以下、図面を参照して、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」と称する)につき詳細に説明する。なお、各図は、本発明を十分に理解できる程度に、概略的に示してあるに過ぎない。よって、本発明は、図示例のみに限定されるものではない。また、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
[実施形態1]
ここでは、現金取扱装置が釣銭機として構成されているとともに、硬貨搬送装置が硬貨精査補助ユニットとして構成されており、硬貨精査補助ユニットが釣銭機に装着されることによって、釣銭機が硬貨精査補助ユニットと協働して釣銭機の内部に収納された硬貨の精査処理(すなわち、釣銭機の内部に収納されている硬貨の有高を金種別に計数する処理)を行う場合を想定して説明する。
ただし、本発明は、釣銭機に限らず、硬貨が一部分に集中して積み上がる状態や起立する状態になることに起因する課題を解決することが望まれている現金取扱装置に適用することができる。このような現金取扱装置としては、例えば、現金自動預け払い機(ATM)やキャッシュディスペンサ等がある。また、本発明は、硬貨の代わりに遊技用メダルを取り扱うメダル取扱装置にも適用することができる。また、本発明は、現金取扱装置に限らず、例えば、硬貨精査補助ユニット等の硬貨搬送装置にも適用することができる。
<釣銭機の構成>
以下、図1〜図2を参照して、本実施形態1に係る現金取扱装置である釣銭機の構成につき説明する。本発明は、硬貨の取り扱いに関連するものであるため、ここでは、硬貨の取り扱いに関連する構成要素を重点的に説明する。
図1は、本実施形態1に係る釣銭機1の前部の斜視図である。図2は、硬貨精査補助ユニット100が装着された状態の本実施形態1に係る釣銭機1の構成を示す斜視図である。
図1及び図2に示す釣銭機1は、スーパーマーケットやコンビニエンスストア等の販売店のキャッシュレジスタの下部に配置され、釣銭を出金する現金取扱装置である。また、図2に示す硬貨精査補助ユニット100は、釣銭機1で行われる硬貨の精査処理を補助する硬貨搬送装置である。
図1に示すように、釣銭機1は、制御部2、操作部3、硬貨入金口4、硬貨出金口5、硬貨リジェクト口6、電源供給口9、搬送部14、鑑別部15、及び、図示せぬ収納庫を有している。
制御部2は、釣銭機1の各部を集中的に制御する。制御部2は、マイクロコンピュータ等で構成されている。
操作部3は、各種の設定の入力や表示を行う入力装置である。操作部3は、入力キーやタッチパネル等を備えている。
硬貨入金口4は、操作者により硬貨が投入(入金)される部位である。
硬貨出金口5は、収納庫に収納されている硬貨が放出(出金)される部位である。
硬貨リジェクト口6は、鑑別部15によりリジェクトされたリジェクト硬貨(再使用困難な不良硬貨)が放出される部位である。
電源供給口9は、硬貨精査補助ユニット100(図2参照)の電源ケーブル109が接続される接続部である。
搬送部14は、現金(硬貨及び紙幣)を装置の内部の所定の場所に搬送する機構である。
鑑別部15は、現金(硬貨及び紙幣)を鑑別しながら計数する構成要素である。
図示せぬ収納庫は、貨幣(硬貨及び紙幣)を収納する部位である。
制御部2は、釣銭機1の所定の場所に設けられている。また、操作部3、硬貨入金口4、硬貨出金口5、及び、硬貨リジェクト口6は、釣銭機1の前部の外装面に設けられている。また、搬送部14や、鑑別部15、図示せぬ収納庫等は、釣銭機1の後部の内部に設けられている。
硬貨入金口4は、釣銭機1の前部の上面に設けられており、漏斗状に形成されている。
硬貨出金口5は、釣銭機1の前部の下部に設けられており、釣銭機1の前部から突出するように形成されている。硬貨出金口5の底部には、シャッタ8が設けられている。シャッタ8は、硬貨精査補助ユニット100が釣銭機1に装着されたときに、開放される。
硬貨リジェクト口6は、釣銭機1の前部の下部に設けられており、釣銭機1の前部から突出するように形成されている。
釣銭機1は、入金時に、操作者によって硬貨が硬貨入金口4に投入されると、投入された硬貨を搬送部14で鑑別部15に搬送して、鑑別部15で鑑別し、鑑別された硬貨を搬送部14で該当金種の図示せぬ収納庫に搬送して、金種毎に収納庫に収納する。そのため、鑑別部15は、硬貨入金口4の近傍に設けられている。
