)は1つのセル構造10のみを示しているが、図1(c)のように静電容量型トランスデューサ内のセル構造10の個数は幾つであっても構わない。また、セルの配列は図1(c)に示す以外のどのような配列であっても構わない。図1(a)〜(c)に示すように、本静電容量型トランスデューサの振動膜の形状は円形であるが、形状は四角形や六角形などでも構わない。
本静電容量型トランスデューサの構成について説明する。静電容量型トランスデューサは、Siなどの基板1、基板1上に形成された絶縁膜2、絶縁膜2上に形成された第一の電極3、第一の電極3上の絶縁膜4を有する。絶縁膜4上には、間隙(キャビティ)8を介して、第一のメンブレン5と第二のメンブレン6と第二の電極7からなる振動膜17が設けられ、第一のメンブレン5は、振動膜支持部16で支持されている。基板1がガラス基板などの絶縁体の場合は、絶縁膜2はなくてもよい。
また、図1では第二の電極7は第二のメンブレン6上に形成されているが、第二の電極7は図2(a)に示すように第一のメンブレン5と第二のメンブレン6の間に配置されていても構わない。図2に示す構成にすることで、第一の電極と第二の電極の間の距離を小さくすることができ、静電容量型トランスデューサの静電容量がより大きくなり、性能をより向上することができる。また、第一の電極3と第二の電極7との間に電圧を印加する電圧印加手段を有しており、第一の電極3と第二の電極7間に電圧を印加して振動膜17を振動させて超音波を送信することができる。また、電極間にバイアス電圧を印加した状態で超音波を受けることで超音波を受信できる。
静電容量型トランスデューサの間隙8は、間隙となる部分に予め犠牲層を配置しておき、それをメンブレンに開けたエッチングホールからエッチングして犠牲層を除去するという犠牲層エッチングの手法によって形成する。具体的には、振動部間隙8が形成される部分とエッチングホール部間隙9が形成される部分に犠牲層12(後述の図4−1(f)などを参照)を形成する。犠牲層12には、エッチングホール部間隙9と振動膜間隙8とを繋ぐ流路18の部分が含まれる。そして、犠牲層12上に第一のメンブレン5と振動膜支持部16を形成した後、エッチングホール部間隙9の部分上の第一のメンブレン5に、犠牲層を除去するためのエッチングホール13を形成する。次に、エッチングホール13から犠牲層12を犠牲層エッチングにより除去することで間隙8を形成する。間隙を形成した後、エッチングホール13に、第二のメンブレン6を兼ねる封止膜11を堆積させることで、エッチングホール13を封止する。ここで、間隙(キャビティ)8の内部は減圧状態で保持されるものであり、減圧可能なチャンバー内でエッチングホール13に封止膜11を堆積させることで、キャビティ8の減圧状態が保持される。これらの工程は、減圧処理(真空処理)プロセスで行われる。
静電容量型トランスデューサを構成する材料で、特に間隙部を形成する材料(絶縁膜4など)は、振動膜17が振動する際に振動膜が間隙8の下面に接触しないように、表面粗さが小さいことが望ましい。第一の電極3には、チタンやアルミニウム、モリブデンなどの金属材料を使用することができる。特にチタンは、プロセス中に加わる熱の影響での粗さ変化などが小さく、更には、犠牲層材料や振動膜を形成する材料とのエッチング選択性も高いため望ましい。絶縁膜4には、酸化シリコン膜などを使用することができる。特にPE−CVD装置で形成する酸化シリコン膜は、表面粗さが小さい。更に400℃以下の低温で形成できるため、他の構成材料に対しても熱の影響を小さくして形成することができる。振動膜17の第一のメンブレン5と第二のメンブレン6、振動膜支持部16は絶縁膜である。特にPE−CVD装置で形成する窒化シリコン膜は、400℃以下の低温で形成することができるため、他の構成材料に対して熱の影響を小さくすることができる。また、300MPa以下の低引張応力で膜を形成できるため、メンブレンの残留応力による振動膜の大きな変形を防止することができる。
