JP5728635B2 - 超音波振動子ユニット及び超音波プローブ - Google Patents

超音波振動子ユニット及び超音波プローブ Download PDF

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Description

本発明は、超音波振動子ユニット及び、該超音波振動子を用いた超音波プローブに関する。
図1は従来のCMUT(Capacitive Micromachined Ultrasonic Transducer)型超音波振動子の構成の一例を示す断面図である。従来のCMUT型超音波振動子は、超音波を送受する振動膜100と、基板104の一面に設けられ、基板104と対向するように振動膜100を支持する振動膜支持部101とを備えている。さらに、振動膜100に膜側電極102が形成され、基板104には基板側電極103が形成されており、膜側電極102及び基板側電極103はお互いに対向配置されている。
このような構成のCMUT型超音波振動子は、受信した超音波(音圧)によって振動膜100及び膜側電極102が振動し、この際に起きる膜側電極102及び基板側電極103の間の静電容量変化に基づき、受信した超音波に係る電気信号を取得し、又は膜側電極102及び基板側電極103の間にDC及びAC電圧を印加することによって振動膜100を振動させ、超音波を送信するものであり、広帯域、高感度等の優れた周波数応答特性を有している。
例えば、非特許文献1には、上述したような従来のCMUT型超音波振動子及びその製造方法が開示されている。詳しくは、非特許文献1のCMUT型超音波振動子においては、シリコン基板の上に、後述するウェットエッチングの際、基板を保護するための窒化物層を形成し、該窒化物層の上に多結晶シリコンからなるいわゆる犠牲層を蒸着する。その後、上記犠牲層の上に窒化物からなる振動膜及び振動膜支持部を共に蒸着し、該振動膜に上記犠牲層を除去するための孔をあける。この孔を介して、エッチング液を注入して、ウェットエッチングにて上記犠牲層を除去する。次いで、上記孔を埋めて、上記振動膜の上に膜側電極を蒸着した後、その上に保護層を形成することにより製造される。
「Capacitive Micromachined Ultrasonic Transducers:Theory and Technology」、JOURNAL OF AEROSPACE ENGINEERING、USA、April、VOL.16、NO.2、p.76−84
しかしながら、非特許文献1の超音波振動子においては、膜側電極及び基板側電極の間に空間を設けるために、上述したように、いわゆる犠牲層を形成させる工程と、エッチングのために上記振動膜に孔をあける工程と、ウェットエッチング又はガスエッチングによって上記犠牲層を除去する工程と、上記孔を埋める工程等の複数の工程を必要とするという問題がある。
更に、上記ウェットエッチングは、時間がかかる処理である上に、レジストパターンをマスクにして被エッチング物をエッチングするときの、該レジストの膜厚のエッチング速度に対する被エッチング物のエッチング速度の比率であるエッチング選択比が高くない場合は、保護膜が別途必要とされる等から、製造工程が複雑になる。また、このような問題は、ガスエッチングにおいても、同じである。
以上のようなことから、ウェットエッチング又はガスエッチングの利用は、大量生産の際に要求される、再現性及び信頼性を低下させ、大量生産には不適切である。
ひいては、非特許文献1の超音波振動子は振動膜を振動可能に支持する上記振動膜支持部を有するので、上記振動膜支持部を設ける工程が必要である上に、上記振動膜支持部を基板に固定させるための工夫(例えば、固定部分での応力発生の抑制)等が更に必要である。
本発明は、斯かる事情に鑑みてされたものであり、その目的とするところは、絶縁性の基板の一面側に設けられた基板側電極と、前記基板側電極と一面が対向するように配置された振動膜と、前記振動膜の他面に設けられた膜側電極とを備える超音波振動子を、前記基板上に複数設けた超音波振動子ユニットであって、高い再現性及び信頼性を有し、かつ簡略化された工程にて製造できる超音波振動子ユニット、並びに該超音波振動子ユニットを備えた超音波プローブを提供することである。