また、釣銭機1は、出金時に、図示せぬ収納庫から硬貨を繰り出し、繰り出された硬貨を搬送部14で硬貨出金口5に搬送して、硬貨出金口5に放出する。その際に、釣銭機1は、搬送部14だけでなく硬貨の自重を用いて硬貨を搬送する。そのため、硬貨出金口5及び硬貨リジェクト口6は、硬貨入金口4よりも下方に設けられている。
また、釣銭機1は、鑑別部15でリジェクト硬貨が検出された場合に、直ちにリジェクト硬貨を硬貨リジェクト口6に放出することが好ましい。そのため、硬貨リジェクト口6は、鑑別部15の近傍(すなわち、硬貨入金口4の近傍)に設けられている。
釣銭機1の前部の硬貨入金口4及び硬貨出金口5が設けられている部位は、硬貨精査補助ユニット100が装着される被装着部7となっている。図2に示すように、硬貨精査補助ユニット100は、釣銭機1で硬貨の精査処理が行われる場合に、釣銭機1の被装着部7に装着される。
このとき、硬貨精査補助ユニット100は、釣銭機1の硬貨リジェクト口6が外部に露出するように、装着される。そのため、釣銭機1は、硬貨の精査処理の実行中に、鑑別部15でリジェクト硬貨が検出された場合に、リジェクト硬貨を硬貨リジェクト口6に放出することができる。これにより、操作者は、精査処理の実行中であっても、硬貨精査補助ユニット100を取り外すことなく、釣銭機1からリジェクト硬貨を取り出すことができる。
<硬貨精査補助ユニットの構成>
以下、図3を参照して、硬貨精査補助ユニット100の構成につき説明する。図3は、硬貨精査補助ユニット100の内部構成を示す断面図である。
図3に示すように、硬貨精査補助ユニット100は、外部に、取込口103、及び、シュート部104を有している。また、硬貨精査補助ユニット100は、内部に、制御部112、硬貨分離部120、磁気センサ121、及び、搬送機構130を有している。なお、図3中、白抜きの矢印は、硬貨99の進行ルートを示している。
取込口103は、釣銭機1から硬貨99を取り込む部位である。取込口103は、硬貨精査補助ユニット100が釣銭機1に装着されたときに、釣銭機1の硬貨出金口5の下方に配置される。このとき、硬貨出金口5のシャッタ8(図1参照)は、開放された状態になる。釣銭機1は、その状態で、硬貨99を硬貨出金口5に出金する。すると、出金された硬貨99は、取込口103を介して硬貨精査補助ユニット100に取り込まれて、硬貨分離部120に収納される。
シュート部104は、硬貨99を自由落下させて釣銭機1の硬貨入金口4に投入する。シュート部104は、後記する第1搬送ベルト141及び第2搬送ベルト142の下流側に設けられている。シュート部104の下端部は、硬貨精査補助ユニット100が釣銭機1に装着されたときに、釣銭機1の硬貨入金口4の内部に挿入される。シュート部104は、内部に、硬貨99を滑落させる傾斜面を有している。シュート部104は、硬貨99を傾斜面に沿って滑落させることによって、硬貨99を釣銭機1の硬貨入金口4の内部に投入する。
制御部112は、硬貨精査補助ユニット100の各部を集中的に制御する。制御部112は、マイクロコンピュータ等で構成されている。
硬貨分離部120は、硬貨99を一時的に収納する収納部であるとともに、収納された硬貨99を1枚ずつに分離して後記する第1搬送ベルト141及び第2搬送ベルト142に繰り出す構成要素である。硬貨分離部120は、取込口103の下方に配置されている。硬貨分離部120の内部には、硬貨出金口5から落下した硬貨を収納部搬送ベルト132の上流側まで滑落させる傾斜面(分離傾斜面)が形成されている。
磁気センサ121は、硬貨分離部120に収納された硬貨99を検知するセンサである。磁気センサ121は、硬貨分離部120の下部に配置されている。硬貨精査補助ユニット100は、磁気センサ121によって硬貨99が硬貨分離部120に収納されたことを検知する。
搬送機構130は、硬貨分離部120に収納された硬貨99を硬貨分離部120からシュート部104に搬送する機構である。シュート部104は、硬貨分離部120よりも高い位置に設けられている。
搬送機構130は、駆動モータ131、収納部搬送ベルト132、リバースローラ133、第1搬送ベルト141、第2搬送ベルト142、及び、図示せぬ駆動伝達機構を備えている。