またさらに、第二のメンブレン6は、振動膜としての機能以外に、エッチングホール13上に堆積して間隙を封止する必要がある。間隙を封止する材料としては、エッチングホール13に堆積することで封止するためにカバレッジ性が高いことが望まれる。それに加えて、エッチングホール13から流路18を通じて振動部間隙8内に封止膜が侵入していかないことも望まれる。振動部間隙8内に封止膜が侵入すると、性能に影響する振動部間隙8の厚さが変わってしまうためである。例えば、LP−CVDで形成される窒化シリコン膜では、流路を通じて間隙の内部にも膜が侵入していくことがあるため、間隙部の厚さが変化してしまうことがあるので好ましくない。望まれる封止膜の条件を満たす材料としては、PE−CVDで形成する窒化シリコン膜が好適である。
間隙を形成するための犠牲層12の材料は、犠牲層エッチング工程において比較的容易に除去が可能であり、他の構成材料に対するエッチング選択比が十分に高い材料を選択することが望ましい。更にはメンブレンを形成する際の熱工程に対しても、粗さなどへの影響が小さい材料を選択することが望ましい。これらの要件を満たす材料としては、例えばクロムやモリブデンなどの金属材料、アモルファスシリコンなどを選択することができる。特にクロムは、硝酸第二セリウムアンモニウムと過塩素酸の混合溶液で容易にエッチングが可能である。更に犠牲層エッチング工程での構成材料である、第一の電極3の材料のチタンや、絶縁膜4の材料の酸化シリコンや、メンブレンの材料の窒化シリコン膜とのエッチング選択比が十分に高い。従って、犠牲層エッチング工程において、犠牲層以外の材料に対するダメージを小さく間隙を形成することが可能である。
また、犠牲層は、振動膜が振動する部分の間隙の振動部間隙8の部分と犠牲層エッチングを行う際に犠牲層を除去する溶液が侵入していくエッチングホール部間隙9の部分とそれらを繋ぐ流路18の部分で形成される。それぞれの厚さは、振動部間隙8の部分に関しては、振動膜が振動する部分に相当するため、設計仕様に応じて設定される。エッチングホール部間隙と流路の部分は、犠牲層エッチング工程にて、犠牲層を除去するための溶液が間隙内に浸入する必要があるので、犠牲層エッチングが可能である膜厚によって厚さの下限値が決まる。この下限値は、犠牲層の材料や犠牲層を除去する溶剤によって値が異なるため、一つの値には決まらない。犠牲層がクロムで、硝酸第二セリウムアンモニウムと過塩素酸からなる溶液にて犠牲層エッチングを行う場合には、犠牲層厚さは100nm以下でも可能である。また、エッチングホールの幅とエッチングホール部間隙の幅について、後者の幅が前者の幅より大きいのが好ましい。こうすれば、エッチングホールを介してエッチャントが支障なく導入されて犠牲層エッチングが良好に遂行されるとともに、その後の封止膜の堆積が良好に行われる。第二の電極7は、振動膜17の一部を構成する材料であるため、比較的応力の小さい材料である必要がある。例えばチタンやアルミニウムなどを使用することができる。
犠牲層エッチングにて間隙を形成した後に、エッチングホール13上に封止膜を堆積させて間隙を封止する工程について図3を用いて説明する。この段階では、エッチングホールの底部に凸部19が形成されている。図3は、犠牲層エッチングによって犠牲層12を除去した後のエッチングホール13上に、第二のメンブレン6からなる封止膜を堆積して間隙を封止する過程を示している。エッチングホール13上にPE−CVDで膜を形成させていくと、エッチングホール底部の凸部19と、エッチングホール13が開口された第一のメンブレン5の側面及び上面とに膜が堆積されていく(図3(a)〜(c))。エッチングホールの底部の凸部19に堆積される膜と第一のメンブレン5の側面ないし壁に堆積される膜が繋がり、連続した膜となることでエッチングホールは封止される(図3(d))。このとき、封止に必要な膜の厚さは、エッチングホールが形成されている部分でのエッチングホール底部の凸部19とメンブレン5の開口側面との距離に依存する。
以上の様にして、第一の電極と間隔を隔てて設けられた第二の電極を含む振動膜を含む構造のセルを備え、間隙がエッチングホールを介して犠牲層をエッチングすることにより形成された静電容量型トランスデューサが作製される。ここにおいて、エッチングホールの底部に凸部が形成され、エッチングホールを介して凸部上に封止膜を形成することでエッチングホールが封止されている。凸部と封止膜は同じ材料であってもよいし、異なる材料であってもよい。本実施形態の静電容量型トランスデューサでは、エッチングホールの底部の凸部19とメンブレン5の側面との距離を、性能に影響する振動部間隙8の厚さを変えずに、適切に設定している。このことで、間隙8を封止するために必要な封止膜厚を小さくすることが可能になるとともに、封止の信頼性が向上する。