本発明に係る超音波振動子ユニットは、絶縁性の基板の一面側に設けられた基板側電極と、上記基板側電極と一面が対向するように配置された導電性を有する振動膜とを備える超音波振動子を、上記基板上に複数設けた超音波振動子ユニットにおいて、上記超音波振動子は、上記基板の一面上から突出しており、該基板と同材料からなるランド部と、上記基板及びランド部により形成された凹部を備え、上記基板側電極は上記凹部の底に設けられており、上記振動膜は上記凹部を覆うように設けられてあることを特徴とする。
本発明にあっては、上記超音波振動子の凹部の底に埋設された基板側電極と、導電性を有する振動膜との間隔の変動に起因する、振動膜と基板側電極との間の静電容量の変化に基づき、超音波の送信及び受信を行う。なお、上記基板側電極を上記凹部の底に埋設し、上記基板の厚み方向におけるユニットの薄型化を図る。
本発明に係る超音波振動子ユニットは、上記振動膜は、超音波振動子の凹部同士の間のランド部に、静電引力及び化学結合によって固定されていることを特徴とする。
本発明にあっては、例えば、陽極接合法によって、上記振動膜を上記ランド部に固定する。従って、上記振動膜は静電引力及び化学結合によって、上記ランド部に固定されるので、接合力が高い上に、上記振動膜及びランド部の接合部は言うまでもなく、振動膜及び基板の全体において応力発生が抑制される。
本発明に係る超音波振動子ユニットは、上記基板側電極は上記凹部の底に埋設されており、上記ランド部には超音波振動子の凹部同士をつなぐ溝が形成されており、上記溝及び上記凹部の底には、超音波振動子の基板側電極同士を接続する接続電極が埋設されていることを特徴とする。
本発明にあっては、上記基板側電極を上記凹部の底に埋設し、上記超音波振動子の凹部同士をつなぐ溝を形成し、上記溝及び凹部の底に上記接続電極を更に埋設することにより、簡単な構造での基板側電極同士の接続、並びに上記基板の厚み方向におけるユニットの薄型化を図る。
本発明に係る超音波振動子ユニットは、上記基板側電極は上記凹部の底に凸設されており、上記ランド部には超音波振動子の凹部同士をつなぐ溝が形成され、上記溝及び上記凹部の底には、超音波振動子の基板側電極同士を接続する接続電極が凸設されていることを特徴とする。
本発明にあっては、上記基板側電極を上記凹部の底に凸設し、上記超音波振動子の凹部同士をつなぐ溝を形成し、上記溝及び凹部の底に上記接続電極を更に凸設することにより、簡単な構造での基板側電極同士の接続、並びに上記基板の厚み方向におけるユニットの薄型化を図る。
本発明に係る超音波振動子ユニットは、上記振動膜に、上記溝と整合する位置に貫通孔が形成され、上記振動膜の他面側に、蒸着された蒸着物からなる保護膜が形成されており、上記溝の内側には、上記貫通孔を介して蒸着された蒸着物からなり、隣り合う超音波振動子同士を隔離する隔離膜が形成されていることを特徴とする。
本発明にあっては、上記ランド部に溝を形成しているので、上記溝を介して隣り合う超音波振動子同士が連通する状態となる。しかしながら、上記貫通孔を介して上記溝の内側に蒸着物が蒸着されて上記隔離膜が形成されるので、隣り合う超音波振動子同士は隔離され、隣り合う超音波振動子による音響的影響を未然に防止できる。
本発明に係る超音波振動子ユニットは、上記振動膜は、陽極接合法によって上記ランド部に固定されていることを特徴とする。
本発明にあっては、上記振動膜を、例えば400℃以下で陽極接合法を用いて、ランド部に固定させる。従って、上記振動膜は静電引力及び化学結合によって上記ランド部に固定され、800〜1000℃の高温での接合の場合及び圧力のみを用いる接合の場合に比べて、低温でも高い接合力を得られる上に、接合部での応力の発生が抑制されると共に、振動膜及び基板全体での応力発生が低減する。
また、上記振動膜はシリコン単結晶からなることが好ましい。
本発明に係る超音波プローブは、本発明の超音波振動子ユニットを備え、上記超音波振動子ユニットを用いて超音波の送受をすることを特徴とする。