駆動モータ131は、収納部搬送ベルト132や、リバースローラ133、第1搬送ベルト141を駆動させる駆動源である。図示せぬ駆動伝達機構は、駆動モータ131で発生された駆動力を収納部搬送ベルト132や、リバースローラ133、第1搬送ベルト141に伝達する。
収納部搬送ベルト132は、硬貨分離部120の内部で硬貨99を搬送する搬送部材である。収納部搬送ベルト132は、搬送方向の上流側が下部側となり、搬送方向の下流側が上部側となるように、水平方向に対して斜め方向に傾斜して配置されている。これにより、収納部搬送ベルト132は、硬貨出金口5から硬貨分離部120の内部に落下した各硬貨99を、自重で下部側(搬送方向の上流側)に滑落させて、下部側に溜まらせるようにしている。収納部搬送ベルト132は、矢印A11の方向に走行することにより、下部側(搬送方向の上流側)に収納された各硬貨99を上部側(搬送方向の下流側)に向けて搬送する。
リバースローラ133は、硬貨99が複数枚に重なって搬送された場合に、各硬貨99を1枚ずつに分離する部材である。リバースローラ133は、収納部搬送ベルト132の下流側の端部付近に配置されている。リバースローラ133と収納部搬送ベルト132との間には、隙間が設けられている。隙間の間隔は、搬送の対象となる複数金種の硬貨のうち、最大厚硬貨(具体的には、500円硬貨)が1枚だけ通過可能な値に設定されている。
リバースローラ133は、収納部搬送ベルト132の搬送方向に対して逆方向(矢印A12の方向)に回転することによって、1枚の硬貨99のみを収納部搬送ベルト132の搬送方向の下流側(第1搬送ベルト141及び第2搬送ベルト142側)に通過させ、他の硬貨99を収納部搬送ベルト132の搬送方向の上流側に戻す。
第1搬送ベルト141及び第2搬送ベルト142は、硬貨99を挟持搬送する(すなわち、硬貨99を互いの間で挟み込んで搬送する)構成要素である。第1搬送ベルト141は、駆動モータ131の駆動により走行するタイミングベルトとして構成されている。一方、第2搬送ベルト142は、一部の面が第1搬送ベルト141に密着するように配置され、第1搬送ベルト141の走行に追従して走行する平ベルトとして構成されている。
第1搬送ベルト141及び第2搬送ベルト142は、一部の面が互いに密着するように、配置されている。したがって、第1搬送ベルト141及び第2搬送ベルト142は、それぞれ、互いに密着する密着面を有している。
第1搬送ベルト141及び第2搬送ベルト142は、双方の密着面の間で硬貨99を挟み込み、その状態で矢印A13の方向に走行することにより、硬貨99をシュート部104に向けて上昇させるように搬送する。
シュート部104は、第1搬送ベルト141及び第2搬送ベルト142によって硬貨99が搬送されると、硬貨99を傾斜面に沿って滑落させることによって、硬貨99を釣銭機1の硬貨入金口4の内部に投入する。
<硬貨入金口に投入された硬貨の集積状態>
以下、図4〜図7を参照して、硬貨入金口4に投入された硬貨99の集積状態につき説明する。図4は、硬貨精査補助ユニット100のシュート部104と釣銭機1の硬貨入金口4の接続状態を示す断面図である。図5及び図6は、それぞれ、硬貨99の好ましくない集積状態を示す図である。図7は、釣銭機1の硬貨99の崩し動作の説明図である。
図4に示すように、硬貨精査補助ユニット100は、シュート部104の下端部に、フル検知センサSN104を有している。また、釣銭機1は、釣銭機1の硬貨入金口4の底面に、入金口繰出円盤11を有している。
フル検知センサ104は、硬貨99がシュート部104の下端部に達する程に硬貨入金口4の内部に収納されているか否かを監視するためのセンサである。硬貨精査補助ユニット100は、フル検知センサSN104で硬貨99が検知された時点で、硬貨99の投入を停止する。
入金口繰出円盤11は、硬貨入金口4に投入された硬貨99を釣銭機1の内部に入金して(取り込み)搬送部14に繰り出すための入金用可動部材である。入金口繰出円盤11は、円盤状部材として構成されており、硬貨入金口4の底部に配置されている。硬貨精査補助ユニット100によって硬貨入金口4の内部に投入された硬貨99は、入金口繰出円盤11の上に集積される。