本願発明において、凸部の厚みは、キャビティ8の厚みに対応する犠牲層12の厚みを考慮して選定される。犠牲層12の厚みは、プロセスの制御性、効率を考慮して、一般的には50nm〜200nmの範囲とされ、好ましくは70nm〜150nmの範囲とされる。凸部の厚みは、犠牲層12の厚みよりも薄く設定される必要があり、一般的には10nm〜150nmの範囲、好ましくは20nm〜100nmの範囲において設定されるのが望ましい。
また、凸部の厚み方向をZ方向として、Z方向と互いに直交するX方向及びY方向の凸部の長さ(凸部のサイズに相当)は、エッチングホールの大きさ(直径)を考慮して選定される。エッチングホールの大きさ(直径)は、振動膜の厚み、振動膜の大きさ(直径)、キャビティの厚み、等に依存するトランスデューサの性能を考慮して適宜設定される。こうした中、凸部のX方向及びY方向の大きさ(直径)Pは、エッチングホールの直径をE、キャビティ8の厚み(ギャップ)に相当する犠牲層12の厚みをGとして、以下の(式1)を満足するように選定されるのが望ましい。
P≦E−2G (式1)
(実施例1)
以下、本発明による静電容量型トランスデューサの実施例1を説明する。図4−1(a)〜(f)と図4−2(g)〜(k)は、本実施例の構造を有する静電容量型トランスデューサのプロセスフローを図示している。ここでは、セル構造10を一つだけ有した静電容量型トランスデューサを示しているが、上述した様に、セル構造10は幾つであっても構わない。また、一つのセル構造10に対して、一つのエッチングホール部を有した図を示しているが、一つのセル構造10に対するエッチングホールの数は幾つであっても構わない。
本実施例の静電容量型トランスデューサは、厚さ300μmのシリコン基板1、シリコン基板1上に形成された熱酸化膜の絶縁膜2を有し、以下の如きセル構造10を有する。すなわち、セル構造10は、絶縁膜2上に形成されたチタンからなる第一の電極3、第一の電極3上に形成されたシリコン酸化膜の絶縁膜4、第一の電極3と第二の電極7の間に形成される間隙、間隙上に形成された振動膜17、振動膜17を支持する振動膜支持部16を有する。振動膜17は、間隙上に形成された第一のメンブレン5と、間隙を封止するための第二のメンブレン6と、第二の電極7を含み、第一及び第二の電極3、7の間に電圧を印加する電圧印加手段が設けられている。
本実施例における静電容量型トランスデューサの間隙部は、図4−1(d)〜図4−2(h)に示す犠牲層エッチング工程を行うことで形成される。まず、シリコン基板1上に、熱酸化膜からなる絶縁膜2とチタンからなる第一の電極3、シリコン酸化膜からなる絶縁膜4を形成する。次に、フォトリソグラフィとCF4ガスを用いたドライエッチングによってエッチングホール底部の凸部19となる厚さ20nmの突起部を形成する(図4−1(d)。凸部19はSiO、SiNなどで形成することができる。次に、絶縁膜4上に、厚さ200nmの犠牲層材料であるクロムを成膜する。フォトリソグラフィとClガスを用いたドライエッチングによって、犠牲層12を除去するためのエッチングホールを形成する部分のエッチングを行い、80nmの厚さにする(図4−1(e))。次に、エッチングホール部となるエッチングホール部犠牲層15と振動部となる振動部犠牲層14を残して、フォトリソグラフィとClガスを用いたドライエッチングでパターニングを行う(図4−1(f))。この工程までで、エッチングホール部と振動部で間隙の厚さが異なる構造を形成することができる。ただし、図ではこの厚さの違いは表現していない。
次に、犠牲層12上にPE−CVD装置にて、第一のメンブレン5と振動膜支持部16となるシリコン窒化膜を400nm形成する(図4−2(g))。次に、第一のメンブレンにフォトリソグラフィとCF4ガスによるドライエッチングでパターニングを行い、エッチングホール13を形成する(図4−2(h))。次に、エッチングホール13から硝酸第二セリウムアンモニウムと過塩素酸からなる溶液を導入し、犠牲層12を除去することで、振動部間隙8とエッチングホール部間隙9からなる間隙を形成する(図4−2(i))。そして、エッチングホール13上に、PE−CVD装置によって第二のメンブレン6となるシリコン窒化膜を300nm成膜する。この工程によって間隙部はエッチングホール13で封止される(図4−2(j))。最後に第二のメンブレン6上に第二の電極7を形成する(図4−2(k))。