本発明の超音波プローブにあっては、本発明の超音波振動子ユニットに設けられた複数の超音波振動子の上記基板側電極と振動膜との間に電圧を印加することにより上記振動膜を振動させて超音波を外部に送信し、外部から反射されてくる超音波による上記基板(又は振動膜)の振動に伴う、上記基板側電極と振動膜との間のキャパシタンス変化に係る電気信号を取得し、いわゆる超音波像に係るデータを得る。
本発明によれば、上記犠牲層を形成する工程、孔をあける工程、及び手間がかかる上記犠牲層をエッチングする工程等を省くことができる上に、ガスエッチングに起因する振動膜の損傷のおそれがなく、高い再現性及び信頼性、かつ簡略化された工程にて製造することができる。更には上記振動膜を振動可能に支持する上記振動膜支持部を別に設ける必要がないため、上記振動膜支持部を基板に固定する際に発生する固定部分での応力集中等を考慮する必要がなくなり、製造における自由度が高まる。
また、本発明によれば、上記振動膜が静電引力及び化学結合によって上記ランド部に固定されるので、上記ランド部及び振動膜の間の固定部分での応力発生が抑制でき、ひいては振動膜及び基板全体での応力発生が低減できる。従って、いわゆる変換効率又は感度を向上させることができる。
従来のCMUT型超音波振動子の構成の一例を示す断面図である。 本発明の実施の形態1に係る超音波振動子ユニットの模式的部分断面図(a)、及び超音波振動子ユニットを備える超音波プローブ(b)の一例を示す例示図である。 本発明の実施の形態1に係る超音波振動子ユニットに設けられた超音波振動子の構成を説明するための模式的要部断面図である。 本発明の実施の形態1に係る超音波振動子ユニットに設けられた超音波振動子の振動膜を除外した場合における平面図である。 本発明の実施の形態1に係る超音波振動子ユニットに設けられた超音波振動子において、図4の実線の丸円の位置に対応する部分を拡大した拡大図である。 本発明の実施の形態1に係る超音波振動子ユニットにおいて、保護膜及び振動膜を一部除外した状態の部分的斜視図である。 本発明の実施の形態1に係る超音波振動子ユニットに設けられた超音波振動子において、保護膜を蒸着する前の一部の縦断面図である。 本発明の実施の形態1に係る超音波振動子ユニットに設けられた超音波振動子において、保護膜を蒸着した後の一部の縦断面図である。 本発明の実施の形態2に係る超音波振動子ユニットに設けられた超音波振動子の構成を説明するための模式的要部断面図である。 本発明の実施の形態3に係る超音波振動子ユニットに設けられた超音波振動子の構成を説明するための模式的要部断面図である。
以下、図面に基づいて本発明に係る超音波振動子ユニット及び超音波プローブについて具体的に説明する。
(実施の形態1)
図2は本発明の実施の形態1に係る超音波振動子ユニットの模式的部分断面図(a)、及び上記超音波振動子ユニットを備える超音波プローブの一例を示す例示図(b)である。本発明に係る超音波振動子ユニットは基板3の上に複数の超音波振動子10がパターン状に設けられており(図2(a)参照)、本発明に係る超音波プローブ(図3(b)参照)は上記超音波振動子ユニットを備え、例えば、上記超音波振動子ユニットによって受信された超音波に係る電気信号を外部装置に送信する。
図3は本発明の実施の形態1に係る超音波振動子ユニットに設けられた超音波振動子の構成を説明するための模式的要部断面図である。図4は本発明の実施の形態1に係る超音波振動子ユニットに設けられた超音波振動子10の振動膜1を除外した場合における平面図である。
本発明の実施の形態1に係る超音波振動子ユニットの超音波振動子10は、基板2と、基板2に対向するように基板2の上側に配置され、超音波を送信又は受信する振動膜1とを備えている。また、振動膜1の上面には振動膜1を保護するが保護膜5が蒸着されており、振動膜1の下面と対向する基板2の上面には凹部22が形成されており、この凹部22の底には基板側電極3が埋設されている。振動膜1は凹部22の上側に配置され、振動膜1及び凹部22によって空間部6が形成されている。
このような構成を有する超音波振動子10が、基板2の上記上面に複数設けられ、本発明の実施の形態1に係る超音波振動子ユニットとして作用している。