硬貨入金口4には、硬貨99を釣銭機1の内部に取り込むための取込口12が設けられている。また、取込口12の近傍には、硬貨99が搬送される搬送路13が配置されている。釣銭機1は、入金口繰出円盤11を矢印A21の方向に回転させることによって、硬貨99を取込口12の中を通過させて搬送路13側に繰り出し、搬送路13に沿って搬送部14で硬貨99を鑑別部15に向けて搬送する。このようにして、釣銭機1は、硬貨99を内部に取り込む。なお、「矢印A21の方向」は、特許請求の範囲に記載された「硬貨の入金動作のときの動作方向」に相当する。
ところで、図5及び図6に示すように、硬貨99は、好ましくない状態で硬貨入金口4の内部に収納されることがある。図5は、硬貨99が一部分に集中して積み上がった状態を示している。また、図6は、硬貨99が起立した状態を示している。以下、図5に示す状態になっている硬貨99の集積体を「積層硬貨99ac」と称する。また、図6に示す状態になっている硬貨99を「起立硬貨99st」と称する。
図5に示す例では、積層硬貨99acが、入金口繰出円盤11の上に積み上がった状態になっている。そして、積層硬貨99acの上部部分は、フル検知センサSN104の配置位置に到達した状態になっている。
また、図6に示す例では、起立硬貨99stが、傾倒した状態で硬貨入金口4の内部に集積されている硬貨99の上に積み上がった状態になっている。そして、起立硬貨99stの上部部分は、フル検知センサSN104の配置位置に到達した状態になっている。
積層硬貨99acや起立硬貨99stが発生した場合に、硬貨精査補助ユニット100は、硬貨99を収納可能な空間が硬貨入金口4の内部に存在しているにもかかわらず、フル検知センサSN104で積層硬貨99acや起立硬貨99stを検知してしまう。すると、硬貨精査補助ユニット100は、その時点で、搬送機構130(収納部搬送ベルト132と搬送ベルト141,142)の駆動を停止して、硬貨99の投入を停止する。
そのため、釣銭機1は、硬貨99を収納可能な空間が硬貨入金口4の内部に存在しているにもかかわらず、硬貨99があまり収納されていない状態になる。釣銭機1は、この状態のままでは、取扱可能な(精査可能な)硬貨99の枚数が低下してしまう。
そこで、図7に示すように、本実施形態1では、釣銭機1は、任意のタイミングで、硬貨99の入金動作のときの動作方向とは異なる動作を行うことによって、硬貨99の崩し動作を行う。ここでは、硬貨99の崩し動作が、硬貨99の入金動作のときの動作方向である矢印A21の方向とは逆方向(矢印B21の方向)に、入金口繰出円盤11を回転させることによって、行われる場合を例にして説明する。
積層硬貨99acや起立硬貨99stは、入金口繰出円盤11が逆方向に回転することにより、崩される。このとき、崩された硬貨99bnは、取込口12の中を通過しないで、硬貨入金口4の内部に留まり、硬貨入金口4の内部で撹拌される。その結果、崩された硬貨99bnは、硬貨入金口4の内部でほぼ均等に分散された状態になる。
<釣銭機の硬貨の崩し動作>
以下、図3、並びに、図8A及び図8Bを参照して、釣銭機1の硬貨99の崩し動作につき説明する。図8A及び図8Bは、それぞれ、釣銭機1の硬貨99の崩し動作を示すフローチャートである。
なお、釣銭機1は、図示せぬタイマによって計測された時間に基づいて動作する。また、釣銭機1の動作は、図示せぬ記憶部に読み出し自在に予め格納された制御プログラムによって規定されており、制御部2によって実行される。硬貨精査補助ユニット100も同様である。以下、これらの点については、情報処理では常套手段であるので、その詳細な説明を省略する。
釣銭機1は、電源が投入されると、動作を開始する。ここでは、硬貨99の崩し動作が硬貨99の精査処理の一過程で行われる場合を想定して説明する。
図8Aに示すように、操作者は、釣銭機1に硬貨99の精査処理を行わせる行う場合に、釣銭機1のシャッタ8(図1参照)を手で開けて、硬貨精査補助ユニット100の取込口103を釣銭機1の硬貨出金口5の下方に配置させ、硬貨精査補助ユニット100のシュート部104の下端部を釣銭機1の硬貨入金口4の内部に挿入させる。これにより、操作者は、硬貨精査補助ユニット100を釣銭機1の被装着部7(図1及び図2参照)に装着する。
次に、操作者は、硬貨精査補助ユニット100の電源ケーブル109(図1参照)を釣銭機1の電源供給口9(図1参照)に接続する。釣銭機1は、電源ケーブル109が電源供給口9(図1参照)に接続されると、硬貨精査補助ユニット100に電源の供給を開始する(S105)。