本実施例では、犠牲層12の厚さがエッチングホール部と振動部で異なり、エッチングホール部で80nm、振動部で200nmである。間隙を封止するために必要な膜の厚さは、従来の構成では間隙厚さの約3倍が必要である。従って、従来の構成では、封止するために必要な封止膜厚は、エッチングホール部間隙の厚さ80nmに対して3倍であり、約240nmとなる。他方、本構成ではエッチングホール底部の凸部19よって、間隙8の封止に必要な封止膜の厚さを小さくすることができ、間隙の封止性能が向上する。
(実施例2)
本発明の実施例2の静電容量型トランスデューサについて図5−1と図5−2を用いて説明する。本実施例は実施例1とは異なり、犠牲層エッチングを行った後にエッチングホール底部に凸部19を形成している。図5−1(a)〜(e)のプロセスは、凸部19を形成しないこと以外は、図4−1(a)〜(f)のプロセスと同じである。本実施例では、図5−2(i)で、犠牲層エッチングを行った後にフォトリソグラフィによってエッチングホール底部に金属膜を厚さ20nmで形成している。ここで、金属膜は、Au膜、Al膜等が採用できる。こうして、実施例2の凸部19は、レジストをパターニングした後、蒸着により金属膜を形成し、レジストをリフトオフすることによりエッチングホール底部に金属の凸部として形成する。この凸部によって、実施例1と同等の効果を得ることができる。本実施例では、金属凸部19を形成するときに第二の電極7も形成して、これを第一のメンブレン5と第二メンブレン6との間に形成することもできる。この場合は、凸部19と第二の電極7を同時的に形成するので工程を簡略化することができる。
(実施例3)
図6(a)は、光音響効果を利用した被検体情報取得装置の実施例を示したものである。光源2010から発振したパルス光は、レンズ、ミラー、光ファイバー等の光学部材2012を介して、被検体2014に照射される。被検体2014の内部にある光吸収体2016は、パルス光のエネルギーを吸収し、音響波である光音響波2018を発生する。プローブ(探触子)2022内の本発明の静電容量型トランスデューサ2020は、光音響波2018を受信して電気信号に変換し、信号処理部2024に出力する。信号処理部2024は、入力された電気信号に対して、A/D変換や増幅等の信号処理を行い、データ処理部2026へ出力する。データ処理部2026は、入力された信号を用いて被検体情報(光吸収係数などの被検体の光学特性値を反映した特性情報)を画像データとして取得する。ここでは、信号処理部2024とデータ処理部2026を含めて、処理部という。表示部2028は、データ処理部2026から入力された画像データに基づいて、画像を表示する。以上のように、本例の被検体の情報取得装置は、本発明の静電容量型のトランスデューサと、該トランスデューサが出力する電気信号を用いて被検体の情報を取得する処理部と、を有し、トランスデューサは、被検体からの音響波を受信し、電気信号を出力する。
図6(b)は、音響波の反射を利用した超音波エコー診断装置等の被検体情報取得装置を示したものである。プローブ(探触子)2122内の本発明の静電容量型トランスデューサ2120から被検体2114へ送信された音響波は、反射体2116により反射される。トランスデューサ2120は、反射された音響波(反射波)2118を受信して電気信号に変換し、信号処理部2124に出力する。信号処理部2124は、入力された電気信号に対して、A/D変換や増幅等の信号処理を行い、データ処理部2126へ出力する。データ処理部2126は、入力された信号を用いて被検体情報(音響インピーダンスの違いを反映した特性情報)を画像データとして取得する。ここでも、信号処理部2124とデータ処理部2126を含めて、処理部という。表示部2128は、データ処理部2126から入力された画像データに基づいて、画像を表示する。以上のように、本例の被検体の情報取得装置は、本発明の静電容量型のトランスデューサと、データ処理装置と、を有する。そして、トランスデューサは、被検体により反射された音響波を受信して電気信号に変換し、データ処理装置は、電気信号を用いて被検体の情報を取得する。