基板2は、例えば、パイレックス(Pyrex)ガラス(登録商標)、石英、テンバックス(登録商標)、Foturanガラス(登録商標)等のガラス製であり、500μm以上の厚みを有する。また、上述したように、基板2の上記上面には凹部22が形成され、基板側電極3が凹部22の底に埋設されている。更に、基板2の上記上面には、後述する溝23が形成されており、溝23の底には後述する接続電極31が埋設されている。
なお、基板2の厚みは、上述の記載に限るものでない。例えば、300μm以上、500μm以下であっても良い。
凹部22は平面視六角形になるように基板2の上面に凹設されている。各超音波振動子10の凹部22同士の間には、凹部22の凹設による残余部分からなるランド部21が形成されるようになる。ランド部21の先端面、すなわち基板2の上面には振動膜1が固定されている。凹部22の底の中心には、基板側電極3が埋設されている。
基板側電極3は、凹部22に倣う六角形の板状をなしており、面積は700μm2 以下である。また、基板側電極3の厚みは0.1〜1.0μmであり、例えば、Ni、Cr、Al、Pt、Au等の材料からなる。また、基板側電極3の上面には、例えば、酸化物からなり、振動膜1から基板側電極3を絶縁させる絶縁膜4が蒸着されており、この状態において、凹部22の底と面一になるように構成されている。
なお、各超音波振動子10の基板側電極3は、隣り合う超音波振動子10の基板側電極3と複数の接続電極31,31,…,31によってお互いに接続されている。接続電極31は短冊形状の板材であって、基板側電極3と同じ材料からなり、凹部22の底に埋設されている。また、接続電極31の上面には、基板側電極3と同様に、例えば、酸化物からなり、振動膜1から接続電極31を絶縁させる絶縁膜41が蒸着されており、接続電極31,31,…,31は基板側電極3の縁から、基板側電極3の面方向に沿って延設されている。なお、接続電極31は基板側電極3と同じ材料に限るものでなく、蒸着による形成が可能であって、導電性を有する材料であれば良い。
凹部22の内側は、例えば、一辺の寸法が22μmで、対向辺間の距離は38μmである六角形の筒状をなしている。また、凹部22は六角形の筒状に限るものでなく、円形の筒状であっても良い。
また、ランド部21には、ランド部21の一部を縦方向に切り欠いた溝23が複数個所に形成されている。詳しくは六角形の凹部22の各辺に対応する位置に、溝23が夫々形成されており、溝23によって、隣り合う超音波振動子10の凹部22同士はつながっている。また、ランド部21同士は溝23を挟んで夫々の端部24がお互いに対向するように構成されている。更に、各溝23の底には接続電極31が埋設されている。すなわち、接続電極31は凹部22及び溝23の底に亘って埋設され、基板側電極3同士を接続している。
ランド部21の縦方向における寸法(換言すれば、振動膜1の上記下面と基板2の上記上面との間隔)は0.05〜10μmであれば良い。また、この寸法は0.1〜3μmであることが好ましい。また、ランド部21は横方向における肉厚が8〜16μmである。なお、ランド部21は先端面(すなわち、基板2の上面)に、いわゆる陽極接合法によって、振動膜1の上記下面が接合されている。
陽極接合法とは、一般的には約400℃以下にてガラスと、シリコン又は金属とを密着接合する方法である。ガラスと、シリコン又は金属とを重ね合わせ、加熱及び電圧を加える方法であり、これにより、ガラス中の陽イオンを強制的にシリコン又は金属中に拡散させ、ガラス、シリコン、金属等の間に静電引力が生じると共に、化学結合が行われ、比較的に低温でも良好な接合が出来る方法である。
本発明の実施の形態1に係る超音波振動子ユニットの超音波振動子10は、このような陽極接合法を用いるので、高温での接合の工程に発生しがちな変形による応力集中がランド部21と振動膜1との接合部にて生じることを抑制でき、上記応力による変換効率又は感度の低下を防止できる上、ひいては製造上の構造再現性に優れている。
本実施の形態においては、ランド部21の肉厚が8〜16μmである場合を例として挙げているが、これに限るものでなく3〜16μmであれば良い。
振動膜1は凹部22を覆うように設けられている。従って、凹部22の内周面及び振動膜1の上記下面によって空間部6が形成されている。