次に、操作者は、釣銭機1の操作部3(図1参照)を操作して、硬貨の精査処理の実行指示を釣銭機1に入力する。これに応答して、釣銭機1は、指示を受け付ける(S110)。
すると、釣銭機1は、該当金種の出金動作を開始する(S115)。出金動作の開始は、精査処理の開始を意味する。このとき、釣銭機1は、制御プログラム(又は操作者)によって指定された金種の順番に、図示せぬ収納庫の内部に収納されている該当金種の全ての硬貨99を硬貨出金口5に出金する。出金された硬貨99は、取込口103を介して硬貨精査補助ユニット100に取り込まれて、硬貨分離部120の内部に収納される。
硬貨精査補助ユニット100は、S105で釣銭機1から電源の供給を受けると、硬貨分離部120の下部に配置されている磁気センサ121で、硬貨99が硬貨分離部120に収納されたか否かを監視する。そして、硬貨精査補助ユニット100は、磁気センサ121で、硬貨99が硬貨分離部120に収納されたことを検知すると、硬貨分離部120からシュート部104への硬貨99の搬送動作、及び、シュート部104からの釣銭機1の硬貨入金口4の内部への硬貨99の投入動作を開始する。
このとき、硬貨精査補助ユニット100は、駆動モータ131の駆動により、収納部搬送ベルト132が矢印A11の方向に走行するとともに、リバースローラ133が矢印A12の方向に回転する。これにより、硬貨99は、収納部搬送ベルト132とリバースローラ133との間を1枚ずつ通過する。
また、硬貨精査補助ユニット100は、第1搬送ベルト141が矢印A13の方向に走行するとともに、第2搬送ベルト142が第1搬送ベルト141の走行に従動して同じ方向(矢印A13の方向)に走行する。これにより、収納部搬送ベルト132とリバースローラ133との間を通過した硬貨99は、第1搬送ベルト141と第2搬送ベルト142とによって挟持搬送されて、シュート部104まで搬送される。
そして、硬貨精査補助ユニット100は、硬貨99をシュート部104から釣銭機1の硬貨入金口4の内部に投入する。このとき、硬貨精査補助ユニット100は、フル検知センサ104で、硬貨99がシュート部104の下端部に達する程に硬貨入金口4の内部に収納されているか否かを監視する。
硬貨精査補助ユニット100は、硬貨99がシュート部104の下端部に達する程に硬貨入金口4の内部に収納された(集積された)場合に、フル検知センサSN104で硬貨99を検知する。この場合に、硬貨精査補助ユニット100は、搬送機構130(収納部搬送ベルト132と搬送ベルト141,142)を一旦停止させる。
また、硬貨精査補助ユニット100は、分離搬送部130の内部から硬貨99がなくなった場合(すなわち、磁気センサ121で、硬貨99が検知されなくなった場合)も、搬送機構130(収納部搬送ベルト132と搬送ベルト141,142)を停止させる。
一方、釣銭機1は、出金動作を開始してから一定時間の経過を検知した場合や図示せぬセンサで規定枚数以上の硬貨99の出金を検知した場合に(S120)、出金動作を継続した状態で、硬貨99の崩し動作を開始する(S125)。このとき、釣銭機1は、図7に示す矢印B21の方向(逆方向)に、入金口繰出円盤11を回転させる。
硬貨精査補助ユニット100は、釣銭機1が硬貨99の崩し動作を行うことによって、フル検知センサSN104で硬貨99が検知されなくなった場合に、停止していた搬送機構130(収納部搬送ベルト132と搬送ベルト141,142)を再度駆動させる。これにより、硬貨精査補助ユニット100は、硬貨分離部120に収納されている硬貨99のシュート部104への搬送を再開する、
この後、釣銭機1は、出金動作を継続した状態で、硬貨99の崩し動作を行い、図示せぬセンサで、該当金種の硬貨99の図示せぬ収納庫の空状態(すなわち、該当金種の硬貨99の出金完了状態)を検知すると(S130)、出金動作を終了する。
また、釣銭機1は、任意のタイミングで、硬貨99の崩し動作を終了する(S125)。このとき、釣銭機1は、入金口繰出円盤11の回転を停止させる。この後、処理は、符号「A1」を介して、S145に進む。
図8Bに示すように、釣銭機1は、硬貨入金口4の内部に投入された硬貨99の入金動作(装置の内部への取り込み動作)を開始する(S145)。このとき、釣銭機1は、図4に示す矢印A21の方向(正方向)に、入金口繰出円盤11を回転させる。