なお、プローブは、機械的に走査するものであっても、医師や技師等のユーザが被検体に対して移動させるもの(ハンドヘルド型)であってもよい。また、図6(b)のように反射波を用いる装置の場合、音響波を送信するプローブは、受信するプローブと別に設けても良い。さらに、図6(a)と図6(b)の装置の機能をどちらも兼ね備えた装置として、被検体の光学特性値を反映した被検体情報と、音響インピーダンスの違いを反映した被検体情報と、をどちらも取得するようにしてもよい。この場合、図6(a)のトランスデューサ2020が光音響波の受信だけでなく、音響波の送信と反射波の受信を行うようにしてもよい。
1:基板、3:第一の電極、5:第一のメンブレン、6:第二のメンブレン(封止層)、7:第二の電極、8:振動部間隙(間隙)、9:エッチングホール部間隙、10:セル、12:犠牲層、13:エッチングホール、17:振動膜、19:凸部

Claims (9)

  1. 第一の電極と、前記第一の電極と間隙を隔てて設けられた第二の電極を含む振動膜と、を含むセルを備えた静電容量型トランスデューサの製造方法であって、
    前記第一の電極の上に凸部を形成する工程と、
    前記第一の電極と前記凸部の上に前記凸部よりも厚さが厚い犠牲層を形成する工程と、
    前記犠牲層の上にメンブレンを形成する工程と、
    前記メンブレンの前記凸部上の位置にエッチングホールを形成する工程と、
    前記エッチングホールを介して前記犠牲層をエッチングする工程と、
    前記エッチングホールを封止する工程と、
    前記第二の電極を形成する工程と、
    を有することを特徴とする静電容量型トランスデューサの製造方法。
  2. 前記凸部はSiOまたはSiNで形成することを特徴とする請求項1に記載の静電容量型トランスデューサの製造方法。
  3. 前記凸部の厚みは、10nm以上150nm以下の範囲に形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の静電容量型トランスデューサの製造方法。
  4. 前記凸部の厚みは、20nm以上100nm以下の範囲に形成されることを特徴とする請求項3に記載の静電容量型トランスデューサの製造方法。
  5. 前記凸部の直径は、該直径をP、前記エッチングホールの直径をE、前記犠牲層の厚みをGとして、以下の(式1)を満足することを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の静電容量型トランスデューサの製造方法。
    P≦E−2G (式1)
  6. 第一の電極と、前記第一の電極と間隙を隔てて設けられた第二の電極を含む振動膜と、を含むセルを備えた静電容量型トランスデューサの製造方法であって、
    前記第一の電極の上に犠牲層を形成する工程と、
    前記犠牲層の上にメンブレンを形成する工程と、
    前記メンブレンにエッチングホールを形成する工程と、
    前記エッチングホールを介して前記犠牲層をエッチングする工程と、
    前記エッチングホールの底部に凸部を形成する工程と、
    前記エッチングホールを封止する工程と、
    前記第二の電極を形成する工程と、
    を有し、
    前記凸部は、レジストをパターニングした後、蒸着により金属膜を形成し、レジストをリフトオフすることによりエッチングホールの底部に金属の凸部として形成することを特徴とする静電容量型トランスデューサの製造方法。
  7. 前記金属膜は、Au膜またはAl膜であることを特徴とする請求項に記載の静電容量型トランスデューサの製造方法。
  8. 前記第二の電極は、前記凸部を形成するときに前記メンブレンの上に形成することを特徴とする請求項又はに記載の静電容量型トランスデューサの製造方法。
  9. 前記第二の電極は前記エッチングホールを封止した後に形成することを特徴とする請求項1からの何れか1項に記載の静電容量型トランスデューサの製造方法。
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