振動膜1の厚みは1.5μmであることが好ましいが、0.5〜3μmであれば良い。振動膜1は伝導性を有するシリコン単結晶からなる。従って、本発明の実施の形態1に係る超音波振動子ユニット及び超音波プローブにおいては、電圧印加の際に振動膜に電荷がたまり、数〜数十MHzのAC電圧印加による振動膜の作動において、チャージ現象が生じることを防止することが出来る。
また、振動膜1にはランド部21の溝23,23,…,23と整合する位置に、厚み方向に貫通する矩形の貫通孔11が複数個所に形成されている(図4では、点線にて表示する)。図5は本発明の実施の形態1に係る超音波振動子ユニットに設けられた超音波振動子10において、図4の実線の丸円の位置に対応する部分を拡大した拡大図である。図5においては、説明の便宜上、保護膜5を除外した状態を示している。また、図6は本発明の実施の形態1に係る超音波振動子ユニットにおいて、保護膜5及び振動膜1を一部除外した状態の部分的斜視図である。
上述したように、振動膜1は下面がランド部21の先端面と当接し、凹部22を覆うように設けられている。ランド部21とランド部21との間の溝23を介して接続電極31が延設され、基板側電極3同士を接続している。また、貫通孔11は、振動膜1をその厚み方向に貫通しているので、貫通孔11を介して、溝23の一部、ランド部21の端部24及び接続電極31が露出されている。
図7は本発明の実施の形態1に係る超音波振動子ユニットに設けられた超音波振動子10において、保護膜5を蒸着する前の一部の縦断面図である。詳しくは、図7(a)は図5のA―B線による縦断面図であり、図7(b)は図5のC―D線による縦断面図であり、図7(c)は図5のE―F線による縦断面図である。
図8は本発明の実施の形態1に係る超音波振動子ユニットに設けられた超音波振動子10において、保護膜5を蒸着した後の一部の縦断面図である。詳しくは、図8(a)は図5のA―B線による縦断面図であり、図8(b)は図5のG―H線による縦断面図である。
貫通孔11の長手方向の寸法は、溝23を挟んで対向するランド部21の端部24,24間の間隔より長く、貫通孔11の短手方向の寸法はランド部21の肉厚より短い。従って、上述したように、貫通孔11及び溝23を介して、溝23の近傍において、ランド部21の端部24,24、並びに接続電極31の一部が露出されるようになる。
このような状態にて、例えば絶縁性の蒸着物が蒸着されることによって、保護膜5及び隔離膜51が形成される。すなわち、上記蒸着物は、振動膜1の上面の上に蒸着され、保護膜5を形成すると共に、貫通孔11を介して溝23の内側及び近傍に蒸着され、隣り合う超音波振動子10(空間部6又は凹部22)同士を隔離する隔離膜51を形成する。
ランド部21に溝23を形成することにより、隣り合う超音波振動子10(空間部6又は凹部22)同士が連通する状態となる。後述するように、上記蒸着物の蒸着の工程は真空の中で行われ、通常は空間部6内に空気は略存在しないが、その際の真空度によっては極微量空気が存在するおそれがある。このような極微量の空気が、超音波振動子10が動作する際、溝23を介して隣り合う超音波振動子10(空間部6又は凹部22)の間を移動した場合、各超音波振動子10での振動が他の超音波振動子10の振動に音響的及び機械的影響を及ぼして、電気的ノイズ発生の原因になり得る。
しかしながら、本発明の実施の形態1に係る超音波振動子ユニット及び超音波プローブにおいては、上記蒸着の工程にて貫通孔11を介して溝23の近傍に形成される隔離膜51により、上述のような問題を未然に防止できる。
詳しくは、図8に示すように、蒸着物の蒸着により、溝23の近傍には隔離膜51が形成されている。隔離膜51は、横断面が貫通孔11に倣う矩形である凹みの形状を有している。なお、隔離膜51は、一方のランド部21の端部24から他方のランド部21の端部24に亘って気密に形成されている。従って、隣り合う超音波振動子10(空間部6又は凹部22)の間は完全に隔離され、超音波振動子10が動作する際、極微量の空気であっても溝23を介して隣り合う超音波振動子10(空間部6又は凹部22)の間を移動することが防止され、隣り合う超音波振動子10への機械的振動及び音波の伝達を防止できる。