そして、釣銭機1は、鑑別部15で、入金された(取り込まれた)硬貨99を鑑別しながら計数する(S150)。このとき、釣銭機1は、鑑別部15を通過した硬貨99を図示せぬ収納庫に搬送して、順次収納する。
なお、精査処理は、釣銭機1の図示せぬ収納庫の内部に収納されている硬貨99の枚数を確認することが目的である。そのため、釣銭機1は、出金動作で出金された硬貨99と入金動作で入金された硬貨99とが収納庫の内部で混ざらないように、S135の出金動作が終了するまで、S145の入金動作が開始されないようにしている。
次に、釣銭機1は、硬貨入金口4の空状態(すなわち、該当金種の硬貨99の入金完了状態)を検知すると(S155)、鑑別部15で計数された枚数(以下、「計数枚数」と称する)と図示せぬ記憶部に予め記憶されている該当金種の硬貨99の図示せぬ収納庫に収納されていた枚数(以下、「記憶枚数」と称する)とを比較して(S160)、計数枚数と記憶枚数とが一致するか否かを判定する(S165)。
S165の判定で、計数枚数と記憶枚数とが一致すると判定された場合(“Yes”の場合)に、釣銭機1は、該当金種の硬貨99の精査枚数が確定したと判定して、精査処理の結果を表す情報(以下、「精査処理情報」と称する)を図示せぬ記憶部に記憶して、該当金種の硬貨99の精査処理を終了する(S170)。
次に、釣銭機1は、全ての金種の精査処理が終了したか否かを判定する(S175)。S175の判定で、全ての金種の精査処理が終了したと判定された場合(“Yes”の場合)に、一連のルーチンの処理を終了する。一方、S175の判定で、全ての金種の精査処理が終了していないと判定された場合(“No”の場合)に、釣銭機1は、制御プログラム(又は操作者)によって指定された次の金種の精査処理を行う。その結果、処理は、符号「A2」を介して、S115に戻る。
また、S165の判定で、計数枚数と記憶枚数とが一致しないと判定された場合(“No”の場合)に、釣銭機1は、該当金種の硬貨99の精査枚数が確定していないと判定して、該当金種の硬貨99の精査処理を再度行う。その結果、処理は、符号「A2」を介して、S115に戻る。
このようにして、釣銭機1は、内部に収納されている全ての金種の硬貨99の精査処理が終了するまで、金種別に一連のルーチンの処理を繰り返し行う。
かかる構成において、釣銭機1は、積層硬貨99ac(図5参照)が発生した場合であっても、入金口繰出円盤11で崩し動作を行うことにより、積層硬貨99acを崩して、崩された硬貨99を撹拌することができる。その結果、釣銭機1は、崩された硬貨99bn(図7参照)を硬貨入金口4の全体に分散させた状態にすることができる。
また、釣銭機1は、起立硬貨99st(図6参照)が発生した場合であっても、入金口繰出円盤11で崩し動作を行うことにより、起立硬貨99stを傾倒させて、傾倒された硬貨99を撹拌することができる。その結果、積層硬貨99acの場合と同様に、釣銭機1は、崩された硬貨99bn(図7参照)を硬貨入金口4の全体に分散させた状態にすることができる。
このような釣銭機1は、硬貨99を硬貨入金口4の内部に満遍なく集積させることができる。したがって、釣銭機1は、比較的大量の硬貨99を硬貨入金口4の内部に収納することができるため、硬貨精査補助ユニット100を大型化させることなく、取扱可能な(精査可能な)硬貨99の枚数を増加させることができる。
しかも、入金用可動部材である入金口繰出円盤11は、従来装置に既に設けられている部材である。そのため、釣銭機1は、新たな付加機構を設けることなく、取扱可能な硬貨の枚数を増加させることができる。
以上の通り、本実施形態1に係る釣銭機(現金取扱装置)1によれば、入金用可動部材(入金口繰出円盤11)で硬貨入金口4に投入された硬貨99の崩し動作を行うことによって、新たな付加機構を設けることなく、取扱可能な(精査可能な)硬貨99の枚数を増加させることができる。
[実施形態2]
実施形態1に係る釣銭機(現金取扱装置)1では、入金用可動部材が入金口繰出円盤11によって構成されている。
これに対し、本実施形態2では、入金用可動部材が入金口搬送ベルト21(図9参照)によって構成されている釣銭機1Aを提供する。