一方、CMT(Capacitive Micromachined Transducer)又はCMUTの作用をエネルギーの観点から解釈すると、電気的エネルギー(駆動電流)を機械的エネルギー(音圧又は振動膜の振動)に変換させる作用をなし、これは可逆的にも行われる。このような変換における効率を表す関数として電気機械結合係数が用いられる。斯かる変換効率又は電気機械結合係数は、固定キャパシタンスと、変換キャパシタンスとの比率によって表現でき、固定キャパシタンスに比べて変換キャパシタンスが大きいほど変換効率が大きいと言える。
これを本発明の実施の形態1の超音波振動子ユニットの超音波振動子に適用させると、固定キャパシタンスは、振動膜及び基板側電極にて発生する基本キャパシタンスと、電極等の交差点及び構造に基づいて発生し、振動膜の振動とは関わりの無い寄生キャパシタンスとの和によって表すことが出来る。また、変換キャパシタンスはもっぱら振動膜の振動によって生じるキャパシタンスを意味する。従って、寄生キャパシタンスが大きいほど、変換効率又は電気機械結合係数は減少する。
これに対し、本発明の実施の形態1の超音波振動子ユニット及び超音波プローブにおいては、隣り合う超音波振動子10の基板側電極3同士の連結部分(接続電極31)に、貫通孔11を介して隔離膜51を蒸着するので、基板側電極3同士の連結部分にて発生する寄生キャパシタンスを最大限に抑え、感度を最大限に高めることが出来る。すなわち、溝23の付近にて振動膜1と接続電極31との間に発生しうる寄生キャパシタンスによる影響を抑制することが出来る。
以上の説明においては、導電性を有する材料からなる振動膜1を備え、言わば、振動膜1が膜側電極としての役割を兼ねるように構成した場合を例として説明したが、これに限るものでなく、振動膜1の上に膜側電極を更に設けた構成であっても良い。
斯かる場合においても、溝23の付近における、振動膜1と接続電極31との間での寄生キャパシタンスの発生が隔離膜51によって抑制される効果を奏することは言うまでもない。
本発明の実施の形態1に係る超音波プローブにおいては、上記超音波振動子ユニットに設けられた複数の超音波振動子10の基板側電極3と振動膜1との間に電圧を印加することにより超音波を外部に送信し、また、外部から反射してくる超音波による基板2(又は振動膜1)の振動に伴う基板側電極3と振動膜1との間の静電容量の変化に係る電気信号を取得でき、上記電気信号に基づき、いわゆる超音波像を得ることが出来る。
以下において、本発明の実施の形態1に係る超音波振動子ユニット(超音波振動子)製造方法について説明する。
例えば、パイレックスガラスの基板2の上面にパターニングを行い、凹部22を形成する。また、この基板2のパターニングの際、ランド部21及び、溝23も共に形成される。斯かる際。凹部22の底の中央部には基板側電極3を埋設するための窪みが更に形成されており、凹部22の底及び溝23の底には接続電極31を埋設するための窪みも共に形成されている。
次いで、基板側電極3及び接続電極31になるべき蒸着物(例えば、Ni、Cr、Al、Pt、Au等)の蒸着を施す。その上、更に、基板側電極3及び接続電極31を振動膜1から絶縁する絶縁膜4及び絶縁膜41が上記蒸着によって夫々形成される。
この後、SOI(Silicon On Insulator)ウェハの一面が基板2の上記上面(又は凹部22の底)と対向するように、基板2の上記上面、すなわちランド部21の先端面に、該SOIウェハを固定させる。上記固定は上記陽極接合法によって行われる。
この後、上記SOIウェハの他面側、すなわち、oxide層及びSi層に対して、TMAH、KOH、HF等を用いてウェットエッチングを施し、振動膜1になるべく部分だけを残して除去することにより、振動膜1を形成する。これにより、振動膜1は静電引力及び化学結合によってランド部21に固定される。
このように、シリコン単結晶からなる振動膜1が、他の接合方法に比べ低い温度にて上記陽極接合法により、ガラス製のランド部21(基板2)の先端面に固定されることにより、高温接合の場合に生じる変形による応力の発生を防止することが出来る上に、振動膜1及びランド部21の熱膨張係数が近似するので、いわゆる異種薄膜接合の場合に生じる応力の発生を更に抑えることが出来る。