以下、図9〜図11を参照して、本実施形態2に係る釣銭機1Aの構成及び動作につき説明する。図9は、本実施形態2に係る釣銭機1Aの構成を示す図である。図10は、硬貨99の好ましくない集積状態を示す図である。図11は、釣銭機1Aの硬貨99の崩し動作の説明図である。
図9に示すように、釣銭機1Aは、実施形態1に係る釣銭機1と比較すると、入金口繰出円盤11の代わりに、入金口搬送ベルト21とリバースローラ22とを有している点で相違している。
入金口搬送ベルト21は、硬貨入金口4に投入された硬貨99を釣銭機1Aの内部に入金して(取り込み)搬送ベルト141,142に繰り出すための入金用可動部材である。入金口搬送ベルト21は、硬貨入金口4の底部に配置されている。入金口搬送ベルト21は、搬送方向の上流側が下部側となり、搬送方向の下流側が上部側となるように、水平方向に対して斜め方向に傾斜して配置されている。これにより、入金口搬送ベルト21は、硬貨精査補助ユニット100から硬貨入金口4の内部に投入された各硬貨99を、自重で下部側(搬送方向の上流側)に滑落させて、下部側に溜まらせるようにしている。
入金口搬送ベルト21の下流側には、取込口12とリバースローラ22とが設けられている。釣銭機1Aは、入金口搬送ベルト21を矢印A31の方向に走行させることによって、硬貨99を内部に取り込む。なお、「矢印A31の方向」は、特許請求の範囲に記載された「硬貨の入金動作のときの動作方向」に相当する。
リバースローラ22は、硬貨99が複数枚に重なって搬送された場合に、各硬貨99を1枚ずつに分離する部材である。リバースローラ22は、取込口12の近傍に配置されている。リバースローラ22と入金口搬送ベルト21との間には、隙間が設けられている。隙間の間隔は、搬送の対象となる複数金種の硬貨のうち、最大厚硬貨(具体的には、500円硬貨)が1枚だけ通過可能な値に設定されている。
リバースローラ22は、入金口搬送ベルト21の搬送方向(矢印A31の方向)に対して逆方向(矢印A32の方向)に回転することによって、1枚の硬貨99のみを入金口搬送ベルト21の搬送方向の下流側(搬送路13側)に通過させ、他の硬貨99を入金口搬送ベルト21の搬送方向の上流側に戻す。
図10に示すように、硬貨99は、好ましくない状態で硬貨入金口4の内部に収納されることがある。図10に示す例では、積層硬貨99acや起立硬貨99stが、硬貨入金口4の内部で発生している。起立硬貨99stは、積層硬貨99acの上に積み上がった状態になっている。そして、起立硬貨99stの上部部分は、フル検知センサSN104の配置位置に到達した状態になっている。
かかる構成において、釣銭機1Aは、入金口搬送ベルト21を駆動させて、硬貨99の崩し動作を行う。硬貨99の崩し動作は、図11に示すように、硬貨99の入金動作のときの動作方向である矢印A31の方向とは逆方向(矢印B31の方向)に、入金口搬送ベルト21を走行させることによって、行う。
具体的には、硬貨精査補助ユニット100は、釣銭機1Aで硬貨99の精査処理が行われる場合に、実施形態1と同様の動作を行うことによって、シュート部104で硬貨99を釣銭機1Aの硬貨入金口4の内部に投入する。
釣銭機1Aは、硬貨精査補助ユニット100によって投入された硬貨99を硬貨入金口4の入金口搬送ベルト21の上に集積させる。その際に、釣銭機1Aは、図示せぬセンサによってシュート部104から投入された硬貨99の枚数を計数する。
釣銭機1Aは、投入された硬貨99の枚数が金種毎に予め決められた出金枚数以上の枚数に達した時点で、入金口搬送ベルト21を硬貨99の入金動作のときの動作方向である矢印A31の方向とは逆方向(矢印B31の方向)に走行させる。このとき、リバースローラ22は、停止した状態になっている。
積層硬貨99acや起立硬貨99stは、入金口搬送ベルト21が逆方向に走行することにより、崩される。このとき、崩された硬貨99bnは、入金口搬送ベルト21の傾斜面に沿って滑落する。その結果、崩された硬貨99bnは、硬貨入金口4の内部でほぼ均等に分散された状態になる。
釣銭機1Aは、硬貨99の崩し動作を行った後、任意のタイミングで、入金口搬送ベルト21の逆方向(矢印B31の方向)への走行を停止させる。その後に、釣銭機1Aは、入金動作を開始する。