次いで、エッチングマスクを用いてエッチングを行い、振動膜1に貫通孔11を形成する。その上に絶縁性の蒸着物を真空中で蒸着して保護膜5を形成する。斯かる際、上述したように、上記蒸着物が貫通孔11を介して溝23の内側及び近傍に蒸着されるので、隔離膜51も共に形成されることになる。
なお、これに限るものでなく、SOIウェハに代えて、Si/Si(low stress)構成を有するSiウェハを用いても良い。
以上のことから、本発明の実施の形態1の超音波振動子ユニット及び超音波プローブは、従来の製造工程に比べ、犠牲層の形成工程、孔をあける工程、上記犠牲層をエッチングする工程、上記孔を埋める工程等を必要とせず、工程の数が少なくなる上、所要時間も短縮できるので、製造コストを削減きるという効果を奏する。
なお、振動膜1を振動可能に支持するいわゆる振動膜支持部を別に設ける必要がないため、更に工程の数が少なくなる上に、上記振動膜支持部を基板に固定する際に発生する固定部分での応力集中等を考慮する必要がなく、製造上の自由度が拡大される。
また、以下において、本発明の実施の形態1に係る超音波ユニット(超音波振動子10)の作用について説明する。説明の便宜上、上述したように超音波振動子10に電圧を印加して被対象物に向けて超音波を送信し、上記被対象物から反射されてくる超音波を受信する場合を例として説明する。
本発明の実施の形態1に係る超音波振動子ユニットの超音波振動子10が、上記被対象物から反射された超音波を受信した場合、上記超音波(音圧)によって振動膜1が振動する。振動膜1が振動する際、振動膜1と基板2の基板側電極3との間隔が変動する。従って、振動膜1と基板側電極3との間の静電容量が変化するようになる。斯かる振動膜1と基板側電極3との間の静電容量変化に基づき、容量変化を電圧変化信号に変換させて電気信号を取得することができ、取得した電気信号に基づき、上記被対象物の超音波像を得ることができる。
また、超音波の送信においては、振動膜1と基板側電極3との間にDC及びAC電圧を印加することによって振動膜1が振動され、超音波が送信される。他の作用については超音波を受信した場合と同様であり、詳しい説明は省略する。
(実施の形態2)
図9は本発明の実施の形態2に係る超音波振動子ユニットに設けられた超音波振動子の構成を説明するための模式的要部断面図である。本発明の実施の形態2に係る超音波振動子ユニットの超音波振動子10は、基板2と、基板2に対向するように基板2の上側に配置され、超音波を送信又は受信する振動膜1とを備えている。また、振動膜1の上面には振動膜1を保護するが保護膜5が蒸着されており、振動膜1の下面と対向する基板2の上面には凹部22が形成されており、この凹部22の底には基板側電極3が凸設されている。
このような構成を有する超音波振動子10が、基板2の上記上面には複数パターン状に設けられ、本発明の実施の形態2に係る超音波振動子ユニットとして作用している。
基板2の上記上面には平面視六角形の筒状の凹部22が形成されており、凹部22の底の中心部には基板側電極3が蒸着によって凸設されている。隣り合う凹部22同士の間には、凹部22の凹設による残余部分からなるランド部21が形成されている。ランド部21には、このランド部21の一部を縦方向に切り欠いた溝23が複数個所に形成され、溝23の底には隣り合う基板側電極3同士を接続する接続電極31が蒸着によって更に凸設されている。すなわち、接続電極31は凹部22及び溝23の底に亘って凸設されている。
基板側電極3の上面には、例えば、酸化物からなり、振動膜1から基板側電極3を絶縁させる絶縁膜4が蒸着されている。また、接続電極31の上面には、基板側電極3と同様に、振動膜1から接続電極31を絶縁させる絶縁膜41が蒸着されている。各接続電極31は平面視六角形の基板側電極3の各辺の縁から、基板側電極3の面方向に沿って延設されている。
また、ランド部21の先端面には、上記陽極接合法によって、振動膜1の下面が接合されている。
他の構成については、実施の形態1と同様であり、詳しい説明を省略する。
実施の形態1と同様の部分については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
図10は本発明の実施の形態3に係る超音波振動子ユニットに設けられた超音波振動子の構成を説明するための模式的要部断面図である。本発明の実施の形態3に係る超音波振動子ユニットの超音波振動子10は、基板2と、基板2に対向するように基板2の上側に配置され、超音波を送信又は受信する振動膜1とを備えており、実施の形態2と同様に構成されている。
一方、実施の形態3においては、例えば、酸化物からなり、振動膜1から基板側電極3を絶縁させる絶縁膜4が、基板側電極3を覆うように蒸着されている。詳しくは、基板側電極3の上面及び側面、並びに凹部22の底の一部が絶縁膜4によって覆われている。他の構成については、実施の形態1と同様であり、詳しい説明を省略する。
実施の形態1と同様の部分については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
1 振動膜
2 基板
3 基板側電極
4 絶縁膜
5 保護膜
6 空間部
10 超音波振動子
11 貫通孔
21 ランド部
22 凹部
23 溝
31 接続電極
41 絶縁膜
51 隔離膜

Claims (6)

  1. 絶縁性の基板の一面側に設けられた基板側電極と、前記基板側電極と一面が対向するように配置された導電性を有する振動膜とを備える超音波振動子を、前記基板上に複数設けた超音波振動子ユニットにおいて、
    前記超音波振動子は、
    前記基板の一面上から突出しており、該基板と同材料からなるランド部と、
    前記基板及びランド部により形成された凹部を備え、
    前記基板側電極は前記凹部の底に設けられており、
    前記振動膜は前記凹部を覆うように設けられ、
    前記振動膜は、前記ランド部に、静電引力及び化学結合によって固定され、
    前記基板側電極は前記凹部の底に埋設されており、
    前記ランド部には超音波振動子の凹部同士をつなぐ溝が形成され、
    前記溝及び前記凹部の底には、超音波振動子の基板側電極同士を接続する接続電極が埋設されていることを特徴とする超音波振動ユニット。
  2. 絶縁性の基板の一面側に設けられた基板側電極と、前記基板側電極と一面が対向するように配置された導電性を有する振動膜とを備える超音波振動子を、前記基板上に複数設けた超音波振動子ユニットにおいて、
    前記超音波振動子は、
    前記基板の一面上から突出しており、該基板と同材料からなるランド部と、
    前記基板及びランド部により形成された凹部を備え、
    前記基板側電極は前記凹部の底に設けられており、
    前記振動膜は前記凹部を覆うように設けられ
    前記振動膜は、前記ランド部に、静電引力及び化学結合によって固定され、
    前記基板側電極は前記凹部の底に凸設されており、
    前記ランド部には超音波振動子の凹部同士をつなぐ溝が形成され、
    前記溝及び前記凹部の底には、超音波振動子の基板側電極同士を接続する接続電極が凸設されていることを特徴とする超音波振動ユニット。
  3. 前記振動膜に、前記溝と整合する位置に貫通孔が形成され、
    前記振動膜の他面側に、蒸着された蒸着物からなる保護膜が形成されており、
    前記溝の内側には、前記貫通孔を介して蒸着された蒸着物からなり、隣り合う超音波振動子同士を隔離する隔離膜が形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の超音波振動子ユニット。
  4. 前記振動膜は、陽極接合法によって前記ランド部に固定されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一つに記載の超音波振動子ユニット。
  5. 前記振動膜はシリコン単結晶からなることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一つに記載の超音波振動子ユニット。
  6. 請求項1乃至5の何れか一つに記載の超音波振動子ユニットを備え、
    前記超音波振動子ユニットを用いて超音波の送受をすることを特徴とする超音波プローブ。
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