このような釣銭機1Aは、実施形態1に係る釣銭機1と同様に、硬貨99を硬貨入金口4の内部に満遍なく集積させることができる。したがって、釣銭機1Aは、実施形態1に係る釣銭機1と同様に、硬貨精査補助ユニット100を大型化させることなく、取扱可能な(精査可能な)硬貨99の枚数を増加させることができる。また、釣銭機1Aは、新たな付加機構を設けることなく、取扱可能な硬貨の枚数を増加させることができる。
以上の通り、本実施形態2に係る釣銭機(現金取扱装置)1Aによれば、実施形態1に係る釣銭機1と同様に、入金用可動部材(入金口搬送ベルト21)で硬貨入金口4に投入された硬貨99の崩し動作を行うことによって、新たな付加機構を設けることなく、取扱可能な(精査可能な)硬貨99の枚数を増加させることができる。
なお、本発明は、前記した実施形態に限定されることなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更や変形を行うことができる。
例えば、前記した実施形態は、本発明の要旨を分かり易く説明するために詳細に説明したものである。そのため、本発明は、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、本発明は、実施形態の構成の一部を他の構成に追加したり、置き換えたりすることができる。また、本発明は、実施形態の構成から一部の構成を削除することができる。
また、例えば、前記した実施形態では、本発明を釣銭機に適用する場合を例にして説明した。しかしながら、本発明は、釣銭機に限らず、硬貨が一部分に集中して積み上がる状態や起立する状態になることに起因する課題を解決することが望まれている現金取扱装置に適用することができる。このような現金取扱装置としては、例えば、現金自動預け払い機(ATM)やキャッシュディスペンサ等がある。また、本発明は、硬貨の代わりに遊技用メダルを取り扱うメダル取扱装置にも適用することができる。また、本発明は、現金取扱装置に限らず、例えば、硬貨精査補助ユニット等の硬貨搬送装置にも適用することができる。
なお、本発明を硬貨搬送装置に適用した場合の構成は、以下のようになる。
すなわち、その構成とは、硬貨を搬送する硬貨搬送装置であって、前記硬貨を所定の場所に搬送する搬送部と、前記硬貨を取り込む取込口と、前記取込口の内部に配置され、前記取込口に取り込まれた硬貨を内部に入金して前記搬送部に繰り出すための入金用可動部材と、他の装置に装着されたときに、前記入金用可動部材を制御して、前記取込口に取り込まれた硬貨の崩し動作を行わせる制御部とを有する構成である。
例えば、図3に示す硬貨精査補助ユニット100でその構成を例示した場合に、その構成は、搬送ベルト141,142と、取込口103と、収納部搬送ベルト132と、他の装置(釣銭機1(図1及び図2参照))に装着されたときに、収納部搬送ベルト132を制御して、取込口103に取り込まれた硬貨99の崩し動作(矢印A11とは逆方向の走行動作)を行わせる制御部112とを有する構成となる。
また、例えば、実施形態1に係る釣銭機1は、崩し動作のときに、入金口繰出円盤11の逆方向(図7に示す矢印B21の方向)の回転を間欠的に行うようにしてもよい。同様に、実施形態2に係る釣銭機1Aは、崩し動作のときに、入金口搬送ベルト21の逆方向(図11に示す矢印B31の方向)の走行を間欠的に行うようにしてもよい。このような崩し動作は、同じ動作を続けた場合に、積層硬貨99acや起立硬貨99stがその動作に馴染んでしまい崩し難くなる可能性があるのに対し、入金用可動部材(入金口繰出円盤11や入金口搬送ベルト21)を一時的に停止させることによって、そのときの硬貨99の勢いで、積層硬貨99acや起立硬貨99stを崩し易くすることができるからである。
また、例えば、実施形態1に係る釣銭機1は、硬貨99を停止させる停止機構を取込口12の手前に設けることによって、崩し動作のときに、硬貨99が停止機構を通過してしまわない範囲内で、入金口繰出円盤11の逆方向(図7に示す矢印B21の方向)の回転と正方向(図4に示す矢印A21の方向)の回転とを交互に行うようにしてもよい。また、取込口12の近傍にリバースローラ22を有している実施形態2に係る釣銭機1Aは、崩し動作のときに、硬貨99がリバースローラ22を通過してしまわない範囲内で、入金口搬送ベルト21の逆方向(図11に示す矢印B31の方向)の走行と正方向(図9に示す矢印A31の方向)の走行とを交互に行うようにしてもよい。